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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 A23D 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A23D |
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管理番号 | 1418208 |
総通号数 | 37 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2025-01-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2023-08-29 |
確定日 | 2024-11-11 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | true |
事件の表示 | 特許第7232370号発明「粉末油脂及びそれを用いた飲食品」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第7232370号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 特許第7232370号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第7232370号(以下、「本件特許」という。)の請求項1ないし5に係る特許についての出願は、令和4年5月18日を出願日とする特許出願(特願2022-81271号)であって、令和5年2月21日にその特許権の設定登録(請求項の数5)がされ、同年3月2日に特許掲載公報が発行されたものである。 その後、その特許に対して、令和5年8月29日に特許異議申立人 金澤 毅(以下、「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立て(対象請求項:全請求項)がされ、同年11月30日付けで取消理由が通知され、令和6年2月2日に特許権者 ミヨシ油脂株式会社(以下、「特許権者」という。)から意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年同月8日付けで訂正請求があった旨の通知(特許法第120条の5第5項)がされ、同年3月13日に特許異議申立人から意見書が提出され、同年5月30日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、同年7月29日に特許権者より意見書が提出されるとともに訂正請求がされ、同年8月1日に特許異議申立人より上申書が提出されたものである。 なお、特許権者が令和6年2月2日に行った訂正請求については、特許法第120条の5第7項の規定により、取り下げられたものと見なす。 また、令和6年8月1日提出の上申書において、特許異議申立人より意見書提出の機会の希望が出されているが、すでに特許異議申立人に意見書の提出の機会が与えられている場合であって、訂正請求によって特許請求の範囲が相当程度減縮され、事件において提出された全ての証拠や意見等を踏まえてさらに審理を進めたとしても特許を維持すべきとの結論となると合議体が判断したため、特許異議申立人に対して、改めて意見書を提出する機会は与えないものとした。 第2 訂正の適否について 1 請求の趣旨 令和6年7月29日にされた訂正請求による訂正(以下、「本件訂正」という。)における請求の趣旨は、訂正請求書の「6 請求の趣旨」に記載のとおり、「特許第7232370号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1~5について訂正することを求める。」というものである。 2 訂正の内容 本件訂正の内容は、次のとおりである。なお、下線は訂正箇所を示すものである。 (1) 訂正事項 特許請求の範囲の請求項1に「油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合し、」と記載されているのを、「油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)を配合し、」に訂正する。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する請求項2ないし5も同様に訂正する。 (2) 一群の請求項について 訂正前の請求項1ないし5について、請求項2ないし5はそれぞれ請求項1を直接または間接的に引用しているものであるから、訂正前の請求項1ないし5に対応する訂正後の請求項1ないし5は、特許法120条の5第4項に規定する一群の請求項である。 3 訂正の適否についての検討 訂正事項に係る請求項1の訂正は、「油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材」として、「バター及びクリームを除く」ものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そして、訂正事項に係る請求項1の訂正が、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内においてするものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないことも明らかである。 請求項1の記載を直接または間接的に引用して特定する請求項2ないし5についても同様である。 4 訂正の適否についてのまとめ 以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合する。 したがって、特許請求の範囲を、訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認める。 第3 本件特許発明 上記第2のとおり、訂正後の請求項〔1-5〕について訂正することを認めるので、本件特許の請求項1ないし5に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」という。