• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  A61K
審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A61K
管理番号 1342801
審判番号 無効2016-800126  
総通号数 225 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2018-09-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-10-31 
確定日 2018-08-13 
事件の表示 上記当事者間の特許第5339723号発明「経口投与用組成物のマーキング方法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第5339723号に係る特許出願は、平成18年5月24日(優先権主張 平成17年5月26日)を国際出願日とする国際特許出願に係るものであって、平成25年8月16日に特許権の設定の登録がされたものであり、その後の主な手続の経緯の概要は以下のとおりである。

平成28年10月31日 特許無効審判請求
平成29年 1月16日 答弁書提出
同年 2月28日付け 審理事項の通知(当審)
同年 3月30日 口頭審理陳述要領書提出(請求人)
同日 口頭審理陳述要領書提出(被請求人)
同年 4月13日 第1回口頭審理

2 本件発明
本件特許第5339723号の請求項1?22に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1?22に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本件特許発明1?22」という。)である。

「【請求項1】
経口投与用組成物へのマーキング方法であって、
変色誘起酸化物を経口投与用組成物に分散させる工程と、
前記変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させるように、波長が200nm?1100nmであり、平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、前記経口投与用組成物の表面に走査させる工程と、
を含み、
前記変色誘起酸化物が、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで実行される、マーキング方法。
【請求項2】
前記走査工程が、単位面積当たりのエネルギーが、390?21000mJ/cm^(2)で実行される、請求項1に記載のマーキング方法。
【請求項3】
前記レーザー光が、固体レーザーの波長、前記固体レーザーからの第二高調波の波長、第三高調波の波長及び第四高調波の波長から選択される少なくとも1種の光である、請求項1又は2に記載のマーキング方法。
【請求項4】
前記走査工程においてガルバノミラーを用いる、請求項1ないし3のうち何れか一項に記載のマーキング方法。
【請求項5】
前記経口投与用組成物が、10?500Nの硬度を有する、請求項1ないし4のうち何れか一項の記載のマーキング方法。
【請求項6】
前記経口投与用組成物が、成型物である、請求項1ないし5のうち何れか一項に記載のマーキング方法
【請求項7】
前記経口投与用組成物が、被覆層を有する、請求項1ないし5のうち何れか一項に記載のマーキング方法。
【請求項8】
前記被覆層を有する組成物が、フィルムコート錠である、請求項7に記載のマーキング方法。
【請求項9】
前記酸化チタンの配合量が、前記成型物又は前記被覆層100質量部に対して、0.01質量部?20質量部である、請求項6ないし8のうち何れか一項に記載のマーキング方法。
【請求項10】
前記黄色三二酸化鉄又は前記三二酸化鉄の配合量が、前記成型物又は前記被覆層100質量部に対して、0.001質量部?5質量部である、請求項6ないし8のうち何れか一項に記載のマーキング方法。
【請求項11】
マークを施された経口投与用組成物の製造方法であって、
変色誘起酸化物を経口投与用組成物に分散させる工程と、
前記経口投与用組成物の表面に、前記変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させるように、波長が200nm?1100nmであり、平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、前記経口投与用組成物の表面に走査させる工程と、
を含み、
前記変色誘起酸化物が、酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで実行される、製造方法。
【請求項12】
前記走査工程が、単位面積当たりのエネルギーが、390?21000mJ/cm^(2)で実行される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
前記レーザー光が、固体レーザーの波長、前記固体レーザーからの第二高調波の波長、第三高調波の波長及び第四高調波の波長から選択される少なくとも1種の光である、請求項11又は12に記載の製造方法。
【請求項14】
前記走査工程においてガルバノミラーを用いる、請求項11ないし13のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記経口投与用組成物が、10?500Nの硬度を有する、請求項11ないし14のうち何れか一項の記載の製造方法。
【請求項16】
前記経口投与用組成物が、成型物である、請求項11ないし15のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記経口投与用組成物が、被覆層を有する、請求項11ないし15のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記被覆層を有する組成物が、フィルムコート錠である、請求項17に記載の製造方法。
【請求項19】
前記酸化チタンの配合量が、前記成型物又は前記被覆層100質量部に対して、0.01質量部?20質量部である、請求項16ないし18のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項20】
前記黄色三二酸化鉄又は前記三二酸化鉄の配合量が、前記成型物又は前記被覆層100質量部に対して、0.001質量部?5質量部である、請求項16ないし18のうち何れか一項に記載の製造方法。
【請求項21】
請求項11ないし20の何れか一項に記載の製造方法により製造された、マークが施された経口投与用組成物。
【請求項22】
前記経口投与用組成物が、錠剤又はカプセル剤である、請求項21に記載の経口投与用組成物。」

3 請求人の主張の概要及び証拠方法
(1)請求の趣旨
特許第5339723号の請求項1?22に係る発明についての特許を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

(2)無効理由に係る主張
特許を無効とする理由は、以下の無効理由1?3であり、証拠方法として書証を申出、甲第1号証ないし甲第15号証(枝番の甲第7-1号証及び甲第7-2号証、並びに甲第10-1号証を含む。)の文書を提出する。

無効理由1:本件特許の請求項1?22に係る発明は、甲第1号証を主引用例、甲第2号証ないし甲第3号証を副引用例とし、甲第4号証ないし甲第10-1号証を参酌しつつ、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1?22に係る発明の特許は、同法第123条第1項第2号の規定に該当し、無効にすべきである。
無効理由2:本件特許の請求項1?22に係る発明は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものであり、請求項1?22に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効にすべきである。
無効理由3:本件特許の請求項1?22に係る発明は、不明確であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず特許を受けることができないものであり、請求項1?22に係る発明の特許は、同法第123条第1項第4号の規定に該当し、無効にすべきである。

(3)証拠方法
甲第1号証 :国際公開第02/068205号
甲第2号証 :特開平10-16390号公報
甲第3号証 :米国特許第5,560,845号明細書
甲第4号証 :米国特許第6,429,889号明細書
甲第5号証 :米国特許第6,836,284号明細書
甲第6号証 :特開2003-94181号公報
甲第7号証 :Alltec Allprint CS Series
CO2 laser markerのスペックを示す
ウェブページの写し
http://wtexpo.com/member/200510/exclusivemaster/
p8682.php
甲第7-1号証 :WTExpo Sdn.Bhd.のウェブページの写し
http://wtexpo.com/aboutus.php
甲第7-2号証 :PHOTONICS MEDIAのウェブページの写し
http://www.photonics.com/Product.aspx?PID=5&
VID=14&IID=59&PRID=6575
甲第8号証 :特開平8-141758号公報
甲第9号証 :特開2002-47174号公報
甲第10号証 :「ナノサイズ酸化チタンについて」と題した
日本酸化チタン工業会の講演資料のウェブページの写し
http://www.meti.go.jp/committee/materials2/
downloadfiles/g81127c08j.pdf
甲第10-1号証:日本酸化チタン工業会のホームページの写し
http://www.sankatitan.org/newpage10.html
甲第11号証 :特許・実用新案審査基準 第III部第2章第2節
進歩性 第4?9頁
甲第12号証 :食品衛生法第10条に基づく
食品衛生法施行規則別表第1の指定添加物リスト
(厚生労働省の当該ウェブサイトの写し)
甲第13号証 :欧州特許出願公開第329884号明細書
甲第14号証 :特許・実用新案審査ハンドブック 第III部第2章
3219
甲第15号証 :岩波理化学辞典 第4版第3刷、株式会社岩波書店、
1989年2月24日、第307頁 「凝集」の項

4 被請求人の主張及び証拠方法
(1)答弁の趣旨及び無効主張に対する反論
本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。
請求人が主張する無効理由1?3は、いずれも理由がない。
また、証拠方法として書証を申出、乙第1号証ないし乙第3号証の文書を提出する。

