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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 F02D |
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管理番号 | 1040857 |
審判番号 | 審判1999-18530 |
総通号数 | 20 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1993-11-16 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1999-11-25 |
確定日 | 2001-07-06 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第134211号「内燃機関の空燃比制御装置」拒絶査定に対する審判事件[平成 5年11月16日出願公開、特開平 5-302543]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年4月27日の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「内燃機関が所定のリーン運転領域にあるとき該内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側の所定空燃比に制御するリーン制御手段と、前記内燃機関が所定の理論空燃比運転領域にあるとき前記内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比に制御する理論空燃比制御手段と、前記内燃機関の排気ガスの一部を吸気系に還流する排気還流制御手段とを有する内燃機関の空燃比制御装置において、 前記内燃機関が前記所定のリーン運転領域と前記所定の理論空燃比運転領域との間に設けられた運転領域にあり、且つ前記排気還流制御手段による前記排気ガスの還流状態にあるときに、前記リーン側の所定空燃比と前記理論空燃比との中間の空燃比を目標空燃比に設定する目標空燃比設定手段を設けたことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。」 2.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平3-253744号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ト)のとおり記載されている。 (イ)「本発明に係る内燃機関の排気浄化装置は、第1図に示す如く、(中略)内燃機関の排気系4と吸気系8との間に設けられた、EGR弁10を具備する排気ガス再循環装置12と、(中略)加速状態判定手段16が所定加速値以上の加速状態と判定したときにEGR弁10を開にしてEGRガスを吸気系8に導入するEGRオン手段20と、を具備している。」(2頁左上欄16行-右上欄17行) (ロ)「加速状態(中略)の時は、ステップ305に進んでEGRをON(EGR弁10をON)とし、(中略)加速状態でないと判定された時、(中略)EGRをOFF(EGR弁10をOFF)とし」(3頁右下欄15行-4頁左上欄3行) (ハ)「ステップ602では、機関がリーン運転条件か否かを、たとえば水温THWが所定値以上か否かにより、判別する。この結果、リーン運転条件であればステップ603に進み、リーン運転条件でなければステップ608に進み、リーン補正係数KLEANを1.0として直接ステップ609に進む。なお、KLEAN=1.0は理論空燃比相当値である。」(4頁右下欄4-11行) (ニ)「ステップ604では、吸入空気圧PMにもとづきROM104に格納されたステップ604内図示の1次元マップにより係数KLEANPMを補間計算する。 ステップ604、605内の図示曲線を比較して分るように、KLEANPMの値は、EGR作動中(ステップ604)の方がEGR作動停止中(ステップ605)より大きくされている。すなわち、EGR作動中にあっては、ややリッチめとされる。 ステップ606では、RAM105より回転速度データNEを読出してROM104に格納されたステップ606内図示の1次元マップにより係数KLEANNEを補間計算する。 ステップ609では、上述の2つの係数KLEANPM、KLEANNEよりリーン化補正係数KLEANを、(中略)演算する。上記において、ステップ604、606、607とくにステップ606はEGRがONのときに空燃比A/Fを16〜19に設定する手段であり」(4頁右下欄19行-5頁左上欄19行) (ホ)「定常走行や緩加速時のような軽負荷状態では、空燃比A/Fを20〜24にして運転され、かつEGR弁10はOFFでEGRガスは吸気系8に導入されない。」(5頁右上欄12-15行) (ヘ)「アイドルからの加速時のように、所定値以上の加速状態にある軽、中負荷状態では、トルクが必要なため、空燃比A/Fを16〜19にして運転され、かつEGR弁10はONでEGRガスが吸気系8に導入される。」(5頁右上欄18行-左下欄2行) (ト)「上記以上の高負荷域では、理論空燃比適合とし」(5頁左下欄10行) 3.対比・判断 本願発明と引用例に記載された発明を対比する。 (A)上記「2.引用例」の摘記事項(イ)の記載からみて、「排気ガス再循環装置12」は、本願発明の「内燃機関の排気ガスの一部を吸気系に環流する排気環流制御手段」に相当することは明らかである。また、同摘記事項(ハ)及び(ニ)の記載からみて、引用例に記載された発明が、内燃機関の空燃比の制御を行っていることも明らかである。そうすると、引用例に記載された発明は、本願発明の「内燃機関の排気ガスの一部を吸気系に環流する排気環流制御手段を有する内燃機関の空燃比制御装置」に相当する構成を具備していると認められる。 (B)次に、上記「2.引用例」の摘記事項(ハ)及び(ト)の記載からみて、引用例の第6図においてステップ602、608を経過する場合は、内燃機関が軽負荷及び中負荷以上の高負荷域という所定の理論空燃比運転領域にあることを水温THW等から判断し、空燃比が理論空燃比相当となるように制御するものと認められる。