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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01M |
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管理番号 | 1191710 |
審判番号 | 不服2006-21967 |
総通号数 | 111 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-03-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-09-28 |
確定日 | 2009-01-27 |
事件の表示 | 特願2003-549864「眼用物品検査システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月12日国際公開,WO03/48717,平成17年4月28日国内公表,特表2005-512041〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,2002年(平成14年)11月29日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年(平成13年)11月30日 米国)を国際出願日とする出願であって,平成18年9月11日付けで拒絶査定され,これに対して,同年9月28日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正書が提出されたものである。 第2 平成18年9月28日付け手続補正 平成18年9月28日付け手続補正は,特許請求の範囲を補正するものであって,当該補正により,(i)請求項1において,「構造光が該レンズの周囲縁部で該レンズに入り,そして該レンズ内で内部反射するように」が,「構造光が該レンズの周囲縁部において該レンズに入り,そして該レンズ内において内部反射するように」と補正され,(ii)請求項3及び4において,「通過」及び「落第」が,それぞれ「合格」及び「不合格」と補正され,(iii)請求項25において,「前記対向する表面がテクスチャーが出されている」が「前記対向する表面にテクスチャーが出されている」と補正された(下線は,補正箇所を示す。)。 上記補正事項(i)及び(ii)は,それぞれの記載の意味内容を明りょうとするものであり,上記補正事項(iii)は,誤記を訂正するものである。 したがって,上記補正事項(i)及び(ii),並びに,(iii)は,それぞれ平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第4号に規定する明りょうでない記載の釈明,並びに,同条同項第3号に規定する誤記の訂正を目的とするものに該当し適法なものである。 第3 本願発明 1 本願発明 本願の請求項1?27に係る発明は,平成18年9月28日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1?27に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明1」という。)及び請求項16に係る発明(以下,「本願発明2」という。)はそれぞれ次のとおりである。 本願発明1: 「【請求項1】 360°周囲縁部を有する眼用レンズを検査する方法であって、該方法は、構造光が該レンズの周囲縁部において該レンズに入り、そして該レンズ内において内部反射するように該構造光をレンズの360°周囲縁部全体に方向付ける工程を包含し、ここで内部反射した光が、該レンズ上のマーキングに当たる際に分散し、これにより、該内部光反射に起因して、該レンズの無傷の領域が暗くなり、そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して、該レンズ上の1つ以上のマーキングが明るくなる、方法。」 本願発明2: 「【請求項16】 眼用レンズを検査するためのアセンブリであって、該アセンブリは、以下: a)光源 b)開口中心部を有する環状光構造化開口部であって、そして該光源から光を構造化しかつ該構造光を該開口中心部へと半径方向内側に放射するように構成されている、環状光構造化開口部; c)該光構造化開口部に隣接する該開口中心部中に該レンズを取り外し可能に係合および配置し、それにより該構造光を該レンズに当てるためのレンズホルダー、 を備える、アセンブリ。」 2 引用刊行物記載の事項 原査定の拒絶理由で引用された,本願の優先権主張日前に頒布された刊行物である,特開2000-28476号公報(以下,「引用刊行物1」という。)には,図面とともに次の事項が記載されている。 1a)「【請求項6】光を発する複数の半導体発光素子と、 前記複数の半導体発光素子から発せられた光を被検査体の側面に向けて入射する光ガイド部と、 を備え、前記光ガイド部から前記被検査体の側面に向けて光を入射した状態で、前記被検査体の表面を観察することにより、前記被検査体の表面および内部の状態を検査することを特徴とする光学検査方式。 【請求項7】 請求項6において、 前記光ガイド部は、複数の前記半導体発光素子から発せられた光を集光する2つの集光部を備え、 2つの前記集光部によって集光された光を、2つの前記集光部によって形成された光出射面から前記被検査体の側面に向けて出射することを特徴とする光学検査方式。 【請求項8】 請求項7において、 前記光出射面の幅は、前記被検査体の厚さである前記側面の幅以下であることを特徴とする光学検査方式。 