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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1186559
審判番号 不服2006-21580  
総通号数 108 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-12-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-09-27 
確定日 2008-10-22 
事件の表示 特願2001-393660「屈折率分布の測定装置及び測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 7月 9日出願公開、特開2003-194717〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・請求人の主張
(1)本願は、平成13年12月26日の出願であって、平成17年1月31日付けで最初の拒絶理由が通知され(発送日:同年2月2日)、その指定期間内である同年3月4日に意見書及び手続補正書が提出され、次いで、平成18年1月24日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日:同月30日)、その指定期間内である同年3月14日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年8月23日付けで補正却下の決定がなされる(発送日:同年8月28日)とともに、同日付けで拒絶査定され、これに対し、同年9月27日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
(2)請求人は拒絶査定不服審判の審判請求書の請求の理由において、「却下された平成18年3月14日付け手続補正書に記載の発明が、引例1?9からは当業者といえども容易には得られない発明である」旨の主張をしている。

第2 平成18年8月23日付け補正却下の決定の適否に対する当審の判断
1 補正却下の決定の適否についての結論
平成18年8月23日付け補正却下の決定は適法である。

2 補正却下の決定が適法であることの理由
(1)平成18年3月14日付けの手続補正書による手続補正(以下、「本件補正」という。)の内容

本件補正は、平成17年3月4日付け手続補正書により補正された本件出願明細書の特許請求の範囲の各請求項を以下のとおり補正することを含むものである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?2
「【請求項1】光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、透過した光の位置を測定することによって、該ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置において、光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成からなり、ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形した光で測定することを特徴とする屈折率分布の測定装置。
【請求項2】光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、透過した光の位置を測定することによって、該ガラス母材内部の屈折率分布を測定する方法において、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成からなり、これによりラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形した光で測定を行い、光強度が予め設定されたしきい値を超えた部分の中点をもって、透過した光の位置とすることを特徴とする屈折率分布の測定方法。」
イ 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?2
「【請求項1】光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、透過した光の位置を測定することによって、該ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置において、光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成からなり、ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形し、かつ中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定することを特徴とする屈折率分布の測定装置。
【請求項2】光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、透過した光の位置を測定することによって、該ガラス母材内部の屈折率分布を測定する方法において、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成からなり、ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形し、かつ中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定を行い、光強度が予め設定されたしきい値を超えた部分の中点をもって、透過した光の位置とすることを特徴とする屈折率分布の測定方法。」

