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審決分類 |
審判 一部無効 2項進歩性 H01M 審判 一部無効 特174条1項 H01M |
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管理番号 | 1199220 |
審判番号 | 無効2006-80076 |
総通号数 | 116 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-08-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2006-04-25 |
確定日 | 2009-05-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3456935号「燃料電池用シール材の形成方法」の特許無効審判事件についてされた平成18年12月5日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成19年(行ケ)第10007号平成19年9月12日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件特許第3456935号に係る出願は、平成12年1月12日に特許出願され、平成15年8月1日にその請求項1?3に係る発明について、特許の設定登録がされた。 これに対して、請求人より、平成18年4月25日に本件特許の請求項1、2に係る発明について特許の無効の審判が請求され、被請求人より、同年7月21日付けで訂正請求書が提出され、同年12月5日に請求項1、2に係る発明について特許を無効とする旨の審決(以下、「前審決」という。)がされた。 そこで、被請求人より、平成19年1月11日に知的財産高等裁判所に本件特許を無効とした審決の取消を求める訴え(平成19年(行ケ)第10007号)が提起され、平成19年9月12日に知的財産高等裁判所において、上記審決の取消の判決が言い渡された。 そして、上記判決は確定している。 第2 訂正の適否についての判断 1.訂正の内容 上記判決によれば、前審決のうち、本件特許の請求項3に係る発明に関する訂正を認めるとした部分は確定しているから、本件訂正請求による訂正の適否の審理の対象は、本件特許の請求項1、2に関する部分に限定されることになるところ、本件訂正請求による訂正1ないし6のうち、本件特許の請求項1、2に係る発明に関するものは、次の訂正1、2、4、5である。(下線部は訂正箇所である) (1) 訂正1 特許請求の範囲の請求項1において、 「【請求項1】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えることを特徴とする燃料電池用シール材の形成方法。」とあるのを、 「【請求項1】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成することを特徴とする燃料電池用シール材の形成方法。」と訂正する。 (2) 訂正2 特許請求の範囲の請求項2において、 「【請求項2】請求項1記載のゴム薄膜形成工程において、ゴム薄膜をスクリーン印刷により形成した燃料電池用シール材の形成方法。」とあるのを、 「【請求項2】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を額縁状に形成した燃料電池用シール材の形成方法。」と訂正する。 (3) 訂正4 明細書の段落【0006】において、 「本発明は…を要旨とするものである。」とあるのを、次のように訂正する。 「本発明は、上記目的を達成するために、単セルを組立てる以前にあらかじめゴムシール材を架橋してセパレータに直接成形一体化しておくことを基本的手段とし、請求項1に係る発明は、高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、このセパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成することを燃料電池用シール材の形成方法を要旨とするものである。」 (4) 訂正5 明細書の段落【0007】において、 「また、請求項2に係る発明は、…ゴム薄膜を形成するものである。」を次のように訂正する。 「また、請求項2に係る発明は、高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を額縁状に形成するものである。すなわち、形成すべきゴム薄膜の平面形状に合致した透孔を有するマスクをセパレータの表面に被覆したうえ、例えばゴムコンパウンドを溶剤により溶解させてなるゴム溶液を前記マスク上から複数回塗布し、前記透孔を通じて所定の厚さのゴム薄膜を形成するものである。」 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、拡張変更の存否 (1) 訂正1について 訂正1は、セパレータの材質を「カーボングラファイト」とし、ゴム溶液の塗布方法を「スクリーン印刷」とし、塗布位置を「セパレータの周縁部表面」とそれぞれ特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「カーボングラファイト」については、願書に最初に添付した明細書の段落【0008】(願書に添付した明細書(以下、「本件明細書」という。)の段落【0009】)に、「スクリーン印刷」については、当初明細書の請求項2及び段落【0007】に、「セパレータの周縁部表面」については、当初明細書の段落【0013】にそれぞれ明示的に記載されているから、訂正1は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 したがって、訂正1は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 (2) 訂正2について 訂正2は、請求項1を引用する従属形式で記載されていた請求項2を独立形式に書き改めるとともに、訂正後の請求項1の限定内容を全て含み(セパレータの材質、ゴム溶液の塗布方法及び塗布位置の特定)、さらにゴム薄膜の形状を「額縁状」に特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、「額縁状」は、当初明細書の段落【0012】、【0013】に明示的に記載されているから、訂正2は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、さらに、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。 