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審決分類 |
審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正しない H01M 審判 訂正 2項進歩性 訂正しない H01M |
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管理番号 | 1141133 |
審判番号 | 訂正2006-39029 |
総通号数 | 81 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-06-17 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2006-02-28 |
確定日 | 2006-08-09 |
事件の表示 | 特許第3599051号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本件審判の請求の要旨は、特許第3599051号(平成14年11月19日出願、平成16年9月24日設定登録)の明細書を特許請求の範囲の減縮、及び明りょうでない記載の釈明を目的として、本件審判請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、これに対し、当審は、平成18年4月25日付けで訂正拒絶理由を通知したところ、請求人からは何らの応答もなかった。 2 訂正の内容 訂正の内容は、下記(1)~(6)のとおりである。 (1)訂正事項1 明細書の特許請求の範囲の請求項1に係る記載「【請求項1】 電池を保持する保持部と、当該保持部へ向かって電池を押圧する押圧部と、該押圧部によって押圧された電池の端子の部分が押圧されると共に電源需要部に直接に結合された接続導体とを有し、前記押圧部が電池を前記接続導体に常時押圧するようにしたことを特徴とする電池の装着構造。」を、 「【請求項1】 絶縁監視端末装置のケースに断面コ字状に形成されて、リチウム電池(2CR5)を嵌め込んで保持する保持部と、 この保持部の両側の開口上端に前記電池を抱え込むように一体に立設されて、前記保持部に向かって前記電池を押圧する断面アール状の押圧部と、 この両側の押圧部によって押圧された前記電池の端子の部分が押圧されると共に、一方が電源需要部に直接に結合され他方の反結合側にバネ力を有するバネ端子とを設け、 前記両側の押圧部が、前記保持部の開口上端から前記電池を抱え込むように押圧することにより、前記電池の端子部分が前記バネ端子の反結合側に押圧され、 この押圧力に対して前記バネ端子の反結合側に復元力が生じることによって、前記電池の端子の部分が前記バネ端子の反結合側に常時付勢され、 前記バネ端子を介して、前記電源需要部と前記電池との間の通電が確保されることを特徴とする電池の装着構造。」 と訂正する。 (2)訂正事項2 明細書の特許請求の範囲の請求項2を削除する。 (3)訂正事項3 明細書の特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (4)訂正事項4 明細書の段落【0007】に、「斯かる目的を達成するための請求項1に係る電池の装着構造の構成は、電池を保持する保持部と、当該保持部へ向かって電池を押圧する押圧部と、該押圧部によって押圧された電池の端子の部分が押圧されると共に電源需要部に直接に結合された接続導体とを有し、前記押圧部が電池を前記接続導体に常時押圧するようにしたことを特徴とする。」とあるを、 「斯かる目的を達成するための請求項1に係る電池の装着構造の構成は、絶縁監視端末装置のケースに断面コ字状に形成されて、リチウム電池(2CR5)を嵌め込んで保持する保持部と、この保持部の両側の開口上端に前記電池を抱え込むように一体に立設されて、前記保持部に向かって前記電池を押圧する断面アール状の押圧部と、この両側の押圧部によって押圧された前記電池の端子の部分が押圧されると共に、一方が電源需要部に直接に結合され他方の反結合側にバネ力を有するバネ端子とを設け、前記両側の押圧部が、前記保持部の開口上端から前記電池を抱え込むように押圧することにより、前記電池の端子部分が前記バネ端子の反結合側に押圧され、この押圧力に対して前記バネ端子の反結合側に復元力が生じることによって、前記電池の端子の部分が前記バネ端子の反結合側に常時付勢され、前記バネ端子を介して、前記電源需要部と前記電池との間の通電が確保されることを特徴とする。」と訂正する。 (5)訂正事項5 明細書の段落【0009】、【0010】に、「請求項2に係る電池の装着構造の構成は、請求項1において、前記押圧部は弾性部材で形成されたことを特徴とする。