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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 F25B 審判 全部申し立て 2項進歩性 F25B |
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管理番号 | 1403605 |
総通号数 | 23 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2023-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2021-03-02 |
確定日 | 2023-08-08 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第6762247号発明「冷凍冷蔵装置」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6762247号の明細書、特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正明細書、特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第6762247号の請求項1-2に係る特許を維持する。 特許第6762247号の請求項3に係る特許についての特許異議の申立てを却下する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6762247号の請求項1-3に係る特許についての出願は、平成29年3月10日の出願であって、令和2年9月10日にその特許権の設定登録がされ、同年9月30日に特許掲載公報が発行された。 本件特許異議の申立ての経緯は、次のとおりである。 令和3年 3月 2日 :特許異議申立人 大行尚哉(以下、「申立人」という。) による請求項1-3に係る特許に対する特許異議の申立て 同年 6月11日付け:取消理由通知 同年 8月19日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出 同年11月22日 :申立人意見書の提出 令和4年 1月26日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 4月 1日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出 同年 4月20日 :特許権者手続補正書の提出 同年 7月12日 :申立人意見書の提出 同年 9月30日付け:訂正拒絶理由通知書 同年11月 4日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出 同年11月16日付け:却下理由通知書 同年12月 9日 :特許権者弁明書の提出 同年12月15日付け:手続却下の決定 令和5年 1月26日付け:取消理由通知(決定の予告) 同年 3月15日 :特許権者意見書、訂正請求書の提出(以下、この訂正請求を「本件訂正請求」といい、この訂正請求による訂正を「本件訂正」という。) 同年 5月10日 :申立人意見書の提出 なお、令和3年8月19日及び令和4年4月1日に特許権者がした訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものとみなす。 第2 本件訂正の適否 1.本件訂正の内容 本件訂正の内容は、訂正箇所に下線を付して示すと、以下のとおりである。 (1)一群の請求項1~3の訂正 ア 訂正事項1 特許請求の範囲の請求項1に「集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向と交差する方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)とを有し、」とあるのを、 「集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と 、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)と、フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有し、」に訂正する。 請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。 イ 訂正事項2 特許請求の範囲の請求項1に「集約蒸発器(32)が配置された冷気循環路(47)内に、気体流量の大きな第1の循環領域(47a)と、該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)とが形成されており、」とあるのを、 「集約蒸発器(32)が配置された冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており、」に訂正する。 請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。 ウ 訂正事項3 特許請求の範囲の請求項1に「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が第1の循環領域(47a)側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が第2の循環領域(47b)側に配置されている」とあるのを、 「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置されるとともに、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が第1の循環領域(47a)側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が第2の循環領域(47b)側に配置されており、」に訂正する。 請求項1を引用する請求項2も同様に訂正する。 エ 訂正事項4 特許請求の範囲の請求項1に「いることを特徴とする冷凍冷蔵装置。」とあるのを、 「各蒸発管(57・58)は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート(59)から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部同士を連結するU字状の湾曲部とで構成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されており、 エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されており、 各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されており、 集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で、該集約蒸発器(32)が冷気循環路(47)内に固定されていることを特徴とする冷凍冷蔵装置。」に訂正する。 請求項1を引用する請求項2についても同様に訂正する。 オ 訂正事項5 特許請求の範囲の請求項2の 「冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置されており、 集約蒸発器(32)の除霜を担う除霜ヒータ(61)が、集約蒸発器(32)の最下端部に配されている、請求項1記載の冷凍冷蔵装置。」とあるのを、 「集約蒸発器(32)の除霜を担う除霜ヒータ(61)が、集約蒸発器(32)の最下端部に配されている、請求項1記載の冷凍冷蔵装置。」に訂正する。 カ 訂正事項6 特許請求の範囲の請求項3を削除する。 (2)明細書の訂正 ア 訂正事項7 明細書の段落【0008】に「本発明は、常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル11と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル12と、冷気循環路47内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル11・12により共用された一つの集約蒸発器32とを備える冷凍冷蔵装置を対象とする。集約蒸発器32は、冷気循環路47の冷気流通方向と交差する方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン55からなるフィン群56と、各フィン55を貫通して配管された冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58とを有する。集約蒸発器32が配置された冷気循環路47内に、気体流量の大きな第1の循環領域47aと、該第1の循環領域47aよりも気体流量が小さな第2の循環領域47bとが形成されている。そして、メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が第1の循環領域47a側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が第2の循環領域47b側に配置されていることを特徴とする。」とあるのを、 「本発明は、常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル11と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル12と、冷気循環路47内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル11・12により共用された一つの集約蒸発器32とを備える冷凍冷蔵装置を対象とする。集約蒸発器32は、冷気循環路47の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン55からなるフィン群56と 、各フィン55を貫通して配管された冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58と、フィン群56の左右両端に配されたエンドプレート59・59とを有する。集約蒸発器32が配置された冷気循環路47内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域47aが形成され、冷気循環路47内の下方側に該第1の循環領域47aよりも気体流量が小さな第2の循環領域47bが形成されている。メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が集約蒸発器32の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が集約蒸発器32の下方側に配置されるとともに、メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が第1の循環領域47a側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が第2の循環領域47b側に配置されている。各蒸発管57・58は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート59から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部同士を連結するU字状の湾曲部とで構成されている。