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審決分類 審判 全部申し立て 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正  H04Q
審判 全部申し立て 2項進歩性  H04Q
審判 全部申し立て 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明  H04Q
審判 全部申し立て 4号2号請求項の限定的減縮  H04Q
管理番号 1117802
異議申立番号 異議2003-73821  
総通号数 67 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-07-30 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-26 
確定日 2005-03-09 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3460561号「電話装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3460561号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
特許第3460561号の請求項1に係る発明は、平成10年1月14日に出願され、平成15年8月15日に設定登録され、その後特許異議申立てがなされ、取消通知がなされ、その指定期間内である平成16年8月30日に訂正請求がなされたものである。
2.訂正の適否について
(訂正の要旨)
(i)特許請求の範囲の請求項1における訂正
a.「電話回線を介して各種の信号の送受信を行う送受信回路と」を「電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と」と訂正する。
b.「通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検出するアラート信号検出手段と」を「通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と」と訂正する。
c.「受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、」を追記する。
d.「前記親機のアラート信号検出手段がアラート信号を検出した後、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路に送信される間に、前記受話ミュート手段及び前記送話ミュート手段の各ミュートを実行させる本体制御装置と」を「前記親機のアラート信号検出手段がアラート信号を検出した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と」と訂正する。
(ii)明細書の段落0011を次のとおり訂正する。
「【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、本発明は、親機と子機とを備える電話装置であって、前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、前記子機との送受信を行う送受信回路と、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検出するアラート信号検知手段と、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、前記子機は、前記親機との送受信を行う送受信回路と、スピーカ及びマイクと、前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有することを特徴とする電話装置、を有して構成される。」
(iii)明細書の段落0012を次のとおりに訂正する。
「【0012】
本発明によれば、子機における受話ミュート手段及び送話ミュート手段を同時に作動させることにより、子機を使用しているユーザに親機が受信した発呼者情報を的確に送信し、かつ、同時に、当該ユーザに発呼者情報信号による雑音を聞かせることが無い快い電話装置を提供することができる。」
(iv)明細書の段落0013を次のとおりに訂正する。
「【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、本発明は、親機と子機とを備える電話装置であって、前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、前記子機との送受信を行う送受信回路と、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検出するアラート信号検知手段と、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、前記子機は、前記親機との送受信を行う送受信回路と、スピーカ及びマイクと、前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有することを特徴とする電話装置、を有して構成される。」
(訂正の可否)
上記訂正の可否について検討すると、上記訂正は、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正及び不明瞭な記載の釈明に該当する。
また、上記訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(まとめ)
よって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する特許法第126条第1乃至3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.特許異議の申立てについて
(本件発明)
特許第3460561号の請求項1に係る発明(以下、本件発明という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】親機と子機とを備える電話装置であって、
前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、