(2) 本件補正の適否について
本件補正は、平成18年1月24日付けの最後の拒絶理由通知に対する補正であるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第1項第3号適用の対象に該当し、本件補正による特許請求の範囲についてする補正は、同条第4項の規定により同項第1号から第4号に掲げる事項を目的とするものに限られる。
そこで、本件補正の内容について検討すると、本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明について「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形した光で測定する」を、「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形し、かつ中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定する」と補正することにより、「中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射」する構成を新たに付加して減縮するものであり、さらに、本件補正前の請求項2に係る発明について「これによりラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形した光で測定を行い」を、「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形し、かつ中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定を行い」と補正することにより、「中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射」する構成を新たに付加して減縮するものであって、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3) 独立特許要件について
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(ア)引用刊行物記載の発明
(A)補正却下の決定で引用された特開平8-201221号公報(以下、「引用刊行物A」という。)には、
(A-1)「【請求項2】光源からの光が空間フィルタを通って光ファイバ母材の軸方向とは垂直な方向から入射する入射光学系と、該入射光学系から入射して光ファイバ母材を通った出射光の投影像を検出する撮像手段とを有する屈折率分布の測定装置において、該空間フィルタが複数の径のアパーチャーを有し、その複数の径のアパーチャーを切換えて入射光学系の光路が形成されることを特徴とする屈折率分布の測定装置。」
(A-2)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、光ファイバ母材の屈折率分布の測定方法および測定装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】光ファイバは光ファイバ母材を線引きして形成される。光ファイバ母材はVAD法等によって製造される。光ファイバ母材は半径方向の屈折率がほぼ2乗分布、軸方向の屈折率は均一になっている。良質な光ファイバを得るためには線引きする前の光ファイバ母材の屈折率分布を正確に測定することが必要である。」こと、
(A-3)「【0016】He-Neレーザ1から出射したレーザ光14はビームエクスパンダ2でその径が広げられ、必要に応じてパルスモータ4を動作させて空間フィルタ3を回転させアパーチャー18を通って最適な径にされる。空間フィルタ3を通過したレーザ光14は集光用レンズ6により収斂され光ファイバ母材7の中心で最小の径となる。光ファイバ母材7を通過した出射光17はスクリーン11にその投影像が写し出される。写し出された投影像はカメラ12で撮像され、カメラ12で得られた投影像の位置からコンピュータ13によって出射角が算出されて屈折率分布が求められる。」こと、
(A-4)「【0018】光ファイバ母材7をその中心と集光用レンズ6との距離が300mmになるように配置して、He-Neレーザ1からのレーザ光14の径をビームエクスパンダ2で15mmに広げ、径1?15mmのアパーチャー18が明けられた空間フィルタ3の径4mmのアパーチャー18を用いて屈折率分布を測定した。また光ファイバ母材のコアの最大屈折率をn_(1 )、クラッドの屈折率をn_(2) として屈折率を測定し、次式で示す比屈折率差Δ
Δ=(n_(1) -n_(2) )×100/n_(1)
を求め、この比屈折率差Δの標準偏差σを算出して比屈折率差Δで正規化し、(σ/Δ)で示される繰り返し精度を調べた。」こと、
が記載されている。(下線は当審で付加した。)
(A-5)また、図1にはビームエキスパンダ2でレーザ光の径を広げる際に、レーザ光の径を平行光にすることが描かれている。
上記(A-1)?(A-5)の摘記事項を総合すると、上記引用刊行物Aには、
「光ファイバ母材の軸方向とは垂直な方向から光を入射し、光ファイバ母材を通った出射光の投影像を撮像することによって、該光ファイバ母材の屈折率分布を測定する測定装置において、
レーザから出射したレーザ光の径を広げるビームエクスパンダと、径の広げられた前記レーザ光の径を最適な径に切換えるアパーチャーを有する空間フィルタと、該空間フィルタを通過したレーザ光を収斂し、前記光ファイバ母材にその光を入射する集光用レンズと、前記光ファイバ母材を通った出射光の投影像を写し出すスクリーンと、該スクリーン上の投影像を撮像するカメラと、有する屈折率分布の測定装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

