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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04B
管理番号 1139302
審判番号 不服2004-21964  
総通号数 80 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-25 
確定日 2006-07-05 
事件の表示 平成 6年特許願第509796号「伝送ネットワークおよびそのためのフィルタ」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 4月28日国際公開、WO94/09572、平成 8年 6月 4日国内公表、特表平 8-505272〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.出願の経緯
本願は、1993年10月20日(パリ条約による優先権主張1992年10月22日、英国)を国際出願日とする出願であって、原審において、
平成15年3月13日付で拒絶の理由が通知され、それに対して、平成15年9月19日付で意見書及び手続補正書が提出され、その後、平成15年11月10日付で再度拒絶の理由が通知され、それに対して、平成16年5月11日付で意見書が提出されたものの、平成16年7月20日付で拒絶査定され、平成16年10月25日付で拒絶査定不服の審判が請求され、平成16年12月22日付で請求の理由の補正を目的とする手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1及び13に係る発明は、平成15年9月19日付提出の手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1及び13に記載された以下のとおりの事項により特定されるものである。

「1.建造物の外部に設けられる外部部分を少なくとも有する電力ネットワークであって、
1MHzよりも高い搬送周波数を有する電気通信信号を前記ネットワークの第1の相導体に入力するための入力手段と、
前記ネットワークから前記電気通信信号を取出して、前記電気通信信号を出力するための出力手段とを含み、
前記電気通信信号は、前記ネットワークの前記外部部分を伝わって伝送される、ネットワーク。」(以下、「本願発明1」という。)

「13.信号伝送方法であって、
1MHzよりも高い搬送周波数を有する電気通信信号を、建造物の外部に設けられる外部部分を少なくとも有する電力ネットワークの第1の相導体に入力するステップと、
前記電気通信信号を引き続いて受信するステップを含み、
前記電気通信信号は、前記ネットワークの前記外部部分を伝って伝送される、信号伝送方法。」(以下、「本願発明2」という。)

3.引用文献
(1)原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1(特開昭58-12437号公報)には、図面と共に、以下の記載がなされている。

「本発明は3相電力線を介して高周波搬送信号を送受信するようにした電力線搬送装置に関するものである。」(第1頁右下欄第16~18行目)

「第1図は従来の一般的な単相交流電源を使用した電力線搬送装置の構成を示すブロツク図であり、送信機(1)および受信機(2)は共に交流100Vの電源線(3)に接続されている。送信機(1)においてスイツチ操作をすると、第2図に示すようにスタート信号、アドレス信号、および制御信号が順に送出され、受信機(2)においては交流電源電圧に重畳して送出されてきた搬送波を受信解読して受信機(2)に接続された負荷(4)を制御するようにしているものである。」(第1頁右下欄第19行~第2頁左上欄第8行目)

「次に第3図は従来の3相交流方式における電力線搬送装置の全体構成を示すブロツク図であり、R相、S相、およびT相の各相にはそれぞれ送信機T1,T2,T3が接続されている。」(第2頁左上欄第15~18行目)
と記載されている。

即ち、引用文献1には、単相又は3相の交流電力線を構成する導体に送信機及び受信機を接続し、該送信機から信号を搬送波に乗せて交流電源電圧に重畳して送信し、該受信機で前記信号を受信する電力線搬送装置が記載されている(以下、これを「引用発明1」という。)。

(2)同じく、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献2(特開昭62-18837号公報)には、図面と共に、以下の記載がなされている。

「〔産業上の利用分野〕
本発明は、信頼性を維持しながらコストダウンを図った架空共同地線を用いた通信方式に関する。」(第1頁右下欄第8~11行目)

「〔従来の技術〕
従来の通信方式として、例えば、需要家の積算電力計を読み取った積算値に応じてFS変調した高周波信号を高圧配電線あるいは低圧配電線を介して伝送し、これを管理センターで受信して自動検針するようにしたものがある。
この通信方式において、通信媒体として高圧配電線を利用するものは、中継器と高圧配電線の間に高圧結合器を位置させ、これによって中継器と高圧配電線の間で高周波信号を送受するようになっている。一方、通信媒体として低圧配電線を利用するものは、低圧配電線間にFS変調した高周波信号を注入させるものであり、低圧線バンク間にバンク間結合器を位置させている。」(第1頁右下欄第12行~第2頁左上欄第6行目)