斯かる電池の装着構造では、押圧部を変形させて保持部へ電池を押し込むと、弾性部材の復元力により電池が保持部へ向かって常時押圧される。」とあるのを削除する。 (6)訂正事項6 明細書の段落【0011】、【0012】に、「請求項3に係る電池の装着構造の構成は、請求項2において、前記押圧部は、前記保持部の両側に前記保持部と一体に形成され、電池が両側の前記押圧部によって抱え込まれるようにしたことを特徴とする。斯かる電池の装着構造では、保持部へ押し込んだ電池が、両側の前記押圧部によって抱え込まれるようにして保持部へ常時押圧される。」とあるのを削除する。 3 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正事項1-ア~1-オから成るものであって、次のとおりである。 ア 訂正事項1-ア 訂正前の請求項1の「電池を保持する保持部」を、「絶縁監視端末装置のケースに断面コ字状に形成されて、リチウム電池(2CR5)を嵌め込んで保持する保持部」と訂正する訂正事項1-アは、願書に添付した明細書の段落【0016】の「電池収納部2の構造を図1に示す。図のように、絶縁監視端末装置1の容器を構成するケース3には、電池6を嵌め込む保持部4が形成されている。」という記載に基づいて、保持部は「電池を嵌め込んで保持する」ものであって、それが形成される対象は「絶縁監視端末装置のケース」であることを限定し、また、図1(a)の平面断面図には、横断面コ字状の保持部4が図示されていることに基づいて、保持部の形状を「断面コ字状」と限定し、さらに、同段落【0015】の「電池収納部2に収納する電池6としては、リチウム電池(2CR5)が用いられる。」という記載に基づいて、電池は「リチウム電池(2CR5)」であることを限定したものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 イ 訂正事項1-イ 訂正前の請求項1の「保持部へ向かって電池を押圧する押圧部」を、「保持部の両側の開口上端に前記電池を抱え込むように一体に立設されて、前記保持部に向かって前記電池を押圧する断面アール状の押圧部」と訂正する訂正事項1-イは、願書に添付した明細書の段落【0016】の「押圧部5a,5bは保持部4へ向かって電池6を抱き込むように、図1(a)のように断面形状にアールが形成されている。押圧部5a,5bはケース3と一体に形成されており」という記載、及び、図1(a)には、保持部4の開口上端に、断面アール状の押圧部5a、5bが形成されていることが図示されていることに基づいて、押圧部を上記のように限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 ウ 訂正事項1-ウ 訂正前の請求項1の「押圧部によって押圧された電池の端子の部分」を、「両側の押圧部によって押圧された前記電池の端子の部分」と訂正する訂正事項1-ウは、訂正事項1-イにより、押圧部が「保持部の両側の開口上端に・・・立設されて」いると限定されたことに整合させて、押圧部を「両側の押圧部」と限定するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 エ 訂正事項1-エ 訂正前の請求項1の「電源需要部に直接に結合された接続導体とを有し」を、「一方が電源需要部に直接に結合され他方の反結合側にバネ力を有するバネ端子とを設け」と訂正する訂正事項1-エは、願書に添付した明細書の段落【0017】の「一対のバネ端子(接続導体)7が設けられる。」という記載に基づいて、接続導体を「バネ端子」と限定するとともに、同段落【0008】の「プリント板等の電源需要部」という記載、及び、図2にはバネ端子の一方の接触部7dとプリント板8は、図2によると直接に接合されていることに基づいて、バネ端子は「一方が電源需要部に直接に結合され」ることを限定し、また、同段落【0018】の「電池6の一対の端子9がバネ端子7の接触部7aを押圧し・・・接触部7aが復元しようとして」という記載から、バネ端子の電源需要部に結合されない側、すなわち、他方の反結合側の接触部は、電池の端子により押圧されてバネ力により復元しようとするといえることに基づいて、バネ端子は「他方の反結合側にバネ力を有する」ことを限定して、「電源需要部に直接に結合された接続導体とを有し」という特定事項を、上記のように訂正するものである。そうすると、訂正事項1-エは、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。 