• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G07D
管理番号 1413150
総通号数 32 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2024-08-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2023-10-05 
確定日 2024-08-13 
事件の表示 特願2022- 97396「硬貨選別機及び硬貨選別方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 5年12月28日出願公開、特開2023-183730、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、令和4年6月16日の出願であって、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和5年 1月24日付け:拒絶理由通知
令和5年 3月31日 :意見書、手続補正書の提出
令和5年 7月21日付け:拒絶査定(原査定)
令和5年10月 5日 :拒絶査定不服審判の請求

第2 原査定の概要

原査定の概要は、次のとおりである。

1.(進歩性)この出願の請求項1、3、5、7、9ないし10に係る発明は、下記の引用文献1ないし4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2020-160631号公報
2.特開2022-77808号公報
3.特開平10-239243号公報
4.特開平8-89910号公報

第3 本願発明

本願請求項1ないし10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明10」という。)は、令和5年3月31日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定される、次のとおりの発明である。

「【請求項1】
記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を移動する吸着部と、
前記吸着部によって吸着された前記硬貨の他方の面の画像を撮像する撮像部と、
前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像と、前記特定金種の硬貨の素材量目とを対応付けて記憶する特定金種記憶部と、
前記硬貨の他方の面の画像及び前記基準画像に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別する金種識別部と、
識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する収納部と、
を備える
硬貨選別機。
【請求項2】
前記吸着部によって前記硬貨の一方の面を吸着する前に前記硬貨の一方の面の外形画像を撮像する外形撮像部と、
前記特定金種の硬貨が配置され、一定の周期又は任意のタイミングで回転するターンテーブルと、
ロボットアーム及び前記ロボットアームの先端に配置される吸着部を有する仕分けロボットであって、前記ターンテーブル上の硬貨のうちの1枚の硬貨の一方の面を前記吸着部によって吸着し、前記ロボットアームによって前記硬貨の他方の面を下側にした状態で移動する仕分けロボットと、
を更に備え、
前記特定金種記憶部は、前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む前記基準画像と、前記特定金種の硬貨の素材量目と、前記特定金種の硬貨の外形を示す外形情報とを対応付けて記憶し、
前記金種識別部は、前記硬貨の他方の面の画像、前記硬貨の一方の面の外形画像、前記基準画像及び前記外形情報に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別し、
前記収納部は、識別された前記硬貨を、前記硬貨を受け付けた顧客名、前記硬貨の金種及び前記硬貨の素材量目毎に仕分けて収納する、請求項1に記載の硬貨選別機。
【請求項3】
識別された前記硬貨に関する識別硬貨情報を記憶する識別硬貨情報記憶部を更に備え、
前記識別硬貨情報は、前記硬貨を受け付けた顧客名、顧客の支店名、前記硬貨の金種、前記硬貨の種類及び前記硬貨の枚数を含む、請求項1又は2に記載の硬貨選別機。
【請求項4】
前記金種識別部は、
前記外形撮像部によって撮像された前記硬貨の一方の面の前記外形画像及び前記特定金種記憶部に記憶された前記外形情報に基づいて前記外形画像の画像処理を行い、前記硬貨の外形を判断し、
前記撮像部によって撮像された前記硬貨の他方の面の画像と、前記特定金種記憶部に記憶された前記基準画像とを比較し、前記硬貨の模様を判断することによって、前記硬貨の種類を識別する、
請求項2に記載の硬貨選別機。
【請求項5】
硬貨選別機における硬貨選別方法であって、
吸着部によって、記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を移動する工程と、
前記吸着部によって吸着された前記硬貨の他方の面の画像を撮像部によって撮像する工程と、
金種識別部によって、前記硬貨の他方の面の画像並びに特定金種記憶部に記憶された前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別する工程と、
収納部によって、識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する工程と、
を備える硬貨選別方法。
【請求項6】
前記硬貨選別機は、
前記特定金種の硬貨が配置され、一定の周期又は任意のタイミングで回転するターンテーブルと、
ロボットアーム及び前記ロボットアームの先端に配置される吸着部を有する仕分けロボットであって、前記ターンテーブル上の硬貨のうちの1枚の硬貨の一方の面を前記吸着部によって吸着し、前記ロボットアームによって前記硬貨の他方の面を下側にした状態で移動する仕分けロボットと、を備え、
前記硬貨選別方法は、外形撮像部によって、前記吸着部によって前記硬貨の一方の面を吸着する前に前記硬貨の一方の面の外形画像を撮像する工程を更に備え、
前記硬貨の種類を識別する工程は、前記硬貨の他方の面の画像、前記硬貨の一方の面の外形画像、前記特定金種記憶部に記憶された前記基準画像及び前記特定金種の硬貨の外形を示す外形情報に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別することを含み、
前記収納する工程は、識別された前記硬貨を、前記硬貨を受け付けた顧客名、前記硬貨の金種及び前記硬貨の素材量目毎に仕分けて収納することを含む、
請求項5に記載の硬貨選別方法。
【請求項7】
識別された前記硬貨に関する識別硬貨情報を識別硬貨情報記憶部に記憶する工程を更に備え、
前記識別硬貨情報は、前記硬貨を受け付けた顧客名、顧客の支店名、前記硬貨の金種、前記硬貨の種類及び前記硬貨の枚数を含む、請求項5又は6に記載の硬貨選別方法。
【請求項8】
前記硬貨の種類を識別する工程は、
前記外形撮像部によって撮像された前記硬貨の一方の面の前記外形画像及び前記特定金種記憶部に記憶された前記外形情報に基づいて前記外形画像の画像処理を行い、前記硬貨の外形を判断し、
前記撮像部によって撮像された前記硬貨の他方の面の画像と、前記特定金種記憶部に記憶された前記基準画像とを比較し、前記硬貨の模様を判断することによって、前記硬貨の種類を識別することを含む、請求項6に記載の硬貨選別方法。
【請求項9】
記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨が1枚ずつ置かれる載置部と、
前記硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を前記載置部へ移動する吸着部と、
前記吸着部と一体化され、前記吸着部によって前記硬貨を吸着した状態で前記硬貨の一方の面の第1画像を撮像する第1撮像部と、
前記載置部の下側に配置され、前記載置部に置かれた前記硬貨の他方の面の第2画像を撮像する第2撮像部と、
前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像と、前記特定金種の硬貨の素材量目とを対応付けて記憶する特定金種記憶部と、
前記第1画像及び前記第2画像と、前記基準画像とを比較し、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別する金種識別部と、
識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する複数の収納部と、
を備える硬貨選別機。
【請求項10】
硬貨選別機における硬貨選別方法であって、
記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着部によって吸着し、前記硬貨を載置部へ移動する工程と、
前記吸着部によって前記硬貨を吸着した状態で前記硬貨の一方の面の第1画像を第1撮像部によって撮像する工程と、
前記載置部に置かれた前記硬貨の他方の面の第2画像を第2撮像部によって撮像する工程と、
前記第1画像及び前記第2画像と、特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像とを比較し、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨及び前記旧硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を1枚ずつ識別する工程と、
識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する工程と、
を備える硬貨選別方法。」

