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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B65D
管理番号 1156124
審判番号 不服2005-4510  
総通号数 90 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-06-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-15 
確定日 2007-04-13 
事件の表示 平成11年特許願第287536号「フィルムケース」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月24日出願公開、特開2001-114352〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願は、平成11年10月 8日に、特願平11-287536号として特許出願されたものであって、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成16年12月20日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものと認める。

「ポリ乳酸からなるポリ乳酸系フィルムであって、面配向度ΔPが3.0×10-3?30×10-3であり、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm-ΔHc)が20J/g以上であり、かつ{(ΔHm-ΔHc)/ΔHm}が0.7以上である厚み0.01mm?0.10mmのポリ乳酸系フィルムを、プレス加工してなる電子レンジ加熱可能なフィルムケース。」

2.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平10-24518号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の事項が記載されている。

ア.「面配向度Δpが3.0×10-3?30×10-3、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm-ΔHc)が20J/g以上および{(ΔHm-ΔHc)/ΔHm}が0.75以上であるポリ乳酸系生分解性ガスバリアフィルムであって、 前記ポリ乳酸系生分解性ガスバリアフィルムの少なくとも一方の面に、無機酸化物、無機窒化物あるいは無機酸化窒化物の層が設けられていることを特徴とするポリ乳酸系生分解性ガスバリアフィルム。」(【請求項1】)

イ.「【発明の属する技術分野】食品包装等に好適なガスバリア性を有する生分解性のフィルムを提供する。」(【0001】)

ウ.「テンター法2軸延伸においてフィルムの結晶化度を上げるためには、延伸倍率を上げ配向結晶化を促進する、延伸後に結晶化温度以上の雰囲気で熱処理するなどの方法が有用である。なお、ΔPが大きいほど結晶化温度が低下する傾向があり、本発明の場合には鋭意検討した結果少なくとも70℃以上で、好適には90℃?170℃の範囲で3秒以上熱処理することで熱寸法安定性が付与できる。」(【0031】)

エ.「フィルムの厚みは特に限定されないが、用途に応じて、5μm?1mmの範囲で選択される。」(【0032】)

してみると、引用文献1には下記の発明が記載されていると認められる。
「ポリ乳酸からなるポリ乳酸系フィルムであって、面配向度ΔPが3.0×10-3?30×10-3であり、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm-ΔHc)が20J/g以上であり、かつ{(ΔHm-ΔHc)/ΔHm}が0.75以上である厚み5μm?1mmのポリ乳酸系フィルムからなる食品包装に好適なフィルム。」

3.当審の判断
引用文献1には、食品包装のためのフィルムが記載されているが、物品を包装する機能を有していることから見て、本願発明の「ケース」と同様の機能を奏するものと認められる。
してみると、引用文献1に記載された発明と本願発明を対比すると、両者の一致点は、

「ポリ乳酸からなるポリ乳酸系フィルムであって、面配向度ΔPが3.0×10-3?30×10-3であり、フィルムを昇温したときの結晶融解熱量ΔHmと昇温中の結晶化により発生する結晶化熱量ΔHcとの差(ΔHm-ΔHc)が20J/g以上であり、かつ{(ΔHm-ΔHc)/ΔHm}が0.7以上である厚み0.01mm?0.1mmのポリ乳酸系フィルムからなるフィルムケース。」

であって、一方相違点は下記の2点と認められる。

A.本願発明が電子レンジ加熱可能と特定されているのに対して、引用文献1に記載されたものは、その用途として電子レンジ加熱に供されるとは限定されていない点。

B.本願発明がプレス加工してなるものであるのに対して、引用文献1に記載されたものにおいては製造方法が特定されていない点。

上記相違点について検討する。

a.相違点A.について
耐熱性を有するポリ乳酸フィルムについて、電子レンジ加熱の用途に供することができることは、本願出願前に当業者においてよく知られた事項である(例えば特開平8-193165号公報【0012】には「結晶化させながら成形することを特徴とする耐熱性乳酸系ポリマー成形物」,同【0058】には「本発明の乳酸系ポリマー成形物は耐熱性と耐衝撃性が優れており、電子レンジ等の耐熱用‥に好適に利用される」と記載されている)。

b.相違点B.について
この種のフィルムについて加工方法としてプレスを選択することは、単に周知の事項に過ぎない(例えば本願出願前の周知技術を示す文献である特開平9-25345号公報【0014】には、「プレス法などの一般的な溶融成形法によりシート状に成形し」と記載されている)。

してみると、引用文献1に記載された発明において、上記相違点A.およびB.であげた構成を適用して本願発明のように構成することは、上記周知事項に基づいて当業者が容易に成し得たことに過ぎない。そして、本願発明の奏する効果は、引用文献1ないし上記周知技術の「熱寸法安定性」あるいは「耐熱性」に基づく効果を超えるものとは認められない。
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、他の請求項について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.むすび
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-01-29 
結審通知日 2007-02-06 
審決日 2007-02-22 
出願番号 特願平11-287536
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 阿部 利英  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 石田 宏之
関 信之
発明の名称 フィルムケース  
代理人 市澤 道夫  
代理人 竹内 三郎  
代理人 市澤 道夫  
代理人 竹内 三郎  

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