オ 訂正事項1-オ 訂正前の請求項1の「押圧部が電池を前記接続導体に常時押圧するようにした」を、「両側の押圧部が、前記保持部の開口上端から前記電池を抱え込むように押圧することにより、前記電池の端子部分が前記バネ端子の反結合側に押圧され、この押圧力に対して前記バネ端子の反結合側に復元力が生じることによって、前記電池の端子の部分が前記バネ端子の反結合側に常時付勢され、前記バネ端子を介して、前記電源需要部と前記電池との間の通電が確保される」と訂正する訂正事項1-オは、訂正事項1-エに整合させるために、接続導体を「バネ端子」に限定し、かつ、訂正事項1-イ、1-エに整合させるとともに、願書に添付した明細書の段落【0016】の「押圧部5a,5bは保持部4へ向かって電池6を抱き込むように・・・断面形状にアールが形成されている。・・・押圧部5a,5bは、弾性部材の復元しようとする性質を利用し、電池6を保持部4へ常時押圧するものである。」という記載、同段落【0018】の「このため、電池6の一対の端子9がバネ端子7の接触部7aを押圧し・・・接触部7aが復元しようとして付勢力が常時加わっており、接触部7aは端子9に常時付勢された状態となり、電池6とバネ端子7との通電が確保される。」という記載、及び、図1a、bの記載に基づいて、「押圧部が電池を前記接続導体に常時押圧するようにした」という特定事項を、上記のように限定したものである。そうすると、訂正事項1-オは、特許請求の範囲の減縮、及び、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。 そして、訂正事項1-ア~1-オのいずれの訂正事項も、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (2)訂正事項2、3について 訂正事項2、3は、特許請求の範囲の請求項2、3をそれぞれ削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (3)訂正事項4について 訂正事項4は、訂正事項1に伴い、発明の詳細な説明の対応する箇所の記載を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 (4)訂正事項5、6について 訂正事項5、6は、訂正事項2、3に伴い、発明の詳細な説明の対応する箇所の記載をそれぞれ整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、かつ、実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。 4 独立特許要件 (1)本件訂正発明 訂正後における特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「訂正発明」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの事項により特定されるものである(上記2(1)参照)。 (2)訂正拒絶理由の概要 平成18年4月25日付けの訂正拒絶理由の概要は、訂正発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1~3に記載された発明、及び、周知の事項(下記の刊行物4~7参照)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができず、本件訂正請求は、同法第126条第5項の規定に適合しないというものである。 〈引用刊行物〉 刊行物1:実公平7-43941号公報 刊行物2:実願平2-101484号(実開平4-59058号)のマイクロフィルム 刊行物3:実開平8-315794号公報 刊行物4:実公平1-17090号公報 刊行物5:実公平4-38458号公報 刊行物6:実用新案登録第3046007号公報 刊行物7 :「National/Panasonic Batteries,電池総合カタログ」、松下電器産業株式会社外1名発行、1992年、第127、128頁 (3)引用刊行物とその記載事項 ア 刊行物1:実公平7-43941号公報 (摘示1-1)「【請求項1】電源の供給を受ける装置本体(37)側に接触バネ(47)と、ロック手段(53)と・・・を設け、電池パック(25)側に前記接触バネ(47)に接触して電源を装置本体に供給する接触端子(31)と、前記ロック手段(53)が係合する係合溝(35)を設け、電池パックを装置本体に着脱可能に取り付ける電池パックの着脱構造・・・」(実用新案登録請求の範囲) (摘示1-2)「実施例 ・・・電池パック25の前方下側には、電池パックの挿入方向Pと直交する方向に接触端子31が複数個並んで外面に露出するように設けられている。・・・電池パック25の両側壁・・・には、後述する装置本体のレール突起に係合する段状のレール33が設けられており、後方下側には装置本体のロック爪に係合するロック溝35が設けられている。」(第4欄第35~48行) (摘示1-3)「装置本体37の後方よりに電池パック装着部39が設けられており、この電池パック装着部39は両側の側枠41により画成されている。