第4 引用文献

1 引用文献1および引用発明

(1)引用文献1の記載事項

原査定の拒絶理由に引用された引用文献1(特開2020-160631号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審が付加した。以下同様。)。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、硬貨を処理する硬貨処理装置に関する。また、本発明は、硬貨処理装置に用いて好適な硬貨処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、損貨(変形硬貨、汚損硬貨)や記念貨等の、市場流通に適さない特殊な硬貨を取り扱う硬貨処理装置が知られている。たとえば、このような硬貨処理装置の一例が、特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1の硬貨処理装置では、入金口を介して筐体内部にある入金位置に一枚の硬貨が載置される。載置された硬貨は、入金位置においてカメラで撮像される。そしてこの画像は、硬貨の種類および金種に関する候補とともに表示部の入力画面上に表示される。操作者は、硬貨の画像を見ながら、その硬貨の種類および金種を複数の候補の中から選択する。硬貨の種類および金種が選択されると、これら情報が画像に紐付けられて記憶部に記憶される。その後、硬貨は、損貨であるか記念貨であるかに応じて、損貨箱または記念貨箱に振り分けて収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2015-018304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の硬貨処理装置では、入金対象の硬貨が複数枚ある場合に、1枚の硬貨が入金位置に載置され、その硬貨が入金位置から移動されて無くなると、次の硬貨が入金位置に載置されるという操作が繰り返される。このため、ユーザにとって、入金操作が面倒であり、入金時間も長く掛かりやすい。
【0006】
かかる課題に鑑み、本発明は、複数枚の硬貨を円滑に処理することが可能な硬貨処理装置および硬貨処理方法を提供することを目的とする。」

イ 図6


ウ 「【0049】
図6は、特殊硬貨処理装置7および操作端末8の構成を示すブロック図である。
【0050】
特殊硬貨処理装置7は、撮像処理部201と、シャッター駆動部202と、ユニット駆動部203と、通信部204と、制御部205と、記憶部206と、を備える。
【0051】
撮像処理部201は、制御部205からの制御によりカメラ40を駆動するとともに、カメラ40からの画像データを処理して制御部205に送信する。シャッター駆動部202は、シャッター12を駆動するためのモータおよび駆動回路を備え、制御部205からの制御により、シャッター12を開閉する。ユニット駆動部203は、モータ134および駆動回路を備え、制御部205からの制御により、移動機構130、即ち、硬貨振分ユニット100を駆動する。通信部204は、制御部205からの制御により、操作端末8の通信部304との間で無線方式あるいは有線方式による通信を行う。
【0052】
制御部205は、CPU(Central Processing Unit)等の演算回路を備え、記憶部206に記憶されたプログラムに従って、撮像処理部201、シャッター駆動部202、ユニット駆動部203および通信部204を制御する。記憶部206は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)やハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部205の制御プログラムを記憶し、また、制御部205の制御処理の際にワーク領域として利用される。
【0053】
操作端末8は、上述した操作表示部301およびプリンタ302の他、カードリーダ303、通信部304、制御部305および記憶部306を備える。
【0054】
操作表示部301は、ディスプレイ301aとタッチセンサ301bとを備えたタッチパネルで構成される。ディスプレイ301aは、各種情報を表示する。タッチセンサ301bは、ディスプレイ301aに対するユーザのタッチ操作を検出する。プリンタ302は、バラ紙幣処理装置2、束紙幣処理装置3、バラ硬貨処理装置4、包装硬貨処理装置5、有価媒体処理装置6、特殊硬貨処理装置7および貨幣保管装置9に対する入金処理、出金処理等の各種処理の結果を、ジャーナルとして用紙に印字し出力する。
【0055】
カードリーダ303は、IDカードを読み取り、読み取ったデータを制御部305に出力する。通信部304は、特殊硬貨処理装置7の通信部204との間で無線方式あるいは有線方式による通信を行う。この他、通信部304は、バラ紙幣処理装置2、束紙幣処理装置3、バラ硬貨処理装置4、包装硬貨処理装置5、有価媒体処理装置6および貨幣保管装置9の各通信部との間で無線方式あるいは有線方式による通信を行う。
【0056】
制御部305は、CPU等の演算回路を備え、記憶部306に記憶されたプログラムに従って、操作表示部301、プリンタ302、カードリーダ303、通信部304を制御する。さらに、制御部305は、通信部304を介して、バラ紙幣処理装置2、束紙幣処理装置3、バラ硬貨処理装置4、包装硬貨処理装置5、有価媒体処理装置6、特殊硬貨処理装置7および貨幣保管装置9との間で各種の指令や情報のやり取りを行うことにより、これら装置の動作を制御する。
【0057】
記憶部306は、ROM、RAMやハードディスク等の記憶媒体を備え、制御部305の制御プログラムを記憶し、また、制御部305の制御処理の際にワーク領域として利用される。さらに、記憶部306は、損貨および記念貨の参照画像(表面および裏面)と金種とを対応付けた硬貨画像データベース306aを保持している。硬貨画像データベース306aは、硬貨の種類(損貨/記念貨)ごとに準備されている。硬貨画像データベース306aは、カメラ40により撮像された硬貨の画像の金種を判定する際に、制御部305により参照される。
【0058】
次に、特殊硬貨処理装置7へ特殊な硬貨である損貨および記念貨を入金するための処理について説明する。」