したがって、訂正2は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 (3) 訂正4、5について 上記訂正4、5は、発明の詳細な説明の記載を訂正後の特許請求の範囲の記載と整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。 したがって、訂正4、5は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合する。 3.まとめ したがって、平成18年7月21日付けの訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項から第5項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 第3 本件発明 本件無効審判請求がされた請求項1及び2に係る発明は、上記訂正により、訂正された明細書(以下、「本件訂正明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものである(訂正後の請求項1及び2に係る発明は、前記第2の1(1)、(2)参照。以下、それぞれの発明を、「本件訂正発明1」、「本件訂正発明2」という。)。 第4 当事者の主張の概要 1.請求人主張の無効理由と証拠方法 請求人は、特許第3456935号の請求項1、2に係る発明についての特許を無効とする、審判請求の費用は被請求人の負担とする、との審決を求めることを請求の趣旨とし、審判手続(審判請求書、弁駁書、口頭審理(口頭審理陳述要領書、口頭審理調書)、上申書)において、それらの特許を無効とすべき理由を以下のように主張し、証拠方法として甲1?7、10?15号証を提出している。なお、甲8及び9号証は欠番である(口頭審理(口頭審理陳述要領書、口頭審理調書)において削除)。 証拠方法 《審判請求書で提示》 甲1号証 特開平11-129396号公報 甲2号証 特開平7-251119号公報 甲3号証 実開平1-141354号明細書 甲4号証 実公平2-35086号公報 甲5号証 特開平8-145179号公報 甲6号証 特開平6-109138号公報 甲7号証 特開平9-274926号公報 《弁駁書で提示》 甲8号証 特開平2-281567号公報(口頭審理にて証拠から削除) 甲9号証 特開昭61-103946号公報(口頭審理にて証拠から削除) 甲10号証 特開平7-272731号公報 甲11号証 特開平4-319261号公報 《口頭審理(口頭審理陳述要領書)で提示》 甲12号証 特開昭60-20471号公報 甲13号証 特開昭58-145067号公報 甲14号証 信越化学工業(株)液状シリコーンゴム射出成形システムカタログ1?11頁 甲15号証 特開平9-296865号公報 《上申書で提示》 甲16号証 特開2000-133288号公報 甲17号証 特開2000-12054号公報 (1) 無効理由1(新規事項の追加) 当初明細書の記載は、「放射線架橋」の要件を必須とした開示に留まっているから、「放射線架橋」以外を含むものとする補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものではない。よって、それらの特許は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第1号の規定に該当し、無効とすべきものである。 (2) 無効理由2(進歩性違反) 本件訂正発明1及び2は、その出願前頒布された甲1号証に記載された発明及び甲2号証等に記載された周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、それらの発明に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効とすべきものである。 2.被請求人の主張と証拠方法 被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めることを答弁の趣旨とし、審判手続(答弁書、口頭審理(口頭審理陳述要領書、口頭審理調書)、上申書)において、無効審判の請求人が主張する、無効とすべき理由について以下のように主張し、証拠方法として乙1?4号証及び参考資料1を提出している。 証拠方法 《口頭審理(口頭審理陳述要領書)で提示》 乙1号証 特開平1-255170号公報 乙2号証 特開平8-162145号公報 乙3号証 特開平11-126620号公報 乙4号証 特許庁編「審査便覧」(社)発明協会発行、「第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正」、「第I節 新規事項」 《上申書で提示》 参考資料1 特開2002-33109号公報 (1) 無効理由1(新規事項の追加)に対して 当初の請求項1では、たまたま、「ゴム薄膜を放射線架橋して成形されている」と限定していたが、本件発明は「あらかじめゴムパッキンをセパレータに直接成形一体化することを基本的手段とする」のであるから、「ゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化」さえすればいいことが当初明細書の記載から自明である。 すなわち、本件特許に係る補正は発明の技術上の意義になんら変更をもたらすものではない(特許庁編「審査便覧」(社)発明協会発行、「第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正」、「第I節 新規事項」の第1頁「3.基本的な考え方(3)」、第2頁?第3頁「4.2各論(1)及び[補正が許される例]例2」)。 また、放射線架橋以外の架橋方法によって未架橋ゴムを架橋することは、当業者にとって技術常識である。 したがって、「当初明細書に接した当業者が、未架橋ゴム薄膜を架橋させてシール機能を有する架橋ゴム薄膜を形成することが当初明細書に記載されているのと同然であると理解する」のであるから、本件補正は当初明細書又は図面から自明な事項に相当し、新規事項を追加するものではない。 (2) 無効理由2(進歩性違反)に対して ア 本件訂正発明1及び2の第1の特色は、単なるカーボングラファイトのセパレータの使用ではなく、脆性があり破損しやすいカーボングラファイトで形成されたセパレータと、スクリーン印刷とを組み合わせる点にある。 すなわち、本件発明の出願時の技術水準の下、甲1号証に係る発明において、金属薄板への射出成形とカーボングラファイトで形成されたセパレータへのスクリーン印刷との間に置換容易性があるか否かが、本件発明の進歩性の判断の基礎となるのである。