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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由)(定型) A61B
管理番号 1151432
審判番号 不服2004-11931  
総通号数 87 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-11-20 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-06-10 
確定日 2007-02-08 
事件の表示 特願2000-142408「映像表示機能付き眼球撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年11月20日出願公開、特開2001-321341〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 本願は、平成12年5月15日の出願であって、その請求項1乃至7に係る発明は、平成16年3月29日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載された事項により特定されるとおりのものであると認める。
これに対して、平成18年8月31日付けで拒絶理由を通知し、期間を指定して意見書を提出する機会を与えたが、請求人からは何らの応答もない。

ここで、上記拒絶理由の内容は以下のとおりである。


この審判事件に関する出願は、合議の結果、以下の理由によって拒絶すべきものと認められます。これについて意見がありましたら、この通知の発送の日から60日以内に意見書を提出して下さい。
理 由
本件出願の請求項1乃至7に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.本願発明
本件出願は平成12年5月15日に出願され、その請求項1乃至7に係る発明は、平成16年3月29日付手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至7に記載されたとおりのものと認める(以下、それぞれ「本願発明1」乃至「本願発明7」という。)。

2.引用刊行物
引用例1:特開平11-309114号公報
引用例2:特開2000-98290号公報(平成12年4月7日公開)
引用例3:特開平11-197108号公報
引用例4:特開平11-104085号公報
引用例5:特開平10-123497号公報
引用例6:国際公開第97/47993号パンフレット(特表2000-512520号)

3.引用刊行物記載事項
(1)引用例1には、図面とともに次の記載がある。
(1-1)「【0027】図5は第2の実施例の検眼装置の側面図を示し、検者が操作しなくとも他覚屈折力測定が可能とされている。」
(1-2)「【0028】窓部材41の略中心の光路O6上には、発散赤外光を発する前眼部照明用光源52、眼幅よりも大きい幅の赤外光反射の光分割部材53と凹面ミラー54が配置され、光分割部材53の上側入射方向の光路O7上には、ミラー55、筐体40に固定された被検者が見る両眼視標56、この両眼視標56を照明する視標照明用光源57が配置されており、両眼視標56には図6に示すようなぼけた広い視野の遠景が描かれている。
【0029】光分割部材53の下側反射方向の光路O8上には、ダイクロイックミラー58、59、ミラー60が配列され、」
(1-3)「【0030】ダイクロイックミラー59の入射方向の光路O10 上には、レンズ65、孔あきミラー66、絞り67、レンズ68、赤外光を発する屈折力測定用光源69が順次に配列され、ミラー60の反射方向の光路O11 上には、レンズ70、71、ダイクロイックミラー72、撮像手段73が配列されており、」
(1-4)「【0031】また、ダイクロイックミラー58の近傍には小ミラー77が配置され、図8に示すようにレンズ78、CCD要素配列と平行に母線を有する円柱レンズ79、CCDラインセンサ80から成る距離検出光学系が構成されている。そして、前眼部照明用光源52と光分割部材53以降の部材により測定光学系81が形成され、測定光学系81は3つのステッピングモータを含む三次元駆動手段82上に載置されている。」
(1-5)「【0035】両眼視標56は視標照明用光源57により照明され、被検者は可視光で光分割部材53を介して遠方にこの両眼視標56を見る。ぼけた像でも位置の判断はできるので、光路に平行に投影された両眼の視標網膜像の相対位置から遠方視感を与えることができる。視標像がぼけているので調節刺激にはならず、遠視眼の被検者がこの両眼視標56を見つめて調節を起こす心配はない。」
(1-6)「【0036】測定光学系81は三次元駆動手段82より左右上下前後に駆動し、被検眼EL、ERに位置を合わせる。撮像手段73には光路O11 を介して前眼部が映っており、この像を図示しない演算手段で解析して被検眼EL、ERの位置を判断し、上下左右に三次元駆動手段82を動かす信号とする。
【0037】光路O6の左右両側の前眼部照明用光源52は、窓部材41越しに前眼部を照明し、その角膜反射像や瞳孔像を演算手段により解析して認識しアライメントを行う。光路O11 上のレンズ70、71は焦点深度が深い撮像光学系なので、被検眼EL、ERが10mm程度ずれていても被検眼EL、ERの位置認識ができ、アライメントが可能である。」
(1-7)「【0039】額受け3及び顎台44を最初に駆動調整して概略の位置合わせが終ってから、三次元駆動手段82を駆動して測定光学系81の正確な位置合わせを行う。アライメントの方が検出範囲が広いので、初めに顎台44を調整し、次に距離検出して額当て43を調節し、更に測定光学系81を調節するようにする。片眼が終ると三次元駆動手段82により測定光学系81を60mm程度、眼幅方向に移動して他方の眼を測定する。」
(1-8)「【0040】屈折力測定用光源69からの光束は光路O10 を進み、ダイクロイックミラー59、光分割部材53を介して被検眼EL、ERに投影され、その眼底反射光は光路O6、O8、O10 を通り、孔あきミラー66、ダイクロイックミラー72を介して撮像手段73に結像し、その眼底光束の位置を解析して屈折値が演算される。」
(1-9)また、第5図には、被検眼E前方の一直線状の光路O6上に、窓部材、赤外光源である前眼部照明用光源52,光分割部材53及び凹面鏡54を順に配置することが記載されている。