エ 図7


オ 「【0059】
図7は、損貨等の特殊硬貨の入金処理を示すフローチャートである。図8(a)~(d)は、それぞれ、特殊硬貨の入金処理の際に操作端末8の操作表示部301において表示される画面を示す図である。図7の入金処理は、操作端末8の制御部305と特殊硬貨処理装置7の制御部205とが連携することにより実行される。
【0060】
特殊硬貨の入金処理において、操作者は、まず、図8(a)に示すメニュー画面410を操作する。メニュー画面410には、処理項目の選択候補を表示する領域411が含まれている。操作者は、領域411中の“特殊貨幣”の処理項目を選択した後、領域412に含まれた貨幣の種類の中から、処理対象とされる損貨/旧貨および記念貨の項目を選択する。損貨/旧貨および記念貨の項目がハイライト表示される。さらに、領域413に、当該硬貨の入金を行うための特殊硬貨処理装置7の画像413aが表示される。操作者は、画像413aを参照することにより、どの装置に対して入金を行えばよいかを円滑に把握できる。その後、操作者は、ボタン414を操作する。これにより、図7に示す処理が開始される。
【0061】
制御部305は、特殊硬貨処理装置7の制御部205に対して、シャッター12を開放させる指示を送信する(S101)。この指示を受けて、制御部205は、シャッター駆動部202を開動作させる。これにより、特殊硬貨処理装置7のシャッター12が開放される。また、制御部305は、操作表示部301にセット要求画面420を表示させる(S102)。これにより、操作表示部301の画面が、図8(a)のメニュー画面410から図8(b)のセット要求画面420に切り替わる。
【0062】
図8(b)を参照して、領域421には、図8(a)の領域411と同様の画像が含まれる。領域422には、特殊硬貨処理装置7への硬貨の投入を促す画像422aが表示される。領域423には、特殊硬貨処理装置7に処理対象の硬貨をセットし、硬貨の種類を選択した後、完了の操作を行うことを促すメッセージ423aが含まれる。領域423には、硬貨の種類が損貨であるときに操作されるボタン424と、硬貨の種類が記念貨であるときに操作されるボタン425が含まれる。また、領域423には、硬貨のセットが完了したときに操作されるボタン426が設けられる。
【0063】
操作者は、処理対象が複数枚の損貨であれば、それら複数枚の損貨を特殊硬貨処理装置7の載置領域21に載置し、損貨のボタン424を操作する一方、処理対象が複数枚の記念貨であれば、それら複数枚の記念貨を載置領域21に載置し、記念貨のボタン425を操作する。その後、操作者は、完了のボタン426を操作する。
【0064】
セット要求画面420が表示されると、制御部305は、種類受付処理を行って損貨のボタン424または記念貨のボタン425の操作を受け付ける(S103)。制御部305は、ボタン424が操作されると、処理対象の硬貨の種類を損貨に設定し、ボタン425が操作されると、処理対象の硬貨の種類を記念貨に設定する。そして、完了のボタン426が操作されると、制御部305は、硬貨のセットが完了したと判定する。
【0065】
硬貨のセットが完了すると(S104:YES)制御部305は、特殊硬貨処理装置7の制御部205に対して、シャッター12を閉塞させる指示を送信する(S105)。この指示を受けて、制御部205は、シャッター駆動部202を閉動作させる。これにより、特殊硬貨処理装置7のシャッター12が閉塞される。さらに、制御部305は、特殊硬貨処理装置7の制御部205に対して、硬貨を撮像させる指示を送信する(S106)。この指示を受けて、制御部205は、撮像処理部201を動作させる。これにより、特殊硬貨処理装置7において、載置領域21に載置された硬貨が、カメラ40により撮像される。こうして撮像された画像のデータが、通信部204、304を介して、特殊硬貨処理装置7から操作端末8に送信される。制御部305は、受信したデータを、記憶部306に記憶させる。
【0066】
次に、制御部305は、受信した画像のデータを処理して、当該画像に含まれる各硬貨の画像を切り出す(S107)。このとき、制御部305は、切り出した各硬貨の画像に対して歪み補正を行い、真円に近い各硬貨の画像を取得する。そして、制御部305は、歪み補正後の各硬貨の画像と、硬貨画像データベース306aに保持された参照画像とを照合して、各硬貨の画像の金種を識別する(S108)。
【0067】
具体的には、制御部305は、各硬貨の画像について、マッチング度合いが所定の閾値以上で且つ最高の参照画像を硬貨画像データベース306aから抽出し、この参照画像に対応付けられた金種を、当該硬貨の画像に割り当てる。このとき、制御部305は、各硬貨の画像に割り当てられた参照画像が、損貨と記念貨の何れの種類に属するかを示す区分を、各硬貨の画像にさらに割り当てる。また、マッチング度合いが閾値以上の参照画像がない硬貨の画像については、金種が不明との識別結果が割り当てられる。
【0068】
こうして各硬貨の画像について金種を識別した後、制御部305は、載置領域21に載置された硬貨の中に、間違った種類の硬貨が含まれてないかの判定を行う(S109)。すなわち、制御部305は、各硬貨の画像に割り当てられた硬貨の種類の区分を参照し、セット要求画面420において設定された硬貨の種類でない種類の硬貨の画像があれば、間違った種類の硬貨が混在していると判定する。」

