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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 特37条出願の単一性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1169365 |
審判番号 | 不服2005-9674 |
総通号数 | 98 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-02-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-23 |
確定日 | 2007-12-03 |
事件の表示 | 特願2000-565784「医療用体内誘導装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 2日国際公開、WO00/10456、平成15年 8月19日国内公表、特表2003-524443〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、1999年7月7日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年8月2日,イスラエル国、1998年10月29日,イスラエル国)を国際出願日とする出願であって、平成16年6月22日付けで拒絶理由が通知され(発送日:同年7月13日)、これに対し、平成17年1月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年1月26日付けで拒絶査定がなされ(発送日:同年2月22日)、これに対し、同年5月23日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月17日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成17年6月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年6月17日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.平成17年6月17日付け手続補正(以下「本件補正」という。) 本件補正は、補正前の特許請求の範囲の記載(平成17年1月6日付けで補正、以下同じ。): 「【請求項1】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に同一直線上に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含むことを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項2】 前記ベクトル力場が電磁場であることを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記センサ要素はそれぞれコイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項4】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが互いに平行であることを特徴とする請求項3に記載の装置。 【請求項5】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが直列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。 【請求項6】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが同一の巻きを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。 【請求項7】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが逆の巻きを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。 【請求項8】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に取り付けられた三つのセンサを備え、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素を含み、 前記センサのそれぞれにおいて、前記第1のセンサ要素及び前記第2のセンサ要素はプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設されており、前記第1のセンサ要素は第1の円の円周に沿って配設しており、前記第2のセンサ要素は第2の円の円周に沿って配設しており、 前記第1の円及び第2の円はそれぞれ中心を有し、前記共通基準点は前記第1の円及び第2の円の前記中心を結ぶ線の中心点であって、前記第1の円及び第2の円は前記線に沿って離れて位置することを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項9】 前記センサ要素のそれぞれは、前記円によって定義される円筒形表面と一致する形状を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。 【請求項10】 (a)それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのコイルを含み、プローブ内に取り付けられた、それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数の第1センサと; (b)前記共通基準点に中心を有するコイルを含む第2のセンサと;を含み、 前記コイルはそれぞれ前記共通基準点を通る線に沿って配設されており、前記第2のセンサの前記コイルは前記線に平行な方向を向いており、前記第1のセンサの前記コイルは前記線に垂直な方向を向いていることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項11】 (a)電磁場を送信するための、少なくとも一つの送信アンテナと; (b)一点で電磁場を検出するための、前記送信された電磁場の第1の成分に呼応する二つの検出要素を含む、物体に付随している第1の電磁場センサであって、前記検出要素は、それぞれ第1のリード線と第2のリード線を含み、前記第1のリード線は、互いに電気接続されているとともにアースに接続されていることを特徴とする、第1の電磁場センサと; (c)第1の差動増幅器であって、前記第2のリード線はそれぞれ前記第1の差動増幅器の異なる入力端子に電気接続されていることを特徴とする、第1の作動増幅器と; を備えてなる物体の位置と方向を判定するための装置。 【請求項12】 前記検出要素が、それぞれコイルを含むことを特徴とする請求項11に記載の装置。 