また、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明5」をまとめて、「本件特許発明」という場合がある。)は、令和6年7月29日に提出された訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「【請求項1】 油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)を配合し、 粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上であり、 粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上であり、 前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である粉末油脂。 【請求項2】 前記油脂の配合量が40質量%以上90質量%以下である請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項3】 前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の固形分と油脂の質量比(ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の固形分/油脂)が0.01×10-2~150×10-2である請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項4】 さらに、ホエイタンパク質を含む乾燥された乳由来素材を配合した請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末油脂を配合した飲食品。」 第4 特許異議申立人が主張する特許異議申立理由について 特許異議申立人が特許異議申立書において、本件特許の請求項1ないし5に係る特許に対して申し立てた特許異議申立理由の要旨は、次の1ないし6のとおりである。 1 申立理由1-1(新規性) 本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 申立理由1-2(新規性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 申立理由2-1(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 4 申立理由2-2(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 5 申立理由2-3(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第6号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 6 申立理由2-4(進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の甲第7号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 7 証拠方法 ・甲第1号証:正栄食品工業株式会社のカタログ「正栄食品総合カタログ」、第155頁、平成30年(2018年)2月改訂 ・甲第2号証:日本食品標準成分表2020年版(八訂)(乳類)、食品番号13010、13014、更新日:令和3年(2021年)12月28日 ・甲第3号証:乳等省令における規定(抜粋) ・甲第4号証:日油株式会社のカタログ「当社の油脂加工技術~粉末油脂~」、第4頁、平成22年(2010年)8月10日改訂 ・甲第5号証:日本食品標準成分表2020年版(八訂)(乳油脂類)、食品番号14018、更新日:令和3年(2021年)12月28日 ・甲第6号証:特開平7-107号公報 ・甲第7号証:特開2019-195293号公報 ・甲第8号証:化学と生物、Vol.58,No.1,2020年(令和2年)、54-58頁、日本農芸化学会 ・甲第9号証:FACTBOOKファクトブック 乳たんぱく質のすべて、2019年(平成31年)3月、一般社団法人Jミルク また、特許異議申立人は、令和6年3月13日提出の意見書に添付して、次の証拠を提出している。 ・参考資料1:オレオサイエンス、第19巻、第10号、417~422頁、公益社団法人 日本油化学会、公開日:令和1年(2019年)10月4日 ・参考資料2:放送研究と調査、2003年6月号、84~101頁、NHK出版、公開日:平成15年(2003年)6月 ・参考資料3:国際公開第2005/016019号 ・参考資料4:特開2017-175975号公報 ・参考資料5:特開2009-278896号公報 ・参考資料6:特開2021-180613号公報 ・参考資料7:特開2020-184978号公報 なお、証拠の表記については、おおむね特許異議申立書及び令和6年3月13日提出の意見書の記載にしたがった。 第5 令和6年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)について 令和6年5月30日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)は、次の1ないし4のとおりである。なお、取消理由(決定の予告)で通知した取消理由には、申立理由のうち、申立理由1-2、申立理由2-1のうち請求項1ないし3及び5に係る部分、申立理由2-2が包含される。 1 取消理由1-2(甲第4号証を主たる証拠とする新規性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないものであるから、それらの特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 2 取消理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし3及び5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第1号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 3 取消理由2-2(甲第4号証を主たる証拠とする進歩性) 本件特許の請求項1ないし5に係る発明は、本件特許の出願前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった甲第4号証に記載された発明に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、それらの発明に係る特許は、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである。 