この側枠41・・・に電池パック25のレール33に係合するレール突起43が設けられている。電池パック装着部39の前方側底面には開口45を介して接触バネ47が露出している。接触バネ47は・・・リード線51により装置本体の回路部に接続されている。」(第5欄第1行~第5欄第8行) (摘示1-4)「電池パック25を装置本体37の電池パック装着部39に装着するには、まず電池パック25を矢印Qのごとく電池パック装着部39におろし、次に矢印Pのように電池パック25を押し込むと、電池パック25のレール33が装置本体側のレール突起43に係合する。さらに電池パック25を矢印P方向に押し電池パックが所定の位置にくると、電池パック25の各接触端子31が装置本体37側の各接触バネ47に接触し、それと同時にロック爪53が・・・ロック溝に嵌合し電池パック25をロックする。」(第5欄第40行~第6欄第4行) (摘示1-5)第1図には、接触バネ47の一方の側がリード線51に接続され、他方の側が電池パック装着部39の底面の開口45から突出して露出していることが図示されており、第2図には、電池パック装着部は、両側に側枠41を備えることが図示されている。 イ 刊行物2:実願平2-101484号(実開平4-59058号)のマイクロフィルム (摘示2-1)「(1)バッテリーの充電器に装着するアダプタであって、一対の電気接点・・・を設けたバッテリー装着部と・・・を・・・備え、前記バッテリー装着部がバッテリーと相互に嵌合する形状で形成され・・・ている・・・充電器用アダプタ。 ・・・ (3)前記バッテリー装着部が長方形の凹部をなし凹部の底部に設けられた一対の切り欠きを含み、金属製の弾性部材からなる前記一対の電気接点が前記切り欠きに遊嵌されている請求項(1)項に記載の充電器用アダプタ。」(実用新案登録請求の範囲の請求項1、3) (摘示2-2)「凹部20の側壁26-26’の中央部附近には2本の細い切込みによって形成され、頂部に内側に向って延びる縁部27-27’を有する爪28-28’が設けられている。爪28-28’は弾性を有するから凹部20に装着されるバッテリー5を保持し得る。」(第7頁第13~18行) (摘示2-3)「バッテリー装着部2に装着されたバッテリー5は凹部20に嵌合され、バッテリー5の電気接点51-51’がバッテリー装着部2の電気接点25-25’と接触し得る。」(第8頁第4~8行) (摘示2-4)「接点25の点で・・・ばねとして作用する。また、・・・接点25’の点で・・・ばねとして作用する。」(第11頁第8行~第12頁第3行) (摘示2-5)「電気接点25-25’と51-51’は接点25-25の復元力により密接に接触し電気的に接続する。・・・充電器の電気接点とバッテリー5の電気接点は電気的に接続することとなる。」(第13頁第7~12行) (摘示2-6)第1A図には、凹部20の側壁26に切り込みにより爪28が、側壁26’に切り込みにより爪28’がそれぞれ形成され、爪28、28’の頂部は内側に向かって延びる縁部27、27’を有することが図示されている。 ウ 刊行物3:特開平8-315794号公報 (摘示3-1)「【請求項3】 一端に充電用ターミナルを有する電池パックと、前記ターミナルに接触する充電端子を有するケースと、前記電池パックが挿入される挿入開口部を有し前記ケース上面に固定されるカバーと、このカバーの底面に固定され前記電池パック外形と略等しい形状を有し弾性体から成る押さえばねとを備えた充電器の電池パック固定装置。」(特許請求の範囲の請求項3) (摘示3-2)「電池パック1を挿入口16に挿入すると、電池パック1の湾曲した外形部により電池押さえ51が押し広げられ、さらに、電池押さえ51の弾性力に抗して電池パック1を押し込むことにより挿入口16に挿入する。図6は図5のC-C断面図であり、電池パック1が電池押さえ51により挟持された状態を示している。」(段落【0020】) (摘示3-3)図5、6には、断面アール状の押さえばね51が図示されている。さらに、図5には、押さえばね51がカバー15の挿入口16の両側に位置していることが図示されており、図6には、押さえばね51が押さえねじ52によりカバー15の底面に固定され、電池パック1が押さえばね51により挟持されることが図示されている。 (摘示3-4)「【請求項4】 一端に充電用ターミナルを有する電池パックと、前記ターミナルに接触する充電端子を有するケースと、前記電池パックが挿入される挿入開口部を有し前記ケース上面に固定されるカバーと、このカバーに内包され弾性体によって付勢されて前記挿入開口部側面より突出する複数の押さえピンとを備えた充電器の電池パック固定装置。」