しかし、甲1号証に係る発明において、金属薄板に代えて脆性が大きく破損しやすいカーボングラファイトで形成されたセパレータを用いると、射出成形ではインサートとしてのセパレータを金型に挟み込んで型締めするため、射出圧力とも相俟って、セパレータが破損又は破壊される。そして、カーボングラファイトのプレートを甲1号証の発明に適用すると、セパレータが破損又は破壊されてしまい、立体的な形状の複合体を正確にかつ効率よく製造するという発明の効果と技術的に矛盾が生じることとなる。従って、金属薄板とカーボングラファイトのセパレータとの間だけでなく、金属薄板への射出成形とカーボングラファイトのセパレータへのスクリーン印刷との間にも置換容易性がないのである。 なお、カーボングラファイトのセパレータが脆く破損しやすいことは、周知又は慣用の技術的事項であるとともに、請求人も弁駁書第2頁において認めている事項ではあるが、乙1?3号証の文献の記述からも明らかである。 イ 本件明細書の段落【0006】及び【0005】の記載事項から、本件訂正発明1及び2の課題が、破損しやすいカーボングラファイトのセパレータであっても、シールパッキンをセパレータの周縁部に一体に形成することにあることを読み取ることができる。 これに対して、甲1号証は、インサートとしてのセパレータを型締めし、高い圧力(段落【0009】)が作用する射出成形により、金属薄板にシリコーン樹脂層を形成するから、射出成形をインサートとしての破損しやすい材料に適用するという課題は生じない。また、甲2号証乃至甲6号証でも、金属ガスケットなどの硬質で丈夫な基材を対象にするから、破損しやすい材料にパッキンを一体に形成するという課題は生じない。さらに、カーボン板材を記載する甲7号証では、セパレータと高分子電解質膜とが側端部のガスケットでシールされていることからも明白である(段落【0006】)ように、セパレータのガス流通溝のリブと電極と高分子電解質膜との接触に伴う課題を解決するのであり、破損しやすい材料のセパレータの周縁部にゴム薄膜を形成するという課題は生じない。このように、各証拠から、カーボングラファイトのセパレータの周縁部にシールパッキンを一体に成形するという新規な課題は導き出せない。したがって、各証拠は本件訂正発明1及び2の課題に対する予測性がない。 ウ 甲1号証に係る発明と対比すると、本件訂正発明1は、金属薄板に代えてカーボングラファイトのセパレータを用いる点で大きく相違することに加えて、金属薄板にゴム薄膜を射出成形することに代えてカーボングラファイトのセパレータにスクリーン印刷によりゴム薄膜を形成する点でも大きく相違する。本件訂正発明1及び2は各証拠にはない格別顕著な効果を奏する。したがって、本件訂正発明1及び2が進歩性を備えていることは明らかである。 第5 証拠の記載事項 〔甲1号証の記載事項〕 (摘示1a)「【発明の属する技術分野】本発明は、電気・電子部品等のクッション材、パッキン材、スペーサー、特に燃料電池のセパレータとして好適に使用でき、複雑な形状や、部品の小型化が可能なシリコーン樹脂-金属複合体に関する。」(段落【0001】) (摘示1b)「【発明が解決しようとする課題】上記のシリコーンゴム単体からなり、比較的肉厚の薄い薄膜のものを電気・電子部品等にそのまま組み入れようとすると、薄膜上にシワが生じたり、薄膜同志で密着し剥がしずらくなる等の作業性に問題があった。そこで、このような問題点を解消するためにシリコーンゴム単体と非伸縮性の金属薄板と複合一体化した積層体が知られている(例えば、特開平4-86256号、実開平2-470号)。 上記複合一体化の方法としては、通常、金属薄板の少なくとも片面にシリコーンゴムシートを載置し、加熱加圧する方法が行われているが、部分的に載置する場合、位置合せが困難であったり、さらには金属薄板の表面に凹凸があるものでは、均一に貼り合わせることが困難という問題があった。」(段落【0003】、【0004】) (摘示1c)「【発明の実施の形態】以下、本発明を詳しく説明する。本発明に使用される金属薄板としては、鋼板、ステンレス鋼板、メッキ処理鋼板、アルミニウム板、銅板、チタン板等が好適であるが、これらには、限定されない。金属薄板の厚みは0.1?2.0mmの範囲のものが好適であり、表面に凹凸を有するものも使用できる。この凹凸は用途等によりその形状は異なるが、3次元的な構造であって、用途が燃料電池、特に固体高分子型燃料電池のセパレータでは、燃料ガスの流路用溝等が相当する。」(段落【0006】) (摘示1d)「本発明の複合体は電気・電子部品等のクッション材、パッキン材、スペーサー、Oリング等に使用できるが、特に燃料電池(固体高分子型燃料電池)のセパレータの用途に好適に使用できる。このようなセパレータはより小型化が要求され、また多数のセパレータを重ね合わせて使用することから精度が優れ、生産性のよいセパレータが要求されており、射出成形によりシリコーン樹脂層を形成する本発明の複合体はこのような要求を満足することが容易である。」(段落【0012】) (摘示1e)「液状シリコーン樹脂として信越化学(株)製KE-1950-60を使用し、金型温度160℃、射出圧300kgf/cm2の条件で、ステンレス鋼板(表面プライマー処理 東芝シリコーン(株)製ME-21)の片面に射出成形した。脱型した後、図1に示した断面概略図のパッキン材を得た。得られたパッキン材ではステンレス鋼板とシリコーン樹脂層との間の接着性が良好で剥離等がなく、またバリや気泡等の発生が見られずパッキン材としての性能上問題なかった。」(段落【0016】) (摘示1f)「(実施例2)次に、他の実施例として射出成形法により形成してなるシリコーン樹脂-金属複合体製の燃料電池セパレータについて図3?10に基づいて説明する。図3に示した射出成形用金型30に金属薄板からなる金属製のセパレータ本体31をセットし、セパレータ本体31の一側面32にシリコーン樹脂層(硬度60)からなるシール材33aを射出成形法により形成した後、セパレータ本体31を図4に示した射出成形用金型34にセットし、セパレータ本休31(「本体31」の誤記と認められる)の他側面35にシリコーン樹脂層(硬度60)からなるシール材33bを射出成形法により形成し、図5?6に示す燃料電池セパレータ36を形成した。 セパレータ本体31の厚みは0.3mmであり、中央部37にはプレス成形又はエッチング処理により凹凸状のガス溝パターン38が形成され、周縁部39には反応ガス通路孔40、ピン孔41及び冷却媒体通路42が穿孔され、反応ガス通路孔40と中央部37とは凹凸状の反応ガス通路部43により連通されている。