上記記載から、引用例1には次の発明が記載されている(以下、「引用発明1」という。)。
「被検者の被検眼前方に、光路O6に沿って窓部材、発散赤外光を発する前眼部照明用光源、赤外光反射の光分割部材、凹面ミラーが順に一直線上に配置され、光分割部材の上側入射方向の光路上には、被検者が見る、ぼけた広い視野の遠景が描かれてなる両眼視標、及びこの両眼視標を照明する視標照明用光源、及び前記両眼視標からの光束を前記光分割手段へと偏向させるミラーが配置されており、光分割部材の下側反射方向の光路上には、ミラー、レンズ、ダイクロイックミラー、撮像手段が順に配列されており、前眼部照明用光源と光分割部材以降の部材により形成される測定光学系は、3つのステッピングモータを含む三次元駆動手段上に載置されてなり、両眼視標は視標照明用光源により照明され、被検者は可視光で光分割部材を介して遠方にこの両眼視標を見るとともに、前記光路O6の左右両側の前眼部照明用光源は、窓部材越しに前眼部を照明し、その角膜反射像や瞳孔像は、前記赤外光反射の光分割部材を介して光分割部材の下側反射方向の光路上の撮像手段に映り、その角膜反射像や瞳孔像を演算手段により解析して、被検眼の位置を判断し、上下左右に三次元駆動手段を動かす信号として、測定光学系のアライメントを行う、検眼装置の撮像手段。」

(2)引用例2には、図面とともに次の記載がある。
(2-1)「【0005】このように、半透鏡を光路上に斜設した光学装置ではフレヤーやゴースト像が発生する。この対策として、従来はハーフミラー面の透過率と反射率を最適に設計したり、ハーフミラー面の反対側の裏面にコーティングする反射防止膜の反射率を低く抑えるようにして、正規光束に対するゴースト像の影響を抑えるようにしていた。」
(2-2)「【0021】6は視標ディスク板2上の検査視標を照明する照明用ランプ、7はミラーである。8は平板状のビームスプリッタであり、その両面はハーフミラー膜が施されたハーフミラー面8aと、反射防止膜が施された裏面8bにより構成されている。」
(2-3)「【0028】ビームスプリッタ8の基材の内部透過率をτとする。この値は基材の着色程度により変化する。ハーフミラー面8aの透過率をT、その反射率をRとする(なお、ハーフミラーコートに金属膜を用いると光学的吸収があるので、T+R<1となる)。また、反射防止膜を施した裏面8bの反射率をr、透過率を1-rとする(反射防止膜を誘電体膜とし、光学的吸収をほとんど無視できるものとしている)。また、凹面ミラー9の反射率をR0とする。」
(2-4)「【0037】ビームスプリッタ8に施すハーフミラーコートの透過率T=45%、反射率R=45%、裏面に施す反射防止膜の反射率r=0.5%(透過率は99.5%)、凹面ミラーの反射率R0=95%とする。この条件で、内部透過率τを99.9%(これは、従来のようにビームスプリッタ8の基材を透明のガラス等で構成した場合である)、90%、80%とした場合について、前述の式4、式5から、光量比Pa、Pbを求める(結果は小数点以下第6位四捨五入している)。」
(2-5)「【0042】また、本発明はビームスプリッタに限るものではなく、複数の光束を合成するビームコンバイナーにも適用することができる。図4はその一例を示す図で、30はダイクロイックミラーであり、図4上の右方向から入射する光束31の第1波長の光(例えば、可視光)を透過し、図4上の上方向から来る光束32の第2波長の光(例えば、近赤外光)を反射する特性を持つミラー膜が面30aに施されている。」