カ 図10


キ 「【0089】
図10(a)は、硬貨振分ユニット100により載置領域21の損貨が第1収納庫31に振り分けられる様子を示す図であり、図10(b)は、硬貨振分ユニット100により載置領域21の記念貨が第2収納庫32に振り分けられる様子を示す図である。」

(2)引用発明

上記(1)の、特に下線を付加した記載に着目すると、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「硬貨を処理する硬貨処理装置に関し、損貨(変形硬貨、汚損硬貨)や記念貨等の、市場流通に適さない特殊な硬貨を取り扱う硬貨処理装置であって、
特殊硬貨処理装置7は、撮像処理部201と、シャッター駆動部202と、ユニット駆動部203と、通信部204と、制御部205と、記憶部206と、を備えており、
撮像処理部201は、制御部205からの制御によりカメラ40を駆動するとともに、カメラ40からの画像データを処理して制御部205に送信しており、
記憶部306は、損貨および記念貨の参照画像(表面および裏面)と金種とを対応付けた硬貨画像データベース306aを保持しており、硬貨画像データベース306aは、硬貨の種類(損貨/記念貨)ごとに準備されており、硬貨画像データベース306aは、カメラ40により撮像された硬貨の画像の金種を判定する際に、制御部305により参照されるものであり、
特殊硬貨処理装置7へ特殊な硬貨である損貨および記念貨を入金するための処理において、
操作者は、処理対象が複数枚の損貨であれば、それら複数枚の損貨を特殊硬貨処理装置7の載置領域21に載置し、損貨のボタン424を操作する一方、処理対象が複数枚の記念貨であれば、それら複数枚の記念貨を載置領域21に載置し、記念貨のボタン425を操作し、
載置領域21に載置された硬貨が、カメラ40により撮像され、
制御部305は、歪み補正後の各硬貨の画像と、硬貨画像データベース306aに保持された参照画像とを照合して、各硬貨の画像の金種を識別しており、具体的には、制御部305は、各硬貨の画像について、マッチング度合いが所定の閾値以上で且つ最高の参照画像を硬貨画像データベース306aから抽出し、この参照画像に対応付けられた金種を、当該硬貨の画像に割り当て、マッチング度合いが閾値以上の参照画像がない硬貨の画像については、金種が不明との識別結果が割り当てており、
こうして各硬貨の画像について金種を識別した後、制御部305は、載置領域21に載置された硬貨の中に、間違った種類の硬貨が含まれてないかの判定を行い、セット要求画面420において設定された硬貨の種類でない種類の硬貨の画像があれば、間違った種類の硬貨が混在していると判定し、
硬貨振分ユニット100により載置領域21の損貨が第1収納庫31に振り分けられ、
硬貨振分ユニット100により載置領域21の記念貨が第2収納庫32に振り分けられる
特殊硬貨処理装置。」

