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審決分類 審判 一部申し立て 2項進歩性  G09G
管理番号 1027558
異議申立番号 異議2000-70084  
総通号数 16 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-04-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2000-01-12 
確定日 2000-09-11 
異議申立件数
事件の表示 特許第2919278号「マルチシンク対応液晶ディスプレイ装置の表示制御装置及び表示制御方法」の請求項1、2及び8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第2919278号の請求項1、2及び8に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯・本件発明
特許第2919278号の請求項1、2及び8に係る発明は、平成6年9月14日に出願され、平成11年4月23日に特許の設定登録がなされたが、その特許について、特許異議申立人 足立信幸より特許異議の申し立てがなされ、取消理由通知がなされたものであり、その請求項1、2及び8に係る発明(以下、それぞれ、本件発明1、2及び8という)は、特許明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2及び8に記載された下記の事項により特定されるものである。

【請求項1】液晶表示パネルを用いた液晶表示装置において、入力される水平同期信号を入力されるクロック信号により計測し、映像信号の水平周波数を求める水平周波数判定回路と、入力される垂直同期信号を入力される水平同期信号により計測し、映像信号の垂直周波数を求める垂直周波数判定回路とを有する周波数判定回路と、前記周波数判定回路の出力データを入力して入力周波数に合致したデータを出力するメモリ回路と、前記メモリ回路からのデータをもとに液晶表示パネルへの映像信号の表示位置を制御するタイミングを任意に設定可能とする、水平タイミング発生回路及び垂直タイミング発生回路と、を備えたことを特徴とするマルチシンク対応液晶ディスプレイ装置の表示制御装置。
【請求項2】前記周波数判定回路が、前記水平同期信号とクロック信号を入力とする水平同期信号周波数判定回路と、前記垂直同期信号と前記水平同期信号を入力とする垂直同期信号周波数判定回路と、を備え、前記水平同期信号周波数判定回路が、前記水平同期信号について1水平期間分の前記クロック信号を計数するカウンタを含む画素計数部を有し、前記垂直同期信号周波数判定回路が、前記垂直同期信号について1垂直期間分の前記水平同期信号を計数するカウンタを含むライン計数部を有する、ことを特徴する請求項1記載のマルチシンク対応液晶ディスプレイ装置の表示制御装置。
【請求項8】液晶表示パネルを用いた液晶ディスプレイ装置の表示制御方法において、入力される水平同期信号、垂直同期信号、クロック信号に基づき、周波数判定部にて、映像信号の水平周波数及び垂直周波数のそれぞれの周波数モードを求め、前記周波数モードに基づきルックアップテーブルを参照して入力周波数に合致したデータを求め、該データをもとに、液晶表示パネルへの映像信号の表示位置を決定する水平タイミング及び垂直タイミングの発生を可変に制御するようにしたことを特徴とするマルチシンク対応液晶ディスプレイ装置の表示制御方法。

2.申立理由の概要
特許異議申立人は特許異議申立時に、証拠として下記のとおりの甲第1乃至3号証を提出し、本件発明1,2及び8は甲第1乃至3号証の記載に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に該当し、上記本件発明1、2及び8の特許は、特許法第113条第1項第2号の規定により取り消されるべきであると主張をしている。