(2)証拠方法
乙第1号証:広辞苑 第5版第1刷、株式会社岩波書店、
1998年11月11日、第694頁 「凝集」の項
乙第2号証:特願2012-62645号における
平成26年5月14日提出の意見書
乙第3号証:乙第2号証における写真1?6の写し

5 証拠方法の記載事項
各証拠方法には、以下の事項が記載されている。なお、甲第1号証、甲第3号証ないし甲第5号証、甲第7号証、甲第7-1号証、甲第7-2号証、及び甲第13号証は英文であるところ、以下の摘示は、これら証拠に添付された訳文による。なお、甲第3号証の訳については、一部、審理事項通知書に記載したとおり、当合議体において職権で訳文を提示する。

(1)甲第1号証
ア「本発明は、レーザエネルギを加えた際に色が変化する特定の物質の利用、及びこの物質に食用材料を含有させることで飲食を意図する材料に対するマーキングを可能にしたことに基づく。
本発明は、対象物をマーキングするマーキング方法において、官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の反応物を生成する物質を用い、レーザビームを前記対象物のマーキング領域に照射する、ことを特徴とする。
使用される成分及び反応物の状態に応じて、それらを生理的に受容可能なものとすることができる。このことが意味するのは、本発明は食品、及び錠剤や丸薬等の薬品のマーキングに使用できるということである。」(1頁25行?2頁6行)

イ「本発明の一実施形態において、添加剤はヒドロキシ化合物及び脱水剤である。後者の典型例には、蔗糖、澱粉、改質澱粉、セルロース、改質セルロース等の糖類からのOH基(本発明においては官能基である)の脱離に用いることができる金属塩があるが、この金属塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、酸化鉄/塩、有機金属等が適切である。よって、例えば、レーザエネルギを加えることにより加熱すると、MgOやFeOの存在下で蔗糖は炭化する。金属塩の存在下で脱水(水の脱離)により色の変化を生じる他の物質の例には以下のものがある。
ヒドロキシプロピルセルロース
メチルヒドロキシプロピルセルロース
カルボキシメチルセルロースナトリウム
ポリビニルアルコール
本目的に適した金属塩には以下のものがある。
MgCl_(2)
Mg(OH)_(2)
CaO
FeO
Fe_(2)O_(3)
CaSiO_(3)
酢酸亜鉛
ZnO
アルミノケイ酸塩」(2頁27行?3頁18行)

ウ「上述のように、1種類以上の添加剤は紫外線や赤外線の放射に反応するものとすることができ、色の変化を生じさせるものであればいかなる適切な物質も使用可能である。色の変化は、レーザエネルギを吸収した結果またはレーザエネルギが熱エネルギに変換された結果、化学的ないし物理的変化を伴う物質によるものとすることができる。従って、例えば、ポリビニルアルコールは、p-トルエンスルホン酸等の脱水剤がコーティング材に含まれている場合、エネルギの付加が接合や色の変化を生じさせるコーティング材として公知である。更に、適切な物質の例としては、カラメル化可能な炭水化物や、エチルセルロースと水酸化カルシウムとの組合せがある。添加剤または既存の成分は放射を強力に吸収することが好ましい。

マーキングの対象物は、マーキング可能な追加成分を含んで作製可能である。好適な一実施形態において、上記成分は基材をコーティングするために作製、使用される。基材への塗布のため、本発明で用いられる1種類以上の物質は水性または非水性のシステムにおいて、溶液または分散系として作製可能である。丸薬へのコーティングに関し、所定の基材に対して透明なコーティングをするためにはコーティングの透明度が検討事項でないことが通常であり、溶液の成分を使用することが好ましい。実現可能なマーキングの明瞭性を判定可能なので、必要に応じてコーティングを2度以上行ってもよい。
本発明で用いられる成分の量は、通常の知識に基づき用途に応じて容易に選択できる。例えば、コーティング組成物として、各成分を重量比または容量比で0.1?20%含ませてもよい。

一般に、必要なエネルギはレーザビームであろう。例えば、赤外線印字システム用の印字手段は、例えば10,600nm付近で動作する低出力CO_(2)レーザを備える。レーザはドットマトリックスモードや連続波モードで動作可能である。後者のモードでは、優れた印字品質を実現可能である。レーザが低出力のため、高い信頼性を有し、メンテナンスフリーに近い動作が可能である。このシステムを連続波モードで動作させることができ、200m/分のラインスピードまでなら印字可能である。これ以上速くするためにはドットマトリックスが適している。」(4頁18行?5頁32行)

エ「実施例1から12
以下の表には材料等が示される。実施例9?12の材料は食用組成物に用いるものとして特に適している。
各事例では、ラッカーを混合し、コーティングし、乾燥させた後、ビーム径0.3mmのCO_(2)レーザを1000mm/秒の走査スピードで用いてマーキングした。…
実施例13
100gのカルボキシメチルセルロースナトリウムを2000gの水に対して攪拌しながら加えた。添加終了後もポリマーの分散が完了するまで攪拌を継続した。
100gのMgCl_(2)・6H_(2)Oをポリマー溶液に加えた。添加の後、混合物を10分ほど攪拌し、コーティング溶液を得た。
2kgの錠剤をコーティングパンの中に入れた。錠剤を入れた状態でコーティングパンを所定の速度で回転させ、その後、ホットエアドライヤを用いて錠剤を50℃まで加熱した。
第1のコーティング層として、10mlのコーティング溶液を加えた後、コーティングパンを所定の速度及び周囲温度で10?15分ほど回転させた。パンを所定速度で回転させながら、コーティングした錠剤をホットエアドライヤにより約50℃まで加熱した。コーティングした錠剤を200g得た。2種類以上の10mlのコーティング溶液を用いて、コーティング工程を2度繰り返した。
10W Alltec CS smart炭酸ガスレーザを用いて、コーティングした錠剤のレーザマーキングを調査した。錠剤のマーキングに用いたパラメータは以下のとおりである。
┌────────┬──────┐
│ レーザ周波数 │ 20000Hz │
├────────┼──────┤
│ 出力 │ 7ワット │
├────────┼──────┤
│ 走査速度 │ 500 mm/秒 │
├────────┼──────┤
│ 線幅 │ 50μm │
├────────┼──────┤
│ レンズ │ 200 mm │
└────────┴──────┘
ほどよいダークグレー/グリーンの像を得た。」(6頁4行?8頁26行)

オ「1. 対象物をマーキングするマーキング方法であって、官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の反応物を生成する物質を用い、レーザビームを前記対象物のマーキング領域に照射する、ことを特徴とするマーキング方法。
2.請求項1に記載のマーキング方法において、前記物質はポリマーであり、金属塩または酸の存在下で脱エーテル化、脱ハロゲン化、脱ハロゲン化水素化、脱アセチル化を起こすことを特徴とするマーキング方法。
3.請求項2に記載のマーキング方法において、前記物質は脱ハロゲン化を起こすことを特徴とするマーキング方法。
4.請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のマーキング方法において、前記物質はビニルポリマーであることを特徴とするマーキング方法。
5.請求項4に記載のマーキング方法において、前記ビニルポリマーは、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ビニルエステル、塩化/酢酸ビニル共重合体、塩化/マレイン酸ビニル共重合体のいずれかであることを特徴とするマーキング方法。
6.請求項1ないし請求項5のいずれかに記載のマーキング方法において、前記金属化合物は塩、酸化物、ケイ酸塩のいずれかであることを特徴とするマーキング方法。
7.請求項1に記載のマーキング方法において、前記物質はポリヒドロキシ化合物であり、前記脱離反応は酸または金属塩の存在下で起こることを特徴とするマーキング方法。
8.請求項7に記載のマーキング方法において、前記ポリヒドロキシ化合物は炭水化物であることを特徴とするマーキング方法。
9.請求項7に記載のマーキング方法において、前記ポリヒドロキシ化合物はセルロースであることを特徴とするマーキング方法。
10.請求項1ないし請求項9のいずれかに記載のマーキング方法において、前記対象物は薬品または食品であり、前記反応物は生理的に受容可能であることを特徴とするマーキング方法。
11.請求項1ないし請求項10のいずれかに記載のマーキング方法において、前記対象物は、基材と、基材の表面にコーティングされたコーティング材とを備え、前記コーティング材は前記ポリマー物質及び金属化合物を含むことを特徴とするマーキング方法。
12.請求項11に記載のマーキング方法において、前記対象物は錠剤または丸薬であり、前記基材は薬剤を含有することを特徴とするマーキング方法。
13.請求項1ないし請求項12のいずれかに記載のマーキング方法において、前記対象物はフィルム材料によりラップまたは被覆されることを特徴とするマーキング方法。
14.請求項1ないし請求項10のいずれかで規定されたポリマー物質及び金属化合物の溶液または分散系を備えるコーティング組成物。
15.請求項14に記載のコーティング組成物において、前記コーティング組成物は水性であることを特徴とするコーティング組成物。」(特許請求の範囲)