(B)補正却下の決定で引用された特開平1-98949号公報(以下、「引用刊行物B」という。)には、
(B-1)「〔産業上の利用分野〕
本発明は透明物体を透過する光の屈折角を測定する装置に関し、特に詳細には、長手方向に均一な特性を有する円柱状透明物体の側面よりその一断面をレーザ収束光により走査し、その透過光の屈折角を測定し、当該円柱状透明物体の内部屈折率分布を求めるための屈折角測定装置に関する。」(第1頁右下欄第8行?第14行)こと、
(B-2)「第1(a)図は本発明に従う第1の実施例である屈折率測定装置の構成を示す。第1(a)図に示すように本発明に従う走査型屈折率測定装置はレーザ収束光3を被測定物体1に照射するレーザ発光装置2と、このレーザ発光装置2に対して被測定物1を介して反対側に配置される1次元イメージセンサ-7とより構成され、この1次元イメージセンサ-7は複数の受光素子7-1、7-2、・・・7-nより構成され、この1次元イメージセンサ-7の受光素子が被測定物体1の入射光に対して、かつ、被測定物体1の長手方向に対して直交するように、更に、入射光3と屈折光9とのなす平面内に位置するように配置される。更に、この1次元イメージセンサ-7はその受光素子の長手方向に垂直方向の幅(第1(a)図上でa)がその受光素子のピッチ間隔(第1(a)図上でb)に対して大きくなっている。 このように1次元センサー7をこのように構成しておく理由は、長手方向に均一な透明被測定物内部の屈折率の測定において、必要とされる透過光の出射角は1次光のふれ角に関する情報であり、例えば、光ファイバ母材を被測定物とした場合には、コア母材の製造プロセスに起因して、母材の長手方向に微細な屈折率変化が存在し、レーザ収束光で母材を走査したときに透過光の出射は、第2(a)及び(b)図の光束3aで示すように母材の長手方向にも若干の角度振れをを生じる。しかし、この様な被測定物体の長手方向の出射光の振れを吸収することは好ましいことであり、そのため上記のような出射光の長手方向の振れを吸収できるように1次元イメージセンサ-7を構成する。」(第3頁右上欄第7行?同頁左下欄第18行)こと、
(B-3)「この1次元イメージセンサ-7はドライバ10により駆動され、その各受光素子の受光パワーに応じた出力は順次読み出され、その出力信号はA/Dコンバータ11に送られ、その最大出力を示す受光素子が特定され、その受光素子の位置と、レーザ収束光の被測定物体1への入射位置とより、屈折角を求める演算が実行される。更に、演算により求められた屈折角より、屈折率を求める。」(第3頁右下欄第16行?第4頁左上欄第3行)こと、
が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(C)補正却下の決定で引用された特開平1-244329号公報(以下、「引用刊行物C」という。)には、
(C-1)「〈産業上の利用分野〉
本発明は、円柱状透明体の一横断面の内部屈折率分布を求めるに際し、該円柱状透明体を側面からのレーザ収束光により走査してその透明光の屈折角を測定する屈折角測定方法及び屈折率分布測定装置に関する。」(第1頁右下欄第9行?第14行)こと、
(C-2)「第1図は本実施例の屈折率分布測定装置の要部の構成を示す説明図である。同図に示すように、前述したようにマッチングオイル4を介してマッチングセル5内に保持されている光フアイバ母材3を透通した光を受ける位置に、該透過光を二方向に分岐する光分岐器21が設けられており、二方向に分岐された光をそれぞれ捕捉することができる光線位置検出センサ22a、22bが設けられている。これら検出センサ22a、22bは種々の屈折角を有する透過光の分岐光を捕捉することが可能な受光面積を有する光検出素子であり、屈折角が零の透過光の分岐光が入射した場合を基準として各分岐光の入射位置を検出するものである。このような検出センサ22a、22bとして代表的なものとしては二次元のCCD撮像素子が挙げられるが、被検体である光フアイバ母材3の屈折率分布が長手方向に均一であるとすると、光線の屈折は一平面内にて生じるため、一次元のCODラインセンサを用いてもよい。」(第3頁右上欄第1行?同頁左下欄第1行)こと、
が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(D)補正却下の決定で引用された特開平7-280722号公報(以下、「引用刊行物D」という。)には、
(D-1)「【0018】投光装置6は、光源6aと、更に光源6aが図2に示す如く白熱灯やハロゲンランプ等の電球の場合に紙1の紙面1aに平行光を照射できるように光源6aからの光を収束するレンズと通過光を絞るピンホールとピンホールを通過した光を平行光とするレンズとを備えたレンズ系6bと、光源6aが図3に示す如くHe-Neレーザや半導体レーザの場合に光径を拡大するビームエキスパンダー6cと、更に必要に応じて光源6aから照射される光線を主直線偏光光線のみとするための偏光子6dや光源6aより紙1の紙面1aに所定の径の光を照射するための所定の径の絞り6eが設けられている。この絞り6eとしては、紙1の紙面1a上の照射された光の直径が10mmより小さいと紙1の地合いむらなどによる局部的な配向が測定されるため、平均的な値を測定すべく紙1の紙面1a上に照射される光の直径を少なくとも20mm以上とし得るものを使用することが好ましい。また絞り6eは、紙1の紙面1a上での入射光Liの形状を円形にするために、入射光Liと反射光Loとが通過する前記入反射面Mと試料台2の支持面2a上に支持された紙1の紙面1aとの交線Oを中心軸として煽り角度αだけ傾斜させたときの紙面1aと平行に設置されていることが好ましい。」こと、
が記載されている。

(E)補正却下の決定で引用された特開平11-98372号公報(以下、「引用刊行物E」という。)には、
(E-1)「【0020】レーザ発振器1から射出したレーザ光は、ビームエキスパンダ2、ビームスプリッタやダイクロイックミラーなどの光路分割素子3を介してX方向スキャナ4およびY方向スキャナ5に入射される。これらX方向スキャナ4およびY方向スキャナ5は、ガルバノメータスキャナを構成するもので、これらX方向スキャナ4およびY方向スキャナ5により入射されるレーザ光は、2次元走査するように偏向される。」こと、
が記載されている。
(E-2)また、図1にはレーザ発振器からのレーザー光を集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束をレンズで平行光にするビームエキスパンダ2が描かれている。(下線は当審で付加した。)

