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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1163118 |
審判番号 | 不服2003-13167 |
総通号数 | 94 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-10-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-07-10 |
確定日 | 2007-08-23 |
事件の表示 | 特願2001-251346「コンピュータ機器、その制御方法、ゲームプログラム及びその記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 4日出願公開、特開2003- 62330〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年8月22日の出願であって、平成15年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年7月10日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成15年7月10日付けの手続補正について (1)(ア)平成15年7月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載の、 「ゲームを進行させるコンピュータ機器に、 ゲームの進行に応じた画像を出力機器に印刷させる印刷機能と、 前記出力機器により印刷される前記画像毎の累積出力回数をメモリで管理させる累積出力回数カウント機能と、 前記画像毎に設定されている出力制限回数と前記累積出力回数とを比較することにより前記印刷機能を制限させる印刷制限機能と、 を実現させるためのゲームプログラム。」 が、 「ゲームを進行させるコンピュータ機器に、 ゲームの進行に応じて出力可能となった画像を出力機器に印刷させる印刷機能と、 前記印刷機能により画像を印刷させるときに、印刷する画像の印刷回数をカウンタにカウントさせるカウント機能と、 前記カウントされた画像の印刷回数を画像毎に記憶手段に記憶させる記憶機能と、 画像毎に予め設定されている出力可能枚数と前記記憶手段に記憶されている対応する画像の印刷回数とを比較手段に比較させる比較機能と、 前記比較手段による比較結果に基づき、前記印刷機能による前記出力機器での画像の印刷を制限する印刷制限機能と、 を実現させるためのゲームプログラム。」 と補正された。 (イ)請求項3及び4は、本件補正前の請求項9及び10に対して、上記(ア)と同様の趣旨の補正がなされたものである。 (ウ)本件補正前の請求項2から7は削除されるとともに、それに伴い、本件補正前の請求項8は請求項2に繰り上げられたものである。 (2)そうすると、本件補正の概略は、請求項1については(上記(1)(ア)を参照)、所定の「累積出力回数カウント機能」を「カウント機能」と「記憶機能」とに分けて記載し、また、所定の「印刷制限機能」を「比較機能」と「印刷制限機能」とに分けて記載したものであるが、それぞれの機能については、記載を整理した以外に実質的な変更があるとは認められない。 また、請求項3及び4についての補正(上記(1)(イ)を参照)は、請求項1についての補正と同様の趣旨であり、その他の補正(上記(1)(ウ)を参照)は、一部の請求項を削除したものである。 (3)したがって、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第4号の明りょうでない記載の釈明、及び、同1号の請求項の削除を目的としたものと解される。 3.原査定の拒絶の理由 原査定の拒絶の理由の概略は、「本願の請求項1から10に係る発明は、特開2000-37557号公報(以下、「引用例1」という。)及び特開2001-87558号公報(以下、「引用例2」という。)に記載された発明から、当業者が容易に想到することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。 4.引用例 (1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、以下の事項が記載されている。 (ア)【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、有料あるいは家庭用のゲーム装置およびそのゲーム装置に実装する記録媒体に関する。 (イ)【0002】 【従来の技術】従来、ゲームセンターと呼ばれる遊技場に設置されている有料のゲーム装置の中には、ゲーム中の特定表示場面の印刷を指示すると、その表示場面のイメージを印刷することが可能となってきている。表示されている場面(イメージ)の印刷およびそのイメージの指定は遊戯者が操作ボタンを押下することにより行っている。 【0003】から【0008】 (略) 【0009】そこで、本発明の第1の目的は、ゲームのために表示される場面に対して、印刷制限を設けることができる。