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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08L
管理番号 1412637
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2022-09-07 
確定日 2024-07-18 
事件の表示 特願2019- 33347「樹脂組成物」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 9月 3日出願公開、特開2020-138996〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成31年2月26日の出願であって、その手続の経緯は、以下のとおりである。
令和 4年 2月16日付け:拒絶理由通知
同年 4月22日 :意見書、手続補正書の提出
同年 5月30日付け:拒絶査定
同年 9月 7日 :審判請求書の提出


第2 本願発明
本願の請求項1~11に係る発明は、令和4年4月22日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~11に記載された事項により特定されるものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「(A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、
(C-1)エラストマー、及び
(C-2)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物、を含む、樹脂組成物であって、
樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-1)成分の含有量をC1とし、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-2)成分の含有量をC2としたとき、C1/C2が0.5以上5以下である、樹脂組成物。」


第3 本願発明の技術的意義
1 本願明細書の段落【0041】には、「(C-1)成分及び(C-2)成分を併用することにより、樹脂組成物の硬化物の反りの抑制、樹脂組成物の硬化物の誘電正接の向上に加えて、導電層との間の密着性をも向上させることが可能となる。」と記載されている。
2 また、本願明細書の段落【0042】には、「(C-1)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の硬化物の反りを抑制することが可能になる。」と記載され、段落【0055】~【0056】には、「(C-1)エラストマーの含有量は、誘電正接及び導体層に対しての密着性に優れ、反りを抑制可能な絶縁層を得ることができ、かつ最低溶融粘度が低い樹脂組成物を得る観点から」、所定のものとする旨が記載されている。
3 さらに、本願明細書の段落【0057】には、「(C-2)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の最低溶融粘度を低下させるとともに、樹脂組成物の硬化物の誘電正接を向上させることが可能となる。」ことが記載され、段落【0059】には、「(C-2)成分は、置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかを含む。また、炭素原子数が5以上のアルキル基及び炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかを含むマレイミド化合物は、その長い炭素鎖の作用により、分子構造が柔軟である。よって、アリーレン基を主要な構成に含むマレイミド化合物に比べて低い最低溶融粘度を達成することができる。さらに、硬化物を柔軟にできるので、反りを抑制できる。また、柔軟なので応力集中を抑制でき、よって硬化物の破壊を抑制できるので、密着性を向上させることができる。」ことが記載されている。また、本願明細書の段落【0097】~【0098】には、「(C-2)成分の含有量は、樹脂組成物の最低溶融粘度を低下させるとともに、誘電正接が向上した硬化物を得る観点から」、所定のものとする旨が記載されている。
そして、本願明細書の【実施例】によると、実施例1における、エラストマーA((C-1)成分。不揮発成分50質量%)の量を20部から28部に変え、マレイミド化合物((C-2)成分。デザイナーモレキュールズ社製「BMI-689」)4部を用いなかった比較例1は、誘電正接が大きくなり、ピール強度が低下し、最低溶融粘度が高くなったことが示されている。
これらのことから、特に最低溶融粘度に着目すると、(C-1)成分の含有量と(C-2)の含有量が関係することが読み取れるが、本願発明には、(C-1)成分及び(C-2)成分の含有量は特定されていない。
4 一方で、本願明細書の段落【0100】には、「樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-1)成分の含有量をC1とし、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-2)成分の含有量をC2とする。そのとき、C1/C2が、好ましくは0.5以上、より好ましくは1以上、さらに好ましくは2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは3以下である。C1/C2を斯かる範囲内とすることにより、本発明の効果を顕著に得ることが可能となる。」ことが記載されているものの、具体的にどの効果を得ることができるのかは記載されていない。実施例及び比較例をみても、C1/C2の値が本願発明の効果に及ぼす影響を理解することはできない。
また、審判請求書と同時に提出した実験成績証明書においても、第6 4で述べるように、追加比較例3及び4における(A)成分や(C)成分の含有量が実施例と異なっており、主張された効果がC1/C2に起因するものであるのかは判断できない。
5 したがって、本願明細書の記載からは本願発明の「C1/C2が0.5以上5以下」がどのような技術的意義を有するのかを読み取ることができない。