【請求項9】 請求項3?8のいずれかにおいて、 光の照射方向が互いに向かい合う位置に配置されて対をなす複数組の前記半導体発光素子を備えることを特徴とする光学検査方式。 ・・・・・・ 【請求項12】 請求項1?11のいずれかにおいて、 前記半導体発光素子によって発せられる光は可視領域の波長を含むことを特徴とする光学検査方式。 【請求項13】 請求項12において、 前記可視領域の波長には視感度のピーク近傍の波長が含まれることを特徴とする光学検査方式。」 1b)「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、レンズ等の良否を検査する光学検査方式に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする課題】同一の目的で使用されるレンズ(例えば眼鏡用レンズ)は、汎用性の点から規格化され、ほぼ同一の形状を有していることが多いため、見た目でレンズの度数等を判断することができない場合がある。このため、眼鏡用レンズの表面には、レーザ処理等により、そのレンズの度数等を示すコードが刻印されている場合があり、この刻印されたコード(以下、「刻印コード」と称する)を確認することにより、眼鏡用レンズの度数等を把握することができる。しかし、眼鏡用レンズの表面の刻印コードは、そのレンズを使用する際に視界を遮らないようにするために非常に浅く刻印されている。このため、刻印コードを目視により確認することは容易ではなかった。 【0003】また、眼鏡用レンズの表面に傷があったり、内部に気泡や異物がある場合には、視界が遮られるためレンズとして使用することができない。したがって、レンズの表面や内部にこれらの欠陥が生じているか否かを検査することは重要である。」 1c)「【0069】(第2の実施形態)次に、本発明を適用した第2実施形態の光学検査装置について説明する。図21は、第2の実施形態の光学検査装置の平面図である。また、図22は、図21に示す光学検査装置の断面図である。これらの図に示す光学検査装置200は、眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査するものであり、所定波長を含む光を発する16個のLED203a?203qと、これらのLEDから発せられた光を集光して眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射するための光ガイド部204とを含んで構成されている。 【0070】眼鏡用レンズ201は、上述した第1の実施形態において被検査体として用いられた眼鏡用レンズ1と同様に、ガラスやプラスチックを材料とするレンズであり、その表面には、レーザ処理等により度数を示す刻印コードが形成されている。 【0071】LED203a?203qは、図21および図22に示すように、眼鏡用レンズ201の周囲に配置されており、その中の2個ずつ(例えばLED203aとLED203b)が対となってこの空間を挟んで対向配置されている。これらのLED203a?203qから発せられる光は、光ガイド部204に入射される。 【0072】光ガイド部204は、LED203a?203qから発せられた光を集光して眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射するためのものであり、上述した第1の実施形態における光ガイド部4と同様の構造を有している。すなわち、図21および図22に示すように、光ガイド部204は、LED203a?203qを内包して、眼鏡用レンズ201の側面を包囲するように形成されている。また、光ガイド部204は、互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211を有しており、眼鏡用レンズ201に近づくにしたがって、この向かい合った2つの集光部211を接近させることにより、LED203a?203qから照射された光を集光して光出射面212から眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射する。また、光出射面212の幅は、眼鏡用レンズ201の厚さである側面の幅より狭く設定されているため、眼鏡用レンズ201の表面に沿って漏れる光をなくすことができ、眼鏡用レンズ201の表面に付着したほこり等によって光が散乱されて眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態が検査しにくくなることを防止することができる。 【0073】図23は、眼鏡用レンズ201の内部に入射された光の進行状態を示す図である。同図に示すように、眼鏡用レンズ201の内部には、眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で光が入射される。この光は、眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行する。 【0074】本実施形態の光学検査装置はこのような構造を有しており、次に、この光学検査装置を用いて眼鏡用レンズ201の表面および内部の状態を検査する場合の概略を説明する。図24は、眼鏡用レンズ201の内部における光の反射の状態を示す図である。上述したように、眼鏡用レンズ201の内部に入射された光は、眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行していく。しかし、図24(a)に示すように眼鏡用レンズ201の表面に刻印コード213や傷214があったり、図24(b)に示すように気泡215や異物216がある場合には、これらの部分に達した光が散乱される。このため、刻印コード213の内容や傷214等の形状を目視によって明確に確認することができる。」 