ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C01B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01B |
---|---|
管理番号 | 1205743 |
審判番号 | 不服2005-19678 |
総通号数 | 120 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-12-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-12 |
確定日 | 2009-10-19 |
事件の表示 | 特願2000-307353「オゾン及びコロナ発生器」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 8月14日出願公開、特開2001-220112〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成12年10月6日(優先権主張平成11年11月29日)の出願であって、平成16年2月20日付けで拒絶理由の起案がなされ、同年4月30日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、同年9月27日付けで拒絶理由の起案がなされ、同年12月2日に意見書及び明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、平成17年9月6日付けで拒絶査定の起案がなされ、同年10月12日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日に明細書の記載に係る手続補正書の提出がなされ、平成20年12月9日付けで特許法第164条第3項に基づく報告を引用した審尋の起案がなされ、回答書の提出がなされなかったたものである。 II.平成17年10月12日付けの手続補正についての補正却下の決定 II-1.補正却下の決定の結論 平成17年10月12日付けの手続補正を却下する。 II-2.理由 平成17年10月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に関し、補正前の平成16年12月2日付けで補正された、 「【請求項1】 収納容器外に設けた完全に絶縁された電極間に高電圧を印加して、電極の一方を収納容器の短い内法寸法の二倍以上にし、線状、帯状または棒状にして絶縁体の外皮で覆い絶縁芯線を形成し、もう一方の電極をそれぞれの形状にあわせて裸線にして、前記絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化してオゾンを発生させるようにしたことを特徴とするオゾン発生器。」 を、 「【請求項1】 完全に絶縁された絶縁芯線を収納容器外に設けて一方の電極とし、セラミックや耐熱シリコーン樹脂の薄い絶縁体の外皮で覆った絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、容器内に設けるとともに、該裸線をもう一方の電極とした電極対を形成し、 絶縁芯線の非印加側の端部を外皮を溶融して完全に絶縁強化し、半永久的な長期の劣化に耐えるようにし、該電極対間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるようにしたことを特徴としたオゾン発生器。」 と補正する内容を含むものである。 ここで、本件補正後の請求項1の「絶縁芯線の非印加側の端部を外皮を溶融して完全に絶縁強化し」なる特定事項は、補正前の請求項1の特定事項である「絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化」の手段として「外皮を溶融」することをさらに特定するものといえる。そこで、「外皮を溶融」することにより「絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化」することが、願書に最初に添付された明細書・図面(以下、「当初明細書等」という。)から導き出せる事項であるか否かについて検討する。 当初明細書等には、絶縁芯線の製造方法に関し、「図4a,bは芯線12を絶縁物5にて被服(当審注:「被覆」の誤記と認める。)している。・・・・・・製造方法は電線や光フアイバーの製造技術で簡単にでき,コストパフオ-マンス抜群である。」(【0008】)と記載されている。 この記載における「電線や光フアイバーの製造技術で簡単にでき」とは、絶縁芯線自体の製造において被覆をすること、すなわち、外皮によって芯線を覆うことを指していると認められるものの、「絶縁芯線の非印加側の端部」の処理に関することを指しているとは認められない。 