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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B60K
管理番号 1089873
異議申立番号 異議2003-71068  
総通号数 50 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1996-08-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-04-28 
確定日 2004-01-07 
異議申立件数
事件の表示 特許第3338224号「車両搭載メータ装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3338224号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.本件発明
本件特許第3338224号についての出願は、平成7年2月16日に出願され、平成14年8月9日にその請求項1に係る発明に対して特許権が設定登録されたものであり、その後、請求項1に係る特許に対し異議申立人日本精機株式会社より特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされたものである。
そして、本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、願書に添付された登録時の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 少なくともスピードメータ、トリップ表示器及びこれらの駆動制御のためのメータ制御部が実装されるメータ用基板と、前記メータ用基板を収納するハウジングとを有した車両搭載メータ装置において、車両外部から送信機によって送信される電波信号をアンテナを介して受信し、当該車両のエンジンの始動制御若しくはドアの錠の開閉制御を行う電子制御装置の該アンテナを少なくとも前記メータ用基板又は前記ハウジングに設けたことを特徴とする車両搭載メータ装置。」

2.特許異議申立の概要
特許異議申立人は、証拠として、下記の甲第1~6号証を提出し、本件発明は、甲第1~6号証記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである旨主張している。
・証拠方法;
(1)甲第1号証:特開平6-84097号公報
(2)甲第2号証:特開平4-57402号公報
(3)甲第3号証:特開平6-237188号公報
(4)甲第4号証:特開平3-20669号公報
(5)甲第5号証:実願昭58-144359号(実開昭60-51465号)のマイクロフィルム
(6)甲第6号証:特開平1-122739号公報

3.甲号各証記載の事項
前記甲号各証には、以下のような技術的事項が記載されている。
(1)甲第1号証:
「緊急自動車の発信した電波を受ける自動車内に設けた受信機であり、緊急自動車が近づいたことと、その方向を運転者に知らせることが可能な緊急自動車確認装置。」(第2頁左欄第10~13行)、
「緊急自動車が接近してきた場合、例えば500メートル以内に近づくと受信機である緊急自動車確認装置により、運転者にランプ点灯、点滅、方向ランプ点灯、点滅と音により知らせる。これにより、運転者は、的確に、緊急自動車に対応できる。」(第2頁右欄第5~9行)、
「一般の自動車には、受信機である緊急自動車確認装置を取りつける。この装置は、図1で示すように、メーターパネル内に装着した場合と、運転者の見える所に置くようにした」(第2頁右欄第13~16行)、
また、図面の図1より、「受信機である緊急自動車確認装置をメーターパネル内に装着した」ことが看取できる。
(2)甲第2号証:
「このようなアンテナ5は、第2図に示すような無線受信器10に搭載される。図示無線送信器(受信器の誤り)10は、自動車から離れた位置から送信される信号を受信し、ドアロック操作、ライトの点灯等を制御するようにした小型受信器である。同図に示す無線受信器10は、長方形状の回路基板11と、この回路基板11上に実装された受信回路12、この受信回路12以外の回路部品類13と、この回路部品類13上に載置された上記アンテナ5とを内部に備えている。」(第2頁右下欄第11行~第3頁左上欄第1行)、
「同図(第5図)に示すアンテナ20は、例えば前述した無線受信機10のケースカバー17の裏面に、前記第4図に示すようなロッド部材14を備えた導電線15を一平面上に配置したうえで合成樹脂内に埋設して一体成形したものである。」(第3頁左下欄第17行~右下欄第1行)
また、図面の第2図には、「アンテナ5を無線受信器10に搭載したアンテナ一体型受信機。」が示されている。
(3)甲第3号証:
「本発明は、路上側に設置された交通情報(位置情報、渋滞情報、事故情報等々)の送信機から電波に乗って送信されてくる、これら交通情報を、車の側で受信するための車載受信機としての、アンテナ一体型受信機に関するものである。」(第2頁右欄第24~28行)、
「図1は、本発明の一実施例としてのアンテナ一体型受信機を示す斜視図である。同図において、1はディスプレイ、2はケースであり、図1には同時に、ケース2に内蔵されたアンテナ3も点線で示している。」(第3頁右欄第8~11行)、
「図2に見られるように、受信機はアンテナ3、受信回路部4、信号処理部5、画像処理部6、ディスプレイ部7から構成されている。」(第3頁右欄第13~16行)、
「図1から分かるように、アンテナと受信機の一体化により、従来のようにアンテナと受信機を接続するケーブルが無くて済むところから、ケーブルによる損失がなくなり、良好な受信が可能となる。」(第3頁右欄第39~42行)、 「図5の(a)および(b)は、それぞれアンテナと受信回路部を一枚基板に形成した一体型基板を実施例として示す断面図である。」(第4頁左欄第6~8行)
(4)甲第4号証:
「この本体ケース(19)には、前記センサケース(8)からの送信信号を受信する受信アンテナ(20)と、この受信信号を復調処理する受信回路部及び走行速度を演算する演算部を組込んだ基板(21)と、この基板(21)上に取付けられたLCD表示器(22)と、本体用電池(23)とが設けられている。」(第2頁左下欄第10~15行)、
「本体ケース(19)において、この送信信号が受信アンテナ(20)で受信されると、この受信信号より車輪回転数信号が復調された後、マイコン(26)に入力されて走行速度が算出され、これが表示器(22)にて表示される。」(第2頁右下欄第5~9行)
(5)甲第5号証:
「本案のラジオ付車両用速度計はデジタル表示式速度機構部とラジオ受信機部とを速度計本体筐内に備えたものにおいて、このラジオ受信機部のラジオアンテナと、前記速度計機構部の水晶発振器及び回転センサー入力端子と、の間に電源用電池を配設してなる」(明細書第2頁第12~17行)
(6)甲第6号証:
「第1図で符号1はコンビネーションメータのフロント板を示し、コンビネーションメータはほぼ同一平面内に燃料計2と、速度計3と、エンジンタコメータ4及びこれに一緒に組込まれた燃料消費計9と、水温計5とを備えており、さらに、ターンシグナルインジケータランプ6、電子的なトリップメータのための液晶表示計7及び種々の警告機能のためのポイントマトリックス表示計8を有している。第2図は本コンビネーションメータの構造を示す。(…中略…)この導体板25はコンビネーションメータの機能に必要なすべての能動及び受動の制御素子、導体路、差込結合部材及び接続部を備えている。さらに導体板25は信号処理に必要なコンピュータユニットを有しており、このコンピュータユニットは例えば2つの単1チップマイクロコンピュータと、使用目的に応じて組込まれた制御回路とから成ることができる。」(第3頁左上欄第1行~右上欄第6行)