(F)補正却下の決定で引用された特開2000-47368号公報(以下、「引用刊行物F」という。)には、
(F-1)「【請求項1】パターン読み取りのための光を照射可能な光照射手段と、
この光照射手段による照射光を受光してパターンに照射させるとともにこの照射光の一部を照射光のレベル検出のために分岐させる照射光分岐手段と、
パターンからの光を受光してこの光の強さを検出するとともに、この検出レベルが常に所定レベルになるように上記照射光の出力を調節し、かつ、この光を電気信号に変換して出力するパターン光検出手段と、
上記光照射手段が分岐した光を受光してこの光の強さを検出するとともにこの検出レベルが常に所定レベルになるように上記分岐された光の出力を調節し、かつ、この光を電気信号に変換して出力する光検出手段と、
この光検出手段の出力信号で、上記パターン光検出手段が出力した信号を除することによりノイズレベルが一定になるようにした信号を出力する補正手段と、
この補正手段の出力に基づいて上記パターンを認識するパターン認識手段とを具備することを特徴とするパターン形状検査装置。
【請求項2】上記請求項1に記載のパターン形状検査装置において、
上記パターン光検出手段は、受光した光の最大レベルをこのパターン光検出手段が検出可能な最大のレベルになるように上記照射光の出力を調節し、かつ、上記光検出手段は、受光した光の最大レベルをこの光検出手段が検出可能な最大レベルになるように上記分岐された光の出力を調節することを特徴とするパターン形状検査装置。
【請求項3】上記請求項1に記載のパターン形状検査装置において、
上記光検出手段は、変換した電気信号に対して1以下のゲインを与えてから上記補正手段に出力することを特徴とするパターン形状検査装置。」、
(F-2)「【0013】上記のように構成した請求項2にかかる発明においては、照射光の出力が低下して透過光レベルが上記パターン光検出手段の最大レベルまで達していないときには、透過光レベルが上記パターン光検出手段の最大レベルに達するように補正する。また、このパターン光検出手段を規格化するために上記光検出手段においても受光した光の最大レベルをこの光検出手段が検出可能な最大レベルになるように調節して、上記補正されたパターン光検出手段の出力値と同レベルになるようにする。詳しくは後述するが、同じ検出器で同じパターンを検出するときに強い出力信号は弱い出力信号よりもコントラストがはっきりしてより高精度で鮮明な画像が得られる。つまり、強い出力の信号は弱い出力の信号より相対的にノイズレベルが低減される。
【0014】ノイズは低減されるのみならず除去される方がよいのは当然である。そこで、ノイズの一部を除去するために請求項3にかかる発明は請求項1に記載のパターン形状検査装置において、上記光検出手段は変換した電気信号に対して1以下のゲインを与えてから上記補正手段に出力する構成としてある。
【0015】 上記のように構成した請求項3にかかる発明においては、上記請求項1および2において上記パターン光検出手段の信号レベルをこの信号と同レベルにした光検出手段の信号で規格化するのに対し、このパターン光検出手段の信号レベルより低レベルにした光検出手段の信号で規格化すると、このパターン光検出手段のレベルは全体として拡大され、この信号の最大レベルは上記検出手段の検出範囲を上回ることになる。ここで、上述のようにこの信号に内在するノイズレベルは常に一定であるので、上記拡大の結果検出範囲を上回る幅をこのノイズレベルの幅以上になるようにすると、当該検出範囲を上回った部分のノイズは完全に除去可能となる。」こと、
(F-3)「【0024】また、センサ6はA/D変換器15と補正回路9とに接続され、さらにA/D変換器15はCPU2に接続されている。そして、センサ6は受光した光をアナログ信号に変換可能であるとともに、このアナログ信号を上記A/D変換器15と補正回路9とに出力可能となっており、上記図示しない光源から照射されてパターンを透過した光がこのセンサ6に受光されると、この光はアナログ信号に変換されて上記A/D変換器15と補正回路9とに出力される。A/D変換器15は、入力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換してCPU2に出力可能となっており、上記センサ6に受光された光がデジタル変換されてCPU2に出力されるようになっている。
【0025】同様にして、センサ5はA/D変換器8とゲイン設定手段7とに接続され、さらにこのA/D変換器8はCPU2に接続されている。そして、センサ5は受光した光をアナログ信号に変換可能であるとともに、このアナログ信号を上記A/D変換器8とゲイン設定手段7とに出力可能となっており、上記分岐された光がこのセンサ5に受光されると、この光はアナログ信号に変換されて上記A/D変換器8とゲイン設定手段7とに出力される。このA/D変換器8はこの入力されたアナログ電気信号をデジタル信号に変換してCPU2に出力可能となっており、上記センサ5に受光された光がデジタル変換されてCPU2に出力されるようになっている。
【0026】CPU2は、上記センサ6に受光されデジタル変換された信号に基づいてこのセンサ6の受光レベルを判断可能となっており、この判断に基づいて光量設定手段16に指示が出されると、この光量設定手段16により上記照射光の出力が所定レベルに調節される。また、同様にしてCPU2は上記センサ5に受光されデジタル変換された信号に基づいてこのセンサ5の受光レベルを判断可能となっており、この判断に基づいて光量設定手段17に指示が出されると、この光量設定手段17により上記分岐された光の出力が所定レベルに調節される。
【0027】この意味で、光量設定手段16と、センサ6と、A/D変換器15と、CPU2とが上記パターン光設定手段を構成し、光量設定手段17と、センサ5と、A/D変換器8と、CPU2とが上記光検出手段を構成する。」こと、
(F-4)「【0034】上述したように、この実施形態にかかるパターン形状検査装置は、CPU2にて制御しており、以下、このCPU2の制御を図12に示すフローチャートに沿って説明する。パターン検査は、まずステップS200で上記図示しない光源がレーザ光を照射することから始まり、ステップS205で上記センサ6がこの照射光を検出すると、CPU2はステップS215でこの検出信号にセンサ6の検出範囲の最大レベルに達する出力があるか否かを判断する。
【0035】ここで、センサ6の検出範囲の最大レベルに達していないと判断したときは、上記光量設定手段16はステップS210で出力をセンサ6の出力検出範囲の最大レベルになるよう調節する。・・・
【0037】
上記処理により上記照射光がセンサ6の検出範囲の最大レベルになるよう調節され、上記分岐された光がセンサ5の検出範囲の最大レベルになるよう調節されると、CPU2はステップS235でノイズレベルを計算する。ここで、その計算の具体例を図2?図5にて説明する。図2は上記レーザ光が上記パターン4を透過している様子を示しており、図3はかかるパターンを透過した光のセンサ6による出力波形を示しており、図4はセンサ5の出力波形を示している。図3および図4においては簡単のため飽和レベルを「1」とし、センサ6のショットノイズやアナログ回路のノイズレベルをΔaと、センサ5のショットノイズやアナログ回路のノイズレベルをΔbとしている。ここで、パターン4の透過部でのノイズは以下の式で計算する。すなわち
(1+Δa)/(1+Δb)=1+(Δa-Δb)/(1+Δb)
【0038】なお、(1+Δa)はパターン4を透過した部分の信号値であり、(1+Δb)はこの(1+Δa)を取得した位置に対応する上記分岐された光の信号値である。この計算結果は図5のように表され、上式の右辺において「1」は飽和レベルを示しているので、(Δa-Δb)/(1+Δb)の部分はノイズレベルを示すことになる。」こと、
(F-5)「【0046】上述のようにして、ステップS235にてノイズレベルを計算すると、CPU2はこの計算されたノイズレベルを用いてステップS240にて必要なゲイン値を計算して上記ゲイン設定手段7に出力し、ステップS245にて必要なオフセット値を計算して上記オフセット設定手段11に出力する。このゲイン値とオフセット値の計算を図6?図8を用いて説明する。これらの図において、飽和レベルと0レベルとはそれぞれ上記A/D変換器12の測定上限と測定下限とを示しており、図6は上記図2のパターンを透過した場合の信号波形を、図7は上記ゲインを与えられた上記分岐された光でこの図6の信号波を除したときの信号波形を示しており、図8はその図7の信号にオフセットを与えたところを示している。
なお、ここでは簡単のために信号を直線で表現しているが、これらには上記ノイズが含まれている。
【0047】 上記のようにゲイン設定手段7のゲインは1以下であるので、このゲインを与えられた上記分岐された光で図6の信号を除すると図7のように信号は全体として拡大され、飽和レベルより「ΔV1」はみ出ることになる。これに「-ΔV3」のオフセットを与えると図8のようになり、飽和レベルよりはみ出した量は「ΔV2」になる。ここで、A/D変換器の測定上限より大きい値の信号は測定しないので、パターン透過部の信号のノイズレベルが「ΔV2」より小さければ、当該部分のノイズを除去できる。また、A/D変換器の測定下限より小さい値の信号は測定しないので0レベルの信号のノイズレベルが「ΔV3」より小さければ、当該部分のノイズを除去できる。」こと、
が記載されている。(下線は当審で付加した。)

