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審決分類 |
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 H01B 審判 全部申し立て (特120条の4,3項)(平成8年1月1日以降) H01B 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01B 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 H01B 審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 H01B 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 H01B 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 H01B |
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管理番号 | 1396265 |
総通号数 | 16 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-02-28 |
確定日 | 2023-01-26 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6935465号発明「導電粒子、導電材料およびそれを用いた接続構造体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6935465号の明細書及び特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 特許第6935465号の請求項1~16に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6935465号の請求項1~16に係る特許についての出願は、2019年(令和元年)8月27日(パリ条約による優先権主張 2018年12月31日(以下、「本件特許出願の優先日」という。) 韓国(KR) 2019年2月22日 韓国(KR))に出願され、令和3年8月27日にその特許権の設定登録がされ、同年9月15日に特許掲載公報が発行された。 その特許についての特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和4年 2月28日:特許異議申立人 黒田 泰(以下、「申立人」という。)による請求項1~16に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 6月 1日付け:取消理由通知 同年 9月 1日:特許権者による意見書、訂正請求書の提出 同年10月27日:申立人による意見書の提出 第2 訂正の適否についての判断 1 訂正の内容 令和4年9月1日に提出された訂正請求書による訂正(以下、「本件訂正」といい、本件訂正の請求を「本件訂正請求」という。)の内容は、以下のとおりである(当審注:下線は訂正箇所を示すため当審が付与した。)。 (1)訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「第1の不連続点以後に 押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」とあるのを、「第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に前記絶縁コアが破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」に訂正する。 (2)訂正事項2-1 特許請求の範囲の請求項2に「前記区間bの以後の区間での変形率」、「前記区間bの以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間aと区間bの間区間の最大押込加工の弾性部割合」とあるのを、「前記区間(b)の以後の区間での変形率」「前記区間(b)の以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間(a)と区間(b)の間区間の最大押込加工の弾性部割」に訂正する。 (3)訂正事項2-2 特許請求の範囲の請求項2に「平均変形量c(すなわち、傾き)は -1≦c≦4であり」とあるのを、「平均変形量c(すなわち、傾き)は-0.5≦c≦3.0であり」に訂正する。 (4)訂正事項2-3 特許請求の範囲の請求項2に「弾性部割合よりも小さく請求項1に記載の導電粒子」とあるのを、「弾性部割合よりも小さい請求項1に記載の導電粒子」に訂正する。 (5)訂正事項3 特許請求の範囲の請求項3に「前記導電粒子の変形率が17.4~70%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものである」とあるのを、「前記導電粒子の変形率が30.0~65.0%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものである」に訂正する。 (6)訂正事項4 本件特許の願書に添付した明細書の【0040】に「図1」とあるのを、「図2」に訂正する。 (7)訂正事項5 本件特許の願書に添付した明細書の【0042】に「入るらない」とあるのを、「入る」に訂正する。 2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否 (1)訂正事項1について 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「押込加工の弾性部割合」について、「第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて」「一定に保たれる」こと、第2の不連続点以後に前記絶縁コアが破壊されて」「一定に保たれる」こと、及び、「前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」のが、「区間(a)」と「区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間」であることを限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項1は、本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「本件明細書等」という。)の【0041】、【0043】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (2)訂正事項2-1について 訂正事項2-1は、訂正前の請求項2の「区間a」及び「区間b」を、請求項1の「区間(a)」及び「区間(b)」に整合させるものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (3)訂正事項2-2 訂正事項2-2は、「平均変形量c(すなわち、傾き)」の範囲を「-1≦c≦4」から「-0.5≦c≦3.0」に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項2-2は、本件明細書等の【0048】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (4)訂正事項2-3 訂正事項2-3は、訂正前の「弾性部割合よりも小さく請求項1に記載の導電粒子」とあるのを、「弾性部割合よりも小さい請求項1に記載の導電粒子」とすることにより、日本語として正しい表現にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (5)訂正事項3 訂正事項3は、訂正前の「前記導電粒子の変形率」の範囲を「17.4~70%」から、「30.0~65.0%」の範囲に限定するものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 また、訂正事項3は、本件明細書等の【0044】に記載されているから、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (6)訂正事項4 訂正事項4は、【0040】に記載されている「導電粒子の変形率をx軸とし、前記式(1)で求められる押込加工の弾性部割合をy軸とする」「グラフ」が、図1ではなく図2であることから、訂正前の「図1」を「図2」と正しい表記にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (7)訂正事項5 訂正事項5は、訂正前の「入るらない」を「入る」とすることにより、日本語として正しい表現にするものであるから、特許法第120条の5第2項ただし書第2号に規定する誤記の訂正を目的とするものであって、本件明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3 まとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、明細書及び特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正明細書及び訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~16〕について訂正することを認める。 第3 本件発明 上記第2で検討したとおり、本件訂正は認められるから、本件特許の請求項1~16に係る発明(以下、「本件発明1~16」といい、まとめて「本件発明」ともいう。)は、訂正特許請求の範囲の請求項1~16に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ、 前記導電粒子は、絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含めて、 微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの、導電粒子の変形率をx軸とし、下記[1]として定められる 押込加工の弾性部割合をy軸とする場合にプロットしたグラフにおいて、 第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に前記絶縁コアが破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊されることを特徴とする導電粒子。 【数1】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、WtotalはWelasticとWplasutic(塑性部分の押込ワーク)の合計の押込ワークを、nITは押込ワークの弾性部分割合を意味する) 【請求項2】 前記区間(b)の以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は -0.5≦c≦3.0であり、前記区間(b)の以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間(a)と区間(b)の間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さい請求項1に記載の導電粒子。 【請求項3】 前記導電粒子の変形率が30.0~65.0%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものである請求項1に記載の導電粒子。 【請求項4】 前記絶縁性コアの表面は活性化された面である請求項1に記載の導電粒子。 【請求項5】 前記活性化された表面は、オゾン処理、電子線処理、プラズマ処理およびコロナ処理からなる群から選択される処理によって処理された表面である請求項4に記載の導電粒子。 【請求項6】 前記絶縁性コアは、前記活性化処理面に付着した触媒の下で、前記導電層がメッキされたものである請求項4に記載の導電粒子。 【請求項7】 前記絶縁性コアは樹脂微粒子またはハイブリッド粒子である請求項6に記載の導電粒子。 【請求項8】 前記樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系およびイミド系から選択されるモノマー、またはそれらの変性モノマー、またはモノマーの混合モノマーから提供されるものである請求項7に記載の導電粒子。 【請求項9】 前記ハイブリッド粒子は、有機コアと有機コアを取り囲む無機シェルとの構造を有する粒子、または無機コアと無機コアを取り囲む有機シェルとの構造を有する粒子である請求項7に記載の導電粒子。 【請求項10】 前記有機コアまたは有機シェルは、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系およびイミド系から選択されるモノマー、またはそれらの変性モノマー、またはモノマーの混合モノマーから提供されるものである請求項9に記載の導電粒子。 【請求項11】 前記無機コアまたは無機シェルは、Si、Ti、Al、Zr、BaおよびWから選択される金属の酸化物、窒化物または炭化物から提供されるものである請求項9に記載の導電粒子。 【請求項12】 前記導電層上に、絶縁層または絶縁粒子をさらに含む請求項1に記載の導電粒子。 【請求項13】 前記導電粒子の最表面に防錆処理を施したものである請求項1に記載の導電粒子。 【請求項14】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む異方性導電材料。 【請求項15】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む接続構造体。 【請求項16】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む電気電子部品。」 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 1 訂正前の請求項1~16に係る特許に対して、当審が令和4年6月1日に特許権者に通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 (1)取消理由1(実施可能要件) 本件特許の願書に添付した明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が請求項1~16に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものではないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (2)取消理由2(サポート要件) 請求項1~16に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 2 取消理由1(実施可能要件)について (1)本件訂正により訂正された明細書の発明の詳細な説明(以下、単に「発明の詳細な説明」という。)、及び、願書に添付した図面(以下、単に「図面」という。」には以下の記載がある(当審注:下線は当審が付与した。以下、同様である。)。 「【課題を解決するための手段】 ・・・ 【0013】 前記区間bの以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は-1≦c≦4であり、前記区間bの以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間aと区間bの間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さい。 ・・・ 【0027】 本発明の他の態様に係る異方性導電材料は、前記導電粒子を含む 電気・電子部品である。」 「【発明を実施するための形態】 ・・・ 【0034】 以下の明細書で説明される押込加工の弾性部割合は、導電粒子の変形率に応じた押込加工の弾性部割合値(nIT)は、以下のように定義する: 【0035】 【数2】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、Wplasticは塑性部分の押込ワークを意味し、Wtotalは、WelasticとWplasticの合計であり、nITは押込ワークの全体に対する弾性部分割合を意味する) 【0036】 図1は、押込加工の弾性部割合の概念を説明するグラフである。 押込加工の弾性部割合(nIT)は、微小圧縮試験機(MCT;Micro Compress Tester)を用いて測定することができる。印加荷重を変えて粒子の変形量を測定することにより、nIT値を得ることができる。このとき、変形量は圧子(indentor)の最大移動距離(hmax)を用いる。例えば、実施例3の場合、導電粒子を5mNで測定したとき、圧子の最大移動距離は1.397μmであり、このとき導電粒子の変形率は43.0%であり、Wtは2.593nJであり、Weは0.896nJであり、nITは34.6%である。したがって、測定率に応じたnITは測定される荷重を徐々に大きくすることにより、nIT値を得ることができる。 