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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H02P 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02P |
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管理番号 | 1149480 |
審判番号 | 不服2005-8657 |
総通号数 | 86 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2004-08-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-10 |
確定日 | 2006-12-28 |
事件の表示 | 特願2003- 17323「電動機の制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月12日出願公開、特開2004-229462〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成15年1月27日の出願であって、平成17年4月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月3日付で手続補正がなされたものである。 2.平成17年6月3日付の手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年6月3日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「互いに120°(電気角)の位相差となる三相の信号によりU相、V相、W相のインバータの上下トランジスタのそれぞれに三相6モードの通電ロジック信号を発生させて星形結線された三相駆動巻線を有するセンサレス電動機を駆動する電動機の制御装置であって、 前記U相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、U相同期タイミング信号を出力する第1比較器と、 前記V相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、V相同期タイミング信号を出力する第2比較器と、 前記W相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、W相同期タイミング信号を出力する第3比較器と、 駆動タイミング信号と、前記U相同期タイミング信号と、前記V相同期タイミング信号と、前記W相同期タイミング信号と、逆転ブレーキ信号と、ショートブレーキ信号とが少なくとも入力され、三相の駆動タイミング信号を出力する駆動タイミング信号生成手段と、 前記三相の駆動タイミング信号が入力され、前記U相、V相、W相のインバータの上下トランジスタに前記通電ロジック信号を印加するトランジスタ駆動手段と、 前記U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つ前記センサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数に設定されたショートブレーキ設定回転数信号と、前記U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて三相合成回路で検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記ショートブレーキ設定回転数信号を下回ったときに前記ショートブレーキ信号を出力する回転数比較手段とを備え、 前記センサレス電動機の回転を停止するときには、まず、前記逆転ブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相のインバータの上下トランジスタを逆転ブレーキが掛かるように制御し、 次に、前記U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つ前記センサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数になったときに前記回転数比較手段から出力される前記ショートブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相インバータの上下トランジスタをショートブレーキが掛かるように制御し、前記センサレス電動機を逆回転させることなく停止することを特徴とする、電動機の制御装置。」 と補正された。 上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「三相駆動巻線」について「星形結線された」との限定を付加し、同じく「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出できる回転数」について「センサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない」との限定を付加し、同じく「検出回転数」について「三相合成回路で検出される」との限定を付加し、同じく「電動機」について「センサレス」との限定を付加し、同じく「ショートブレーキ信号」について「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つセンサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数になったときに回転数比較手段から出力される」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)引用文献 (2-1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-275571号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。 ・「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、モータコイルへの通電方向を切り換えてモータを駆動するモータ駆動回路、特に逆転トルクによりモータを停止する機構に関する。」 ・「【0010】 【課題を解決するための手段】本発明は、モータコイルへの通電方向を切り換えてモータを駆動するモータ駆動回路であって、モータを停止するときには、モータにおいて回転方向と逆向きのトルクが発生するように、モータコイルへの逆転通電を行い、この逆転通電により、モータの回転数が所定値まで低下した後は、モータコイルへの通電方向を一方向に固定して、モータを停止させることを特徴とする。」 ・「【0021】 【実施例】以下、本発明をCD-ROM読み取り装置に適用した実施例について、図面に基づいて説明する。なお、通電CD-ROMの場合、非同期モータを用いるが、ここでは簡単のため、同期モータを用いて説明する。本実施例のモータは、例えば、1つのモータコイル10を有している。このモータコイル10は、例えばステータの4つの突出部に順次巻回、あるいは各突出部に個々に巻回されたものが直列接続されている。そこで、通電によって、各突出部にはN極S極が交互に発生され、通電方向の切り換えによって、N,Sが反転される。そして、ステータの周囲には、4つの磁極(N極、S極が交互に配置されている)からなるロータが配置されている。このため、ロータのN極の若干先をステータのS極が移動するようにモータコイル10への通電を制御することによって、モータを回転駆動できる。」 ・「【0022】モータコイル10の一端側には、直列接続された2つのNPNトランジスタ、第1の電源側トランジスタ12および第1の接地側トランジスタ14の中間点が接続されている。また、モータコイル10の他端側には、直列接続された2つのNPNトランジスタ、第2の電源側トランジスタ16および第2の接地側トランジスタ18の中間点が接続されている。そして、トランジスタ12、16のコレクタは、電流検出用抵抗20を介し、電源VMに接続され、トランジスタ14、18のエミッタは接地されている。なお、トランジスタ12、16のベースには、エミッタが電源VMに接続されたPNPトランジスタ22、24のコレクタが接続されている。」 ・「【0024】トランジスタ14、18、22、24のベースには、通電切り換え回路26が接続されており、ここからの制御信号によってこれらトランジスタのオンオフおよび電流量が制御される。ここで、このトランジスタ14、18、22、24のオンオフは、モータの回転(回転方向に応じたロータとステータの相対位置)に応じて制御されなければならない。そこで、ロータの位置を検出するためのホール素子28がロータの近傍に設けられている。そして、このホール素子28の出力側がホールアンプ30を介し、通電切り換え回路26に接続されており、通電切り換え回路26がロータの位置に応じてモータコイル10の通電方向を切り換え制御する。そこで、モータコイル10による誘導磁界がロータマグネットに対し、常に所定の位置になる点で通電することにより、モータを回転することができる。なお、ホール素子28の出力は、磁界の変化に応じてサインカーブ状に変化するものであるが、ホールアンプ30により、増幅されて矩形波になっている。」 ・「【0025】また、本実施例では、ディスクからの読み出し信号を利用したモータの回転数制御系を別に有している。すなわち、ディスクからの読み取り信号を処理する信号処理回路40において、読みとり信号の状態の供給状態からディスクの回転速度を検出する。そして、信号処理回路40には、サーボ回路42が接続されており、サーボ回路42が、回転速度についての速度指令Ecを出力する。」 ・「【0026】この速度指令Ecは、V型制御アンプ44の正入力端に供給される。V型制御アンプ44の負入力端には、基準電圧EcRが供給されており、V型制御アンプ44は両入力信号の比較により、図2に示すような特性の出力を得る。すなわち、速度指令Ecが基準電圧EcRより大きい場合でも小さい場合でも、差に比例した正の電圧を出力する。」 ・「【0030】また、ディスクの動作中において、イジェクトボタンが押下された場合などにおいて、モータの停止指令が発生する。この停止指令は、ブレーキ回路60に入力される。ブレーキ回路60には、正逆回転切り換え回路62が接続されており、正逆回転切り換え回路62は、停止指令に応答して通電切り換え回路26に信号を送り、切り換えタイミングを逆転のタイミングに切り換える。すなわち、通電切り換え回路26は、トランジスタ22、14、24、18に供給する信号のタイミングを制御して、ロータに対し逆転のトルクを印加する。これは、ロータマグネットの磁極に対向して正回転に対して反対のトルクを発生するような誘導磁界による磁極が存在するようにモータコイル10に電流を流すことによって行われる。この電流はショートブレーキのように減衰振動にはならず基本的には一定値に保たれているためモータの回転に対し強力な逆トルクが発生し電気的な急速ブレーキが動作する。」 ・「【0031】また、ホールアンプ30の出力であるロータの回転についての矩形波信号は、エッジパルス発生回路70に供給される。エッジパルス発生回路70は、ホールアンプの出力であるパルス信号の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを検出し、短期間のエッジパルスを出力する。エッジパルス発生回路70の出力は、回転検知回路72に供給される。」 ・「【0032】回転検知回路72には、他端がアースに接続されたコンデンサ74が接続されると共に、このコンデンサ74の上側とアースを接続するトランジスタ77(注:「76」の誤記)のベースが接続されている。そして、回転検知回路72は、所定の定電流でコンデンサ74を常時充電すると共に、エッジパルス発生回路70から供給されるエッジパルスをトランジスタ76のベースに供給することによって、コンデンサ74の充電電圧を定期的に放電する。従って、図3に示すように、コンデンサ74の上側電圧は、エッジパルスの周期が長くなるほど高くなる。」 ・「【0033】そして、回転検知回路72には、コンパレータが設けられており、このコンパレータが、所定の高電圧Vsと、コンデンサ74の上側電圧を比較し、コンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回った時に、検知信号を出力する。この信号を通電切り換え回路26に供給する。」 ・「【0034】通電切り換え回路26は回転検知回路62(注:「72」の誤記)からの検知信号に応答し、切り換えを停止する。すなわち、トランジスタ12、18をオン、トランジスタ16、14をオフ(またはその反対)にトランジスタの状態を固定し、モータコイル10に流れる電流を一方向に固定する。このように、モータコイル10に流れる電流が固定されると、単相モータのロータは、モータコイル10により生じる1つの形態の磁界に応じて位置に引っ張られ、この状態で固定、すなわちモータが停止される。なお、回転検知回路62(注:「72」の誤記)が検知信号を発生したときに、エッジパルスの発生を禁止する。このため、コンデンサ74の上側電位は、所定の定電位になる。」 ・「【0035】このように、本実施例によれば、逆転制動によって、モータ回転数が所定値以下になった場合(エッジパルスの間隔が所定値以上になった場合)には、モータコイル10に供給する電流を一方向に固定する。これによって、モータが逆転することなく急速に停止することができる。」 以上の記載と図示内容によれば、引用文献1には、次の事項からなる発明が記載されているといえる。(以下「引用発明」という。) 「通電切り換え回路26により通電方向を切り換えて、一端側及び他端側が、それぞれ直列接続された電源側トランジスタ12(16)と接地側トランジスタ14(18)の2つのトランジスタの中間点に接続されたモータコイル10を有するモータを回転させるモータ駆動回路であって、 モータコイル10の通電量をサーボ回路42から出力されるモータ速度指令Ecと基準電圧EcRとを比較することで得られる正の電圧信号によりモータコイル10の電流がモータ速度指令Ecに応じた所定値となるようにフィードバック制御する電流制御アンプ46の出力と、ホール素子28からの位置検出信号と、ブレーキ回路60から正逆回転切換え回路62を介した信号と、回転検知回路72からの信号とが入力され、前記トランジスタ12,14,16,18に制御信号を印加する通電切り換え回路26と、 モータコイル10に流れる電流を一方向に固定するために設定された所定の高電圧Vsと、回転検知回路72に設けられ、所定の定電流でコンデンサ74を常時充電すると共に、エッジパルス発生回路70から供給されるエッジパルスをトランジスタ76のベースに供給することによって、コンデンサ74の充電電圧を定期的に放電することで、モータの回転速度低下に伴ってエッジパルスの周期が長くなるほど高くなるコンデンサ74の上側電圧を、前記所定の高電圧Vsと比較し、コンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回った時に、検知信号を出力するコンパレータとを備え、 モータを停止するときには、モータにおいて回転方向と逆向きのトルクが発生するように、モータコイル10への逆転通電を行い、この逆転通電によりモータの回転速度が低下して前記コンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回り、前記検知信号が出力されたときに、モータコイル10への通電方向を一方向に固定してモータを停止させる、モータ駆動回路。」 (3)対比 本件補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「モータコイル10」は前者の「駆動巻線」に相当し、以下同様に、「モータ」は「電動機」に、「回転させる」は「駆動する」に、「モータ駆動回路」は「電動機の制御装置」に、それぞれ相当する。 そして、後者の「電源側トランジスタ12(16)と接地側トランジスタ14(18)」からなる回路は前者の「インバータ」に相当し、後者の「通電切り換え回路26」は、前者の「インバータの上下トランジスタのそれぞれに……通電ロジック信号を発生させて」いるもの、及び「インバータの上下トランジスタに前記通電ロジック信号を印加するトランジスタ駆動手段」に相当する。 また、後者の「サーボ回路42から出力されるモータ速度指令Ecと基準電圧EcRとを比較することで得られる正の電圧信号によりモータコイル10の電流がモータ速度指令Ecに応じた所定値となるようにフィードバック制御する電流制御アンプ46の出力」は、本願明細書の段落【0033】の「検出回転数FDと運転回転数FIとがPWM-DUTY演算回路14で比較され、検出回転数FDが運転回転数FIに等しくなるように調整された駆動タイミング信号PWM」なる記載を参酌すれば、前者の「駆動タイミング信号」に相当する。 