(イ)本願補正発明についての対比・判断
(イ-1) 本願補正発明と引用発明とを対比する。
(i) 引用発明の「光ファイバ母材」は、摘記事項(A-2)に記載されているように、「VAD法」で製造されるものである。この「VAD法」は、「ガラス製」光ファイバの製造方法として、出願時において広く知られていたことであるから(本件明細書の【0002】段落も参照。)、引用発明の「光ファイバ母材」は、本願補正発明の「光ファイバ用ガラス母材」に相当する。
(ii) 引用発明の「光ファイバ母材の軸方向とは垂直な方向から光を入射」することは、本願補正発明の「光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射」することに相当する。
(iii) 引用発明において、「光ファイバ母材を通った出射光の投影像を撮像する」ことと、本願補正発明において、「透過した光の位置を測定する」こととは、「ガラス母材を透過した光を測定する」点で共通するものである。
(iv)引用発明の「光ファイバ母材の屈折率分布を測定する測定装置」は、本願補正発明の「ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置」に相当する。
(v) 引用発明の「径の広げられた前記レーザ光の径を最適な径に切換えるアパーチャーを有する空間フィルタと、該空間フィルタを通過したレーザ光を収斂し、前記光ファイバ母材にその光を入射する集光用レンズと、前記光ファイバ母材を通った出射光の投影像を写し出すスクリーンと、該スクリーン上の投影像を撮像するカメラ」と、本願補正発明の「光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成」とは、「光源から出射した光を集束光とする光学系」である点で共通する。
(vi) 引用発明の「アパーチャーを有する空間フィルタ」は、引用刊行物Aの摘記事項(A-4)を参酌すれば、15mmの径を有するレーザ光を、その径よりも小径の円孔である4mmのアパーチャーを通すことで、4mmの径を有する光に整形する例が記載されているから、この記載された例の「アパーチャーを有する空間フィルタ」と、本願補正発明の「この光束径より小径の円孔を有するリング部材」とは、「光束径より小径の円孔を有するリング部材」である点で共通する。
(vii) 引用発明の「集光用レンズ」は、光ファイバ母材に入射する光を収束させるものであるから、本願補正発明の「光源から出射した光を収束光とする光学系」の構成として、「集光レンズで収束してガラス母材に入射」する構成に相当する。
(viii)引用発明の「光ファイバ母材を通った出射光の投影像を写し出すスクリーンと、該スクリーン上の投影像を撮像するカメラ」は、本願補正発明の「光源から出射した光を収束光とする光学系」の構成として、「透過した光を光検出手段で検出する」構成である点で共通する。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、
「光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、ガラス母材を透過した光を測定することによって、ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置において、
光束径より小孔の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光を光検出手段で検出する構成からなる屈折率分布を測定する装置。」
である点で一致し、次の相違点(あ)?(お)で相違している。