また、当初明細書等のどこにも「絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化」に関する手段や、ましてや「外皮を溶融」する処理に関する記載は一切見当たらない。 そうすると、「外皮を溶融」することにより「絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化」すること、すなわち、上記特定事項が、当初明細書等のすべての記載を総合することによって導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものでないとはいえない。 II-3.補正却下についてのむすび したがって、本件補正は、平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明 上記のとおり平成17年10月12日付けの手続補正は却下されたから、本願の請求項1?16に係る発明は平成16年12月2日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1?16に係る発明であるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 収納容器外に設けた完全に絶縁された電極間に高電圧を印加して、電極の一方を収納容器の短い内法寸法の二倍以上にし、線状、帯状または棒状にして絶縁体の外皮で覆い絶縁芯線を形成し、もう一方の電極をそれぞれの形状にあわせて裸線にして、前記絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化してオゾンを発生させるようにしたことを特徴とするオゾン発生器。」 IV.引用文献に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開平10-120404号公報には以下の記載がある。 (3-1)「【請求項1】一方の電極の導電体心線の外周に合成樹脂製絶縁体被覆層を被覆し、さらに前記合成樹脂製絶縁体被覆層の外周面に他方の電極の導電線を螺旋状に巻回して、両電極間の全長部近隣において放電が生じるようにしたオゾン発生エレメントを備えてなることを特徴とする簡易オゾン発生装置。」(特許請求の範囲の請求項1) (3-2)「【請求項6】合成樹脂絶縁体被覆層の合成樹脂が、ポリテトラフルオロエチレン樹脂であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の簡易オゾン発生装置。」(特許請求の範囲の請求項6) (3-3)「【発明の実施の形態】以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。・・・・・・一方の電極の導電体心線の外周に合成樹脂製絶縁体被覆層を被覆し、さらに前記合成樹脂製絶縁体被覆層の外周面に他方の電極の導電線を螺旋状に巻回して、両電極間の全長部近隣において放電が生じるようにしたオゾン発生エレメントに対して高圧のパルス電圧が加えられ、空気中の酸素がオゾン化される。 ・・・・・・ なお、オゾン発生エレメント1は、下記構成のもので、それを容器7の下端角部から対角方向の上端角部へ向けて容器空間内に配設されている。」(【0004】) (3-4)「オゾン発生エレメント1としては、・・・・・・2本の導電体心線(銅線)12,12‘を合成樹脂製絶縁体被覆層(ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)樹脂)13で被覆した被覆線を用い・・・・・・それら2本の被覆線の端部は絶縁性保護キャップ16及び17で被包し、広げて相互に離隔した。」(【0005】) (3-5)「オゾン発生エレメント1に対して、高電圧給電コネクタ11を介して、2本の被覆線間に正負のパルス状の高電圧5000Vを印加した。」(【0006】) (3-6)「本発明のオゾン発生エレメントは・・・・・・マットレス、寝具等の中にジクザグに屈曲させて埋設して使用することもできる。」(【0008】) (3-7)「本発明実施例の簡易なオゾン発生装置の構成説明図」とされる図1において、「直方体の厚紙製密閉容器」である部材7の外側に、「高電圧パルス給電コネクタ」である部材11が設けられていることが見て取れる。 V.対比・判断 上記(3-1)の「導電体心線の外周に合成樹脂製絶縁体被覆層を被覆」することは、導電体心線は線状であって、絶縁体で被覆、すなわち、絶縁体の外皮で覆った被覆線を形成することといえ、部材番号11の名称は「高電圧給電コネクタ」と「高電圧パルス給電コネクタ」と2種記載されているが、「高電圧パルス給電コネクタ」に以下統一する。 