そして、後者の「ホール素子28からの位置検出信号」は、回転方向に応じたロータとステータの相対位置の信号であるから、前者の「同期タイミング信号」に相当し、後者の「ブレーキ回路60から正逆回転切換え回路62を介した信号」は、前者の「逆転ブレーキ信号」に相当し、また、後者の「回転検知回路72」は、「モータコイル10に流れる電流を一方向に固定するために設定された所定の高電圧Vsと、……モータの回転速度低下に伴ってエッジパルスの周期が長くなるほど高くなるコンデンサ74の上側電圧を、前記所定の高電圧Vsと比較し、コンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回った時に、検知信号を出力するコンパレータとを備え」たものであり、このコンパレータからの検知信号、すなわち、逆向きのトルクを発生してモータの回転速度が所定速度まで低下したときにブレーキ手段を切り換えるための信号を出力するものであるから、後者の「回転検知回路72からの信号」と、前者の「ショートブレーキ信号」とは、「ブレーキ切り換え信号」の概念で共通する。 また、前者の「三相の駆動タイミング信号」は、本願明細書の前記段落【0033】の記載、及び段落【0019】の「これら、同期タイミング信号Uφ、Vφ、Wφは、各相の切り替わりタイミングを示す信号として、駆動タイミング生成回路30に供給される。」という記載、及び段落【0038】の「この逆転ブレーキ時におけるU相端子の電位Vu、V相端子の電位Vv、W相端子の電位Vwと中点電位Vcomは図3に示されるようになる。これら電位Vu、Vv、Vwと中点電位Vcomとを、U相比較器CPu、V相比較器CPv、W相比較器CPwでそれぞれ比較する。そして、それらの比較出力であるU相同期タイミング信号Uφ、V相同期タイミング信号Vφ、W相同期タイミング信号Wφを得て、正確なU相、V相、W相の切り替えタイミングを得る。」という記載等からみて、電動機の駆動時には、前記「駆動タイミング信号PWM」と前記各相の「同期タイミング信号」に基づく切り替わりタイミングをトランジスタ駆動回路に与えるタイミング信号であるから、後者の「制御信号」とは、「電動機巻線駆動切り換えタイミング制御信号」との概念で共通している。また後者の「通電切り換え回路26」は、「電動機巻線駆動切り換えタイミング制御信号」を出力するものといえるから、前者の「駆動タイミング信号生成手段」に相当する。 また、後者の「モータの回転速度」は前者の「検出回転数」に相当するから、後者の「モータコイル10に流れる電流を一方向に固定するために設定された所定の高電圧Vsと、回転検知回路72に設けられ、所定の定電流でコンデンサ74を常時充電すると共に、エッジパルス発生回路70から供給されるエッジパルスをトランジスタ76のベースに供給することによって、コンデンサ74の充電電圧を定期的に放電することで、モータの回転速度低下に伴ってエッジパルスの周期が長くなるほど高くなるコンデンサ74の上側電圧を、所定の高電圧Vsと比較し、コンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回った時に、検知信号を出力するコンパレータ」と、前者の「ショートブレーキ設定回転数信号と、前記U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて三相合成回路で検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記ショートブレーキ設定回転数信号を下回ったときに前記ショートブレーキ信号を出力する回転数比較手段」とは、「設定回転数信号と、同期タイミング信号に基づいて検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記設定回転数信号を下回ったときにブレーキ切り換え信号を出力する回転数比較手段」との概念で共通する。 また、後者の「モータを停止するときには、モータにおいて回転方向と逆向きのトルクが発生するように、モータコイル10への逆転通電を行い、」は、前者の「電動機の回転を停止するときには、まず、逆転ブレーキ信号の供給により、……インバータの上下トランジスタを逆転ブレーキが掛かるように制御し、」に相当する。 また、後者の「逆転通電によりモータの回転速度が低下してコンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回り、検知信号が出力されたときに、モータコイル10への通電方向を一方向に固定してモータを停止させる」態様と、前者の「次に、U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つセンサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数になったときに回転数比較手段から出力されるショートブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相インバータの上下トランジスタをショートブレーキが掛かるように制御し、前記センサレス電動機を逆回転させることなく停止する」態様とは、「次に、回転数が、逆転しない回転数であって速度検出手段で検出できる設定回転数まで低下したときに、回転数比較手段から出力されるブレーキ切り換え信号の供給により逆転を生じさせない停止手段に切り換えて電動機を停止させる」との概念で共通している。 したがって両者は、 [一致点] 「インバータの上下トランジスタのそれぞれに通電ロジック信号を発生させて駆動巻線を有する電動機を駆動する電動機の制御装置であって、 駆動タイミング信号と、同期タイミング信号と、逆転ブレーキ信号と、ブレーキ切り換え信号とが少なくとも入力され、電動機巻線駆動切り換えタイミング制御信号を出力する駆動タイミング信号生成手段と、 前記インバータの上下トランジスタに前記通電ロジック信号を印加するトランジスタ駆動手段と、 設定回転数信号と、前記同期タイミング信号に基づいて検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記設定回転数信号を下回ったときに前記ブレーキ切り換え信号を出力する回転数比較手段とを備え、 前記電動機の回転を停止するときには、まず、前記逆転ブレーキ信号の供給により、前記インバータの上下トランジスタを逆転ブレーキが掛かるように制御し、 次に、回転数が、逆転しない回転数であって速度検出手段で検出できる設定回転数まで低下したときに、前記回転数比較手段から出力される前記ブレーキ切り換え信号の供給により逆転を生じさせない停止手段に切り換えて電動機を停止させる、電動機の制御装置。」