・相違点(あ)
ガラス母材を透過した光を測定することが、本願補正発明は、「透過した光の位置」を測定するものであるのに対して、引用発明は、「出射光の投影像」を測定するものである点。

・相違点(い)
光束径より小孔の円孔を有するリング部材を通過させる際に、本願補正発明は、「光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、光束をコリメータレンズで平行光とした」構成を取っているのに対して、引用発明は「レーザから出射したレーザ光の径を広げるビームエクスパンダ」を有している点。

・相違点(う)
光検出手段が、本願補正発明では、「ラインセンサー」であるのに対して、引用発明は、「スクリーン」と「カメラ」である点。

・相違点(え)
本願補正発明は、「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形」するものであるのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

・相違点(お)
本願補正発明は、「中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定する」ものであるのに対して、引用発明にはそのような構成を備えていない点。

(イ-2) 上記相違点(あ)?(お)について判断する。
・相違点(あ)及び相違点(う)について
光ファイバ母材の屈折率分布測定装置において、透過した光をラインセンサーで検出することによって、光ファイバ母材を透過した光の位置を測定することは周知(例えば、引用刊行物Bの上記摘記事項(B-1)?(B-2)、引用刊行物Cの上記摘記事項(C-1)?(C-2)参照。)であることから、引用発明においても、光ファイバ母材の屈折率分布を測定する際に、光検出手段として「スクリーン」と「カメラ」とを用いる代わりに、本願補正発明のごとく「ラインセンサー」を採用し、光ファイバ母材を「透過した光の位置」を測定することは当業者が容易になし得たものである。