第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項1に係る発明は、本願の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。

引用文献1:特開2016-196549号公報


第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1の記載
引用文献1には、「プリント配線基板用樹脂組成物、プリプレグ、樹脂基板、金属張積層板、プリント配線基板、および半導体装置」に関して、おおむね、以下の事項が記載されている。なお、下線は、当審で付したものである。以下同様。

・「【請求項1】
プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
マレイミド化合物(A)を含み、
前記マレイミド化合物(A)が下記式(a)により示されるビスマレイミド化合物(A1)を少なくとも含むプリント配線基板用樹脂組成物。
【化1】


(前記式(a)において、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Pは2価の原子または有機基であり、nは1以上10以下の整数である)
・・・
【請求項8】
請求項1乃至7いずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂組成物において、
低応力材(E)をさらに含むプリント配線基板用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のプリント配線基板用樹脂組成物において、
前記低応力材(E)が(メタ)アクリル系ブロック共重合体;シリコーン化合物;カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム;脂肪族エポキシ樹脂;およびゴム粒子から選択される一種または二種以上を含むプリント配線基板用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1乃至9いずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂組成物において、
無機充填材(C)をさらに含むプリント配線基板用樹脂組成物。
・・・
【請求項13】
請求項1乃至12いずれか一項に記載のプリント配線基板用樹脂組成物において、
エポキシ樹脂(D)をさらに含むプリント配線基板用樹脂組成物。」

・「【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線基板用樹脂組成物、プリプレグ、樹脂基板、金属張積層板、プリント配線基板、および半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の高機能化の要求に伴い、電子部品の高密度集積化、さらには高密度実装化が進んでおり、これらの電子機器に使用される半導体装置の小型化が急速に進行している。そして、半導体装置に使用されるプリント配線基板には、高密度で微細な回路が求められている。
微細な回路を形成する方法として、SAP(セミアディティブプロセス)法が提案されている。SAP法では、はじめに、絶縁層表面に粗化処理を施し、上記絶縁層表面上に下地になる無電解金属めっき膜を形成する。次いで、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けをおこなう。その後、めっきレジストを除去し、上記回路形成部以外の無電解金属めっき膜をフラッシュエッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する。SAP法は、絶縁層上に積層する金属層を薄膜化できるので、より微細な回路配線が可能となる。
【0003】
半導体装置は、例えば、プリント配線基板上に半導体素子を搭載することにより形成される。このようなプリント配線基板に関する技術としては、例えば、以下の特許文献1に記載のものが挙げられる。特許文献1には、ジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂及びマレイミド環を有する熱硬化性樹脂を必須成分として含有し、マレイミド環を有する熱硬化性樹脂の含有割合がジヒドロベンゾオキサジン環を有する熱硬化性樹脂及びマレイミド環を有する熱硬化性樹脂の合計量に対して3~30重量%であることを特徴とする熱硬化性組成物を用いたプリント配線板が記載されている。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリント配線基板上に半導体素子を搭載することにより形成される半導体装置については、配線間の絶縁信頼性に優れることが求められる。このような要求は、近年のプリント配線基板の配線の高密度化に伴って特に顕著となっている。しかしながら、本発明者らの検討によれば、特許文献1に記載の技術では、プリント配線基板の高温高湿下での絶縁信頼性を十分に得ることが困難であることが明らかになった。」

・「【発明を実施するための形態】
【0014】
・・・
【0018】
以下、樹脂組成物(P)、プリプレグ、樹脂基板、金属張積層板200、プリント配線基板300、および半導体装置400について詳細に説明する。
【0019】
マレイミド化合物(A)は下記式(a)により示されるビスマレイミド化合物(A1)を少なくとも含む。
【0020】
【化3】