セパレータ本体31の凹凸状のガス溝パターン38の頂面は電極接触部44を形成し、電極接触部44には耐蝕性かつ良導電性の表面処理が施されている。」(段落【0017】、【0018】) (摘示1g)「図5及び図7に示すように、セパレータ本体31の一側面32の周縁部39aには、板状の基体部45と凸条のリブ部46とが形成されたシール材33aが一体的に被着されている。図6及び図7に示すように、他側面35の周縁部39bには板状の基体部47のみからなるシール材33bが一体的に被着されている。 反応ガス通路部43にはセパレータ本体31の両側面の周縁部39a、39bとシール材33a、33bとの間に薄板耐蝕性剛体板(SUS304、厚さ0.1mm)48が介設され、薄板耐蝕性剛体板48はシール材33a、33bに一体的に被着され、反応ガス通路部43中での反応ガスの流通が確保されている。シール材33a、33bの基体部45、47の厚みは好ましくは50?350μmであり、特に好ましくは60?200μmである。 リブ部46はシール材33aの内縁に沿って一周するように形成された第1リブ部46aと反応ガス通路孔40の外周を一周するように形成された第2リブ部46bと冷却媒休通路42の外周を一周するように形成された第3リブ部46cとから形成され、リブ部46の断面形状は幅500μm、高さ500μmの断面略半円状をなしている。(段落【0019】?【0021】) (摘示1h)「図7に示すように、燃料電池セパレータ36、49、50、電極51及びスペ一サ52が組み合わされて単電池ユニット53が構成される。図8に示すように、燃料電池セパレータ49は、リブ部54が形成された側のシール材55にセパレータ本体56の中央部57と冷却媒体通路58とを連通する冷媒連通路59が形成されている点を除いて燃料電池セパレータ36と同様に形成されている。 図9に示すように、燃料電池セパレータ50は、リブ部60が形成されない側のシール材61にセパレータ本体62の中央部63と冷却媒体通路64とを連通する冷媒連通路65が形成されている点を除いて燃料電池セパレータ36と同様に形成されている。 図10に示すように、複数の単電池ユニット53をさらに積層し、それらの両側にターミナル66、電気絶縁板67及びプレッシャープレート68を配設し、プレッシャープレート68に押え荷重(図8中矢印で表示)を加えて電池スタック69を構成する。(段落【0022】?【0024】) (摘示1i)図7には、2つの電極51に挟まれた膜(符号なし)が電極51の外縁部の外側に延在しており、その延在部分の膜は、「セパレータ36の一側面32の周縁部39aに設けられたシール材33aのリブ部46」と「セパレータ49の一側面の周縁部に設けた板状のシール材(符号なし)」とによって挟まれていることが記載されている。 第6 当審の判断 1.無効理由1(新規事項の追加)について (1) 請求人は、当初明細書の記載は「放射線架橋」の要件を必須とした開示に留まっているのに対して、平成15年4月21日付けでされた手続補正は「放射線架橋以外の架橋」を含むとする補正事項を含むから、新規事項の追加に当たる旨を主張している。 当該補正事項は、請求項1及び段落【0006】の「放射線架橋」を「架橋」と、段落【0017】の「ゴムパッキンを放射線架橋するので」を「ゴムパッキンを放射線架橋する場合には」と補正するものである(以下「本件補正」という。)。 (2) 当初明細書には、以下の記載がある。 「・・・上記のゴムパッキンは極めて薄いフィルム状の薄膜体であり、圧縮成形、射出成形等により成形した場合には、厚みにばらつきがあり高精度のものが得られないほか、薄肉で柔軟なゴムパッキンを電極とセパレータ間の所定の位置に組み込む作業が困難であり、組み付け時に変形や位置ずれが生じて確実なシール性を確保できない問題点があった。 本発明は、上記問題点を解決するものであり、ゴムパッキンを組み込む作業が不要となり、ゴムパッキンが所定位置に確実に配設されてシール性に完全を期すとともに、ゴムパッキンの成分が燃料電池の性能を阻害しないことを目的とするものである。 【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するために、あらかじめゴムパッキンをセパレータに直接成形一体化することを基本的手段とし」(段落【0004】?【0006】) (3) この記載から、当初明細書の発明の詳細な説明に記載された発明の課題は、ゴムパッキンは極めて薄いフィルム状の薄膜体であるため、「成形した場合には、厚みにばらつきがあり高精度のものが得られない」、「電極とセパレータ間の所定の位置に組み込む作業が困難」、「組み付け時に変形や位置ずれが生じて確実なシール性を確保できない」点であり、それらの「課題を解決するための手段」は、「あらかじめゴムパッキンをセパレータに直接成形一体化する」ことを基本とするものであるといえる。 そして「あらかじめゴムパッキンをセパレータに直接成形一体化する」ために、セパレータの所定表面にゴムパッキンとなる未架橋のゴム溶液で薄膜を塗布して形成し、その場で架橋することとしたものである。当初明細書における架橋方法として具体的に記載されている方法は「放射線架橋」のみではあるが、ゴムパッキンをセパレータに直接成形一体化するには、ゴム溶液の薄膜がセパレータと一体化するように架橋すれば足り、その発明における架橋方法が具体的に示された「放射線架橋」に限られないことを当業者は自明のこととして理解する。当初明細書には、その発明において「放射線架橋」に限らず「架橋」であれば足りるものであることは記載されているに等しいから、「放射線架橋」を「架橋」とする本件補正は、当初明細書に記載されているに等しい事項内でしたものであるといえる。 (4) したがって、本件補正は、当初明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであるといえるから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものではない。よって、それらの特許は、特許法第17条の2第3項の規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであるとはいえず、同法第123条第1項第1号の規定に該当するものではない。 2.無効理由2(進歩性違反)について (1) 甲1号証に記載の発明 甲1号証は、「電気・電子部品等のクッション材、パッキン材、スペーサー、特に燃料電池のセパレータとして好適に使用でき、複雑な形状や、部品の小型化が可能なシリコーン樹脂-金属複合体に関」し(摘示1a)記載するものであり、そこには「シリコーンゴム単体からなり、比較的肉厚の薄い薄膜のものを電気・電子部品等にそのまま組み入れようとすると、薄膜上にシワが生じたり、薄膜同志で密着し剥がしずらくなる等の作業性に問題があった」(摘示1b)という課題を解決する「射出成形法により形成してなるシリコーン樹脂-金属複合体製の燃料電池セパレータ」(摘示1f)の製造方法が記載されている。 