ゲーム装置および記録媒体を提供することにある。 (ウ)【0024】 【発明の実施の形態】以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。 【0025】(第1実施形態)図1は本発明実施形態のゲーム装置のシステム構成を示す。図1において、1はゲーム装置本体であり、ハード構成は従来と同様とすることができるが、後述のコントローラ5の処理内容が従来と異なる。ゲーム装置本体(基板)1はコントローラ5、イメージメモリ4、印刷用イメージメモリ3を有する。コントローラ5は、CPU(情報処理プロセッサ),ROM、RAM等で構成され、上記CPUにより図3および図4に示す処理プログラムを実行することによりゲーム装置を制御するとともに、本発明に係る印刷制御を行う。この処理プログラムは上記ROMに保存記憶されているが、CDROMやフロッピーディスク等の記録媒体から、ゲーム装置の記録媒体、たとえば、ハードディスクに実装してもよい。また、ROMも記録媒体として使用することができる。 【0026】イメージメモリ4上でCRT(表示装置)6に表示するための合成イメージを記憶する。本実施形態では、キャラクタ(人物)と背景をコントローラ5内のRAMで合成し、イメージメモリ4に記憶した後、コントローラ5により読み出して、CRT6に出力することにより合成イメージをCRT6で表示する。 【0027】印刷用イメージメモリ3は遊戯者から印刷の指示があったイメージ(CRT6に表示されたイメージ)を保存し、複数画面分のイメージを保存可能である。 【0028】ハードディスク(HD)9は、合成可能な複数のキャラクタイメージおよび複数種の背景イメージを格納する。 【0029】キャラクタイメージは同一人物について、複数のイメージが存在し、複数のキャラクタについてのイメージが用意されている。さらにHD9内には、図2に示すテーブルが用意されている。図2のテーブルは、合成に使用可能な上述のイメージそれぞれに関して2つのフラグ情報を記憶する。第1のフラグ情報は印刷の可否をビットの1/0で表す印刷可否フラグ情報である。ビット1のフラグがたっている場合には、このイメージを使用した印刷用イメージの印刷を禁止(印刷が否)することを表す。ビット0のフラグがたっているときは印刷を許可することを表す。 【0030】本実施形態ではイメージ毎の印刷可否フラグの内容は予め定められている。第2のフラグ情報は表示に使用しているか否かをビット1(使用)/0(未使用)で表す使用有無フラグ情報である。このフラグ情報は、従来と同様ゲーム装置用のプログラムにより表示用の合成イメージを作成する際に、使用されたイメージに対応する使用有無フラグがビット1に変更される。また、表示が終わると対応のフラグ情報が未使用に変更される。 【0031】本発明は、表示のために使用されるイメージが使用の有無を表すフラグ情報を持つことに着目し、各イメージに印刷可否を示すフラグ情報を新たに設け、このフラグ情報により、印刷の制限を行うことに特徴がある。 【0032】図1に戻り、2は遊戯者の手動操作で印刷の指示を行うための操作ボタンである。6はゲーム内容および印刷の指示があった印刷用のイメージ(複数)表示するためのCRTである。このためにCRT6の表示画面は、ゲーム用の表示領域と、印刷用のイメージの表示領域に分割されている。 【0033】7はファクシミリ送受信機であり、印刷用イメージメモリ3に記憶された印刷用イメージの中の指定されたイメージを、指定されたダイヤル番号の通信機器(ファクシミリ送受信機,パーソナルコンピュータが接続)に送信する。 【0034】8はプリンタであり、印刷用イメージメモリ3の印刷用イメージを印刷する。印刷用イメージをFAX送信するか、プリンタ8に送信するかは遊戯者が不図示の操作キー(たとえば、テンキー)から指示する。 (2)上記記載から、 (ア)引用例1は、ゲーム装置に関する発明であり、ゲーム装置本体はCPU等で構成されたコントローラを備えていること、 (イ)コントローラに接続されたプリンタでは、印刷用イメージが印刷されること、 (ウ)各印刷用のイメージには印刷可否フラグが設けられ、これにより、遊戯者が印刷の指示を行った印刷用イメージに印刷を禁止するフラグがたっているときは印刷を禁止するように構成されていること、 などが認められる。 (3)そうすると、引用例1には、 「コントローラを備えたゲーム装置であって、 印刷用イメージを印刷するプリンタを有し、 各印刷用イメージには印刷を制限するための印刷可否フラグが設けられ、 遊戯者が印刷の指示を行った印刷用イメージに印刷を禁止するフラグがたっているときは印刷を禁止するゲーム装置。」 が開示されているものと認められる。(以下、「引用発明」という。) 5.対比 (1)本件補正後の請求項3に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は、 「ゲームを進行させるコンピュータ機器であって、 ゲームの進行に応じて出力可能となった画像を出力機器に印刷させる印刷手段と、 前記印刷手段により画像を印刷させるときに、印刷する画像の印刷回数をカウントするカウント手段と、 前記カウントした画像の印刷回数を画像毎に記憶する記憶手段と、 画像毎に予め設定されている出力可能枚数と前記記憶手段に記憶されている対応する画像の印刷回数とを比較する比較手段と、 前記比較手段による比較結果に基づき、前記印刷手段による前記出力機器での画像の印刷を制限する印刷制限手段と、 を有することを特徴とするコンピュータ機器。」 