【0037】 前記nIT値は、微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)および一辺の長さが50mの平面圧子を用いて測定される。前記導電粒子の変形率に応じたnIT値の測定条件は、25℃における圧子の下降速度が0.33mN/秒、上昇速度が10秒で0.1mNである。このとき、粒子の変形量は圧子の最大移動距離(hmax)で測定される。 【0038】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。 【0039】 本発明の実施形態に係る導電粒子は、電極間に介在し、電極間を電気的に接続する導電粒子であり、少なくとも一方の電極の表面には酸化皮膜が設けられている。前記導電粒子は、絶縁性コアと、前記コア表面に設けられた導電層とを含む。 【0040】 図2は、本発明の一実施形態に係る導電粒子を、微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)を用いて25℃で圧縮した結果を示すグラフである。 このとき、導電粒子の変形率をx軸とし、前記式(1)で求められる押込加工の弾性部割合をy軸とする。 【0041】 これによれば、グラフは2つの不連続点、すなわち第1の不連続点および第2の不連続点を有し、各不連続点の後でnITが一定のままである2つの区間を有する。第1の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔aと呼び、第2の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔bと呼ぶ。第一不連続点は、導電粒子の導電層が破壊された支点であり、第二不連続点は、絶縁性コアの破壊された支点である。このとき、説明の都合上一定としているが、実際の実験では多少異なる場合がある。 【0042】 このとき、間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜の破断が生じる。すなわち、チップの電極および基板の電極と接触する導電粒子の導電層または突起を有する導電層は、導電層の破壊が生じる間隔aの後に酸化皮膜を突き抜けて入る。導電層が破壊する前に酸化皮膜が貫通していると、導電粒子の硬度が強すぎるため、導電粒子の変形が小さい状態で接続が行われ接続信頼性が弱くなり、通常、導電粒子の変形の60~80%の変形で電気的接続が行われるようにする電子製品の設計仕様に合わなくなる。 【0043】 したがって、導電粒子は、導電層が破壊された後、変形率の増加に応じて、押込加工の弾性部割合が大きくなる状態で、導電層または突起状の導電層が電極の酸化皮膜を貫通できる力を発現できるように設計する必要がある。【0044】 このとき、酸化皮膜が破断した時点における導電粒子の変形率は、17.4~70.0%、好ましくは24.6~67.1%、より好ましくは30.0~65.0%、さらに好ましくは50.0~60.3%である。 【0045】 本発明の実施形態に係る導電粒子を異方性導電材料の電気的接続材料として使用する場合には、異方性導電フィルムを接合しようとする電極間に位置させて、異方性導電フィルムの樹脂を加熱/加圧下で硬化させて上下の電極を導電粒子で接続する方法を使用する。 【0046】 異方性導電材料の樹脂が硬化することにより、内部の導電粒子が一緒に固定されて、電気的な接続状態がそのまま維持され、接続安定性が確保される。 【0047】 このとき、異方性導電フィルム樹脂の75~95%の硬化反応は加熱/加圧条件下で行われるが、残りの5~25%は加熱/加圧条件を解除した後に行われる。このように、加熱/加圧条件を解除した後の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きいと、まだ完全に硬化されていない異方性導電材料と上下電極間の間隔をボルリゲされる原因となって、これ以降の接続抵抗を大幅に増加する原因として作用する。 【0048】 したがって、本発明の実施形態に係る導電粒子は、区間bを超えるのひずみによる押込加工の弾性部割合(nIT)の増加が非常に制限的に行われるように設計される。すなわち、区間b以降の区間における変形率の変化に応じた押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち傾き)は、-1≦c≦4、好ましくは-0.5≦c≦3.0が好ましく、-0.3≦c≦2.5がより好ましく、-0.2≦c≦2.0がさらに好ましい。 また、区間b以降の区間では、圧痕の弾性部分が働き、区間aと区間bとの間の区間では、圧痕の最大弾性部分は小さくなる。 【0049】 この場合、区間aおよび区間bでは、圧痕加工の弾性部が高いため、酸化皮膜を貫通するのに適しており、また、区間b以降の圧痕加工の弾性部の変形率が低いため、好適である。異方性導電フィルム樹脂が完全硬化する前であっても、導電粒子の弾性が高いために接続が不安定になることはない。 【0050】 前記導電粒子の絶縁性コアは特に限定されない。例えば、樹脂微粒子や有機/無機ハイブリッド粒子を用いてもよい。 【0051】 前記樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系、イミド系などのモノマー、それらの変性モノマー、またはこれらの混合モノマーを用いて調製することができる。それらは、シード重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などによって重合することができる。 【0052】 前記有機/無機ハイブリッド粒子は、コアが有機材料の場合はシェルが無機材料であり、コアが無機材料の場合はシェルが有機材料であるコアシェル構造を有する。有機材料としては、上述のモノマーもしくはその変性モノマー、または混合モノマーを用いることができる。無機材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2などの酸化物、-AlN、Si3N4、TiN、BaN-などの窒化物、WC、TiC、SiCなどの炭化物を用いることができる。 【0053】 シェルは、化学的塗布法、ゾル - ゲル法、スプレー塗布法、CVD(化学的気相成長)法、PVD(物理的気相成長)法、メッキ法などにより形成することができる。粒子は、無機粒子が有機マトリックス中に分散しているタイプ、または有機粒子が無機マトリックス中に分散しているタイプ、または有機粒子と無機粒子とが50:50の比率にあるタイプも可能である。」 「【0061】 コア表面を活性化することは、前記触媒材料を塗布する前に実施することができる。活性化表面と接触するように触媒材料を提供することが望ましい。 【0062】 活性化処理は、触媒材料を改善された接着力で表面に付与するために行われる。活性化処理は、オゾン処理、電子線照射、またはプラズマもしくはコロナ処理により行うことができる。オゾンを投入することが反応の間に適用しやすいので好ましい。 【0063】 オゾン処理は、容器、装置、配管の腐食性、処理時間の短縮を考慮して適切な量で実施することができる。導入されるオゾンの量は10から50,000ppmの範囲であり得る。好ましくは50~25,000ppmの範囲、より好ましくは100~10,000ppmの範囲であり、この範囲内でコア表面に活性化処理を十分に施すことができる。 【0064】 本発明の実施形態に係る導電粒子の最外層は絶縁層を有することが好ましい。電子製品の小型化、高集積化に伴い電極のピッチが狭くなり、最外周に絶縁性粒子が存在しない場合には隣接する電極との間で電気的な導通がとられる。絶縁層を形成する方法としては、官能基を用いて絶縁性粒子と導電粒子の最外周とを化学的に結合させる方法、絶縁性溶液を溶媒に溶解させる方法、スプレーまたはディップで塗布する方法が挙げられる。 【0065】 本発明の実施形態に係る導電層の導電粒子は、防錆処理されていることが好ましい。防食処理は、水との接触角を増大させて高湿度環境下での信頼性を向上させるとともに、不純物が水に溶けて接続部材の性能劣化を低減させる効果があるからである。したがって、防食剤は、疎水性を有することが好ましい。コーティングは、防食剤を溶媒に溶解し、続いて浸漬、噴霧などによって行うことができる。 ・・・ 【0068】 異方性導電材料は、本発明の実施形態に係る導電粒子を結着樹脂中に分散させることにより製造することができる。 異方性導電材料としては、異方性導電ペースト、異方性導電フィルム、異方性導電シートなどが挙げられる。 ・・・ 【0070】 本発明の実施形態に係る異方性導電材料の製造方法は特に限定されない。例えば、導電粒子を樹脂バインダー中に均一に分散させて異方性導電ペーストとして使用したり、離型紙の上に薄く広げて異方性フィルムとして使用することができる。 【0071】 本発明の接続構造体は、本発明の実施形態に係る導電粒子または本発明の実施形態に係る異方性導電材料を用いて回路基板間を回路基板間で接続する。例えば、スマートフォンの表示用半導体チップと回路を構成するガラス基板とを接続したり、μ-LEDやmini-LEDを回路基板に接続したりする手段として利用することができる。本発明の接続構造体は、回路の接続不良や急激な抵抗の増加による回路の誤動作を引き起こさない。」 「【実施例】 【0072】 以下、実施例を挙げ本発明について具体的に開示する。下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明をこれらに限定しようとするわけではない。 【0073】 実施例1 1) 絶縁性コアの合成 750gのモノマーTMPETA(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、40gのHDEDA(1,6-Hexanediol ethoxylate diacrylate)および750gのDVB(Divinylbenzene)を3Lガラスビーカーに添加し、そして5gの開始剤BPOを添加し、そして混合物を混合した。これを40kHzの超音波浴中で10分間処理して第一溶液を調製した。 【0074】 500gの分散安定剤PVP-30K(Polyvinylpyrrolidone-30K)および界面活性剤Solusol(Dioctyl sulfosuccinate sodium salt)を、5LのPPビーカー中の4,000gの脱イオン水に添加して第2の溶液を調製した。 【0075】 第一溶液と第二溶液を50Lの反応器に入れ、41,000gの脱イオン水を加えた。溶液を超音波ホモジナイザー(20kHz、600W)で90分間処理し、溶液を120rpmで回転させながら85℃に加熱した。溶液が85℃に達した後、16時間を維持して重合工程の処理をした。 【0076】 重合微粒子を濾過、洗浄、分級、乾燥して、絶縁性コアとしての樹脂微粒子を得た。絶縁性コアの平均直径は、粒度分析器(BECKMAN MULTISIZER TM3)を用いて測定された最頻値(mode)を用いて測定された。測定された絶縁性コアの数は75,000であった。平均直径は2.46μmでした。 【0077】 2)粒子めっきプロセス ▲1▼触媒処理工程 25gの調製した絶縁性コアを800gの脱イオン水および1gの界面活性剤Triton X100の溶液に入れ、超音波浴で1時間処理して、洗浄および脱脂処理を行い、過剰の未反応モノマーおよび油性成分を除去した。絶縁性コア洗浄および脱脂工程の終わりに、40℃の脱イオン水を用いて水洗工程を3回行った。水洗工程の後、オゾン濃度200ppmの空気を用いて1時間バブリングを行った。溶液を200rpmで撹拌しながらオーバーヘッドスターラー(overhead stirrer)上でインペラーを用いて空気バブリングを行った。オゾン処理後、洗浄工程を1回だけ行った。 【0078】 続いてPd触媒処理。150gの塩化第一スズおよび300gの35~37%塩酸を600gの脱イオン水に溶解し、そして洗浄および脱脂した絶縁性コアを装入し、次いで30℃で30分間浸漬および撹拌して増感した。水で3回洗浄する。 【0079】 脱イオン水600gに1gの塩化パラジウム、200gの35~37%塩酸を添加し、40℃で1時間賦活処理を行った。活性化処理後、水洗工程を3回行った。 【0080】 活性化された絶縁性コアを、100gの35~37%塩酸,および 600gの脱イオン水の溶液中に入れ、混合物を促進処理のために室温で10分間撹拌した(促進処理)。促進処理後、3回水洗して無電解めっき用触媒処理絶縁芯材を得た。 【0081】 ▲2▼メッキ工程 5Lの反応器中で、3500gの脱イオン水、Ni塩としての260gの硫酸ニッケル、錯化剤としての5gの酢酸ナトリウム、2gの乳酸、安定剤としての0.001gのPb- アセテート、0.001gのチオ硫酸ナトリウム、界面活性剤としての1gのPEG - 1200, および0.02gの Triton X - 100を順番に溶解してめっき液を調製した(溶液(a))。触媒処理した絶縁性コアを調製した溶液(a)に入れ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散させた。分散処理後、溶液(溶液(b))のpHをアンモニア水で5.5に調整した。 【0082】 脱イオン水400g、還元剤として次亜リン酸ナトリウム300g、安定剤としてチオ硫酸ナトリウム0.0001gを1Lのビーカーに溶解して溶液(c)を調製した。溶液(c)を55℃の温度で計量ポンプにより毎分10gの量で5Lの反応器(溶液(b))に導入し、そして反応器の温度を加熱しそして30分に70℃に達するまで維持した。 【0083】 溶液(c)の添加が完了し、30分間維持した後、Niメッキ導電粒子を得た。作製した導電粒子の突起(絶縁性微粒子)の大きさは、最表面の最大点同心円(DH)と最下点同心円(DL)を用いて、FE-SEM写真を用いて以下のようにして求めることができる。 【0084】 【数3】 【0085】 作製した導電粒子の突起のサイズは112nmであった。 【0086】 実施例2 1500gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。残りの工程は、上記で調製した絶縁性コア24gを使用して、実施例1と同じ方法で実施した。製造された絶縁性コアの平均直径は2.53μmであった。作製した導電粒子の突起のサイズは86nmであった。 【0087】 実施例3 800gのTMPETA、50gのHDEDAおよび800gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。上記のようにして製造したインシュレータコア40gを用いて、実施例1と同様にして残りの工程を行った。製造された絶縁性コアは3.04μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは135nmであった。 【0088】 実施例4 1100gのTMMT(Tetramethylol Methane Tetaacrylate)および400gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。残りの工程は、上記で調製した絶縁性コア25gを用いて実施例1と同様にして行った。製造された絶縁性コアは2.96μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは131nmであった。 【0089】 実施例5 800gのMMA(Methylmethacrylate)および800gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。それ以外は実施例1と同様にして、上記で調製したインシュレータコア35gを用いて実施した。作製したインシュレータコアの平均直径は3.80μmであった。作製した導電粒子の突起のサイズは173nmであった。 【0090】 実施例6 1800gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。それ以外は実施例1と同様にして、上記で調製したインシュレータコア35gを用いて実施した。製造された絶縁性コアは4.80μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは153nmであった。 【0091】 実施例7 1650gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。実施例1の触媒処理は、調製した40gの絶縁性コアを用いて行った。実施例1と同じ条件のめっき液(a)、(b)、(c)を用い、液温(b)を65℃に保ち、液温(c)を毎分10gの量の定量ポンプを使用して添加した。 【0092】 溶液(c)の添加が完了し、30分間維持した後、Niメッキ導電粒子を得た。製造された絶縁性コアは平均直径3.75μmを有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは30nmであった。 【0093】 実施例8 1500gのスチレンと250gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。上記で調製した絶縁性コア45gを用いて、実施例1と同様にして残りの工程を行った。