(上記式(a)において、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Pは2価の原子または有機基であり、nは1以上10以下の整数である)
・・・
【0023】
このようなビスマレイミド化合物(A1)の具体例としては、例えば、以下の式(a1)により示されるビスマレイミド化合物、以下の式(a2)により示されるビスマレイミド化合物、以下の式(a3)により示されるビスマレイミド化合物等が挙げられる。式(a1)により示されるビスマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1500(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1500)等が挙げられる。式(a2)により示されるビスマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-1700(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1700)、BMI-1400(デジグナーモレキュールズ社製、分子量1400)等が挙げられる。式(a3)により示されるビスマレイミド化合物の具体例のとしてはBMI-3000(デジグナーモレキュールズ社製、分子量3000)等が挙げられる。
【0024】
【化5】


上記式(a1)において、nは1以上10以下の整数を示す。
・・・
【0027】
樹脂組成物(P)中に含まれるマレイミド化合物(A)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物(P)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、1.0質量%以上25.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以上22.0質量%以下がより好ましく、5.0質量%以上20.0質量%以下がさらに好ましい。マレイミド化合物(A)の含有量が上記範囲内であると、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の低熱収縮性および耐薬品性のバランスをより一層向上させることができる。
【0028】
マレイミド化合物(A)中に含まれるビスマレイミド化合物(A1)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物(P)中に含まれるマレイミド化合物(A)を100質量%としたとき、1質量%以上100質量%以下が好ましく、1質量%以上95質量%以下がより好ましく、10質量%以上75質量%以下がさらに好ましく、30質量%以上75質量%以下が特に好ましい。ビスマレイミド化合物(A1)の含有量が上記範囲内であると、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の低熱収縮性および耐薬品性のバランスをより一層向上させることができる。
・・・
【0062】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)はエポキシ樹脂(D)をさらに含むことができる。
・・・
【0069】
樹脂組成物(P)中に含まれるエポキシ樹脂(D)の含有量は、その目的に応じて適宜調整されれば良く特に限定されないが、樹脂組成物(P)中の無機充填材(C)を除く成分の全量を100質量%としたとき、1質量%以上50質量%以下であることが好ましい。エポキシ樹脂(D)の含有量が上記下限値以上であると、ハンドリング性が向上し、プリプレグを形成するのが容易となる。エポキシ樹脂(D)の含有量が上記上限値以下であると、得られるプリント配線基板の強度や難燃性が向上したり、プリント配線基板の線膨張係数が低下し、反りの低減効果が向上したりする場合がある。
【0070】
本実施形態に係る樹脂組成物(P)は、無機充填材(C)をさらに含むことが好ましい。これにより、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の貯蔵弾性率E'を向上させることができる。さらに、得られる絶縁層301の線膨張係数を小さくすることができる。
・・・
【0072】
無機充填材(C)の平均粒子径は、特に限定されないが、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましい。無機充填材(C)の平均粒子径が上記下限値以上であると、ワニスの粘度が高くなるのを抑制でき、プリプレグの作製時の作業性を向上させることができる。
・・・
【0076】
樹脂組成物(P)は、低応力材(E)をさらに含むことが好ましい。これにより、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の応力を緩和させたり、回路層等の他の部材との密着性をより向上させたりすることができる。
低応力材(E)としては、例えば、(メタ)アクリル系ブロック共重合体;シリコーン化合物;カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム;脂肪族エポキシ樹脂;およびゴム粒子等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
・・・
【0083】
シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンゴム、シリコーンオイル、シリコーンパウダー、シリコーン樹脂、シリコーンエポキシ樹脂、アミン変性シリコーン樹脂、エポキシ基およびフェニル基含有3次元架橋型シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0084】
上記脂肪族エポキシ樹脂としては、グリシジル基以外に環状構造を有しない脂肪族エポキシ樹脂であることが好ましく、グリシジル基を2以上有する2官能以上の脂肪族エポキシ樹脂がより好ましい。このような脂肪族エポキシ樹脂は、エポキシ基が酸化されにくいため、熱履歴による弾性率の上昇が起こりにくいため優れている。
【0085】
上記ゴム粒子としては、例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。
【0086】
コアシェル型ゴム粒子は、コア層とシェル層とを有するゴム粒子であり、例えば、外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、内層のコア層がゴム状ポリマーで構成される2層構造、または外層のシェル層がガラス状ポリマーで構成され、中間層がゴム状ポリマーで構成され、コア層がガラス状ポリマーで構成される3層構造のもの等が挙げられる。ガラス状ポリマー層は、例えば、メタクリル酸メチルの重合物等で構成され、ゴム状ポリマー層は、例えば、ブチルアクリレート重合物(ブチルゴム)等で構成される。コアシェル型ゴム粒子の具体例としては、スタフィロイドAC3832、AC3816N(商品名、ガンツ化成社製)、メタブレンKW-4426(商品名、三菱レイヨン社製)が挙げられる。架橋アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)粒子の具体例としては、XER-91(平均粒子径0.5μm、JSR社製)等が挙げられる。
【0087】
架橋スチレンブタジエンゴム(SBR)粒子の具体例としては、XSK-500(平均粒子径0.5μm、JSR社製)等が挙げられる。アクリルゴム粒子の具体例としては、メタブレンW300A(平均粒子径0.1μm)、W450A(平均粒子径0.2μm)(三菱レイヨン社製)等が挙げられる。
【0088】
シリコーン粒子は、オルガノポリシロキサンで形成されたゴム弾性微粒子であればとくに限定されず、例えば、シリコーンゴム(オルガノポリシロキサン架橋エラストマー)そのものからなる微粒子、および二次元架橋主体のシリコーンからなるコア部を三次元架橋型主体のシリコーンで被覆したコアシェル構造粒子等が挙げられる。シリコーンゴム微粒子としては、KMP-605、KMP-600、KMP-597、KMP-594(信越化学社製)、トレフィルE-500、トレフィルE-600(東レ・ダウコーニング社製)等の市販品を用いることができる。
【0089】
樹脂組成物(P)中に含まれる低応力材(E)の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物(P)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、0.1質量%以上10.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上8.0質量%以下がより好ましい。低応力材(E)の含有量が上記範囲内であると、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の応力をより一層緩和させたり、回路層等の他の部材との密着性をより一層向上させたりすることができる。
・・・
【0105】
以上の樹脂組成物(P)において、各成分の割合は、例えば、以下のようである。
樹脂組成物(P)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、好ましくは、マレイミド化合物(A)の割合が1.0質量%以上25.0質量%以下であり、ベンゾオキサジン化合物(B)の割合が1.0質量%以上25.0質量%以下であり、無機充填材(C)の割合が50.0質量%以上85.0質量%以下である。
より好ましくは、マレイミド化合物(A)の割合が5.0質量%以上20.0質量%以下であり、ベンゾオキサジン化合物(B)の割合が2.0質量%以上15.0質量%以下であり、無機充填材(C)の割合が60.0質量%以上80.0質量%以下である。」