2 引用文献2

原査定の拒絶理由において、引用された引用文献2(特開2022-77808号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は硬貨処理装置、及び硬貨処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙幣や硬貨の入出金を管理する現金処理装置がある。このような現金処理装置のうち、硬貨を取り扱う様々なタイプの硬貨処理装置が知られている。硬貨処理装置では、硬貨投入口から投入された硬貨が硬貨処理装置内にある搬送路を搬送され、金種に応じた収納容器へ収容される。このような硬貨処理装置の各部において、硬貨の有無を検出するために、センサ等を利用した硬貨の検出が行われる。
【0003】
特許文献1には、硬貨投入部と、硬貨が投入されたことを検出する硬貨投入センサと、投入硬貨を搬送させる硬貨搬送部と、搬送された投入硬貨を収容する容器と、容器に発生する衝撃を検出する衝撃検出部と、収容硬貨を1枚ずつ送出する硬貨送出制御部と、衝撃検出部から出力される衝撃検知信号を利用して、容器内に硬貨が残留しているか否かを判定する硬貨残留判定部と、硬貨送出制御部以外に備えられた衝撃を発生させる駆動部材の動作を停止させる駆動部材停止部とを備える。投入硬貨を検出しない状態が所定時間継続した後、硬貨残留判定部によって容器内に硬貨が残留しているか否かを判定し、硬貨が残留していると判定した場合、駆動部材停止部が、駆動部材の動作を一旦停止させ、さらに容器内に硬貨が残留しているか否かを判定する硬貨識別搬送装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】 特開2018-77563号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の装置では、硬貨を収容する容器内における硬貨の残留を検出する際に、装置を駆動する駆動部材の動作中と停止中との両方で判定動作を行っている。このような硬貨の残留検出方法では、その都度、装置の稼働を停止する必要があるとともに、判定動作が複雑化してしまうため、効率が悪い。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、効率的に硬貨の残留を検出できる硬貨処理装置、及び硬貨処理方法を提供することを目的とする。」

イ 「【0020】
鑑別部13は、硬貨Cの重さ、厚さ、材質、形状等から硬貨Cの金種を識別する。鑑別部13には、周知の識別センサを用いることができ、例えば、磁気センサ、イメージセンサが用いられる。鑑別部13は、搬送機構15により搬送される硬貨Cの金種を識別した識別結果を電気信号として制御部40に通知する。」

ウ 「【0046】
ステップS3の鑑別工程では、ステップS2において搬送されて鑑別部13を通過する硬貨Cの金種を識別する。鑑別部13は、硬貨Cの凹凸、材質、厚み、画像等に基づく識別結果を制御部40に出力する。」

3 引用文献3

原査定の拒絶理由において、引用された引用文献3(特開平10-239243号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、円筒状の被検物の被検査面上の欠陥を検査する欠陥検査装置に関し、特に表面に模様のある歯車や座金、表面に文字や図柄の描かれたCDやレコードやコイン、表面に模様の描かれた半導体ウエハ、瓶や缶の蓋等、円盤状の物体で表面に模様やパターン等が描かれた表面上の傷、汚れ、模様のずれ、中心に設けられた穴の位置のずれなどの欠陥を検査する装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】今日、円盤状の被検物の被検査面上の欠陥を検査する欠陥検査装置に関し、特に表面に模様のある歯車や座金、表面に文字や図柄の描かれたCDやレコードやコイン、表面に模様の描かれた半導体ウエハ、瓶や缶の蓋等、円盤状の物体で表面に模様やパターン等が描かれた表面上の傷、汚れ、模様のずれ、中心に設けられた穴の位置のずれなどの欠陥を検査する際は、例えば、製造ラインの検査行程において、主に検査者の目視によって検査が行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】前述のような目視による検査は、熟練した技術を有する。また、大量に流れてくる検査物を長時間検査しなければならず、検査者の疲労による欠陥の見落としや見間違い等を起こし、正確な検査が行われない場合があった。また、複数人を一定時間ごとに交代するとしても人件費によるコストがかかる。
【0004】近年においてはコンピューター技術の発展により、図12に示すような画像処理技術を利用する検査装置も考えられる。これは搬送装置91上に並べられた円盤状の被検物92の被検査面を撮像装置(例えばCCDカメラ等)93にて撮像し、画像処理装置94にて画像処理し、制御部95に画像信号を出力する。画像処理を利用した検査装置の場合、検査するためには被検査面上の模様と欠陥とを区別する必要がある。このため、制御部には予め良品の画像を取り込んでおき、実際に検査したものの画像と良品のものとの違いを比較検査する方法が一般的である。
【0005】しかし、検査物が円盤状の物体で表面に模様が描かれたものにおいては、画像を取り込んだときに必ずしも模様が一定の方向を向いているとは限らない。このため、検査物が回転ずれしてしまわないうちに検査する、即ち、被検査物を製造装置内部にこの検査装置を組み込むことが考えられる。しかし、製造装置の内部空間の制約上から検査装置の組み込みが不可能なことが多い。また、検査物を回転ずれしないように搬送する方法が考えれるが、搬送装置の機構が複雑になるため、コストアップになる。さらに、コンピューター上で模様の回転を取り去る方法もあるが、高速処理のためには専用の回路が必要であり検査のスループットが遅くなり、装置のコストや検査物の種類による処理内容の変更等の問題がある。
【0006】また、回転ずれによる照明方向の違いも画像処理による欠陥検査での欠陥の誤検出の要因となる。特にコインや貨幣のような表面に複雑な模様が刻んである場合、照明方向が異なると全く異なる見え方をしてしまう。円形の照明も考えられるが、画像処理に必要な模様の影まで消してしまい、コントラストの低下を招いてしまう。
【0007】本発明は上述の如き問題点に鑑み、円盤状の検査物でその被検査面上に模様(パターン)が描かれたものの欠陥検査を、検査物の回転によるパターンの回転に影響されることなく、高速でかつ安定した検出精度が得られ、安いコストで欠陥検査処理が行える検査装置を得ることを目的とする。」

