ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード![]() |
審決分類 |
審判 判定 同一 属する(申立て成立) B62H |
---|---|
管理番号 | 1180849 |
判定請求番号 | 判定2008-600022 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許判定公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 判定 |
判定請求日 | 2008-04-15 |
確定日 | 2008-07-10 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第1905956号の判定請求事件について、次のとおり判定する。 |
結論 | (イ)号図面及びその説明書に示す「スクータ型車両」は、特許第1905956号発明の技術的範囲に属する。 |
理由 |
1.請求の趣旨・手続の経緯 (1)本件判定請求の請求の趣旨は、イ号図面及びイ号図面説明書に示すスクータ型車両は、特許第1905956号の発明(以下「本件特許発明」という。)の技術的範囲に属する、との判定を求めるものである。 (2)本件判定請求は、平成20年4月15日になされたもので、本件判定請求人は、特許第1905956号の特許権者である。 本件判定請求人は別紙のイ号図面及びイ号図面説明書に示すスクータ型車両(以下「イ号物件」という。)を本件特許発明の侵害と判断し、その対処のために、イ号物件の属否について特許庁の判断を求め判定請求を行っているものである。 (3)これに対して、被請求人は、平成20年6月9日に判定請求答弁書を提出して、イ号図面及びその説明書に示すスクータ型車両は、特許第1905956号発明の技術的範囲に属しないとの判定を求める旨の答弁を行っている。 2.本件特許発明 本件特許発明は、本件特許明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものにあって(以下、請求項1に係る発明を「本件特許発明」という。)、その構成要件を符号A?Dを付して分説すると次のとおりである。 「【請求項1】 A.自動二輪車に設けられたサイドスタンドブラケットと、前記サイドスタンドブラケットに対し支軸を中心にして回動自在に軸着されたサイドスタンドバーと、前記サイドスタンドブラケット及び前記サイドスタンドバー間に架設されて前記サイドスタンドバーを中立位置を挾む格納位置及び突出位置のいずれか一方に安定せしめるリターンスプリングと、前記サイドスタンドバーの回動位置を検出するスイッチ手段とからなる自動二輪車のサイドスタンドであって、 B.前記スイッチ手段は、前記支軸と同軸上に回動中心を有し前記サイドスタンドバーの回動に運動して回動する可動接点と、 C.前記サイドスタンドバーが前記格納位置から前記突出位置側へ所定回動角だけ回動した回動位置を境として前記可動接点との電気的接触を断続する固定接点とからなる ことを特徴とする D.自動二輪車のサイドスタンド。」 3.イ号物件の構成の特定 判定請求書、判定請求書に添付されたイ号図面説明書及びイ号図面(図1?図22)を参照してイ号物件の構成の特定を以下に行う。なお、部材名(部材番号を含む。)は、スクータ型車両としての通常の技術用語であるので、判定請求書において請求人が用いているものを採用した。 (a)図1で示されている通り、イ号物件は、自動二輪車の一種であるスクータ型車両であり、サイドスタンド(120)を有する。 サイドスタンドバー(121)は、特に図3、図4、図7に示すように、サイドスタンドブラケット(111)に支軸(150)により、これを中心にして回動自在に軸着されている。サイドスタンドバー(121)は、跳ね上がった格納位置(図1、図2、図3、図4参照)から、支軸(150)を中心にして回動させることで、起立位置(突出位置)(図5、図6、図7参 照)に移行する。リターンスプリング(122)を、サイドスタンドバー(121)と、車体側であるサイドスタンドブラケット(111)との間に架設することで(図8、図10、図11参照)、サイドスタンドバー(121)を格納位置、起立位置の何れか一方に、安定して保持する。 サイドスタンドバー(121)の軸着部(支軸150)には、サイドスタンドバー(121)の回動位置を検出する回動位置検出スイッチ装置(130)を有する。(図1?図7参照) (b)イ号物件は、サイドスタンドバー(121)を、サイドスタンドブラケット(111)に起立、回動自在に軸着した支軸(150)を中心にして回動する回動位置検出スイッチ装置(130)を備える(特に図3、図4、図6、図7、図10、図11参照)。 回動位置検出スイッチ装置(130)の可動接点(d,e,f)は、固定側であるステータボデイ(131)に対し、支軸(150)を中心として回動するロータ(140)に設けられている(図15、図14、図13参照)。 可動接点(d,e,f)を有するロータ(140)は、係止ピン(144)がサイドスタンドバー(121)の係止孔(124)に係合し、サイドスタンドバー(121)の回動と一緒に、ロータ(140)が回動し、従って、可動接点(d,e,f)も回動する(図18、図21参照)。 (c)イ号物件は、車体側のサイドスタンドブラケット(111)に設けた係止ピン(113)と、回動位置検出スイッチ装置(130)のステータボデイ(131)に設けたU形の係止溝(134)と係合し、固定側とされたステータボデイ(131)(図3、図7参照)に固定接点(a,b,c)が設けられている(図15参照)。 起立位置から格納位置、或いはこの逆の作動で、サイドスタンドバー(121)は回動し、サイドスタンドバー(121)の回動で、前記した通りロータ(140)が回動し、これによりロータ(140)に設けた接点(d,e,f)は、可動接点として回動する。図21の(a)、(b)に示されている通り、(a)では、想像線で示すサイドスタンドバー(121)が起立状態で、固定接点aに可動接点dが接触し、固定接点bに可動接点e,fが接触し、(b)では、サイドスタンドバー(121)が格納状態で、サイドスタンドバー(121)と一緒に係止ピン(144)を介してロータが回動し、固定接点bに可動接点d,eが接触し、固定接点cに可動接点fが接触する。このように、サイドスタンドバー(121)が格納位置から起立位置へ所定回動角回動した際、可動接点(d,e,f)と固定接点(a,b,c)の電気的接触を断続する。 (d)スクータ型車両。 以上のことから、判定請求書、判定請求書に添付されたイ号図面説明書及びイ号図面(図1?図22)を参照すると、イ号物件の構成は、次のとおり特定されるものである。(その構成を符号a?dを付して分説した。) a.スクータ型車両に設けられたサイドスタンドブラケット(111)と、サイドスタンドブラケット(111)に支軸(150)により、これを中心にして回動自在に軸着されているサイドスタンドバー(121)と、サイドスタンドバー(121)と、車体側であるサイドスタンドブラケット(111)との間に架設し、サイドスタンドバー(121)を、格納位置、起立位置の何れか一方に、安定して保持するリターンスプリング(122)と、サイドスタンドバー(121)の軸着部(支軸150)に、サイドスタンドバー(121)の回動位置を検出する回動位置検出スイッチ装置(130)を有するスクータ型車両のサイドスタンドであって、 b.サイドスタンドバー(121)には、サイドスタンドブラケット(111)に起立、回動自在に軸着した支軸(150)を中心にして回動する回動位置検出スイッチ装置(130)を有し、回動位置検出スイッチ装置(130)の固定側であるステータボデイ(131)に対し、支軸(150)を中心として回動するロータ(140)を備え、ロータ(140)には接点d,e,fを有し、ロータ(140)が、係止ピン(144)とサイドスタンドバー(121)の係止孔(124)との係合で、サイドスタンドバー(121)の回動と一緒に回動し、ロータ(140)に設けた接点d,e,fがサイドスタンドバー(121)の回動と一緒に回動する可動接点(d,e,f)と、 c.車体側のサイドスタンドブラケット(111)に設けた係止ピン(113)と、回動位置検出スイッチ装置(130)のステータボデイ(131)に設けたU形の係止溝(134)と係合し、固定側とされたステータボデイ(131)に固定接点(a,b,c)が設けられており、サイドスタンドバー(121)の起立位置から格納位置、或いはこの逆の回動で、回動位置検出スイッチ装置(130)のロータ(140)が回動し、これによりロータ(140)に空隙を介して固定接点(a,b,c)に押し付けられるようにして電気的接続を断続する d.スクータ型車両。 4.対比・判断 (1)構成要件Aの充足性について イ号物件の「スクータ型車両」は、一般にスクータ型車両は自動二輪車の一種であるので、「自動二輪車」といえる。 また、符号a?dを付して分説されたイ号物件の構成は、全体として「自動二輪車のサイドスタンド」を含むものであって、イ号物件の符号a?d記載の構成は「自動二輪車のサイドスタンド」といえる。 そして、本件特許発明の構成要件Aのうちの「自動二輪車に設けられたサイドスタンドブラケット(2)と、サイドスタンドブラケット(2)に対し支軸(5)を中心にして回動自在に軸着されたサイドスタンドバー(3)」の構成と、イ号物件の構成Aのうち、「スクータ型車両に設けられたサイドスタンドブラケット(111)と、サイドスタンドブラケット(111)に支軸(150)により、これを中心にして回動自在に軸着されているサイドスタンドバー(121)」は一致する。 また、イ号物件の「起立位置」は本件特許発明の「突出位置」と同じ位置を示している。そして、格納位置と起立位置とは中立位置を挟んで何れか一方に、安定して保持するから、イ号物件の「格納位置と起立位置とは何れか一方に、安定して保持する」は本件特許発明の「中立位置を挟む格納位置及び突出位置のいずれか一方に安定せしめる」と同義であるといえる。 本件特許発明の構成要件Aのうち「サイドスタンドブラケット(2)及びサイドスタンドバー(3)間に架設されてサイドスタンドバー(3)を中立位置を挾む格納位置及び突出位置のいずれか一方に安定せしめるリターンスプリング(7)」なる構成と、イ号物件の構成aのうちの「サイドスタンドバー(121)と、車体側であるサイドスタンドブラケット(111)との間に架設し、サイドスタンドバー(121)を、格納位置、起立位置の何れか一方に、安定して保持するリターンスプリング(122)」とは一致する。 