【請求項13】 前記コイルが幾何学的に平行であることを特徴とする請求項12に記載の装置。 【請求項14】 前記検出要素が点に対して偏心に配設されていることを特徴とする請求項11に記載の装置。 【請求項15】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのコイルを含み、 前記コイルの少なくとも一つは、前記共通基準点を避けて位置する中心軸を有していることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項16】 前記コイルのそれぞれが、前記共通基準点を避けて位置する中心軸を有していることを特徴とする請求項15に記載の装置。 【請求項17】 (a)伝導性の材質より形成された機枠と; (b)それぞれが電磁場の異なる成分を検出し、それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含む、前記機枠内に取り付けられた複数のセンサと; を備えてなることを特徴とするプローブ。 【請求項18】 前記機枠の前記材質が伝導性の金属であることを特徴とする請求項17に記載のプローブ。 【請求項19】 前記金属が非磁性であることを特徴とする請求項18に記載のプローブ。 【請求項20】 (a)可撓性のコネクタにより接続された二つの部分を含む機枠と; (b)それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサであって、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素をそれぞれ含み、前記第1のセンサ要素は二つの前記部分における第1の部分の内部に取り付けられ、前記第2のセンサ要素は二つの前記部分における第2の部分の内部に取り付けられて構成される複数のセンサと; を備えてなることを特徴とするプローブ。 【請求項21】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、 前記ベクトル力場の前記異なる成分は相互に直角であることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項22】 (a)それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、プローブ内に取り付けられた、それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数の第1センサと; (b)前記複数の第1のセンサのそれぞれにおいて、 (i)第1のリード線と第2のリード線であって、前記センサ要素はそれぞれ第1のリード線と第2のリード線を含み、前記第1のリード線は互いに電気接続されているとともにアースに接続されていることを特徴とする第1のリード線と第2のリード線と; (ii)作動増幅器であって、前記第2のリード線はそれぞれ前記作動増幅器の異なる入力端子に電気接続されていることを特徴とする作動増幅器と; を備えてなることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項23】 (a)それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのコイルを含み、プローブ内に取り付けられた、それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサと; (b)前記コイルのコアであって、前記センサの少なくとも一つにおいては、それぞれの前記コイルはコアの周りに巻き付けられていることを特徴とするコアと; を備えてなることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項24】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、同一直線上に配設された複数のセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、 前記センサ要素の少なくとも一つは、前記共通基準点を避けて位置する中心軸を有していることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項25】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、 前記センサ要素の全ては、前記プローブの中心軸に沿って配設されていることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」 を、 「【請求項1】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に同一直線上に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含むことを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項2】 前記ベクトル力場が電磁場であることを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項3】 前記センサ要素はそれぞれコイルを含むことを特徴とする請求項1に記載の装置。 【請求項4】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが互いに平行であることを特徴とする請求項3に記載の装置。 【請求項5】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが直列に接続されていることを特徴とする請求項3に記載の装置。 【請求項6】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが同一の巻きを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。 【請求項7】 前記センサそれぞれに関し、前記コイルが逆の巻きを有することを特徴とする請求項5に記載の装置。 【請求項8】 プローブ内に取り付けられ、それぞれがベクトル力場の三つの異なる成分に対応して前記成分を検出する三つのセンサのみで構成され、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素で構成され、 前記センサのそれぞれにおいて、前記第1のセンサ要素及び前記第2のセンサ要素はプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設されており、前記第1のセンサ要素は第1の円の円周に沿って配設されており、前記第2のセンサ要素は第2の円の円周に沿って配設されており、 前記第1の円及び第2の円はそれぞれ中心を有し、前記共通基準点は前記第1の円及び第2の円の前記中心を結ぶ線の中心点であって、前記第1の円及び第2の円は前記線に沿って離れて位置することを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項9】 前記センサ要素のそれぞれは、前記円によって定義される円筒形表面と一致する形状を有することを特徴とする請求項8に記載の装置。 