製造された絶縁性コアは平均直径3.81μmを有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは164nmであった。 【0094】 実施例9 前記実施例3の導電粒子を用いて絶縁性コアを被覆した。 1)絶縁性コアの製造 250mlのフラスコに10gのスチレン、3gのBA(Butyl acrylate)および150gの脱イオン水を入れて混合した。この混合物に2.0gのPVP- 30Kと0.3gのペルオキソ二硫酸カリウム(Potassium peroxodisulfate)を加え、70℃で10時間攪拌した。次いで、この反応液に3.0gのEGDMA(Ethylene glycol dimethylacrylate)と0.5gのPVA - 150(MW8,000- Polyvinyl Alchol)と30gの脱イオン水を加え、さらに70℃で12時間攪拌した。反応混合物にさらにヘキサメチレンジアミン(Hexamethylenediamine)3.0gを加え、50℃で24時間攪拌して平均粒径150nmの絶縁性コアを得た。絶縁性コアをSEMによって確認し、平均直径を10個の粒子を測定することによって決定した。 【0095】 2)絶縁性微粒子のコーティング 調製した絶縁性コアを洗浄、濾過した後、メチルアルコール溶媒に投入して固形分5%の分散液を調製した。500gのメタノール、20gの前記分散液および10gの実施例3の導電粒子を1Lのビーカーに添加し、混合物を50℃の超音波浴中で30分間超音波処理し、10時間撹拌した。絶縁性微粒子で被覆された導電粒子を調製する。 【0096】 実施例10 500gの脱イオン水を20gのSG - 1(商品名:MSC社製)に加え、溶液の温度を60℃に保った。実施例3で調製した10gの導電粒子を入れた。溶液を60℃に保ち、5分間超音波処理した。超音波処理した導電粒子を洗浄、濾過、乾燥して防食性を有する導電粒子を得た。乾燥した防錆導電粒子を純水に投入したところ、純水に浮遊する導電粒子の重量比率が98%以上であることを確認し、防食処理を行った。 【0097】 比較例1 1600gのMMAおよび250gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。オゾン処理を行った以外は、実施例1と同様にして、準備した絶縁性コア40gを用いた以外の工程を行った。製造された絶縁性コアは4.71μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは184nmであった。 【0098】 比較例2 1450gのMMA(Methylmethacrylate)および200gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。残りの工程は、調製した絶縁性コア45gを用いて実施例1と同様にして行った。調製された絶縁性コアは3.00μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは162nmであった。 【0099】 実験例 実施例1~10、比較例1~2で得られた導電粒子の評価を行った。 1)導電粒子サイズの測定 導電粒子の平均粒径は、Particle Size Analyzer(BECKMAN MULTISIZERTM3)を用いて測定された最頻値を用いて求められる。 測定された導電粒子の数は75,000であった。 【0100】 2)nITと変形量の測定 nITおよび変形量は、一辺の長さが50μmのフラット圧子(Indenter)を用いた微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)で測定した。nITと変形量は合計5個の導電粒子について測定し平均した。測定条件は、25℃における圧子の下降量が0.33mN/秒、上昇量が10秒で0.1mNであった。 微小圧縮試験機内のソフトウェア(software WinHCU5.1; 微小圧縮試験機の操作解析ソフトウェア)を用いて、nITおよびHmax(最大圧子深さ)の値をとることにより、nITおよび変形量を測定した。 【0101】 3)接続抵抗の測定 ▲1▼異方性導電フィルムの製造 ナフタレン系エポキシ樹脂 HP4032D(DIC製、商品名)2gとフェノキシ樹脂 YP-50(東トー化成社製、商品名)20gとアクリルエポキシ樹脂 VR-60(昭和電工社製、商品名)25g、熱硬化剤 HXA-3922HP(旭化成社製、商品名)22g、エポキシシランカップリング剤 A-187(モメンティブ社製、商品名)5gをよくかき混ぜた後、溶媒であるトルエンを用いて固形分50%の配合物を作った。 前記導電粒子を配合物重量比で10%になるように添加した後、プラネタリーミキサーを用いて公転400rpm、自転150rpmの条件で5分間混合して異方性導電ペーストを作った。 前記異方性導電ペーストを用いて離型フィルム上に20μmの厚さのフィルムを作成した後、75℃/5分間熱風乾燥炉を用いて大気中で乾燥して、最終的12μm厚さの異方性導電フィルムを作った。 【0102】 ▲2▼抵抗測定用電極 抵抗測定のための電極は、ガラス基板上にITO(Indium Tin Oxide)を蒸着して透明電極が形成されたガラス基板と電極幅が20μm、電極間隔が50μmのFPCBを用意した。電極のパターンは、Auベースに対してAlで被覆された。 【0103】 ▲3▼接合(ボンディング) 前記異方性導電フィルムを幅3mmで切断し、幅1mm、長さ3mmの接合治具を用いて、ITOがある遊離基板状に0.2MPa、120℃、10秒加圧着を行った後、FPCBを置き、40MPa、200℃、20秒間接合を実施して接続構造体を作製した。 【0104】 ▲4▼初期接続抵抗の測定 前記接続構造体のFPCB電極を用いて抵抗値を測定した。ADCMT 6871E Digital Multimeter 2probeを用いて抵抗を測定した。 【0105】 ▲5▼信頼性抵抗の測定 85℃/85%湿度条件下に100時間放置した後に信頼性の抵抗を測定した。ADCMT6871E Digital Multimeter 2probeを用いて抵抗を測定した。 【0106】初期接続抵抗の基準は以下の通りである。 ○○○:2Ω以下 ○○:2Ω超~3Ω以下 ○:3Ω超~5Ω以下 ×:5Ω超 【0107】 また、85℃/85%、100時間信頼性試験後の接続抵抗の増加基準は以下の通りです。 ○○○:2Ω以下の上昇 ○○:2Ω超~4Ω以下の上昇 ○:4Ω超~6Ω以下の上昇 ×:6Ω超~上昇 【0108】 表1は、各実施形態の変形率に応じた押込加工の弾性部割合を示す。 【表1】 【0109】 また、表2において、前述した実施例および比較例の初期抵抗および85/85試験を行って抵抗値を測定した。 【表2】 【0110】 前記表1、表2および関連する図1~図2の実施例1~10と比較例1~2とを比較した結果、酸化皮膜破壊時の導電粒子の変形率は17.4~70%が好ましく、区間bを通過した区間の変形率に応じた押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は-1≦c≦4となるように設計されている。」 「【図1】 【図2】 」 (2)発明の詳細な説明の記載事項 上記(1)によれば、発明の詳細な説明には、以下の事項が記載されているといえる。 ア 導電粒子は、電極間に介在し、電極間を電気的に接続する導電粒子であり、少なくとも一方の電極の表面には酸化皮膜が設けられており、前記導電粒子は、絶縁性コアと、前記コア表面に設けられた導電層または突起を有する導電層とを含むこと(【0039】、【0042】)。 イ 押込加工の弾性部割合は、導電粒子の変形率に応じた押込加工の弾性部割合値(nIT)は、以下のように定義すること(【0034】、【0035】)。 【数2】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentationwork)を、Wplasticは塑性部分の押込ワークを意味し、Wtotalは、WelasticとWplasticの合計であり、nITは押込ワークの全体に対する弾性部分割合を意味する) ウ 図1は、押込加工の弾性部割合の概念を説明するグラフであること、及び、押込加工の弾性部割合(nIT)は、微小圧縮試験機を用いて測定することができるものであり、印加荷重を変えて粒子の変形量を測定することにより、nIT値を得ることができること(【0036】)。 エ 図2は、導電粒子を、微小圧縮試験機を用いて25℃で圧縮した結果を示すグラフであり、導電粒子の変形率をx軸とし、前記式(1)で求められる押込加工の弾性部割合をy軸とすること(【0040】)。 オ 図2のグラフは2つの不連続点、すなわち第1の不連続点および第2の不連続点を有し、各不連続点の後でnITが一定のままである2つの区間を有し、第1の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔aと呼び、第2の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔bと呼び、第一不連続点は、導電粒子の導電層が破壊された支点であり、第二不連続点は、絶縁性コアの破壊された支点であること(【0041】)。 カ 間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜の破断が生じること、すなわち、チップの電極および基板の電極と接触する導電粒子の導電層または突起を有する導電層は、導電層の破壊が生じる間隔aの後に酸化皮膜を突き抜けて入ること、及び、導電層が破壊する前に酸化皮膜が貫通していると、導電粒子の硬度が強すぎるため、導電粒子の変形が小さい状態で接続が行われ接続信頼性が弱くなり、通常、導電粒子の変形の60~80%の変形で電気的接続が行われるようにする電子製品の設計仕様に合わなくなること(【0042】)。 キ 導電粒子は、導電層が破壊された後、変形率の増加に応じて、押込加工の弾性部割合が大きくなる状態で、導電層または突起状の導電層が電極の酸化皮膜を貫通できる力を発現できるように設計する必要があること(【0043】)。 (3)本件発明1について ア 実施例の結果から図2に対応するグラフが描画できることについて (ア)上記(2)エ、オによれば、図2は、導電粒子を、微小圧縮試験機を用いて25℃で圧縮し、導電粒子の変形率をx軸とし、前記式(1)で求められる押込加工の弾性部割合をy軸としたグラフであり、当該グラフは2つの不連続点、すなわち第1の不連続点および第2の不連続点を有し、各不連続点の後でnITが一定のままである区間a及び区間bを有し、第一不連続点は、導電粒子の導電層が破壊された支点であり、第二不連続点は、絶縁性コアの破壊された支点である。 また、上記(2)ウによれば、図1は、押込加工の弾性部割合の概念を説明するグラフであり、また、押込加工の弾性部割合(nIT)は、微小圧縮試験機を用いて測定することができるものであり、印加荷重を変えて粒子の変形量を測定することにより、nIT値を得ることができる。 そうすると、図2のグラフを得るためには、まず、各印加荷重における圧入深さ(図1におけるhmax及びhmin)を測定することによって、導電粒子の各変形率、及び、各押込加工の弾性部割合(nIT)を得て、次に、上記導電粒子の各変形率、及び、各押込加工の弾性部割合(nIT)の値をグラフにプロットするものと理解できる。 (イ)技術常識について a ここで、申立人が提出した甲第1号証(再公表特許第2013/042785号)には以下の記載がある。 「【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明者が、ニッケル層を有する導電性微粒子の圧縮変形挙動について検討したところ、測定される圧縮変位曲線において、基材粒子の破壊に由来する破壊点が観測される前に、変曲点が現れることが確認された。この変曲点は、基材粒子の表面に形成されたニッケル層自体の破壊又は損傷に起因するものであり、ニッケル層を含む導電性金属層が独立で示す挙動と考えられる。・・・」 「【発明を実施するための形態】 【0009】 1.導電性微粒子 1-1.導電性金属層 本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有している。そして、前記導電性金属層がニッケル層を含み、・・・」 「【0019】 また、前記導電性微粒子は、荷重負荷速度2.2295mN/秒で圧縮する圧縮試験において、下記の破壊挙動を示すことが好ましい。以下、導電性微粒子を圧縮試験に供したときの破壊挙動に関して、圧縮変位曲線を示すグラフを参照しながら説明する。図1は本発明の導電性微粒子の圧縮変位曲線を示している。圧縮変位曲線とは、粒子に負荷する荷重を一定速度で高めて圧縮していったときの荷重(すなわち粒子の圧縮を開始してからその時点までの累積荷重)と粒子の変形率との関係をプロットしたものである。 【0020】 本発明の導電性微粒子は、前記圧縮変位曲線において、基材粒子が破壊する破壊点(Y)における圧縮荷重値より低い圧縮荷重値において、前記ニッケル層の破壊に起因する変曲点(X)が確認される。そして、前記破壊点(Y)における圧縮変形率をL2、前記変曲点(X)における圧縮変形率をL1としたとき、これらの比(L1/L2)が、0.3以上であることが好ましく、より好ましくは0.35以上、さらに好ましくは0.4以上である。前記比(L1/L2)の上限は特に限定されないが、当然1未満である。」 「【図1】 」 b 以上の記載によれば、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する、ニッケル層を含む導電性金属層とを有する導電性微粒子を、圧縮試験に供したときの破壊挙動に関する圧縮変位曲線において、基材粒子が破壊する破壊点(Y)における圧縮荷重値より低い圧縮荷重値において、前記ニッケル層の破壊に起因する変曲点(X)が確認されるものである。 そして、上記図1において、ニッケル層が破壊した後(破壊点(X)の右側)は、圧縮荷重値がほぼ一定で、かつ、圧縮変形率が急激に増加し、また、基材粒子が破壊した後(破壊点(Y)の右側)も、圧縮荷重値がほぼ一定で、かつ、圧縮変形率が急激に増加していることが見て取れる。 c 上記bによれば、コアと、当該コアの表面を被覆する導電層を有する導電粒子において、圧縮試験を行った場合に、まず導電層が破壊され、次にコアが破壊されること、導電粒子の変化率と圧縮荷重値との関係を表すグラフにおいて、荷重がほぼ一定で変化率が急激に増加する区間が2つ出現し、荷重がほぼ一定となる最初の区間が、導電層が破壊される区間であり、次の区間が、コアが破壊される区間であることは、本件特許の出願当時において技術常識であるといえる。 また、上記荷重がほぼ一定で変化率が急激に増加する2つの区間では、導電層及びコアが瞬間的に破壊される区間であることは当業者にとって自明の事項であるから、これら2つの区間では、圧縮変形率のデータを得ることが不可能であることも、本件特許の出願当時において技術常識であるといえる。 d 発明の詳細な説明の実施例について (a)上記b及びcの検討を踏まえて、実施例の記載を見てみる。 上記(1)の【0073】~【0093】には、実施例1~8の導電粒子の具体的な製造方法が記載されており、これら導電粒子は、いずれも、「絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層」を含んでいるといえる。 そして、上記(1)の【0108】の【表1】は、実施例1~8の導電粒子の変形率に応じた押込加工の弾性部割合を示したものであるところ、各導電粒子の変形率(%)をx軸とし、押込加工の弾性部割合(nIT)(%)をy軸として、プロットした図を以下に示す。 以上のグラフから、実施例1~8の押込加工の弾性部割合(nIT)は、いずれも、導電粒子の変形率(%)が0%から増加して行くにつれて、まずは下がり、しばらく間隔を空けて、上昇し、さらに間隔を空けて、上昇又は下降していることが読み取れる。 ここで、上記(イ)cで示したとおり、コアと、当該コアの表面を被覆する導電層を有する導電粒子において、圧縮試験を行った場合に、まず導電層が破壊され、次にコアが破壊されることは、本件特許の出願当時において技術常識であるから、絶縁性コアと、当該絶縁性コアの表面に設けられた導電層を有する導電粒子を圧縮試験している実施例1~8においても、上記技術常識と同様に、まず導電層が破壊され、次に絶縁性コアが破壊されるといえる。 また、上記(イ)cで示したとおり、コアと、当該コアの表面を被覆する導電層を有する導電粒子において、圧縮試験を行った場合における導電粒子の変化率と荷重量との関係を表すグラフにおいて、荷重がほぼ一定で変化率が急激に増加する区間が2つ出現し、荷重がほぼ一定となる最初の区間が、導電層が破壊される区間であり、次の区間が、コアが破壊される区間であることは、本件特許の出願当時において技術常識であるところ、同様の圧縮試験を行った上記実施例1~8のグラフにおいても、導電層及び絶縁性コアが破壊されることによる、導電粒子の変化率が急激に増加する区間が2つ出現するものといえる。 そうすると、上記実施例1~8のグラフにおける2つの間隔は、最初の区間が、導電層が破壊される区間であり、次の区間が、コア絶縁膜が破壊されている区間であると推認できる。 