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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02K |
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管理番号 | 1045841 |
審判番号 | 不服2000-13397 |
総通号数 | 23 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-04-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-08-24 |
確定日 | 2001-09-13 |
事件の表示 | 平成11年特許願第293857号「車両用交流発電機」拒絶査定に対する審判事件[平成13年 4月27日出願公開、特開2001-119883]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は平成11年10月15日の出願であって、その発明は請求項1乃至請求項22に記載されたものであるところ、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を本願発明という。)は特許請求の範囲に請求項1に記載された次のとおりのものである。 「ランデル型磁極を有する回転子と、この回転子の外周に対向配置した固定子と、上記回転子を支持するフレームと、この一方のフレーム側に設けられた整流器と、上記他方のフレーム側に設けられ上記回転子を駆動するプーリとを有する車両用交流発電機において、上記固定子は、複数のスロットが形成された固定子コアと、この固定子コアのスロットに装着された固定子コイルとを備え、上記固定子コイルは複数の導体セグメントを接合して構成され、軸方向へ延出されたコイルエンドを備え、前記回転子は、その回転駆動により上記コイルエンドに冷却空気を送風する送風手段を備えており、上記固定子コイルのコイルエンドの内周面に全周にわたって装着され、上記コイルエンドの接合部を含んで上記各コイル間の隙間を塞いでなる樹脂を設けたことを特徴とする車両用交流発電機。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-37519号公報(以下、引用例1という。)に、「車両用交流発電機100は、概略的に言うと、車両のエンジンにより回転される回転軸1に固着され、回転子コイル6により励磁される回転子50と;この回転子50の外周に設けられ、固定子コイル8が巻装された固定子60と;前軸受け11及び後軸受け12を介し回転軸1をそれぞれ支持する前ブラケット9及び後ブラケット10と;回転軸1の前ブラケット9から突出した部分に固着された冷却用の第前1ファン16と;回転子50の前ブラケット9側端面に固着された第2前ファン17と;回転子50の後ブラケット10側端面に固着された後ファン18と;を有する。【0038】回転軸には、さらに、プーリ2、スリップリング5a、5bが固着されている。スリップリング5a、5bには、回転子コイル6に電圧を供給するためのブラシ13a、13bが電気的に接続されている。固定子60は、固定子鉄心7と、固定子鉄心7に巻装された固定子コイル8とから構成されている。そしてこの固定子鉄心7は、前ブラケット9及び後ブラケット10の間に支持されている。回転子50は、回転子鉄心4、回転子鉄心4のまわりに巻装された回転子コイル6、回転子コイル6を内包するように対向した配置された爪形の回転子磁極鉄心3a、3b等から構成されている。」(9欄3行乃至24行)、「上記構成において、ブラシ13a、13b及びスリップリング5a、5bを介して回転子コイル6に励磁電圧が供給されると、回転子磁極鉄心3a、3bが励磁される。この状態で、図示しないエンジンからの駆動力がプーリ2を介して回転軸1に伝達され、回転子磁極鉄心3a、3bが固定子コイル8の中で回転すると、固定子コイル8をよぎる磁束が変化して固定子コイルに8に誘導起電力が発生する。このとき発生する電流は交流であり、整流器14によって直流に変換され、車両に供給される。」(9欄37行乃至46行)と記載されていることが認められ、これらの記載によれば引用例1には「ランデル型磁極を有する回転子と、この回転子の外周に対向配置した固定子と、上記回転子を支持するフレームと、この一方のフレーム側に設けられた整流器と、上記他方のフレーム側に設けられ上記回転子を駆動するプーリとを有する車両用交流発電機において、上記固定子は、複数のスロットが形成された固定子コアと、この固定子コアのスロットに装着された固定子コイルとを備え、固定子コイルは軸方向へ延出されたコイルエンドを備え、前記回転子は、その回転駆動により上記コイルエンドに冷却空気を送風する送風手段を備えている車両用交流発電機。」との発明(以下、引用例1発明という。)が開示されていると認めることができる。 同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭53-107531号(実開昭55-24064号)のマイクロフィルム(以下、引用例2という。)