【請求項10】 (a)それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのコイルを含み、プローブ内に取り付けられた、それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数の第1のセンサと; (b)前記共通基準点に中心を有するコイルを含む第2のセンサと;を含み、 前記コイルはそれぞれ前記共通基準点を通る線に沿って配設されており、前記第2のセンサの前記コイルは前記線に平行な方向を向いており、前記第1のセンサの前記コイルは前記線に垂直な方向を向いていることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項11】 (a)可撓性のコネクタにより接続された二つの部分を含む機枠と; (b)それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサであって、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素をそれぞれ含み、前記第1のセンサ要素は二つの前記部分における第1の部分の内部に取り付けられ、前記第2のセンサ要素は二つの前記部分における第2の部分の内部に取り付けられて構成される複数のセンサと; を備えてなることを特徴とするプローブ。 【請求項12】 (a)それぞれがプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのコイルを含み、プローブ内に取り付けられた、それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサと; (b)前記コイルのコアであって、前記センサの少なくとも一つにおいては、それぞれの前記コイルはコアの周りに巻き付けられていることを特徴とするコアと; を備えてなることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項13】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、同一直線上に配設された複数のセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、 前記センサ要素の少なくとも一つは、前記共通基準点を避けて位置する中心軸を有していることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。 【請求項14】 それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する複数のセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含み、 前記センサ要素の全ては、前記プローブの中心軸に沿って配設されていることを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」(下線は補正箇所を示す。) と補正することを含むものである。 2.補正の目的について 上記の本件補正において、補正前の特許請求の範囲の請求項8における、 「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に取り付けられた三つのセンサを備え、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素を含み」 を、 「プローブ内に取り付けられ、それぞれがベクトル力場の三つの異なる成分に対応して前記成分を検出する三つのセンサのみで構成され、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素で構成され」 と補正する点は、ベクトル力場の異なる成分の数を「三つ」に限定するとともに、その三つの異なる成分を検出するセンサの数を「三つ」「のみ」であると限定するものである。 したがって、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1及び8に記載された発明(以下、請求項1に係る発明及び請求項8に係る発明を、それぞれ「本件補正発明1」及び「本件補正発明2」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について検討する。 3.独立特許要件違反について (1)本件補正発明の認定 本件補正発明1及び2は、平成17年1月6日付け手続補正書、平成17年6月17日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び8にそれぞれ記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に同一直線上に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含むことを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」(:本件補正発明1) 「プローブ内に取り付けられ、それぞれがベクトル力場の三つの異なる成分に対応して前記成分を検出する三つのセンサのみで構成され、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素で構成され、 前記センサのそれぞれにおいて、前記第1のセンサ要素及び前記第2のセンサ要素はプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設されており、前記第1のセンサ要素は第1の円の円周に沿って配設されており、前記第2のセンサ要素は第2の円の円周に沿って配設されており、 前記第1の円及び第2の円はそれぞれ中心を有し、前記共通基準点は前記第1の円及び第2の円の前記中心を結ぶ線の中心点であって、前記第1の円及び第2の円は前記線に沿って離れて位置することを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」(:本件補正発明2) (2)引用刊行物記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前である平成9年8月21日に頒布された刊行物である国際公開第97/29684号(以下「引用刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている(なお、日本語訳は、対応する公表公報:特表2000-506409号公報の記載を用いた。)。 (ア)「本発明は医療用器具に関わり、より具体的には内腔を備え器具の位置や方向を検出するセンサを備えたカテーテルのような医療用器具に関わる。」(明細書第1ページ第6-10行) (イ)「図4Aは国際特許出願第PCT/US95/01103号に開示されているような3つのコイルから成る位置センサを備えたカテーテル170を示す。位置センサは略直交する3つのコイル172,174及び176から成る。カテーテル170の位置は、それぞれ異なった照射周波数もしくは照射時間を持つ複数のコイルが発生する交流磁場をコイルに照射することによってカテーテル170の位置を定めてもよい。磁場の直交成分によって各コイルに誘導される電圧の大きさを測定して磁場内における位置を定める。このように一つ以上の非電離性の場の性質を決定することによって、コイルの組み合わせを用いて位置及び方向を検出する。カテーテル170の形状の問題は、直径5mm以下(特に3mm以下)の外径を有するカテーテルでは、コイル174及び176はカテーテル170の断面全体をほぼ覆ってしまい内腔が形成されないという点である。」(明細書第15ページ第4-22行) (ウ)「 図4Bは3つのコイルから成る位置センサ及び内腔42を有するカテーテル70を示す。コイル172(図4A)に相当する第1のコイル72がカテーテル70と同軸であり、内腔42を塞ぐ形にはなっていない。内腔42を塞ぐコイル174及び176はそれぞれ幾つかの相互に接続されたコイルに分割されており、いずれも内腔42を塞いでいない。例えば、図4Bに示すように、コイル174は、コイル174と同じ方向を向いているコイル74A,74B,74C及び74Dに分割されている。コイル74A乃至74Dは電気的に直列接続されているのが好ましい。コイル76は同様にコイル76A,76B,76C及び76Dに分割されている。図4Cは、コイル74A,74B,74C及び74Dが内腔42に接する様子を示したカテーテル70の断面図である。すなわちコイル74A及び74Bはカテーテル及び内腔の長さ方向つまり軸方向を横切る方向に離れた位置に有り、コイル74A及び74Bは互いに内腔の反対側に配置されている。また、コイル74A及び74Bはそれぞれコイル74C及び74Dから軸方向つまり長さ方向に離れている。 図4Bの位置センサの長さは図4Aの位置センサの長さと略同じである。しかし、各コイル74A乃至74D及び76A乃至76Dの巻数及びコイル74A乃至74D及び76A乃至76Dの断面積によって、図4Bの位置センサの感度は図4Aの位置センサの感度と異なる場合がある。コイルの大きさ及び間隔が十分であれば、各コイル74A乃至74D及び76A乃至76Dに別体のフェライトコアを設ける。好ましくはコアは楕円状とし、コイルの磁場の方向に影響を及ぼさず位置センサの他のコイルに対して最小限の影響しか及ぼさないようにする。」(明細書第15ページ第23行-第16ページ第18行) (エ)「本発明のさらなる実施形態によるプローブ(図6及び図7)は、中心孔あるいは内腔201を画成する細長いチューブ体200を含んでいる。プローブはセンサ202を含む。センサ202は第1のコイル204から成る第1のトランスデューサアセンブリを含む。第1のコイル204は、内腔201を取り囲み本体及び内腔の長さ方向の軸つまりX軸を周回するように、複数回螺旋状に巻かれている。コイル204のターンはX軸に直交する平面の投影領域を形成する。従ってコイル204はX方向の磁束変化を検出することができる。コイル204の中心は内腔201内部の点206にある。 センサ202はさらに、内腔201の対向側面に配置された一対のコイル208a及び208bを含むz方向側方磁場トランスデューサアセンブリを含む。コイル208a及び208bはそれぞれ略螺旋状であり、コイル204の巻線を囲むように巻かれている。コイル208a及び208bは、図6及び図7においてZ軸によって示された側方向に略延在するコイル軸210a及び210bを有する。この側方向は長さ方向つまりX方向に対して直交する。コイル208a及び208bのターンはコイル204のターンを巻いている。このように、コイル208a及び208bは長さ方向つまりX軸方向においてコイル204の中心点206と一直線上にある。コイル208a及び208bは、図6及び図7でY軸として示されたX方向及びZ方向に直交する側方向において互いに離れている。 コイル208a及び208bのターンは、Z方向に直交する平面の投影領域、すなわちY方向及びX方向に平行な平面の投影領域を囲む。コイル208a及び208bはZ方向の磁束変化を検出することができる。コイル208a及び208bは相互接続導電体212によって相互に直列接続されており、2つのコイルによって生成された電圧が互いに加わるようになっている。端子214a及び214bに現れる電圧つまり信号は、軸210a付近の第1の各投影領域と軸210b付近の第2の各投影領域での磁束変化の総和を表す。これらの投影領域全体に対する中心はコイル204の中心点206と一致する。 センサはさらに一対のコイル216a及び216bを含むY方向側方トランスデューサアセンブリを含む。コイル216a及び216bはコイル204のターンの周りを螺旋状に巻いている。コイル216a及び216bはコイル軸218a及び218bに沿って略延在する。各コイル軸218は、図6及び図7においてY軸として示される側方向(長さ方向つまりX方向に直交し、さらに他の側方向Zに直交)に延在する。したがって、コイル216a及び216bの各ターンはY軸に垂直なZ-X平面における投影領域を形成する。この場合も、そのような全ての投影領域全体の中心は中心点206と一致する。コイル216a及び216bは、端子222a及び222b間に現れる電圧が両コイルの全ターンで誘導される電圧の和に比例するように、導体220によって直列接続される。 この配置では、各トランスデューサアセンブリはセンサに対して異なった方向に沿った磁束変化、すなわちZ軸,Y軸,またはX軸に沿った磁束変化を測定するが、全てのトランスデューサアセンブリが共通ポイント206における、または共通のポイント206に隣接した磁束変化を測定する。したがって、Z方向の単位時間あたりの磁束変化がY方向に一定であるか、またはY方向の距離に従って直線的に変化する場合、Z方向の側方のトランスデューサアセンブリのコイル208は共通のポイント206に位置するポイントトランスデューサが生成するであろう電圧に等しい電圧を生成する。同様に、Y方向の単位時間あたりの磁束変化がZ方向の距離に対して一定であるか、または直線的に変化する場合、Y方向の側方トランスデューサアセンブリ(コイル216a及び216b)は共通のポイント206に配置されたポイントセンサによって生成されるであろう信号と等しい信号を生成する。また、長手方向つまりX方向のトランスデューサアセンブリ(コイル204)は共通のポイント206に位置するポイントセンサが生成するのと略等しい信号を生成する。」(明細書第19ページ第14行-第21ページ第19行) (オ)「図6及び図7に示す配置では、限られた直径の管状の本体200の中に内腔201をかなり大きくとれる。