(2)甲第2号証
ア「【請求項1】 紫外線に対し光活性な充填剤を配合したポリアセタール樹脂組成物より成形された成形品もしくは該組成物によって被覆された成形品の表面に、非線形光学結晶を用いて波長を紫外光としたレーザー光を照射してマーキングを行うことを特徴とするレーザーマーキング方法。

【請求項5】 ポリアセタール樹脂組成物が紫外線に対し光活性な充填剤を0.001 ?35重量%含有するものである請求項1?4の何れか1項記載のレーザーマーキング方法。
【請求項6】 紫外線に対し光活性な充填剤が、金属酸化物若しくは金属水酸化物である請求項1?5の何れか1項記載のレーザーマーキング方法。
【請求項7】 紫外線に対し光活性な充填剤が、粒径が0.05?1μm のルチル型二酸化チタンである請求項6記載のレーザーマーキング方法。
【請求項8】 紫外線に対し光活性な充填剤が、粒径が0.05?1μm の酸化第二鉄である請求項6記載のレーザーマーキング方法。
【請求項9】 請求項1?8の何れか1項記載のレーザーマーキング方法によりマーキングされた成形品。」

イ「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、レーザー光を利用してポリアセタール樹脂成形品または該樹脂により被覆された成形品の表面に鮮明な文字、記号等のマークを付与するレーザーマーキング方法およびこれによって良好なマーキングが行われた成形品に関する。」

ウ「【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】…一方、このような熱硬化性インキを用いた印刷の問題点を解決し得るマーキング方法として、レーザー光を照射して熱可塑性樹脂にマーキングを行う方法が幾つか提案されており、…(2) 変色および脱色可能な充填物を添加することによりマーキングを行う方法(例えば、特開昭63-216790 号、特公昭61-11771号、特公昭61-41320号、特開平1-254743号、特開昭61-192737号、特開平1-306285号、特開平4-52190 号公報)、…等が知られている。…(2) の方法は、樹脂に配合した充填物がレーザー照射により変色あるいは脱色することを利用してマーキングするものであり、充填物の種類、添加量、基体樹脂の適切な組合せによっては良好な効果が得られるものと推測される。しかしながら、本発明者が検討したところによれば、ポリアセタール樹脂に対するレーザーマーキングにおいては、それらに開示された技術を単にそのまま適用し、汎用のレーザー、例えば基本波Nd;YAGレーザー等を照射するだけでは、コントラストが鮮明で、マーキング部の凹凸が殆どなく、触感の良好なマーキングを行うことは実質的に困難であることが判明した。特に明色系の下地に黒色系のマーキングを形成することは極めて難しい。又、充填物が限定されるため、着色の自由度が制約され、更に充填物によっては、その毒性をも考慮する必要がある。
【0003】一方、ポリアセタール樹脂に対し黒色のマーキングを得る技術としてポリアセタール樹脂成形品に酸化チタン等の無機系の光活性白色顔料を添加することで、永久的な黒っぽい書き込みをエキシマレーザーによる照射にて得ることが出来ることは公知である(特開平5-247319号公報)。…」

エ「【0005】
【発明の実施の形態】以下、本発明のレーザーマーキング方法を詳細に説明する。…非線形光学結晶を用いたレーザーとしては、第2高調波Nd;YAGレーザー(波長=532nm )、第3高調波Nd;YAGレーザー(波長=355nm )、第4高調波Nd;YAGレーザー(波長=266nm )、第2高調波半導体レーザー(波長=429nm 等)などがある。…従って、使用する紫外光は、波長領域が 260?400nm の範囲にあることが望ましい。黒っぽいマーキングを得るという目的からだけいえば、 260?400nm の範囲のどの紫外光を用いてもかまわない…又、レーザー光1パルス当りのエネルギー密度としては、1?10000mJ/cm^(3) の範囲にあることが好ましい。1mJ/cm^(3)未満であると鮮明なマーキングが得られ難いし、10000mJ/cm^(3) を越えるとポリアセタール自身がレーザーエネルギーを吸収し、物性の低下や、マーキング部に凹凸が発生してしまう場合がある。特に好ましくは5?5000mJ/cm^(3)、最も好ましくは10?2000mJ/cm^(3)の範囲である。
【0006】紫外線に対して光活性な充填剤とは、紫外領域、好ましくは 260?400nm 、特に好ましくは 352?400nm の領域にある紫外線を該充填剤が吸収する事によって、分解、還元、酸化、他物質との反応、結晶構造の変化等何らかの変性が起きる充填剤をいう。中でも金属酸化物及び金属水酸化物が適しており、特に金属酸化物を充填したプラスチック成形品に波長を1/3 とした第3高調波Nd;YAGレーザー光や波長を1/4 とした第4高調波Nd;YAGレーザー光、好ましくは第3高調波Nd;YAGレーザー光を照射することにより、鮮明な黒色系のマーキングを得ることが出来、しかも該マーキング部には非マーキング部に対する凹凸が実質的にないし、ポリアセタール樹脂自身の当波長に対する吸収が少ないため物性の低下も殆どない。中でも金属酸化物であるところのチタン化合物、特に二酸化チタンは白色系の色を呈しており、…また、酸化第二鉄も二酸化チタンと同じ理由に基づき粒子径は0.05?1μm の範囲であることが望ましい。もちろん、紫外線に対して光活性な充填剤は二種類以上を併用しても構わない。かかる充填剤の配合量は、組成物中の0.001 ?35重量%が望ましい。該充填剤の比率が、0.001 重量%未満では所望のマーキングを得ることが困難である。35重量%を越えると機械的物性の低下を避けられない場合がある。しかし例えばチタン酸カリウムの様に充填剤自身がプラスチック成形品の強化材となる場合もあり、充填物が組成物中の35重量%を越える事には特にはこだわらない。」

オ「【0010】
【実施例】以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1?4、比較例1?7
ポリアセタールと紫外線に対し光活性な充填剤を、表1に示す割合で配合し、これを射出成形して50mm×70mmで厚さ3mmの平板を得た。この平板に波長1064nmの基本波Nd;YAGレーザー(可視光)、波長 532nmの第2高調波Nd;YAGレーザー(可視光)、波長 355nmの第3高調波Nd;YAGレーザー(紫外光)、波長 266nmの第4高調波Nd;YAGレーザー(紫外光)、波長 248nmのエキシマレーザー(紫外光)を用いてマーキングを行った。マーキング条件および評価方法は下記の通りである。結果を表1に示す。
〔マーキング条件〕
マーキング方式 : スキャン式
マーキング文字数 : 40文字(数字、アルファベット)
マーキング文字大きさ : 高さ2mmの文字20文字、高さ3mmの文字20文字
マーキング部でのパワー: 1?10W
スキャンスピード : 100mm/sec
バイトサイズ : 30μm
Qスイッチ周波数 : 3kHz
処理時間 : 約3sec
【0011】
【表1】