に、「第1図において、固定子巻線を樹脂モールドした回転電機の構成について説明する。ハウジング1の内周側に固定子鉄心2が固着され、固定子鉄心2には軸方向にスロット(図示せず)が設けられており、該スロット内に固定子巻線(コイル)3が納められている。固定子巻線3のコイルエンド部分3´は固定子鉄心2に沿って円周方向に巻装されている。樹脂4はコイルエンド3´の全周を被うようにモールドされている。エンドブラケット5は軸受6を支持し、軸7に固着した回転子鉄心8を支える。回転子鉄心8には通気冷却用の回転子ファン9がエンドリング10と一体にアルミニュム鋳込みによって、取付けられている。通風孔11はエンドブラケット5の全周に渡って設けられ、ハウジング1の下半分に設けられた排気孔12と共に通風路を構成する。13は取付脚、14はファンガイドである。」(2頁15行乃至3頁12行)と記載されていることが認められ、そして、第1図にはコイルエンドの外周面、内周面の全周にわたって樹脂を装着することが図示されている。 3.対比・判断 本願発明を引用例1発明とを対比すると、両者は「ランデル型磁極を有する回転子と、この回転子の外周に対向配置した固定子と、上記回転子を支持するフレームと、この一方のフレーム側に設けられた整流器と、上記他方のフレーム側に設けられ上記回転子を駆動するプーリとを有する車両用交流発電機において、上記固定子は、複数のスロットが形成された固定子コアと、この固定子コアのスロットに装着された固定子コイルとを備えて軸方向へ延出されたコイルエンドを備え、前記回転子は、その回転駆動により上記コイルエンドに冷却空気を送風する送風手段を備えた車両用交流発電機。」の点で一致し、 (1)本願発明の固定子コイルは複数の導体セグメントを接合して構成されているのに対し、引用例1発明は係る構成について記載するところがない点、 (2)本願発明が固定子コイルのコイルエンドの内周面の全周にわたって装着され、上記コイルエンドの接合部を含んで上記コイル間の隙間を塞いでなる樹脂を設けているのに対し、引用例1発明が係る構成を備えていない点、で相違する。 そこで、上記各相違点について検討する。 A.相違点(1)について 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-191946号公報にも記載されているように、回転電機の固定子コイルとして複数の導体セグメントを接合して構成することは周知の技術であって、この周知技術を引用例1発明の固定子コイルとして採用することが困難であるとする技術的理由も見当たらず、そうすると、本願発明の相違点(1)に係る構成は当業者が容易に想到できたものというべきである。 B.相違点(2)について 前示のとおり引用例2には回転電機の固定子のコイルエンドの内周面の全周にわたって樹脂を装着しコイル間の隙間を塞ぐという技術思想が示されているのであるから、この技術思想を周知の複数の導体セグメントを接合して構成した固定子コイルのコイルエンドに適用し、コイル間の隙間を塞ぐことは当業者が容易に想到できたものというべきである。 そして、本願発明が奏する「各コイルエンドのコイルは樹脂を介して連結され、振動を受けることによって、コイル間またはコイル接合部同士が接触することがないので、コイルのレアショート並びに異音の発生を防止でき、また、コイルエンドの接合部が外れることがなく、接合部のクラックも発生しないので接触抵抗の増大、温度上昇の問題点を解消できる。また、コイルエンドの接合部が溶接等で溶融してエッジとなったとしても、そのエッジは樹脂の付着により、曲面状とし得るので、ファン等との高次数の風騒音が発生する不具合を解消できる。さらにまた、コイルエンドのコイル間に異物がかみ込んだり、コイルに直接異物が衝突してコイルに変形が生じて絶縁性が損なわれる不具合も解消できる。、また、固定子コイルのコイルエンドの内周面に全周にわたって樹脂が装着され、各コイル間の隙間を塞いでいるので、コイエンドの内周側子コイルの絶縁性が向上すると共に、内周部のコイル間で生じる風騒音を低減できる。」(段落【0059】12行27行)との作用効果も引用例1、引用例2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は引用例1、引用例2及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2001-06-29 |
結審通知日 | 2001-07-03 |
審決日 | 2001-07-31 |
出願番号 | 特願平11-293857 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 小川 恭司 |
特許庁審判長 |
大森 蔵人 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 紀本 孝 |
発明の名称 | 車両用交流発電機 |
代理人 | 鈴木 憲七 |
代理人 | 福井 宏司 |
代理人 | 古川 秀利 |
代理人 | 曾我 道治 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 池谷 豊 |