その燃料電池セパレータの製造方法は、「射出成形用金型30に金属薄板からなる金属製のセパレータ本体31をセットし、セパレータ本体31の一側面32にシリコーン樹脂層(硬度60)からなるシール材33aを射出成形法により形成した後、セパレータ本体31を射出成形用金型34にセットし、セパレータ本体31の他側面35にシリコーン樹脂層(硬度60)からなるシール材33bを射出成形法により形成」(摘示1f)するものである。 その「シリコーン樹脂層(硬度60)からなるシール材33a及びシール材33b」の「シリコーン樹脂層(硬度60)」は実施例1の「液状シリコーン樹脂として信越化学(株)製KE-1950-60」であると認められる。その具体的な形成方法が特に記載されていないことから、実施例1と同様の方法、「金型温度160℃、射出圧300kgf/cm2の条件で、・・・射出成形」(摘示1e)の方法によると認められる。 そして、その「シール材33a」は「セパレータ本体31の一側面32の周縁部39a」に「一体的に被着されている」ものであり、「シール材33b」は「他側面35の周縁部39b」に「一体的に被着されている」ものである(摘示1g)。 さらに、甲1号証には、「燃料電池セパレータ36、49、50、電極51及びスペ一サ52が組み合わされて単電池ユニット53が構成され」(摘示1h)、2つの電極51に挟まれた膜(符号なし)が電極51の外縁部の外側に延在しており、その延在部分の膜は、「セパレータ36の一側面32の周縁部39aに設けられたシール材33a」と「セパレータ49の一側面の周縁部に設けた板状のシール材(符号なし)」とによって挟まれていることが記載されている(摘示1i)。 その2つの電極51は、一方がアノード電極で他方がカソード電極であることは燃料電池分野の技術常識であり、甲1号証には、特に「固体高分子型燃料電池」に用いることが記載されていることから、その電極間に挟まれた膜(符号なし)は、高分子電解質膜であることは明らかであり、そうしてみると「シール材」が「高分子電解質膜」を「シール」していることも明らかである。 以上の甲1号証の記載から把握される事項を、本件訂正発明1の記載に則って整理すると、甲1号証には、「高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、金属セパレータの所定位置表面に液状シリコーン樹脂を射出圧300kgf/cm^(2)、金型温度160℃の条件で射出成形してシリコーン樹脂層(硬度60)をセパレータの周縁部表面に成形一体化させる工程、前記シリコーン樹脂層(硬度60)が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接して単電池ユニットを組み立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備える燃料電池用シール材の形成方法」(以下、「甲1発明」という。)が記載されているといえる。 (2) 本件訂正発明1について (2-1) 対比 本件訂正発明1と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「液状シリコーン樹脂」は、本件訂正発明1の「ゴム溶液」に相当し、甲1発明において、金型温度160℃の条件での射出成形においては、まずセパレータに未架橋の液状シリコーン樹脂層を形成し、次いでこの層を「架橋」して「シリコーン樹脂層(硬度60)」としていることは明らかである(必要があれば甲14号証を参照)から、甲1発明の「金型温度160℃の条件で・・・シリコーン樹脂層(硬度60)をセパレータの周辺部表面に成形一体化させる工程」は、本件訂正発明1の「ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面に未架橋のゴム薄膜を形成する」、「未架橋のゴムを架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程」に相当するといえる。なお、甲1発明の「シリコーン樹脂層(硬度60)」は、「シール材33a」、及び「シール材33b」であって、「シール材33a、33bの基体部45、47の厚みは好ましくは50?350μmであり、特に好ましくは60?200μmである」(摘示1g)から、射出成形直後の未架橋のシリコーン樹脂「層」は本件訂正発明1の未架橋のゴム「薄膜」(本件訂正発明1の薄膜の実施例における厚みは300μmである。)に相当することは明らかである。 以上のことから、両者は、「高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を存在させて未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えている燃料電池用シール材の形成方法」の点で一致し、次の点で相違している。 (2-2) 相違点 a.セパレータの材質が、本件訂正発明1は「カーボングラファイト」であるのに対し、甲1発明は「金属」である点(以下、「相違点a」という。) b.セパレータの周縁部表面に架橋ゴム薄膜を成形一体化する工程が、本件訂正発明1はゴム溶液を「スクリーン印刷」で塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程及び未架橋のゴム薄膜を架橋する工程であるのに対し、甲1発明はゴム溶液を「射出圧300kgf/cm^(2)、金型温度160℃の条件で射出成形」する工程である点(以下、「相違点b」という。) (2-3) 判断 上記判決は、上記相違点aに関する容易想到性の判断について、以下のとおり判示している。なお、「引用発明」は、「甲1発明」を指す。 (1) 「カーボン材は脆く機械的強度が低いため,カーボンからなる燃料電池用セパレータは,破損し易いものであるために,加工コストが高くなるとともに量産が困難であると認識されていたといえる。 そして,引用発明のセパレータは,厚さ0.3mm程度の金属材料を使用し,それに対して射出成形を施すことを前提とし,その条件も「300kgf/cm^(2)」といった高圧で射出材料が金型内に射出されるものであること, 他方,カーボンからなる燃料電池用セパレータは,破損し易いものであると認識されていたことからすれば,当業者にとって,カーボン材からなる「カーボングラファイト」を射出成形装置に適用した場合には,カーボン材が有する機械的な脆弱性によって破損するおそれが大きいと予測されていたものと解される。 