メインの冷凍サイクル11の蒸発管57と、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58のそれぞれは、冷気循環47を区画する上壁面1aと平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器32には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル11の蒸発管57と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル12の蒸発管58とが上下2段に配されている。エンドプレート59に対する蒸発管57・58の接続始端で規定される当該蒸発管57・58に対する冷媒の入口57a・58aが、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート59に対する蒸発管57・58の接続終端で規定される蒸発管57・58に対する冷媒の出口57b・58bが冷気流通方向の風上側に配置されている。各蒸発管57・58を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されている。集約蒸発器32の上端面の全体が冷気循環路47を区画する上壁面1aに接する状態で、該集約蒸発器32が冷気循環路47内に固定されている。」に訂正する。 イ 訂正事項8 明細書の段落【0009】に「具体的には、冷気循環路47内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域47aが形成され、冷気循環路47内の下方側に該第1の循環領域47aよりも気体流量が小さな第2の循環領域47bが形成されており、メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が集約蒸発器32の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が集約蒸発器32の下方側に配置されており、集約蒸発器32の除霜を担う除霜ヒータ61が、集約蒸発器32の最下端部に配されている形態を採ることができる。」とあるのを、 「集約蒸発器32の除霜を担う除霜ヒータ61が、集約蒸発器32の最下端部に配されている形態を採ることができる。」に訂正する。 ウ 訂正事項9 明細書の段落【0010】を削除する。 エ 訂正事項10 明細書の段落【0030】を削除する。 2.訂正の適否についての判断 (1)一群の請求項1~3の訂正 ア 訂正事項1 (ア)訂正の目的 訂正事項1は、訂正前の請求項1における「フィン(55)」及び「フィン群(56)」について、「冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設」すること及び「フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有」することを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項1は、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「明細書等」という。)の段落【0021】に「図5に示すように、集約蒸発器32は、冷気循環路47の冷気流通方向(前後方向)に伸びるとともに、該冷気流通方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に等間隔を置いて並設された複数枚のフィン55からなるフィン群56と、フィン群56を貫通して配管された各冷凍サイクル11・12の蒸発管57・58と、フィン群56の左右両端に配されたエンドプレート59・59とを備えている。・・・」と記載されているから、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項1は、訂正前の請求項1の「フィン(55)」及び「フィン群(56)」に係る発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 イ 訂正事項2 (ア)訂正の目的 訂正事項2は、訂正前の請求項1における「冷気循環路(47)」について、「冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成され」ることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項2は、明細書等の請求項2に「冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており」と記載されているから、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項2は、訂正前の請求項1の「冷気循環路(47)」に係る発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 ウ 訂正事項3 (ア)訂正の目的 訂正事項3は、訂正前の請求項1における「メインの冷凍サイクル(11)」及び「サブの冷凍サイクル(12)」について、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置される」ことを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項3は、明細書等の請求項2に「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置されており」と記載されているから、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項3は、訂正前の請求項1の「メインの冷凍サイクル(11)」及び「サブの冷凍サイクル(12)」に係る発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 エ 訂正事項4 (ア)訂正の目的 訂正事項4は、訂正前の請求項1の「蒸発管(57・58)」及び「集約蒸発器(32)」について、 「各蒸発管(57・58)は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート(59)から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部同士を連結するU字状の湾曲部とで構成されており 」、 「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されており」、 「エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されており」、 「各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されて」いること、及び 「集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で、該集約蒸発器(32)が冷気循環路(47)内に固定されて」いることを限定するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 明細書等の段落【0021】に「各冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58は、左右方向に延びる直管部と、直管部を連結するU字状の湾曲部とが連続する一筆書き状に形成されている。」と記載され、【図5】から「複数本の直管部」が「前後方向に配列」されていること、「U字状の湾曲部」が「エンドプレートから左右外方向に突出」していることが看取できる。 明細書等の段落【0022】に「図1に示すように、集約蒸発器32は、第1冷凍サイクル11を構成する蒸発器18が上方側に位置し、第2冷凍サイクル12を構成する蒸発器28が下方側に位置する、上下二段状に構成されており」と記載されており、【図1】から、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)」と、「サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)」のそれぞれが「冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列」されていることが看取できる。 明細書等の請求項3に「両冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されている」と記載され、蒸発器に対する冷媒の入口(57a・58a)及び冷媒の出口(57b・58b)が、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端、接続終端であることは、蒸発器の構造から自明の事項ということができる。 明細書等の段落【0021】に「それぞれの蒸発管57・58の冷媒の入口57a・58aは後端側に形成され、冷媒の出口57b・58bは前端側に形成されており、冷媒の入口57a・58aから蒸発管57・58内に送給された冷媒は、蛇行しながら後方から前方に向かって進み、冷媒の出口57b・58bから送出されるようになっている。」と記載されており、【図5】から、冷気循環路(47)中の冷気が蒸発器28の前端側から後端側に流通することが看取できるから、蒸発管57・58の湾曲部において、冷媒が冷気流通方向の風下側から風上側に流れることは、自明の事項ということができる。 明細書の段落【0022】に「集約蒸発器32は、・・・その上端面が本体ケース1の上壁面1aに接する状態で冷気循環路47内に固定されている。」と記載されており、【図1】から集約蒸発器32の上端面の全体が上壁面1aに接していることが看取できる。 以上のことから、訂正事項4は、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項4は、訂正前の請求項1の「蒸発管(57・58)」及び「集約蒸発器(32)」に係る発明特定事項を直列的に付加するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 オ 訂正事項5 (ア)訂正の目的 訂正事項5は、訂正事項2、3によって、訂正前の請求項2の「冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成され」、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置され」るとの発明特定事項を、訂正前の請求項1に直列的に付加することに伴って、重複する当該発明特定事項を訂正前の請求項2から削除するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項5は、訂正事項2、3によって訂正前の請求項2の当該発明特定事項を、訂正前の請求項1の直列的に付加することに伴って、重複する当該発明特定事項を訂正前の請求項2から削除するものであるから、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであることが明らかである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項5は、訂正事項2、3によって訂正前の請求項2の当該発明特定事項を、訂正前の請求項1の直列的に付加することに伴って、重複する当該発明特定事項を訂正前の請求項2から削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかである。 