このようにして、2つの側方トランスデューサアセンブリのコィル216及び208が管状の本体の円周の周りで、すなわち内腔201の周辺に交互に配置されているため、適当な直径を有する本体200の中にこれらのコイルを収容することができる。」(明細書第23ページ第3-10行) (カ)「図8の実施形態では、長手方向つまりX方向のトランスデューサアセンブリは、互いに長手方向つまりX方向に距離を置いた1組の部分302a及び302bから成るらせんコイルを含む。側方トランスデューサアセンブリ308は4つの別々のコイル308a乃至308dを含む。コイル308a及び308bが互いに内腔301の反対側に配置され、長手方向トランスデューサアセンブリの第1の部分302aの巻線を包囲している。コイル308c及び308dは内腔301の互いに反対側に配置され、長手方向方向トランスデューサアセンブリの第2の部分302bの巻線を包囲している。 もう一つの側方トランスデューサアセンブリは4つのコイル316a乃至316dを含む。これらのコイルのうち316a及び316bの2つのコイルが巻線302aを包囲しているが、他の2つのコイルが巻線302bを包囲している。この場合も、各トランスデューサアセンブリのコイルの全てが、コイルが発生する信号が互いに加えられるように直列接続される。この場合も、全てのトランスデューサアセンブリの感度の中心は共通のポイント306に位置する。」(明細書第23ページ第11-31行) (キ)「図15で示されるように、上述の図4A及び図4Bを参照したプローブ70と同様のプローブ70’は長手方向つまり軸方向の成分に反応するコイルとして2つのコイル部分72A’及び72B’を有していてもよい。長手方向コイルの感度の中心をこれらの部分の間にあるポイント71’に置く。側方成分を検出するコイルの配置は上で図4A及び図4Bを参照して論じたのと同じである。したがつて、そのような1つのコイルはポイント71’から軸方向に等しい距離だけ離れた内腔に沿った2つの位置に、内腔の互いに反対側に配置される4つの部分74A’乃至74D’を含むので、コイル74’の全ての部分を考慮に入れた場合その感度の中心はポイント71’にある。他方のコイルは4つの部分を含んでいるが、そのうち2つの部分76A’及び76C’だけが図15に示されている。また、これらの部分はポイント71’から等しい距離に配置されるので、コイル76’の感度の中心もポイント71’にある。」(明細書第28ページ第29行-第29ページ第8行) (ク)「上述のプローブの検出要素は、いずれもプローブの使用中は患者の身体の外部に配置されるアンテナから送られる磁場、電磁場または音響場などの非電離場を検出し、検出された場の特性を表す信号を生成してセンサ信号からセンサの位置及び/または方向を推定するという特性から、本願では「位置センサ」と言及する。従って同じ要素を「場のトランスデューサ」と言及することができる。また本願に使用される用語「位置センサ」及び「トランスデューサ」は、1つ以上の外部の受信アンテナが受信できるように場を送信する機能を有する1つ以上の要素を包含するものとしても理解されるべきである。例えば、上述のコイル配置のいずれも、受信アンテナアレイとしても送信アンテナアレイとしても役立てることができる。」(明細書第29ページ第9-26行) (ケ)図4B,4Cには、互いに内腔の反対側に配置されているコイル74Aと74B、コイル74Cと74D、コイル76Aと76Bが、コイルの軸を一致させ、カテーテル70の中心軸に対して対称に配置されていることが記載されている。 (コ)図8には、互いに内腔301の反対側に配置されているコイル308aと308b、コイル308cと308d、コイル316aと316b、コイル316cと316dが、プローブの長手方向軸に対して対称に配置されていることが記載されている。また、コイル302a,308a,308b,316a,316bは全て一の円の円周に沿って配置され、コイル302b,308c,308d,316c,316dは全て他の円の円周に沿って配置され、該一の円と他の円とは、プローブの長手方向軸であるX軸方向に共通ポイント306を挟んで隔たっていることが記載されている。 ここで、上記(キ)には、図15で示されるプローブ70’は、図4A及び図4Bを参照したプローブ70の長手方向つまり軸方向の成分に反応するコイルとして2つのコイル72A’及びコイル72B’を設けたものであり、その側方成分を検出するコイルの配置は図4A及び図4Bを参照して論じたものと同じである旨の記載があり、「他方のコイルは4つの部分を含んでいるが、そのうち2つの部分76A’及び76C’だけが図15に示されている。」という記載もあるので、図15で示されるプローブ70’は、コイル76A’と対になるコイル76B’、コイル76C’と対になるコイル76D’を、上記(イ),(ウ),(ケ)に摘記した、図4B,4Cに示されるプローブ70と同様の位置に備え、コイル76A’乃至76D’及びコイル74A’乃至74D’は、図4B,4Cに示されるコイル76A乃至76D及びコイル74A乃至74Dと同様の配置であることが解る。 そして、図15で示されるプローブ70’においては、コイル72A’と72B’、コイル74A’乃至74D’、コイル76A’乃至76D’それぞれの感度の中心はポイント71’にあるから、コイル72A’とコイル72B’、コイル74A’及び74B’とコイル74D’及び74C’、コイル76A’及び76B’とコイル76D’及び76C’とは、それぞれ、ポイント71’を中心として、対称に配置されていることは明らかである。また、図4B,4Cに示されるものは、図4Aに示される略直交する3つのコイル172,174及び176を用いて磁場の直交成分を検出するものの、コイル174を同方向のコイル74A乃至74D、コイル176を同方向のコイル76A乃至76Dに置き換えたものである。 上記記載にこれらの点も考慮すると、引用刊行物1には、図15で示されるプローブの位置及び方向を検出する装置として、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「磁場の直交3成分を検出する3つのコイルを内部に備えたプローブの位置及び方向を検出する装置であって、 プローブの長手方向の磁場成分を検出するコイルとしての、プローブの長手方向にポイント71’を中心として対称に、その軸をプローブと同軸にして配置されるコイル72A’及び72B’と、 前記プローブの長手方向に直交する一方向の磁場成分を検出するコイルとしての、プローブの長手方向の軸から前記一方向に等距離離れた位置に、その軸を前記一方向に向けて同軸に配置されるコイル74A’及び74B’と、該コイル74A’及び74B’と前記ポイント71’を中心として対称に、前記プローブの長手方向の軸から前記一方向に等距離離れた位置に、その軸を前記一方向に向けて同軸に配置されるコイル74D’及び74C’と、 前記プローブの長手方向に直交し、かつ、前記一方向に直交する他方向の磁場成分を検出するコイルとしての、プローブの長手方向の軸から前記他方向に等距離離れた位置に、その軸を前記他方向に向けて同軸に配置されるコイル76A’及び76B’と、該コイル76A’及び76B’と前記ポイント71’を中心として対称に、前記プローブの長手方向の軸から前記他方向に等距離離れた位置に、その軸を前記他方向に向けて同軸に配置されるコイル76D’及び76C’と、 を含む、プローブの位置及び方向を検出する装置。」 