したがって,引用発明の射出成形による成形一体化工程において,金属製セパレータに代えてカーボングラファイト製セパレータを射出成形装置に適用することには,技術的な阻害要因があったというべきである。」 (2) 「審決は,前記のとおり,本件訂正発明1の「カーボングラファイト」には樹脂を含むような割れにくいものまで包含することから,そのようなカーボングラファイトに対して射出成形が不可能であるとする認識があったとは認められないと判断している。 しかし,前記認定のとおりカーボン材は脆弱でカーボンからなるセパレータは破損しやすいものであり,たとえ樹脂含有セパレータの方が破損しにくいといえても,セパレータ材として樹脂含有のものが金属製のものと同程度の機械的な強靱性を有する,あるいは,そのような素材を射出成形に適用し得るものと,当業者が認識していたことを認定するに足りる証拠はない。よって,審決のこの点の判断を是認することはできない。 また,審決は,カーボングラファイトからなるセパレータが損傷しやすいとしても,成形一体化する方法として圧力をかける射出成形などのインサート成形以外の周知慣用の成形一体化法である「スクリーン印刷」による方法によってゴム溶液を塗布して一体化することは,当業者であれば容易に想到することができたといえると判断している。 しかし,引用発明は金属薄板をインサートして射出成形することを前提としているところ,前記認定判断のとおり,引用発明においてセパレータ材を金属からカーボングラファイトに置換することが容易でない以上,たとえゴム溶液の塗布方法としてスクリーン印刷が周知であるとしても,それに加えて射出成形をスクリーン印刷に置換することも容易に想到し得たということはできない。すなわち,引用発明において,セパレータ材である金属をカーボングラファイトに置換し,同時に射出成形をスクリーン印刷に置換することが容易に想到し得たということはできない。よって,審決のこの点の判断を是認することはできない。」(「3 容易想到性の判断について」を参照) そして、当審の審理は上記判決に拘束されるものである。 そこで、上記判決の判示内容に従い、以下、上記相違点aに関する容易想到性を判断する。 本件訂正発明1の「セパレータ」の材料である「カーボングラファイト」が「グラファイト(黒鉛)」のみからなるものであるのか、グラファイトと樹脂との混合物であるのか明らかではない。本件訂正明細書の発明の詳細な説明には具体的な記載もない。発明の詳細な説明にその材料の具体例も記載されていないことからすれば、本件訂正発明1の「カーボングラファイト」は、燃料電池のセパレータ材として本件出願当時に燃料電池用セパレータとして周知慣用されていた「グラファイト(黒鉛)」のみからなるもの又は「グラファイト」と「樹脂」の混合物からなるものであると認められる。なお、後者は、前者より割れにくいことが知られている。 他方、甲1発明のセパレータは金属製であるが、燃料電池のセパレータとして金属製のものも「カーボングラファイト」製のものも周知慣用のものであって、いずれの材料のものであっても電解質膜との間のガスの遺漏を防止する必要があるものであり、肉厚が薄く柔軟なシールをシール材として組み入れようとするときに、変形や位置ずれが生じる等の作業性の問題が生じることも同じである。 しかし、上記判示内容に従えば、セパレータとしてカーボングラファイト製のものが周知慣用であり、作業性に関する課題が「金属製」のものと共通であるとしても、カーボングラファイトが射出成形に耐え得る機械的強靱性を有するとはいえないから、甲1発明が射出成形手段を前提とするものである以上、甲1発明におけるセパレータをカーボングラファイトに代えることには、上記のとおり阻害要因があったというべきである。 したがって、相違点aに係る本件訂正発明1の特定事項は、甲1発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。 よって、相違点bについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は、甲1発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。 (3) 本件訂正発明2について (3-1) 対比 本件訂正発明2と甲1発明とを対比すると、上記(2-2)の相違点a、bに加えて、次の点で文言上相違し、その余の点は上記(2-1)と同様に一致している。 c.ゴム薄膜を、本件訂正発明2はセパレータの「周縁部表面」に「額縁状」に形成するのに対し、甲1発明はセパレータの「周縁部表面」に形成する点(以下、「相違点c」という。) (3-2) 判断 上記判示内容に従えば、本件訂正発明2と甲1発明は、上記相違点aで相違するから、相違点b、cについて判断するまでもなく、本件訂正発明2は、甲1発明及び周知の事項に基づいて当業者が容易に想到することができたものではない。 なお、請求人は、上記上申書において、甲16、17号証からカーボン系のセパレータに液状シリコーンゴムを射出成形し、セパレータに一体的にゴムパッキンを形成する技術は、本願出願以前に検討されていたなどと主張する。 この主張に対して、上記判決は、以下のとおり判示している。なお、「乙5,6」は、「甲16号証、甲17号証」を指す。 「乙5,6はいずれも本件特許の出願日の後に公開されたものであり,同各証拠の記載内容によっては,本件各訂正発明の容易想到性の判断,すなわち前記阻害要因があるとする判断を覆すに足りる証拠となるものとはいえない。また,被告の実施が本願出願以前から実施していたとしても,これをもって上記判断を左右するものではない。」(「3 容易想到性の判断について」を参照) したがって、請求人の上記主張は採用できない。 第7 むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 燃料電池用シール材の形成方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成することを特徴とする燃料電池用シール材の形成方法。 【請求項2】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を額縁状に形成した燃料電池用シール材の形成方法。 