そこで、上記(3-1)、(3-3)?(3-5)の記載事項、(3-7)の視認事項を本願発明1の記載ぶりに則して整理すると、引用文献3には、 「直方体の厚紙製密閉容器の外側に設けた高電圧パルス給電コネクタに高電圧を印加して、電極の一方を線状にして絶縁体の外皮で覆った被覆線を形成し、もう一方の電極を被覆線にして、前記絶縁体の外皮で覆った被覆線に螺旋状に巻回して、これら2本の被覆線の端部を絶縁性保護キャップで被包した簡易オゾン発生装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 本願発明1と引用発明とを対比する。 (あ)引用発明の「直方体の厚紙製密閉容器の外側」、「簡易オゾン発生装置」は、それぞれ、本願発明1の「収納容器外」、「オゾン発生器」に相当する。 (い)本願明細書の【0005】に記載の「高圧電源3にて発生した、直流単独(・・・・・・)又は・・・・・・パルスや高周波電圧(・・・・・・)を重畳したり、交流単独の電圧をオゾン発生部2の端子に印加」するとの記載から、本願発明1の「収納容器外に設けた完全に絶縁された電極間に高電圧を印加」することは、「収納容器外に設けた完全に絶縁された端子に高電圧パルスを印加」することを含み、本願発明1はこの「端子」に「絶縁芯線」と「裸線」が接続されているといえる。一方、上記(3-5)の記載から引用発明の2本の被覆線はコネクタに接続されており、また、「端子」とは「コネクタ」とも言う。そうであれば、上記(あ)の検討結果を併せてみると、引用発明の「直方体の厚紙製密閉容器の外側に設けた高電圧パルス給電コネクタに高電圧を印加」は「収納容器外に設けた完全に絶縁された電極間に高電圧を印加」することに他ならないし、本願発明1の「電極」は「絶縁芯線」と「裸線」であり、この「電極」に対応するものが引用発明の「2本の被覆線」とみることができる。 (う)引用発明の「絶縁体の外皮で覆った被覆線」の「被覆線」は、本願発明1の「絶縁芯線」であることは明らかである。 (え)引用発明の「被覆線に螺旋状に巻回」とは、上記(う)の検討結果をあわせてみると「絶縁芯線に沿わせて螺旋に密着配置」されていることに他ならず、引用発明の「もう一方の電極」となる「被覆線」は「螺旋状に巻回」する形状に「あわせた形状」といえる。 (お)引用発明の「被覆線の端部を絶縁性保護キャップで被包」することは、被覆線の端部を「完全に絶縁強化」することに他ならないし、この絶縁強化した端部は「非印加側」であることは明らかである。 (か)引用発明は「簡易オゾン発生装置」に係るものであるから、2つの被覆線によってオゾンを発生させるようにしたことは明らかである。 そうすると、両者は、共に、 「収納容器外に設けた完全に絶縁された電極間に高電圧を印加して、電極の一方を線状にして絶縁体の外皮で覆い絶縁芯線を形成し、もう一方の電極を螺旋の形状にあわせて線にして、前記絶縁芯線に沿わせて螺旋に密着配置し、絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化してオゾンを発生させるようにしたオゾン発生器。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点A:本願発明1では、「電極の一方を収納容器の短い内法寸法の二倍以上にし」ているのに対して、引用発明では、かかる事項を有していない点相違点B:もう一方の電極につき、本願発明1では、裸線にしているのに対して、引用発明では被覆線としている点 相違点C:非印加側の端部を完全に絶縁強化しているのは、本願発明1では、絶縁芯線のみのであるのに対して、引用発明では2本の被覆線の両方である点 これら相違点について検討する。 ・相違点Aについて 引用文献3には、上記(3-3)に、絶縁芯線に被覆線を螺旋状に巻回したオゾン発生エレメントに関し、「両電極間の全長部近隣において放電が生じる」ことや「容器7の下端角部から対角方向の上端角部へ向けて容器空間内に配設」することが、また、上記(3-6)に、「ジクザグに屈曲させて埋設して使用することもできる」ことがそれぞれ記載されている。 これらの記載から、オゾン発生エレメントの長さがオゾン発生量を決めることやこのエレメントの配置は適宜決め得ることを読みとることができる。 そうであれば、オゾン発生エレメント、すなわち、オゾン発生エレメントの長さを決める「電極の一方」(すなわち、「絶縁体の外皮で覆った被覆線」)の長さを、所望のオゾン発生量を得るための長さとし、この長さの電極を容器内に配置すべく「収納容器の短い内法寸法の二倍以上」とすることは、当業者であれば適宜なし得ることである。 ・相違点Bについて もう一方の電極が被覆線でなく、裸線であってもオゾンが発生することは技術常識であるから(例えば、原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1である特開平9-59004号公報、同引用文献2である実用新案登録公報第3051571号等を参照)、当業者であれば「もう一方の電極を裸線」とする程度のことは困難なくなしえたことである。 ・相違点Cについて 非印加側の端部を完全に絶縁強化する理由について、本願明細書には言及がされていないが、技術常識に照らし、2つの電極の短絡を防止するためと推認される。そうであれば、2つある電極の一方のみを完全に被覆すれば短絡が防止できることは自明であるから、絶縁芯線のみを完全に絶縁強化することは当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、本願発明1の奏する作用・効果も当業者であれば当然に予想できる程度のものである。 VI.なお、上記本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願補正後発明1」という。)についてみてみる。本願補正後発明1は、次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 完全に絶縁された絶縁芯線を収納容器外に設けて一方の電極とし、セラミックや耐熱シリコーン樹脂の薄い絶縁体の外皮で覆った絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、容器内に設けるとともに、該裸線をもう一方の電極とした電極対を形成し、 絶縁芯線の非印加側の端部を外皮を溶融して完全に絶縁強化し、半永久的な長期の劣化に耐えるようにし、該電極対間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるようにしたことを特徴としたオゾン発生器。」 本願補正後発明1は、その特定事項である「セラミックや耐熱シリコーン樹脂の薄い絶縁体の外皮で覆った絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、容器内に設けるとともに」がどのような事項を特定しているか不明であるから、特許法第36条第6項第2号の規定を満たしていないといえるが、この特定事項は、「裸線をセラミックや耐熱シリコーン樹脂の薄い絶縁体の外皮で覆った絶縁芯線に沿わせて平行、直角、螺旋、網状あるいはジグザグ状に密着配置し、容器内に設けるとともに」(下線は当審が付与した。)と解して検討する。 ここで、上記(3-1)の「導電体心線の外周に合成樹脂製絶縁体被覆層を被覆」することは、合成樹脂の絶縁体の外皮で覆った被覆線を形成することといえる。 そこで、上記(3-1)、(3-3)?(3-5)の記載事項、(3-7)の視認事項を本願補正後発明1の記載ぶりに則して整理すると、引用文献3には、 「直方体の厚紙製密閉容器の外側に設けた高電圧パルス給電コネクタを設け、このコネクタに2本の被覆線を接続し、他方の被覆線を合成樹脂の絶縁体の外皮で覆った一方の被覆線に螺旋状に巻回し、該容器内に設けるとともに、オゾン発生エレメントを形成し、 2本の被覆線の端部を絶縁性保護キャップで被包し、オゾン発生エレメントに高電圧を印加した簡易オゾン発生装置。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。 本願補正後発明1と引用発明1とを対比する。 (さ)引用発明1の「直方体の厚紙製密閉容器の外側」、「簡易オゾン発生装置」は、それぞれ、本願補正後発明1の「収納容器外」、「オゾン発生器」に相当する。 (し)引用発明1の「合成樹脂の絶縁体の外皮で覆った一方の被覆線」の「被覆線」は、本願補正後発明1の「絶縁芯線」であることは明らかである。そして、「合成樹脂の絶縁体の外皮で覆」うことは、「完全に絶縁され」ることに他ならない。 (す)上記(い)で検討したように、本願明細書の【0005】に記載の「高圧電源3にて発生した、直流単独(・・・・・・)又は・・・・・・パルスや高周波電圧(・・・・・・)を重畳したり、交流単独の電圧をオゾン発生部2の端子に印加」するとの記載から、本願補正後発明1の「収納容器外に設け」た電極は「コネクタ」とみることができる。そして、本願補正後発明1には特定されていないが、本願補正後発明1では高電圧を印加してコロナ放電を発生させるようにしているから(本願明細書の【0005】参照)、本願補正後発明1の「絶縁芯線」と「裸電線」はこの「端子」に接続されているといえる。そうであれば、上記(い)の検討結果を併せみると、引用発明1の「給電コネクタ」に接続される「2本の被覆線」はそれぞれ本願補正後発明1の「電極」とみることができ、「オゾン発生エレメント」は、本願補正後発明1の「電極対」に他ならない。 (せ)上記(え)において検討したように、引用発明1の「一方の被覆線に螺旋状に巻回」とは、上記(し)の検討結果をあわせてみれば「絶縁芯線に沿わせて螺旋に密着配置」されていることに他ならない。 (そ)上記(お)において検討したように、引用発明1の「被覆線の端部を絶縁性保護キャップで被包」することは、被覆線の端部を「完全に絶縁強化」することといえる。 (た)引用文献3には、「コロナ放電」について明言はないが、上記(3-3)に「放電が生じるようにしたオゾン発生エレメントを備えてなる」との記載があり、この放電は技術常識に照らし、コロナ放電とみることができる。 そうすると、両者は、共に、 「完全に絶縁された絶縁芯線を収納容器外に設けて一方の電極とし、線を絶縁体の外皮で覆った前記絶縁芯線に沿わせて螺旋に密着配置し、容器内に設けるとともに、該線をもう一方の電極とした電極対を形成し、 絶縁芯線の非印加側の端部を完全に絶縁強化し、該電極対間に高電圧を印加してコロナ放電を発生させるようにしたオゾン発生器。」である点で一致し、以下の点で相違する。 相違点D:線につき、本願補正後発明1では「裸線」であるのに対し、引用発明1では「被覆線」である点 相違点E:外皮につき、本願補正後発明1では「セラミックや耐熱シリコーン樹脂の薄い絶縁体」であるのに対し、引用発明1ではかかる特定事項を有してない点 相違点F:非印加側の端部を完全に絶縁強化しているのは、本願補正後発明1では、絶縁芯線のみのであるのに対して、引用発明1では2本の被覆線の両方である点 相違点G:端部の完全に絶縁強化につき、本願発明では「完全に溶融して」いるのに対し、引用発明1ではかかる特定事項を有していない点 相違点H:本願補正後発明1は相違点E及びFに係る特定事項を有することにより、「半永久的な長期の劣化に耐える」のに対し(審判請求書4頁の記載を参照)、引用発明1ではかかる事項について言及がない点 これら相違点について検討する。 ・相違点Dについて 上記相違点Bの検討のところで述べたように、裸線とする程度のことは困難なくなしえたことである。 ・相違点Eについて 引用文献3には、外皮に用いる合成樹脂としてポリテトラフルオロエチレン樹脂が例示されている(上記(3-2)及び(3-4)を参照)。一方、原査定において引用文献1として引用された特開平9-59004号公報の【0010】には、フッ素樹脂、シリコンゴムが耐熱性絶縁材として例示されているから、引用発明1において外皮に用いる合成樹脂としてシリコンゴムなどの耐熱性シリコーン樹脂を用いることは当業者であれば適宜なし得ることであって、その厚さも必要とする絶縁の程度によって適宜決定しうるものである。 ・相違点Fについて 上記相違点Cの検討のところで述べたように、絶縁芯線のみを完全に絶縁強化することは当業者であれば適宜なし得ることである。 ・相違点Gについて 電線の加工に当たり外皮を溶融することはごく普通に行われているから(例えば、特開平7-245176号公報、国際特許公開96/28089号)、かかる処理を端部の処理に用いることは、当業者であれば困難なくなし得ることである。 ・相違点Hについて この相違点Hは相違点E及びFに係る本願補正後発明1の特定事項を有することにより導き出されるものであるところ(審判請求書4頁の記載を参照)、上述のとおりこれら相違点E及びFに係る本願補正後発明1の特定事項をなすことは当業者であれば適宜なし得ることであるから、この相違点Hに係る本願補正後発明1の特定事項も当業者であれば適宜なし得ることである。 そして、本願補正後発明1の奏する作用・効果も当業者であれば当然に予想できる程度のものである。 VII.むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、本願の出願日前に頒布された引用文献1、2及び3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定によって特許を受けることができないものである。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2009-08-05 |
結審通知日 | 2009-08-11 |
審決日 | 2009-08-26 |
出願番号 | 特願2000-307353(P2000-307353) |
審決分類 |
P
1
8・
561-
Z
(C01B)
P 1 8・ 121- Z (C01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平塚 政宏、安齋 美佐子 |
特許庁審判長 |
松本 貢 |
特許庁審判官 |
五十棲 毅 木村 孔一 |
発明の名称 | オゾン及びコロナ発生器 |