・「【実施例】
【0164】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例では、部は特に特定しない限り質量部を表す。また、それぞれの厚みは平均膜厚で表わされている。
【0165】
実施例および比較例では、以下の原料を用いた。
マレイミド化合物1:式(a1)により示されるビスマレイミド化合物(BMI-1500、デジグナーモレキュールズ社製、分子量1500)
マレイミド化合物2:式(a2)により示されるビスマレイミド化合物(BMI-1700、デジグナーモレキュールズ社製、分子量1700)
マレイミド化合物3:式(a3)により示されるビスマレイミド化合物(BMI-3000、デジグナーモレキュールズ社製、分子量3000)
マレイミド化合物4:式(1)において、n1が0以上3以下、X1が「-CH2-」で表される基、aが0、bが0である化合物(BMI-2300、大和化成工業社製、Mw=750)
・・・
【0167】
エポキシ樹脂1:アラルキル型エポキシ樹脂(NC3000L、日本化薬社)
・・・
【0168】
無機充填材1:シリカ(アドマテック社製、SC4050、平均粒径1.1μm、フェニルアミノシラン処理のシリカスラリー)
【0169】
低応力材1:カルボン酸末端アクリロニトリル・ブタジンゴム(PTIジャパン社製、CTBN1008SP)
低応力材2:アミノ基末端アクリロニトリル・ブタジンゴム(PTIジャパン社製、ATBN1300X16)
・・・
【0171】
次に、プリプレグの製造について説明する。使用した樹脂ワニスの組成を表1(質量部)に示し、得られたプリプレグ1~19の厚み等を表2に示す。なお、表2に記載のP1~P19とはプリプレグ1~プリプレグ19を意味する。
・・・
【0187】
(9)半導体装置の反り評価
回路パターンを形成した後のプリント配線基板にビルドアップ材(住友ベークライト社製、BLA-3700GS)を積層硬化し、セミアディティブ法で回路加工した。その上に、10mm×10mm×100μm厚みの半田バンプ付半導体素子を実装し、アンダーフィル(住友ベークライト社製、CRP-4160G)で封止し、150℃で2時間硬化させた。最後に、15mm×15mmにダイシングし半導体装置を作製した。
得られた半導体装置の260℃での反りを温度可変レーザー三次元測定機(日立テクノロジーアンドサービス社製、形式LS220-MT100MT50)を用いて評価した。上記測定機のサンプルチャンバーに半導体素子面を下にして設置し、高さ方向の変位を測定し、変位差の最も大きい値を反り量とした。評価基準は以下の通りである。
◎:反り量が30μm未満
〇:反り量が30μm以上50μm未満
× :反り量が50μm以上」
・・・
【0189】
【表1】