カ 訂正事項6 (ア)訂正の目的 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであることが明らかである。 (ウ)実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項6は、訂正前の請求項3を削除するものであるから、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでないことが明らかである。 キ 一群の請求項について 訂正事項1~6に係る訂正前の請求項1~3について、請求項2~3は、ぞれぞれ直接的又は間接的に請求項1を引用しているものであって、訂正事項1~4によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものであるから、本件訂正請求は、一群の請求項ごとに請求されたものであり 、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、一群の請求項である。 (2)明細書の訂正 ア 訂正事項7 (ア)訂正の目的 訂正事項7は、訂正事項1~4により請求項1が訂正されたことに伴い、請求項1と明細書の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項7は、訂正事項1~4により請求項1が訂正されたことに伴い、請求項1と明細書の記載との整合をとるものであるから、訂正事項1~4と同様の理由により、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)一群の請求項との関係について 訂正事項7によって訂正された明細書の段落【0008】は、訂正後の請求項1に対応する記載になっている。 そして、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」であるから、訂正後の請求項[1~3]が、訂正事項7による明細書の訂正と関係する請求項である。 イ 訂正事項8 (ア)訂正の目的 訂正事項8は、訂正事項5により請求項2が訂正されたことに伴い、請求項2と明細書の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項8は、訂正事項5により請求項2が訂正されたことに伴い、請求項2と明細書の記載との整合をとるものであるから、訂正事項5と同様の理由により、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)一群の請求項との関係について 訂正事項8によって訂正された明細書の段落【0009】は、訂正後の請求項2に対応する記載になっている。 そして、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」であるから、訂正後の請求項[1~3]が、訂正事項8による明細書の訂正と関係する請求項である。 ウ 訂正事項9 (ア)訂正の目的 訂正事項9は、訂正事項6により請求項3が削除されたことに伴い、請求項3と明細書の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項9は、訂正事項6により請求項3が削除されたことに伴い、請求項3と明細書の記載との整合をとるものであるから、訂正事項6と同様の理由により、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)一群の請求項との関係について 訂正事項9によって訂正された明細書の段落【0010】は、訂正後の請求項3に対応する記載になっている。 そして、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」であるから、訂正後の請求項[1~3]が、訂正事項8による明細書の訂正と関係する請求項である。 エ 訂正事項10 (ア)訂正の目的 訂正事項10は、訂正事項2により訂正前の請求項1に対して、「冷気循環路(47)」の発明特定事項を直列的に付加することに伴い、明細書の段落【0030】を削除するものであって、請求項1と明細書の記載との整合をとるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。 (イ)願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であること及び実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないこと 訂正事項10は、訂正事項2により訂正前の請求項1に対して、「冷気循環路(47)」の発明特定事項を直列的に付加することに伴い、明細書の段落【0030】を削除するものであって、請求項1と明細書の記載との整合をとるものであるから、訂正事項2と同様の理由により、明細書等に記載された事項の範囲内においてするものであり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 (ウ)一群の請求項との関係について 訂正事項10によって訂正された明細書の段落【0030】は、訂正後の請求項1に対応する記載になっている。 そして、訂正前の請求項1~3に対応する訂正後の請求項[1~3]は、特許法第120条の5第4項に規定する「一群の請求項」であるから、訂正後の請求項[1~3]が、訂正事項8による明細書の訂正と関係する請求項である。 3.小括 したがって、本件訂正の訂正事項1~10は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号又は第3号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同法第120条の5第9項で準用する同法第126条第4項~第6項に適合するから、特許請求の範囲及び明細書を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲、訂正明細書のとおり、訂正後の請求項[1~3]について訂正することを認める。 第3 訂正後の本件発明 本件訂正により訂正された請求項1-3に係る発明(以下、「本件発明1」-「本件発明3」という。)は、次のとおりのものである。 【請求項1】 常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル(11)と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル(12)と、冷気循環路(47)内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル(11・12)により共用された一つの集約蒸発器(32)とを備える冷凍冷蔵装置において、 集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)と、フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有し、 集約蒸発器(32)が配置された冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置されるとともに、メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が第1の循環領域(47a)側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が第2の循環領域(47b)側に配置されており、 各蒸発管(57・58)は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート(59)から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部同士を連結するU字状の湾曲部とで構成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されており、 エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されており、 各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されており、 集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で、該集約蒸発器(32)が冷気循環路(47)内に固定されていることを特徴とする冷凍冷蔵装置。 【請求項2】 集約蒸発器(32)の除霜を担う除霜ヒータ(61)が、集約蒸発器(32)の最下端部に配されている、請求項1記載の冷凍冷蔵装置。 【請求項3】 (削除) 第4 取消理由通知に記載した取消理由について 当審が令和5年1月26日付けの取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由は、次のとおりである。 理由1(新規性) 本件特許の請求項1~2に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であって、特許法第29条第1項第3号に該当するから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してされたものである。 理由2(進歩性) 本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて利用可能になった発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものである。 引用文献1:特開2009-85554号公報(申立人が提出した甲第1号証) 引用文献2:特開2009-74754号公報(令和4年7月12日に申立人が提出した参考試料1) 引用文献3:特許第3132413号公報(令和4年7月12日に申立人が提出した参考資料2) 第5 当審の判断 1.引用文献に記載された事項及び引用発明 (1)引用文献1について ア 引用文献1に記載された事項 引用文献1には、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審が付したものである(以下同様。)。 (ア)「【0009】 <実施形態> 以下、本発明の一実施形態を図1ないし図7に基づいて説明する。本実施形態では、業務用の縦型冷蔵庫に搭載された冷凍装置を例示している。 図1において、符号10は、前面の開口された断熱箱体からなる冷蔵庫本体であって、内部が冷蔵室11とされているとともに、冷蔵室11の前面開口には断熱扉12が揺動開閉可能に装着されている。冷蔵庫本体10の上面には、回りにパネルが立てられることで機械室14が構成されている。 【0010】 機械室14の底面となる冷蔵庫本体10の天井壁10Aのほぼ中央部には、方形の開口部15が形成され、この開口部15の上面を塞ぐようにして、詳しくは後記するユニット化された冷凍装置30を搭載したユニット台20が載置されている。開口部15の前方側(図1の右側)における下面の口縁の位置から奥壁に向かい、ドレンパンを兼ねた冷却ダクト22が下り勾配で張設されており、ユニット台20との間に蒸発器室23が形成されている。冷却ダクト22の前端側には吸込口25が形成され、その裏面に庫内ファン26が装備されているとともに、冷却ダクト22の後端側には吹出口27が形成されている。 【0011】 冷凍装置30は、2系統の独立した冷凍回路、すなわち第1冷凍回路31A(本発明の一の冷凍回路に相当)と第2冷凍回路31B(本発明の他の冷凍回路に相当)とを備えている。