前記子機との送受信を行う送受信回路と、
通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と、
電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、
受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、
送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、
前記子機は、
前記親機との送受信を行う送受信回路と、
スピーカ及びマイクと、
前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、
前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、
前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、
前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、
前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有することを特徴とする電話装置。」
(刊行物記載の発明)
当審が通知した取消理由において引用した特開平9-135301号公報(以下、刊行物1という。)には、電話装置に関する発明が記載されており、「【0029】(実施の形態2)以下、本発明の第2の実施の形態について説明する。図6は、本発明の第2の実施の形態に係る電話装置を示すブロック図であり、親機と子機とから成る電話装置を示す。図6において、21は電話回線、22は電話回線21に接続される親機である。」、「【0030】親機22において、23は電話回線21を介して入力されるアラート信号を検知するためのアラート信号検知手段、24はアラート信号を検知したことをACK信号で知らせるために電話回線21へACK信号(確認信号)を送出するACK信号送出手段である。また25は電話回線21から到来する発呼者情報を検出する発呼者情報検出手段、26は後述の送話回路31にミュートをかけるミュート制御手段、27は発呼者情報検出手段25で検出された発呼者情報を記憶する記憶装置、28は記憶装置27に記憶された発呼者情報を発呼者情報信号として後述の子機33へ送信する発呼者情報送信手段、29はマイクロコンピュータにより構成される親機制御手段である。30は電話回線21とのインタフェース、31は音声信号を送出する送話回路、32は音声信号を入力する受話回路、ANT1は発呼者情報信号を電波信号として放射する親機アンテナである。」、「【0031】33は親機22との間で無線通信が可能な子機である。子機33において、ANT2は到来する発呼者情報電波信号を受信する子機アンテナ、34はANT2で受信された発呼者情報信号から発呼者情報を検出する発呼者情報受信手段、35は発呼者情報受信手段34で検出された発呼者情報を表示する表示装置、36はマイクロコンピュータにより構成される子機制御手段である。37はマイク、38はスピーカ、39は送話アンプ、40は受話アンプである。」、「【0032】以上のように構成された電話装置について、その動作を簡単に説明すると、コールウェイティング時、親機22の発呼者情報検出手段25で発呼者情報を検出し、検出した発呼者情報を記憶装置27に記憶し、子機33の表示装置35で上記発呼者情報を表示する。」、「【0033】次に、図6の装置について、その動作を図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。まず、コールウェイティング時に親機22に電話回線21を介して第3者から呼出しがあったことを知らせるアラート信号(2130Hzと2750Hzの信号)が入力されると、アラート信号検知手段23はその信号を検知して検知出力を親機制御手段29へ出力する。親機制御手段29はアラート信号検知手段23からの検知出力が80±5ms続くとそれがアラート信号であると判定し、ACK信号送出手段24へ通知する(S11)。通知を受けたACK信号送出手段24は、アラート信号を検知したことを知らせるACK信号を電話回線21へ自動的に送出する(S12)。」、「【0034】次に、ミュート制御手段26は、親機制御手段29の指示により、送話回路31にミュートをかけ、送話回路31内のミュート回路31aを働かせて送話用増幅器のゲインを下げる(S13)。」、「【0035】次に、親機制御手段29は、電話回線21から到来する発呼者情報を発呼者情報検出手段25が検出したか否かを判別する(S14)。発呼者情報検出手段25は、ステップ14で発呼者情報を検出しなかったと判別するときは、発呼者情報を検出するまで待機状態となる。ステップ14で発呼者情報を検出したと判別したときには親機制御手段29は発呼者情報を記憶装置27に記憶させる(S15)。」、「【0036】次に、親機制御手段29は、発呼者情報検出手段25による発呼者情報の検出が終了したか否かを判別する(S16)。ステップ16で発呼者情報の検出が終了していないと判別したときは、発呼者情報の記憶装置27への記憶を継続させる(S15、S16)。ステップ16で発呼者情報の検出が終了したと判別したときは、親機制御手段29は、ミュート制御手段26により送話回路31に設定したミュートを解除させる(S17)。ミュートをかけるタイミングを前実施の形態同様、電話局の交換機が発呼者情報を送信するタイミングに合わせることにより、発呼者情報を受信する際にその発呼者情報が音声信号等により壊されることがない。」、「【0037】次に、親機制御手段29は、記憶装置27に記憶された発呼者情報を発呼者情報送信手段28により子機33へアンテナANT1を介して送信させる(S18)。」、「【0038】 子機33の発呼者情報受信手段34は、発呼者情報送信手段28からANT1を介して送信されてきた発呼者情報信号をANT2を介して受信し、発呼者情報を検出し(S19)、子機制御手段36はステップ19で検出した発呼者情報を表示装置35に表示させる(S20)。」と説明されている。