イ 図6


ウ 「【0032】次に、本発明による第2の実施の形態について図6により説明する。コインの回転及び搬送方法は図2のような構造に限られず、例えば、コインを自重で転がす構造が考えられる。図6はコインを自重で転がす実施の形態を示す斜視図である。
【0033】図6のように、コンベア61は、上面部611,この上面部611と対向する下面部612、側面部613、及びこの側面部613と対向し光透過性部材からなる側面部(図示省略)を備え、コイン62を囲むように細長い四角形状の筒状に構成されている。コンベア61はその側面部613が水平面に対して垂直方向に向き、コンベア61の長手方向が水平面64に対して一定の角度を有するように配置されている。これにより、コイン62の側面62aが上面部611と下面部612とに接しこれらの間に挟まれながら、コイン62の平面が水平面64に対してほぼ垂直の状態でコイン62がコンベア61内の筒状空間を自重で転がる。
【0034】コンベア61の上面部611及び下面部612は摩擦係数が小さく、コインが滑りやすい材料からできている。側面部613はコイン62が滑らないのに十分大きな摩擦係数を有する。また、側面613に対向する図示省略の透光性の側面部は、摩擦係数が小さく滑りやすい素材からできている。このため、コイン62がコンベア61内の筒状空間を自重で回転(自転)しながら上方から下方に転がり落ちる。
【0035】この透光性の側面部に対向して撮像光学系63が配置されている。コイン62がコンベア61内の筒状空間を自重で回転しながら転がり移動する際に、第1の実施の形態と同様にコイン62の画像信号を得て、コイン62の検査のための最適な画像を得ることができる。
【0036】また、側面613も透明にして新たな撮像光学系を撮像光学系63とコンベア61を挟んで対向するように設置すれば、コイン62の両面を同時に撮像・検査することができる。前述のように片側だけに撮像光学系がある場合、コインの両面を検査するために搬送系にコインを裏返す機構を設ける必要があり、また、表面の検査結果と裏面の検査結果を対応させる必要があるが、検査にタイムラグがあるため、その検査結果の対応処理に時間がかかってしまうのに対し、コインの両面を同時に検査する場合、コインを裏返す必要がなく表面と裏面の検査結果が同時に得られるため、搬送系及び検査結果の処理が軽減する。」

4 引用文献4

原査定の拒絶理由において、周知技術を例示する文献として引用された引用文献4(特開平8-89910号公報)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被処理基板を洗浄する洗浄装置及びその方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、液晶表示ディスプレイ(LCD)装置の製造工程においては、LCD基板(ガラス基板)上に例えばITO(Indium Tin Oxide)の薄膜や電極パターン等を形成するために、半導体製造工程において用いられるものと同様なフォトリソグラフィ技術を用いて回路パターン等を縮小してフォトレジストに転写し、これを現像処理する一連の処理が施される。
【0003】このような処理においては、ガラス基板上にレジスト液を塗布し、その後露光工程、現像工程が行われるが、こうした一連の所定の処理を行う前に、回路パターンの欠陥発生や配線のショートなどを防止するためにレジスト液が塗布されるガラス基板の表面を洗浄すると共に、露光時の焦点のずれやパーティクルの発生を防止するためにガラス基板の裏面をも洗浄する必要がある。
【0004】このため塗布・現像装置の中には、洗浄装置が設けられている。図11は従来の洗浄装置の概略を示す図であり、この装置では、ガラス基板Gの両側縁の例えば端から5~10mmの領域を送りローラRにより両面側から、挟圧してガラス基板Gを一方向に送りながら、図示しないノズルから洗浄水をガラス基板Gの両面に吹き付け、ガラス基板Gの幅方向に沿って伸びる回転ブラシBによりガラス基板Gの両面を洗浄している。
【0005】
【発明が解決しようとしている課題】しかしながら上述の洗浄装置ではガラス基板Gを移動させながら洗浄を行っているため、横方向(進行方向)については、ガラス基板Gの長さのおよそ2倍のスペースが少なくとも必要である。ここでLCDパネルの大型化に伴いガラス基板Gのサイズが大きくなっており、ガラス基板Gの2枚分のスペースを確保すると洗浄装置の占有面積が広くなってしまう。一方塗布・現像装置は、洗浄装置、冷却装置、塗布装置、現像装置など多くの処理装置が組み込まれており、単位面積当りのコストが非常に高価なクリーンルーム内に設置するために、冷却装置や加熱装置などを多段化したり、搬送系の構造を工夫して小型化を図るようにしている。従って従来の洗浄装置は塗布・現像の小型化を阻んでいるという問題がある。
【0006】本発明は、このような事情の下になされたものであり、その目的は、占有面積の小さい洗浄装置を提供することにある。本発明の他の目的は、簡単な構造の洗浄装置を提供することにある。本発明の更に他の目的は、被処理基板の両面を洗浄するにあたって洗浄手段の構成を簡素化できる洗浄装置及びその方法を提供することにある。」