1d)「【0076】なお、16個のLED203a?203qを同時に発光させるようにしたり、・・・・・・してもよい。」 1e)「【0081】また、上述した第2の実施形態では、眼鏡用レンズ201を被検査体としたが、眼鏡用レンズ201以外の非直線状の外縁形状を有する他の透明部材や直線状の外縁形状を有する透明部材(例えばLCDに使用されるガラス基板)を被検査体として、表面や内部の状態を検査するようにしてもよい。」 1f)第2の実施形態の光学検査装置の平面図及び断面図である図21及び図22には,光ガイド部204,光ガイド部204を構成する反射面を有する集光部211及び光出射面212,LED203a?203q,並びに,眼鏡用レンズ201の形状及び互いの配置関係が示されており,図21及び図22から,光ガイド部204が中央に眼鏡用レンズ201が位置する空間を有し,全体として環状の形態をなしていて,光ガイド部204を構成する互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211に挟まれた空間が全体として環状の空間になっていること,並びに,該環状の空間にLED203a?203qが眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置されていることが示されている。 また,図22には,光ガイド部204中央の空間中に眼鏡用レンズ201が位置している様子,該空間と2つの集光部211に挟まれた空間とが連続していることが示されている。 1g)図24(a)には,刻印コード213,傷214で散乱した光が眼鏡用レンズ201の外部に出ていっている様子が示されている。また,図24(b)には,眼鏡用レンズ201の内部に気泡215及び異物216が存在し,該気泡215及び異物216で光が散乱することにより,眼鏡用レンズ201の表面に向かう光が生じている様子が示されている。 特に,上記摘記事項1c),1f)及び1g)によると,引用刊行物1には,次の方法の発明(以下,「引用発明1」という。)及び装置の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 (引用発明1) 「眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査する方法であって, 前記眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置された16個のLED203a?203qから発せられた光を光ガイド部204で集光して,前記眼鏡用レンズ201の側面に入射させ,前記眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で入射された光を,前記眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行させ,前記眼鏡用レンズ201の表面に刻印コード213や傷214があったり,内部に気泡215や異物216がある場合に,これらの部分に達した光が散乱されるため,刻印コード213や傷214等の形状を前記眼鏡用レンズ201の表面側からの観察によって確認することができる方法。」 (引用発明2) 「眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査する光学検査装置であって 前記眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置された16個のLED203a?203qと, その中央に前記眼鏡用レンズ201が位置する空間を有し,全体として環状の形態をなしていて,前記眼鏡用レンズ201の側面を包囲するように形成され,前記眼鏡用レンズ201に近づくにしたがって接近している互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211を有し,該2つの集光部211に挟まれた空間が全体として環状の空間になっていて,該空間に前記LED203a?203qが配置され,前記LED203a?203qから発せられた光を集光して光出射面212から前記眼鏡用レンズ201の側面に入射させる光ガイド部204, を備える光学検査装置。」 3 本願発明1について (1)対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 ア 引用発明1の(a)「眼鏡用レンズ201」と,本願発明1の(a')「眼用レンズ」とは,(a'')「眼に用いるレンズ」である点で共通する。また,引用発明1の(b)「レンズ」の「側面」は,本願発明1の(b')「レンズ」の「周囲縁部」に相当し,引用発明1の「眼鏡用レンズ201」が「360°」の「側面」を有するものであることは明らかであるから,引用発明1の(c)「眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査する方法」と,本願発明1の(c')「360°周囲縁部を有する眼用レンズを検査する方法」とは,(c'')「360°周囲縁部を有する眼に用いるレンズを検査する方法」である点で共通する。 イ 引用発明1において,(d)「前記眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で入射された光」が「前記眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行」することと,本願発明1において,(d')「構造光」が「レンズ内において内部反射する」ことは,物理現象として等価なものである。 