さらに、上記(イ)cで示したとおり、上記荷重がほぼ一定で変化率が急激に増加する2つの区間では、圧縮変形率のデータを得ることが不可能であることも、本件特許の出願当時において技術常識であるから、上記実施例1~8のグラフにおける2つの間隔において、測定データがないことは当然のことといえる。 (b)以上から、実施例1~8についての導電粒子の変形量と弾性部割合との関係は、特許権者が提出した令和4年9月1日付け意見書の7ページに示したグラフ(参考図1)、すなわち、図2に対応するグラフが描画できることが理解できる。以下に当該グラフ(参考図1)を示す。 イ 間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜が貫通または破壊されることについて (ア)上記(2)カによれば、発明の詳細な説明には、間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜の破断が生じること、すなわち、チップの電極および基板の電極と接触する導電粒子の導電層または突起を有する導電層は、導電層の破壊が生じる間隔aの後に酸化皮膜を突き抜けて入ること、及び、導電層が破壊する前に酸化皮膜が貫通していると、導電粒子の硬度が強すぎるため、導電粒子の変形が小さい状態で接続が行われ接続信頼性が弱くなり、通常、導電粒子の変形の60~80%の変形で電気的接続が行われるようにする電子製品の設計仕様に合わなくなることが記載され、同(2)キによれば、導電粒子は、導電層が破壊された後、変形率の増加に応じて、押込加工の弾性部割合が大きくなる状態で、導電層または突起状の導電層が電極の酸化皮膜を貫通できる力を発現できるように設計する必要があることが記載されている。 (イ)そして、上記(1)の【0109】の【表2】には、実施例及び比較例の初期抵抗及び85/85試験、すなわち、85℃/85%湿度条件下に100時間放置(【0105】)した試験を行って抵抗値を測定した結果が記載されている。 この結果によれば、実施例1~8は、いずれも、初期抵抗及び85/85試験の結果は良好なものであるといえる。 そうすると、上記(ア)の記載を参酌すると、実施例1~8は、いずれも、区間aと区間bとの間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、導電層によって電極の酸化皮膜が貫通または破壊されているといえ、また、実施例1~8の導電粒子は、導電層が破壊された後、変形率の増加に応じて、押込加工の弾性部割合が大きくなる状態で、導電層または突起状の導電層が電極の酸化皮膜を貫通できる力を発現できるように設計されているといえる。 なお、上記【表2】の比較例1、2は、85/85試験の結果がいずれも「×」であるから、間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜が貫通または破壊されているとはいえない。 ウ 上記ア及びイによれば、発明の詳細な説明には、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに本件特許出願当時の技術常識に基づいて、本件発明1の「導電粒子」を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されているといえる。 (4)本件発明2について 上記(1)の【0048】には、区間b以降の区間における変形率の変化に応じた押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち傾き)は、-0.5≦c≦3.0が好ましいこと、同【0013】には、前記区間bの以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間aと区間bの間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さいことが記載されている。 そして、上記(3)ア(イ)dで検討したとおり、実施例1~8についての導電粒子の変形量と弾性部割合との関係は、図2に対応するグラフ(参考図1)が描画できることが理解できるところ、当該グラフとして、特許権者が加筆したグラフ(令和4年9月1日付け意見書の12ページに示した参考図2)を以下に示す。 当該グラフによれば、実施例1~8における区間(b)の以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は、いずれも、-0.5≦c≦3.0の範囲内にあり、かつ、前記区間(b)の以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間(a)と区間(b)の間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さくなっている。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに本件特許出願当時の技術常識に基づいて、本件発明2の「導電粒子」を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されているといえる。 (5)本件発明3について 上記(1)の【0044】には、酸化皮膜が破断した時点における導電粒子の変形率は、より好ましくは30.0~65.0%であることが記載されている。 そして、上記(3)ア(イ)dで検討したとおり、実施例1~8についての導電粒子の変形量と弾性部割合との関係は、図2に対応するグラフ(参考図1)が描画できることが理解できるところ、当該グラフとして、特許権者が加筆したグラフ(令和4年9月1日付け意見書の13~14ページに示した参考図3)を以下に示す。 上記(3)イで検討したとおり、区間(a)と区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊されるものであるから、上記グラフによれば、実施例1~8において、導電粒子の変形率が30.0~65.0%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものであるといえる。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに本件特許出願当時の技術常識に基づいて、本件発明3の「導電粒子」を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されていえるといえる。 (6)本件発明4~16について 本件発明4、5については上記(1)の【0061】~【0063】、【0079】に、本件発明6については同【0060】、【0061】、【0077】~【0082】に、本件発明7~11については同【0050】~【0053】、【0073】~【0076】、【0086】~【0093】に、本件発明12については同【0064】、【0095】に記載され、本件発明13については同【0065】、【0096】に、本件発明14については同【0045】、【0068】、【0070】、【0101】に、本件発明15については同【0071】、【0103】に、本件発明16については同【0027】に、それぞれ、構成や製造方法などの具体的な記載がある。 したがって、発明の詳細な説明には、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに本件特許出願当時の技術常識に基づいて、本件発明4~13の「導電粒子」、本件発明14の「異方性導電材料」、本件発明15の「接続構造体」及び本件発明16の「電気電子部品」を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されているといえる。 (7)申立人の主張について 申立人は、特許異議申立書の31ページ8行~37ページ3行及び令和4年10月27日付け意見書の2ページ2行~6ページ3行において、発明の詳細な説明の記載は、当業者が容易に本件発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない旨主張している。 しかし、発明の詳細な説明には、当業者が本件明細書及び図面の記載並びに本件特許出願当時の技術常識に基づいて、本件発明1~13の「導電粒子」、本件発明14の「異方性導電材料」、本件発明15の「接続構造体」及び本件発明16の「電気電子部品」を生産でき、かつ、使用できるように、具体的に記載されていることは、上記(3)~(6)で検討したとおりであるから、申立人の上記主張は採用できない。 (8)小括 以上から、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明1~16を実施することができる程度に明確かつ十分に記載したものであるから、取消理由1には理由がない。 3 取消理由2(サポート要件)について (1)本件発明が解決しようとする課題 発明の詳細な説明の【0011】の記載によれば、本件発明が解決しようとする課題は、「電極の酸化皮膜を容易に突き抜け接続して、初期接続の抵抗値が低い、弾性によって回復されず、高温/高湿下でも抵抗の増加も低く、信頼性に優れた導電粒子、異方性導電材料および接続構造体を提供すること」である(以下、「本件課題」という。)。 (2)本件発明1について 発明の詳細な説明には、上記2(1)に摘記したとおりの記載があるところ、上記2(3)の検討を参酌すると、本件発明1の「導電粒子」は、発明の詳細な説明に記載されており、当該「導電粒子」が、上記本件課題を解決できることは、実施例において裏付けられているといえる。 したがって、本件発明1は、当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (3)本件発明2について 上記2(4)の検討を参酌すると、本件発明2に特定されている「前記区間(b)の以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は -0.5≦c≦3.0であり、前記区間(b)の以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間(a)と区間(b)の間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さい」ことは、実施例において裏付けられているといえるから、本件発明2は、発明の詳細な説明に記載されている。 また、本件発明2は、本件発明1の全ての構成を有する発明であるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (4)本件発明3について 上記2(5)の検討を参酌すると、本件発明3に特定されている「前記導電粒子の変形率が30.0~65.0%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものである」ことは、実施例において裏付けられているといえるから、本件発明3は、発明の詳細な説明に記載されている。 また、本件発明3は、本件発明1の全ての構成を有する発明であるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (5)本件発明4~16について 上記2(6)の検討を参酌すると、本件発明4~16は、発明の詳細な説明に記載されている。 また、本件発明4~16は、いずれも本件発明1の全ての構成を有する発明であるから、上記(2)で検討したのと同様の理由により、発明の詳細な説明に記載されたものであり、また、当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものである。 (6)小括 以上から、本件発明1~16は、発明の詳細な説明の記載及び本件特許の出願当時の技術常識に照らして当業者が上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであるから、発明の詳細に記載されているものである。 したがって、取消理由2には理由がない。 第5 取消理由通知において採用しなかった申立理由について 1 申立人の申立理由 (1)申立理由1(新規性) 本件発明1~16は、甲第1号証又は甲第2号証に記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 (2)申立理由2(進歩性) 本件発明1~16は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。 (3)申立理由3(明確性) 本件発明1~16は、特許請求の範囲の記載が明確でないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 (4)申立理由4(サポート要件) 本件発明9~11は、発明の詳細な説明に記載されたものではないから、請求項9~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:再公表特許第2013/042785号 甲第2号証:特開2011-243456号公報 2 甲号証の記載、甲号証に記載された発明 (1)甲第1号証(再公表特許第2013/042785号) ア 本件特許出願の優先日前に公知となった甲第1号証には、上記第4 2(3)ア(イ)aで摘記した記載に加えて以下の記載がある。 「【請求項1】 基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、 前記導電性金属層が、ニッケル層を含み、 粉末X線回折法により測定されるニッケルの[111]方向の結晶子径が、3nm以下であることを特徴とする導電性微粒子。 【請求項2】 荷重負荷速度2.23mN/秒で圧縮する圧縮試験により得られた圧縮変位曲線において、 基材粒子が破壊する破壊点(Y)における圧縮荷重値より低い圧縮荷重値において、前記ニッケル層の破壊に起因する変曲点(X)が確認され、 前記破壊点(Y)における圧縮変形率をL2、前記変曲点(X)における圧縮変形率をL1としたとき、これらの比(L1/L2)が、0.3以上である請求項1に記載の導電性微粒子。」 「【発明の詳細な説明】 【0001】 本発明は、導電性金属層としてニッケル層を含む導電性微粒子に関し、特にニッケル層の柔軟性に優れた導電性微粒子に関する。」 「【0024】 1-2.基材粒子 前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂粒子としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン-アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノシロキサン等が挙げられる。これらの樹脂粒子を構成する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。これらの中でも、ニッケルの[111]方向の結晶子径を3nm以下とすることにより得られる効果がより顕著となる点で、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。 ・・・ 【0068】 2.突起を有する導電性微粒子 導電性微粒子はその表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。」 「【0138】 4.突起導電性微粒子の製造 4-1.製造例23 アミノ樹脂微粒子(日本触媒社製、「エポスターS」、ノギス法による平均粒子径=0.20μm、変動係数(CV)=8.0%)を、アミノ樹脂微粒子濃度が5.0質量%になるように、メタノールに分散させた。得られたエポスターS分散液100部に、合成例5で得られたビニル重合体粒子4、50部を加え、均一に分散させた後、エバポレーターでメタノールを留去し、ビニル重合体粒子4の表面にアミノ樹脂微粒子が存在してなる微粒子被覆微粒子(1)を得た。 得られた、微粒子被覆微粒子(1)用いて製造例5と同様の方法でメッキ処理を行い、突起導電性微粒子(1)を得た。」 「【0144】 【表1】 ・・・ 【0146】 【表2】 」 「【図2】 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの【請求項1】、【請求項2】、【0024】及び【0068】の記載によれば、甲第1号証には、以下の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。 「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子であって、 前記導電性金属層が、ニッケル層を含み、 粉末X線回折法により測定されるニッケルの[111]方向の結晶子径が、3nm以下であり、 荷重負荷速度2.23mN/秒で圧縮する圧縮試験により得られた圧縮変位曲線において、 基材粒子が破壊する破壊点(Y)における圧縮荷重値より低い圧縮荷重値において、前記ニッケル層の破壊に起因する変曲点(X)が確認され、 前記破壊点(Y)における圧縮変形率をL2、前記変曲点(X)における圧縮変形率をL1としたとき、これらの比(L1/L2)が、0.3以上であり、 前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子であり、 突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる、導電性微粒子。」 (2)甲第2号証(特開2011-243456号公報) ア 本件特許に係る出願の優先日前に公知となった甲第2号証には、以下の記載がある。 「【請求項1】 基材粒子と、前記基材粒子の表面に設けられており、かつニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層とを有し、 前記ニッケル-ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であり、 導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10~25%圧縮変位したときに、前記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じる、導電性粒子。 ・・・ 【請求項6】 ニッケル-ボロン導電層の外表面に突起を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の導電性粒子。 【請求項7】 請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、異方性導電材料。 【請求項8】 第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、該第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、 前記接続部が、請求項1~6のいずれか1項に記載の導電性粒子、又は該導電性粒子とバインダー樹脂とを含む異方性導電材料により形成されている、接続構造体。」 「【技術分野】 【0001】 本発明は、基材粒子の表面に導電層が設けられている導電性粒子に関し、より詳細には、例えば、電極間の電気的な接続に用いることができる導電性粒子、並びに該導電性粒子を用いた異方性導電材料及び接続構造体に関する。」 「【0045】 基材粒子2としては、樹脂粒子、無機粒子、有機無機ハイブリッド粒子及び金属粒子等が挙げられる。」 「【0068】 導電性粒子1のように、本発明に係る導電性粒子は表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子は、ニッケル-ボロン導電層の表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子は表面に複数の突起を有することが好ましい。導電性粒子は、ニッケル-ボロン導電層の表面に複数の突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。さらに、導電性粒子の導電層の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗を低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性樹脂を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて異方性導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。」 「【0104】 (実施例4) (1)絶縁樹脂粒子の作製 4ツ口セパラブルカバー、攪拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N-トリメチル-N-2-メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した後、200rpmで攪拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥して、表面にアンモニウム基を有し、平均粒子径220nm及びCV値10%の絶縁樹脂粒子を得た。 【0105】 絶縁樹脂粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁樹脂粒子の10重量%水分散液を得た。 【0106】 実施例1で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、絶縁樹脂粒子の水分散液4gを添加し、室温で6時間攪拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥し、絶縁樹脂粒子が付着した導電性粒子を得た。」 「【図1】 【図2】 」 「【図8】 」 イ 甲第2号証に記載された発明 上記アの【請求項1】、【請求項6】、【0045】及び【0068】の記載によれば、甲第2号証には、以下の発明(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。 「基材粒子と、前記基材粒子の表面に設けられており、かつニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層とを有し、 前記ニッケル-ボロン導電層の全体100重量%中、ニッケルの含有量が97重量%以上であり、 導電性粒子を圧縮した場合に、導電性粒子が、圧縮方向における圧縮前の導電性粒子の粒子径の10~25%圧縮変位したときに、前記ニッケル-ボロン導電層に割れが生じ、 ニッケル-ボロン導電層の外表面に突起を有し、突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され、 基材粒子は、樹脂粒子である、導電性粒子。」 3 申立理由1(新規性)、申立理由2(進歩性)について (1)甲1発明を主引用発明とする新規性・進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲1発明とを対比する。 a 甲1発明の「樹脂成分を含む樹脂粒子」が絶縁性であることは技術常識であるから、「樹脂成分を含む樹脂粒子」である「基材粒子」は、本件発明1の「絶縁性コア」に相当する。 また、甲1発明の「導電性微粒子」は、「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する」ものであり、かつ、「突起を有する」ものであるから、「該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層」は、「突起を有」しているといえる。 したがって、甲1発明の「該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層」は、本件発明1の「前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層」に相当する。 以上から、甲1発明の「基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有する導電性微粒子」は、本件発明1の「絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含」む「導電粒子」に相当する。 b 甲1発明の「導電性微粒子」は、「突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる」ものであり、電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電性微粒子であるといえるから、甲1発明の「突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる、導電性微粒子」は、本件発明1の「電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子」に相当する。 c 以上から、本件発明1と甲1発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、 前記導電粒子は、コアの表面に突起を有する導電層を含めている導電粒子。」 <相違点> 相違点1-1:本件発明1は、「前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ」ているのに対し、甲1発明は、そのような構成を備えていえるか不明である点。 相違点1-2:本件発明1は、「微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの、導電粒子の変形率をx軸とし、下記[1]として定められる 押込加工の弾性部割合をy軸とする場合にプロットしたグラフにおいて、 第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に前記絶縁コアが破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」のに対し、甲1発明は、そのような構成を備えているか不明である点。 【数1】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、WtotalはWelasticとWplasutic(塑性部分の押込ワーク)の合計の押込ワークを、nITは押込ワークの弾性部分割合を意味する) (イ)相違点についての判断 事案に鑑み相違点1-2から検討する。 a 甲第1号証には、相違点1-2に係る本件発明1の構成について、記載も示唆もされていない。 さらに、甲1発明の「導電性微粒子」が、相違点1-2に係る本件発明1の構成を備えていることは技術常識であるともいえない。 したがって、甲1発明の「導電性微粒子」は、相違点1-2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえない。 よって、相違点1-2は、実質的な相違点である。 b 甲2発明は、「突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され」るものであるから、「導電性粒子」は、電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子であるといえ、また、上記電極のうち少なくとも一方の電極の表面には酸化皮膜が備えられているといえる。 また、甲2発明の「突起を有する導電性粒子」は、「ニッケル-ボロン導電層の外表面に突起を有」するものであるから、上記「突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され」ることは、突起を有するニッケル-ボロン導電層によって酸化皮膜が貫通または破壊されるといえる。 以上から、甲2発明の「突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され」ることは、本件発明1の「電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ」、「前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」ことに相当する。 しかし、甲第2号証には、相違点1-2に係る本件発明1の構成のうち、「微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの」「押込加工の弾性部割合」について、何ら記載も示唆もされていない。 また、甲第2号証には、「導電性微粒子」が、電極間の接続に用いられる際に、どの時点で、「酸化皮膜」が「突起を有する導電性粒子」によって貫通または破壊されるかは、記載も示唆もされていない。 さらに、甲2発明が、相違点1-2に係る本件発明1の構成を備えていることは技術常識であるともいえない。 したがって、甲2発明は、相違点1-2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえない。 よって、甲1発明に甲2発明を適用しても、相違点1-2に係る本件発明1の構成は得られない。 (ウ)小括 以上から、相違点1-1について判断するまでもなく、本件発明1は、甲1発明ではないし、また、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2~16について 本件発明2~13は、いずれも本件発明1の全ての構成を有する発明であり、本件発明14は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む異方性導電材料の発明であり、本件発明15は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む接続構造体の発明であり、本件発明16は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む電気電子部品の発明であり、本件発明2~16と甲1発明とは、少なくとも上記相違点1-2の点で相違するから、上記アで検討したのと同様に、本件発明2~16は、甲1発明ではないし、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (2)甲2発明を主引用発明とする新規性・進歩性について ア 本件発明1について (ア)対比 本件発明1と甲2発明とを対比する。 a 甲2発明の「樹脂粒子である」「基材粒子」が絶縁性であることは技術常識であるから、本件発明1の「絶縁性コア」に相当する。 また、甲2発明の「ニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層」は、「外表面に突起を有し」ているから、本件発明1の「突起を有する導電層」に相当する。 以上から、甲2発明の「基材粒子と、前記基材粒子の表面に設けられており、かつニッケルとボロンとを含むニッケル-ボロン導電層とを有」する「導電性粒子」は、本件発明1の「絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含」む「導電粒子」に相当する。 b 上記(1)ア(イ)b(b)で検討したとおり、甲2発明の「突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され」ることは、本件発明1の「電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ」、「前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」ことに相当する。 c 以上から、本件発明1と甲2発明との一致点と相違点は以下のとおりとなる。 <一致点> 「電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ、 前記導電粒子は、絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含めて、 前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される導電粒子。」 <相違点> 相違点2:「前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊される」ことについて、本件発明1は、「微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの、導電粒子の変形率をx軸とし、下記[1]として定められる 押込加工の弾性部割合をy軸とする場合にプロットしたグラフにおいて、 第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に前記絶縁コアが破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲」でされるのに対し、甲2発明は、そのような構成を備えていえるか不明である点。 【数1】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、WtotalはWelasticとWplasutic(塑性部分の押込ワーク)の合計の押込ワークを、nITは押込ワークの弾性部分割合を意味する) (イ)相違点2についての判断 a 甲第2号証には、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの」「押込加工の弾性部割合」についてさえ、何ら記載も示唆もされていない。 ここで、上記(ア)bで検討したとおり、甲2発明の「突起を有する導電性粒子」は、「ニッケル-ボロン導電層の外表面に突起を有」するものであるから、上記「突起を有する導電性粒子の使用により、導電性粒子により接続される電極の表面に形成されている酸化被膜が効果的に排除され」ることは、突起を有するニッケル-ボロン導電層によって酸化皮膜が貫通または破壊されるといえる。 しかし、甲第2号証には、どの時点で、突起を有するニッケル-ボロン導電層によって酸化皮膜が貫通または破壊されるかは、記載も示唆もされていない。 さらに、甲2発明の「導電性粒子」が、相違点2に係る本件発明1の構成を備えていることは技術常識であるともいえない。 したがって、甲2発明の「導電性粒子」は、相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえない よって、相違点2は、実質的な相違点である。 