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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05K |
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管理番号 | 1065052 |
審判番号 | 不服2000-9472 |
総通号数 | 35 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-01-17 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2000-06-23 |
確定日 | 2002-10-04 |
事件の表示 | 平成8年特許願第38944号「多層印刷配線板及びその製造方法」〔平成9年1月17日出願公開(特開平9-18150号)、請求項の数(10)〕拒絶査定に対する審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願の発明 本願は、平成7年4月28日に出願された特願平7-129535号の特許出願を先の出願とする、特許法第41条第1項に規定する優先権を主張して、平成8年1月31日付で出願されたものであって、その発明は、平成11年2月24日付、平成12年1月31日付、平成12年7月24日付の各手続補正に係る明細書における、特許請求の範囲の請求項1~10のそれぞれに記載された次のとおりのものと認める。 【請求項1】 基台となる絶縁基板と、前記絶縁基板の上面、下面の少なくとも一方の面上に形成した第1の回路パターンと、前記第1の回路パターンを形成した面側の前記絶縁基板上に前記第1の回路パターンを蔽って形成した絶縁層と、前記第1の回路パターンを露出させるべく前記絶縁層に形成した接続用有底孔と、前記第1の回路パターンと接続すべく前記接続用有底孔の内壁より連続して前記絶縁層上に形成した第2の回路パターンとを少なくとも有する多層印刷配線板において、 前記絶縁層を、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、15乃至35重量部であり、1乃至5μmの平均粒径を有し且つ前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対し可溶性である炭酸カルシウム粒と、10乃至20重量部の応力緩和剤としてのポリブタジエンとから構成すると共に、 前記絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを、前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤により溶出した前記炭酸カルシウム粒の溶出粗面として形成したことを特徴とする多層印刷配線板。 【請求項2】 前記第2の回路パターン上に第2の絶縁層を及び該第2の絶縁層上に第3の回路パターンを形成して、前記第2の回路パターン及び前記第3の回路パターン相互を電気的に接続するための接続用有底孔をそれぞれ形成したことを特徴とする請求項1記載の多層印刷配線板。 【請求項3】 基台となる絶縁基板と、前記絶縁基板の上面,下面の少なくとも一方の面上に形成した第1の回路パターンと、前記第1の回路パターンを形成した面側の前記絶縁基板上に前記第1の回路パターンを蔽って形成した内側絶縁層と外側絶縁層とからなる複合絶縁層と、前記第1の回路パターンを露出させるべく前記複合絶縁層に形成した接続用有底孔と、前記第1の回路パターンと接続すべく前記接続用有底孔の内壁より連続して前記複合絶縁層上に形成した第2の回路パターンとを少なくとも有する多層印刷配線板において、 前記内側絶縁層を、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、10乃至30重量部であり、その平均粒径が1乃至3μmである応力緩和剤としてのSiO2粒とから構成し、 前記外側絶縁層を、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、15乃至35重量部であり、1乃至5μmの平均粒径を有し且つ前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対し可溶性である炭酸カルシウム粒と、10乃至20重量部の応力緩和剤としてのポリブタジエンとから構成すると共に、 前記複合絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを、前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤により溶出した前記炭酸カルシウム粒の溶出粗面として形成したことを特徴とする多層印刷配線板。 【請求項4】 前記第2の回路パターン上に第2の複合絶縁層を及び該第2の複合絶縁層上に第3の回路パターンを形成して、前記第2の回路パターン及び前記第3の回路パターン相互を電気的に接続するための接続用有底孔それぞれ形成したことを特徴とする請求項3記載の多層印刷配線板。 【請求項5】 前記各接続用有底孔はその断面形状が略V字型のテーパー面を有しそのテーパー面は前記絶縁基板の表面に対して45度から85度に形成してなることを特徴とする請求項2又は請求項4記載の多層印刷配線板。 