・相違点(い)について
光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束をレンズで平行光とすることは周知(例えば引用刊行物Dの上記摘記事項(D-1)、引用刊行物Eの上記摘記事項(E-1)、(E-2)参照)である。そして、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束が真円に近づくことは光学的にみて自明な事項であり、さらに、点光源から平行光を形成するレンズがコリーメータレンズとなることは技術常識である。
ところで、引用刊行物Aの上記摘記事項(A-5)には、「ビームエキスパンダ2でレーザ光の径を広げる際に、レーザ光の径を平行光にする」ことが記載されていることから、引用発明においてもレーザ光を平行光にする際に、周知の構成を採用して、本願補正発明のごとく「光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、光束をコリメータレンズで平行光とした」構成を採用することは当業者あれば容易になし得るものである。

・相違点(え)について
引用刊行物Aの上記摘記事項(A-4)には、15mmの径に広げられたレーザ光を空間フィルタの4mmの径のアパーチャーを通して測定することが記載されており、このアパーチャーを通すことによって、入射光の外周部分がカットされ入射光の中心部のみが通過することになるのは明らかである。そして、入射光の円形断面の外周部分は、本願補正発明でいうところの「光源光の強度分布の広がりの裾引き部」に相当するから、引用発明においても、アパーチャーを通すことによって、「光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形」していることになる。
さらに、光検出手段として、「ラインセンサー」を用いる点については上記相違点(う)で検討したとおりであり、さらに、上記引用刊行物Bの上記摘記事項(B-3)には「この1次元イメージセンサ-7はドライバ10により駆動され、その各受光素子の受光パワーに応じた出力は順次読み出され、その出力信号はA/Dコンバータ11に送られ、その最大出力を示す受光素子が特定され、その受光素子の位置と、レーザ収束光の被測定物体1への入射位置とより、屈折角を求める演算が実行される。」と記載されていることから、ラインセンサとしての1次元イメージセンサ-7は光源光の強度分布の広がりを検出する光検出手段であることは明らかであるから、光検出手段として「ラインセンサー」を用いた場合には、引用発明の空間フィルタが、本願補正発明のごとく「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形上に整形」することは明らかである。

・相違点(お)について
ノイズレベルを除去するために、照射光がセンサの検出範囲の最大レベルになるよう調節されるとともに、ノイズレベルを計算し、センサの出力を入力するA/D変換器の測定上限よりはみ出す量がノイズレベルより大きくなるようにゲイン設定手段のゲインを1以下とすることが、引用刊行物Fの上記摘記事項(F-3)?(F-5)に記載されている。そして、引用刊行物Fに記載された発明において、センサとA/D変換器とが光検出手段を構成する(上記摘記事項(F-5)参照)ものであり、さらに、照射光がセンサの検出範囲の最大レベルになるよう調節されるとともA/D変換器の測定上限よりはみ出す量がノイズレベルより大きくなるようにゲインを1以下とすることは、照射光がセンサの検出範囲の最大レベルになるよう調節されたときにセンサが受光する照射光の最大の光量による出力が、A/D変換器の測定上限よりはみ出している、すなわち、光検出手段で検出される照射光の最大の光量が光検出手段の測定限界を上回るように設定されている意味することは明らかである。
ところで、光検出手段として、「ラインセンサー」を用いる点については上記相違点(う)で検討したとおりであり、引用発明の屈折率分布の測定装置において、光ファイバ母材の軸方向とは垂直な方向から光を入射し、光ファイバ母材を通った出射光を検出する光検出手段として、周知のラインセンサを用いた場合にも、上記引用刊行物Fに記載された発明と同様に、ラインセンサーで光を検出する際にノイズレベルを除去する課題が存在することは明らかである。そして、上記引用刊行物Bの上記摘記事項(B-3)には「この1次元イメージセンサ-7はドライバ10により駆動され、その各受光素子の受光パワーに応じた出力は順次読み出され、その出力信号はA/Dコンバータ11に送られ、その最大出力を示す受光素子が特定され、その受光素子の位置と、レーザ収束光の被測定物体1への入射位置とより、屈折角を求める演算が実行される。」と記載されていることから、ラインセンサとしての1次元イメージセンサ-7が受光する光の最大値を検出する光検出手段であることは明らかであり、さらに、受光する光がレーザ光であるから、レーザ光の中心部の光量が最大となることは自明な事項であることを考慮すれば、引用発明の屈折率分布の測定装置において、光検出手段として周知のラインセンサを用いた場合においても、ノイズレベルを除去するために、上記引用刊行物Fに記載された発明の構成を採用して本願補正発明のごとく「中心部の光量をラインセンサーの測定限界のを上回る強さに設定した光をガラス母材に照射して測定する」よう構成することは当業者が容易になし得る事項である。