(特許請求の範囲の請求項4) (摘示3-5)図8には、水平方向に突出する一対の押さえピン71が電池パックの湾曲面を押圧して、電池パック1をカバー15内に固定することが図示されている。 (摘示3-6)「本発明は・・・充電器を構成するカバーの挿入開口部に電池パックのターミナルと充電端子を接触状態にして、抜け止め状態に充電器の内部に電池パックを保持することにより、振動や転倒による電池パックの飛び出しやそれに伴う瞬断を防止ことができるという効果を有する。」(段落【0025】) エ 刊行物4:実公平1-17090号公報 オ 刊行物5:実公平4-38458号公報 刊行物4、5には、電池の端子が、プリント基板に結合固定された端子と接触することが記載されている。 カ 刊行物6:実用新案登録第3046007号公報 乾電池収納室を備えた絶縁監視装置が記載されている。 キ 刊行物7:「National/Panasonic Batteries,電池総合カタログ」、松下電器産業株式会社外1名発行、1992年、第127、128頁 「円筒形リチウム電池」の「リチウム電池ハイパワーシリーズ(市販用)」に関して、「パックリチウム電池は・・・ユーザーが簡単に交換できるカメラ用の樹脂ケース入りリチウム電池です。・・・その他にも、各種電源用として使用されています。」(第127頁、「概要」の項)と記載されており、その中の一種のパックリチウム電池として、「2CR5」の写真が掲載されている(第127頁)。 (4)対比・判断 ア 刊行物発明 刊行物1の(摘示1-1)には、「電源の供給を受ける装置本体(37)側に接触バネ(47)と、ロック手段(53)と・・・を設け、電池パック(25)側に前記接触バネ(47)に接触して電源を装置本体に供給する接触端子(31)と、前記ロック手段(53)が係合する係合溝(35)を設け、電池パックを装置本体に着脱可能に取り付ける電池パックの着脱構造」が記載されている。 そして、(摘示1-3)には、「装置本体37の後方よりに電池パック装着部39が設けられており」と記載され、また、(摘示1-4)には、「電池パック25を装置本体37の電池パック装着部39に装着するには、まず・・・電池パック25のレール33が装置本体側のレール突起43に係合する。さらに・・・電池パック25の各接触端子31が装置本体37側の各接触バネ47に接触し、それと同時にロック爪53が・・・ロック溝に嵌合し電池パック25をロックする。」と記載されているから、電池パックのレール33と装置本体側のレール突起43が係合し、さらに、電池パックの係合溝(ロック溝)35が装置本体側のロック手段(ロック爪)53 に嵌合して、電池パックを装置本体の電池パック装着部39に嵌め込んで装着するから、装着部39は、レール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段により、電池パックを嵌め込んで装着するといえる。 また、第1図には、接触バネ47の一方の側がリード線51に接続され、他方の側が電池パック装着部39の底面に突出していることが図示されており、第2図には、電池パック装着部は底面とその両側の側枠41により、断面コ字状に形成されていることが図示されているとえるから(摘示1-5)、電池パックが断面コ字状に形成された装着部39に装着されると、電池パックの接触端子31が装着部底面の接触バネ47に常時接触し、接触バネ47を介して、電源の供給を受ける装置本体37の回路部と電池パックとの間の通電は確保されるということができる。 これらの事項を訂正発明の記載に則して整理すると、刊行物1には、「装置本体のケースに断面コ字状に形成されて、電池パックを嵌め込んで装着する装着部39と、この装着部39に電池パックを装着するレール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段と、この装着手段によって装着された電池パックの接触端子31の部分が接触すると共に、一方が電源の供給を受ける装置本体の回路部にリード線により接続され他方の側にバネ力を有する接触バネ47とを設け、前記装着手段が電池パックを装着することにより、電池パックの接触端子31の部分が前記接触バネ47に常時接触し、前記接触バネ47を介して、電源の供給を受ける装置本体の回路部と電池パックとの間の通電が確保される電池パックの装着構造」の発明(以下、「刊行物発明」という)が記載されているといえる。 イ 訂正発明と刊行物発明との対比 訂正発明と刊行物発明を対比すると、刊行物発明の「電池パック」と訂正発明の「リチウム電池(2CR5)」はともに「電池」といえるものであるし、また、刊行物発明の「装着部39」は訂正発明の「保持部」に、刊行物発明の「接触端子31」は訂正発明の「端子」に、刊行物発明の「電源の供給を受ける装置本体37の回路部」は訂正発明の「電源需要部」に、刊行物発明の「接続」は訂正発明の「結合」に、刊行物発明の「他方の側」は訂正発明の「他方の反結合側」に、刊行物発明の「接触バネ47」は訂正発明の「バネ端子」に、それぞれ相当する。