そして,引用発明1において,「眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて」「16個のLED203a?203q」が「配置され」,該LED「から発せられた光を光ガイド部204で集光して,前記眼鏡用レンズ201の側面に入射させ」たことは,眼鏡用レンズ201の360°の側面全体に光を方向付けることに他ならない。 してみると,引用発明1において,(e)「前記眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置された16個のLED203a?203qから発せられた光を光ガイド部204で集光して,前記眼鏡用レンズ201の側面に入射させ,前記眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で入射された光を,前記眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行させ」たことは,本願発明1の(e')「構造光が該レンズの周囲縁部において該レンズに入り、そして該レンズ内において内部反射するように該構造光をレンズの360°周囲縁部全体に方向付ける工程」に相当するものである。 ウ 引用発明1の(f)「刻印コード213」,「傷214」,「気泡215」及び「異物216」は,本願発明1の(f')「マーキング」に相当する。 そして,引用発明1は,「刻印コード213」,「傷214」,「気泡215」や「異物216」の「部分に達した光が散乱されるため,刻印コード213や傷214等の形状を前記眼鏡用レンズ201の表面側からの観察によって確認することができる」ものであり,更に,引用刊行物1の図24(a)には,刻印コード213,傷214で散乱した光が眼鏡用レンズ201の外部に出ていっている様子が,そして,図24(b)には,気泡215,異物216で光が散乱することにより,眼鏡用レンズ201の表面に向かう光が生じている様子が示されていることから(上記摘記事項1g)参照。),引用発明1において,眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行してきて刻印コード213や傷214等の部分に達して散乱された光が,眼鏡用レンズ201の外部に出ていっていることは明らかである。 してみると,引用発明1の(g)「これらの部分に達した光が散乱されるため,刻印コード213や傷214等の形状を前記眼鏡用レンズ201の表面側からの観察によって確認することができる」ことと,本願発明1の(g')「ここで内部反射した光が、該レンズ上のマーキングに当たる際に分散し、これにより、該内部光反射に起因して、該レンズの無傷の領域が暗くなり、そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して、該レンズ上の1つ以上のマーキングが明るくなる」こととは,(g'')「ここで内部反射した光が、該レンズ上のマーキングに当たる際に分散し,これにより,該内部光反射に起因して,そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して,該レンズ上の1つ以上のマーキングが識別される」ことである点で共通する。 したがって,本願発明1と引用発明1とは, <一致点1> 「360°周囲縁部を有する眼に用いるレンズを検査する方法であって,該方法は,構造光が該レンズの周囲縁部において該レンズに入り,そして該レンズ内において内部反射するように該構造光をレンズの360°周囲縁部全体に方向付ける工程を包含し,ここで内部反射した光が,該レンズ上のマーキングに当たる際に分散し,これにより,該内部光反射に起因して,そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して,該レンズ上の1つ以上のマーキングが識別される方法。」 である点で一致し,次の相違点1及び2で相違する。 <相違点1> 眼に用いるレンズが,本願発明1は「眼用レンズ」であるのに対し,引用発明1は「眼鏡用レンズ」である点。 <相違点2> 本願発明1は,内部光反射に起因して,該レンズの無傷の領域が暗くなり,そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して,該レンズ上の1つ以上のマーキングが明るくなるものであるのに対し,引用発明1は,眼鏡用レンズ201の刻印コード213や傷214等の無い領域と,有る領域がどのように観察されるものであるのか明確でない点。 (2)判断 上記相違点について検討する。 <相違点1について> 引用刊行物1には,「本発明は、レンズ等の良否を検査する光学検査方式に関する。」(上記摘記事項1b)参照。),「また、上述した第2の実施形態では、眼鏡用レンズ201を被検査体としたが、眼鏡用レンズ201以外の非直線状の外縁形状を有する他の透明部材や直線状の外縁形状を有する透明部材(例えばLCDに使用されるガラス基板)を被検査体として、表面や内部の状態を検査するようにしてもよい。」(上記摘記事項1e)参照。)と,被検査体は眼鏡用レンズ201に限らないことが記載されている。 そして,周知の眼用レンズも眼鏡用レンズと同様に,非直線状の外縁形状を有する透明なレンズである。 よって,引用発明1において,被検査体を非直線状の外縁形状を有する透明なレンズとしての眼鏡用レンズに代えて周知の眼用レンズとすることは,当業者が容易になし得た事項である。 <相違点2について> 上記「3 (1)ウ」で述べたとおり,引用発明1において,眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行してきて刻印コード213や傷214等の部分に達して散乱された光が,眼鏡用レンズ201の外部に出ていっていることは明らかである。 