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審決分類 |
審判 全部申し立て 発明同一 H01F 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01F 審判 全部申し立て 特36 条4項詳細な説明の記載不備 H01F 審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 H01F 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01F |
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管理番号 | 1087994 |
異議申立番号 | 異議2002-70316 |
総通号数 | 49 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-09-21 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2002-02-06 |
確定日 | 2003-10-14 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3203494号「低損失酸化物磁性材料」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3203494号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.訂正の適否 (1)訂正の内容 特許権者が求めている、平成14年7月22日付け訂正請求書に添付された訂正明細書における訂正の内容は以下のとおりである。 訂正事項a.特許請求の範囲の請求項1を次のとおり訂正する。 「【請求項1】主成分として30~40モル%の一酸化マンガン(MnO),5~15モル%の酸化亜鉛(ZnO)及び残部として酸化第二鉄(Fe2O3)を含み,副成分として0.02~0.15重量%の酸化カルシウム(CaO)及び0.005~0.100重量%の酸化ケイ素(SiO2)を含む酸化物磁性材料において,副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有することを特徴とする低損失酸化物磁性材料。」 訂正事項b.明細書中の【0004】段落を次のとおり訂正する。 「【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明の低損失酸化物磁性材料は,主成分として30~40モル%のMnO,5~15モル%のZnO及び残部としてFe2O3を含み副成分として0.02~0.15重量%のCaOと0.005~0.100重量%のSiO2を含む酸化物磁性材料において,副成分として更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有することを特徴としている。」 訂正事項c.明細書中の【0009】段落の【表1】中の「副成分(重量%)」の欄において、「Cr2O3」、「NbO5」、「V2O5」を、それぞれ「ZrO2」、「Al2O3」、「Cr2O3」と訂正する。 訂正事項d.明細書中の【0010】段落の「(No.17)」を「(No.16)」と訂正する。 (2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 ア.訂正事項aについて 上記訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明において、「副成分として,更に0.30重量%以下の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下の酸化リン(P2O5)を含有すること」を「副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有すること」と限定するもので、副成分として「・・・重量%以下・・・を含有する」という記載を、より明確になるように0を含まないものに限定したものである。 したがって、上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮に該当するものである。 イ.訂正事項bについて 上記訂正事項bは、訂正された特許請求の範囲の記載との整合を図るためのものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 ウ.訂正事項cについて 明細書【0010】段落には、「また,ZrO2を0.40重量%添加(No.15),Al2O3を0.60重量%添加(No.17(16の誤記)),Cr2O3を0.30重量%添加(No.19),P2O5を0.10重量%添加(No.21)においては,結晶粒に異常粒成長が認められ,比抵抗が劣化し,電力損失の値が大きくなっている。」と記載されており、【表1】において、副成分を0.40重量%添加したものは、1箇所しかなく、No.15であり、この副成分はZrO2と認められ、副成分を0.60重量%添加したものは、1箇所しかなく、No.16であり、この副成分はAl2O3と認められ、副成分としてP2O5を0.10重量%添加したものは、No.21にあるので、残りの0.30重量%添加(No.19)は、Cr2O3と認められ、自明である。しかも、「NbO5」と「V2O5」とは、この発明と全く関係のない副成分を誤って記載したものと認められるので、訂正事項cは、誤記の訂正を目的とするものである。 