【0190】
【表2】




2 引用発明
引用文献1には、請求項1、8、9及び10を引用する請求項13の記載から、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。

・「プリント配線基板における絶縁層を形成するために用いられる熱硬化性樹脂組成物であって、
マレイミド化合物(A)を含み、
前記マレイミド化合物(A)が下記式(a)により示されるビスマレイミド化合物(A1)を少なくとも含むプリント配線基板用樹脂組成物において、
【化1】


(前記式(a)において、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状または環状の脂肪族炭化水素基であり、Pは2価の原子または有機基であり、nは1以上10以下の整数である)、
低応力材(E)をさらに含み、
前記低応力材(E)が(メタ)アクリル系ブロック共重合体;シリコーン化合物;カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム;脂肪族エポキシ樹脂;およびゴム粒子から選択される一種または二種以上を含み、
無機充填材(C)をさらに含み、
エポキシ樹脂(D)をさらに含むプリント配線基板用樹脂組成物。」


第6 当審の判断
1 引用発明との対比
本願発明と引用発明を対比する。

・引用発明の「下記式(a)により示されるビスマレイミド化合物(A1)」(当審注:式(a)は省略した。)は、「式(a)において、Qは炭素数6以上の2価の直鎖状、分枝鎖状または環状の脂肪族炭化水素基」であって、該Qは「置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基」の炭化水素鎖といえるから、本願発明の(C-2)である「置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物」に相当する。

・引用発明の「低応力材(E)」は、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体;シリコーン化合物;カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム;脂肪族エポキシ樹脂;およびゴム粒子から選択される一種または二種以上を含」むものであるところ、この「カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム」は、分子内にブタジエン構造を有するゴムであり、上記「ゴム粒子」は、引用文献1の段落【0085】において、「例えば、コアシェル型ゴム粒子、架橋アクリロニトリルブタジエンゴム粒子、架橋スチレンブタジエンゴム粒子、アクリルゴム粒子、シリコーン粒子等が挙げられる。」とされている。
一方、本願明細書には、本願発明の「エラストマー」について、以下の記載がある。
「【0042】
-(C-1)エラストマー-
樹脂組成物は、(C)成分における(C-1)成分として、(C-1)エラストマーを含有する。(C-1)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の硬化物の反りを抑制することが可能になる。(C-1)成分は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
(C-1)成分としては、分子内に、ポリブタジエン構造、ポリシロキサン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレン構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、及びポリカーボネート構造から選択される1種以上の構造を有する樹脂であることが好ましく、ポリブタジエン構造、ポリ(メタ)アクリレート構造、ポリアルキレンオキシ構造、ポリイソプレン構造、ポリイソブチレン構造、またはポリカーボネート構造から選択される1種または2種以上の構造を有する樹脂であることがより好ましく、ポリブタジエン構造、及びポリアルキレンオキシ構造から選択される1以上の構造を有する樹脂であることがさらに好ましく、ポリブタジエン構造を有する樹脂であることが特に好ましい。樹脂組成物が上記の構造を有するエラストマーを含むことで、通常、絶縁層の反りを抑制することが可能となる。」
また、エラストマーの定義について、ゴムも含まれることが技術常識である(必要であれば、「新版高分子辞典」(初版第3刷)、1991年8月10日、株式会社朝倉書店発行、第42頁(「エラストマー」の欄))。
そうすると、引用発明における「低応力材(E)」のうち、「カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム」及び「ゴム粒子」は、本願発明の「(C-1)エラストマー」に該当する。