両冷凍回路31A,31Bは大まかには、圧縮機を互いに異にしている一方、蒸発器と凝縮器とは共用している。 図2に模式的に示されるように、第1冷凍回路31Aは、回転数が可変のインバータ圧縮機32Aと、共通の凝縮器33と、ドライヤ35Aと、減圧手段であるキャピラリチューブ36Aと、共通の蒸発器37とを、冷媒配管で循環接続して形成されている。なお、第1冷凍回路31Aでは、蒸発器37の出口側の冷媒配管に、アキュムレータ38が介設されている。 第2冷凍回路31Bは、回転数が一定の一定速圧縮機32Bと、共通の凝縮器33と、ドライヤ35Bと、減圧手段であるキャピラリチューブ36Bと、共通の蒸発器37とを、冷媒配管で循環接続して形成されている。 【0012】 両冷凍回路31A,31Bの構成部品のうち、インバータ圧縮機32A、一定速圧縮機32B、共通の凝縮器33、両ドライヤ35A,35B、両キャピラリチューブ36A,36Bとが、ユニット台20の上面に設置され、一方、共通の蒸発器37が、ユニット台20の下面側に吊り下げられて取り付けられ、ユニット化されてる。なお、共通の凝縮器33の裏面には、共通の凝縮器ファン34が設置されている。 そして、ユニット台20が、冷蔵庫本体10の天井壁の開口部15を塞いで載置されると、蒸発器37が、蒸発器室23内において庫内ファン26の奥側の位置に収容されるようになっている。 【0013】 蒸発器37の構造を説明する。蒸発器37は全体としては、やや扁平で左右方向に細長いブロック状をなし、冷却ダクト22の傾斜に倣った後下がりの斜め姿勢を取り、冷却ダクト22から若干浮いた状態で、かつ蒸発器室23のほぼ全幅に亘って収容されるようになっている。 蒸発器37は、図3ないし図5に示すように、前後方向に長い長方形の金属プレートからなるフィン40が、複数枚(本実施形態では70数枚)、一定間隔を開けて左右方向に並べられることによって、やや扁平で左右方向に細長いブロック状をなすフィン群41が形成される。フィン40は詳細には、長さが長いフィン40Lと、短いフィン40Sの2種類が備えられ、図4に示すように、各フィン40L,40Sが交互に配されるとともに、各フィン40L,40Sの後端(同図の下側)が揃えられる一方、前端は、長い方のフィン40Lが短い方のフィン40Sより所定寸法突出した形態となっている。なお以下では、長い方と短い方とを区別する必要があるとき以外は、両フィン40L,40Sを、フィン40とまとめて標記する。 また、フィン群41の左右両端面には、それぞれエンドプレート43X,43Yが配されている。 【0014】 上記したフィン群41に対し、冷凍回路31A,31Bにおける冷媒配管の一部として設けられる蒸発管が、各フィン40を貫通して配管されることによって、蒸発器37が形成される。蒸発管は、フィン群41に対して上下4段に亘って配管され、特に下2段に、インバータ圧縮機32A側の第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aが、また上2段に、一定速圧縮機32B側の第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bが、それぞれ配管されるようになっている。」 (イ)「【0016】 すなわち、第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aは、フィン群41に対し、各フィン40を貫通しつつ、下から2段目において背面から正面に向けてジグザグ状に、続けて最下段において正面から背面に向けてジグザグ状に配管される。第1蒸発管45Aの出口47Aは、図5に示すように、右側のエンドプレート43Xの外に突出してアキュムレータ38が介設されたのち、エンドプレート43Xの前端寄りの位置で立ち上げられる。一方、第1蒸発管45Aの入口46Aは、同じく右側のエンドプレート43Xの外に突出したのち、上記の出口47Aよりも少し後方位置で立ち上げられる。」 (ウ)「【0018】 このように、第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bは、フィン群41に対し、各フィン40を貫通しつつ、最上段において背面から正面に向けてジグザグ状に、続けて上から2段目において正面から背面に向けてジグザグ状に配管される。第2蒸発管45Bの出口47Bは、図5に示すように、右側のエンドプレート43Xの外に突出したのち、上記した第1蒸発管45Aの入口46Aよりも後方位置で立ち上げられるとともに、第2蒸発管45Bの入口46Bは、エンドプレート43Xの後端寄りの位置で立ち上げられる。 また、蒸発器37等に付着した霜を除去するために、適宜に除霜運転が行われる。そのため蒸発器37には、シーズヒータからなる除霜ヒータ49が装備されており、詳細には除霜ヒータ49は、図1に示すように、フィン群41の下面に形成された装着溝50に嵌められてジグザグ状に配管されている。 【0019】 続いて、本実施形態の作用を説明する。 冷却運転は、冷凍装置30と庫内ファン26とを駆動することで行われ、図1の矢線に示すように、冷蔵室11の庫内空気が庫内ファン26によって吸込口25から蒸発器室23内に吸引され、その空気が蒸発器37を前面側から流通する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口27から冷蔵室11の奥面に沿うようにして吹き出され、冷蔵室11内に冷気が循環供給されることで冷却され、併せて庫内温度が制御される。 【0020】 この実施形態では、庫内温度が予め定められたコントロール冷却特性に従うように、インバータ圧縮機32Aの増減速制御がなされる。具体的には、運転制御部には、コントロール冷却特性が、目標となる温度降下の経時的変化態様のデータとして予め記憶されており、冷却運転中は、所定のサンプリング時間ごとに庫内温度を検出して、同検出温度に基づいて実際の温度降下度が算出される一方、上記の記憶されたデータからその庫内温度における目標の温度降下度が出力され、実際の温度降下度が目標の温度降下度よりも小さければインバータ圧縮機32Aが増速制御され、逆の場合はインバータ圧縮機32Aが減速または停止する減速制御が行われ、その繰り返しにより、コントロール冷却特性に従って冷却される。 またこの間、庫内負荷の増加や、周囲温度の上昇により、インバータ圧縮機32Aのみでは能力不足と判断された場合、例えばインバータ圧縮機32Aが最高回転数に到達したのちなお増速要求が出された場合には、一定速圧縮機32Bが併せて駆動される。 【0021】 言い換えると、通常はインバータ圧縮機32Aすなわち第1冷凍回路31Aのみが駆動されるため、蒸発器37では、第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aが配管された下半分の領域が特に冷却され、上半分の領域では相対的な高温に冷却されることに留まり、その状態の蒸発器37に庫内空気が流通して熱交換により冷気が生成される。そして、インバータ圧縮機32Aのみでは能力不足であると判断されたときには、一定速圧縮機32Bすなわち第2冷凍回路31Bも併せて駆動されるため、蒸発器37は全域にわたり低温に冷却された状態となって、熱交換に供される。」 (エ)「【0024】 なお、適宜時間ごとに除霜運転が行われ、除霜運転は、冷凍装置30並びに庫内ファン26を停止した状態で、除霜ヒータ49に通電して発熱させることで行われるが、上記したように、蒸発器37の下半分に着霜しやすいのに対して、除霜ヒータ49を蒸発器37の下面に配置したから、効率良く除霜される。」 (オ)「【0028】 <他の実施形態> 本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。 (1)上記実施形態とは逆に、インバータ圧縮機側の第1冷凍回路の第1蒸発管をフィン群の上半分の領域に、一定速圧縮機側の第2冷凍回路の第2蒸発器を下半分の領域にそれぞれ配管した構造としてもよい。少なくとも、長時間にわたって空気流通量が確保できる効果が得られる。 (2)また上記実施形態のように、蒸発管の配管段数が4段であった場合に、インバータ圧縮機側の第1冷凍回路の第1蒸発管と、一定速圧縮機側の第2冷凍回路の第2蒸発器とを、1段置きに配管するようにしてもよい。同じく長時間にわたって空気流通量を確保することができる。 (3)蒸発器(フィン群)における蒸発器の配管段数は、2段以上任意である」 (カ)「 」 (キ)「 」 (ク)「 」 (ケ)「 」 (コ)「 」 イ 引用文献1に記載の事項からわかること (ア)段落【0009】、【0011】、図2の記載から、業務用の縦型冷蔵庫に搭載された冷凍装置30は、第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとを備えていることが分かる。 (イ)段落【0020】、【0021】の記載から、通常は第1冷凍回路31Aのみが駆動され、インバータ圧縮機32Aのみでは能力不足であると判断されたときには、第2冷凍回路31Bも併せて駆動されることが分かるので、第1冷凍回路31Aは、常態的に駆動されるもので、第2冷凍回路31Bは、臨時的に駆動されるものであることが分かる。 (ウ)段落【0011】、図2の記載から、一つの蒸発器37は、第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとで共用されていることが分かる。 (エ)段落【0019】、図1の記載から、冷蔵室11の庫内空気が庫内ファン26によって吸込口25から蒸発器室23内に吸引され、その空気が蒸発器37を前面側から流通する間に熱交換によって冷気が生成され、その冷気が吹出口27から吹き出されることがわかるので、蒸発器室23内に冷気が循環する経路が生成されていることが分かる。また、段落【0012】、図1の記載内容から、蒸発器37は、蒸発器室23内の冷気が循環する経路内に配置されていることが分かる。 (オ)図1~図3の記載から、蒸発器37は、蒸発管45A、蒸発管45B及びフィン群41を有していることが分かり、段落【0013】、【0014】、【0019】、図1、図3、図4の記載から、フィン群41は、蒸発器室23の冷気が循環する経路の空気が流れる方向の前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を空けて並列された複数枚のフィン40からなることが分かり、蒸発管45A、45Bは、各フィン40を貫通して配管され第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとを構成していることが分かる。 (カ)段落【0014】、【0028】、図3の記載から、蒸発器37の上方側に、インバータ圧縮機32A側の第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aが、また、蒸発器37の下方側に、一定速圧縮機32B側の第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bが、それぞれ配管されることが分かる。 (キ)段落【0018】、【0024】、図1、図5の記載から、蒸発器37等に付着した霜を除去するためのシーズヒータからなる除霜ヒータ49が、蒸発器37の最下端部に配されていることが分かる。 (ク)段落【0016】、【0018】、図4、図5の記載内容から、第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aの入口46A、第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aの出口47A、第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bの入口46B及び第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bの出口47Bは、蒸発器室23内を空気が前方から後方に向かって前後方向に流れていることを踏まえると、いずれも空気が流れる方向の風下側に配置されていることが分かる。 ウ 引用発明 上記ア及びイから、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 (引用発明) 「常態的に駆動される第1冷凍回路31Aと、臨時的に駆動される第2冷凍回路31Bと、蒸発器室23内の冷気が循環する経路内に配置されて、これら第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとにより共用された一つの蒸発器37とを備える冷凍冷蔵装置において、 蒸発器37は、蒸発器室23内の冷気が循環する経路の空気が流れる方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン40からなるフィン群41と、各フィン40を貫通して配管された第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとを構成する蒸発管45A、45Bと、フィン群41の左右両端面には、それぞれエンドプレート43X,43Yを有し、 第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aが蒸発器37の上方側に配置され、第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bが蒸発器37の下方側に配置されており、 蒸発器37等に付着した霜を除去するためのシーズヒータからなる除霜ヒータ49が、蒸発器37の最下面に配置され、 第1蒸発管45Aの入口46A、第2蒸発管45Bの入口46B、第1蒸発管45Aの出口47A及び第2蒸発管45Bの出口47Bは、いずれも空気が流れる方向の風下側に配置されている冷凍装置30。」 (2)引用文献2について 引用文献2には、以下の事項が記載されている。 ア「【技術分野】 【0001】 本発明は、冷凍装置、冷凍装置の制御方法および制御プログラムに係り、詳しくは、冷却器への着霜を抑制する技術に関する。」 イ「【0012】 図2は、蒸発器周辺の構成説明図である。 蒸発器6の冷媒上流側には、減圧装置としての電子膨張弁15が接続されており、電子膨張弁15の冷媒下流側の蒸発器6の入口管には入口温度センサ16が配設され、蒸発器6の出口管には出口温度センサ17が配設されている。 さらに、蒸発器6を構成する伝熱管18の所定位置には、防霜センサ(温度センサ)19が取り付けられている。 そして、この防霜センサ19の取付位置よりも冷媒下流側に位置する蒸発器6のフィンのフィンピッチ(以下、第1フィンピッチという)は、防霜センサ19の取付位置よりも冷媒上流側に位置するフィンのフィンピッチ(以下、第2フィンピッチという)より密に形成されている。」 ウ「【図2】 」 エ 【図2】から、冷媒の入口管に設けられた入口温度センサ16が冷却風の下流側、冷媒の出口管に設けられた出口温度センサ17が冷却風の上流側に設けられていることが看取できる。 オ ア~エから、引用文献2には、蒸発器6に対する冷媒の入口が冷却風の下流側に配置され、蒸発器6に対する冷媒の出口が冷却風の上流側に配置されていることが記載されていると認められる。 (3)引用文献3について 引用文献3には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、空気調和機用のプレートフィンコイルに関するものである。」 イ「【0005】 【発明の実施の形態】図1と図2は本発明に係るプレートフィンコイルで、符号Aで示す矢印はコイルに対しての通風方向を示している。このプレートフィンコイルは、面対向させて平行に並設された複数のプレートフィン1…と、プレートフィン1の面対向部2に直交し複数段及び複数列にて挿着される複数の直管3…と、を備え、一段毎に直管3…を通風方向Aに向かって蛇行状となるように連通連結して、複数段の熱媒流通管路4…を形成してある。この熱媒流通管路一段毎に熱媒がコイル通風空気の風下側から風上側に向かって流れる向流とする。 【0006】熱媒流通管路4…の端部は、熱媒分流・合流用ヘッダ5a及びヘッダ5bに連通連結する。冷水や温水その他各種の熱媒は、分流用ヘッダ5aから入って分流し、各段の熱媒流通管路4…を通って、合流用ヘッダ5bに合流して出る。直管3の複数列(図例では二列)当たりのフィン面積(Σ(一辺T×側辺H))は、熱媒流通管路4の下流側から上流側に向かって、順次広くする。例えば、コイル通風空気と熱媒との温度差の大小に比例させて、フィン面積を順次広くする。なお、図例では二列当たりでフィン面積を変化させてあるが列数はこれに限定されるものでなく、三列当たり以上であってもよい。」 ウ「【図1】 」 エ「【図2】 」 オ ア~エから、引用文献3には、熱媒流通管路4に対して熱媒が流入する分流用ヘッダ5aが通風方向の風下側に配置され、熱媒流通管路4に対して熱媒が流出する合流用ヘッダ5bが通風方向の風上側に配置されていることが記載されていると認められる。 2.対比、判断 (1)本件発明1について ア 対比 本件発明1と引用発明とを対比する。 引用発明の「第1冷凍回路31A」は、本件発明1の「メインの冷凍サイクル(11)」に相当し、以下同様に、「第2冷凍回路31B」は「サブの冷凍サイクル(12)」に、「蒸発器室23内の冷気が循環する経路」は「冷気循環路(47)」に、「蒸発器37」は、「集約蒸発器(32)」に、「冷凍装置30」は「冷凍冷蔵装置」に、それぞれ相当する。 してみると、引用発明の「常態的に駆動される第1冷凍回路31Aと、臨時的に駆動される第2冷凍回路31Bと、蒸発器室23内の冷気が循環する経路内に配置されて、これら第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとにより共用された一つの蒸発器37とを備える冷凍冷蔵装置」は、本件発明1の「常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル(11)と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル(12)と、冷気循環路(47)内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル(11・12)により共用された一つの集約蒸発器(32)とを備える冷凍冷蔵装置」に相当する。 引用発明の「空気が流れる方向」は、本件発明1の「冷気流通方向」に相当し、以下同様に、「フィン40」は「フィン(55)」に、「フィン群41」は「フィン群(56)」に、「第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31B」は「冷凍サイクル(11・12)」に、「蒸発管45A、蒸発管45B」は「蒸発管(57・58)」に、「エンドプレート43X、43Y」は「エンドプレート(59・59)にそれぞれ相当する。 してみると、引用発明の「蒸発器37は、蒸発器室23内の冷気が循環する経路の空気が流れる方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン40からなるフィン群41と、各フィン40を貫通して配管された第1冷凍回路31Aと第2冷凍回路31Bとを構成する蒸発管45A、45Bと、フィン群41の左右両端面には、それぞれエンドプレート43X,43Yを有」することは、本件発明1の「集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)と、フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有」することに相当する。 引用発明の「第1冷凍回路31Aの第1蒸発管45Aが蒸発器37の上方側に配置され、第2冷凍回路31Bの第2蒸発管45Bが蒸発器37の下方側に配置されて」いることは、本件発明1の「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置される」ことに相当する。 してみると、本件発明1と引用発明とは、次の一致点で一致し、相違点で相違する。 (一致点) 「常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル(11)と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル(12)と、冷気循環路(47)内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル(11・12)により共用された一つの集約蒸発器(32)とを備える冷凍冷蔵装置において、 集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)と、フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有し、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置される冷凍冷蔵装置。」 (相違点1) 本件発明1は、「集約蒸発器(32)が配置された冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており」、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が第1の循環領域(47a)側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が第2の循環領域(47b)側に配置されて」いるのに対して、引用発明では、「第1冷凍回路31A」と「第2冷凍回路31B」の配置と気体流量との関係が不明な点。 (相違点2) 本件発明1は、「各蒸発管(57・58)は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート(59)から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部同士を連結するU字状の湾曲部とで構成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されており、 エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されており、 各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されて」いるのに対して、引用発明は、「第1蒸発管45Aの入口46A、第2蒸発管45Bの入口46B、第1蒸発管45Aの出口47A及び第2蒸発管45Bの出口47Bは、いずれも空気が流れる方向の風下側に配置されている」点。 (相違点3) 本件発明1は、「集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で、該集約蒸発器(32)が冷気循環路(47)内に固定されている」のに対して、引用発明は、そのような構成がない点。 イ 判断 事案に鑑み、初めに相違点2について検討する。 冷凍サイクルを構成する蒸発管に対する冷媒の入口を冷気流通方向の風下側に配置し、蒸発管に対する冷媒の出口を冷気流通方向の風上側に配置するよう構成することは、上記1.