(3)引用例3には、図面とともに次の記載がある。
(3-1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、視力検査の際に被検者に視標を提示する視機能検査装置に関する。」
(3-2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、眼位検査では、ある程度離れた位置から視標を被検者に見せる必要があるため、以上の従来技術では、視標が表示される液晶パネルと被検眼とをある程度以上離さなければならない。また、被検者は、筐体の窓から真っ暗な筐体内部を覗き込み真っ暗な背景中に視標を見ることになり、機械近視の影響を受けてしまう者もいるために、この観点からも、視標が表示される液晶パネルと被検眼とをある程度離さなければならない。このため、従来技術では、筐体内の液晶パネルと筐体の窓との間の距離を大きくとる必要があり、装置が大型化してしまうと言う問題点がある。
【0005】また、前述したように、筐体の窓から真っ暗な筐体内部を覗き込み、そこに見映し出されている視標を見る、つまり、暗い背景の中の視標を見るので、眼の調節作用が働いて、正確な検査を行いにくいという問題点もある。」
(3-3)「【0016】この実施形態における視機能検査装置は、図3に示すように、ヘッドマウント型で、被検者5の頭部に装着される装置本体10と、検者からの指示を赤外線等の無線で装置本体10に伝える操作盤40とを備えている。装置本体10には、被検者5の耳に掛けるための耳掛け部19が形成されている。この実施形態の装置本体10は、図1に示すように、左眼用鏡体11Lと、右眼用鏡体11Rと、左右鏡体11L,11Rの連結体12とを備えている。」
(3-4)「【0028】次に、この実施形態における視機能検査装置の使用態様及び作用について説明する。まず、図3に示すように、装置本体10の耳掛け部19を被検者5の耳に掛けさせ、装置本体10を被検者5の頭部に装着させる。」
(3-5)「【0049】次に、本発明に係る第2の実施形態としての視機能検査装置について、図7を用いて説明する。
【0050】この実施形態における視機能検査装置も、・・・、ヘッドマウント型で、被検者5の頭部に装着される装置本体10aと、検者からの指示を無線で装置本体10に伝える操作盤40とを備えている。この実施形態の装置本体10aも、また、第1の実施形態と同様に、液晶パネル30と表示制御回路31とパネル移動機構32とハーフミラー23aと液晶シャッタ26とシャッタ駆動回路33と主制御回路13と操作信号受送信器15と三次元位置センサ16と検眼レンズ取付部28と、を備えている。・・・
【0052】凹面ハーフミラー21aの光軸上には、検眼レンズ取付部28、ハーフミラー23a、液晶シャッタ26が配置されている。これらは、被検眼6側から、検眼レンズ取付部28、ハーフミラー23a、凹面ハーフミラー21a、液晶シャッタ26の順で、配置されて、外景像光学系25aを構成し、外景像光路を形成している。液晶パネル30は、凹面ハーフミラー21aの光軸に対して垂直な方向で、液晶パネル30からの視標像がハーフミラー23aで反射されて被検眼6に導ける位置に配置されている。視標像光学系20aは、ハーフミラー23aと凹面ハーブミラー21aとで構成されている。したがって、視標像光学系20aは、外景像光学系25aの一部を構成している。
【0053】・・・。
【0054】以上の構成により、液晶パネル30からの視標像は、ハーフミラー23aで反射され、凹面ハーフミラー21aに向い、そこで反射されて、再びハーフミラー23aに至り、これを通過して、被検眼6に至る。但し、検眼レンズ取付部28に検眼レンズ29が取り付けられている際には、ハーフミラー23aを通過した視標像は、検眼レンズ29を通過した後に被検眼6に至る。外景像は、液晶シャッタ26の非遮光領、凹面ハーフミラー21a、ハーフミラー23aを通って、さらに、検眼レンズ29が装着されている場合には検眼レンズ29を通って、被検眼6に至る。この実施形態においても、液晶シャッタ26の領域のうち、視標像の領域に相当する領域のみ遮光され、この領域内の外景像は被検眼6に至らないので、被検者5は、明確な視標像の周りに、外景像が見る。」