「第1図は本発明の第1の実施例を示し、6.6(KV)の3相3線式の高圧配電線R、S、Tと100/200(V)の単相3線式の低圧配電線X、Y、Zは降圧トランス10によって接続されており、Zで示した線は架空共同地線となっている。この架空共同地線Zは高周波信号に対して高インピーダンスとなるブロッキングコイル20とサージアブソーバとなるアレスタ30を並列接続した接地回路40を介して接地されており、また、低圧配電線Y-Zには積算電力計50が接続され、この積算電力計50には検針用端末部60が接続され、積算電力計50と検針用端末部60によって端末ユニット70を構成し、端末ユニット70は接地されている。架空共同地線Zは一点において端末ユニット70を介して接地され、他の点においてコンデンサー80および結合コイル90の直列回路を介して接地されている。結合コイル90は中継器100の一方の結合コイル110と対向しており、他方の結合コイル120は高圧配電線Tに接続されたコンデンサー130および結合コイル140の直列回路の結合コイル140と対向している。この回路によって点線矢印で図示した高周波信号の閉回路が構成される。
以上の構成において、高圧配電線Tを介して送信されてきた制御信号は結合コイル120、140の誘導結合によって中継器100に入力し、中継器100から結合コイル110、90の誘導結合によって共同架空地線Zへ出力される。共同架空地線Zへ出力された制御信号は端末ユニット70を制御し、検針用端末部60に積算電力計50の積算値を読み取らせる。読み取られた積算値は端末ユニット70から大地を経て結合コイル90、110の誘導結合によって中継器100に入力し、そこに一旦記憶される。記憶された積算値は読み出し指令によって読み出され、結合コイル120、140の誘導結合によって高圧配電線Tへ出力されて管理センターのホストコンピュータに入力され、そこで所定の演算処理を受ける。」(第2頁右上欄第6行~同頁右下欄第5行目)

「以上述べた第1および第2の実施例では積算電力計の自動検針について述べたが、これに限定するものではなく、配電線路に接続される他の機器を制御するようにしても良い。」(第2頁右下欄第18行~第3頁左上欄第1行目)

「また、第1図および第2図は1ブロツクだけを示したが、架空共同地線は全てのバンクに共通に連接されているのでブロッキングコイルを用いると広範囲な伝送路として使用することができる。」(第3頁左上欄第2~6行目)
と記載されている。

即ち、引用文献2には、単相3線式、又は、3相3線式の配電線を介して、需要家に設置した積算電力計を読み取った積算値を管理センターに伝送し、管理センターでこれを受信して自動検針するものにおいて、高圧配電線を介して送信されてきた制御信号は結合コイルの誘導結合によって中継器を介して共同架空地線に出力され、共同架空地線へ出力された制御信号は、端末ユニットを介して検針用端末部に入力され、積算電力計の積算値を読み取らせ、該読み取り値は端末ユニットから大地を経て結合コイルの誘導結合によって中継器に入力し、そこに一旦記憶され、該記憶値は、読み出し指令によって結合コイルを介して高圧配電線へ出力され、管理センターで読み取られること、及び、配電線路に接続されて制御される機器は何でもよいこと、並びに、本発明は広範囲な伝送路に使用できること、が記載されている(以下、これを「引用発明2」という。)。

(3)同じく、原査定の拒絶の理由で引用された引用文献3(米国特許第4,772,870号明細書)(1988年9月20日発行)には、図面と共に、以下の記載がなされている。

「This invention relates to a low level, low power radio
frequency communications system and, more particularly, to a point-
to-point power line communications system (“PLC”) utilizing the
AC power signal with a superimposed 50-600 MHz signal.」(第1欄第3~7行目)
(訳:この発明は、低レベル、低パワー無線周波数通信システム、及び、更にいうならば、50-600MHzの重畳された信号を伴ったAC電力信号を利用している2点間の電力線通信システム(“PLC”)に関するものである。)(以下、これを「引用発明3」という。)。

4.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、
本願発明1は引用発明1と同様に、電力線に信号を重畳することによって、電力線を信号伝送線としても利用しようとする電力線搬送装置に関する発明であり、又、本願発明1においては、「第1の相導体」に入力手段より電気通信信号を入力しているが、これは、引用発明1における交流電力線を構成する導体に送信機を接続して信号を送信している構成と同じであり、更に、引用発明1における「交流電力線」,「送信機」,「受信機」,「信号」は、それぞれ本願発明1の「電力ネットワーク」,「入力手段」,「出力手段」,「搬送周波数を有する電気通信信号」に相当しているので、両者は共に、
電力ネットワークであって、搬送周波数を有する電気通信信号を前記ネットワークの第1の相導体に入力するための入力手段と、前記ネットワークから前記電気通信信号を取出して、前記電気通信信号を出力するための出力手段とを含み、前記電気通信信号は、前記ネットワークを伝わって伝送される、ネットワーク
である点では同じである。