である点で一致し、 [相違点] (イ)「インバータの上下トランジスタのそれぞれに通電ロジック信号を発生させて駆動巻線を有する電動機を駆動する電動機の制御装置」に関し、本件補正発明では、「互いに120°(電気角)の位相差となる三相の信号によりU相、V相、W相の」インバータの上下トランジスタのそれぞれに「三相6モードの」通電ロジック信号を発生させて「星形結線された三相」駆動巻線を有する「センサレス」電動機を対象としているのに対し、引用発明は、かかる特定がなされていない点、および、 (ロ)「駆動タイミング信号生成手段」に関し、本件補正発明では、「U相インバータの上下トランジスタの接続点電位と三相駆動巻線の中点電位とを比較し、U相同期タイミング信号を出力する第1比較器と、V相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、V相同期タイミング信号を出力する第2比較器と、W相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、W相同期タイミング信号を出力する第3比較器と、」を備え、同期タイミング信号が「U相同期タイミング信号」と「V相同期タイミング信号」と「W相同期タイミング信号」とからなり、ブレーキ切り換え信号が「ショートブレーキ信号」であり、電動機巻線駆動切り換えタイミング制御信号が「三相の駆動タイミング信号」であるのに対して、引用発明ではかかる特定がなされていない点、および、 (ハ)「トランジスタ駆動手段」に関し、本件補正発明では、「三相の駆動タイミング信号が入力され」るのに対し、引用発明は、かかる特定がなされていない点、および、 (ニ)「回転数比較手段」に関し、本件補正発明では、「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つセンサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数に設定されたショートブレーキ」設定回転数信号と、前記「U相、V相、W相」同期タイミング信号に基づいて「三相合成回路で」検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記「ショートブレーキ」設定回転数信号を下回ったときに「ショートブレーキ信号」を出力するものであるのに対し、引用発明では、かかる特定がなされていない点、および、 (ホ)「回転数が、逆転しない回転数であって速度検出手段で検出できる設定回転数まで低下したときに、回転数比較手段から出力されるブレーキ切り換え信号の供給により逆転を生じさせない停止手段に切り換えて電動機を停止させる」手段に関し、本件補正発明では、「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つセンサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数になったときに回転数比較手段から出力されるショートブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相インバータの上下トランジスタをショートブレーキが掛かるように制御し、前記センサレス電動機を逆回転させることなく停止する」ものであるのに対し、引用発明では、「逆転通電によりモータの回転速度が低下してコンデンサ74の上側電圧が電圧Vsを上回り、検知信号が出力されたときに、モータコイル10への通電方向を一方向に固定してモータを停止させる」ものである点で相違している。 (4)相違点に対する判断 相違点(イ)ないし(ハ)について 「互いに120°(電気角)の位相差となる三相の信号によりU相、V相、W相のインバータの上下トランジスタのそれぞれに三相6モードの通電ロジック信号を発生させて星形結線された三相駆動巻線を有するセンサレス電動機を駆動する電動機の制御装置において、U相インバータの上下トランジスタの接続点電位と三相駆動巻線の中点電位とを比較し、U相同期タイミング信号を出力する第1比較器と、V相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、V相同期タイミング信号を出力する第2比較器と、W相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、W相同期タイミング信号を出力する第3比較器と」、「三相の駆動タイミング信号」を出力する駆動タイミング信号生成手段を備えるようにすることは周知技術(例.特開平2-60493号公報,特開平2-179295号公報,特開平3-222690号公報参照)である。 したがって、引用発明において、これら周知技術を用いることで、上記相違点(イ)ないし(ハ)に係る本願発明の構成とすることは当業者に容易である。 相違点(ニ)及び(ホ)について 電動機のブレーキ手段として「ショートブレーキ」を用いることは、周知技術(例.原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-98894号公報等参照)である。 そして回転数が、逆転しない回転数であって速度検出手段で検出できる設定回転数まで低下したときに、ショートブレーキが掛かるように制御し、電動機を逆回転させることなく停止するようにすることは、実願昭57-25682号(実開昭58-131194号)のマイクロフィルム,特開平10-127079号公報,特開2001-352785号公報等に記載されており周知技術と認められる。 