4.対比
(1)本願発明1について
引用発明1の
(a)「光分割部材」、(b)「両眼視標」、(c)「前眼部照明用光源」、(d)光分割手段の「下面」、(e)光分割手段の「上面」、(f)「検眼装置の撮像手段」
は、それぞれ本願発明1の
(a)「ハーフミラー」、(b)「映像表示手段」、(c)「赤外光照射手段」、(d)ハーフミラーの「撮像手段側の面」、(e)ハーフミラーの「映像表示手段側の面」、(f)「映像表示機能付き眼球撮像装置」
に相当することが明らかである。
また、引用発明1に於いて、両眼視標の像は、光分割手段の上面で反射して凹面ミラーで反射され、前記光分割手段を透過して被検眼に到達することとなるので、被検眼は前記両眼視標を直接見るのではなく、その虚像を見るものであることは明らかである。
また、引用発明1に於いて、両眼視標及び撮像手段の光軸は共に、ミラーを介して光分割手段に指向しているが、一般に光学系の設計に於いて光軸上に光軸偏向用のミラーを配するか否かは設計事項に過ぎないことから、光分割手段に対する両眼視標及び撮像手段の配置に関し、本願発明1と引用発明1との間に実質的な相違はない。
また、引用発明1に於いて、被検者は視標照明用光源により照射された両眼視標の像を、光分割手段及び凹面ミラーにより遠方に見るのであるから、両眼視標からの像は光分割手段の上面に至り、該面で反射して凹面ミラーに向かい、該凹面ミラーで反射して光分割手段を透過して被検者の眼に向かう経路をたどることが明らかであり、その際、視標照明用光源は、被検者が目視するのであるから、可視光を少なくとも含むものであることは明らかであるし、少なくとも光分割手段の上面は、該可視光に対して一部反射・一部透過性を持つことも明らかである。

よって両者は、
(一致点)
「対象者の眼前に位置する凹面ミラーと、対象者の眼球と凹面ミラーとの間に位置するハーフミラーと、映像を映し出して上記ハーフミラーで反射させ上記凹面ミラーで形成した虚像を上記ハーフミラーを通して表示させる映像表示手段と、対象者の眼球付近に位置し対象者の眼球へ赤外光を照射する赤外光照射手段と、上記ハーフミラーを挟んで映像表示手段の反対側に位置し上記ハーフミラーで反射した赤外光により対象者の眼球の像を撮像する撮像手段とを備え、上記ハーフミラーは、撮像手段側の面が赤外光を反射するようにされ、映像表示手段側の面に可視光を一部反射し残りを透過させるなることを特徴とする映像表示機能付き眼球撮像装置。」
である点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明1では、ハーフミラーの各面に対し、赤外光を反射するような特性とすることや、可視光に対し一部反射し残りを透過させる特性とすることを、それぞれの面に波長選択層や半透過層をコーティングにより形成することで行っているのに対し、引用発明1に於いては、ハーフミラーに前記各特性を持たせるための具体的手法について言及していない点。

(2)本願発明2について
引用発明1に於ける凹面ミラーが入射光の透過性を有さないものであることは、その名称や、引用例1の発明の詳細な説明中に、該凹面ミラーが透過性を有することについて何らの記載もないことからみて、明らかである。
よって、本願発明2と引用発明1との一致点、相違点は本願発明1に関する上記(1)に記載したとおりのものである。

(3)本願発明3について
引用発明1と本願発明3とは、上記(1)記載の一致点と同様の点で一致し、
(相違点3)
本願発明3に於ける凹面ミラーが入射光の一部を反射させ残りを透過させるものであるのに対し、引用発明1に於ける凹面ミラーが上記(2)記載のとおり、半透過性について言及がない点、
で相違する。

(4)本願発明4について
引用発明1と本願発明4とは、上記(1)記載の一致点と同様の点で一致し、
(相違点4)
本願発明4に於ける映像表示手段が液晶パネルと、液晶パネルへ背面側から光を照射する光源とを有し、上記光源は、発光ダイオードからなるのに対し、引用発明1に於ける映像表示手段が、視標照明用光源により照明された、ぼけた広い視野の遠景が描かれてなる両眼視標両眼視標である点、
で相違する。

(5)本願発明5について
引用発明1と本願発明5とは、上記(1)記載の一致点と同様の点で一致し、
(相違点5)
本願発明5に於ける映像表示手段が、液晶パネルと、液晶パネルへ背面側から光を照射する光源とを有し、上記光源と液晶パネルとの間に赤外線カットフィルタが設けられてなるのに対し、引用発明1に於ける映像表示手段が、視標照明用光源により照明された、ぼけた広い視野の遠景が描かれてなる両眼視標両眼視標である点
で相違する。

(6)本願発明6について
引用発明1に於ける「三次元駆動手段」は、「前眼部照明用光源と光分割部材以降の部材により形成される測定光学系」を載置し、駆動により該測定光学系をアライメントするものである点で、本願発明6に於ける「位置調整手段」に相当する。
よって、引用発明1と本願発明6とは、上記(1)記載の一致点に加え、
(一致点6)
共に「凹面ミラーと上記ハーフミラーと上記映像表示手段と上記眼球撮像手段と上記赤外光照射手段とを具備する光学ユニットの眼球に対する相対位置を調整する位置調整手段」を備える点
で一致し、上記(1)記載の相違点1と同様の相違点に於いて相違する。