そして、本願補正発明によってもたらされる効果は、引用刊行物Aに記載された発明、引用刊行物Bに記載された発明、引用刊行物Fに記載された発明及び周知の技術事項から予測される範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用刊行物Aに記載された発明、引用刊行物Bに記載された発明、引用刊行物Fに記載された発明及び周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4) 補正却下の決定についてのむすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条の規定により却下しなければならないものである。
したがって、平成18年8月23日付け補正却下の決定は、適法である。

第3 本件出願に係る発明
平成18年8月23日付け補正却下の決定に誤りはなく、平成18年3月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので、本件出願の請求項1?2に係る発明は、本件補正前の、平成17年3月4日付け手続補正書で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記のとおりのものと認める。

「【請求項1】光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、透過した光の位置を測定することによって、該ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置において、光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメーターレンズで平行光とした後、この光束径より小径の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光をラインセンサーで検出する構成からなり、ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形した光で測定することを特徴とする屈折率分布の測定装置。」

第4 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物の記載事項は上記「第2 2 (2)」の「(ア)引用刊行物記載の発明」のとおりである。

第5 対比・判断
本願発明は、上記「第2 2」の「(2) 本件補正の適否について」で検討したように、本願補正発明の「中心部の光量をラインセンサーの測定限界を上回る強さに設定した光をガラス母材に照射」する構成を除いた発明であるから、上記「第2 2 (2)」の「(イ)本願補正発明についての対比・判断」を参照して、本願発明と引用発明とを対比すると、本願発明と引用発明とは、「光ファイバ用ガラス母材にこれを横切る方向から光を入射し、ガラス母材を透過した光を測定することによって、ガラス母材内部の屈折率分布を測定する装置において、
光束径より小孔の円孔を有するリング部材を通過させ、集光レンズで収束してガラス母材に入射し、透過した光を光検出手段で検出する構成からなる屈折率分布を測定する装置。」
である点で一致し、次の相違点(あ’)?(え’)で相違している。

・相違点(あ’)
ガラス母材を透過した光を測定することが、本願補正発明は、「透過した光の位置」を測定するものであるのに対して、引用発明は、「出射光の投影像」を測定するものである点。

・相違点(い’)
光束径より小孔の円孔を有するリング部材を通過させる際に、本願補正発明は、「光源から出射した光を収束光とする光学系に、光源光を集光する集光レンズの焦点位置にピンホールを配置して通過する光束を真円に近づけ、該光束をコリメータレンズで平行光とした」構成を取っているのに対して、引用発明は「レーザから出射したレーザ光の径を広げるビームエクスパンダ」を有している点。

・相違点(う’)
光検出手段が、本願補正発明では、「ラインセンサー」であるのに対して、引用発明は、「スクリーン」と「カメラ」である点。

・相違点(え’)
本願補正発明は、「ラインセンサーで検出される光源光の強度分布の広がりの裾引き部をカットして強度分布を矩形状に整形」するものであるのに対して、引用発明はそのような構成を備えていない点。

上記相違点(あ’)?(え’)は上記「第2 2 (2)」の「(イ)本願補正発明についての対比・判断」の相違点(あ)?(え)と同じ相違点であるから、同様の理由で、本願発明は引用刊行物Aに記載された発明、引用刊行物Bに記載された発明、及び周知の技術事項に基づき当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-08-22 
結審通知日 2008-08-25 
審決日 2008-09-08 
出願番号 特願2001-393660(P2001-393660)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 樋口 宗彦西村 仁志  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 秋月 美紀子
門田 宏
発明の名称 屈折率分布の測定装置及び測定方法  
代理人 荒井 鐘司  

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