エ.訂正事項dについて 訂正前の明細書【0010】段落には、「Al2O3を0.60重量%添加(No.17)」と記載されているが、【表1】において、副成分を0.60重量%添加したものは、1箇所しかなく、No.16であり、この副成分はAl2O3と認められると共に、「(No.17)」は、明らかに「(No.16)」の誤記である。 したがって、訂正事項dは、誤記の訂正を目的とするものである。 そして、いずれも、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内であり、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、平成11年改正前の特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 2.特許異議の申立てについての判断 (1)本件発明 上記のとおり、訂正は認められるから、本件請求項1に係る発明は、訂正された特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】主成分として30~40モル%の一酸化マンガン(MnO),5~15モル%の酸化亜鉛(ZnO)及び残部として酸化第二鉄(Fe2O3)を含み,副成分として0.02~0.15重量%の酸化カルシウム(CaO)及び0.005~0.100重量%の酸化ケイ素(SiO2)を含む酸化物磁性材料において,副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有することを特徴とする低損失酸化物磁性材料。」 (2)取消理由通知で引用された刊行物等に記載の発明 当審で通知した取消理由で引用した刊行物1(特開平3-116803号公報)には、「低損失磁性材料の製造方法」(発明の名称)に関して、「実施例4 主成分として、34.5モル%のMnO、13.5モル%のZnO、残部は52.0モル%のFe2O3組成となるように・・・酸化物粉体を噴霧焙焼した。 得られた酸化物粉体に添加物として0.01重量%のSiO2、0.02重量%のCaOを添加し、添加成分としてHfO2添加し、造粒し成型プレスした後、焼結し酸化物磁性材料焼結体(試料11~17)を得た。 ・・・また、第4図において、 11はHfO2を添加しない場合、」(第5頁右下欄第1~20行)が、第4図と共に記載されている。 同刊行物2(特開平2-271923号公報)には、「フェライト用原料酸化物の製造方法」(発明の名称)に関し、「実施例1 FeCl2とMnCl2の水溶液を所定のモル比で混合した後、800℃で噴霧焙焼した。得られた酸化物組成は Fe2O3:Mn2O3=75.3:24.7(重量%比)で、残留塩素量は3010ppmであった。次にこの混合酸化物を500~1000℃の温度範囲で空気気流中で40分間加熱したときの、残留塩素量の変化を第1図に示す。 次にこの脱塩素した酸化物に ZnOを所定量及び焼成後に含まれるCaO,SiO2換算でCa,Si源をそれぞれ500,200ppm添加して Fe2O3:Mn2O3:ZnO=69.4:22.8:7.8(重量%比)の組成に」すること(第3頁右下欄第10行~第4頁左上欄第1行)が、第1図と共に記載されている。 同先願(特願平3-290187号(特開平5-74622号公報参照))には、「高周波用ソフトフェライト焼結体の製造方法」(発明の名称)に関して、「【請求項1】 Fe2O3,MnO,ZnOを主成分とするフェライト焼結体の製造方法において、塩化鉄、塩化亜鉛及び塩化マンガンを含有する混合水溶液を、流動層の温度が600℃以上の流動焙焼炉に噴霧し、熱分解によって生成する混合酸化物粉末を400℃以上1100℃以下で熱処理し、解砕して得られる前記ソフトフェライト原料粉を造粒、成形、焼成することを特徴とする高周波用ソフトフェライト焼結体の製造方法。」 「【請求項3】 TiO2,ZrO2,SiO2,CaOから選ばれる少なくとも1種を副成分として含有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の高周波用ソフトフェライト焼結体の製造方法。」 「 【0022】 なお、主成分であるFe2O3,MnO,ZnOの含有量は、 31モル%≦ MnO ≦44モル% 5モル%≦ ZnO ≦14モル% 51モル%≦Fe2O3≦55モル% であることが望ましい。 【0023】 上記主成分の外に以下の副成分を少なくとも1種、好ましくは全種を含有することが好ましい。即ち、 100ppm≦TiO2≦5000ppm 80ppm≦ZrO2≦2000ppm 80ppm≦SiO2≦ 400ppm 300ppm≦CaO ≦1500ppm 副成分限定の理由は、特開平1-224265号公報で公知であるが、ZrO2の場合上記範囲外では電力損失が増大する。」 「 【0034】 (実施例3) 実施例1と同様に、塩化鉄、塩化亜鉛、及び塩化マンガンを含む三成分混合40%水溶液を製造し、次に、流動層の温度を950℃に保持した流動焙焼炉に噴霧し、熱分解によって生成するFe2O3,MnO,ZnOを主成分とする複合酸化物粉末を下記方法により製造した。 【0035】 即ち、目標の三成分組成を得るために、予め三成分混合40%水溶液中の塩化鉄、塩化亜鉛、及び塩化マンガンをそれぞれ鉄濃度が高いもの、亜鉛濃度が高いもの、マンガン濃度が高いもの3種類用意し、流動層の温度を850℃,950℃,1100℃に変化させて酸化物の粉末を製造した。 