第6 当審の判断 以下に述べるとおり、取消理由(決定の予告)で通知した取消理由及び異議申立人が特許異議申立書において申し立てた特許異議申立理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできないものと判断する。 1 取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1(甲第1号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について (1) 甲第1号証の記載事項等 ア 甲第1号証の記載事項 甲第1号証は、「正栄食品総合カタログ」であり、その中に、次の記載がある。 「 ![]() ![]() ![]() 」 イ 甲第1号証に記載された発明 上記アの記載、特に、「ニュークリーミーパウダー」について整理すると、甲第1号証には、次の発明が記載されているものと認める。 「植物油脂、クリーム(乳製品)、乳糖、カゼイン/乳化剤、酸化防止剤(V.E.)からなる、ニュークリーミーパウダーであって、 無脂乳固形分28.0%、乳脂肪分17.8%、植物性脂肪分52.2%、炭水化物18.6%、蛋白質9.5%、灰分0.4%、水分1.5%である、ニュークリーミーパウダー。」(以下、「甲1発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲1発明とを対比する。 甲1発明の「ニュークリーミーパウダー」は、本件特許発明1の「粉末油脂」に相当する。 甲1発明の「クリーム(乳製品)」は、「クリーム」を原料として含むものであるから、本件特許発明1の「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)を配合し、」との特定事項のうち、「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合し、」との限りにおいて満たす。 また、甲1発明のニュークリーミーパウダーは、「乳脂肪分」、「植物性脂肪分」、「炭水化物」を含むから、本件特許発明1の「油脂」、「糖質」を含むとの特定事項を満たす。 そして、甲1発明のニュークリーミーパウダーの「乳脂肪分」は17.8%、「植物性脂肪分」は52.2%、「炭水化物」は18.6%であるから、脂肪分、すなわち「油脂」の割合は70.0質量%、炭水化物、すなわち「糖分」の割合は18.6質量%であるといえる。 してみると、甲1発明のニュークリーミーパウダーは、本件特許発明1の「粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上」、「粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上」との特定事項を満たす。 さらに、甲1発明のニュークリーミーパウダーの乳脂肪分から見て、甲1発明のニュークリーミーパウダーが、本件特許発明1の「前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である」との特定事項を満たすことも明らかである。 なお、この点について、甲1発明の乳脂肪分が「クリーム(乳製品)」に由来するものであるとし、甲第2号証のクリームの組成値を元に換算すると、ニュークリーミーパウダー100gあたり、クリーム(乳製品)の添加量は17.8×100/43.0≒41.4gとなる。そして、「クリーム(乳製品)」における固形分は、同じく甲第2号証のクリームの組成値を元に換算すると、41.4×(8.8/100)≒3.6%(脂肪分が固形分に含まれない場合)と算出される。 よって、上記計算からも、甲1発明のニュークリーミーパウダーが、本件特許発明1の「前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である」との特定事項を満たすものといえる。 してみると、両者は、 「油脂、糖質、乳化剤、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合し、 粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上であり、 粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上であり、 前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である粉末油脂。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点1) 粉末油脂に関して、本件特許発明1は「但し、バター及びクリームを除く。」と特定するのに対し、甲1発明にはそのような特定がない点。 相違点1について検討する。 甲1発明は「クリーム」を用いることが必須であるから、相違点1は実質的な相違点である。 よって、本件特許発明1は甲1発明ではない。 また、甲第1号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲1発明において「クリーム」を除くものとする動機付けがない。 よって、甲1発明において、相違点1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、本件特許発明1は、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、この点に関して、特許異議申立人は令和6年8月1日提出の上申書において、特許権者の効果の主張と明細書の記載が整合していないことを取り上げているが、そもそも、甲1発明において「クリーム」を含まないものとすることの動機付けがない以上、本件特許発明1の発明特定事項を導くことができないものであるといえるから、特許異議申立人の当該主張は上記判断に何ら影響しない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲1発明ではなく、甲1発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、取消理由2-1、申立理由1-1及び申立理由2-1の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 2 取消理由1-2及び取消理由2-2(甲第4号証を主たる証拠とする新規性・進歩性)について (1) 甲第4号証の記載事項等 ア 甲第4号証の記載事項 甲第4号証には、「当社の油脂加工技術 ~粉末油脂~」に関して、次の記載がある。 