・引用発明の「無機充填材(C)」は、本願発明の「(B)無機充填剤」に相当する。

・引用発明の「エポキシ樹脂(D)」は、本願発明の「(A)エポキシ樹脂」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致する。
<一致点>
「(A)エポキシ樹脂、
(B)無機充填剤、及び
(C-2)置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物、を含む、樹脂組成物。」

そして、本願発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点1>
本願発明は「(C-1)エラストマー」を含むのに対し、引用発明は、低応力材(E)として、「(メタ)アクリル系ブロック共重合体;シリコーン化合物;カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム;脂肪族エポキシ樹脂;およびゴム粒子から選択される一種または二種以上を含」む点

<相違点2>
本願発明は「樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-1)成分の含有量をC1とし、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の(C-2)成分の含有量をC2としたとき、C1/C2が0.5以上5以下」であるのに対し、引用発明はそのような特定がない点

2 相違点についての検討
上記相違点について検討する。
(1)相違点1について
引用文献1の【0076】には、「樹脂組成物(P)は、低応力材(E)をさらに含むことが好ましい。これにより、得られるプリプレグの硬化物や樹脂基板の応力を緩和させたり、回路層等の他の部材との密着性をより向上させたりすることができる。」とされており、また、実施例においても「低応力材1:カルボン酸末端アクリロニトリル・ブタジンゴム(PTIジャパン社製、CTBN1008SP) 低応力材2:アミノ基末端アクリロニトリル・ブタジンゴム(PTIジャパン社製、ATBN1300X16)」(当審注:いずれの「ブタジン」の記載も「ブタジエン」の誤記と認められる。)として、カルボキシル基やアミノ基で変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴムを採用している。
上記を踏まえると、引用発明における低応力材(E)として、エラストマーである「カルボキシル基、アミノ基、ビニルアクリレート基またはエポキシ基により変性されたアクリロニトリル・ブタジエンゴム」を選択することは、当業者が適宜なし得ることである。

(2)相違点2について
「C1/C2」の値について検討する。
引用発明において、本願発明の「C1」に対応する「低応力材(E)」の含有量の決定に際し、引用文献1の【0089】の記載を踏まえると、引用発明における「低応力材(E)」の「樹脂組成物(P)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき」の含有量は、好ましいものとされる「0.1質量%以上10.0質量%以下」に設定することが相当である。
また、本願発明の「C2」の量に対応する、引用発明における「ビスマレイミド化合物(A1)」の含有量について、引用文献1には、「マレイミド化合物(A)」の含有量は、「樹脂組成物(P)の全固形分(すなわち、溶媒を除く成分)を100質量%としたとき、1.0質量%以上25.0質量%以下が好ましく、」(【0027】)と記載されており、「マレイミド化合物(A)」中に含まれる「ビスマレイミド化合物(A1)」の含有量は、「樹脂組成物(P)中に含まれるマレイミド化合物(A)を100質量%としたとき、1質量%以上100質量%以下が好ましく、」(【0028】)と記載されている。

そうすると、引用発明において、低応力材(E)及びビスマレイミド化合物(A1)の含有量は上記した範囲で調整されるものであり、引用文献1の実施例であるワニス11及び12においては、本願発明の「C1/C2」に相当する低応力材(E)の含有量/ビスマレイミド化合物(A1)の含有量が、以下で述べるように0.83であり、本願発明の「0.5以上5以下」の範囲内であるから、上記調整の際に、「C1/C2」を引用文献1の実施例に近い範囲に設定し、相違点2に係る特定事項とすることは、当業者が容易になし得ることといえる。