【請求項3】高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記ゴム薄膜形成工程において、セパレータの周縁部表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成し、前記ゴム薄膜架橋工程において、ゴム薄膜を放射線架橋により架橋した燃料電池用シール材の形成方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、燃料電池特に固体高分子型燃料電池用のシール材形成方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 固体高分子型燃料電池は、イオン導電性を有するイオン交換樹脂等の膜を高分子電解質膜として用い、この高分子電解質膜を挟んでその両側にカソード電極(正極)とアノード電極(負極)の両電極を配置し、例えば負極側に水素ガス等の燃料ガスを、一方正極側には酸素ガス又は空気等の酸化ガスを供給して電気化学反応を起こさせることにより、燃料ガスのもつ化学エネルギーを電気量に変換して電気を発生させるものである。 【0003】 このような固体高分子型燃料電池は単セルを複数積層して構成されるが、隣接する単セル間には、電極との間で燃料ガス流路および酸化ガス流路を形成しかつ燃料ガスと酸化ガスを仕切るセパレータが設けられている。そして、電極とセパレータ間は、燃料ガスや酸化ガスが高分子電解質膜の周縁部から漏出しないように気密にガスシールしなければならず、通常、圧縮成形、射出成形あるいはシートの打ち抜き等により成形された薄肉のゴムパッキンを燃料電池の組立て時に介在させる作業が行われている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】 上記のゴムパッキンは、燃料ガスおよび酸化ガスに対するガスシールであり、そのシールは長期間に亘り厳重に保持する必要があり、当該ゴムパッキンとしては、圧縮永久歪、耐熱性、電気絶縁性等の物性が優れたものが要求されている。また、上記のゴムパッキンは極めて薄いフィルム状の薄膜体であり、圧縮成形、射出成形等により成形した場合には、厚みにばらつきがあり高精度のものが得られないほか、薄肉で柔軟なゴムパッキンを電極とセパレータ間の所定の位置に組み込む作業が困難であり、組み付け時に変形や位置ずれが生じて確実なシール性を確保できない問題点があった。 【0005】 本発明は、上記問題点を解決するものであり、ゴムパッキンを組み込む作業が不要となり、ゴムパッキンが所定位置に確実に配設されてシール性に完全を期すとともに、ゴムパッキンの成分が燃料電池の性能を阻害しない燃料電池用シール材の形成方法の提供を目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】 本発明は、上記目的を達成するために、単セルを組立てる以前にあらかじめゴムシール材を架橋してセパレータに直接成形一体化しておくことを基本的手段とし、請求項1に係る発明は、高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する燃料電池用シール材の形成方法を要旨とするものである。 【0007】 また、請求項2に係る発明は、高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記セパレータとしてカーボングラファイトで形成されたセパレータを用い、前記ゴム薄膜形成工程において、前記セパレータの周縁部表面にスクリーン印刷によりゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を額縁状に形成するものである。すなわち、形成すべきゴム薄膜の平面形状に合致した透孔を有するマスクをセパレータの表面に被覆したうえ、例えばゴムコンパウンドを溶剤により溶解させてなるゴム溶液を前記マスク上から複数回塗布し、前記透孔を通じて所定の厚さのゴム薄膜を形成するものである。 【0008】 したがって、本発明では、より小型化が要求されるセパレータを多数重ね合わせて燃料電池を構成する際に、ゴムパッキンを組み込む作業が不要になる。 【0009】 また、請求項3に係る発明は、高分子電解質膜、カソード電極およびアノード電極からなる燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材の形成方法であって、セパレータの所定位置表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成する工程、未架橋のゴム薄膜を架橋することによりセパレータに成形一体化させる工程、架橋ゴム薄膜が成形一体化されたセパレータをカソード電極およびアノード電極に当接し単セルを組立てることにより、高分子電解質膜の周縁部をシールする工程、を備えており、前記ゴム薄膜形成工程において、セパレータの周縁部表面にゴム溶液を塗布して未架橋のゴム薄膜を形成し、前記ゴム薄膜架橋工程において、ゴム薄膜を放射線架橋により架橋するものである。すなわち、所定の厚さのゴム薄膜を形成した後、溶剤を揮発させてから放射線の照射により架橋処理を施してゴム薄膜をセパレータに成形一体化するもので、加熱プレスすることなくゴムパッキンを架橋成形するので、カーボングラファイト等で形成されたセパレータに何ら損傷を加えることなくその品質を劣化させる虞がない。さらに、前記ゴム薄膜を放射線架橋により成形することから、架橋の際にはゴム分子鎖間が直接C?C結合し、ゴム薄膜に硫黄や過酸化物等の架橋剤や架橋助剤を配合する必要がなく、ゴム材料から燃料電池の性能を阻害する陽イオン不純物(例えば酸化亜鉛や酸化マグネシウム等の金属酸化物が溶出することがない。なお、放射線架橋としては、電子線やγ線等のような高エネルギーの活性線による架橋が好ましい。 【0010】 さらに、本発明では、ゴムパッキンの補強用カーボンブラックとして、前記ゴム薄膜にサーマルブラックを配合することができる。このサーマルブラックとは、サーマル(熱分解)法、すなわち燃料を燃焼させて熱分解温度以上に加熱した炉内に天然ガスを導入し、天然ガスの熱分解によりカーボンブラックを生産したもので、他のオイルファーネスブラックやアセチレンブラック等に比較して、大粒径で低ストラクチャーの比表面積が非常に小さいカーボンブラックであり、電気絶縁性能に優れるとともに、完全燃焼法のため灰分や硫黄等の不純物含有量が極端に少ない特長を有し、その窒素吸着比表面積は9.0?9.5m/g、DBP吸油量は34?40cm^(3)/100g、平均粒子径は240?310nmの範囲にあるものである。したがって、このサーマルブラックが配合されたゴムパッキンは、燃料電池の発電に悪影響を及ぼす不純物をほとんど含有せず、燃料電池用として好適に使用できる。 