また、刊行物発明の「装着部39に電池パックを装着するレール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段」と訂正発明の「保持部の両側の開口上端に前記電池を抱え込むように一体に立設されて、前記保持部に向かって前記電池を押圧する断面アール状の押圧部」は、電池の保持手段である点で共通し、訂正発明における「両側の押圧部が、前記保持部の開口上端から前記電池を抱え込むように押圧することにより、前記電池の端子部分が前記バネ端子の反結合側に押圧され、この押圧力に対して前記バネ端子の反結合側に復元力が生じることによって、前記電池の端子の部分が前記バネ端子の反結合側に常時付勢され、」は、保持手段が電池を保持することにより、電池の端子の部分がバネ端子の反結合側に常時接触する点で、刊行物発明と共通する。 そうすると、両発明は、「装置のケースに断面コ字状に形成されて、電池を嵌め込んで保持する保持部と、電池の保持手段と、一方が電源需要部に結合され他方の反結合側にバネ力を有するバネ端子とを設け、前記保持手段が電池を保持することにより、電池の端子の部分が前記バネ端子の反結合側に常時接触し、前記バネ端子を介して、前記電源需要部と電池との間の通電が確保される電池の装着構造」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点: (ア) 訂正発明は、「絶縁監視端末装置」のケースに形成された保持部に「リチウム電池(2CR5)」を保持するのに対し、刊行物発明は、装置と電池についてそのような規定はされていない点(相違点(ア)) (イ) 訂正発明は、電池の保持手段が、「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、前記保持部へ向かって電池を押圧する断面アール状の押圧部」であるのに対し、刊行物発明は、電池の保持手段が、レール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段である点(相違点(イ)) (ウ) 訂正発明は、バネ端子が、「両側の押圧部によって押圧された電池の端子の部分が押圧される」バネ端子であり、また、「両側の押圧部が、保持部の開口上端から電池を抱え込むように押圧することにより、電池の端子部分がバネ端子の反結合側に押圧され、この押圧力に対してバネ端子の反結合側に復元力が生じることによって」、電池の端子の部分がバネ端子の反結合側に「常時付勢され」るのに対し、刊行物発明は、バネ端子が、装着手段によって装着された電池の端子の部分が接触するバネ端子であり、また、装着手段が電池を装着することにより、電池の端子の部分がバネ端子に常時接触する点(相違点(ウ)) (エ) 訂正発明は、バネ端子の一方が電源需要部に「直接に」結合されるのに対し、刊行物発明は、バネ端子の一方が電源需要部にリード線により結合(接続)される点(相違点(エ)) ウ 相違点についての検討 (ア) 相違点(ア)について 装置のケースに形成された保持部に電池を保持し、この電池を電源あるいはバックアップ用電源とする装置は周知慣用であって、このような装置として刊行物6にも記載されるように、絶縁監視端末装置は周知である。さらに、カメラ等各種電源用に用いられるリチウム電池(2CR5)も刊行物7に記載されるように周知であるから、刊行物発明において、装置として絶縁監視装置を、保持部に保持する電池としてリチウム電池(2CR5)をそれぞれ適用することは、当業者にとって格別困難なことではない。 してみると、刊行物発明が訂正発明の相違点(ア)に係る特定事項を備えるようにすることは、上記周知の事項に基づいて当業者が適宜なし得たことである。 (イ) 相違点(イ)について 刊行物2には、電池を保持する装着部が凹部20をなし、この凹部の底面に電気接点25、25’を備えた充電器用アダプタが記載されている(摘示2-1、2-3)。そして、電気接点25、25’は、「ばねとして作用する」(摘示2-4)ものであって、「凹部20に嵌合され」(摘示2-3)た電池の端子(電気接点51、51’)と「接点25-25’の復元力により密接に接触」(摘示2-5)するから、電気接点25、25’は、「バネ端子」といえるものである。 また、刊行物2には、「凹部20の側壁26-26’の中央部附近には2本の細い切込みによって形成され、頂部に内側に向かって延びる縁部27-27’を有する爪28-28’が設けられている。