b 上記(1)ア(イ)b(a)の検討を参酌すると、甲第1号証には、相違点2に係る本件発明1の構成のうち、「微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの」「押込加工の弾性部割合」について、何ら記載も示唆もされていないし、甲第1号証には、「導電性微粒子」が、「電極間の接続に用い」られる際に、どの時点で、上記酸化皮膜が「突起を有する」「導電性金属層」によって貫通または破壊されるかは、記載も示唆もされていない。 したがって、甲1発明の「導電性微粒子」は、相違点2に係る本件発明1の構成を備えているとはいえない。 また、甲1発明が、相違点2に係る本件発明1の構成を備えていることは技術常識であるともいえない。 したがって、甲2発明に甲1発明を適用しても、相違点2に係る本件発明1の構成は得られない。 c 小括 以上から、本件発明1は、甲2発明ではないし、また、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 イ 本件発明2~16について 本件発明2~13は、いずれも本件発明1の全ての構成を有する発明であり、本件発明14は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む異方性導電材料の発明であり、本件発明15は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む接続構造体の発明であり、本件発明16は、請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む電気電子部品の発明であり、本件発明2~16と甲2発明とは、少なくとも上記相違点2の点で相違するから、上記アで検討したのと同様に、本件発明2~16は、甲2発明ではないし、甲2発明及び甲1発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 ウ まとめ 以上のとおり、本件発明1~16は、甲1発明又は甲2発明ではなく、特許法第29条第1項第3号に該当しないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものとはいえない。 また、本件発明1~16は、甲1発明及び甲2発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求項1~16に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものとはいえない。 したがって、申立理由1及び申立理由2には理由がない。 4 申立理由3(明確性)について 本件発明1~16は、上記第3に示したとおりのものであり、その記載は、いずれも明確である。 申立人は、特許異議申立書31ページ8行~37ページ3行及び令和4年10月27日付け意見書の2ページ2行~6ページ8行において、実施可能要件違反と同様の理由により、本件特許に係る特許請求の範囲に記載された発明は明確でない旨主張している。 しかし、本件発明1~16が、発明の詳細な説明及び本件特許の出願当時の技術常識に基づいて実施できることは、上記第4 2(3)~(6)で検討したとおりである。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件発明1~16は、特許請求の範囲の記載が明確であるから、請求項1~16に係る特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、申立理由3には理由がない。 5 申立理由4(サポート要件)について 申立人は、特許異議申立書の38ページ8~17行において、本件特許の請求項9~11は、絶縁性コアのハイブリット粒子を規定しているが、絶縁性コアの種類は、導電粒子の性能に影響することが知られているにも関わらず、本件特許に係る明細書の実施例では樹脂粒子を用いたものはあるが、ハイブリット粒子を用いたものは無いため、本件特許の請求項9~11に係る発明においても、本件発明の効果が得られるかどうか不明であり、当業者といえども結果を把握することができないから、本件特許に係る明細書の記載に基づいて、本件特許の請求項9~11に係る発明まで一般化できるものではないので、本件特許の請求項9~11に係る発明は、本件特許に係る明細書の詳細な説明に記載されたものではない旨主張している。 しかし、本件発明9~11に係る発明が、上記本件課題を解決できると認識できる範囲のものであることは、上記第4 3(5)で検討したとおりであるから、絶縁性コアとしてハイブリッド粒子を用いた実施例がないからといって、本件発明の効果が得られないとはいえない。 したがって、申立人の上記主張は採用できない。 以上のとおりであるから、本件発明9~11は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから、請求項9~11に係る特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえず、申立理由4には理由がない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、請求項1~16に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1~16に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】導電粒子、導電材料およびそれを用いた接続構造体 【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は、絶縁性コアの表面部に導電層を有する導電粒子に関し、より詳細には、電子機器の実装されるチップの電極と、基板の電極の間を電気的に接続する導電材料の導電体として使用される導電粒子、導電材料および接続構造体に関する。 【背景技術】 【0002】 導電粒子は、硬化剤、接着剤および樹脂バインダーと混合して分散された形態で使われる異方性導電材料、例えば、異方性導電フィルム(Anisotropic Conductive Film)、異方性導電接着剤(Anisotropic Conductive Adhesive)、異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)、異方性導電インク(Anisotropic Conductive Ink)、異方性導電シート(Anisotropic Conductive Sheet)、等として用いられる。 【0003】 前記異方性導電材料は、フィルムオングラス(FOG;フレキシブル基板-ガラス基板)、チップオンフィルム(COF;半導体チップ-フレキシブル基板)、チップオングラス(COG;半導体チップ-ガラス基板)、フィルムオンボード(FOB;フレキシブル基板-ガラスエポキシ基板)等として用いられる。 【0004】 前記異方成導電材料は、例えば、半導体チップとフレキシブル基板とが接合されていると仮定すれば、異方性導電材料をフレキシブル基板上に配置し、半導体チップを異方性導電材料上に配置した後、異方性導電材料を加圧・加熱状態で硬化させることで導電粒子が半導体チップの電極と基板の電極とを電気的に接続するための接続構造体が実装される。 【0005】 導電粒子は、前記異方性導電材料に使用される場合には、導電粒子に硬化剤、接着剤、樹脂バインダー等を混合して使用され、加圧/加熱後の接続構造体となる場合には、異方性導電材料の硬化/接着により上部電極と下部電極との間の電気接続を維持することになる。 【0006】 電極間の電気的接続を維持する際の電子機器のエネルギー効率の観点から、初期に接続抵抗が低いことと高温高湿の評価、例えば85℃/85%信頼性評価後の抵抗増加が低いことが有利である。すなわち、異方性導電材料に用いられる導電粒子の性能にとって最も重要な点の一つは、低い初期抵抗と信頼性評価後の低い低抵抗増加である。 【0007】 例えば、日本特許第3581616号、同4052832号、同4113403号、同408137号、同3914206号などの特許は、低抵抗を実現するために、従来の導電層に抵抗が低い金属として、Ni-Ag、Ni-Cu、Ni-Au、Ni-B、Ni-Pなどを使用したり、または、導電層最外郭に信頼性に優れた金属として、Pt、Au、Pd、W、Co、Agなどを使用する方法を提示しており、日本特許第4674096号、同4593302号、同4860163号、同3083535号、同4718926号、同4589810号などの特許は、電極の酸化皮膜を容易に突き抜け入っ抵抗を下げる方法を提案している。 【0008】 また、日本特許3898510号、同4278374号、同4593302号、同4593302号、同4674119号、同5421982号、同6049461号などの特許は、導電粒子の強度と回復率を利用した方法を提示している。しかしながら、これら方法は、導電粒子の物理的性質の一部のみを用いる方法として有効な異方性導電材料の接合抵抗を達成するには限界がある。 【0009】 例えば、導電粒子の突起が存在し、圧縮時の強度が高ければ、電極の酸化皮膜を突き抜けて入ることが容易である。しかしながら、それだけでは突起がある導電粒子の強度が高ければ接続抵抗と信頼性の抵抗がすべて低くなるのは難しい。異方性導電材料の接合は、通常、加圧/加熱条件下で異方性導電材料の樹脂が時間を置いて硬化されるメカニズムを持つからである。すなわち、瞬間的な硬化ではなくある程度の時間を要するため、異方性導電材料の樹脂が完全硬化するまでには、導電粒子の弾性変形が少なく接続抵抗が低い点が考慮されるべきで、優れた異方性導電材料を実装することができるからである。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0010】 【特許文献1】日本特許第3581616号公報 【特許文献2】日本特許第3898510号公報 【特許文献3】日本特許第4052832号公報 【特許文献4】日本特許第4113403号公報 【特許文献5】日本特許第408137号公報 【特許文献6】日本特許第3914206号公報 【特許文献7】日本特許第4674096号公報 【特許文献8】日本特許第4593302号公報 【特許文献9】日本特許第4860163号公報 【特許文献10】日本特許第3083535号公報 【特許文献11】日本特許第4718926号公報 【特許文献12】日本特許第4589810号公報 【特許文献13】日本特許第4278374号公報 【特許文献14】日本特許第4593302号公報 【特許文献15】日本特許第4674119号公報 【特許文献16】日本特許第5421982号公報 【特許文献17】日本特許第6049461号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0011】 本発明の実施例が解決しようとする技術的課題は、前述した問題点に鑑みてなされたものであり、電極の酸化皮膜を容易に突き抜け接続して、初期接続の抵抗値が低い、弾性によって回復されず、高温/高湿下でも抵抗の増加も低く、信頼性に優れた導電粒子、異方性導電材料および接続構造体を提供することを目的とする。 【課題を解決するための手段】 【0012】 本発明の一態様に係る導電粒子は、 電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ、 前記導電粒子は、絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含めて、 微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの、導電粒子の変形率をx軸とし、下記[1]として定められる押込加工の弾性部割合をy軸とする場合にプロットしたグラフにおいて、 第1の不連続点以後に押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊されることを特徴とする。 【数1】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、WtotalはWelasticとWplasutic(塑性部分の押込ワーク)の合計の押込ワークを、nITは押込ワークの弾性部分割合を意味する) 【0013】 前記区間bの以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は-1≦c≦4であり、前記区間bの以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間aと区間bの間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さい。 【0014】 そして、前記導電粒子の変形率が17.4~70.0%の範囲で、酸化皮膜を貫通または破断させることができる。 【0015】 そして、前記絶縁性コアの表面は活性化処理された面であることができる。 【0016】 そして、前記活性化処理された面は、オゾン処理、電子線処理、プラズマ処理およびコロナ処理からなる群から選択される処理によって処理された面であることができる。 【0017】 そして、前記絶縁性コアは、前記活性化処理面に付着した触媒の下で、前記導電層がメッキされることができる。 【0018】 そして、前記絶縁性コアは樹脂微粒子またはハイブリッド粒子であることができる。 【0019】 また、前記樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系、イミド系から選ばれるモノマー、またはそれらの変性モノマー、あるいはこれらの混合モノマーの共重合体であってもよい。 【0020】 そして、前記ハイブリッド粒子は、有機コアと前記有機コアを取り囲む無機シェルとの構造を有する粒子、または無機コアと前記無機コアを取り囲む有機シェルとの構造を有する粒子であることができる。 【0021】 そして、前記有機コアまたは有機シェルは、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系およびイミド系から選択されるモノマー、またはそれらの変性モノマー、または前記モノマーの混合モノマーから提供されるのができる。 【0022】 そして、前記無機コアまたは無機シェルは、Si、Ti、Al、Zr、BaおよびWから選択される金属の酸化物、窒化物または炭化物から提供されるのができる。 【0023】 そして、前記導電層上に、絶縁層または絶縁粒子をさらに含むことができる。 【0024】 そして、前記導電粒子は、導電粒子の最表面に防錆処理をさらに施すことができる。 【0025】 本発明の他の態様に係る異方性導電材料は、前記導電粒子を含有する異方性導電材料である。 【0026】 本発明の他の態様に係る異方性導電材料は、前記導電粒子を含む接続構造体である。 【0027】 本発明の他の態様に係る異方性導電材料は、前記導電粒子を含む電気・電子部品である。 【発明の効果】 【0028】 本発明の実施形態に係る導電粒子は、初期の電気抵抗が低く、高温/高湿信頼性試験後に抵抗上昇が低い異方性導電材料と接続構造体を製造することができる。 【0029】 すなわち、本発明の実施形態に係る導電粒子は、酸化皮膜の破壊時点と異方性導電材料として樹脂の硬化度を考慮して、導電粒子を設計して、初期の電気抵抗が低く、接続信頼性を高める効果がある。 【図面の簡単な説明】 【0030】 【図1】図1は、押込加工の弾性部割合の概念を説明するグラフである。 【図2】図2は、導電粒子の変形率の変化によるnIT値のグラフである。 【発明を実施するための形態】 【0031】 以下、本発明を詳細に説明する前に、本明細書で使用される用語は特定の実施形態を説明することのみを目的としており、特許請求の範囲によってのみ定義されるように本発明の範囲を限定することを意図しない。本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、違っ特定されない限り、技術的には通常の技術を有する者に一般的に理解されているのと同じ意味を有する。 【0032】 本明細書および特許請求の範囲を通して、違っ特定されない限り、「含む」、「備える」という単語は、記載された冠詞、ステップまたは冠詞の物建、ステップ、または一群の物建、およびステップを含むことを意味し、任意にいくつかの他の物建、ステップ、または一群の物建、およびステップを除外する意味として使用されたものではない。 【0033】 一方、本発明の様々な実施形態は、明確な対応点がない限り、他の任意の実施形態と組み合わせることができる。具体的にまたは有利であると示されている任意の特徴は、好ましいまたは有利であると示されている他の任意の特徴と組み合わせることができる。 【0034】 以下の明細書で説明される押込加工の弾性部割合は、導電粒子の変形率に応じた押込加工の弾性部割合値(nIT)は、以下のように定義する: 【0035】 【数2】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、Wplasticは塑性部分の押込ワークを意味し、Wtotalは、WelasticとWplasticの合計であり、nITは押込ワークの全体に対する弾性部分割合を意味する) 【0036】 図1は、押込加工の弾性部割合の概念を説明するグラフである。