(2)オ、(3)オに示したとおり従来周知の技術手段(以下、「周知技術」という。)にすぎない。 しかしながら、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されて」いる点は、引用文献2、引用文献3のいずれにも記載されておらず、技術常識であるとの証拠もない。 なお、申立人は、令和5年5月10日に提出の意見書(以下、「申立人意見書」という。)の3(1)(iii)において、「集約蒸発器(32)に設けられている蒸発管(57・58)が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されている」という構成は、参考資料1(実公昭50-26040号公報)、参考資料2(特開2001-317854号公報)、参考資料3(特開平10-197101号公報)に記載の周知の技術であると主張する。 そこで、参考資料1~3について検討する。 参考資料1は、「前記冷却器7は薄い二つ小冷却器9、10を上下に重ねて構成し、その小冷却器9は水平二段に蛇行する冷媒鋼管11と、それに直交し且略等間隔に配設した同型のアルミ板よりなる複数のフイン12を備えると共に、・・・」と記載されており、第1図から、「冷却器7」が「冷却室5」の上面に平行に配置されていることが看取できる。 しかしながら、参考資料1の「冷却器7」は、「水平二段に蛇行する冷媒鋼管11」を備える「小冷却器9、10」を「上下に重ねて構成」したものであるから、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されて」いるということはできないし、「エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)に対する冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置され」、かつ「各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成」することと両立できるものでもない。 また、参考資料2は、段落【0020】に「・・・また、21は冷蔵室蒸発器5を構成する複数のプレートフィンで、22は同蒸発器5を構成する複数の冷媒管である。そして、冷媒管22は直管部および曲管部が連続するように蛇行状に形成され、所定の間隔Pで互いに平行に配置された複数のプレートフィン21と垂直に組み合わされている。」と記載されており、【図2】から、「冷蔵室蒸発器5」が「冷蔵室3」の背面に平行に配置されていることが看取できる。 しかしながら、参考資料2の「冷蔵室蒸発器5」は、1段の蒸発器であって、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されて」いるということはできない。 さらに、参考資料3は、段落【0011】~【0012】に「・・・この蒸発器1は、蛇行状に曲げられたアルミニウム製のチューブ3を有し、このチューブ3は一端に入口チューブ3aを備えている。この入口チューブ3aには直線部7a、U字部5a、直線部7b、U字部5b、直線部7c等が順に繰り返して連なり、蒸発器1の空気入側Aに位置する直線部7gにおいて出口チューブ3bに連なり、この出口チューブ3bにはaキュームレータ(図示せず)が接続されている。・・・」(【0011】)、「この蒸発器1は、図2に示すように、冷蔵庫(図示せず)の所定幅Wを有する冷気通路100内にほぼ隙間なく組み込まれている。・・・」(【0012】)と記載されており、【図3】や【図5】から、「蒸発器1」が「冷気通路100」の壁面に平行に配置されていることが看取できる。 しかしながら、参考資料3の「蒸発器1」も1段の蒸発器であって、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されて」いるということはできない。 よって、参考資料1~3から「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており・・・」という構成が周知技術であるとはいえず、引用発明がこれら参考資料1~3に記載された事項あるいは看取できる事項を備えているということもできず、さらに、引用発明に、これら参考資料1~3に記載された事項を適用しても、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項とすることはできない。 よって、申立人の意見は採用できない。 そうすると、上記相違点2は実質的な相違点である。また、引用発明において、上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえない。 したがって、相違点1、3について論じるまでもなく、本件発明1は引用発明でなく、引用発明を上記相違点2に係る本件発明1の発明特定事項を備えたものとすることは、当業者が容易になし得た事項であるとはいえないから、本件発明1は、引用発明、引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (2)本件発明2について 本件発明2は、本件発明1の全てを引用するものであるから、上記(1)イと同様の理由により、引用発明ではなく、また、引用発明、引用文献2、3に記載された周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3.申立人意見書の主張について (1)申立人は、申立人意見書の3(1)(i)、(ii)において、以下のように主張する。 「(i)特許法第36条第6項第1号違反であるとする理由 (1-1)訂正請求書の訂正事項6について ・・・訂正によって追加された「接続始端で規定される」及び「接続終端で規定される」は、明細書や図面に記載がなく、冷媒の入口(57a・58a)が、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定されること、冷媒の出口(57b・58b)が、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定されることは、発明の詳細な説明に記載されたものではない。 (1-2)訂正請求書の訂正事項5について ・・・前項(1-1)にて述べたように、接続始端、及び接続終端自体が明細書や図面に記載されていないため、これらの含む蒸発管(57)及び蒸発管(58)の配列状態は当然に明細書や図面に記載されてなく、訂正によって追加された「平行な一つの平面上に配列されており」と限定される点についても、明細書や図面に記載がなく、発明の詳細な説明に記載されたものではない。」 「(ii)特許法第36条第6項第2号違反であるとする理由 訂正後の請求項1に記載の発明における「集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で」という構成(訂正請求書の訂正事項8の前段部分)は、明細書及び特許請求の範囲に明示的に記載された事項ではなく、どのような特徴を特定しているのかが不明確である。」 (2)申立人意見書の主張について検討する。 (i)について検討すると、上記第2の2.(1)エ(イ)で説示したとおり、【図1】から、「メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)」と、「サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)」のそれぞれが「冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列」されていることが看取でき、蒸発器に対する冷媒の入口(57a・58a)及び冷媒の出口(57b・58b)が、それぞれ、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端及び接続終端で規定されることは、蒸発器の構造から自明の事項ということができる。 したがって、訂正請求書の訂正事項5及び訂正事項6は、発明の詳細な説明に記載されたものであるから申立人の主張を採用することができない。 (ii)について検討すると、上記第2の2.(1)エ(イ)で説示したとおり、明細書の段落【0022】に「集約蒸発器32は、・・・その上端面が本体ケース1の上壁面1aに接する状態で冷気循環路47内に固定されている。」と記載されており、【図1】から集約蒸発器32の上端面の全体が上壁面1aに接していることが看取できるものであって、訂正後の請求項1の「集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で」の意味が、文言通り「集約蒸発器32」の上端面の全体が「本体ケース1の上壁面1aに接する状態」であることは、明確といえる。 したがって、「集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で」との記載は明確であるから、申立人の主張を採用することができない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、当審が通知した取消理由並びに特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、請求項1、2に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 請求項3に係る特許は、本件訂正により削除されたことにより、申立人による請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては、申立ての対象が存在しないものとなった。よって、請求項3に係る特許に対する特許異議の申立ては、不適法であって、その補正をすることができないものであるから 、特許法第120条の8第1項で準用する同法第135条の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 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発明の名称 |