であると認められる。 (2)本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「コントローラを備えたゲーム装置」が、本願発明の「ゲームを進行させるコンピュータ機器」に相当することは明らかである。 (イ)引用発明の「印刷用イメージ」は、ゲームの場面により表示されるイメージから合成されるものであるので、本願発明の「ゲームの進行に応じて出力可能となった画像」に相当すると認められる。 引用発明の「プリンタ」は本願発明の「出力機器」に相当し、また、引用発明においてプリンタを制御する手段があるのは自明なので、引用発明も本願発明の「印刷手段」に相当する手段を有するものと認められる。 (ウ)引用発明では「遊戯者が印刷の指示を行」うときが、本願発明の「前記印刷手段により画像を印刷させるとき」に相当する。 (エ)引用発明において、遊戯者が印刷の指示を行った印刷用イメージに印刷を禁止するフラグがたっているときに「印刷を禁止」する制御を行うものが、本願発明の「前記印刷手段による前記出力機器での画像の印刷を制限する印刷制限手段」に相当する。 (3)以上から、本願発明と引用発明とは、 「ゲームを進行させるコンピュータ機器であって、 ゲームの進行に応じて出力可能となった画像を出力機器に印刷させる印刷手段と、 前記印刷手段により画像を印刷させるときに、前記印刷手段による前記出力機器での画像の印刷を制限する印刷制限手段と、 を有するコンピュータ機器。」 である点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 出力機器(プリンタ)での画像(印刷用イメージ)の印刷を制限(禁止)するために、本願発明では、印刷する画像の印刷回数をカウントするカウント手段と、前記カウントした画像の印刷回数を画像毎に記憶する記憶手段と、画像毎に予め設定されている出力可能枚数と前記記憶手段に記憶されている対応する画像の印刷回数とを比較する比較手段と、が設けられ、前記比較手段による比較結果に基づき、印刷を制限するのに対して、引用発明は、遊戯者が印刷の指示を行った印刷用イメージに印刷を禁止するフラグがたっているときには、印刷を禁止するものであるが、印刷を可能とするフラグがたっているときには、印刷可能な枚数を制限する等の格別の処理はなされていない点。 6.判断 [相違点1]について (1)データ画像の画面印刷を許容する装置においては、画像の価値を損なわないために、また、画像の不正利用を防止するなどのために、印刷可能な枚数を制限する必要がある場合のあることは、従来から周知の事項であると認められる(例えば、特開昭62-221289号公報(以下、「周知例1」という。)を参照)。(なお、このことは請求人自身も本願出願以前から熟知していたものと認められる(例えば、特開2001-184184号公報(以下、「周知例2」という。)を参照)。) また、引用発明はゲーム中のキャラクタなどの画面印刷を行うものであるが、キャラクタには財産的価値や著作権などの権利が付随していることも多く、画面印刷を許容する場合には印刷可能な枚数を制限する必要もあることは、本願出願以前から周知の課題であったと認められる。 (2)そして、引用発明のようなゲーム装置において、印刷可能な枚数を制限しようとする場合、その具体的な手段として、画像毎に出力可能枚数を予め設定すること、印刷される各画像の印刷回数をカウントすること、画像毎に印刷回数が予め設定した出力可能枚数に達した時点で、それ以上そのカードの印刷を制限することは、常套手段ともいえる事項と認められる(例えば、周知例1や周知例2を参照)。 (3)してみれば、引用発明において相違点1に係る本願発明の構成を採用することは、当業者であれば容易に想到できたといえる。 また、本願補正発明の作用効果も、引用発明から当業者が予測できる範囲内のものである。 (4)そうすると、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。 (5)したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。 7.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-06-20 |
結審通知日 | 2007-06-26 |
審決日 | 2007-07-10 |
出願番号 | 特願2001-251346(P2001-251346) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 松川 直樹 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
植野 孝郎 濱田 聖司 |
発明の名称 | コンピュータ機器、その制御方法、ゲームプログラム及びその記録媒体 |
代理人 | 内尾 裕一 |
代理人 | 西山 恵三 |