押込加工の弾性部割合(nIT)は、微小圧縮試験機(MCT;Micro Compress Tester)を用いて測定することができる。印加荷重を変えて粒子の変形量を測定することにより、nIT値を得ることができる。このとき、変形量は圧子(indentor)の最大移動距離(hmax)を用いる。例えば、実施例3の場合、導電粒子を5mNで測定したとき、圧子の最大移動距離は1.397μmであり、このとき導電粒子の変形率は43.0%であり、Wtは2.593nJであり、Weは0.896nJであり、nITは34.6%である。したがって、測定率に応じたnITは測定される荷重を徐々に大きくすることにより、nIT値を得ることができる。 【0037】 前記nIT値は、微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)および一辺の長さが50mの平面圧子を用いて測定される。前記導電粒子の変形率に応じたnIT値の測定条件は、25℃における圧子の下降速度が0.33mN/秒、上昇速度が10秒で0.1mNである。このとき、粒子の変形量は圧子の最大移動距離(hmax)で測定される。 【0038】 以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。 【0039】 本発明の実施形態に係る導電粒子は、電極間に介在し、電極間を電気的に接続する導電粒子であり、少なくとも一方の電極の表面には酸化皮膜が設けられている。前記導電粒子は、絶縁性コアと、前記コア表面に設けられた導電層とを含む。 【0040】 図2は、本発明の一実施形態に係る導電粒子を、微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)を用いて25℃で圧縮した結果を示すグラフである。このとき、導電粒子の変形率をx軸とし、前記式(1)で求められる押込加工の弾性部割合をy軸とする。 【0041】 これによれば、グラフは2つの不連続点、すなわち第1の不連続点および第2の不連続点を有し、各不連続点の後でnITが一定のままである2つの区間を有する。第1の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔aと呼び、第2の不連続後にnITが一定に保たれる期間を間隔bと呼ぶ。第一不連続点は、導電粒子の導電層が破壊された支点であり、第二不連続点は、絶縁性コアの破壊された支点である。このとき、説明の都合上一定としているが、実際の実験では多少異なる場合がある。 【0042】 このとき、間隔aと間隔bとの間に電極の酸化皮膜の破断が生じる。すなわち、チップの電極および基板の電極と接触する導電粒子の導電層または突起を有する導電層は、導電層の破壊が生じる間隔aの後に酸化皮膜を突き抜けて入る。導電層が破壊する前に酸化皮膜が貫通していると、導電粒子の硬度が強すぎるため、導電粒子の変形が小さい状態で接続が行われ接続信頼性が弱くなり、通常、導電粒子の変形の60~80%の変形で電気的接続が行われるようにする電子製品の設計仕様に合わなくなる。 【0043】 したがって、導電粒子は、導電層が破壊された後、変形率の増加に応じて、押込加工の弾性部割合が大きくなる状態で、導電層または突起状の導電層が電極の酸化皮膜を貫通できる力を発現できるように設計する必要がある。 【0044】 このとき、酸化皮膜が破断した時点における導電粒子の変形率は、17.4~70.0%、好ましくは24.6~67.1%、より好ましくは30.0~65.0%、さらに好ましくは50.0~60.3%である。 【0045】 本発明の実施形態に係る導電粒子を異方性導電材料の電気的接続材料として使用する場合には、異方性導電フィルムを接合しようとする電極間に位置させて、異方性導電フィルムの樹脂を加熱/加圧下で硬化させて上下の電極を導電粒子で接続する方法を使用する。 【0046】 異方性導電材料の樹脂が硬化することにより、内部の導電粒子が一緒に固定されて、電気的な接続状態がそのまま維持され、接続安定性が確保される。 【0047】 このとき、異方性導電フィルム樹脂の75~95%の硬化反応は加熱/加圧条件下で行われるが、残りの5~25%は加熱/加圧条件を解除した後に行われる。このように、加熱/加圧条件を解除した後の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きいと、まだ完全に硬化されていない異方性導電材料と上下電極間の間隔をボルリゲされる原因となって、これ以降の接続抵抗を大幅に増加する原因として作用する。 【0048】 したがって、本発明の実施形態に係る導電粒子は、区間bを超えるのひずみによる押込加工の弾性部割合(nIT)の増加が非常に制限的に行われるように設計される。すなわち、区間b以降の区間における変形率の変化に応じた押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち傾き)は、-1≦c≦4、好ましくは-0.5≦c≦3.0が好ましく、-0.3≦c≦2.5がより好ましく、-0.2≦c≦2.0がさらに好ましい。また、区間b以降の区間では、圧痕の弾性部分が働き、区間aと区間bとの間の区間では、圧痕の最大弾性部分は小さくなる。 【0049】 この場合、区間aおよび区間bでは、圧痕加工の弾性部が高いため、酸化皮膜を貫通するのに適しており、また、区間b以降の圧痕加工の弾性部の変形率が低いため、好適である。異方性導電フィルム樹脂が完全硬化する前であっても、導電粒子の弾性が高いために接続が不安定になることはない。 【0050】 前記導電粒子の絶縁性コアは特に限定されない。例えば、樹脂微粒子や有機/無機ハイブリッド粒子を用いてもよい。 【0051】 前記樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系、イミド系などのモノマー、それらの変性モノマー、またはこれらの混合モノマーを用いて調製することができる。それらは、シード重合、分散重合、懸濁重合、乳化重合などによって重合することができる。 【0052】 前記有機/無機ハイブリッド粒子は、コアが有機材料の場合はシェルが無機材料であり、コアが無機材料の場合はシェルが有機材料であるコアシェル構造を有する。有機材料としては、上述のモノマーもしくはその変性モノマー、または混合モノマーを用いることができる。無機材料としては、SiO2、TiO2、Al2O3、ZrO2などの酸化物、-AlN、Si3N4、TiN、BaN-などの窒化物、WC、TiC、SiCなどの炭化物を用いることができる。 【0053】 シェルは、化学的塗布法、ゾルーゲル法、スプレー塗布法、CVD(化学的気相成長)法、PVD(物理的気相成長)法、メッキ法などにより形成することができる。粒子は、無機粒子が有機マトリックス中に分散しているタイプ、または有機粒子が無機マトリックス中に分散しているタイプ、または有機粒子と無機粒子とが50:50の比率にあるタイプも可能である。 【0054】 前記導電粒子の導電層の材料は特に限定されない。一般的な金属、例えば、金、銀、ニッケル、銅、スズ、亜鉛、チタンなどの単一金属、およびスズ-鉛、スズ-銅、スズ-亜鉛、ニッケル-などの二種合金リン、ニッケル-ホウ素およびニッケル-タングステン、銅-亜鉛-スズ、ニッケル-リン-タングステン、ニッケル-ホウ素-タングステンおよびニッケル-リン-コバルトなどの3種以上の合金を使用することができる。あるいは、単一の金属層の上に2種類または3種類の合金の導電層を形成する。 【0055】 前記導電粒子の導電層の厚さは、30~300nm程度が適当である。導電層の厚さが薄いと抵抗値が高くなる。導電層の厚みが大きすぎると、異方性導電材料との加熱/加圧の圧着条件で導電粒子がわずかに変形しても導電層と絶縁性コアとが剥離が起き製品の信頼性が低下する。好ましい厚さは80~200nmである。 【0056】 場合によっては、導電粒子の導電層の表面層は、金、銀、白金、またはパラジウムなどの貴金属を含有する。導電粒子の導電性が高まり、酸化防止の効果も得られるからである。前記層の形成方法は特に限定されない。一般的なスパッタリング法、めっき法、蒸着法などの従来公知の技術を用いることができる。 【0057】 前記導電粒子の突起の材質は特に限定されない。本発明の導電粒子を異方性導電材料に用いる場合には、圧着接合工程において樹脂バインダーと金属酸化物膜とを破壊するのに 十分な硬度を有していればよい。 【0058】 最も効果的な材料は金属です。金属は特に限定されない。例えば、金、銀、銅、ニッケル、チタン、タングステン、コバルト、ビスマス、パラジウムもしくはアンチモンのような単一金属、または銅-亜鉛、銅-スズ、ニッケル-リン、ニッケル-タングステンもしくはニッケルのような2種の合金、銅-亜鉛-スズ、ニッケル-リン-タングステン、ニッケル-ホウ素-タングステン、ニッケル-リン-コバルト、ニッケル-リン-パラジウムおよびニッケル-ホウ素-パラジウムのような3種以上の合金を使用することができる。 【0059】 前記突起の大きさは特に限定されない。突起の好ましい大きさは、50nm~500nmの凸形状である。突起の大きさが小さすぎても大きすぎても、金属酸化物層とバインダー樹脂とを破壊する効果が弱くなる。したがって、突起の大きさは100~300nmがより好ましい。 【0060】 本発明の実施形態に係る導電粒子の製造方法は、特に限定されない。例えば、触媒材料を絶縁性コアの表面に塗布し、導電層および突起部を無電解メッキによって形成することができる。小さい金属または無機粒子を絶縁性微粒子に付着させることができ、無電解めっきを行って導電層および突起を形成することができる。 【0061】 コア表面を活性化することは、前記触媒材料を塗布する前に実施することができる。活性化表面と接触するように触媒材料を提供することが望ましい。 【0062】 活性化処理は、触媒材料を改善された接着力で表面に付与するために行われる。活性化処理は、オゾン処理、電子線照射、またはプラズマもしくはコロナ処理により行うことができる。オゾンを投入することが反応の間に適用しやすいので好ましい。 【0063】 オゾン処理は、容器、装置、配管の腐食性、処理時間の短縮を考慮して適切な量で実施することができる。導入されるオゾンの量は10から50,000ppmの範囲であり得る。好ましくは50~25,000ppmの範囲、より好ましくは100~10,000ppmの範囲であり、この範囲内でコア表面に活性化処理を十分に施すことができる。 【0064】 本発明の実施形態に係る導電粒子の最外層は絶縁層を有することが好ましい。電子製品の小型化、高集積化に伴い電極のピッチが狭くなり、最外周に絶縁性粒子が存在しない場合には隣接する電極との間で電気的な導通がとられる。絶縁層を形成する方法としては、官能基を用いて絶縁性粒子と導電粒子の最外周とを化学的に結合させる方法、絶縁性溶液を溶媒に溶解させる方法、スプレーまたはディップで塗布する方法が挙げられる。 【0065】 本発明の実施形態に係る導電層の導電粒子は、防錆処理されていることが好ましい。防食処理は、水との接触角を増大させて高湿度環境下での信頼性を向上させるとともに、不純物が水に溶けて接続部材の性能劣化を低減させる効果があるからである。したがって、防食剤は、疎水性を有することが好ましい。コーティングは、防食剤を溶媒に溶解し、続いて浸漬、噴霧などによって行うことができる。 【0066】 導電粒子の粒径は、特に限定されないが、5μm以下が好ましく、4μm以下がより好ましい。本発明の導電粒子を用いて作製した異方性導電材料を電極間のギャップが極めて小さい場合に使用するため、5Å以上の距離を使用することはめったにない。 【0067】 導電粒子の平均直径は、粒度分析器(BECKMAN MULTISIZER TM 3)を用いて測定された最頻値を用いて決定される。一例として,測定された導電粒子の数は75,000であった。 【0068】 異方性導電材料は、本発明の実施形態に係る導電粒子を結着樹脂中に分散させることにより製造することができる。異方性導電材料としては、異方性導電ペースト、異方性導電フィルム、異方性導電シートなどが挙げられる。 【0069】 樹脂バインダーは特に限定されない。例えば、スチレン系、アクリル系、酢酸ビニル系等のビニル系樹脂が挙げられる。ポリオレフィン系、ポリアミド系等の熱可塑性樹脂。ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等の硬化性樹脂。これらの樹脂は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。BPO(Benzoyl Peroxide)などのラジカル開始剤またはTPO(Trimethylbenzoyl Phenylphosphinate)などの光開始剤、あるいはHX3941HPなどのエポキシ潜在性硬化剤は、樹脂の重合または硬化のために単独でまたは組み合わせて使用できる。また、異方性導電材料用結着樹脂には、本発明の目的を達成しない範囲で他の材料を添加してもよい。例えば、着色剤、柔軟剤、熱安定剤、光安定剤、酸化防止剤、および無機粒子。 【0070】 本発明の実施形態に係る異方性導電材料の製造方法は特に限定されない。例えば、導電粒子を樹脂バインダー中に均一に分散させて異方性導電ペーストとして使用したり、離型紙の上に薄く広げて異方性フィルムとして使用することができる。 【0071】 本発明の接続構造体は、本発明の実施形態に係る導電粒子または本発明の実施形態に係る異方性導電材料を用いて回路基板間を回路基板間で接続する。例えば、スマートフォンの表示用半導体チップと回路を構成するガラス基板とを接続したり、μ-LEDやmini-LEDを回路基板に接続したりする手段として利用することができる。本発明の接続構造体は、回路の接続不良や急激な抵抗の増加による回路の誤動作を引き起こさない。 【実施例】 【0072】 以下、実施例を挙げ本発明について具体的に開示する。下の実施例は、本発明を例示するためのものであり、本発明をこれらに限定しようとするわけではない。 【0073】 実施例 1 1) 絶縁性コアの合成 750gのモノマーTMPETA(Trimethylolpropane ethoxylate triacrylate)、40gのHDEDA(1,6-Hexanediol ethoxylate diacrylate)および750gのDVB(Divinylbenzene)を3Lガラスビーカーに添加し、そして5gの開始剤BPOを添加し、そして混合物を混合した。これを40kHzの超音波浴中で10分間処理して第一溶液を調製した。 【0074】 500gの分散安定剤PVP-30K(Polyvinylpyrrolidone-30K)および界面活性剤Solusol(Dioctyl sulfosuccinate sodium salt)を、5LのPPビーカー中の4,000gの脱イオン水に添加して第2の溶液を調製した。 【0075】 第一溶液と第二溶液を50Lの反応器に入れ、41,000gの脱イオン水を加えた。溶液を超音波ホモジナイザー(20kHz、600W)で90分間処理し、溶液を120rpmで回転させながら85℃に加熱した。溶液が85℃に達した後、16時間を維持して重合工程の処理をした。 【0076】 重合微粒子を濾過、洗浄、分級、乾燥して、絶縁性コアとしての樹脂微粒子を得た。絶縁性コアの平均直径は、粒度分析器(BECKMAN MULTISIZER TM3)を用いて測定された最頻値(mode)を用いて測定された。測定された絶縁性コアの数は75,000であった。平均直径は2.46μmでした。 【0077】 2)粒子めっきプロセス ▲1▼触媒処理工程 25gの調製した絶縁性コアを800gの脱イオン水および1gの界面活性剤Triton X100の溶液に入れ、超音波浴で1時間処理して、洗浄および脱脂処理を行い、過剰の未反応モノマーおよび油性成分を除去した。絶縁性コア洗浄および脱脂工程の終わりに、40℃の脱イオン水を用いて水洗工程を3回行った。水洗工程の後、オゾン濃度200ppmの空気を用いて1時間バブリングを行った。溶液を200rpmで撹拌しながらオーバーヘッドスターラー(overhead stirrer)上でインペラーを用いて空気バブリングを行った。オゾン処理後、洗浄工程を1回だけ行った。 【0078】 続いてPd触媒処理。150gの塩化第一スズおよび300gの35~37%塩酸を600gの脱イオン水に溶解し、そして洗浄および脱脂した絶縁性コアを装入し、次いで30℃で30分間浸漬および撹拌して増感した。水で3回洗浄する。 【0079】 脱イオン水600gに1gの塩化パラジウム、200gの35~37%塩酸を添加し、40℃で1時間賦活処理を行った。活性化処理後、水洗工程を3回行った。 【0080】 活性化された絶縁性コアを、100gの35~37%塩酸,および600gの脱イオン水の溶液中に入れ、混合物を促進処理のために室温で10分間撹拌した(促進処理)。促進処理後、3回水洗して無電解めっき用触媒処理絶縁芯材を得た。 