【0011】 セパレータに成形一体化されるゴムパッキンのゴム基材としては、天然ゴム(NR),シリコーンゴム(Q),エチレンプロピレンゴム(EPM),エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM),アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR),クロロプレンゴム(CR),アクリルゴム(ACM),フッ素ゴム(FKM)等の任意のゴムまたはこれらの混合物により形成されるが、好ましくは優れたクッション性を有するEPMやEPDMが選択される。なお、前記ゴム基材には必要に応じて可塑剤、その他の一般配合剤を添加してもよいが、燃料電池の発電に悪影響を及ぼさない成分を含むものを選択するのが好ましい。 【0012】 【発明の実施の形態】 以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1は、固体高分子型燃料電池を構成する単セル1の概略縦断面図であり、通常燃料電池はこの単セル1を複数積層した積層体(図示せず)として構成されている。図1において、単セル1は、高分子電解質膜2とこの高分子電解質膜2を挟んで両側に配設されるカソード電極3およびアノード電極4とからなる燃料電池本体と、カソード電極3およびアノード電極4にそれぞれ当接するように設けられたセパレータ5,6とにより構成されている。また、カソード電極側セパレータ5の電極3側には酸化ガス供給用の溝7が設けられ、アノード電極側セパレータ6の電極4側には燃料ガス供給用の溝8が設けられ、溝7は図示しない酸化ガス供給管に、溝8は図示しない燃料ガス供給管にそれぞれ連通している。上記単セル1には、高分子電解質膜2,カソード電極3およびアノード電極4からなる燃料電池本体の周囲に、燃料ガスおよび酸化ガスの漏洩を防止するとともに、カソード電極側セパレータ5とアノード電極側セパレータ6との間の絶縁を確保する額縁状のゴムパッキン9,10をセパレータ5,6との間に介在させている。 【0013】 本発明においては、上記ゴムパッキン9,10が、あらかじめセパレータ5,6の周縁部表面に直接成形されたうえ、架橋工程で一体化されたものである。すなわち、ゴムパッキン9,10は、図2および図3に示すように、セパレータ5(6)の表面に額縁状の透孔12を有するマスク11を装填したうえで、マスク上からゴムコンパウンドを溶剤により溶解させたゴム溶液を塗布するスクリーン印刷を所定の回数行い、透孔12を通じてその形状に合致した未架橋のゴム薄膜13を形成し、乾燥して上記溶剤を揮発させてから前記ゴム薄膜13を加熱加圧することなく電子線照射により架橋処理を行い、セパレータ5の周縁部に額縁状のゴム薄膜13(ゴムパッキン9)が架橋して一体に形成された状態を示すものである。このように、あらかじめゴムパッキンが成形一体化されたセパレータを用いて前記単セルが構成され、組立作業の容易な固体高分子型燃料電池が構成されている。なお、ゴム溶液として液状シリコーンゴムのような液状ゴムを使用する場合には、溶剤で溶解することなく塗布することができる。 【0014】 【実施例】 以下、実施例により本発明を詳述する。原料ゴムとして市販のEPDM100重量部に対し、補強剤としてサーマルブラック(キャンカーブ社製、MTカーボンN990ウルトラピュア)40重量部を添加配合し、ミキシングロールで混練してなる未加硫ゴムを約1cm角程度に細片化し、得られた細片をトルエンと共に真空脱泡装置付き攪拌機に投入し、大気圧下で10時間攪拌し溶解後、真空脱泡装置を駆動し真空化で更に15分間攪拌脱泡した。次いで、上記の溶解脱泡したEPDMゴム溶液をカーボングラファイト製セパレータの所定表面にスクリーン印刷により塗布した後、熱風乾燥機(80℃)にて5分間乾燥させて溶剤を揮発させた。この塗布および乾燥の処理を繰り返し7回行い、セパレータ周縁部表面に厚み300μmの未架橋のゴム薄膜を形成した。その後、電子線照射装置に導入しセパレータ上のゴム薄膜を窒素雰囲気中において照射線量15?80Mradの電子線を照射して架橋することにより、ゴムパッキンが直接成形され接着一体化された燃料電池用セパレータを得た。 【0015】 なお、ゴムパッキンの耐熱性や強度物性を考慮して、放射線照射による架橋は、その照射方法や照射条件を最適化できるほか、ゴムの完全架橋に限らず、プレ架橋として使用し加熱処理やマイクロ波によるポスト架橋をすることができる。 【0016】 また、前記実施例では、セパレータを備える燃料電池として固体高分子型燃料電池としたが、使用環境に耐えるならば他種の燃料電池にも適用することができる。 【0017】 【発明の効果】 本発明に係るシール材形成方法によれば、燃料電池本体とセパレータとの間に介在させるシール材を、あらかじめセパレータの所定位置表面に成形一体化させたゴムパッキンで構成したので、ゴムパッキンを組み込む作業が不要になり、ゴムパッキンの変形や位置ずれを生じることなく、燃料電池本体とセパレータ間におけるガスシールを容易かつ確実に行うことができる。また、ゴムパッキンを放射線架橋する場合には、セパレータを損傷する虞がなくさらにはゴムパッキンからの不純物の溶出を抑制でき燃料電池の性能を低下させることがない。 【図面の簡単な説明】 【図1】固体高分子型燃料電池を構成する単セルの概略縦断面図である。 【図2】ゴムパッキンの成形工程の一部を示す図である。 【図3】セパレータにゴムパッキンが一体成形されたを示す図である。 【符号の説明】 1 単セル 2 高分子電解質膜 3 カソード電極 4 アノード電極 5 カソード電極側セパレータ 6 アノード電極側セパレータ 7,8 溝 9,10 ゴムパッキン 11 マスク 12 透孔 13 ゴム薄膜 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-11-17 |
結審通知日 | 2006-11-22 |
審決日 | 2006-12-05 |
出願番号 | 特願2000-6233(P2000-6233) |
審決分類 |
P
1
123・
55-
YA
(H01M)
P 1 123・ 121- YA (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 寛之 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
守安 太郎 山本 一正 |
登録日 | 2003-08-01 |
登録番号 | 特許第3456935号(P3456935) |
発明の名称 | 燃料電池用シール材の形成方法 |
代理人 | 山田 晃 |
代理人 | 山田 晃 |
代理人 | 鍬田 充生 |
代理人 | 鍬田 充生 |
代理人 | 高塚 一郎 |