また、図8で示されるプローブの位置及び方向を検出する装置における、コイル308a乃至308d、コイル316a乃至316dが、それぞれどの方向の磁場成分を検出するものであるかについて、上記(カ)には明確な記載はないが、図8に示されるものは、図6,7に示されるセンサ202をプローブの長手方向であるX方向に距離を置いて2つ設けたものと捉えることができ、図8には、X-Y-Z方向の矢印が図6と同様に記載されていることから、コイル316a乃至316dを含むトランスデューサアセンブリは、プローブの長手方向であるX方向に直交するY方向の磁場成分を検出し、コイル308a乃至308dを含むトランスデューサアセンブリは、X,Y方向に直交するZ方向の磁場成分を検出するものであることは明らかである。そして、図8に示されるものにおいては、各トランスデューサアセンブリの感度の中心は共通のポイント306に位置するのであるから、上記(コ)も考慮すると、図8に示されるものにおいては、巻き線302aと302bが共通のポイント306を中心として対称に配置され、コイル316a及び316bとコイル316c及び316dが共通のポイント306を中心として対称に配置され、コイル308a及び308bとコイル308c及び308dが共通のポイント306を中心として対称に配置されていて、コイル302a,308a,308b,316a,316bがその円周に沿って配置される一の円と、コイル302b,308c,308d,316c,316dがその円周に沿って配置される他の円とは、それらの中心を結ぶ線の中心点が共通のポイント306となる位置関係にあることは明らかである。 上記記載にこれらの点も考慮すると、引用刊行物1には、図8で示されるプローブの位置及び方向を検出する装置として、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「プローブ内に取り付けられ、長手方向であるX方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリと、X方向に直交するY方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリと、X,Y方向に直交するZ方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリの3つのトランスデューサアセンブリのみを備えた、プローブの位置及び方向を検出する装置であって、 X方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリが、互いにX方向に距離を置いた1組の巻き線302a及び302bを含み、 Y方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリが、前記巻き線302aを包囲している2つのコイル316a及び316bと、前記巻き線302bを包囲している2つのコイル316c及び316dを含み、 Z方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリが、前記巻き線302aを包囲している2つのコイル308a及び308bと、前記巻き線302bを包囲している2つのコイル308c及び308dを含み、 巻き線302aと302bが共通のポイント306を中心として対称に配置され、コイル316a及び316bとコイル316c及び316dが共通のポイント306を中心として対称に配置され、コイル308a及び308bとコイル308c及び308dが共通のポイント306を中心として対称に配置されるとともに、 コイル302a,308a,308b,316a,316bは全て一の円の円周に沿って配置され、コイル302b,308c,308d,316c,316dは全て他の円の円周に沿って配置され、該一の円と他の円とは、X軸方向に共通ポイント306を挟んで隔たっていて、それらの中心を結ぶ線の中心点が共通のポイント306となる位置関係にある、 プローブの位置及び方向を検出する装置。」 (3)対比,判断 (3-1)本件補正発明1と引用発明1との対比,判断 本件補正発明1と引用発明1とを対比する。 (a)引用発明1の「磁場の直交3成分を検出する3つのコイル」は、本件補正発明1の「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する・・・三つのセンサ」に相当し、引用発明1の「磁場の直交3成分を検出する3つのコイルを内部に備えたプローブの位置及び方向を検出する装置」は、本件補正発明1の「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に・・・取り付けられた三つのセンサを備えて構成され・・・プローブの位置と方向を追跡するための装置」に相当することは明らかである。 (b)引用発明1の、プローブの長手方向の磁場成分を検出する、コイル72A’及び72B’は、プローブの長手方向の軸と同軸に取り付けられたものである。 プローブの長手方向に直交する一方向の磁場成分を検出するセンサは、コイル74A’乃至74D’からなっているが、これらは一つのコイルを4つに分割したものであり(明細書第15ページ第30-32行)、その4つのコイルを合わせて一方向の磁場成分を検出するものであって、一方向に向けて同軸に配置されるコイル74A’と74B’の磁場成分の検出の中心、一方向に向けて同軸に配置されるコイル74C’と74D’の磁場成分の検出の中心、そしてこれら4つのコイルを合わせた磁場成分の検出の中心はいずれも、プローブの長手方向の軸上であるから、コイル74A’乃至74D’からなる、一方向の磁場成分を検出する一つのセンサとしては、プローブの長手方向の軸上に取り付けられたものといえる。同様に、プローブの長手方向に直交し、かつ、一方向に直交する他方向の磁場成分を検出するコイル76A’乃至76D’からなるセンサもプローブの長手方向の軸上に取り付けられたものといえる。 引用発明1の、ベクトル力場の異なる成分を検出する三つの「センサ」は、プローブの長手方向軸という「同一直線上に取り付けられた」ものである。 (c)引用発明1の、コイル72A’とコイル72B’とは、ポイント71’を中心として対称に配置されるものであって、ポイント71’を挟んだ両側それぞれにおいて、プローブの長手方向の磁場成分を検出するものであるから、引用発明1のカテーテルの長手方向の磁場成分を検出するコイル、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された」、コイル72A’とコイル72B’の「二つのセンサ要素を含」んでいるものといえる。 