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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G02B
管理番号 1217231
審判番号 不服2008-1757  
総通号数 127 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2010-07-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-22 
確定日 2010-05-14 
事件の表示 特願2006- 14160「先端に画像センサを備えた視界器具の可変方向性」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 8月 3日出願公開、特開2006-201796〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年(2006年)1月23日(パリ条約による優先権主張、平成17年(2005年)1月21日、米国)に出願した特願2006-14160号であって、平成19年11月28日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成20年1月22日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、同年11月25日付けで当審において拒絶理由の通知をし、これに対して平成21年2月26日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年9月19日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「視野方向が可変とされた視界器具であって、
先端部と、長手方向軸線と、を有しているシャフトと;
このシャフトの前記先端部に取り付けられたセンサであるとともに、前記シャフトの前記長手方向軸線に対して実質的に平行な画像平面を有しているセンサと;
前記シャフトの前記先端部のところに配置された反射部材であるとともに、入射光を受領し、その受領した入射光を、前記センサの前記画像平面上へと案内する反射部材と;
を具備し、
前記反射部材が、前記シャフトの前記長手方向軸線に対して実質的に垂直な回転軸線回りに回転するものとされていることを特徴とする視界器具。」

第3 引用例
1 引用例1
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭49-131144号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。(後述の「2 引用例1に記載された発明の認定」において直接引用した記載に下線を付した。)

「本発明は内視鏡における観察方向を変え得る光学系に関するものである。」(第1ページ左下欄末行?同ページ右下欄第1行)

「本発明は直視から側視又は逆の側視まで順次観察方向を切替え得、かつ常時正像観察を可能とし、かつ切替え操作が簡単に行え、内視窓を有する先端部を傾動しないですむ光学系を提供したものである。
今これを図面に示す実施例によって説明すると、第1図において、1は対物レンズであり、この対物レンズはプリズム2とともに回転する。2は回転軸3の回わりに自由に回転出来るダハプリズム、4は直角固定プリズム、5はリレーレンズで必要ならばレンズ1を除きレンズ5で対物レンズを代用しても良い。この場合プリズム2、4の反射系が大きくなる危険はある。6は画像伝送用光学繊維、7は内視鏡保護管、8は保護管上に設けられた内視用の窓、9はリレーレンズ、10はイメージローテーターで入射及び出射光軸のまわりにプリズム2の反射系と連動して回転する。
11は接眼レンズ系、12は人間の目である。
第2図(1)は直視の場合の2、4の反射系の向き
(2)は直視と側視の間45゜を見る場合の2、4の反射系の向き
(3)は側視の場合の2、4の反射系の向き
で13は直視、側視又その中間での物体を示す。
14、15、16はそれぞれの場合の反射系のみを通過した後の像の左右上下の方向を示す。
今第1図の反射系の状態は直視の状態を示している。今物体Aからの情報は1の対物レンズで平行光となる。これは全体の光学系を小さくする目的でなるべくプリズム2、4の大きさを小さくするために平行光とするのが都合が良いがスペースが許せばこの限りではない。
次に今物体Aからの情報は直視の方向に向いた直角プリズム2で反射の後、直角プリズム4に入り、又プリズム4の反射面で反射しレンズ5を経てフアイバー6の端面に結像する。」(第2ページ左上欄第16行?同ページ左下欄第10行)

第1図から、保護管7が先端部と長手方向軸線を有すること、保護管7の先端部にプリズム2が設けられていること、及び、回転軸3は、保護管7の長手方向軸線に対して実質的に垂直であることが見て取れる。

2 引用例1に記載された発明の認定
上記「1 引用例1」の記載事項から、引用例1には、内視鏡に関し、
「観察方向を変え得る光学系を有する内視鏡であって、
先端部と長手方向軸線を有する保護管7を具備し、
保護管7の先端部にプリズム2が設けられており、
物体Aからの情報はプリズム2で反射の後、プリズム4に入り、又プリズム4の反射面で反射しレンズ5を経てフアイバー6の端面に結像し、
対物レンズはプリズム2とともに回転し、プリズム2は回転軸3の回わりに自由に回転出来、
回転軸3は、保護管7の長手方向軸線に対して実質的に垂直である内視鏡。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

3 引用例2
当審で通知した拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開昭60-196719号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。