「 ![]() ![]() ![]() ![]() ![]() 」 イ 甲第4号証に記載された発明 上記アの記載、特に、「NネオパウダーBPS」に関する記載について整理すると、甲第4号証には次の発明が記載されているものと認める。 「バター、脱脂粉乳、食塩、カゼインNa、乳化剤、酸化防止剤(V.E、V.C)からなる粉末油脂であって、 無脂乳固形分27.0%、乳脂肪分70.0%である、粉末油脂。」(以下、「甲4発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲4発明とを対比する。 甲4発明の「乳脂肪分」は、本件特許発明1の「油脂」に相当する。 そして、甲4発明の粉末油脂は、「乳脂肪分」が70.0%であるから、本件特許発明1の「粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上であり、」との特定事項を満たす。 また、甲4発明の粉末油脂は、「バター」を原料として含むものであるから、本件特許発明1の「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)を配合し、」との特定事項のうち、「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合し、」との限りにおいて満たす。 さらに、甲4発明の粉末油脂は、「脱脂粉乳」を原料として含むものであるから、炭水化物、すなわち、本件特許発明1における「糖質」を含有することも明らかである(要すれば甲第2号証を参照のこと)。 してみると、両者は、 「油脂、糖質、乳化剤、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合し、 粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上である、 粉末油脂。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点4-1) 粉末油脂に関して、本件特許発明1は「但し、バター及びクリームを除く。」と特定するのに対し、甲4発明にはそのような特定がない点。 (相違点4-2) 粉末油脂に関して、本件特許発明1は「粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上であり、前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である」と特定するのに対して、甲4発明にはそのような特定がない点。 相違点4-1について検討する。 甲4発明は「バター」を用いることが必須であるから、相違点4-1は実質的な相違点である。 よって、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲4発明ではない。 また、甲第4号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲4発明において「バター」を除くものとする動機付けがない。 よって、甲4発明において、相違点4-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 なお、この点に関して、特許異議申立人は令和6年8月1日提出の上申書において、特許権者の効果の主張と明細書の記載が整合していないことを取り上げているが、そもそも、甲4発明において「バター」を含まないものとすることの動機付けがない以上、本件特許発明1の発明特定事項を導くことができないものであるといえるから、特許異議申立人の当該主張は上記判断に何ら影響しない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲4発明ではなく、甲4発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 (3) 取消理由1-2及び取消理由2-2についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、取消理由1-2及び取消理由2-2の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 3 申立理由2-3(甲第6号証を主たる証拠とする進歩性)について (1) 甲第6号証の記載事項等 ア 甲第6号証の記載事項 甲第6号証には、「クリームパウダー及びクリームパウダー含有飲食品」に関し、次の記載がある。 「【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、液状の生クリームを粉末化して得られるクリームパウダー及びそのクリームパウダーを使用した飲食品に関する。」 「【0002】 【従来の技術】液状の生クリームの粉末化は、液状の生クリームに、糖類,乳化剤並びに水、さらに必要に応じて乳製品,呈味料,香料,緩衝剤等を混合し、殺菌後、ホモゲナイザー等による均質化を行った後、スプレードライヤー等で噴霧乾燥して粉末化することにより行われている。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の技術では、均質化のためのホモゲナイサーの圧力が高いために、乳脂肪の粒子径が細かくなりすぎることにより、得られた粉末を口に入れたときに舌に乳脂肪の味を感じなくなり、商品価値が低下してしまっている。また、乳脂肪の粒子径が大きいと、空気に触れる部分が多いため、乳脂肪の保存性が悪くなる(酸化しやすい)欠点を有している。