また、引用発明1の、その軸をプローブの長手方向に直交する一方向に向けて同軸に配置されるコイル74A’とコイル74B’は、共に前記一方向の磁場成分を検出するものであり、これにポイント71’を中心として対称に配置されるコイル74D’とコイル74C’も、共に前記一方向の磁場成分を検出するものであるから、コイル74A’とコイル74B’を合わせたもの、コイル74D’とコイル74C’を合わせたものは、いずれも一つの「センサ要素」とみることができるので、引用発明1のプローブの長手方向に直交する一方向の磁場成分を検出するコイル、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された」、コイル74A’と74B’からなる「センサ要素」とコイル74D’と74C’からなる「センサ要素」の「二つのセンサ要素を含」んでいるものといえる。 同様に、引用発明1のプローブの長手方向に直交し、かつ、一方向に直交する他方向の磁場成分を検出するコイル、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された」、コイル76A’と76B’からなる「センサ要素」とコイル76D’と76C’からなる「センサ要素」の「二つのセンサ要素を含」んでいるものといえる。 そうすると、引用発明1のこれらの構成は、本件補正発明1の、「前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含む」ことに相当する。 よって、本件補正発明1は引用発明1と同一であり、本件補正発明1は引用刊行物1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものである。 (3-2)本件補正発明2と引用発明2との対比,判断 本件補正発明2と引用発明2とを対比する。 (a)引用発明2の「トランスデューサアセンブリ」は、本件補正発明2の「センサ」に相当し、引用発明2の「プローブ内に取り付けられ、長手方向であるX方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリと、X方向に直交するY方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリと、X,Y方向に直交するZ方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリの3つのトランスデューサアセンブリのみを備えた、プローブの位置及び方向を検出する装置」は、本件補正発明2の「プローブ内に取り付けられ、それぞれがベクトル力場の三つの異なる成分に対応して前記成分を検出する三つのセンサのみで構成され」た「プローブの位置と方向を追跡するための装置」に相当することは明らかである。 (b)引用発明2の、X方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリの巻き線302aと302bは、共通のポイント306を中心として対称に配置されるものであって、共通のポイント306を挟んだ両側それぞれにおいて、X方向の磁場成分を検出するものであるから、引用発明2のX方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリ、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設され」た、巻き線302aと巻き線302bの「二つのセンサ要素で構成され」たものである。 また、引用発明2の、Y軸方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリの、コイル316a及び316bは、共にY軸方向の磁場成分を検出するものであり、これに共通ポイント306を中心として対称に配置されるコイル316c及び316dも、共にY軸方向の磁場成分を検出するものであるから、コイル316aと316bを合わせたもの、コイル316cと316dを合わせたものは、いずれも一つの「センサ要素」とみることができるので、引用発明2のY軸方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリ、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設され」た、コイル316aと316bからなる「センサ要素」とコイル316cと316dからなる「センサ要素」の「二つのセンサ要素で構成され」たものといえる。 同様に、引用発明2のZ軸方向の磁場成分を検出するトランスデューサアセンブリ、即ち「センサ」は、「プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設され」た、コイル308aと308bからなる「センサ要素」とコイル308cと308dからなる「センサ要素」の「二つのセンサ要素で構成され」たものといえる。 そして、引用発明2の、巻き線302aの「センサ要素」と、コイル316aと316bからなる「センサ要素」と、コイル308aと308bからなる「センサ要素」は、一の円の円周に沿って配置され、巻き線302bの「センサ要素」と、コイル316cと316dからなる「センサ要素」と、コイル308cと308dからなる「センサ要素」は、他の円の円周に沿って配置されている。 そうすると、引用発明2のこれらの構成は、本件補正発明2の「前記センサのそれぞれにおいて、前記第1のセンサ要素及び前記第2のセンサ要素はプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設されており、前記第1のセンサ要素は第1の円の円周に沿って配設されており、前記第2のセンサ要素は第2の円の円周に沿って配設されており」に相当する。 (c)引用発明2の「一の円と他の円とは、X軸方向に共通ポイント306を挟んで隔たっていて、それらの中心を結ぶ線の中心点が共通のポイント306となる位置関係にある」は、本件補正発明2の「前記第1の円及び第2の円はそれぞれ中心を有し、前記共通基準点は前記第1の円及び第2の円の前記中心を結ぶ線の中心点であって、前記第1の円及び第2の円は前記線に沿って離れて位置する」に相当する。 よって、本件補正発明2は引用発明2と同一であり、本件補正発明2は引用刊行物1に記載された発明であるので、特許法第29条第1項第3号の規定により、特許を受けることができないものである。 したがって、本件補正発明1,2は、引用刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 1.本願発明 平成17年6月17日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1-25に係る発明は、本件補正前の、平成17年1月6日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1-25に記載されたとおりのものである。 