(54)【発明の名称】冷凍冷蔵装置 【技術分野】 【0001】 本発明は、2系統の冷凍サイクルを有するとともに、蒸発器が集約された冷凍冷蔵装置に関する。本発明の冷凍冷蔵装置は、特にショーケースに適用されて好適である。 【背景技術】 【0002】 本発明に係る冷凍冷蔵装置は、2系統の冷凍サイクルを有するとともに、蒸発器が集約されているが、同様の冷凍冷蔵装置は例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の冷凍冷蔵装置(冷凍装置)では、一方の冷凍サイクル(冷凍回路)に能力可変式の圧縮機(インバータ圧縮機)が設けられ、他方の冷凍サイクルに別の圧縮機が設けられている。両冷凍サイクルの蒸発器は、一つの蒸発器に集約されており、当該蒸発器内において、インバータ圧縮機を有する一方の冷凍サイクルの蒸発管は下側の領域に配管され、他方の冷凍サイクルの蒸発管は上側の領域に配管されている(特許文献1の請求項1)。蒸発器の最下端には、除霜ヒータが設けられている。 【0003】 特許文献1において、冷蔵庫本体の天井壁の上方には冷却ダクトが形成されており、この冷却ダクト内に蒸発器と庫内ファンが設けられている。冷却ダクトの前端側には、下方に開口して冷蔵庫本体に連通する吸込口が形成されており、吸込口には庫内ファンが設けられている。冷却ダクトの後端側には吹出口が形成されており、庫内ファンにより吸込口を介して冷却ダクト内に吸い込まれた庫内空気は、蒸発器により冷却されたのち、吹出口より冷蔵庫本体内に吹き出されるようになっている。蒸発器は、冷却ダクトを区画する上壁の内面に密着するように固定されており、冷却ダクトの下壁と蒸発器の下端との間には間隙が形成されている。ドレン水は、上記の間隙を通って排水されるように構成されている。 【0004】 特許文献1において、冷却運転時には、庫内温度が所定の温度となるように、インバータ圧縮機の増減速制御が行われ、庫内負荷の増加や、周囲温度の上昇により、インバータ圧縮機のみでは能力不足と判断された場合には、他方の冷凍サイクルの圧縮機が駆動されるようになっている。つまり、インバータ圧縮機を有する一方の冷凍サイクルが、常態的に作動されるメインの冷凍サイクルであり、他方の冷凍サイクルが、補助的に作動されるサブの冷凍サイクルとされている。 【先行技術文献】 【特許文献】 【0005】 【特許文献1】特許第5405011号公報 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0006】 特許文献1のように、下方側に開口された吸込口に指向するように庫内ファンが設けられていると、当該庫内ファンにより冷却ダクト内に吸い込まれた庫内空気の大部分は、冷却ダクト内の上壁面に衝突して変向されたのち、該上壁面に沿って流れる。このため、特許文献1のように常態的に駆動されるメインの冷凍サイクルを構成する蒸発管が蒸発器の下方側に配されている形態では、当該蒸発管に庫内空気を効率的に接触させることが難しく、常態時における蒸発器による冷却効率や冷却能力が低下する不利がある。 【0007】 本発明は以上のような従来の冷凍装置の抱える問題を解決するためになされたものであり、常態時における蒸発器の冷却効率の向上を図り、より冷却性能に優れた冷凍冷蔵装置を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 本発明は、常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル11と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル12と、冷気循環路47内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル11・12により共用された一つの集約蒸発器32とを備える冷凍冷蔵装置を対象とする。集約蒸発器32は、冷気循環路47の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン55からなるフィン群56と、各フィン55を貫通して配管された冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58と、フィン群56の左右両端に配されたエンドプレート59・59とを有する。集約蒸発器32が配置された冷気循環路47内の上方側に、気体流量の大きな第1の循環領域47aが形成され、冷気循環路47内の下方側に該第1の循環領域47aよりも気体流量が小さな第2の循環領域47bが形成されている。メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が集約蒸発器32の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が集約蒸発器32の下方側に配置されるとともに、メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が第1の循環領域47a側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が第2の循環領域47b側に配置されている。各蒸発管57・58は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート59から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部どうしを連結するU字状の湾曲部とで構成されている。メインの冷凍サイクル11の蒸発管57と、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58のそれぞれは、冷気循環路47を区画する上壁面1aと平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器32には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル11の蒸発管57と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル12の蒸発管58とが上下2段に配されている。エンドプレート59に対する蒸発管57・58の接続始端で規定される当該蒸発管57・58に対する冷媒の入口57a・58aが、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート59に対する蒸発管57・58の接続終端で規定される蒸発管57・58からの冷媒の出口57b・58bが冷気流通方向の風上側に配置されている。各蒸発管57・58を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されている。集約蒸発器32の上端面の全体が冷気循環路47を区画する上壁面1aに接する状態で、該集約蒸発器32が冷気循環路47内に固定されている。 【0009】 集約蒸発器32の除霜を担う除霜ヒータ61が、集約蒸発器32の最下端部に配されている形態を採ることができる。 【0010】(削除) 【発明の効果】 【0011】 本発明に係る冷凍冷蔵装置においては、集約蒸発器32が配置された冷気循環路47内に、気体流量の大きな第1の循環領域47aと、該第1の循環領域47aよりも気体流量が小さな第2の循環領域47bとを形成した。加えて、メインの冷凍サイクル11を構成する蒸発管57を、気体流量の大きな第1の循環領域47a側に配置した。以上より、メインの冷凍サイクル11のみが運転される常態においては、冷気循環路47内に吸い込まれた庫内空気のうち、より大量の空気を蒸発管57に接触させることができるので、庫内空気と蒸発管57との間の熱交換をより効率的に行うことができる。以上より、本発明によれば、常態時における蒸発器の冷却効率の向上を図り、より冷却性能に優れた冷凍冷蔵装置を得ることができる。 【0012】 具体的には、冷気循環路47内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域47aが形成され、冷気循環路47内の下方側に第2の循環領域47bが形成され、メインの冷凍サイクル11の蒸発管57が集約蒸発器32の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル12の蒸発管58が集約蒸発器32の下方側に配置された形態を採ることができる。このときに、集約蒸発器32の除霜を担う除霜ヒータ61が、集約蒸発器32の最下端部に配されていると、除霜ヒータ61の発熱により形成された暖気が上昇することで、上方側の蒸発管57に対して優先的に除霜を行うことができる。従って、特に蒸発管57に付着の霜を、より効率的に除霜することができる。 【0013】 両冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58に対する冷媒の入口57a・58aが、冷気流通方向の風下側に配置され、蒸発管57・58に対する冷媒の出口57b・58bが冷気流通方向の風上側に配置されていると、蒸発管57の表面温度を、相対的に風下側を低温とし、風上側を高温とすることができる。これにより、冷気循環路47内に吸い込まれた庫内空気と、蒸発管57の表面温度との温度差を小さくすることができるので、蒸発管57の表面に多量に着霜することを効果的に防ぐことができる。 【図面の簡単な説明】 【0014】 【図1】本発明に係る冷凍冷蔵装置が適用されるショーケースの要部の縦断側面図である。 【図2】ショーケースの概略構造を示す正面図である。 【図3】ショーケースの概略構造を示す縦断側面図である。 【図4】冷凍サイクルの構成図である。 【図5】蒸発器の概略構造を示す横断平面図である。 【図6】凝縮器の概略構造を示す縦断側面図である。 【発明を実施するための形態】 【0015】 (実施例) 図1ないし図6に、本発明に係る冷凍冷蔵装置をリーチイン型のショーケースに適用した実施例を示す。本実施例における前後、左右、上下とは、図1、図2、図3、及び図5に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。図2、及び図3に示すように、本実施例に係るリーチイン型のショーケースは、断熱箱体からなる本体ケース1を備える。本体ケース1の内部は多段状の棚体2を備えた貯蔵室3となっており、貯蔵室3の前面に設けたスライドドア4を開閉することにより、食品や飲料などの貯蔵対象を出し入れできる。本体ケース1の下側に区画された機械室5の内部には、貯蔵室3の内部を一定温度に冷却するための冷凍冷蔵装置の要部が収容されている。また、貯蔵室3の上部には熱交換部としてのダクト6が区画されており、当該ダクト6の内部にも冷凍冷蔵装置の一部が配置されている。 【0016】 図4において冷凍冷蔵装置は、第1冷凍サイクル(メインの冷凍サイクル)11と第2冷凍サイクル(サブの冷凍サイクル)12の2系統の冷凍サイクルを備えている。第1冷凍サイクル11は、回転数が可変のインバータ圧縮機14と、凝縮器15と、ドライヤー16と、膨張器17と、蒸発器18と、アキュムレータ19を冷媒配管20でループ状に接続して構成される。第2冷凍サイクル12は、回転数が一定の一定速圧縮機24と、凝縮器25と、ドライヤー26と、膨張器27と、蒸発器28と、アキュムレータ29を冷媒配管30でループ状に接続して構成される。第1冷凍サイクル11の蒸発器18と、第2冷凍サイクル12の蒸発器28は、一つの集約蒸発器32として構成されている。同様に、第1冷凍サイクル11の凝縮器15と、第2冷凍サイクル12の凝縮器25は、一つの集約凝縮器33として構成されている。 【0017】 図3において、符号34は、凝縮ファンを示しており、先の第1冷凍サイクル11・第2冷凍サイクル12の構成要素のうち、圧縮機14・24、凝縮器15・25(集約凝縮器33)、および一個の凝縮器ファン34が、機械室5内に配置されている。蒸発器18・28(集約蒸発器32)、及び該集約蒸発器32に貯蔵室3内の庫内空気を送給するための蒸発器ファン40が、上方側のダクト6内に配置されている。 【0018】 図6に示すように、集約凝縮器33は、機械室5の底壁に固定されるケーシング35と、ケーシング35の後面に固定される風導36を備えており、ケーシング35の内部にフィン群37を配置し、各冷凍サイクル11・12の凝縮管38・39をフィン群37に折返し配置して、フィン群37を共用している。風導36の内部にフィン群37および凝縮管38・39に冷却空気を送給する、先の凝縮器ファン34が配置されている。 【0019】 図1に示すように、集約蒸発器32が配されるダクト6の前方側には吸込口45が開口され、後方側には熱交換後の冷気を貯蔵室3に向けて送り出すための送給口46が開口されており、ダクト6と、本体ケース1の上壁面1aとの間には、吸込口45から吸い込まれた庫内空気を、集約蒸発器32により熱交換して冷気としたのち、送給口46より貯蔵室3に向けて送り出すための冷気循環路47が形成されている。ダクト6は、後方側に向かって下がる傾斜姿勢に形成されており、従って、冷気循環路47は、後方に行くに従って漸次流路幅が大きくなる拡幅状に形成されている。