【0012】表1に示される結果より、以下のことがわかる。実施例1?4の場合、コントラストの高い黒色系の発色マーキングが、マーク部の凹凸が殆どなく達成されている。特に第4高調波Nd;YAGレーザーを用いてマーキングした実施例2よりも第3高調波Nd;YAGレーザーを用いてマーキングしてた実施例1のほうがコントラストが高く、又、マーク部の凹凸が全くといってよいほどない。これに対し、他のレーザー光を用いた場合、コントラスト、マーキングの色、マーク部の凹凸を総合的にみると、何れも対応する実施例よりも劣り、特にマーク部の凹凸の点で本発明の目的に適合しないものであった。」

(3)甲第3号証
ア「欧州特許出願公開第329884号/1989には、強い紫外もしくは可視放射線源、好適にはレーザー源を用いてケーブルのマーキングを行う方法が開示されている。上記方法に従い、TiO_(2)を感光性物質として20重量%以下、好適には5重量%以下の量で含有するPTFE、FEPおよびETFE電気絶縁層を強い放射線に露光させると、結果として、その放射線が入射した所が暗色化する。この入射の模様を調節することにより、文字および数字などの如きマークを生じさせることができる。
このような基質の暗色化は主に放射線とTiO_(2)顔料の間の相互作用によって引き起こされると理解される。…
マークの読み取り性に貢献する重要な特性はマークと背景の間のコントラストである。」(1欄14?45行)

イ「本発明は、TiO_(2)顔料が入っているフルオロポリマー組成物の溶融加工を行うことで製造可能な改良されたレーザーマーキング可能(laser-markable)フルオロポリマー基質を提供する。本発明に従い、TiO_(2)顔料を溶融加工可能フルオロポリマーと一緒に溶融コンパンド化すると、このTiO_(2)顔料は白色外観を与えるが、特徴としてまた凝集物がいくらか存在することを見い出した。このような凝集物は裸眼で見ることができず、溶融加工組成物の断面を高光学倍率で観察すると、そのいくつかは観察可能であるが、大部分は、電子顕微鏡の倍率下でのみ検出可能である。レーザーマーキング用フルオロポリマー基質内に存在する凝集物の集団数が実質的に少なくなるに伴ってマーキング特性が改良されることを見い出した。本発明では、これを、有機シランで被覆したTiO_(2)顔料をフルオロポリマー組成物に入れ、そしてこの組成物を用いて基質を成形することで達成する。」(2欄8?25行)

ウ「二酸化チタン顔料を有機シランで被覆して溶融加工可能フルオロポリマー樹脂基質に組み込むと、この基質上にレーザーマーキング技術で作り出すマークのコントラストが予想外に改良されかつコントラストが均一になることを見い出した。このような改良の機構を確信を持って理解してはいないが、このようなマーキングの改良は該フルオロポリマー組成物を溶融加工した時に存在するTiO_(2)凝集物のレベルが低くなることに伴っていた。このようにTiO_(2)凝集物のレベルが低くなることの証拠を、光学顕微鏡を用いて70X倍率で観察可能な凝集物寸法(この規模で凝集物が実質的に無いこと)および電子顕微鏡でのみ検出可能な凝集物寸法の両方で示す。フルオロポリマー類の色付けに対してTiO_(2)の有機シラン被膜が示す効果は驚くべきことである。これに関する性能が顔料とマトリックスの間の相溶性の問題であるとするならば、ある種のシラン被膜が有する有機炭化水素基が原因でTiO_(2)顔料粒子表面が取得する炭化水素性によってフルオロポリマーとの相溶性が未被覆TiO_(2)に比較していくらか改良されると期待するのは不可能であろう。」(3欄21?42行)

エ「本発明のフルオロポリマー組成物は、溶融加工可能フルオロポリマー樹脂マトリックス中のTiO_(2)凝集物の集団数の低下を示す。このような改良は、薄い断片を光学および電子顕微鏡で分析した時の結論として引き出され、これは、有機シラン被膜を有するTiO_(2)を用いることに起因する。」(7欄7?12行)

オ「実施例11及び対照

実施例11のワイヤーおよび図6(b)に示す対照Bのワイヤーから絶縁体の片を取り外し、断面が出るように切った後、透過電子顕微鏡(TEM)で検査した。11800Xおよび23000X倍率で撮ったTEM顕微鏡写真をQuantimet(商標)Model 970画像分析装置および関連ソフトウエア(Cambridge Instruments)で分析してTiO_(2)の粒子サイズと粒子サイズ分布を測定した。…23000X倍率の顕微鏡写真で検査した結果、実施例11および対照Bの場合の巨大粒子の多くは凝集物であることが分かり、画像分析において、その凝集物は単一の粒子として取り扱われる。このような比較は、TiO_(2)を有機シランで被覆すると光学顕微鏡で観察することができないほど小さい直径を有するTiO_(2)凝集物の集団数が低下することを示している。」(9欄27行?10欄22行)

カ「1.溶融加工可能フルオロポリマー樹脂と二酸化チタン顔料を含有する基質のレーザーマーキング方法であって、ここでの改良が、有機シランを含有する被膜で上記顔料を被覆して上記レーザーマーキングを実施することを含む方法。
2.請求の範囲第1項の方法であって、上記基質がケーブル用ジャケットまたは電気絶縁体である方法。
3.上記フルオロポリマーがテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー、エチレンとテトラフルオロエチレンのコポリマー、エチレンとクロロトリフルオロエチレンのコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、又はフッ化ビニリデンのコポリマーである請求の範囲第1項の方法。

7.上記有機シランがアルキル、シクロアルキル、アリールもしくはアラルキルシランである請求の範囲第1項の方法。
8.上記基質がワイヤー又はケーブルの絶縁体又はジャケットである請求の範囲第1項の方法。」(請求の範囲)

(4)甲第4号証
ア「本発明は一般的に、ピル、カプセル、タブレット等の別個の消耗品を直接マークすることに関し、特に、飛行中のそのような分離した物品を、インク又は他の外部マーキング材料を物品に堆積せず、かつ物品を劣化させずに迅速にマークすることに関する。紫外線レーザエネルギーの使用によって、そのような物品は以前に得られなかった速度率で、物品が連続した動作にあるままで正確にマークされる。比類なく、マーキングは物品が透明のパッケージないで完全に包まれているときでも達成可能である。」(1欄6?15行)

イ「紫外線エネルギーが特定の二酸化チタンを含む材料によって吸収されると、二酸化チタンは色変化する。この現象は電線絶縁、電子部品、セラミック、ガラス、プラスチック等の様々な非消耗品にマーキングを提供するのにうまく利用されてきた。例えば…を参照し、様々な材料から作られた非消耗品をレーザマーキングすることを開示している。
これらの問題に関係する人々は消耗品をマークする改良された方法の必要性を認識している。
従来技術のこれらの及び他の問題は本発明によって克服される。」(3欄6?20行)

ウ「本発明で使用される「消耗品」は、処方の及び非処方の薬剤、及び補助食品を含む、治療の目的で人間又は非人間の生物によって経口又は他の方法で消費されることを意図した物品である。そのような別個の消耗品の例は、ピル、タブレット、ゲルカプセル、溶解タブレット、トローチ等を含む。」(3欄46?52行)