一方,眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で入射され,眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行している状態の光について検討するに,上記摘記事項1c)には,「図23は、眼鏡用レンズ201の内部に入射された光の進行状態を示す図である。」と記載され,その光の進行状態を示す図23には,光は眼鏡用レンズ201の表面,即ち,眼鏡用レンズ201と外部媒質との境界面において反射をしている様子が示されているが,当該反射は,光学の技術常識からみて,光が屈折率が相対的に大きい眼鏡用レンズ201から相対的に小さい外部媒質に所定以上の大きな入射角をもって入射され,光が全部反射される「全反射」であることが明らかである。 そうすると,眼鏡用レンズ201に該表面に対して平行に近い角度で入射された光は,眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行している状態においては眼鏡用レンズ201の外部に出ていくことはなく,刻印コード213や傷214等の部分に達して散乱されて初めて眼鏡用レンズ201の外部に出ていくものであるから,引用発明1においても,刻印コード213や傷214等が無い領域が暗く,刻印コード213や傷214等が明るく観察されることは明らかであり,相違点2は実質的な相違点ではない。 そして,本願発明1の作用効果も,引用発明1及び上記周知の技術事項から当業者であれば予想できる範囲のものであり,格別顕著なものであるとはいえない。 したがって,本願発明1は,引用刊行物1に記載された発明及び上記周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 本願発明2について (1)対比 本願発明2と引用発明2とを対比する。 ア 引用発明2の(h)「眼鏡用レンズ201」と,本願発明2の(h')「眼用レンズ」とは,(h'')「眼に用いるレンズ」である点で共通し,引用発明2の(i)「眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査する光学検査装置」と,本願発明2の(i')「眼用レンズを検査するためのアセンブリ」とは,(i'')「眼に用いるレンズを検査するためのアセンブリ」である点で共通する。 イ 引用発明2の(j)「前記眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置された16個のLED203a?203q」は,本願発明2の(j')「a)光源」に相当する。 ウ 引用発明2の「その中央に前記眼鏡用レンズ201が位置する空間を有し,全体として環状の形態をなしていて,前記眼鏡用レンズ201の側面を包囲するように形成され,前記眼鏡用レンズ201に近づくにしたがって接近している互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211を有し,該2つの集光部211に挟まれた空間が全体として環状の空間になっていて,該空間に前記LED203a?203qが配置され,前記LED203a?203qから発せられた光を集光して光出射面212から前記眼鏡用レンズ201の側面に入射させる光ガイド部204」と,本願発明2の「b)開口中心部を有する環状光構造化開口部であって、そして該光源から光を構造化しかつ該構造光を該開口中心部へと半径方向内側に放射するように構成されている、環状光構造化開口部」とを比較する。 まず,本願発明2の「開口中心部」は「レンズ」が「配置」される部分であるから,引用発明2の(k)「光ガイド部204」「中央」の「眼鏡用レンズ201が位置する空間」は,本願発明の上記(k')「開口中心部」に相当するものである。 また,引用発明2が,「LED203a?203q」が「眼鏡用レンズ201の側面の全周囲に渡って該側面に向けて配置され」,「光ガイド部204」「中央」の「空間」に「眼鏡用レンズ201が位置する」ものであることを考慮すると,「前記眼鏡用レンズ201に近づくにしたがって接近している互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211」で「LED203a?203qから発せられた光を集光して光出射面212から前記眼鏡用レンズ201の側面に入射」する光が,「光ガイド部204」の半径方向内側に向かっていることは明らかであるから,(l)当該光は,本願発明2の(l')「構造光」に相当し,引用発明2の(m)「該2つの集光部211に挟まれた」「全体として環状の空間」は,本願発明2の(m')「該光源から光を構造化しかつ該構造光を該開口部中心部へと半径方向内側に放射するように構成されている、環状光構造化開口部」に相当するものである。 エ 引用刊行物1の図22には,光ガイド部204中央の空間中に眼鏡用レンズ201が位置している様子,該空間と2つの集光部211に挟まれた空間とが連続していることが示されており(上記摘記事項1f)参照。),上記(k)(k')及び(l)(l')の相当関係も考慮すると,本願発明2と引用発明2は,「光構造化開口部に隣接する開口中心部中にレンズを配置し,それにより構造光をレンズに当てる」点で共通する。 したがって,本願発明2と引用発明2とは, <一致点2> 「眼に用いるレンズを検査するためのアセンブリであって,該アセンブリは,以下: a)光源 b)開口中心部を有する環状光構造化開口部であって,そして該光源から光を構造化しかつ該構造光を該開口中心部へと半径方向内側に放射するように構成されている,環状光構造化開口部, を備え, c)前記光構造化開口部に隣接する前記開口中心部中に前記レンズを配置し,それにより前記構造光を前記レンズに当てる, アセンブリ。」 