同じく、当審が通知した取消理由において引用した特開平8-18631号公報(以下、刊行物2という。)には、無線電話システムに関する発明が記載されており、「【0019】上記説明では、S11に示すように、子機1のキー操作に起因にして音声回路を閉塞するようにしたが、次に、通信制御装置3から親機2経由で子機1へ制御情報の通信を開始する前に、通信制御装置3から親機2経由で子機1へ音声回路閉塞通知を送り、これによって音声回路を閉塞する場合の動作を説明する。」、「【0020】図5は、この場合の無線電話システムの動作例を示すシーケンスチャートであり、図6(A)、(B)は、無線電話システムの通信制御装置3および子機1の動作例を示すフローチャートである。」、「【0021】まず、子機1への制御情報が通信制御装置3で発生した場合(S311)、その制御情報通信を送る前に、通信制御装置3の制御部32は、親機2経由で音声回路閉塞通知を送る(S312)。音声回路閉塞通知を受け取った子機1の制御部12は(S32)、音声回路13(受信側)を閉塞する(S33)。」、「【0022】次に、子機1と通信制御装置3との間で親機2経由で制御情報の通信を行う(S34、S314)。通信制御装置3の制御部32は、この通信が完了することを確認次第(S315)、親機2経由で音声回路開放通知を送り(S316)、音声回路開放通知を受け取った子機1の制御部12が音声回路13を開く(S37)。以上により、制御情報の通信に伴う不快音を回避する。この場合、通信制御装置3のコマンドに起因する制御情報の通信の不快音を回避できる。なお、制御部32は、先と同様に、子機1から受信確認信号の返送が予想される時間帯は送話信号をミュートする。」と説明されている。
(対比)
本件発明と上記刊行物1記載の発明とを対比すると、
(i)上記刊行物1記載の発明は、親機と子機とを備える電話装置であり、本件発明が親機と子機とを備える電話装置であるとする点と軌を一にする。
(ii)上記刊行物1記載の発明の親機は、送話回路、受話回路を有しており、本件発明の親機が、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路を有するとする点と実質的な差異はない。
(iii)上記刊行物1記載の発明の親機には、子機との送受信を行う送受信回路の記載がないが、親機と子機が無線通信を行うとしていることからすると、そのための手段として送受信回路を備えているとするのが自然である。
したがって、本件発明の親機が、子機との送受信を行う送受信回路を有するとする点は、上記刊行物1記載の発明との実質的差異には当たらない(仮に相違点であるとしたとしても、子機との送受信を行う送受信回路を備えるとすることは、当業者が適宜行うことにすぎない。)。
(iv)上記刊行物1記載の発明の親機は、電話回線を介して入力されるアラート信号を検知するためのアラート信号検知手段を有しており、本件発明が、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検出するアラート信号検知手段を有するとする点と実質的な差異はない。
(v)上記刊行物1記載の発明の親機は、電話回線から到来する発呼者情報を検出する発呼者情報検出手段を有しており、本件発明の親機が、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段を有するとする点と実質的な差異はない。
(vi)上記刊行物1記載の発明の親機は、送話回路をミュートするミュート手段を有しており、本件発明が、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段を有するとする点と実質的な差異はない。
(vii)上記刊行物1記載の発明の子機には、親機との送受信を行う送受信回路の記載がないが、親機と子機が無線通信を行うとしていることからすると、そのための手段として送受信回路を備えているとするのが自然である。
したがって、本件発明の子機が、親機との送受信を行う送受信回路を有するとする点は、上記刊行物1記載の発明との実質的差異には当たらない(仮に相違点であるとしたとしても、親機との送受信を行う送受信回路を備えるとすることは、当業者が適宜行うことにすぎない。)。
(viii)上記刊行物1記載の発明の子機は、スピーカ、マイク及び発呼者情報を表示する表示装置を有しており、本件発明の子機が、スピーカ及びマイクと、親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置を有するとする点と実質的な差異はない。
(ix)上記刊行物1記載の発明においては、親機22に電話回線21を介して第3者から呼出しがあったことを知らせるアラート信号が入力されると、アラート信号検知手段23はその信号を検知して検知出力を親機制御手段29へ出力し、親機制御手段29はミュート制御手段26に指示して、送話回路31にミュートをかけるようにし、また、発呼者情報の検出が終了すると、親機制御手段29はミュート制御手段26にミュートを解除させるようにしており、上記刊行物1記載の発明が親機制御手段29を備えるとする点は、本件発明の親機が、親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、親機の送話ミュート制御手段によりミュートを作動させ、発呼者情報検出手段が発呼情報の検出を終了した後に上記ミュートの作動を停止させる本体制御装置を有するとする点と実質的な差異はない。
したがって、本件発明と上記刊行物1記載の発明とは次の点で相違し、その余の点では実質的な差異はない。
(a)本件発明の親機が、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段を有し、親機の本体制御装置が受話ミュート制御手段により受話回路のミュート及びその解除を行わせるとしているのに対し、上記刊行物1記載の発明にはその点の記載がない点
(b)本件発明の子機が、スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段を有するとし、親機が受信した発呼者情報信号が親機側の送受信回路から子機側の送受信回路へ送信されるときに、子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる本体制御装置を有するとしているのに対し、上記刊行物1にはその点についての記載がない点