エ「本発明の方法は、レーザエネルギーにさらされると検知可能な色に変化する放射性感受性の第1の材料を選択する工程と、有効量の放射感受性をマークされる別個の消耗品の可視層に組み込む工程を含む。一般的に、必ずしも必要ではないが、放射感受性材料は物品の外側層にある。好ましくはその後別個の消耗品は移動中にされ、好ましくは検知場所が紫外線レーザエネルギーのソースに対して所定の場所又はマーキング領域に確立される。検知場所はマーキング領域の別個の物品の到着を検知し、レーザの放射を誘起する。又はレーザは物品に対して移動可能であり、物品をマークする適切な位置にあるとき放射されるか、又はレーザが放射するときに両方が移動可能となる。望ましい場合、適切なレーザビーム搬送システムの使用によって、レーザビームはレーザを移動させずに移動可能である。またレーザの放射は、物品がマーキング領域に到着することを感知するセンサ以外のいくらかの手段によって物品のレーザへの相対的な移動に同期可能である。…
レーザマーキングはほぼ瞬間的に発生するため、物品は比較的速い速度率で移動中にマーク可能である。例えば物品は多くの大量生産施設で通常使用されるようなコンベヤシステムによって移動中とされる。しかし、レーザマーキングが大変早く発生するため物品が重力下で垂直に落下するときマークをすることができ、よって物品が垂直のホッパー等から落下する際マーキングを完成できるようにする。例えば遠心力、空気圧等の他の射出手段も物品を移動中にするのに使用可能である。物品の移動速度はパルス状レーザのサイクル時間又はパルス速度に同期する必要がある。」(4欄8?57行)

オ「好ましい実施の形態によると、微細に分割された二酸化チタンの有効量がマークされる物品の層に提供される。この場合、表面層は二酸化チタンを含む。約380から190ナノメートルの紫外線範囲のレーザエネルギーの所定のパターンにされされると、正確にマークされた物品が事実上崩壊せずに製造される。マーキングは一般的に黒色である。」(5欄44?51行)

カ「適用されたレーザ流束量又はエネルギー密度(ジュール毎平方センチメートル)は二酸化チタン粒子の直径に比例する。…
上記の等式は、下の表1に示す粒径の以下の計算値を算出する。

表1
粒径-D エネルギー密度-F 最大パルス継続時間-T
(ミクロン) (ジュール/cm^(2)) (ナノ秒)
0.10 0.03 4
0.25 0.09 25
0.35 0.12 49
0.50 0.17 100
0.75 0.26 225
1.0 0.34 400

(6欄55行?7欄39行)

キ「二酸化チタンは、層の重量に基づき、約0.5から5重量パーセントの量でマークされる層に存在する必要がある。好ましくは、二酸化チタンは約1から3重量パーセントの量で存在する。」(7欄55?59行)

ク「紫外線エネルギーの最適な波長は、二酸化チタンがエネルギーを最も強く吸収する波長である。これは約400ナノメートル以下である。一般的に、約380から190ナノメートルの範囲の紫外線を出すレーザが有用であり、約360から240ナノメートルのエネルギーを出すレーザが好ましい。」(8欄23?28行)

ケ「例示の目的のみで制限せずに選択された好ましい実施の形態において、外側層の約2重量パーセントである外面層に有効量の二酸化チタンを有する消耗品は、355ナノメートルの波長、20ヘルツのパルス速度、10ナノ秒のパルス継続時間、及びマーク領域の1平方センチメートルあたり約1ジュールの密度を与えるため光学的に凝縮された20ミリジュールのパルスエネルギーにさらされたとき、満足するマーキング結果を提供する。…好ましくは、二酸化チタンはマーキングが生じる物品の層の有効量に存在すればよいが、望ましい場合、物品の全体の体積にわたって存在してもよい。二酸化チタンの有効量を含む層の厚さは、望ましい場合、数ミルの厚さであればよい。
なぜ紫外線レーザエネルギーが、二酸化チタンを含む物品に添付されたときにはっきりした鮮明なマーキングを製造するのかは不明である。出願人は如何なる論理にも制限されることを意図していないが、紫外線レーザエネルギーは、吸収可能な波長において、大変短い継続時間であるが高いパワーレベルで二酸化チタンに搬送されたとき、二酸化チタン分子にいくらかの構造的修正を生じ、この構造的修正は色の変化として可視で検知できると考えられている。レーザエネルギーは二酸化チタンを囲む材料を燃焼するとは考えられていない。その理由は暴露の継続時間は大変短いため、また5倍の倍率因子の光学顕微鏡で見たとき、物品の表面に穴も空間も存在しないためである。
一の実施の形態において、Nd:YAGパルス状レーザが使用される。この実施の形態において、レーザは20ヘルツで作動し、消耗品は1分あたり約1,200個(1時間あたり720,000個)の速さでマーキング可能である。このマーキング速度は従来のインク堆積マーキングシステムに匹敵する。
所望のとおりに、マーキング速度を増加する目的で、他のレーザも使用可能であることが理解されるべきである。例えば400Hzまで動作可能なXe:Clエキシマレーザを所望のとおりに使用してもよい。そのようなレーザを400Hzで使用することは、従来のインク堆積マーキングシステムよりも何倍も速い1分あたり24,000個(1時間あたり1,440,000個)の消耗品をマーク可能とする。例えばLambda Physik Inc.製造のLPX100iシリーズのXe:Clエキシマレーザは、400Hzで動作し308ナノメートルの波長で100ミリジュールのレーザを製造するが、上記に論じた実質的に増加したマーキング速度を容易に達成できる。例えば固体レーザ(すなわちNd:YAG又はNd:YFL)、又は気体エキシマレーザ(XeCl、KrF、ArF又はF2)のような他のレーザも、波長、エネルギー密度及びパルス継続時間が望ましいマーキングを製造するのに効果的であれば、所望のとおりに使用可能である。」(9欄53行?10欄42行)

(5)甲第5号証
ア「紫外線領域でのレーザマーキングは、典型的には光化学反応によって色変化を生じる。」(1欄36?37行)

イ「例示のみの目的で選択され制限しない好ましい実施形態において、例えば外層の約2重量パーセントのような外面層においてマーキングに有効な二酸化チタンの量を有する物体の基板は、例えば約355ナノメートルの波長、少なくとも約20ヘルツのパルス速度および約5から20ナノ秒のパルス継続時間の紫外線レーザエネルギーに暴露されると、満足するマーキング結果を提供する。」(8欄56?66行)

ウ「例えばNd:YAGパルスレーザは本発明による使用に適している。そのようなレーザは20Hzで動作可能であり、マークが1分あたり約1,200(1時間あたり720,000)の速度で付与される。所望のとおりに、他のレーザがマーキング速度を増加させるために使用可能であることが理解される。例えば所望のとおりに、400Hzもの値で動作可能なXe:Clエキシマレーザが使用されてもよい。そのようなレーザを400Hzで使用することは、1分あたり24,000(1時間あたり1,440,000)で物体をマークすることの可能性を提供する。例えばLambda Physik Inc.製造の、400Hzで動作し308ナノメートルの波長で100ミリジュールのレーザエネルギーを生成するLPX100iシリーズのXe:Clエキシマレーザは、上記に論じた実質的に増加したマーキング速度を容易に達成できる。例えば固体のレーザ(すなわちNd:YAG又はNd:YFL)、又は気体のエキシマレーザ(XeCl、KrF、ArF又はF2)といった他のレーザも、波長、エネルギー密度及びパルス継続時間が望ましいマーキングを生成するのに効果的な限り、所望のとおりに使用可能である。」(9欄21?39行)

エ「一般的に、約10から0.1、好ましくは、5から0.1ジュール毎平方センチメートルのエネルギー流束密度が満足するマーキングを形成するのに効果的である。…
上記の等式は、下の表1に示す、二酸化チタンの粒径の以下の計算値を算出する。

表1
粒径-D エネルギー密度-F 最大パルス継続時間-T
(ミクロン) (ジュール/cm^(2)) (ナノ秒)
0.10 0.03 4
0.25 0.09 25
0.35 0.12 49
0.50 0.17 100
0.75 0.26 225
1.0 0.34 400