あらためて、前段で述べた引用文献1の実施例について詳述すると、ビスマレイミド化合物(A1)を採用したマレイミド化合物1、及び、「エラストマー」に該当する変性ブタジエンゴムを採用した低応力材1又は2を用いたものは、【0189】の【表1】から、ワニス11及び12である。
これらのワニスには、「マレイミド化合物4」が、さらに含有されるが、この「マレイミド化合物4」は、「式(1)において、n1が0以上3以下、X1が「-CH2-」で表される基、aが0、bが0である化合物(BMI-2300、大和化成工業社製、Mw=750)」(【0165】、式(1)は、当審が以下に摘記した。)であるから、本願発明のマレイミド化合物(C-2)の要件である「置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素原子数が5以上のアルキレン基の少なくともいずれかの炭化水素鎖を含むマレイミド化合物」に該当しない。そうすると、式(1)の成分である「マレイミド化合物4」は、「C1/C2」の値を左右しない。


そこで、ワニス11及び12における「C1/C2」の値を計算すると、いずれもC1/C2=20/24=0.83となり、「C1/C2が0.5以上5以下」の範囲に含まれることとなる。

3 効果についての検討
本願発明によって奏される効果を検討する。
本願発明は、「誘電正接及び導体層に対しての密着性に優れ、反りを抑制可能な絶縁層を得ることができ、かつ最低溶融粘度が低い樹脂組成物;当該樹脂組成物を含む樹脂シート;当該樹脂組成物を用いて形成された絶縁層を備えるプリント配線板、及び半導体装置を提供することができる。」(【0010】)という効果を意図したものである。

そこで、引用文献1における実施例をみると、低応力材を含有したワニス11~18の「半導体装置の反り評価」が◎であり、含有していないワニス1~10が○であることから、本願明細書の「(C-1)成分を樹脂組成物に含有させることで、樹脂組成物の硬化物の反りを抑制することが可能になる。」(【0042】)との効果は予測し得ることであり、この反りの評価に関しても、本願明細書の【0200】及び引用文献1の【0187】において、共に、シリコンウエハや半導体素子と積層体を成した際の反り量で行っており、同種の効果を確認していると理解できる。
さらに、マレイミド化合物の含有と効果の関係についても、引用文献1のワニス19は、本願発明の(C-2)成分に相当するマレイミド化合物を含有しておらず、平均線膨張係数α1が7.5ppm/℃、平均線膨張係数α2が8.9ppm/℃であって、それぞれ高い値をとること、そして、引用文献1の【0114】にはα1が7.5ppm/℃以下で、【0116】にはα2が8.0ppm/℃以下で、回路層と絶縁層との密着性を維持することが記載されていることから、導体層への密着性の効果が予測できるし、同【0114】、【0116】には、α1、α2と応力の低減についての記載もあるので、本願発明の(C-2)成分に相当するマレイミド化合物の使用により、反りの低減も予測できるといえる。
また、誘電正接や最低溶融粘度についても、一定量の(C-1)成分及び(C-2)成分を併用することにより自ずから低くなるものであると認められ、「誘電正接及び導体層に対しての密着性に優れ、反りを抑制可能な絶縁層を得ることができ、かつ最低溶融粘度が低い」という本願発明の効果はいずれも当業者が予測し得る程度のものといえる。