2.新規性について (1)本願発明の認定 本願の請求項1,8に係る発明(以下、請求項1に係る発明及び請求項8に係る発明を、それぞれ「本願発明1」,「本願発明2」という。)は、次のとおりのものである。 「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に同一直線上に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含むことを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」(:本願発明1) 「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に取り付けられた三つのセンサを備え、前記センサのそれぞれは第1のセンサ要素及び第2のセンサ要素からなる二つのセンサ要素を含み、 前記センサのそれぞれにおいて、前記第1のセンサ要素及び前記第2のセンサ要素はプローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設されており、前記第1のセンサ要素は第1の円の円周に沿って配設しており、前記第2のセンサ要素は第2の円の円周に沿って配設しており、 前記第1の円及び第2の円はそれぞれ中心を有し、前記共通基準点は前記第1の円及び第2の円の前記中心を結ぶ線の中心点であって、前記第1の円及び第2の円は前記線に沿って離れて位置することを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」(:本願発明2) (2)引用刊行物 原査定の拒絶の理由で引用された引用刊行物及びその記載事項は、上記「II.3.(2)」に記載したとおりである。 (3)対比,判断 本願発明1は、本件補正発明1と同じである。また、本願発明2は、上記「II」で検討した本件補正発明2から、ベクトル力場の異なる成分の数が「三つ」であるという限定を外すとともに、センサの数が「三つ」「のみ」であるという限定を外したものである。 そうすると、本願発明1と同じ本件補正発明1、及び、本願発明2の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本件補正発明2が上記「II.3.(3)対比,判断」に記載したとおり、引用刊行物1に記載された発明であるから、本願発明1及び2も同様の理由により、引用刊行物1に記載された発明である。 3.発明の単一性について 本願の請求項1に記載される発明(以下「特定発明」という。)と、請求項11-14に記載される発明が平成15年改正前の特許法第37条(以下、「特許法第37条」は平成15年改正前のものを示すものとする。)に規定する関係を有するか否かについて検討するに、両発明は、どちらも『物』のカテゴリーに属するものであるので、特許法第37条のうち関係するものは、第1号及び第2号である。そこで、本願の特定発明と、請求項11-14に記載される発明が、特許法第37条第1号又は第2号の関係を有するか否かについて検討する。 まず、特定発明は、「プローブの位置と方向を追跡するための装置」であるが、一方、請求項11-14に記載される発明は、「物体の位置と方向を判定するための装置」であるので、特定発明と請求項11-14に記載される発明とは共に「物体の位置と方向を測定するための装置」に関するものといえるので、両者の産業上の利用分野は同一である。 しかしながら、特定発明は、 「それぞれがベクトル力場の異なる成分を検出する、プローブ内に同一直線上に取り付けられた三つのセンサを備えて構成され、 前記センサのそれぞれは、プローブ内の共通基準点を中心として対称的に配設された二つのセンサ要素を含むことを特徴とするプローブの位置と方向を追跡するための装置。」 であって、ベクトル力場の異なる複数成分を検出してプローブの位置と方向を正確に測定することを目的として、プローブの共通基準点を中心として対称的に配設される二つのセンサ要素を含む、ベクトル力場の異なる複数成分を検出する複数のセンサを備えることを、発明の構成に欠くことができない事項の主要部とするものであるのに対し(請求項1を引用する請求項2-7、請求項8,9、請求項10、請求項15,16、請求項17-19、請求項21、請求項22、請求項23、請求項24、請求項25にそれぞれ記載される発明も、この主要部を有している。)、請求項11に記載される発明は、 「(a)電磁場を送信するための、少なくとも一つの送信アンテナと; (b)一点で電磁場を検出するための、前記送信された電磁場の第1の成分に呼応する二つの検出要素を含む、物体に付随している第1の電磁場センサであって、前記検出要素は、それぞれ第1のリード線と第2のリード線を含み、前記第1のリード線は、互いに電気接続されているとともにアースに接続されていることを特徴とする、第1の電磁場センサと; (c)第1の差動増幅器であって、前記第2のリード線はそれぞれ前記第1の差動増幅器の異なる入力端子に電気接続されていることを特徴とする、第1の作動増幅器と; を備えてなる物体の位置と方向を判定するための装置。」 であって、ベクトル力場の一つである電磁場を検出するセンサは一つであり、電磁場の異なる複数成分を検出しようとするものではなく、センサの二つのセンサ要素がプローブの共通基準点を中心として対称的に配設されるものでもない。 してみると、請求項11及びこれを引用する請求項12-14に記載される発明は特定発明と、発明の構成に欠くことができない事項の主要部が相違し、また解決しようとする課題も相違するものである。 したがって、本願の特定発明と、請求項11-14に記載される発明とは、特許法第37条第1号、第2号に規定する関係を有さず、また、特許法第37条第3号,第4号,第5号に規定する関係を有さないことも明らかであるから、本件出願は特許法第37条に規定する要件を満たしていない。 4.むすび 以上のとおり、本願の請求項1及び8に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。 また、本件出願は、平成15年改正前の特許法第37条に規定する要件を満たしていないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-07-09 |
結審通知日 | 2007-07-13 |
審決日 | 2007-07-24 |
出願番号 | 特願2000-565784(P2000-565784) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 113- Z (A61B) P 1 8・ 64- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 上田 正樹 |
特許庁審判長 |
高橋 泰史 |
特許庁審判官 |
樋口 宗彦 門田 宏 |
発明の名称 | 医療用体内誘導装置 |
代理人 | 大西 正悟 |