イ 図10


ウ 「【0030】ここで図10を参照しながら本発明の他の実施例について述べる。この実施例に係る洗浄装置は、ガラス基板Gの両側縁を保持する一対の保持アーム21、22と、この保持アーム21、22を開閉する駆動部23、24と、これら駆動部23、24を水平な軸のまわりに回転させるために駆動部23を回転自在に支承する軸支部81及び駆動部24を回転させる回転機構82と、ガラス基板Gの一面側に設けられ、ガラス基板Gに対して接離自在かつ保持アーム21、22間を移動できるように構成された洗浄部例えば洗浄ブラシ91と、この洗浄ブラシ91の近傍に設けられた洗浄液供給管92と、を有している。洗浄ブラシ91及び洗浄液供給管92は、洗浄部をなすものであり、これらは図2及び図3で述べた機構と類似の機構を組み合わせることができる。なお軸支部81及び回転機構82は、反転機構を構成するものである。
【0031】このような構成によれば、図10(a)に示すようにガラス基板Gを保持アーム21、22で保持してガラス基板Gの一面側を洗浄ブラシ91により洗浄した後、図10(b)に示すように反転機構により保持アーム21、22を回転させてガラス基板Gを反転させると共に洗浄ブラシ91を、反転前または反転後に図中左側の鎖線位置まで戻しておき、同様にガラス基板Gの他面側を洗浄する。
【0032】従ってガラス基板Gの両面側に洗浄部を設けることなく片面側に設ければよいので、洗浄手段の構成を簡素化できる。なおガラス基板Gを反転させる工程は、保持アーム21、22で行わなくとも、洗浄装置の外で例えばメインアームに吸着部を設けておき、このメインアームにより反転させるようにしてもよい。またこのようなガラス基板Gを反転させる発明では、洗浄部を固定してガラス基板Gを移動させることにより洗浄を行ってもよい。」

第5 対比・判断

1 本願発明1

(1)対比

本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことが認められる。

ア 引用発明は、「記憶部306は、損貨および記念貨の参照画像(表面および裏面)と金種とを対応付けた硬貨画像データベース306aを保持しており、」「載置領域21に載置された硬貨が、カメラ40により撮像され、」「制御部305は、歪み補正後の各硬貨の画像と、硬貨画像データベース306aに保持された参照画像とを照合して、各硬貨の画像の金種を識別しており、具体的には、制御部305は、各硬貨の画像について、マッチング度合いが所定の閾値以上で且つ最高の参照画像を硬貨画像データベース306aから抽出し、この参照画像に対応付けられた金種を、当該硬貨の画像に割り当て」る「特殊硬貨処理装置」とされている。

ここで、引用発明の「載置された硬貨」を「撮像」する「カメラ40」は、本願発明1の「硬貨の」「面の画像を撮像する撮像部」に対応する。

また、引用発明の「特殊硬貨処理装置」は、「硬貨」の「金種を識別して」いるから、本願発明1と同様に、「硬貨選別機」であるといえる。

したがって、本願発明1と引用発明とは、「硬貨の」「面の画像を撮像する撮像部」「を備える硬貨選別機」である点で共通しているといえる。

イ 引用発明において、「特殊硬貨処理装置7は、・・・記憶部206と、を備えており、」「記憶部306は、損貨および記念貨の参照画像(表面および裏面)と金種とを対応付けた硬貨画像データベース306aを保持しており、硬貨画像データベース306aは、硬貨の種類(損貨/記念貨)ごとに準備されており、硬貨画像データベース306aは、カメラ40により撮像された硬貨の画像の金種を判定する際に、制御部305により参照されるものであ」るとされている。

ここで、引用発明の「金種」(「硬貨の種類(損貨/記念貨)」)、損貨および記念貨の参照画像(表面および裏面)」は、それぞれ、本願発明1の「特定金種の硬貨の種類」、「特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像」に相当する。

また、引用発明の「硬貨画像データベース306a」「を保持し」た「記憶部306」は、本願発明1の「特定金種記憶部」と、「前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像」「を対応付けて記憶する」点で共通しているといえる。

したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像と、」「を対応付けて記憶する特定金種記憶部」「を備える」点で共通しているといえる。

ウ 引用発明において、「特殊硬貨処理装置7へ特殊な硬貨である損貨および記念貨を入金するための処理において、」「制御部305は、歪み補正後の各硬貨の画像と、硬貨画像データベース306aに保持された参照画像とを照合して、各硬貨の画像の金種を識別しており、具体的には、制御部305は、各硬貨の画像について、マッチング度合いが所定の閾値以上で且つ最高の参照画像を硬貨画像データベース306aから抽出し、この参照画像に対応付けられた金種を、当該硬貨の画像に割り当て、マッチング度合いが閾値以上の参照画像がない硬貨の画像については、金種が不明との識別結果が割り当てて」いるとされる。

ここで、引用発明の「各硬貨の画像」、「硬貨画像データベース306aに保持された参照画像」、および、「記念貨」は、それぞれ、本願発明1の「硬貨の他方の面の画像」、「基準画像」、および、「記念硬貨」に相当する。

また、引用発明において、「マッチング度合いが閾値以上の参照画像がない硬貨の画像については、金種が不明との識別結果が割り当て」られた硬貨は、本願発明1の「リジェクト硬貨」に相当するといえる。

したがって、本願発明1と引用発明とは、「前記硬貨の他方の面の画像及び前記基準画像に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨」「の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を」「識別する金種識別部」「を備える」点で共通しているといえる。

エ 引用発明において、「硬貨振分ユニット100により載置領域21の損貨が第1収納庫31に振り分けられ、硬貨振分ユニット100により載置領域21の記念貨が第2収納庫32に振り分けられる」とされている。