(7)本願発明7について
引用発明1と本願発明7とは、上記(1)記載の一致点と同様の点で一致し、
(相違点7)
本願発明7が、
「上記凹面ミラーと上記ハーフミラーと上記映像表示手段と上記眼球撮像手段と上記赤外光照射手段とを具備する光学ユニットを保持する眼鏡状のフレームを備え、上記フレームは、上記光学ユニットを保持し対象者の眼前に位置するフレーム本体と、フレーム本体を支えるために対象者の鼻に接するパッドと、フレーム本体の両側部からそれぞれ突設され先端部が対象者の耳付近に達するテンプルとを有する」
のに対し、引用発明1がそのような構成を有さない点で相違する。

5.相違点の検討
(1)相違点1について
眼科検査装置などの光学装置に於いて、ハーフミラーやダイクロイックミラーなどの光分割手段に対し、赤外反射能や半透過性など特定の光学特性を与えるために、ハーフミラー膜や、可視光透過・赤外光反射などの性質を持つミラー膜を光分割手段のそれぞれの表面に施すこと、及び該各表面への施膜をコーティングによって行うことは、何れも引用例2記載のとおりの周知技術に過ぎない。
よって、引用発明1に於ける光分割手段に必要な、下面に於ける赤外反射や上面に於ける可視光の半透過性という特性を得るために、前記周知技術を適用して、前記それぞれの特性に応じたハーフミラー膜や赤外反射膜を、前記光分割手段の各面にコーティングにより施すことは、前記周知技術を適用することで当業者が容易に想到し得ることである。

(2)相違点3について
視標を凹面ミラーに反射させて被検眼に導くことにより被検眼に視標の虚像を見させる検眼装置の手段に於いて、被検眼に向き合う凹面ミラーを凹面ハーフミラーとして、外界の様子を視標と同時に見られるようにして機械近視や被検者の不安を軽減・防止することは引用例3に記載されており、これを同分野に属する引用発明1の視標光学系に於ける凹面ミラーに適用して該相違点3の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

(3)相違点4について
眼科装置の視標光学系に於いて、視標を液晶素子に表示させ、また、そのバックライトを発光ダイオードとすることは、何れも引用例4(【0011】【0026】)に記載されたとおりの周知技術に過ぎない。
よって、引用発明1の両眼視標に対し、前記周知技術を適用して、視標表示手段を液晶表示素子とし、その照明用光源を発光ダイオードから成るバックライトとすることは、前記周知技術に基づき当業者が容易に想到し得ることである。

(4)相違点5について
液晶表示装置とバックライトとの間に、過熱防止その他の目的で赤外線など可視光以外の波長を遮断するカットフィルタを介在させることは、引用例5にも記載されたとおり(【0034】【0037】)周知技術であるから、引用発明1に引用例3記載の周知技術を適用する際に、バックライトが赤外光など可視光以外の波長帯を含むような場合、光源と液晶表示素子との間に赤外線カットフィルタなどのカットフィルタを挿入する程度のことは、必要に応じて当業者が適宜為しうる設計変更に過ぎない。

(5)相違点7について
眼科装置に於いて、眼科検査・測定に用いる光学系を、被検者の頭部に装着するヘッドセット内に保持し、該ヘッドセットを耳掛け部(本願発明1の「テンプル」に相当。)や鼻掛け部(本願発明1の「鼻に接するパッド」に相当。)によって支持する眼鏡型の支持方式とすることは、例えば引用例3(記載事項3-3,3-4参照)や引用例6記載のとおり周知技術に過ぎない。
よって、相違点7の構成とすることは、引用発明1に同分野に於ける前記周知技術を適用することにより当業者が容易に想到し得ることである。

(6)総括
以上のとおりであるから、本願発明1乃至7は何れも、引用発明1に引用例3及び周知技術を適用することにより、当業者が容易に想到し得ることである。また、それによる効果も、当業者が予測可能な範囲内のものである。


そして、上記の拒絶理由は妥当なものと認められるので、本願は、この拒絶理由によって拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-11-28 
結審通知日 2006-12-05 
審決日 2006-12-19 
出願番号 特願2000-142408(P2000-142408)
審決分類 P 1 8・ 121- WZF (A61B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 明央  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 樋口 宗彦
櫻井 仁
発明の名称 映像表示機能付き眼球撮像装置  
代理人 森 厚夫  
代理人 西川 惠清  

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