(相違点についての検討)
上記相違点(a)について
刊行物1の【0042】~【0046】には、子機の例ではあるが、通話状態であると、発呼者情報を受信する際にその情報がスピーカからノイズとして聞こえてしまうので、それをさけるために、子機制御手段によりミュート回路に指令して、スピーカから出力されないようにすることが記載されており、また、刊行物2には、制御信号の受信に際し、その信号がノイズや不快感にならないように、音声回路を閉塞することが記載されているから、上記刊行物1記載の親機に、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段を設けるとすることは当業者が容易になし得ることにすぎない。
そして、受話ミュート制御手段を設ける際に、送話回路の制御と同様に、本体制御装置により受話ミュート制御手段に指示して、受話回路のミュート及びその解除を行わせるとすることは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。
上記相違点(b)について
発呼者情報を受信する際に、送話回路が作動していると発呼者情報が得られないことがあるということは、親機であろうと子機であろうと同じであるから、親機におけると同様に、子機が発呼者情報を正常に得るために、マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段を設け、親機が受信した発呼者情報信号が親機側の送受信回路から子機側の送受信回路へ送信されるときに、子機の子制御手段により送話ミュート手段を作動させるとすることは、当業者が容易になし得ることにすぎない。
また、刊行物1の【0042】~【0046】には、子機に関し、通話状態であると、発呼者情報を受信する際にその情報がスピーカからノイズとして聞こえてしまうので、それをさけるために、子機制御手段によりミュート回路に指令して、スピーカから出力されないようにすることが記載されており、また、刊行物2には、制御信号の受信に際し、その信号がノイズや不快感にならないように、音声回路を閉塞することが記載されているから、上記刊行物1記載の子機に、子機のスピーカからノイズが聞こえないように、スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段を設け、親機が受信した発呼者情報信号が親機側の送受信回路から子機側の送受信回路へ送信されるときに、子機の子機制御手段により受話ミュート手段を作動させるとすることは、当業者が容易になし得ることにすぎない。
(まとめ)
したがって、本件発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、特許法第113条第1項第2項に該当し、取り消されるべきものである。

よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電話装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】親機と子機とを備える電話装置であって、
前記親機は、
電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、
前記子機との送受信を行う送受信回路と、
通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と、
電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、
受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、
送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、
前記子機は、
前記親機との送受信を行う送受信回路と、
スピーカ及びマイクと、
前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、
前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、
前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、
前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼者情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、
前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有することを特徴とする電話装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、発呼者情報を表示する機能を備えたコードレス電話装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、電話装置で通話中に着信があった場合、通話相手の切り替えを可能とする交換局のサービス(以下コールウェイティングとする)において、第2の発呼者の情報を表示することができるビジュアルコールウェイティングサービスが普及しつつある。また、コードレスの普及により、前記第2の発呼者情報をコードレスの子機にて表示させる電話装置も多くなってきた。
【0003】
以下図面を参照しながら従来の電話装置について説明を行う。
図4は従来の電話装置の主要部分を示すブロック図であり、図4において1~14は親機、15~20は子機の主要構成部である。
【0004】
親機側において、1は電話回線、2は電話回線1より入力されるアラート信号を検知するためのアラート信号検知手段、3はアラート信号を検知したことをACK信号で電話回線1へ送出するためのACK信号送出手段、4は電話回線1より到来する発呼者情報を検出するための発呼者情報検出手段、5は発呼者情報検出手段4で発呼者情報を受信するときに受信信号が音声信号などにより壊されないようにするために後述の送受話回路10に送話ミュートをかける親機の送話ミュート制御手段、6は送受話回路10に受話ミュートをかける親機の受話ミュート制御手段、7は発呼者情報検出手段4により得られた発呼者情報を記憶する記憶装置、8はマイクロコンピュータにより構成されている親機の本体制御装置、9は子機との音声の送受信を行うための送受信回路、10は回線との送話/受話を行うための送受話回路、11は親機のアンテナ、12はフックスイッチ、13は親機のマイク、14は親機のスピーカー、15は親機との音声の送受信を行うための送受信回路である。