表1で与えられた値は、特定のシステムを最適化する信頼できる開始点を当業者に提供する桁の値である。多くの異なる変数が、それらの全てが完全に理解されているわけではないが、特定のシステムの最適な値を決定するのに入力される。例えば粒径分布、特定の処理システムが生成する色素の凝集の程度等の全てがこれらの値に影響する。」
(12欄62行?13欄26行)

オ「二酸化チタン又は他の色素は、層の重量に基づき、約0.5から5重量パーセントの量でマークされる層に存在する必要がある。好ましくは、色素は約1から3重量パーセントの量で存在する。…一般的に、約5重量パーセントよりも少ない色素濃度が許容される。色素粒子は全てほぼ同じサイズであり、エネルギーを吸収する層に均一に分布されると仮定する。いくつかの処理手続はそのような最適な均一の分布を提供しない。そのようなシステムは本発明の教示によって特定のサイズ及び大量の分布に最適化されなければならない。
コヒーレントエネルギーの最適な波長は、二酸化チタン又は他の色素がエネルギーを最も強く吸収する波長である。これは二酸化チタンでは約400ナノメートル以下である。一般的に、約380から190ナノメートルの範囲の紫外線を出すレーザが有用であり、二酸化チタンには約360から240ナノメートルのエネルギーを出すレーザが好ましい。
二酸化チタンは、一般にアメリカ食品医薬局によって安全とみなされているため、一般に好ましい放射感受性マーキング材料である。…パルス状レーザでマーキングするのに適切な他の放射感受性色素は、例えば…酸化鉄…等の、有機又は無機の色素を含む。」(13欄34行?14欄36行)

(6)甲第6号証
ガラス体あるいはレーザ光線に対して透明な材料中に金属コロイドを混入してレーザ光線を照射することにより、金属コロイドを凝集し、3次元のカラーマーキングを行うこと、レーザ光線はビーム走査装置(ガルバノミラー)で反射されてマーキングを行うことが記載されている。(特許請求の範囲、【0001】、【0005】、【0011】、【0012】、【0021】)

(7)甲第7号証、甲第7-1号証、甲第7-2号証
ガルバノミラーを用いてレーザ光を走査する装置が記載されている。(甲第7号証全文、特に「Laser & Marking Head」の項)

(8)甲第8号証
走査工程においてガルバノミラーを用いるマーキング方法が記載されている。(【0008】)

(9)甲第9号証
7.644?24.5Nの硬度を有する経口投与用組成物の成型物が記載されている。(【0099】)

(10)甲第10号証
ナノサイズやサブミクロンサイズの酸化チタンのTEM(透過型電子顕微鏡)を用いて撮影したものが、実際の粒子の凝集状態を示すものではないことが記載されている。(9頁)

(11)甲第11号証
特許・実用新案審査基準において、「進歩性が否定される方向に働く要素」について記載されている。

(12)甲第12号証
食品衛生法第10条に基づき食品添加物として使用してよいとされる物質に、三二酸化鉄及び二酸化チタンが含まれることが記載されている。

(13)甲第13号証
二酸化チタンに紫外線レーザを照射してマーキングをすることが記載されている。(1欄43?49行、請求の範囲)

(14)甲第14号証
特許・実用新案審査ハンドブックにおいて、「進歩性が否定されるとの一応の合理的な疑い」について記載されている。

(15)甲第15号証
「凝集」の意として、「[1][aggregation, cohesion]分子やイオン,原子などが集合する現象.集合した分子(イオン,原子)の間にはたらく力を凝集エネルギーという.[2][flocculation]コロイド粒子が集まってより大きな粒子になること.」と記載されている。

(16)乙第1号証
「凝集」の意として、「広がっていたもの、散らばっていたものが、1ヵ所に集まりこり固まること。」と記載されている。

(17)乙第2号証、乙第3号証
本件特許出願の分割出願である特願2012-62645号における、平成26年5月14日提出の意見書、及び同意見書の写真1?6の写しである。

6 当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明
甲第1号証には、上記5(1)オ、特に請求項1を引用する請求項10からみて、次の発明が記載されているといえる。
「薬品または食品をマーキングするマーキング方法であって、
官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成する物質を薬品または食品に含有させ、
レーザビームを前記薬品または食品のマーキング領域に照射する、マーキング方法。」(以下、「甲1ア発明」という。)

また、上記のマーキング方法は、「レーザビームを前記薬品または食品のマーキング領域に照射する」ことで、マークを施された「薬品または食品」を製造するものであることからみて、次の発明が記載されているといえる。
「マークを施された薬品または食品の製造方法であって、
前記薬品または食品の表面に、官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成する物質を薬品または食品に含有させ、
レーザビームを前記薬品または食品のマーキング領域に照射する、製造方法。」(以下、「甲1イ発明」という。)

(2)無効理由1について
ア 本件特許発明1
(ア)本件特許発明1と甲1ア発明とを対比する。
甲1ア発明の「薬品または食品」は、本件特許発明1の「経口投与用組成物」に相当し、甲1ア発明において、「官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成する物質を薬品または食品に「含有させ」ているが、係る「含有させ」ることは、本件特許発明1の「分散させる」ことに相当する。
また、甲1ア発明の薬品または食品に含有させる「物質」は、レーザの放射により対比可能な色の反応物を生成するもの、すなわち、レーザービームの照射により変色するものであるところ、本件特許発明1の「変色誘起酸化物」もレーザー光を走査させることでその粒子を凝集させて変色させるものであるから、甲1ア発明の「物質」は本件特許発明1の「変色誘起酸化物」に対応するものである。
さらに、甲1ア発明は「レーザビームを前記薬品または食品のマーキング領域に照射する」ものであるところ、上記5(1)エの記載を参酌すると、この「照射」は、本件特許発明1でいう「走査」といえるものであり、本件特許発明1の「平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光」であることや、「走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで実行される」ことを満たしうるものと認められる。

そうすると、本件特許発明1と甲1ア発明とは、
「経口投与用組成物へのマーキング方法であって、
レーザー光の走査により変色する物質を経口投与用組成物に分散させる工程と、
レーザー光の走査により変色する物質を変色させるように、平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、前記経口投与用組成物の表面に走査させる工程と、
を含み、
前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで実行される、マーキング方法。」で一致する。

そして、両者は下記の点で相違する。
<相違点1>
レーザー光の走査による変色の機序について、本件特許発明1は、「酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種」である「変色誘起酸化物」の「粒子を凝集させて」変色させるものであるのに対し、甲1ア発明は、「官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こす」ことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成するものである点。
<相違点2>
レーザー光の波長について、本件特許発明1は、「200nm?1100nm」と特定するのに対し、甲1ア発明は、そのような特定事項を有しない点。

(イ)事案に鑑み、まず上記相違点1について検討する。
a 請求人は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用するのは想到容易であると主張する。
しかし、甲第2号証には、「ポリアセタール樹脂組成物より成形された成形品もしくは該組成物によって被覆された成形品」(上記5(2)ア)に「二酸化チタン」や「酸化第二鉄」(三二酸化鉄に相当する。)(上記5(2)ア及びエ)を含有させた樹脂成形品のレーザマーキング方法が、甲第3号証には、「溶融加工可能フルオロポリマー樹脂」(上記5(3)カ)に「二酸化チタン」(上記5(3)カ)を含有させた樹脂製品に対するレーザマーキング方法がそれぞれ記載されているが、いずれも「経口投与用組成物」に係る技術に関するものではない。そして、甲1ア発明のような、経口投与用組成物に対するレーザマーキング方法の発明において、経口投与用組成物とは何ら関係のない甲第2号証に記載されるような樹脂成形品や甲第3号証に記載されるような溶融加工可能な樹脂製品に対するレーザマーキング方法に関する技術を適用する動機づけを見いだすことはできない。
そうすると、甲第1号証に記載された発明に対して、甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することができるとはいえない。