「上記モータ16の回転軸16Aと直交する方向に凹部を形成して円筒状のレンズ枠17に固定された対物レンズ系18が収容され、この対物レンズ系18の結像位置に固体撮像素子19を配設して対物レンズ系18の光軸前方(つまり回転軸16Aと直交する側方)の対象物の像を撮像する撮像手段が収納されている」(第2ページ右下欄第12?18行)

第4 対比
1 対比
引用発明と本願発明を対比する。

引用発明の「観察方向を変え得る光学系を有する内視鏡」が、本願発明の「視野方向が可変とされた視界器具」に相当する。

引用発明の「先端部と長手方向軸線を有する保護管7」が、本願発明の「先端部と、長手方向軸線と、を有しているシャフト」に相当する。

引用発明の「プリズム2」は、物体Aからの情報を反射するものであることから、引用発明の「保護管7の先端部に」設けられた「プリズム2」が、本願発明の「シャフトの前記先端部のところに配置された反射部材」に相当する。

引用発明の「物体Aからの情報はプリズム2で反射の後、プリズム4に入り、又プリズム4の反射面で反射しレンズ5を経てフアイバー6の端面に結像」することと、本願発明の「反射部材」が「入射光を受領し、その受領した入射光を、前記センサの前記画像平面上へと案内する」こととは、「反射部材が入射光を受領し、その受領した入射光を、結像面上へと案内する」ことで一致する。

引用発明の「プリズム2は回転軸3の回わりに自由に回転出来、回転軸3は、保護管7の長手方向軸線に対して実質的に垂直である」ことは、本願発明の「前記反射部材が、前記シャフトの前記長手方向軸線に対して実質的に垂直な回転軸線回りに回転する」ことに相当する。

2 一致点
したがって、本願発明と引用発明は、
「視野方向が可変とされた視界器具であって、
先端部と、長手方向軸線と、を有しているシャフトと;
前記シャフトの前記先端部のところに配置された反射部材であるとともに、入射光を受領し、その受領した入射光を、結像面上へと案内する反射部材と;
を具備し、
前記反射部材が、前記シャフトの前記長手方向軸線に対して実質的に垂直な回転軸線回りに回転する視界器具。」の発明である点で一致し、以下の点で相違する。

3 相違点
本願発明1は、「シャフトの先端部に取り付けられたセンサであるとともに、シャフトの長手方向軸線に対して実質的に平行な画像平面を有しているセンサ」を備え、かつ、「入射光が上記センサの画像平面上に案内される」のに対して、引用発明1には、その限定がない点。

第5 当審の判断
引用例2の上記記載事項及び第2図の記載から、引用例2には、
「シャフトの先端部に取り付けられたセンサであるとともに、シャフトの長手方向軸線に対して実質的に平行な画像平面を有しているセンサを備え、かつ、入射光が上記センサの画像平面上に案内される」ものが記載されているといえる。
そして、引用発明と引用例2に記載された発明とは、内視鏡先端部に設けた回動機構によって視野方向が可変とされた内視鏡である点で共通しており、また、取得した画像の伝達手段として、光学系を用いる内視鏡、先端部に備えた撮像デバイス(センサ)を用いる内視鏡はいずれも周知であり、相互に技術を適用し得るものであるといえるから、引用発明に、引用例2に記載の「シャフトの先端部に取り付けられたセンサであるとともに、シャフトの長手方向軸線に対して実質的に平行な画像平面を有しているセンサを備え、かつ、入射光が上記センサの画像平面上に案内される」ものを採用し、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項を得ることは当業者が容易に想到し得たことである。
なお、上記の採用に際し、引用発明のプリズム4(引用例1に記載の「直角固定プリズム」)を除去する必要があるが、上記のプリズム4は、プリズム2で反射した入射光(情報)を再度反射して長手方向へ案内する必要に応じて設置したものであるから、その必要がなくなり、むしろ、プリズム2で反射した入射光をそのまま通過させた方が良い場合に、引用発明からプリズム4を除去することに格別の困難性は認められない。また、プリズム4を除去することに何らの阻害要因も認められない。

そして、本願発明によってもたらされる効果は、上記引用例1及び2に記載された発明から、当業者が予測し得る程度のものである。

したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。

第6 むすび
以上より、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2009-03-19 
結審通知日 2009-03-24 
審決日 2009-04-08 
出願番号 特願2006-14160(P2006-14160)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 原田 英信  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森林 克郎
安田 明央
発明の名称 先端に画像センサを備えた視界器具の可変方向性  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  

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