【請求項6】 基台となる絶縁基板の上面,下面の少なくとも一方の面上に第1の導電体を積層する工程と、該第1の導電体をエッチング処理して第1の回路パターンを形成する工程と、前記第1の回路パターンを形成した面側の前記絶縁基板上に、前記第1の回路パターンを蔽って、第1の絶縁層を形成する工程と、前記第1の回路パターンを露出させるべく前記第1の絶縁層に接続用有底孔を穿設する工程と、 前記第1の絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを酸化剤処理する工程と、前記第1の回路パターンと接続すべく前記接続用有底孔の内壁より連続して前記第1の絶縁層上に第2の回路パターンを形成する工程とを少なくとも有する多層印刷配線板の製造方法において、 前記第1の絶縁層を形成する工程は、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、15乃至35重量部であり、1乃至5μmの平均粒径を有し且つ前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して可溶性である炭酸カルシウム粒と、10乃至20重量部の応力緩和剤としてのポリブタジエンとで形成する工程であり、 前記酸化剤処理する工程は、前記第1の絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを、前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤により前記炭酸カルシウムを溶出して溶出粗面として形成する工程であることを特徴とする多層印刷配線板の製造方法。 【請求項7】 前記第2の回路パターン上に、前記第1の絶縁層の組成からなる第2の絶縁層を形成する工程と、 前記第1及び/又は第2の回路パターンを露出させるべく前記第1及び/又は第2の絶縁層に接続用有底孔を穿設する工程と、 前記酸化剤を用いて前記第2の絶縁層の表面及びこの絶縁層に穿設した前記接続用有底孔の内壁を粗面化する工程と、 前記粗面化した上に第3の導電体を形成する工程と、 該第3の導電体をエッチング処理して第3の回路パターンを形成する工程とを順次複数回繰り返して多数の回路パターンを形成してなる請求項6記載の多層印刷配線板の製造方法。 【請求項8】 基台となる絶縁基板の上面,下面の少なくとも一方の面上に第1の導電体を積層する工程と、該第1の導電体をエッチング処理して第1の回路パターンを形成する工程と、前記第1の回路パターンを形成した面側の前記絶縁基板上に、前記第1の回路パターンを蔽って、内側絶縁層と外側絶縁層とからなる第1の複合絶縁層を形成する工程と、前記第1の回路パターンを露出させるべく前記第1の複合絶縁層に接続用有底孔を穿設する工程と、前記第1の複合絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを酸化剤処理する工程と、前記第1の回路パターンと接続すべく前記接続用有底孔の内壁より連続して前記第1の複合絶縁層上に第2の回路パターンを形成する工程とを少なくとも有する多層印刷配線板の製造方法において、 前記第1の複合絶縁層における前記内側絶縁層を形成する工程は、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、10乃至30重量部であり、その平均粒径が1乃至3μmである応力緩和剤としてのSiO2粒とで形成する工程であり、 前記第1の複合絶縁層における前記外側絶縁層を形成する工程は、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示すビスフェノールA系エポキシ樹脂と、このビスフェノールA系エポキシ樹脂中に分散させた、前記ビスフェノールA系エポキシ樹脂100重量部に対して、15乃至35重量部であり、1乃至5μmの平均粒径を有し且つ前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対し可溶性である炭酸カルシウム粒と、10乃至20重量部の応力緩和剤としてのポリブタジエンとで形成する工程であり、 前記酸化剤処理する工程は、前記第1の複合絶縁層の表面と前記接続用有底孔の内壁の表面とを、前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤により前記炭酸カルシウム粒を溶出して溶出粗面として形成する工程であることを特徴とする多層印刷配線板の製造方法。 【請求項9】 前記第2の回路パターン上に、前記第1の複合絶縁層の組成からなる第2の複合絶縁層を塗布する工程と、前記第1及び/又は第2の回路パターンを露出させるべく前記第1及び/又は第2の複合絶縁層に接続用有底孔を穿設する工程と、 前記酸化剤を用いて前記第2の複合絶縁層の表面及びこの複合絶縁層に穿設した前記接続用有底孔の内壁を粗面化する工程と、前記粗面化した上に第3の導電体を形成する工程と、該第3の導電体をエッチング処理して第3の回路パターンを形成する工程とを順次複数回繰り返して多数の回路パターンを形成してなる請求項8記載の多層印刷配線板の製造方法。 【請求項10】 前記各接続用有底孔は、短パルスCO2レーザーの焦点をずらすと共にそのパルス幅及びパルスエネルギーを制御して前記絶縁基板の表面に対して45度から85度のテーパー面を有する略V字型の断面形状に形成してなることを特徴とする請求項7又は請求項9記載の多層印刷配線板の製造方法。 