b また、本件特許発明1に係る「経口投与用組成物のマーキング方法」は、「変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させる」ものであり、変色現象は「変色誘起酸化物」である「酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種」の粒子の凝集という物理現象によって生じるものである。
これに対し、甲1ア発明の変色現象は、上記6(1)で認定したとおり、「官能基」を有する物質が「レーザの放射により脱離反応を起こすことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成する」ことにより、「官能基」を有する物質の化学反応によって生じるものである。
すなわち、本件特許発明1と甲1ア発明とは、その変色現象の機序において明らかに相違する。
そして、甲第2号証には、「紫外線に対し光活性な充填剤を配合したポリアセタール樹脂組成物より成形された成形品もしくは該組成物によって被覆された成形品の表面に、非線形光学結晶を用いて波長を紫外光としたレーザー光を照射してマーキングを行うことを特徴とするレーザーマーキング方法」(上記5(2)ア)において、「紫外線を該充填剤が吸収する事によって、分解、還元、酸化、他物質との反応、結晶構造の変化等何らかの変性が起きる」(上記5(2)エ)ことによってマーキングを行うこと、係る充填剤として「二酸化チタン」(上記5(2)ア及びエ)や「酸化第二鉄」(三二酸化鉄に相当する。)(上記5(2)ア及びエ)の粒子が記載されているが、係る充填剤の凝集によって変色することの記載はない。
また、甲第3号証には、「溶融加工可能フルオロポリマー樹脂と二酸化チタン顔料を含有する基質のレーザーマーキング方法であって、ここでの改良が、有機シランを含有する被膜で上記顔料を被覆して上記レーザーマーキングを実施することを含む方法」(上記5(3)カ)において、「基質の暗色化は主に放射線とTiO_(2)顔料の間の相互作用によって引き起こされる」(上記5(3)ア)とされるところ、「TiO_(2)顔料を溶融加工可能フルオロポリマーと一緒に溶融コンパンド化すると、…凝集物がいくらか存在すること」(上記5(3)イ)、「二酸化チタン顔料を有機シランで被覆して溶融加工可能フルオロポリマー樹脂基質に組み込むと、この基質上にレーザーマーキング技術で作り出すマークのコントラストが予想外に改良されかつコントラストが均一になること」(上記5(3)ウ)、「このようなマーキングの改良は該フルオロポリマー組成物を溶融加工した時に存在するTiO_(2)凝集物のレベルが低くなることに伴っていた」(上記5(3)ウ)との記載に鑑みると、「TiO_(2)顔料を有機シランで被覆したことによって、TiO_(2)顔料の凝集レベルが低くなり、これに伴って、マークのコントラストが予想外に改良されかつコントラストが均一になる」との技術が開示されていると解され、レーザー照射によってTiO_(2)粒子の凝集が生じていることや、その凝集によって変色していることの記載はない。
さらに、甲第4号証ないし甲第5号証においても、二酸化チタンを含む物質を用いたレーザマーキング方法が記載されているが、二酸化チタンの凝集によって変色することの記載ないし示唆はない。

そうすると、仮に、甲第4号証ないし甲第5号証に記載された技術を参照しつつ、甲1ア発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することができるといえたとしても、そもそも甲第2号証ないし甲第3号証は、上記相違点1に係る構成である「変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させる」といった技術を開示するものではないから、甲第1号証ないし甲第3号証から相違点1は想到容易であるということはできない。

c したがって、相違点1に係る事項は当業者が容易になし得たものであるということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

イ 本件特許発明2?10
本件特許発明2?10は、いずれも本件特許発明1を直接、間接的に引用するものであり、本件特許発明1で特定される事項を発明特定事項として有するものである。そして、上記アで述べたとおり、本件特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない以上、本件特許発明2?10も同様に、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

ウ 本件特許発明11
(ア)本件特許発明11と甲1イ発明とを対比する。
上記ア(ア)で検討した本件特許発明1と甲1ア発明との対比は、本件特許発明11と甲1イ発明との対比においても同様の対応関係を有するといえる。
そうすると、本件特許発明11と甲1イ発明とは、
「マークを施された経口投与用組成物の製造方法であって、
レーザー光の照射により変色する物質を経口投与用組成物に分散させる工程と、
前記経口投与用組成物の表面に、前記レーザー光の照射により変色する物質を変色させるように、平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、前記経口投与用組成物の表面に走査させる工程と、
を含み、
前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで実行される、製造方法。」で一致する。

そして、両者は下記の点で相違する。
<相違点1>
レーザー光の走査による変色の機序について、本件特許発明11は、「酸化チタン、黄色三二酸化鉄及び三二酸化鉄からなる群から選択される少なくとも1種」である「変色誘起酸化物」の「粒子を凝集させて」変色させるものであるのに対し、甲1イ発明は、「官能基と金属化合物または酸とを含有し、レーザの放射により脱離反応を起こす」ことで対比可能な色の、生理的に受容可能である反応物を生成するものである点。
<相違点2>
レーザー光の波長について、本件特許発明11は、「200nm?1100nm」と特定するのに対し、甲1イ発明は、そのような特定事項を有しない点。

(イ)上記相違点について検討する。
上記ア(イ)で検討したことは、本件特許発明11においてもいえる。
したがって、相違点1に係る事項は当業者が容易になし得たものであるということはできないから、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明11は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

エ 本件特許発明12?22
本件特許発明12?22は、いずれも本件特許発明11を直接、間接的に引用するものであり、本件特許発明11で特定される事項を発明特定事項として有するものである。そして、上記ウで述べたとおり、本件特許発明11は、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない以上、本件特許発明12?22も同様に、甲第1号証に記載された発明に甲第2号証ないし甲第3号証に記載された技術を適用することで当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

オ まとめ
以上のとおりであるから、無効理由1には理由がない。

(3)無効理由2について
ア 請求人は、以下の三点から、本件特許発明1?22は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではなく、特許法第36条第6項第1号の規定を満たしていない旨主張する。
<第1点>
請求項1及び請求項11には
「波長が200nm?1100nm…
平均出力が0.1W?50W…
前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/sec」という、これら全ての範囲で特許発明の所定の効果を奏することについては、明細書の発明の詳細な説明には記載がない。
<第2点>
請求項2及び請求項12には
「前記走査工程が、単位面積当たりのエネルギーが、390?21000mJ/cm^(2)で実行される」ことの実施例の裏付けはなく、臨界的な意義や明細書の発明の詳細な説明において記載がないばかりか、実施例と矛盾する。
<第3点>
請求項1及び請求項11には
「変色誘起酸化物を経口投与用組成物に分散させる工程と、前記変色誘起酸化物の粒子を凝集させて変色させる」と記載されているが、明細書の発明の詳細な説明では、レーザ照射により、経口投与用組成物が「凝集」していると推定しているだけであり、実際に「凝集」しているのか否かは明細書の記載からは不明である。

イ 上記三点についての検討
(ア)第1点について
本件特許明細書の発明の詳細な説明には、以下の実施例が記載されている。
「【0038】
(実施例1)錠剤
乳糖80g、コーンスターチ20g、ステアリン酸マグネシウム0.5g、酸化チタン1g又は黄色三二酸化鉄0.2gを混合し、打錠機またはオートグラフ材料試験機で圧縮成型して錠剤を得た。
表1に示すレーザー装置(Photonics Industries International, Inc.)を用いて、10cm×10cmのパン上に敷き詰めた錠剤100錠にレーザーを表1に示した条件で照射した。その結果、酸化チタン又は黄色三二酸化鉄を含有する場合、視認性が優れたマークを有する錠剤を得た。一方で、その表面は、食刻されていなかった。
【0039】
(実施例2)錠剤
…表1に示すレーザー装置及び照射条件でマーキングした。…
【0040】
【表1】