そうすると、引用例に記載された発明は、本願発明の「内燃機関が所定の理論空燃比運転領域にあるとき前記内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比に制御する理論空燃比制御手段」に相当する構成を具備していると認められる。 (C)また、上記「2.引用例」の摘記事項(ロ)ないし(ホ)の記載からみて、引用例の第6図においてステップ602、603、605、606、607を経過する場合は、内燃機関が理論空燃比よりもリーン側の運転領域にあることを水温THW等から判断し、定常走行や緩加速時のような軽負荷状態という運転領域では、吸入空気圧や回転速度等に応じて空燃比A/Fの値が20〜24となるように制御するものと認められる。そうすると、引用例に記載された発明は、本願発明の「内燃機関が所定のリーン運転領域にあるとき該内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側の所定空燃比に制御するリーン制御手段」に相当する構成を具備していると認められる。 (D)さらに、上記「2.引用例」の摘記事項(ロ)、(ハ)、(ニ)及び(ヘ)の記載からみて、引用例の第6図においてステップ602、603、604、606、607を経過する場合は、内燃機関が理論空燃比よりもリーン側の運転領域にあることを水温THW等から判断し、アイドルからの加速時のように、所定値以上の加速状態にある軽、中負荷状態という運転領域では、EGR弁をONにしてEGRガスを吸気系に導入し、吸入空気圧や回転速度等に応じて空燃比A/Fの値が16〜19となるように制御するものと認められる。そして、上記「アイドルからの加速時のように、所定値以上の加速状態にある軽、中負荷状態」とは、上記(C)の「定常走行や緩加速時のような軽負荷状態」と上記(B)の「軽負荷及び中負荷以上の高負荷域」との間にある運転領域であると解されるから、「所定のリーン運転領域」及び「所定の理論空燃比運転領域」の間の運転領域であると認められる。また、「16〜19」という空燃比A/Fの値は、上記(C)における「リーン側の所定空燃比」(20〜24)と上記(B)における理論空燃比の中間に当たるものである。そうすると、引用例に記載された発明は、本願発明の「内燃機関が前記所定のリーン運転領域と前記所定の理論空燃比運転領域との間に設けられた運転領域にあり、且つ前記排気還流制御手段による前記排気ガスの還流状態にあるときに、前記リーン側の所定空燃比と前記理論空燃比との中間の空燃比を目標空燃比に設定する目標空燃比設定手段」に相当する構成を具備していると認められる。 (E)したがって、引用例に記載された発明は、「内燃機関が所定のリーン運転領域にあるとき該内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比よりリーン側の所定空燃比に制御するリーン制御手段(上記(C)参照)と、前記内燃機関が所定の理論空燃比運転領域にあるとき前記内燃機関に供給する混合気の空燃比を理論空燃比に制御する理論空燃比制御手段(上記(B)参照)と、前記内燃機関の排気ガスの一部を吸気系に還流する排気還流制御手段とを有する内燃機関の空燃比制御装置(上記(A)参照)において、 前記内燃機関が前記所定のリーン運転領域と前記所定の理論空燃比運転領域との間に設けられた運転領域にあり、且つ前記排気還流制御手段による前記排気ガスの還流状態にあるときに、前記リーン側の所定空燃比と前記理論空燃比との中間の空燃比を目標空燃比に設定する目標空燃比設定手段(上記(D)参照)を設けたことを特徴とする内燃機関の空燃比制御装置。」の構成、即ち本願発明の構成を全て具備していると認められる。 (F)なお、請求人は、審判請求の理由において「引例5は、所定値以上の加速状態である軽・中負荷状態において、空燃比を16〜19にするとともにEGRをONするものである。つまり、引例5は、機関が本願発明の「所定のリーン運転領域」に相当する領域にあるときにEGRをオンするものを開示するのであって、リーン運転領域と理論空燃比運転領域の間に設けられる運転領域についてはなんら言及していない。」と主張している(平成12年6月1日付け手続補正書の6頁11-15行。ここで上記「引例5」とは、本審決の「引用例」である「特開平3-253744号公報」のことを指している。)。しかし、上記(D)に記載したように、「所定値以上の加速状態である軽・中負荷状態」とは、上記「所定のリーン運転領域」である「定常走行や緩加速時のような軽負荷状態」とは異なる運転領域であって、上記「リーン運転領域と理論空燃比運転領域の間に設けられる運転領域」に相当すると認められるから、上記請求人の主張を採用することはできない。 4.むすび したがって、本願発明は、引用例に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 なお、原査定の基礎となった平成11年6月29日付け拒絶理由通知書においては、特許法第29条第2項の規定を適用しているが、同法第29条第1項第3号の規定を適用するのが相当であり、原審の手続をみても、同法同項同号の規定を適用したのと同様の経過を示していることから、改めて拒絶理由を通知するまでもなく、上記規定によって、本願発明は特許を受けることができないと認めるのが相当である。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-04-19 |
結審通知日 | 2001-05-08 |
審決日 | 2001-05-21 |
出願番号 | 特願平4-134211 |
審決分類 |
P
1
8・
113-
Z
(F02D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 村上 哲 |
特許庁審判長 |
西野 健二 |
特許庁審判官 |
清田 栄章 栗田 雅弘 |
発明の名称 | 内燃機関の空燃比制御装置 |
代理人 | 渡部 敏彦 |