このため、従来の製法で作られたクリームパウダーをココアパウダー,粉末コーヒー,粉末紅茶,粉末スープ等に加えても、満足できるクリーム感を与える飲食品を提供することはできなかった。本発明は、上記のような粉乳の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液状の生クリームの本来もつ良好な風味を有し、かつ保存性の優れたクリームパウダーを提供し、かつその特徴を有したココアパウダー,粉末コーヒー,粉末紅茶,粉末スープ等を含有する飲食品を提供することである。」 「【0004】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、生クリームの本来もつ風味を損なわずに保存性に優れた生クリーム粉末を製造する方法を開発するために鋭意努力を重ねた結果、生クリームを粉末化する前に乳脂肪の粒子を一定の平均粒径に揃えることにより、生クリームの本来もつ風味が損なわれず、かつ保存性にも優れた製品が得られること、並びにこの方法で得られたクリームパウダーをココアパウダー,粉末コーヒー,粉末紅茶,粉末スープ等に加えたところ、従来の製法で作られたクリームパウダーを用いた場合と比べ、驚くべきクリーム感の差を得られることを見出した。本発明は、この知見に基づいてなされたものである。」 「【0014】 【実施例】以下に、本発明を実施例に基づいて詳しく説明する。 実施例1 乳糖20重量%,グラニュー糖12.5重量%及びリン酸第二ナトリウム0.5重量%を温水(70℃)47重量%に溶解し、次に乳脂肪含有量45重量%の生クリームを20重量%加えて混合した。これをプレート式殺菌機にて殺菌後、高圧ホモゲナイザーにて均質化を行った。このときの高圧ホモゲナイザーの圧力は50kg/cm2 (ゲージ圧)であった。 【0015】次いで、均質化処理物を噴霧乾燥機(スプレードライヤー)にて常法により乾燥し、クリームパウダーを得た。このものの乳脂肪の平均粒径を島津製作所製、粒度分布測定装置SALD-2000にて測定した。結果を第1表に示した。さらに、得られたクリームパウダー20gをアルミ袋に入れ密閉した後、37℃の恒温器に入れ、保存テストを行った。この結果を同じく第1表に示す。次いで、得られたクリームパウダーを4~40重量%まで配合重量を変えて、ココアパウダー20重量%および砂糖(粉糖)40重量%を混合し、流動層造粒にて顆粒とした。クリームパウダーの量は最大40重量%とし、配合量を変えた部分は脱脂粉乳にて置き換えた。このようにして得られた顆粒20gを100ccの湯に溶解したものを専門家20名にて嗜好調査を行った。この結果を第1表に示した。なお、風味の評価は次の5段階絶対評価にて評価した。 【0016】 ![]() 【0017】以下、実施例2~4および比較例1~2についても、得られたクリームパウダーについて平均粒径の測定および保存テストを行った。 ・・・ 【0020】実施例3 乳糖15重量%,デキストリン4.5重量%,脱脂粉乳5重量%及びリン酸第二ナトリウム0.5重量%を温水(70℃)45重量%に溶解し、次に乳脂肪含有量45重量%の生クリームを20重量%及び硬化パーム油10重量%を加えて混合した。これをプレート式殺菌機にて殺菌後、高圧ホモゲナイザーにて均質化を行った。このときの高圧ホモゲナイザーの圧力は60kg/cm2 (ゲージ圧)であった。 【0021】この均質化物を凍結乾燥機にて常法により乾燥し、平均粒径0.91μmのクリームパウダーを得た。次いで、得られたクリームパウダーを4~70重量%まで配合量を変えて、可溶性粉末紅茶20重量%及び葡萄糖10重量%を混合し、流動層造粒にて顆粒とした。なお、クリームパウダーの配合量は最大70重量%とし、70重量%に満たない部分は市販のコーヒー用粉乳にて置換した。このようにして得られた顆粒10gを120ccの湯に溶解したものを専門家20名にて嗜好調査を行った。この結果を第1表に示した。なお、風味の評価は実施例1と同様に5段階絶対評価にて評価した。」 「【0028】 【表1】 ![]() 」 イ 甲第6号証に記載された発明 上記アの記載、特に実施例3の記載を中心に整理すると、甲第6号証には次の発明が記載されていると認める。 「乳糖15重量%,デキストリン4.5重量%,脱脂粉乳5重量%及びリン酸第二ナトリウム0.5重量%を温水(70℃)45重量%に溶解し、次に乳脂肪含有量45重量%の生クリームを20重量%及び硬化パーム油10重量%を加えて混合し、これをプレート式殺菌機にて殺菌後、高圧ホモゲナイザーにて均質化を行い、この均質化物を凍結乾燥機にて常法により乾燥し得られた、平均粒径0.91μmのクリームパウダー。」(以下、「甲6発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲6発明とを対比する。 甲6発明の「クリームパウダー」は、本件特許発明1の「粉末油脂」に相当する。 また、甲6発明の「硬化パーム油」は、本件特許発明1の「油脂」に相当する。 甲6発明の「クリームパウダー」には「脱脂粉乳」が含まれることから、甲6発明の「クリームパウダー」が、「糖質」を含むことも明らかである(要すれば甲第2号証を参照のこと。)。 甲6発明の「生クリーム」は、本件特許発明1の「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)」のうち、「ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材」の限りにおいて一致する。 してみると、両者は、 「油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材を配合する、粉末油脂。」 で一致し、次の点で相違する。 (相違点6-1) 粉末油脂に関して、本件特許発明1は「但し、バター及びクリームを除く。」と特定するのに対し、甲6発明にはそのような特定がない点。 (相違点6-2) 粉末油脂に関して、本件特許発明1は「粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上であり、粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上であり、前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である」と特定するのに対して、甲6発明にはそのような特定がない点。 