また、本件補正発明において、「U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて三相合成回路で検出される検出回転数」は、本願明細書の段落【0011】に記載されているように「回転数及び回転位置を誘起電圧から検出する」ものであるところ、U相、V相、W相同期タイミング信号を得るための、三相駆動巻線の誘起電圧を合成した出力に基づいて電動機の回転速度を得ることは周知技術(特開2000-37093号公報,特開平4-295295号公報,特開平5-260784号公報等参照)であり、上記、相違点(イ)ないし(ハ)についてに示した周知の三相のセンサレス電動機においても、U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて三相合成回路で検出回転数を得ることは、当業者が適宜設計し得る事項である。 したがって、引用発明において、上記周知技術を適用することにより、相違点(ニ)及び(ホ)に係る本件補正発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことと認められる。 また、本件補正発明の奏する効果は、引用発明及び上記周知技術から予測しうる程度のものと認められる。 よって、本件補正発明は、引用発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について 平成17年6月3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年3月18日付手続補正書の記載からみて、以下のとおりのものと認める。 「互いに120°(電気角)の位相差となる三相の信号によりU相、V相、W相のインバータの上下トランジスタのそれぞれに三相6モードの通電ロジック信号を発生させて三相駆動巻線を有するセンサレス電動機を駆動する電動機の制御装置であって、 前記U相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、U相同期タイミング信号を出力する第1比較器と、 前記V相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、V相同期タイミング信号を出力する第2比較器と、 前記W相インバータの上下トランジスタの接続点電位と前記三相駆動巻線の中点電位とを比較し、W相同期タイミング信号を出力する第3比較器と、 駆動タイミング信号と、前記U相同期タイミング信号と、前記V相同期タイミング信号と、前記W相同期タイミング信号と、逆転ブレーキ信号と、ショートブレーキ信号とが少なくとも入力され、三相の駆動タイミング信号を出力する駆動タイミング信号生成手段と、 前記三相の駆動タイミング信号が入力され、前記U相、V相、W相のインバータの上下トランジスタに前記通電ロジック信号を印加するトランジスタ駆動手段と、 前記U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出できる回転数に設定されたショートブレーキ設定回転数信号と、前記U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて検出される検出回転数とを比較し、前記検出回転数が前記ショートブレーキ設定回転数信号を下回ったときに前記ショートブレーキ信号を出力する回転数比較手段とを備え、 前記電動機の回転を停止するときには、まず、前記逆転ブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相のインバータの上下トランジスタを逆転ブレーキが掛かるように制御し、次に、前記ショートブレーキ信号の供給により、前記U相、V相、W相インバータの上下トランジスタをショートブレーキが掛かるように制御することを特徴とする、電動機の制御装置。」 (1)引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、上記したとおりであって、前記「2.」で検討した本件補正発明から「三相駆動巻線」について「星形結線された」との限定を省き、同じく「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出できる回転数」について「センサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない」との限定を省き、同じく「U相、V相、W相同期タイミング信号に基づいて検出される検出回転数」について「三相合成回路で」検出されるとの限定を省き、同じく「電動機」について「センサレス」との限定を省き、同じく「ショートブレーキ信号」について「U相、V相、W相同期タイミング信号を確実に検出でき且つセンサレス電動機にショートブレーキを掛けた際に該センサレス電動機が逆方向に回転することがない回転数になったときに回転数比較手段から出力される」との限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり 、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-25 |
結審通知日 | 2006-10-31 |
審決日 | 2006-11-14 |
出願番号 | 特願2003-17323(P2003-17323) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H02P)
P 1 8・ 575- Z (H02P) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川端 修 |
特許庁審判長 |
田良島 潔 |
特許庁審判官 |
田中 秀夫 高橋 学 |
発明の名称 | 電動機の制御装置 |
代理人 | 紋田 誠 |
代理人 | 逸見 輝雄 |