さらに、本件特許発明の構成要件Aのうち「サイドスタンドバー(3)の回動位置を検出するスイッチ手段(11)とからなる」とする構成と、イ号物件の構成aのうち、「サイドスタンドバー(121)の軸着部(支軸150)に、サイドスタンドバー(121)の回動位置を検出する回動位置検出スイッチ装置(130)を有する」とは一致する。 したがって、イ号物件の構成aは、本件特許発明の構成要件Aを充足する。 (2)構成要件Bの充足性について 本件特許発明の「連動して回動する」はイ号物件の「一緒に回動する」と同義といえるから、本件特許発明の構成要件Bの「前記スイッチ手段(11)は、支軸(5)と同軸上に回動(120)中心を有し、サイドスタンドバー(3)の回動に連動して回動する可動接点(17)」なる構成は、イ号物件の構成bの「サイドスタンドバー(121)には、サイドスタンドブラケット(111)に起立、回動自在に軸着した支軸(150)を中心にして回動する回動位置検出スイッチ装置(130)を有し、回動位置検出スイッチ装置(130)の固定側であるステータボデイ(131)に対し、支軸(150)を中心として回動するロータ(140)を備え、ロータ(140)には接点(d,e,f)を有し、ロータ(140)が、係止ピン(144)とサイドスタンドバー(121)の係止孔(124)との係合で、サイドスタンドバー(121)の回動と一緒に回動し、ロータ(140)に設けた接点(d,e,f)がサイドスタンドバー(121)の回動と一緒に回動する可動接点(d,e,f)」を包含する。 したがって、イ号物件の構成bは、本件特許発明の構成要件Bを充足する。 (3)構成要件Cの充足性について イ号物件の回動位置検出スイッチ装置(130)において、サイドスタンドバー(121)の起立状態では、図21の(a),(b)で示されているように、(a)では、固定接点aに可動接点dが接触し、固定接点bに可動接点e,fが接触し、(b)では、サイドスタンドバー(121)が格納状態で、サイドスタンドバー(121)と一緒に係止ピン(144)を介してロータ(140)が回動し、固定接点bに可動接点d,eが接触し、固定接点cに可動接点fが接触し、これにより、サイドスタンドバー(121)の起立・格納状態は、電気的に識別されることとなる。可動接点は、電気的に接触するのは固定接点a、b、cと可動接点d、e、fの点接触であり、可動接点は別個の部材であるロータ(140)と連動して回動するが、回動中心軸は支軸(150)と同軸上に回動中心を有しているものである。 また、可動接点と固定接点(端子)とを空隙を介して押し付けられるように付勢されて電気的接触させることは通常の電気的な接触で用いられている常套手段である。 してみれば、本件特許発明の構成要件Cの「前記サイドスタンドバー(3)が格納位置から突出位置側へ所定回動角だけ回動した回動位置を境として可動接点(17)との電気的接触を断続する固定接点(18a,18b,18c)とからなる」とする構成は、イ号物件の構成cの「車体側のサイドスタンドブラケット(111)に設けた係止ピン(113)と、回動位置検出スイッチ装置(130)のステータボデイ(131)に設けたU形の係止溝(134)と係合し、固定側とされたステータボデイ(131)に固定接点(a,b,c)が設けられており、サイドスタンドバー(121)の起立位置から格納位置、或いはこの逆の回動で、回動位置検出スイッチ装置(130)のロータ(140)が回動し、これによりロータ(140)に空隙を介して固定接点(a,b,c)に押し付けられるようにして電気的接続を断続する」を包含する。 したがって、イ号物件の構成cは、本件特許発明の構成要件Cを充足する。 (4)構成要件Dの充足性について 上記4.(1)と同様に、イ号物件の「スクータ型車両」は、一般にスクータ型車両は自動二輪車の一種であるので、「自動二輪車」といえる。 また、符号a?dを付して分説されたイ号物件の構成は、全体として「自動二輪車のサイドスタンド」を含むものであって、イ号物件の符号a?d記載の構成は「自動二輪車のサイドスタンド」といえる。 したがって、イ号物件の構成dは、本件特許発明の構成要件Dを充足する。 以上のことから、イ号物件の構成a?dは、本件特許発明の構成要件A?Dの全てを充足する。 5.むすび 以上のとおりであるから、イ号物件は、本件特許発明の技術的範囲に属する。 よって、結論のとおり判定する。 |
別掲 |
![]() |
判定日 | 2008-06-30 |
出願番号 | 特願昭63-66160 |
審決分類 |
P
1
2・
1-
YA
(B62H)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 秋月 均、一ノ瀬 覚 |
特許庁審判長 |
川向 和実 |
特許庁審判官 |
高木 進 中川 真一 |
登録日 | 1995-02-24 |
登録番号 | 特許第1905956号(P1905956) |
発明の名称 | 自動二輪車のサイドスタンド |
代理人 | 尾関 孝彰 |
代理人 | 下田 容一郎 |