この3種類の複合酸化物の一次平均粒子径は、流動層の温度850℃,950℃,1100℃でそれぞれ0.1μm,0.3μm,0.8μmであった。 【0036】 このようにして得られたフェライト原料粉の組成の分析値は下記の通りである。 Fe2O353.4mol%、MnO36.5mol%、ZnO10.1mol%、SiO2170ppm、CaO550ppm 実施例1と同様に、造粒、成形したあと、この成形体を焼結温度1150~1300℃、4時間、酸素を0.3~5%含む窒素雰囲気で焼結させた。 各試料の電力損失が最も良くなる焼結温度は粉末の一次平均粒子径によって異なる。結果を、表3に示す。 【0037】 【表3】省略」 ことが、記載されている。 (3)対比・判断 1)特許法第36条について 上記訂正が認められることにより、明細書の不備は解消している。 したがって、本件発明は、特許法第36条第4項及び第5項第1号の規定に違反するものではない。 なお、異議申立人は、特許異議申立書において「試料番号6,9,10,11の比較例は同18,20の本件発明より鉄損の値が小さい。このことは本件発明は所期の目的を達し得ないことを示している。」と主張しているが、本件発明と対比するのは、試料番号1の従来例で足り、本件発明は、高周波において、このような従来例よりも電力損失を低減できるという顕著な作用効果を奏するものである。また、試料番号6,9,10,11の比較例は、公知であるか否かの点も不明である。 2)特許法第29条第1項第3号及び特許法第29条第2項について 本件請求項1に係る発明と上記刊行物1、2に記載の発明とを対比すると、上記刊行物1、2には、本件請求項1に係る発明の「副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有すること」は、記載されていない。 そして、かかる点により、本件請求項1に係る発明は、高周波において電力損失を低減できるという明細書記載の顕著な作用効果を奏するものである。 したがって、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1又は2に記載された発明ではなく、また、上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも認められない。 3)特許法第29条の2について 本件請求項1に係る発明と上記先願の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明とを対比すると、上記先願の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明には、本件請求項1に係る発明の「副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有すること」が記載されておらず、本件請求項1に係る発明は、上記先願の特許出願の願書に最初に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるとは認められない。 3.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る発明の特許を取り消すことができない。 そして、他に本件請求項1に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。 したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は、拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。 よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 低損失酸化物磁性材料 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 主成分として30~40モル%の一酸化マンガン(MnO),5~15モル%の酸化亜鉛(ZnO)及び残部として酸化第二鉄(Fe2O3)を含み,副成分として0.02~0.15重量%の酸化カルシウム(CaO)及び0.005~0.100重量%の酸化ケイ素(SiO2)を含む酸化物磁性材料において,副成分として,更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有することを特徴とする低損失酸化物磁性材料。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は,低損失酸化物磁性材料に関し,特に主成分として一酸化マンガン(MnO),酸化亜鉛(ZnO)及び残部として酸化第二鉄(Fe2O3)を含み,副成分として酸化カルシウム(CaO)及び酸化ケイ素(SiO2)を含む低損失酸化物磁性材料の改良に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来のスイッチング電源用の変圧器において,スイッチング周波数は専ら50~200kHz程度のものが使用されておりこれに対応すべき,低損失酸化物磁性材料は,特に主成分として,30~40モル%のMnO,5~15モル%のZnO及び残部としてFe2O3を含み,副成分として0.02~0.15重量%のCaO及び0.005~0.100重量%のSiO2を含む低損失酸化物磁性材料がすでに開発されている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 スイッチング電源は装置の小型・軽量化の要求から益々,スイッチング周波数が高くなり,MHz帯での低損失化が要求されている。