甲第1号証:特開平4-124700号公報
甲第2号証:特開平6-6835号公報
甲第3号証:実願平4-18978号(実開平5-70076号公報)のCD-ROM

3.各引用刊行物の記載事項
当審が通知した取消理由に引用した刊行物1乃至3(上記甲第1乃至甲第3号証と同じである)には以下のとおりの記載がある。

刊行物1:特開平4-124700号公報
「第8図および第9図を参照して、先行技術を説明するとともに、本発明の原理を説明する。液晶表示装置6は、横640×縦480ドットの絵素を有する構成となっているものと想定する。信号源1からライン2に導出されるデータは、陰極線管表示手段5と液晶表示手段6の各ドットを表示するデータであって、その基本ドットクロックの周期をTckとし、ライン4に導出される水平同期信号HSが第8図(1)の周期THを有しているものとするとき、陰極線管5によって表示されるデータは、第8図(2)で示されるように、水平同期信号HSの立下りから時間WH(=M・Tck、ここでMは自然数)の後に、先頭のデータがあり、時間640×Tck後にデータが終了する。したがって水平同期信号HSに対してデータの有効期間を示す第8図(3)のブランク信号を、水平同期信号HSの立下りから時間WH後に第8図(3)に示されるようにハイレベルとし、それから時間640×Tck後にローレベルとすることによって、データの有効期間を示すことができ、この時間WHを利用して、液晶表示手段6では、画面の水平方向、すなわち左右方向の位置決めを行うことができる。
垂直同期信号は第9図(1)に示されるように周期TVを有しており、水平同期信号は第9図(2)に示されるとおりである。データは第9図(3)に示されるように480本の水平同期信号が発生されている期間(=480×TH)に発生され、垂直同期信号の立下りから時間WV(=NTH、ここでNは自然数)の後に、先頭のデータが存在し、480×TH後に、データが終了する。したがって垂直同期信号VSに対し、データの有効期間を示す第9図(4)のブランク信号を、垂直同期信号の立下りから時間WV後にハイレベルとし、それから480×TH後にローレベルとすることによって、データの有効期間を示すことができる。このブランク信号を用いて、液晶表示手段6における画面の上下の位置決めを行うことができる。
液晶表示手段6に映像信号を表示するには、垂直方向に関し、第9図(4)のブランク信号を液晶表示手段6におけるデータの有効期間と一致させ、すなわち信号源1から導出される垂直同期信号の立下り時間WV経過した後の映像信号を液晶表示手段6における画像の表示開始位置とする必要がある。さもなければ、液晶表示手段6によって表示される画像は、その液晶表示手段6の画面の上または下にずれて表示されてしまう。また同様に、第8図(3)に示されるブランク信号を、液晶表示手段6におけるデータの有効期間と一致させる必要があり、すなわち信号源1からの映像信号は、水平同期信号の立下りから時間WH経過した時点で液晶表示手段6の画面の希望する位置で表示されるようにしなければならない。さもなければ液晶表示手段6に表示される画像は、その画面に対し左また右にずれて表示されてしまう。
信号源1であるコンピュータからの水平同期信号、垂直同期信号およびデータ信号の周期およびタイミングは、コンピュータの種類および動作モードなどによって異なる。したがってたとえば複数のコンピュータである信号源1からの異なった各信号を、液晶表示手段6によって表示するとき、各信号に合わせて、第9図(4)で示される垂直方向のブランク信号および第8図(3)で示される水平方向のブランク信号を、液晶表示手段6のデータ有効期間に一致させるために、時間WV、WHの値N、Mを正しく設定する必要がある。
先行技術では第7図に示されるように、予め使用可能なコンピュータである信号源1の各信号を調べておき、値Nをメモリ8にストアしておく。処理回路9は、ライン3およびライン4から入力される垂直同期信号VSと水平同期信号HSの周期と極性を調べて、制御回路10に与える。処理回路9は、入力された信号が、どの種類のコンピュータである信号源1であって、さらにどのような動作モードであるかを調べて判断し、それに対応した値Nをメモリ8から選択して読出し、制御回路10に与えて設定する。発振回路8は、入力された水平同期信号HSから、基本ドットクロックを再生する。フレームメモリ7にストアされたデータは、液晶表示手段6の表示のために適したタイミングでデータが読出される。」(公報1ページ右下欄16行-2ページ右下欄18行)
そして、第7図には、処理回路9に入力される信号がライン3および4からの信号であることが記載されている。
刊行物2:特開平6-6835号公報
「本発明は、入力される複合同期信号又はこれが付加された複合映像信号の水平周波数を測定する回路に関する。」(公報【0001】)
「【従来の技術】マルチ入力対応型の映像機器等に於いては、入力された映像信号の水平周波数に応じて機器の内部回路を切換える必要があり、このため序述のような水平周波数測定回路が使用されている。
【0003】このような水平周波数測定回路としては、一般に、隣接する二つの水平同期パルス間の時間を測定するか、或るいは、一定期間内に入力される水平同期パルス数をカウントして水平周波数を算出する方法が採用されている。」(公報【0002】、【0003】)
「図1に於いて、12は測定精度を考慮して水平周波数よりも充分高い周波数に設定されたクロックパルスCK及び複合映像信号からコンパレータ11によって分離された複合同期信号CSが入力されるタイミングコントローラである。このコントローラ11は、上記両パルスCK、CSを得て上記複合同期信号CSの立下り毎にハイ、ロウを繰返すカウントイネーブル信号CEを第1カウンタ13に与え、このカウンタ13はその期間に上記クロックCKをカウントする。」(公報【0014】)
「この第3ラッチ回路19は、前記終了信号COの立上がりタイミング(図3参照)で第1ラッチ回路14によってラッチされた第1カウンタ13のカウント値、即ち前記複合同期信号CS(図2参照)の立下がりから次の立下がりまでの間のクロックパルスCKのカウント数を、水平周期のカウント結果D4として出力する。」(公報【0019】)
刊行物3:実願平4-18978号(実開平5-70076号公報)のCD-ROM
「以下本考案の実施例を図面を参照して説明する。
図1は本考案に係るオンスクリーン表示制御装置の一実施例を示すブロック図である。
図1において、垂直同期信号Vおよび水平同期信号Hの入力される垂直同期検出回路9は、図2aおよびbのように垂直同期信号Vの1周期中の水平同期信号Hの数をカウントして出力するカウンタ機能を有するものであり、分周回路11に接続されている。」(明細書【0015】)