である点で一致し,次の相違点3及び4で相違する。 <相違点3> 眼に用いるレンズが,本願発明2は「眼用レンズ」であるのに対し,引用発明2は「眼鏡用レンズ」である点。 <相違点4> 本願発明2は,開口中心部中にレンズを取り外し可能に係合および配置するレンズホルダーを備えるのに対し,引用発明2は,光ガイド部204中央の空間に,どのようにレンズを設置しているのか不明である点。 (2)判断 上記相違点3及び4について検討する。 <相違点3について> 相違点3は上記相違点1と同じであり,上記「3 (2)<相違点1について>」で検討したとおりである。 <相違点4について> 被検査体を検査部に設置するに際し,被検査体を取り外し可能に係合及び配置するホルダーを利用することは周知技術であり,引用発明2において,該周知技術を採用して相違点4における本願発明2の構成とすることは,当業者が適宜なし得た事項に過ぎない。 そして,本願発明2の作用効果も,引用発明2及び上記周知技術から当業者であれば予想できる範囲のものであり,格別顕著なものであるとはいえない。 したがって,本願発明2は,引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 請求人の主張について 1 請求人の主張 請求人は,審判請求書の請求の理由において, 「原査定において依拠されている文献1の0075段落には、1セットのLEDから放出された光の入射が、空間側端部(212)に向かうレンズと透明板との間に形成された空間において行われることが記載されています。0076段落では、LEDの反対側の配置では、レンズと透明板202との間に形成された空間の周りで行われることが記載されています。従いまして、LEDの配置は、図21において実証されるようにレンズ201の周囲に存在しており、これが、レンズの内部ではなくレンズの縁に光を指向させています(0072段落)。さらに、0073段落において記載されているように、光は、レンズ201の前面にある傷等によって散乱されています。 しかし、図23および24は、入射光が、レンズ201の内部で反射することを示しています(0073段落)。ここでは、光は、眼鏡用レンズ201の表面に刻印コード216や傷217がある場合にはこれらの部分に達した光が散乱されると記載されています(0073段落)。従いまして、引用文献1は、『内部反射した光が、該レンズ上のマーキングに当たる際に分散し、これにより、該内部光反射に起因して、該レンズの無傷の領域が暗くなり、そして該1つ以上のマーキングで該内部反射した光が散乱することおよび該レンズから出ることに起因して、該レンズ上の1つ以上のマーキングが明るくなる』という特徴については何ら起債(当審注:「起債」は「記載」の誤記と解される。)も示唆もしていないことは明らかです。 このように、図21?24に記載された構成をとっても本願発明の効果を達成することはできません。」 と主張しているので,この点について検討する。 2 請求人の主張の検討 請求人が審判請求の理由で指摘した段落【0075】及び【0076】には, 「1組のLEDによって発せられた光は、光ガイド部204の集光部211によって集光され、光出射面212から眼鏡用レンズ1と透明部材2との間に形成された空間に入射される。」(【0075】,下線は,当審において付した。以下,同様。)」 「・・・上述した第1の実施形態で示したように、眼鏡用レンズ1と透明部材2との間に形成された空間の周囲に対向配置されて対をなす8組のLED203a?203qの中から隣接する2組のLEDを巡回的に選択して発光させるための切り替え動作を行うようにしてもよい。」(【0076】) と記載されており,段落【0075】及び【0076】には,「眼鏡用レンズ1と透明部材2との間に形成された空間」の周囲にLEDを配置するとともに,該空間にLEDから発せられ光ガイド部204で集光した光を入射させる旨の記載がある。 【0075】及び【0076】は,段落【0069】?【0078】に記載された第2の実施形態に係る記載の一部であることから,第2の実施形態における,眼鏡用レンズへの光の入射に関する記載事項を段落【0069】から順に見てみると, 「【0069】(第2の実施形態)・・・・・・図21は、第2の実施形態の光学検査装置の平面図である。また、図22は、図21に示す光学検査装置の断面図である。これらの図に示す光学検査装置200は、眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態を検査するものであり、所定波長を含む光を発する16個のLED203a?203qと、これらのLEDから発せられた光を集光して眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射するための光ガイド部204とを含んで構成されている。 ・・・・・・ 【0071】LED203a?203qは、図21および図22に示すように、眼鏡用レンズ201の周囲に配置されており、その中の2個ずつ(例えばLED203aとLED203b)が対となってこの空間を挟んで対向配置されている。これらのLED203a?203qから発せられる光は、光ガイド部204に入射される。 【0072】光ガイド部204は、LED203a?203qから発せられた光を集光して眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射するためのものであり、上述した第1の実施形態における光ガイド部4と同様の構造を有している。