ただ、
(a)本願発明1においては、電力ネットワークは建造物の外部に設けられた外部部分を少なくとも有するネットワークであり、電気通信信号は前記ネットワークの前記外部部分を伝わって伝送されるものであるのに対して、引用発明1には電力ネットワークの構成及び通信信号の伝送ルートについては特定されていない点、及び、
(b)本願発明1においては、重畳する電気通信信号の搬送波の周波数は1MHzよりも高い周波数であるのに対して、引用発明1には、電気通信信号の搬送波の周波数については特定されていない点、
で両者は相違している。

(2)上記相違点(a)乃至(b)についての当審の判断
そこで、上記相違点(a)乃至(b)について判断すると、

(a)については、引用発明2は、単相3線式、又は、3相3線式の配電線を介して、需要家に設置した積算電力計を読み取った積算値を管理センターに伝送し、管理センターでこれを受信して自動検針するものにおいて、高圧配電線を介して送信されてきた制御信号は結合コイルの誘導結合によって中継器を介して共同架空地線に出力され、共同架空地線へ出力された制御信号は、端末ユニットを介して検針用端末部に入力され、積算電力計の積算値を読み取らせ、該読み取り値は端末ユニットから大地を経て結合コイルの誘導結合によって中継器に入力し、そこに一旦記憶され、該記憶値は、読み出し指令によって結合コイルを介して高圧配電線へ出力され、管理センターで読み取られること、及び、配電線路に接続されて制御される機器は何でもよいこと、並びに、広範囲な伝送路に使用できるものであり、引用発明2には、本願発明1と同様に、建造物の外部に設けられる外部部分を少なくとも有する電力ネットワークにより、前記ネットワークの外部部分を伝わって電気通信信号が伝送されるネットワークが開示されているのであるから、引用発明1において、電力ネットワークを建造物の外部に設けられた外部部分を少なくとも有するネットワークとし、電気通信信号は前記ネットワークの前記外部部分を伝わって伝送されるように構成することによって本願発明1のようにすることは当業者が容易に発明することができたものである。

次に、(b)については、引用発明3に、50-600MHzの周波数の搬送波を用いた電力線伝送システムが記載されているので、電気通信信号の搬送波の周波数として1MHzよりも高いものを用いることは当業者に公知であるので、引用発明1において、重畳する電気通信信号の搬送波の周波数は1MHzよりも高い周波数とすることによって本願発明1のようにすることは当業者が容易に発明することができたものである。

(3)まとめ
以上のとおりであるので、本願発明1は、引用発明1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本願発明2について
(1)対比
本願発明2と引用発明1とを対比すると、本願発明2は本願発明1を「方法」の発明としたものであって、引用発明1と同様に、電力線に信号を重畳することによって、電力線を信号伝送線としても利用しようとする電力線搬送に関する発明であり、又、本願発明2においては、「第1の相導体」に入力手段より電気通信信号を入力しているが、これは、引用発明1における交流電力線を構成する導体に送信機を接続して信号を送信している構成と同じであり、更に、引用発明1における「信号」,「交流電力線」は、それぞれ本願発明1の「搬送周波数を有する電気通信信号」,「電力ネットワーク」に相当しているので、両者は共に、
信号伝送方法であって、搬送周波数を有する電気通信信号を、電力ネットワークの第1の相導体に入力するステップと、前記電気通信信号を引き続いて受信するステップを含み、前記電気通信信号は、前記ネットワークを伝って伝送される、信号伝送方法
である点では同じである。

ただ、
(c)本願発明2においては、電力ネットワークは建造物の外部に設けられる外部部分を少なくとも有するネットワークであり、電気通信信号は前記ネットワークの前記外部部分を伝わって伝送されるものであるのに対して、引用発明1には電力ネットワークの構成及び通信信号の伝送ルートについては特定されていない点、及び、
(d)本願発明2においては、重畳する電気通信信号の搬送波の周波数は1MHzよりも高い周波数であるのに対して、引用発明1には、電気通信信号の搬送波の周波数については特定されていない点、
で両者は相違している。

(2)上記相違点(c)乃至(d)についての当審の判断
上記相違点(c)及び(d)は、いずれも、本願発明1と引用発明1との相違点(a)及び(b)と同じである。したがって、その判断も本願発明1と同じである。

(3)まとめ
以上のとおりであるので、本願発明2は、引用発明1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上の通りであるので、本願発明1及び2は、いずれも、引用発明1乃至3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-02-01 
結審通知日 2006-02-07 
審決日 2006-02-21 
出願番号 特願平6-509796
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丸山 高政  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 堀江 義隆
橋本 正弘
発明の名称 伝送ネットワークおよびそのためのフィルタ  
代理人 森田 俊雄  
代理人 堀井 豊  
代理人 深見 久郎  
代理人 酒井 將行  
代理人 野田 久登  
代理人 仲村 義平  

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