4 審判請求人の主張
審判請求人は、令和4年9月7日に提出された審判請求書において、概略、以下の2点を主張している。

・主張1
審判請求書と同時に提出した実験成績証明書において、「[表1-1]に示すとおり、「C1/C2」の値が2.5である本願明細書記載の実施例1~6と同様に、「C1/C2が0.5以上5以下」における閾値「0.5」の近傍値の0.75である追加実施例8、及び、閾値「5」の近傍値の4.6である追加実施例7においても、本願発明の効果を奏しますので、「C1/C2が0.5以上5以下」である数値範囲にわたって、本願発明の効果が奏されます。一方、(C-1)成分及び(C-2)成分を含み、且つ、「C1/C2」の値が0.4である追加比較例3、及び、「C1/C2」の値が6である追加比較例4においては、特に、反り量が2mmより大きくなってしまい([表1-1]中「×」)、反りを抑制するという本願発明の効果を奏することができないことが示されています。追加比較例4においては、更に、誘電正接が高く、ピール強度に劣るというデメリットも示されています。」

「[表1-1]
・・・




・主張2
「引用文献1~3には、C1/C2を0.5以上5以下となるように(C-1)成分、及び(C-2)成分を組み合わせて含有させることにより、樹脂組成物の硬化物の反りの抑制、樹脂組成物の硬化物の誘電正接の向上に加えて、導電層との間の密着性をも向上させることが可能になることが記載も示唆もされていませんので、引用文献1~3には、樹脂組成物中の樹脂成分を100質量%とした場合の、(C-1)成分の含有量と(C-2)成分の含有量との量比(C1/C2)が0.5以上5以下となるように調整することの動機付けはありません。」

審判請求人による、前記主張を検討する。
・主張1について
まず、「C1/C2」が「0.75である追加実施例8」及び「4.6である追加実施例7」における効果に関して検討すると、前記「2 相違点についての検討」で述べたように、引用文献1の実施例におけるワニス11及び12において、「C1/C2」が0.83の例が示されており、閾値である0.5以上である追加実施例8より更に内側の範囲にあるものであり、当然に所期の効果は発揮されると考えられる。
次に、追加比較例3及び4に関する、反り抑制の効果が奏されないことに基づく主張について、審判請求人が提出した実験成績証明書の[表1-1]において、反りの結果が「×」となった、比較例2、追加比較例3及び4全てにおいて「(C)成分の含有量(質量%)」は、いずれも10.5~29.1の範囲であって、(A)成分の含有量が12質量部である一方、反りの結果が「〇」とされた他の全ての実施例及び比較例は、いずれも「(C)成分の含有量(質量%)」が60.7であって、(A)成分の含有量が6質量部である。そうすると、反りに影響を与える原因が、「C1/C2」に起因するのか、(A)成分や(C)成分の含有量に起因するのかを、これらの追加実験例から判断できるものではない。
また、追加比較例4において、誘電正接が高く、ピール強度に劣る点についても、前述のように、誘電正接とピール強度に良好な結果が得られた実施例と追加比較例4との間で(A)成分や(C)成分の含有量が、それぞれ倍の量で異なっており、前提条件が異なる例同士の比較となることから、C1/C2に起因する効果として採用することはできない。

・主張2について
引用発明は、プリント配線基板上に半導体素子を搭載する際に使用する樹脂組成物という本願発明と共通の技術分野に属し、引用文献1には、「反りの低減」(【0069】)、応力に影響されるものではあるが「回路層等の他の部材との密着性をより一層向上させたりすること」(【0089】)という本願発明と共通の課題を有するものであり、「誘電正接の向上」や「溶融粘度」についても、用途と樹脂組成物の効果の作用機序を本願発明と同じくする引用発明についても当然改善すべき自明な課題であることは、本願の【0005】からみても明らかである。
そして、仮に、本願発明において、反りの低減について効果があるとしても、上述のとおり、引用文献1において、低応力材及びマレイミド化合物の使用による反り抑制の効果が確認できる以上、当業者が予測し得ない程の効果があるとはいえない。

よって、審判請求人による前記主張は、いずれも採用することができない。

5 まとめ
したがって、本願発明は、引用発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。


第7 むすび
以上のとおり、本願発明、すなわち請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、特許庁長官を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2024-03-28 
結審通知日 2024-04-02 
審決日 2024-06-03 
出願番号 P2019-033347
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C08L)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 ▲吉▼澤 英一
特許庁審判官 近野 光知
北澤 健一
発明の名称 樹脂組成物  
代理人 弁理士法人酒井国際特許事務所  

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