4.取消理由通知の概要
当審で通知した取消理由通知の概要は、特許異議申立人が特許法第29条第2項の規定違反であるとして主張した理由及び証拠方法と同じものであって、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

5.対比・判断
そこで、本件発明と甲第1~6号証に記載された発明とを対比する。
甲第1号証に記載された発明は、緊急自動車の接近を(運転中の)運転者に知らせるために、メータパネル内に緊急自動車確認装置を装着し、メータパネル上のランプ点灯、点滅等により運転者が確認できるようにしたものであり、メータパネルとの関連が必ず存在するものと認められる。
一方、甲第2号証に記載された発明は、ドアロック操作を制御するためのアンテナ一体型の小型受信器であり、また、(車両の外にいてドアロック操作の送信を行う)運転者がドアロックやドアロック解除をメータパネル上でわざわざ視認する必要のないことは、当業者にとって技術常識であるから、当該受信器をメータパネル内と関連付けて、メータパネル内に装着する必然性は何らないものと解される。
しかも、甲第1、2号証に記載された発明のどちらも、本件発明の構成に欠くことができない事項である「車両のエンジンの始動制御若しくはドアの錠の開閉制御を行う電子制御装置の該アンテナを少なくとも前記メータ用基板又は前記ハウジングに設けた」構成(以下、「構成A」という。)を備えていない。
してみると、上記「構成A」を甲第1、2号証に記載された発明から当業者が容易に想到し得るとする根拠を、結局のところ見いだすことはできない。
また、甲第3~6号証に記載された発明は、いずれも「構成A」を備えていない。
そして、本件発明は、この「構成A」により、明細書記載の「アンテナ26が、車両のフロントガラス下端部の近くに位置している車両搭載メータ装置のメータ用基板23上に設けられているため、車両外部からの電波を受けやすいために、車体による電波遮蔽の影響を受けることなく良好な受信感度を確保できる。」(特許公報第3頁第5欄第37~42行参照)、及び、「電子部品、回路基板、各種コネクタ部材等の使用量を低減し、以てシステム全体の簡素化とローコスト化を図ることができると共に、良好な受信感度を確保できるような車両搭載メータ装置を得られる」(同第4頁第7欄第8~12行参照)という作用効果を奏するものである。
したがって、本件発明は、甲第1~6号証に記載された発明から容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、本件発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、とすることはできない。

6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由及び証拠方法によって、本件発明の特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明の特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものとは認めない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2003-12-10 
出願番号 特願平7-28292
審決分類 P 1 651・ 121- Y (B60K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 河端 賢  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
清田 栄章
登録日 2002-08-09 
登録番号 特許第3338224号(P3338224)
権利者 カルソニックカンセイ株式会社 日産自動車株式会社
発明の名称 車両搭載メータ装置  
代理人 田澤 博昭  
代理人 田澤 博昭  

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