すなわち、図21および図22に示すように、光ガイド部204は、LED203a?203qを内包して、眼鏡用レンズ201の側面を包囲するように形成されている。また、光ガイド部204は、互いに向かい合った反射面を有する2つの集光部211を有しており、眼鏡用レンズ201に近づくにしたがって、この向かい合った2つの集光部211を接近させることにより、LED203a?203qから照射された光を集光して光出射面212から眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射する。また、光出射面212の幅は、眼鏡用レンズ201の厚さである側面の幅より狭く設定されているため、眼鏡用レンズ201の表面に沿って漏れる光をなくすことができ、眼鏡用レンズ201の表面に付着したほこり等によって光が散乱されて眼鏡用レンズ201の表面や内部の状態が検査しにくくなることを防止することができる。」 「【0073】図23は、眼鏡用レンズ201の内部に入射された光の進行状態を示す図である。同図に示すように、眼鏡用レンズ201の内部には、眼鏡用レンズ201の表面に対して平行に近い角度で光が入射される。この光は、眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行する。 【0074】本実施形態の光学検査装置はこのような構造を有しており、次に、この光学検査装置を用いて眼鏡用レンズ201の表面および内部の状態を検査する場合の概略を説明する。図24は、眼鏡用レンズ201の内部における光の反射の状態を示す図である。上述したように、眼鏡用レンズ201の内部に入射された光は、眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行していく。しかし、図24(a)に示すように眼鏡用レンズ201の表面に刻印コード213や傷214があったり、図24(b)に示すように気泡215や異物216がある場合には、これらの部分に達した光が散乱される。このため、刻印コード213の内容や傷214等の形状を目視によって明確に確認することができる。」 と記載されている。 これらの記載からみて,段落【0069】?【0074】には,LED203a?203qから発せられ光ガイド部204で集光した光を,眼鏡用レンズ201の側面に向けて入射すること,該入射された光は,刻印コード213や傷214等の部分に達する迄は,眼鏡用レンズ201の表面で反射を繰り返しながら内部を進行していくものであることが記載されているが,「透明部材」を設けることや,眼鏡用レンズと該透明部材との間に形成された空間の周囲にLEDを配置するとともに,該空間にLEDから発せられ光ガイド部で集光した光を入射させることは全く記載されていないし,示唆もされていない。また,このようなことは,段落【0077】?【0078】,並びに,第2の実施形態に係る図面である図21?24にも記載も示唆もされていないことであり,上記段落【0075】及び【0076】の記載内容は,他の第2の実施形態に係る記載内容と明らかに技術的前提が異なるものである。 ところで,段落【0075】及び【0076】では「眼鏡用レンズ」及び「透明部材」の符号がそれぞれ「1」及び「2」であるのに対し,段落【0069】?【0074】では「眼鏡用レンズ」の符号は「201」で統一されていて(これは第2の実施形態の説明図である図21?24中の符号とも一致する。),両者で「眼鏡用レンズ」の符号が相違しているが,第1の実施形態においては「眼鏡用レンズ」の符号は「1」となっていて,第1の実施形態は,「透明部材2」を設け,「眼鏡用レンズ1」と該「透明部材2」との間に形成された空間の周囲にLEDを配置するとともに,該空間にLEDから発せられ光ガイド部で集光した光を入射させるものであり(段落【0019】?【0023】参照。),これは上記段落【0075】及び【0076】の記載内容と技術的に同じものである。 そうすると,上記段落【0075】及び【0076】の記載は,第2の実施形態にその技術的前提が異なる第1の実施形態の構成を組み合わせて記載したものと解するのが相当であり,その記載内容は,そのまま第2の実施形態の技術的事項であるとすることはできないものである。 そして,引用刊行物1の上記摘記事項1a)?1g)から,上記「第3 2」に記載したとおりの引用発明1及び2が認定でき,上記「第3 3(2)」及び「第3 4(2)」に記載したとおり,本願発明1及び2は,引用刊行物1に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。 3 むすび したがって,上記請求人の主張は理由がなく,採用することができないものである。 第5 むすび 以上のとおり,本願の請求項1及び16に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって,請求項2?15及び17?27に係る発明に言及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-08-21 |
結審通知日 | 2008-08-22 |
審決日 | 2008-09-16 |
出願番号 | 特願2003-549864(P2003-549864) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01M)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 田邉 英治 |
特許庁審判長 |
後藤 時男 |
特許庁審判官 |
門田 宏 信田 昌男 |
発明の名称 | 眼用物品検査システム |
代理人 | 安村 高明 |
代理人 | 森下 夏樹 |
代理人 | 山本 秀策 |