【0081】 ▲2▼メッキ工程 5Lの反応器中で、3500gの脱イオン水、Ni塩としての260gの硫酸ニッケル、錯化剤としての5gの酢酸ナトリウム、2gの乳酸、安定剤としての0.0019のPb-アセテート、0.001gのチオ硫酸ナトリウム、界面活性剤としての1gのPEG-1200,および0.02gのTriton X-100を順番に溶解してめっき液を調製した(溶液(a))。触媒処理した絶縁性コアを調製した溶液(a)に入れ、超音波ホモジナイザーを用いて10分間分散させた。分散処理後、溶液(溶液(b))のpHをアンモニア水で5.5に調整した。 【0082】 脱イオン水400g、還元剤として次亜リン酸ナトリウム300g、安定剤としてチオ硫酸ナトリウム0.0001gを1Lのビーカーに溶解して溶液(c)を調製した。溶液(c)を55℃の温度で計量ポンプにより毎分10gの量で5Lの反応器(溶液(b))に導入し、そして反応器の温度を加熱しそして30分に70℃に達するまで維持した。 【0083】 溶液(c)の添加が完了し、30分間維持した後、Niメッキ導電粒子を得た。作製した導電粒子の突起(絶縁性微粒子)の大きさは、最表面の最大点同心円(DH)と最下点同心円(DL)を用いて、FE-SEM写真を用いて以下のようにして求めることができる。 【0084】 【数3】 【0085】 作製した導電粒子の突起のサイズは112nmであった。 【0086】 実施例 2 1500gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。残りの工程は、上記で調製した絶縁性コア24gを使用して、実施例1と同じ方法で実施した。製造された絶縁性コアの平均直径は2.53μmであった。作製した導電粒子の突起のサイズは86nmであった。 【0087】 実施例 3 800gのTMPETA、50gのHDEDAおよび800gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。上記のようにして製造したインシュレータコア40gを用いて、実施例1と同様にして残りの工程を行った。製造された絶縁性コアは3.04μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは135nmであった。 【0088】 実施例 4 1100gのTMMT(Tetramethylol Methane Tetaacrylate)および400gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。残りの工程は、上記で調製した絶縁性コア25gを用いて実施例1と同様にして行った。製造された絶縁性コアは2.96μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは131nmであった。 【0089】 実施例 5 800gのMMA(Methylmethacrylate)および800gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。それ以外は実施例1と同様にして、上記で調製したインシュレータコア35gを用いて実施した。作製したインシュレータコアの平均直径は3.80μmであった。作製した導電粒子の突起のサイズは173nmであった。 【0090】 実施例 6 1800gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。それ以外は実施例1と同様にして、上記で調製したインシュレータコア35gを用いて実施した。製造された絶縁性コアは4.80μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは153nmであった。 【0091】 実施例 7 1650gのHDEDAを使用して絶縁性コアを合成した。実施例1の触媒処理は、調製した40gの絶縁性コアを用いて行った。実施例1と同じ条件のめっき液(a)、(b)、(c)を用い、液温(b)を65℃に保ち、液温(c)を毎分10gの量の定量ポンプを使用して添加した。 【0092】 溶液(c)の添加が完了し、30分間維持した後、Niメッキ導電粒子を得た。製造された絶縁性コアは平均直径3.75μmを有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは30nmであった。 【0093】 実施例 8 1500gのスチレンと250gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。上記で調製した絶縁性コア45gを用いて、実施例1と同様にして残りの工程を行った。製造された絶縁性コアは平均直径3.81μmを有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは164nmであった。 【0094】 実施例 9 前記実施例3の導電粒子を用いて絶縁性コアを被覆した。 1)絶縁性コアの製造 250mlのフラスコに10gのスチレン、3gのBA(Butyl acrylate)および150gの脱イオン水を入れて混合した。この混合物に2.0gのPVP-30Kと0.3gのペルオキソ二硫酸カリウム(Potassium peroxodisulfate)を加え、70℃で10時間攪拌した。次いで、この反応液に3.0gのEGDMA(Ethylene glycol dimethylacrylate)と0.5gのPVA-150(MW8,000-Polyvinyl Alchol)と30gの脱イオン水を加え、さらに70℃で12時間攪拌した。反応混合物にさらにヘキサメチレンジアミン(Hexamethylenediamine)3.0gを加え、50℃で24時間攪拌して平均粒径150nmの絶縁性コアを得た。絶縁性コアをSEMによって確認し、平均直径を10個の粒子を測定することによって決定した。 【0095】 2)絶縁性微粒子のコーティング 調製した絶縁性コアを洗浄、濾過した後、メチルアルコール溶媒に投入して固形分5%の分散液を調製した。500gのメタノール、20gの前記分散液および10gの実施例3の導電粒子を1Lのビーカーに添加し、混合物を50℃の超音波浴中で30分間超音波処理し、10時間撹拌した。絶縁性微粒子で被覆された導電粒子を調製する。 【0096】 実施例 10 500gの脱イオン水を20gのSG-1(商品名:MSC社製)に加え、溶液の温度を60℃に保った。実施例3で調製した10gの導電粒子を入れた。溶液を60℃に保ち、5分間超音波処理した。超音波処理した導電粒子を洗浄、濾過、乾燥して防食性を有する導電粒子を得た。乾燥した防錆導電粒子を純水に投入したところ、純水に浮遊する導電粒子の重量比率が98%以上であることを確認し、防食処理を行った。 【0097】 比較例 1 1600gのMMAおよび250gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。オゾン処理を行った以外は、実施例1と同様にして、準備した絶縁性コア40gを用いた以外の工程を行った。製造された絶縁性コアは4.71μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは184nmであった。 【0098】 比較例 2 1450gのMMA(Methylmethacrylate)および200gのDVBを用いて絶縁性コアを合成した。残りの工程は、調製した絶縁性コア45gを用いて実施例1と同様にして行った。調製された絶縁性コアは3.00μmの平均直径を有していた。作製した導電粒子の突起のサイズは162nmであった。 【0099】 実験例 実施例1~10、比較例1~2で得られた導電粒子の評価を行った。 1)導電粒子サイズの測定 導電粒子の平均粒径は、Particle Size Analyzer(BECKMAN MULTISIZER TM3)を用いて測定された最頻値を用いて求められる。測定された導電粒子の数は75,000であった。 【0100】 2) nITと変形量の測定 nITおよび変形量は、一辺の長さが50μmのフラット圧子(Indenter)を用いた微小圧縮試験機(FISHERSCOPE HM2000)で測定した。nITと変形量は合計5個の導電粒子について測定し平均した。測定条件は、25℃における圧子の下降量が0.33mN/秒、上昇量が10秒で0.1mNであった。微小圧縮試験機内のソフトウェア(software WinHCU5.1;微小圧縮試験機の操作解析ソフトウェア)を用いて、nITおよびHmax(最大圧子深さ)の値をとることにより、nITおよび変形量を測定した。 【0101】 3)接続抵抗の測定 ▲1▼異方性導電フィルムの製造 ナフタレン系エポキシ樹脂 HP4032D(DIC製、商品名)2gとフェノキシ樹脂YP-50(東トー化成社製、商品名)20gとアクリルエポキシ樹脂 VR-60(昭和電工社製、商品名)25g、熱硬化剤 HXA-3922HP(旭化成社製、商品名)22g、エポキシシランカップリング剤 A-187(モメンティブ社製、商品名)5gをよくかき混ぜた後、溶媒であるトルエンを用いて固形分50%の配合物を作った。 前記導電粒子を配合物重量比で10%になるように添加した後、プラネタリーミキサーを用いて公転400rpm、自転150rpmの条件で5分間混合して異方性導電ペーストを作った。 前記異方性導電ペーストを用いて離型フィルム上に20μmの厚さのフィルムを作成した後、75℃/5分間熱風乾燥炉を用いて大気中で乾燥して、最終的12μm厚さの異方性導電フィルムを作った。 【0102】 ▲2▼抵抗測定用電極 抵抗測定のための電極は、ガラス基板上にITO(lndium Tin Oxide)を蒸着して透明電極が形成されたガラス基板と電極幅が20μm、電極間隔が50μmのFPCBを用意した。電極のパターンは、Auベースに対してAlで被覆された。 【0103】 ▲3▼接合(ボンディング) 前記異方性導電フィルムを幅3mmで切断し、幅1mm、長さ3mmの接合治具を用いて、ITOがある遊離基板状に0.2MPa、120℃、10秒加圧着を行った後、FPCBを置き、40MPa、200℃、20秒間接合を実施して接続構造体を作製した。 【0104】 ▲4▼初期接続抵抗の測定 前記接続構造体のFPCB電極を用いて抵抗値を測定した。ADCMT 6871E Digital Multimeter 2probeを用いて抵抗を測定した。 【0105】 ▲5▼信頼性抵抗の測定 85℃/85%湿度条件下に100時間放置した後に信頼性の抵抗を測定した。ADCMT 6871E Digital Multimeter 2probeを用いて抵抗を測定した。 【0106】 初期接続抵抗の基準は以下の通りである。 ○○○:2Ω以下 ○○:2Ω超~3Ω以下 ○:3Ω超~5Ω以下 ×:5Ω超 【0107】 また、85℃/85%、100時間信頼性試験後の接続抵抗の増加基準は以下の通りです。 ○○○:2Ω以下の上昇 ○○:2Ω超~4Ω以下の上昇 ○:4Ω超~6Ω以下の上昇 ×:6Ω超~上昇 【0108】 表1は、各実施形態の変形率に応じた押込加工の弾性部割合を示す。 【表1】 【0109】 また、表2において、前述した実施例および比較例の初期抵抗および85/85試験を行って抵抗値を測定した。 【表2】 【0110】 前記表1、表2および関連する図1~図2の実施例1~10と比較例1~2とを比較した結果、酸化皮膜破壊時の導電粒子の変形率は17.4~70%が好ましく、区間bを通過した区間の変形率に応じた押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は-1≦c≦4となるように設計されている。 【0111】 前記実施形態に示した特徴、構造、効果などは、他の実施形態においても、その実施形態が属する技術分野の当業者によって組み合わせたり修正したりすることができる。したがって、本発明はこれらの組み合わせおよび変更に限定されないことを理解されたい。 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 電極間に含まれている、前記電極同士を電気的に接続するための導電粒子として、前記電極のうち少なくとも一方の電極の表面に酸化皮膜が備えられ、 前記導電粒子は、絶縁性コアと前記コアの表面に設けられた導電層、またはコアの表面に突起を有する導電層を含めて、 微小圧縮試験機を用いて前記導電粒子を25℃で圧縮したときの、導電粒子の変形率をx軸とし、下記[1]として定められる 押込加工の弾性部割合をy軸とする場合にプロットしたグラフにおいて、 第1の不連続点以後に前記導電層が破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(a)と、第2の不連続点以後に前記絶縁性コアが破壊されて押込加工の弾性部割合が一定に保たれる区間(b)との間の導電粒子の押込加工の弾性部割合が大きくなる状態の区間と変形率の範囲で、前記導電層または前記突起を有する導電層によって前記酸化皮膜が貫通または破壊されることを特徴とする導電粒子。 【数1】 (ここで、Welasticは弾性部分の押込ワーク(Indentation work)を、WtotalはWelasticとWplasutic(塑性部分の押込ワーク)の合計の押込ワークを、nITは押込ワークの弾性部分割合を意味する) 【請求項2】 前記区間(b)の以後の区間での変形率による押込加工の弾性部割合の平均変形量c(すなわち、傾き)は-0.5≦c≦3.0であり、前記区間(b)の以後の区間で押込加工の弾性部割合は区間(a)と区間(b)の間区間の最大押込加工の弾性部割合よりも小さい請求項1に記載の導電粒子。 【請求項3】 前記導電粒子の変形率が30.0~65.0%の範囲で酸化皮膜が貫通または破壊されるものである請求項1に記載の導電粒子。 【請求項4】 前記絶縁性コアの表面は活性化された面である請求項1に記載の導電粒子。 【請求項5】 前記活性化された表面は、オゾン処理、電子線処理、プラズマ処理およびコロナ処理からなる群から選択される処理によって処理された表面である請求項4に記載の導電粒子。 【請求項6】 前記絶縁性コアは、前記活性化処理面に付着した触媒の下で、前記導電層がメッキされたものである請求項4に記載の導電粒子。 【請求項7】 前記絶縁性コアは樹脂微粒子またはハイブリッド粒子である請求項6に記載の導電粒子。 【請求項8】 前記樹脂微粒子は、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系およびイミド系から選択されるモノマー、またはそれらの変性モノマー、またはモノマーの混合モノマーから提供されるものである請求項7に記載の導電粒子。 【請求項9】 前記ハイブリッド粒子は、有機コアと有機コアを取り囲む無機シェルとの構造を有する粒子、または無機コアと無機コアを取り囲む有機シェルとの構造を有する粒子である請求項7に記載の導電粒子。 【請求項10】 前記有機コアまたは有機シェルは、ウレタン系、スチレン系、アクリレート系、ベンゼン系、エポキシ系、アミン系およびイミド系から選択されるモノマー、またはそれらの変性モノマー、またはモノマーの混合モノマーから提供されるものである請求項9に記載の導電粒子。 【請求項11】 前記無機コアまたは無機シェルは、Si、Ti、Al、Zr、BaおよびWから選択される金属の酸化物、窒化物または炭化物から提供されるものである請求項9に記載の導電粒子。 【請求項12】 前記導電層上に、絶縁層または絶縁粒子をさらに含む請求項1に記載の導電粒子。 【請求項13】 前記導電粒子の最表面に防錆処理を施したものである請求項1に記載の導電粒子。 【請求項14】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む異方性導電材料。 【請求項15】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む接続構造体。 【請求項16】 請求項1~13のいずれかに記載の導電粒子を含む電気電子部品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-01-18 |
出願番号 | P2019-154991 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(H01B)
P 1 651・ 537- YAA (H01B) P 1 651・ 113- YAA (H01B) P 1 651・ 851- YAA (H01B) P 1 651・ 536- YAA (H01B) P 1 651・ 852- YAA (H01B) P 1 651・ 841- YAA (H01B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
恩田 春香 |
特許庁審判官 |
鈴木 聡一郎 河本 充雄 |
登録日 | 2021-08-27 |
登録番号 | 6935465 |
権利者 | 株式会社ドクサンハイメタル |
発明の名称 | 導電粒子、導電材料およびそれを用いた接続構造体 |
代理人 | 弁理士法人太陽国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 小野国際特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人太陽国際特許事務所 |
代理人 | 特許業務法人 小野国際特許事務所 |