【0005】
子機側において、16は発呼者情報検出手段4で発呼者情報を受信するときに受信信号が子機の音声信号などにより壊されないようにするために子機に受話ミュートをかける子機の受話ミュート制御手段、17は子機に送話ミュートをかける送話ミュート制御手段、18は子機のアンテナ、19はマイクロコンピュータにより構成されている子機の本体制御装置、20は発呼者情報検出手段4で検出された発呼者情報を表示するための表示装置、21は子機のマイク、22は子機のスピーカーである。
【0006】
以上の各構成部をもつ従来の電話装置において、以下その動作について説明する。
【0007】
図5は従来の電話装置のフローチャートである。
図5のようにコールウェイティング時に電話回線から他の発呼者から着信があったことを知らせる2130Hzと2750Hzのデュアルトーンから構成されるアラート信号(CAS)が入力されたとき(STEP1)、アラート信号を80ms±5ms検知できたら、送受話にミュートをかける(STEP2)。その後自動的に電話回線ヘアラート信号を検知したことを知らせる1633Hzと941Hzの周波数から構成される60ms±5msのACK信号を送出する(STEP3)。ACK信号送出後、電話回線から到来する発呼者情報を検出し(STEP4)、記憶装置に記憶する。発呼者情報検出が終了すれば、すぐ子機にて発呼者情報表示するために子機へ発呼者情報を送信するが、そのときその送信データが壊れないように子機の送話ミュートをかけ、データ音が漏れないように子機受話ミュートもかける(STEP5)。
【0008】
図6は従来の電話装置の動作のタイミングチャートを示している。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成では、CAS受信後から子機への発呼者情報送信終了までミュートがかかりっぱなしになってしまい、通話相手に予告することなく約1秒間通話ができなくなってしまうという課題と、第2の発呼者の情報を受信した後50msec以内にミュートを解除することという規格に反してしまうという課題があった。
【0010】
本発明は上記従来の課題に鑑み、第2の発呼者の情報を受信した後、一度ミュートを開いた後約2秒後に子機へ発呼者情報を送信することにより、通話相手に2回目の約1秒間の通話中断の予告を可能とし、また上記規格を満足する電話装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するために、本発明は、親機と子機とを備える電話装置であって、前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、前記子機との送受信を行う送受信回路と、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、前記子機は、前記親機との送受信を行う送受信回路と、スピーカ及びマイクと、前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼者情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有することを特徴とする電話装置、を有して構成される。
【0012】
本発明によれば、子機における受話ミュート手段及び送話ミュート手段を同時に作動させることにより、子機を使用しているユーザに親機が受信した発呼者情報を的確に送信し、かつ、同時に、当該ユーザに発呼者情報信号による雑音を聞かせることが無い快い電話装置を提供することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、本発明は、親機と子機とを備える電話装置であって、前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、前記子機との送受信を行う送受信回路と、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、前記子機は、前記親機との送受信を行う送受信回路と、スピーカ及びマイクと、前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼者情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有して構成される。
【0014】
以下本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
(実施の形態1)
図1は本発明の実施の形態1の電話装置の主要構成部を示すブロック図、図2は同電話装置のフローチャート、図3は同電話装置の動作のタイミングチャートである。なお、図1では前記従来例を示す図4と同一構成部に同じ符号を付与している。
【0015】
図1において1~14および23は親機、15~20は子機の主要の構成部である。
【0016】
親機側において、1は電話回線、2は電話回線1より入力されるアラート信号を検知するためのアラート信号検知手段、3はアラート信号を検知したことをACK信号で電話回線1へ送出するためのACK信号送出手段、4は電話回線1より到来する発呼者情報を検出するための発呼者情報検出手段、5は発呼者情報検出手段4で発呼者情報を受信するときに受信信号が音声信号などにより壊されないようにするために後述の送受話回路10に送話ミュートをかける親機の送話ミュート制御手段、6は送受話回路10に受話ミュートをかける親機の受話ミュート制御手段、7は発呼者情報検出手段4により得られた発呼者情報を記憶する記憶装置、8はマイクロコンピュータにより構成されている親機の本体制御装置、9は子機との音声の送受信を行うための送受信回路、10は回線との送話/受話を行うための送受話回路、11は親機のアンテナ、12はフックスイッチ、13は親機のマイク、14は親機のスピーカー、23はこの発明の特徴とする構成部であり、すなわち、発呼者情報受信後、子機へ送信するまでの時間をカウントする時間カウント手段である。