【0043】
(実施例3)ソフトカプセル剤
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、ソフトカプセル剤の長径軸方向に、E268の文字をマーキングした。…
【0044】
(実施例4)糖衣錠
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、糖衣錠の端から端まで錠剤の中心点を通るように、中心線をマーキングした。…
【0045】
(実施例5)口腔内速崩壊性錠剤
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、錠剤の平表面の端から端まで錠剤の中心点を通るように、中心線をマーキングした。同様に、表3に示すレーザー装置及び照射条件でレーザー照射した。…
【0046】
【表3】

【0047】
(実施例6?実施例8)
…表4に示すレーザー装置及び照射条件で、錠剤の平表面の端から端まで錠剤の中心点を通るように、中心線をマーキングした。…
【0048】
【表4】

【0049】
(実施例9)
…表1に示すレーザー装置及び条件で照射した結果、視認性が認められる錠剤を得た。…
【0050】
(実施例10及び実施例11)
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、錠剤の平表面の端から端まで錠剤の中心点を通るように、中心線をマーキングした。…

【0052】
(実施例12)フィルムコート錠
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、フィルム錠の曲部の周囲部に円を描くように11文字をマーキングした。…
【0053】
(実施例13)フィルムコート錠
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、フィルム錠の曲面に3段書きの文字をマーキングした。…
【0054】
(実施例14)
…表1に示すレーザー装置及び照射条件で、フィルム錠の曲面に3段書きの文字をマーキングした。…
【0055】
(実施例15)糖衣錠
…表4に示すレーザー装置及び照射条件で、糖衣錠の端から端まで錠剤の中心点を通るように、中心線をマーキングした。…
【0056】
(実施例16)フィルムコート錠
…表4に示すレーザー装置及び照射条件で、フィルム錠の曲部の周囲部に円を描くように11文字をマーキングした。…
【0057】
次に、レーザー光が照射された変色部の解析を、以下のように実施した。変色部解析用試料は、実施例13と同様の条件にて作製したフィルム錠を用い、表1に示すレーザー装置及び照射条件で、レーザー照射を行った。なお、本解析では、レーザーの走査速度は、1000mm/secで行った。」

上記実施例では、波長は266・355・532nm、平均出力は8・3・12W、走査工程は1000mm/secの各条件が記載されている。
そして、本件特許発明1?22の実施時におけるレーザー光走査条件は、「波長が200nm?1100nm」、「平均出力が0.1W?50W」、「走査工程が、80mm/sec?8000mm/sec」の各範囲内で適宜設定すれば足りるものであり、各条件の各範囲内において、本件特許発明1?22が、「医薬品や食品のような経口投与用組成物等の品質を損なわずに優れた識別性を有する経口投与用組成物を得ることができ、かつ、生産性にも優れたマーキング方法」(本件特許明細書【0007】)という課題を解決し得ないとする理由は特段見当たらない。

(イ)第3点について
本件特許出願の図4からは、変色誘起酸化物である酸化チタンが凝集しているように見て取れる。この点について、請求人は、以下のとおり主張する。

a「ここで、「透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscope; TEM)とは、電子顕微鏡の一種である。…出力200kV程度のTEMでは、到底500nmの「大きな粒」は透過できず、結局、見えない大きな陰が観察できているに過ぎない。本件特許において図4の写真のみをもって「凝集」したと推定するのは、その結合状態も不明であることから根拠のない主張であり失当である。」(審判請求書92頁2-9行)
b「200kV程度のTEM写真では、500nm程度の球形の粒子の内部構造は到底観察できないことは技術常識から明らかである(Wikipedia「透過型電子顕微鏡」参照)。このTEM写真で、「本発明に用いた黄色三二酸化鉄や三二酸化鉄」も「酸化チタン」と同じ様に、レーザー照射により、その粒子が凝集し、大きな粒子となり、凝集した粒子による反射光の波長が変化したことにより、変色した」ことを断定することは不可能であって技術常識に反し、出願人の記載のとおり、単なる「酸化チタン」のTEM写真から、さらに類推した「想像」の危機を脱しない。」(同116頁2-9行)

上記aについては、甲第3号証には、「このTiO_(2)顔料は…、特徴としてまた凝集物がいくらか存在することを見い出した。このような凝集物は…、大部分は、電子顕微鏡の倍率下でのみ検出可能である。」と記載されており、また、甲第3号証の実施例11では、11800倍や23000倍での電子顕微鏡の倍率下でTiO_(2)粒子の確認を行っている。そうであれば、TEM写真である本件図4から、TiO_(2)粒子の凝集を推定することに必ずしも根拠がないとまではいえない。
上記bについては、「Wikipedia「透過型電子顕微鏡」」の項目を職権で調査したところ、当該項目には、200kV程度のTEM写真では、500nm程度の球形の粒子の内部構造は到底観察できないとする記載が見当たらない。すなわち、上記bに係る請求人の主張は何ら根拠がない。
このため、本件特許発明1?22における変色誘起酸化物粒子の凝集を否定するに足りる根拠を見いだすことはできない。

(ウ)第2点について
請求項2及び請求項12は、それぞれ請求項1及び請求項11を限定するものであり、本件特許発明1及び11が明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできないことに鑑みると、本件特許発明2及び12は、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。

そして、本件特許発明3?10及び13?22についても、明細書の発明の詳細な説明に記載されたものではないということはできない。

ウ まとめ
以上の点から、本件特許発明1?22は、発明の詳細な説明に記載されたものではないとはいえない。
よって、無効理由2には理由がない。

(4)無効理由3について
ア 請求人は、以下の点から、本件特許発明1?22は不明確であり、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていない旨主張する。

「本件請求項1、11には、
『1D:波長が200nm?1100nmであり、
1E:平均出力が0.1W?50Wであるレーザー光を、
1H:前記走査工程が、80mm/sec?8000mm/secで
実行される、マーキング方法。』が記載されている。
請求項1、11には、3つのパラメータのみでレーザ照射を特定しているが、エネルギー密度、レーザー光の繰り返し率R、レーザースポット径の外、経口投与用組成物の種類、変色誘起酸化物の種類、分散の濃度及び状態などが特定されていないので、請求項1、11の記載では、マーキングに必要な条件を特定できない。
したがって、請求項1、11に係る発明の外縁を特定することができないため、請求項の記載が明確でない。
よって、請求項1、11に係る発明は不明確であり、また、請求項1に従属する請求項2?10、請求項11に従属する請求項12?20、また請求項11?20を引用する請求項21、22に係る発明も不明確である…。」

イ 本件特許発明1及び11は、いずれもレーザー光の走査工程におけるエネルギー密度、レーザー光の繰り返し率、レーザースポット径、経口投与用組成物の種類、変色誘起酸化物の分散の濃度及び状態などの条件を特定するものではない。そして上記条件はマーキングする際の任意の条件であって、これらを特定しないことで本件発明が不明確になるというものではない。
したがって、本件特許発明1?22は不明確であるとはいえない。
よって、無効理由3には理由がない。

7 むすび
以上のとおり、本件特許発明1?22は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものとはいえないから、本件特許は、特許法123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものではない。
また、本件特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号、第2号に規定する要件に違反するものではないから、本件特許は、特許法123条第1項第4号の規定により無効とされるべきものではない。

審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-05-09 
結審通知日 2017-05-11 
審決日 2017-05-23 
出願番号 特願2007-517849(P2007-517849)
審決分類 P 1 113・ 537- Y (A61K)
P 1 113・ 121- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小堀 麻子  
特許庁審判長 須藤 康洋
特許庁審判官 大熊 幸治
小川 慶子
登録日 2013-08-16 
登録番号 特許第5339723号(P5339723)
発明の名称 経口投与用組成物のマーキング方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 中嶋 恭久  
代理人 内藤 和彦  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 恩田 誠  
代理人 本田 淳  
代理人 山田 拓  
  • この表をプリントする
事前申し込み無料!情報収集目的の方もぜひいらしてください!
すごい知財サービス EXPO 2021

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