2.本願各発明に関しての優先規定の適用の可否について 上記1.で言及したように、本願については、平成7年4月28日に出願された特願平7-129535号の特許出願を先の出願とする、特許法第41条第1項に規定する優先権が主張されているので、本願各発明が、当該先の出願の「願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明」であるか否かについて検討する。 上記の各請求項の記載から明らかなように、本願各発明のいずれにおいても、「応力緩和剤としてのポリブタジエン」を用いることが必須の構成とされている。 一方、上記の特願平7-129535号の特許出願(以下、「先の出願」という)の願書に最初に添付された明細書又は図面には、「応力緩和剤」を加える旨の記載はあるけれども、「応力緩和剤としてのポリブタジエン」については、直接的に明示する記載や言及があるわけではない。そして、「応力緩和剤」と「ポリブタジエン」とは同義の用語とはいえないし、当該技術分野における「応力緩和剤」は、常に「ポリブタジエン」に限られるというものでもないから、「応力緩和剤としてのポリブタジエン」については、上記先の出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載されていた事項とすることはできない。 したがって、上記の各請求項に記載された事項によって特定される、本願各発明については、先の出願の時にされたものとみなすことはできないので優先権を認めない。 3.引用文献 原査定の拒絶理由で引用された、いずれも、本願各発明についての出願前に頒布された刊行物は、次のとおりである。 第1引用例:特開平5-7081公報 第2引用例:特開平6-25512号公報 第3引用例:特開平6-204661号公報 第4引用例:特開昭61-252698号公報 第5引用例:特開平5-7080号公報 第6引用例:特開昭62-291095号公報 第7引用例:特開平1-275682号公報 第8引用例:特開平1-301774号公報 4.発明の対比 上記各請求項の記載から明らかなように、本願の各発明のいずれにおいても、多層印刷配線板用の絶縁層の基材である、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示す「ビスフェノールA系エポキシ樹脂」100重量部に対して、 15乃至35重量部の「1乃至5μmの平均粒径を有し且つ前記過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対し可溶性である炭酸カルシウム粒」(以下、 「A成分」という)と、 10乃至20重量部の「応力緩和剤としてのポリブタジエン」(以下、 「B成分」という) とを加えるという、構成要件が具備されている。 そこで、上記のA成分に関して、上記各引用例の記載をみると、多層配線基板の樹脂成分中に炭酸カルシウム粒を加え、酸化剤による表面粗化の処理を促進することについては、第1、第4、第5のいずれの引用例にも開示されている。 一方、B成分に係るポリブタジエンについては、唯一第2引用例において言及されているが、この第2引用例に記載されているのは、「IC、LSI等の半導体素子を金属フレーム等に接着する樹脂ペースト」に、ポリブタジエン化合物を添加し、「硬化物の弾性率」を低下させることによって、金属フレームとシリコンチップとを接着した際の「熱膨張率の差に基づく」不具合を防止しようとするものであって、酸化剤による表面粗化処理を促進するために、ポリブタジエンを加えるというものではない。 そうすると、多層印刷配線板用の絶縁層の素材として、過マンガン酸塩を主とした酸化剤に対して難溶性を示す「ビスフェノールA系エポキシ樹脂」100重量部に対して、「10乃至20重量部の応力緩和剤としてのポリブタジエン」を加えるという、本願各発明の構成については、上記いずれの引用例にも開示や示唆するものが存在しないことになる。 そして、本願各発明では、過マンガン酸カリ等で分解されやすいポリブタジエンを、所定粒径の炭酸カルシウムと共に、上記のエポキシ樹脂素材に所定量加えることによって、銅等の無電解メッキに適する表面粗化の状態を実現できるという、独自の作用効果を奏するものと認められる。 したがって、本願各発明は、上記各引用例に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 5.むすび 以上のとおりであるから、本願を原査定の理由によって拒絶すべきものとすることはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由も発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2002-09-25 |
出願番号 | 特願平8-38944 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H05K)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 青木 俊明、豊島 ひろみ |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
尾崎 和寛 鈴木 久雄 |
発明の名称 | 多層印刷配線板及びその製造方法 |