【0017】
子機側において、15は親機との音声の送受信を行うための送受信回路、16は発呼者情報検出手段4で発呼者情報を受信するときに受信信号が子機の音声信号などにより壊されないようにするために子機に受話ミュートをかける子機の受話ミュート制御手段、17は子機に送話ミュートをかける送話ミュート制御手段、18は子機のアンテナ、19はマイクロコンピュータにより構成されている子機の本体制御装置、20は発呼者情報検出手段4で検出された発呼者情報を表示するための表示装置、21は子機のマイク、22は子機のスピーカーである。
【0018】
以上の各構成部よりなる電話装置において、以下その動作について説明する。
図2のようにコールウェイティング時に電話回線1から他の発呼者から着信があったことを知らせる2130Hzと2750Hzのデュアルトーンから構成されるアラート信号(CAS)が入力されたとき(STEP1)、アラート信号検知手段2によりアラート信号を80ms±5ms検知できたら、親機の送話ミュート制御手段5,親機の受話ミュート制御手段6により送受話にミュートをかける(STEP2)。その後ACK信号送出手段3により自動的に電話回線1へアラート信号を検知したことを知らせる1633Hzと941Hzの周波数から構成される60ms±5msのACK信号を送出する(STEP3)。ACK信号送出後、発呼者情報検出手段4により電話回線1から到来する発呼者情報を検出し(STEP5)、記憶装置7に記憶する。発呼者情報検出手段4により検出が終了すれば、送受話ミュートを開く(STEP5)。その後、2秒ほど親機の本体制御装置8にて時間をカウントした後、子機にて発呼者情報を表示させるため親機から子機へ発呼者情報を送信するが、そのとき、その送信データが壊れないように子機の送話ミュートをかけ、データ音が漏れないように子機受話ミュートもかける(STEP6)。
【0019】
親機から子機への送信が終了すると子機の送話/受話ミュートを開き、通話可能な状態とする。
【0020】
以上のような本実施の形態によれば、第2の発呼者の情報を受信した後、一度ミュートを開いた後約2秒後に子機へ発呼者情報を送信することにより、通話相手に2回目の約1秒間の通話中断の予告を可能とし、また上記規格を満足することができるという効果が生じる。
【0021】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明は、本発明は、親機と子機とを備える電話装置であって、前記親機は、電話回線を介しての送受話を行う送受話回路と、前記子機との送受信を行う送受信回路と、通話中に呼び出しがあった際に局交換機から送信されるアラート信号を検知するアラート信号検知手段と、電話回線から受信した発呼者情報信号を検出する発呼者情報検出手段と、受話ミュートを実行する受話ミュート制御手段と、送話ミュートを実行する送話ミュート制御手段と、を有し、前記子機は、前記親機との送受信を行う送受信回路と、スピーカ及びマイクと、前記親機が受信した発呼者情報信号に基づいて発呼者情報を表示する表示装置と、前記スピーカに連結され、当該スピーカに受話ミュートを実行する受話ミュート手段と、前記マイクに連結され、当該マイクに送話ミュートを実行する送話ミュート手段と、を有する電話装置において、前記親機のアラート信号検知手段がアラート信号を検知した後、前記親機の送話及び受話ミュート制御手段により両ミュートを作動させ、前記発呼者情報検出手段が発呼者情報の検出を終了した後に上記両ミュートの作動を停止させる前記親機の本体制御装置と、前記親機が受信した発呼者情報信号が前記親機側の送受信回路から前記子機側の送受信回路へ送信されるときに、前記子機の受話ミュート手段及び送話ミュート手段の両ミュートを同時に作動させる前記子機の本体制御装置と、を有して構成されるため、子機における受話ミュート手段及び送話ミュート手段を同時に作動させることにより、子機を使用しているユーザに親機が受信した発呼者情報を的確に送信し、かつ、同時に、当該ユーザに発呼者情報信号による雑音を聞かせることが無い快適な電話装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の実施の形態1の電話装置の主要構成部を示すブロック図
【図2】
同電話装置のフローチャート
【図3】
同電話装置の動作のタイミングチャート
【図4】
従来の電話装置の主要構成部を示すブロック図
【図5】
同電話装置のフローチャート
【図6】
同電話装置の動作のタイミングチャート
【符号の説明】
1 電話回線
2 アラート信号検知手段
3 ACK信号送出手段
4 発呼者情報検出手段
5 親機の送話ミュート制御手段
6 親機の受話ミュート制御手段
7 記憶装置
8 親機の本体制御装置
9 送受信回路
10 送受話回路
11 親機のアンテナ
12 フックスイッチ
13 親機のマイク
14 親機のスピーカー
15 送受信回路
16 子機の受話ミュート制御手段
17 子機の送話ミュート制御手段
18 子機のアンテナ
19 子機の本体制御装置
20 表示装置
21 子機のマイク
22 子機のスピーカー
23 時間カウント手段
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2005-01-20 
出願番号 特願平10-5651
審決分類 P 1 651・ 573- ZA (H04Q)
P 1 651・ 574- ZA (H04Q)
P 1 651・ 121- ZA (H04Q)
P 1 651・ 572- ZA (H04Q)
最終処分 取消  
前審関与審査官 望月 章俊  
特許庁審判長 川名 幹夫
特許庁審判官 山中 実
橋本 正弘
登録日 2003-08-15 
登録番号 特許第3460561号(P3460561)
権利者 松下電器産業株式会社
発明の名称 電話装置  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 坂口 智康  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 坂口 智康  

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