ここで、引用発明の「第1収納庫31に振り分けられ」た「損貨」および「第2収納庫32に振り分けられ」た「記念貨」が本願発明1の「識別された前記硬貨」に相当する。

また、引用発明の「第1収納庫31」と「第2収納庫32」が、本願発明1の「収納部」に相当する。

したがって、本願発明1と引用発明とは、「識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する収納部と、を備える」点で共通しているといえる。

(2)一致点・相違点

本願発明1と、引用発明とは、以下アの点で一致し、以下イの点で相違する。

ア 一致点

「前記硬貨の面の画像を撮像する撮像部と、
前記特定金種の硬貨の種類と、前記特定金種の硬貨の表面及び裏面の画像を含む基準画像とを対応付けて記憶する特定金種記憶部と、
前記硬貨の他方の面の画像及び前記基準画像に基づいて、前記硬貨の種類として、前記記念硬貨の種類、前記損貨並びにリジェクト硬貨を識別する金種識別部と、
識別された前記硬貨を所定の種別毎に収納する収納部と、
を備える
硬貨選別機。」

イ 相違点

(ア)<相違点1>

本願発明1では、「記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を移動する吸着部」を備えているのに対し、引用発明では、このような吸着部を備えていない点。

(イ)<相違点2>

本願発明1では、特定金種記憶部に、「特定金種の硬貨の素材量目」も記憶しているのに対し、引用発明では、このような素材量目を記憶していない点。

(ウ)<相違点3>

本願発明1では、「旧硬貨」の種類も識別しているのに対し、引用発明では、旧硬貨の種類を識別していない点。

(エ)<相違点4>

本願発明1では、硬貨を「1枚ずつ」識別しているのに対し、引用発明では、硬貨を1枚ずつ識別していない点。

(3)相違点についての判断

本願発明1の上記<相違点1>に関して、上記第4の3の引用文献3には、「【0036】また、側面613も透明にして新たな撮像光学系を撮像光学系63とコンベア61を挟んで対向するように設置すれば、コイン62の両面を同時に撮像・検査することができる。前述のように片側だけに撮像光学系がある場合、コインの両面を検査するために搬送系にコインを裏返す機構を設ける必要があり、また、表面の検査結果と裏面の検査結果を対応させる必要があるが、検査にタイムラグがあるため、その検査結果の対応処理に時間がかかってしまうのに対し、コインの両面を同時に検査する場合、コインを裏返す必要がなく表面と裏面の検査結果が同時に得られるため、搬送系及び検査結果の処理が軽減する。」との記載があり、コインを裏返す機構を設けることが示唆されているものの、コインを吸着させて裏返す機構は開示されていない。

また、上記第4の4の引用文献4には、被処理基板を洗浄する洗浄装置の分野において、「ガラス基板Gを反転させる工程」において、「メインアームに吸着部を設けておき、このメインアームにより反転させる」ことが開示されているものの、引用文献4に記載の技術と、引用発明とは、技術分野が異なり、引用発明に、引用文献4に記載の吸着部を設ける動機付けが見当たらない。

さらに硬貨選別器(硬貨処理装置)の技術分野において、吸着部によって硬貨を吸着して裏返す技術が周知であったともいえない。

したがって、引用発明、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明1を容易に発明できたものであるとはいえない。

2 本願発明2ないし4

本願発明2ないし4は、いずれも、本願発明1を減縮したものであって、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、上記1で述べた本願発明1と同じ理由により、引用発明、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明2ないし4を容易に発明できたものであるとはいえない。

3 本願発明5ないし8

本願発明5は、本願発明1の「硬貨選別機」の発明から、「硬貨選別方法」の発明へ、発明のカテゴリを単に変更したものであり、上記<相違点1>と同様の、「吸着部によって、記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を移動する工程」の構成を備えているから、上記1で述べた本願発明1と同様の理由により、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明5を容易に発明できたものであるとはいえない。

また、本願発明6ないし8は、いずれも、本願発明5を減縮したものであって、本願発明5と同一の構成を備えるものであるから、本願発明5と同じ理由により、引用発明、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明6ないし8を容易に発明できたものであるとはいえない。

4 本願発明9および10

本願発明9は、上記<相違点1>と同様の、「前記硬貨の一方の面を吸着し、前記硬貨を前記載置部へ移動する吸着部」の構成を備えているから、上記1で述べた本願発明1と同様の理由により、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明9を容易に発明できたものであるとはいえない。

本願発明10は、本願発明9の「硬貨選別機」の発明から、「硬貨選別方法」の発明へ、発明のカテゴリを単に変更したものであり、上記<相違点1>と同様の、「記念硬貨、旧硬貨及び損貨を含む特定金種の硬貨の一方の面を吸着部によって吸着し」との構成を備えているから、上記1で述べた本願発明1と同様の理由により、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者は本願発明10を容易に発明できたものであるとはいえない。

第6 原査定について

上記第5で述べたように、本願発明1ないし10はいずれも、引用発明、引用文献2ないし4に記載の事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえないから、原査定の拒絶の理由(進歩性)は、解消している。

よって、原査定の理由は、維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。

 
審決日 2024-07-29 
出願番号 P2022-097396
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G07D)
最終処分 01   成立
特許庁審判長 篠塚 隆
特許庁審判官 村松 貴士
野崎 大進
発明の名称 硬貨選別機及び硬貨選別方法  
代理人 正林 真之  
代理人 芝 哲央  
代理人 加藤 竜太  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