4.対比・判断
本件発明1、2及び8と上記刊行物1乃至3に記載の発明とを対比すると、上記いずれの刊行物に記載の発明にも、本件発明1、2及び8を特定する事項である「入力される水平同期信号を入力されるクロック信号により計測し、映像信号の水平周波数を求める水平周波数判定回路と、前記周波数判定回路の出力データを入力して入力周波数に合致したデータを出力するメモリ回路とを備えたマルチシンク対応液晶ディスプレイ装置」(本件発明1及び2)、「入力される水平同期信号に基づき、周波数判定部にて、映像信号の水平周波数の周波数モードを求め、前記周波数モードに基づきルックアップテーブルを参照して入力周波数に合致したデータを求め、該データをもとに、液晶表示パネルへの映像信号の表示位置を決定する水平タイミングの発生を可変に制御するようにしたマルチシンク対応液晶ディスプレイ」(本件発明8)の記載がない。(以下、上記の構成を相違点と総称する。)
すなわち、上記刊行物1には、「信号源1であるコンピュータからの水平同期信号、垂直同期信号およびデータ信号の周期およびタイミングは、コンピュータの種類および動作モードなどによって異なる。」等の記載から、液晶表示装置に複数モードの信号が入力されることは記載されている。 しかし、該「複数モード」が本件発明1,2及び8の「マルチシンク」のモードに相当するかは明確な記載はない。
そして、上記刊行物1のモードの検出は処理回路9の動作として記載されているが、その動作はi)「処理回路9は、ライン3およびライン4から入力される垂直同期信号VSと水平同期信号HSの周期と極性を調べて、制御回路10に与える。」、ii)「処理回路9は、入力された信号が、どの種類のコンピュータである信号源1であって、さらにどのような動作モードであるかを調べて判断し、それに対応した値Nをメモリ8から選択して読出し、制御回路10に与えて設定する。」の記載があるのみである。したがって、上記入力された信号のモードの検出と、周期と極性を調べることはそれぞれ独立して行われていることは記載されていても、上記調べた周期に基づきモードの検出を行っていることは記載されていない。
また、上記刊行物2にはマルチ入力対応型の映像機器において、水平周波数を検出して、当該検出された水平周波数からに応じて機器の内部回路を自動的に切り替えるものが記載されている。
さらに、上記刊行物3には、マルチシンクディスプレイ装置において、水平同期信号の数をカウントすることにより垂直表示開始タイミングを得るものが記載されている。
しかし、上記刊行物1には上記モードがマルチ入力対応のモードであるかどうかの記載もなく、また、当該モードを検出するためにどのようなパラメータを用いているかの記載もないから、上記刊行物1記載の発明に、上記刊行物2及び3記載の発明を組み合わせて上記相違点の構成とすることは当業者が容易になし得たとはいえない。
よって、本件発明1、2及び8は、上記刊行物1乃至3に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものではない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由および、証拠によっては、本件請求項1、2及び8に係る発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1、2及び8に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2000-08-23 
出願番号 特願平6-244858
審決分類 P 1 652・ 121- Y (G09G)
最終処分 維持  
前審関与審査官 奥村 元宏  
特許庁審判長 平井 良憲
特許庁審判官 島田 信一
渡邊 聡
登録日 1999-04-23 
登録番号 特許第2919278号(P2919278)
権利者 日本電気株式会社
発明の名称 マルチシンク対応液晶ディスプレイ装置の表示制御装置及び表示制御方法  
代理人 福田 修一  
代理人 河合 信明  
代理人 京本 直樹  

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