爪28-28’は弾性を有するから凹部20に装着されるバッテリー5を保持し得る」(摘示2-2)と記載されており、しかも、装着部に装着された電池は、電池の端子と装着部側の端子(バネ端子)との接触状態が維持されるように、動かないように保持されるのが通常のことであるから、凹部の頂部に内側に向かって延びる縁部27、27’を有する一対の弾性を有する爪28、28’は、保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されており、電池の端子とバネ端子(電気接点)との接触状態が維持されるように、爪28、28’の弾性復元力により凹部20(装着部)に向かって電池を押圧し、凹部20に装着される電池を動かないように保持する保持手段であると解するのが相当である。 してみると、刊行物2には、バネ端子を有し電池を嵌め込んで保持する装着部(保持部)に電池を保持する保持手段として、「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する爪(押圧部)」を設けることが開示されているといえる。 次に、押圧部(保持部の頂部に内側に向かって延びる縁部27、27’を有する一対の弾性を有する爪28、28’)の断面形状について第1A図を参照すると、電池を保持しない状態では逆L字状であることが看取できるが、「爪28-28’は弾性を有する」(摘示2-2)し、電池を保持した状態では保持部に向かって電池を押圧するのであるから、押圧部は、弾性により縁部27、27’が上方に開いた形状、すなわち、断面アール状といえる形状となり、生じた復元力により電池を保持部に向かって押圧するといえる。すると、押圧部が電池を保持部に向かって押圧するに際し、押圧部の断面が、電池を保持しない時にアール状であるか逆L字状であるかは、設計上の微差にすぎないといえる。 そして、公知の保持手段のうちどのような保持手段を採用するかは、設計的な事項に過ぎないから、刊行物発明のレール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段(保持手段)に代えて、刊行物2に開示されるような「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する断面逆L字状あるいは断面アール状の押圧部」を適用することは、刊行物2の記載事項に基づいて当業者が適宜なし得たことである。 仮に、電池を保持しない状態で押圧部の断面が逆L字状であるか、アール状であるかは設計上の微差でないとしても、刊行物3には、「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する断面アール状の押さえばね(押圧部)」が記載されているから、刊行物発明の装着手段に代えて、刊行物3に記載されるような押圧部を適用することは、当業者にとって格別な創意工夫を要することではない。 すなわち、刊行物3には、「電池パックが挿入される挿入開口部を有し・・・固定されるカバーと、このカバーの底面に固定され前記電池パック外形と略等しい形状を有し弾性体から成る押さえばねとを備えた・・・電池パックの固定装置」(摘示3-1)、及び、同様のカバーと、「このカバーに内包され弾性体によって付勢されて前記挿入開口部側面より突出する複数の押さえピンとを備えた・・・電池パック固定装置」(摘示3-4)が記載されており、これら電池パックの固定装置は、「電池パック外形と略等しい形状を有し弾性体から成る押さえばね」や「弾性体によって付勢されて挿入開口部側面より突出する押さえピン」により、電池パックをカバーの挿入開口部、すなわち、保持部に「抜け止め状態に保持する」(摘示3-6)ものであって、「振動や転倒による電池パックの飛び出しやそれに伴う瞬断を防止ことができるという効果を有する」(摘示3-6)ものである。そして、図5、6を参照すると、押さえばね51は断面アール状であり、保持部(挿入開口部)の両側の開口上端に電池パックを抱え込むように一体に立設されており、また、押さえピン71は、保持部(挿入開口部)の両側の開口上端に電池パックを抱え込むように水平方向に一体に設けられている(摘示3-3)。 さらに、上記押さえピンによる「抜け止め状態」について、刊行物3には、電池パックの湾曲面を水平方向から一対のピンの弾性力により押圧することが記載されているから(摘示3-4、3-5)、電池パックは水平方向に挟持されるとともに、保持部の底面に向かって押圧されていることは明らかであるところ、上記押さえばねによる「抜け止め状態」について、刊行物3には、「電池パック1を挿入口16に挿入すると、電池パック1の湾曲した外形部により電池押さえ51が押し広げられ、さらに、電池押さえ51の弾性力に抗して電池パック1を押し込むことにより挿入口16に挿入する。・・・電池パック1が電池押さえ51により挟持された状態・・・」(摘示3-2)と記載されている。