また、集約蒸発器32等より排出された除霜水(ドレン水)は、傾斜姿勢に形成されたダクト6に沿って前方から後方に向かって流れたのち、ダクト6の後端に接続された排水管48を介して庫外に排出されるようになっている。 【0020】 吸込口45の上方には、庫内空気をダクト6の冷気循環路47内に吸い込んで、庫内空気を集約蒸発器32に送り込むための蒸発器ファン40が配されている。蒸発器ファン40は、通風路を有するハウジング50と、通風路内に組み付けられた回転翼体51と、回転翼体51を回転させるモーター52とを含む軸流ファンである。蒸発器ファン40は、モーター52の回転軸が真下を向く鉛直姿勢で吸込口45の上方に配されており、蒸発器ファン40により吸込口45から吸い込まれた庫内空気の大部分は、上方に進んで本体ケース1の上壁面1aに衝突したのち、当該上壁面1aに沿って後方側に変向されるようになっている。以上より、ダクト6の冷気循環路47内の上壁面に沿う上方側には、空気流量の大きな上循環領域47a(第1の循環領域)が形成され、冷気循環路47の下方側には、該上循環領域47aよりも空気流量が小さな下循環領域47b(第2の循環領域)が形成される。 【0021】 図5に示すように、集約蒸発器32は、冷気循環路47の冷気流通方向(前後方向)に伸びるとともに、該冷気流通方向(前後方向)と交差する方向(左右方向)に等間隔を置いて並設された複数枚のフィン55からなるフィン群56と、フィン群56を貫通して配管された各冷凍サイクル11・12の蒸発管57・58と、フィン群56の左右両端に配されたエンドプレート59・59とを備えている。各冷凍サイクル11・12を構成する蒸発管57・58は、左右方向に延びる直管部と、直管部を連結するU字状の湾曲部とが連続する一筆書き状に形成されている。それぞれの蒸発管57・58の冷媒の入口57a・58aは後端側に形成され、冷媒の出口57b・58bは前端側に形成されており、冷媒の入口57a・58aから蒸発管57・58内に送給された冷媒は、蛇行しながら後方から前方に向かって進み、冷媒の出口57b・58bから送出されるようになっている。 【0022】 図1に示すように、集約蒸発器32は、第1冷凍サイクル11を構成する蒸発器18が上方側に位置し、第2冷凍サイクル12を構成する蒸発器28が下方側に位置する、上下二段状に構成されており、その上端面が本体ケース1の上壁面1aに接する状態で冷気循環路47内に固定されている。以上のように冷気循環路47内に集約蒸発器32を固定したとき、該集約蒸発器32の第1冷凍サイクル11の蒸発管57が上循環領域47a側に配置され、第2冷凍サイクル12の蒸発管58が下循環領域47b側に配置される。 【0023】 図1に示すように、集約蒸発器32の下面には、除霜ヒータ61が装着されている。かかる除霜ヒータ61は、シーズヒータであり、フィン群の下面に形成された装着溝62に嵌合された状態で蛇行状に配管されている。 【0024】 以上のようなショーケースでは、第1冷凍サイクル11が常態的に駆動されるメインの冷凍サイクルとして運転されるのに対して、第2冷凍サイクル12は第1冷凍サイクル11だけでは貯蔵室3内の温度(庫内温度)を所定の温度以下に維持できない場合にのみ、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクルとして運転される。インバータ圧縮機14は、予め運転制御部に格納されたコントロール冷却特性に従うように、回転速度が増減制御されるようになっており、より具体的には、所定のサンプリング時間ごとに検出された庫内温度から算出される温度降下度と、予め格納されているコントロール冷却特性とを比較し、温度降下度がコントロール冷却特性に近づくように、インバータ圧縮機14が増速制御、或いは減速制御されるようになっている。 【0025】 このように第1冷凍サイクル11のみが運転される常態においては、集約蒸発器32による熱交換は、上方側の蒸発管57のみで行われる。このとき、第1冷凍サイクル11を構成する上方側の蒸発管57は、空気流量の大きな上循環領域47a側に配置されているため、冷気循環路47内に吸い込まれた庫内空気のうち、より大量の空気を蒸発管57に接触させることができる。従って、庫内空気と蒸発管57との間の熱交換をより効率的に行うことができる。 【0026】 また、蒸発管57の冷媒の入口57aを、冷気流通方向の風下側である後方側に配置し、冷媒の出口57bを、冷気流通方向の風上側である前方側に配置したので、蒸発管57の表面温度を、相対的に後方側を低温とし、前方側を高温とすることができる。これにより、冷気循環路47内に吸い込まれた庫内空気と、蒸発管57の表面温度との温度差を可及的に小さくすることができるので、蒸発管57の表面に多量に着霜が生じることを効果的に防ぐことができる。 【0027】 また、ダクト6を後方側に向かって下がる傾斜姿勢に形成して、冷気循環路47を後方に行くに従って漸次流路幅が大きくなる拡幅状に形成したので、冷気循環路47の前方側における空気流速に比べて、冷気循環路47の後方側における空気流速を遅くすることができる。これにより、表面温度が相対的に低い蒸発管57の後方側において、より低速で庫内空気を流して、蒸発管57と庫内空気との接触機会を増やすことができるので、集約蒸発器32による熱交換率を向上させることができる。 【0028】 また、スライドドア4の開閉が頻繁に行われる、周囲温度が急激に上昇する、或いは庫内負荷が増加する等の様々な理由により、インバータ圧縮機14を所定速度以上で駆動させているにもかかわらず、庫内温度が上昇していく場合には、第1冷凍サイクル11のみでは能力不足であり、第1冷凍サイクル11が過負荷状態に陥っていると判断されて、一定速圧縮機24が駆動され、第2冷凍サイクル12が運転される。これにより、第1冷凍サイクル11を構成する上方側の蒸発管57だけでなく、第2冷凍サイクル12を構成する下方側の蒸発管58によっても、冷気循環路47内に吸い込まれた庫内空気に対する熱交換が行われる。このように両冷凍サイクル11・12が運転されると、両蒸発管57・58を使って庫内空気に対する熱交換を行うことが可能となり、集約蒸発器32の冷却能力が向上するため、過負荷状態からより短時間で脱出できる。 【0029】 除霜運転を行う場合には、蒸発器ファン40を含む冷凍冷蔵装置の全体が停止された状態で、除霜ヒータ61に通電されて、該除霜ヒータ61が発熱される。本実施例では、常態的に運転される第1冷凍サイクル11を構成する蒸発管57を集約蒸発器32の上方側に配するとともに、除霜ヒータ61を集約蒸発器32の最下部に形成したため、除霜ヒータ61の発熱により形成された暖気が上昇することで、上方側の蒸発管57に対して優先的に除霜が行われる。従って、特に蒸発管57に付着の霜を、より効率的に除霜することができる。 【0030】(削除) 【符号の説明】 【0031】 11 メインの冷凍サイクル(第1冷凍サイクル) 12 サブの冷凍サイクル(第2冷凍サイクル) 32 集約蒸発器 47 冷気循環路 47a 第1の循環領域(上循環領域) 47b 第2の循環領域(下循環領域) 55 フィン 56 フィン群 57 蒸発管 58 蒸発管 61 除霜ヒータ (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 常態的に駆動されるメインの冷凍サイクル(11)と、臨時的に駆動されるサブの冷凍サイクル(12)と、冷気循環路(47)内に配置されて、これら2つの冷凍サイクル(11・12)により共用された一つの集約蒸発器(32)とを備える冷凍冷蔵装置において、 集約蒸発器(32)は、冷気循環路(47)の冷気流通方向である前後方向に伸びるとともに、該前後方向と交差する左右方向に間隔を開けて並設された複数枚のフィン(55)からなるフィン群(56)と、各フィン(55)を貫通して配管された冷凍サイクル(11・12)を構成する蒸発管(57・58)と、フィン群(56)の左右両端に配されたエンドプレート(59・59)とを有し、 集約蒸発器(32)が配置された冷気循環路(47)内の上方側に気体流量の大きな第1の循環領域(47a)が形成され、冷気循環路(47)内の下方側に該第1の循環領域(47a)よりも気体流量が小さな第2の循環領域(47b)が形成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が集約蒸発器(32)の上方側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が集約蒸発器(32)の下方側に配置されるとともに、メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)が第1の循環領域(47a)側に配置され、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)が第2の循環領域(47b)側に配置されており、 各蒸発管(57・58)は、前後方向に配列されて左右方向に延びる複数本の直管部と、エンドプレート(59)から左右外方向に突出されて前後方向に隣り合う直管部どうしを連結するU字状の湾曲部とで構成されており、 メインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、サブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)のそれぞれは、冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)と平行な一つの平面上に配列されており、集約蒸発器(32)には、上方側に配されたメインの冷凍サイクル(11)の蒸発管(57)と、下方側に配されたサブの冷凍サイクル(12)の蒸発管(58)とが上下2段に配されており、 エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続始端で規定される当該蒸発管(57・58)に対する冷媒の入口(57a・58a)が、冷気流通方向の風下側に配置され、エンドプレート(59)に対する蒸発管(57・58)の接続終端で規定される蒸発管(57・58)からの冷媒の出口(57b・58b)が冷気流通方向の風上側に配置されており、 各蒸発管(57・58)を構成する湾曲部において、冷媒は冷気流通方向の風下側から風上側に流れるように構成されており、 集約蒸発器(32)の上端面の全体が冷気循環路(47)を区画する上壁面(1a)に接する状態で、該集約蒸発器(32)が冷気循環路(47)内に固定されていることを特徴とする冷凍冷蔵装置。 【請求項2】 集約蒸発器(32)の除霜を担う除霜ヒータ(61)が、集約蒸発器(32)の最下端部に配されている、請求項1記載の冷凍冷蔵装置。 【請求項3】(削除) |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2023-07-24 |
出願番号 | P2017-046169 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YAA
(F25B)
P 1 651・ 121- YAA (F25B) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
水野 治彦 |
特許庁審判官 |
間中 耕治 鈴木 充 |
登録日 | 2020-09-10 |
登録番号 | 6762247 |
権利者 | フクシマガリレイ株式会社 |
発明の名称 | 冷凍冷蔵装置 |
代理人 | 森本 聡 |
代理人 | 森本 聡 |