ところが従来の成分を有する低損失酸化物磁性材料を,MHz帯のスイッチング周波数を用いて電源用変圧器の磁芯材料として使用すると鉄損が大きく発熱するという欠点があった。 そこで,本発明の技術的課題は,MHz帯のスイッチング周波数で使用しても鉄損を小さくできる酸化物磁性材料を提供することにある。 【0004】 【課題を解決するための手段】 本発明の低損失酸化物磁性材料は,主成分として30~40モル%のMnO,5~15モル%のZnO及び残部としてFe2O3を含み副成分として0.02~0.15重量%のCaOと0.005~0.100重量%のSiO2を含む酸化物磁性材料において,副成分として更に0.30重量%以下(0は含まず)の酸化ジルコニウム(ZrO2),0.50重量%以下(0は含まず)の酸化アルミニウム(Al2O3),0.20重量%以下(0は含まず)の酸化クロム(Cr2O3),及び0.05重量%以下(0は含まず)の酸化リン(P2O5)を含有することを特徴としている。 【0005】 【作用】 本発明の低損失酸化物磁性材料は,MnO,ZnO及びFe2O3を主成分とし,副成分としてCaO,SiO2,ZrO2,Al2O3,Cr2O3及びP2O5を適量複合添加,含有したものである。副成分中のCaO,SiO2,ZrO2及びP2O5は結晶粒界に析出し粒界の比抵抗を著しく高めうず電流損失を大きく低減できる。また,P2O5は,それ自体結晶粒界へ析出するものであるが,粒界形成時にCaOと結びつき,CaOの粒界への析出を促進する添加物である。さらに,Al2O3及びCr2O3はフェライトスピネル中に固溶し,スピネル中の比抵抗を高める他に,フェライトスピネル結晶の均一粒成長を促し,ヒステリシス損失の低減を促進するものである。 【0006】 以上の様な各副成分の相互添加効果により,本発明の低損失酸化物磁性材料は,MHz帯での周波数領域においても充分な低損失特性を実現できる。また,本発明の低損失酸化物磁性材料は,室温から約100℃の温度範囲で,鉄損が最も低くなる様,温度特性を設定でき,実際に高周波電源用の磁芯として使用時の鉄損を少なくし得る。 【0007】 【実施例】 以下,本発明の実施例について説明する。 【0008】 主成分として53.0モル%のFe2O3,39.0モル%のMnO,及び8.0モル%のZnOを含有し,副成分として0.030重量%のSiO2と,0.100重量%のCaOを含有し,副成分としてさらにZrO2,Al2O3,Cr2O3,P2O5を所定量添加し,これらを混合・予焼・造粒し,成形プレスした後,5.0vol%の酸素を含む窒素ガス雰囲気中,焼結温度1100~1300℃の範囲の最適温度で焼結し酸化物磁性材料を得た。この酸化物磁性材料の各副成分及び添加物の添加量と周波数1MHz,磁束密度500ガウス(G),温度80℃における電力損失(PB:鉄損)の値を表1に示す。 【0009】 【表1】 【0010】 表1から,ZrO2,Al2O3,Cr2O3,P2O5の複合添加によって電力損失は従来材(No.1)に比べて低い値を示し,最適複合添加量(No.12)においては,従来材に対し約70%電力損失を低減可能であることが判明した。また,ZrO2を0.40重量%添加(No.15),Al2O3を0.60重量%添加(No.16),Cr2O3を0.30重量%添加(No.19),P2O5を0.10重量%添加(No.21)においては,結晶粒に異常粒成長が認められ,比抵抗が劣化し,電力損失の値が大きくなっている。 【0011】 表2には,本発明の実施例における試料番号No.12と従来材の試料No.1について初透磁率μi,飽和磁束密度B15,残留磁束密度Br,保持力Hc,比抵抗ρ,の値を示す。表2に示すように,本発明の実施例における材料の比抵抗は,従来材の約20倍と高い値となっている。 【0012】 【表2】 【0013】 【発明の効果】 以上の説明で明らかな様に,本発明においては,酸化物磁性材料にZrO2,Al2O3,Cr2O3,P2O5を適量複合添加する事により,スイッチング電源用材料として求められる諸特性を十分に満足するとともに,周波数1MHzの高周波において,従来のものより電力損失を低減できる,低損失酸化物磁性材料を提供でき,高周波磁芯用材料として,好適であり変圧器の小型化,軽量化を計る事が可能である。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2003-09-25 |
出願番号 | 特願平4-40924 |
審決分類 |
P
1
651・
534-
YA
(H01F)
P 1 651・ 531- YA (H01F) P 1 651・ 161- YA (H01F) P 1 651・ 113- YA (H01F) P 1 651・ 121- YA (H01F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 江畠 博 |
特許庁審判長 |
松本 邦夫 |
特許庁審判官 |
橋本 武 浅野 清 |
登録日 | 2001-06-29 |
登録番号 | 特許第3203494号(P3203494) |
権利者 | NECトーキン株式会社 |
発明の名称 | 低損失酸化物磁性材料 |
代理人 | 内山 英夫 |
代理人 | 山本 格介 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 後藤 洋介 |
代理人 | 後藤 洋介 |
代理人 | 小林 邦雄 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 山本 格介 |