そうすると、上記押さえばね(電池押さえ51)による「抜け止め状態」は、電池パックが押さえばねの弾性力に抗して押し込まれたことにより生じた押さえばねの復元力により、挟持された状態であるといえるし、上記押さえばねの復元力は、前示のピンによる「抜け止め状態」と同様に、電池パックを水平方向に挟持するのみでなく、保持部の底面に向かって押圧するように作用していることは明らかである。 してみると、刊行物3には、電池の飛び出しに伴う瞬断を防止するため(すなわち、保持部に保持された電池の端子と保持部側の端子との接触状態を常時維持するため)、保持部に電池を保持する保持手段として、「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する断面アール状の押さえばね(押圧部)」を設けることが開示されているといえる。 そうすると、刊行物2の開示について上述したと同様の理由で、刊行物発明において、レール、レール突起、係合溝、ロック手段からなる装着手段(保持手段)に代えて、刊行物3に記載される「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する断面アール状の押圧部(押さえばね)」を保持手段として採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 したがって、刊行物発明の保持手段を、訂正発明の相違点(イ)に係る特定事項を備えたものとすることは、刊行物2又は刊行物3に記載された事項から当業者が適宜なし得たことである。 (ウ) 相違点(ウ)について バネ端子が、「両側の押圧部によって押圧された電池の端子の部分が押圧される」バネ端子であり、また、「両側の押圧部が、保持部の開口上端から電池を抱え込むように押圧することにより、電池の端子部分がバネ端子の反結合側に押圧され、この押圧力に対してバネ端子の反結合側に復元力が生じることによって」、電池の端子の部分がバネ端子の反結合側に「常時付勢され」るという訂正発明の相違点(ウ)に係る特定事項は、刊行物発明の保持手段が「保持部の両側の開口上端に電池を抱え込むように一体に立設されて、保持部に向かって電池を押圧する押圧部」であれば、当然に構成される特定事項にすぎない。 すなわち、上記の押圧部を備えた刊行物発明においては、電池は、両側の押圧部により保持部の開口上端から抱え込むように保持部に向かって押圧されるから、電池の端子の部分は保持部底面のバネ端子の反結合側に押圧され、そして、この押圧力に対してバネ端子の反結合側に復元力が生じるため、電池の端子の部分はバネ端子の反結合側に常時付勢されることとなる。 してみると、刊行物発明が訂正発明の相違点(ウ)に係る特定事項を備えたものとすることは、上記「(イ)相違点(イ)について」に記載したと同様の理由により、刊行物2又は刊行物3に記載された事項から当業者が適宜なし得たというべきである。 (エ) 相違点(エ)について 刊行物発明のバネ端子(接触バネ47)の一方は、リード線により電源需要部に結合されているが、電池の端子と電源需要部の接続に係る一般技術において、電池の端子に接触する端子が、リード線を介することなく電源需要部に直接に結合されることは、刊行物4及び刊行物5にも記載されるように周知の事項である。そうすると、刊行物発明のバネ端子(接触バネ47)を、その一方が電源需要部に直接に結合されたものとすることは、当業者にとって単なる設計事項にすぎない。 してみると、刊行物発明が訂正発明の相違点(エ)に係る発明特定事項を備えるようにすることは、上記周知の事項から当業者が適宜なし得たことにすぎない。 エ まとめ 以上検討したとおり、訂正発明は、刊行物発明、刊行物2、3に記載された事項、及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 5 むすび したがって、本件訂正請求は、特許法第126条第5項の規定に適合しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-06-13 |
結審通知日 | 2006-06-15 |
審決日 | 2006-06-28 |
出願番号 | 特願2002-334865(P2002-334865) |
審決分類 |
P
1
41・
121-
Z
(H01M)
P 1 41・ 856- Z (H01M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 木村 孔一 |
特許庁審判長 |
吉水 純子 |
特許庁審判官 |
高木 康晴 酒井 美知子 |
登録日 | 2004-09-24 |
登録番号 | 特許第3599051号(P3599051) |
発明の名称 | 電池の装着構造 |
代理人 | 鵜澤 英久 |
代理人 | 橋本 剛 |