相違点6-1について検討する。 甲6発明は「生クリーム」すなわち「クリーム」を用いるものであるところ、甲第6号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲6発明において「クリーム」を除くものとする動機付けがない。 よって、甲6発明において、相違点6-1に係る本件特許発明1の発明特定事項を満たすものとすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。 してみると、他の相違点について検討するまでもなく、本件特許発明1は、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲6発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由2-3についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由2-3の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 4 申立理由2-4(甲第7号証を主たる証拠とする進歩性)について (1) 甲第7号証の記載事項等 ア 甲第7号証の記載事項 甲第7号証には、「水中油型乳化物とそれを用いたホイップドクリーム」に関し、次の記載がある。 「【技術分野】 【0001】 本発明は、水中油型乳化物とそれを用いたホイップドクリームに関する。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0008】 本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、乳脂のコクと後味のキレを併せ持つ水中油型乳化物とそれを用いたホイップドクリームを提供することを課題としている。」 「【課題を解決するための手段】 【0009】 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、水中油型乳化物に濃縮生クリームおよび濃縮ホエイの混合物であるホエイチーズを配合することで、乳脂のコク味を出しつつ後味のキレに優れたホイップドクリームが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。 【0010】 すなわち、本発明の水中油型乳化物は、濃縮生クリームおよび濃縮ホエイの混合物であるホエイチーズを含有することを特徴としている。 【0011】 本発明のホイップドクリームは、前記水中油型乳化物を起泡してなる。」 「【0071】 (2)水中油型乳化物とホイップドクリームの作製 表2~表5のエステル交換油脂1~4は次の方法で作製した。 (エステル交換油脂1) パーム核油50質量%、パーム油50質量%を混合して110℃に加熱し、十分に脱水させた後、化学触媒としてナトリウムメチラートを油脂量の0.08質量%添加し、減圧下、100℃で0.5時間攪拌しながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応後、水洗して触媒を除去し、活性白土を用いて脱色し、さらに脱臭を行ってエステル交換油脂1を得た。このエステル交換油脂1のヨウ素価は35.5であった。 (エステル交換油脂2) パーム核極度硬化油25質量%、パーム油50質量%、パーム極度硬化油25質量%を原料に使用し、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応を行い、エステル交換油脂2を得た。このエステル交換油脂2のヨウ素価は28であった。 (エステル交換油脂3) パーム核極度硬化油を原料に使用し、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応を行い、エステル交換油脂3を得た。このエステル交換油脂3のヨウ素価は2であった。 (エステル交換油脂4) パーム分別軟質油を原料に使用し、エステル交換油脂1の製法に準じてエステル交換反応を行い、エステル交換油脂4を得た。このエステル交換油脂4のヨウ素価は56であった。 【0072】 <水中油型乳化物の作製> 表2~表4に示す配合で、油脂にグリセリン脂肪酸エステル、レシチンを添加し油相とした。一方、水に乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、液糖、表2~表4の乳製品、リン酸ナトリウム、増粘多糖類を添加し水相とした。 水相と油相を65℃に加温し、水相に油相を添加し攪拌して乳化した後、高圧ホモジナイザーで均質化した。その後、1~5℃まで急冷し、さらに、攪拌しながら冷蔵下で10時間エージングし、起泡性のある水中油型乳化物を得た。 起泡性水中油型乳化物における配合量は次のとおりである。なお、残部を水とし、全体を100質量部とした。 〈起泡性水中油型乳化物の配合〉 油脂 表2~表4記載 乳製品 表2~表4記載 液糖 5.0質量% 乳化剤 0.67質量% グリセリン脂肪酸エステル 0.2質量% レシチン 0.2質量% ショ糖脂肪酸エステル 0.4質量% リン酸ナトリウム 0.2質量% 増粘多糖類 0.05質量% 【0072】 <水中油型乳化物の作製> 表2~表4に示す配合で、油脂にグリセリン脂肪酸エステル、レシチンを添加し油相とした。一方、水に乳化剤のショ糖脂肪酸エステル、液糖、表2~表4の乳製品、リン酸ナトリウム、増粘多糖類を添加し水相とした。 水相と油相を65℃に加温し、水相に油相を添加し攪拌して乳化した後、高圧ホモジナイザーで均質化した。その後、1~5℃まで急冷し、さらに、攪拌しながら冷蔵下で10時間エージングし、起泡性のある水中油型乳化物を得た。 起泡性水中油型乳化物における配合量は次のとおりである。なお、残部を水とし、全体を100質量部とした。 〈起泡性水中油型乳化物の配合〉 油脂 表2~表4記載 乳製品 表2~表4記載 液糖 5.0質量% 乳化剤 0.67質量% グリセリン脂肪酸エステル 0.2質量% レシチン 0.2質量% ショ糖脂肪酸エステル 0.4質量% リン酸ナトリウム 0.2質量% 増粘多糖類 0.05質量% 【0073】 また、表5に示す配合で、油脂にグリセリン脂肪酸エステル、レシチンを添加し油相とした。一方、水に表5の乳製品を加え、水相とし、同様の製造方法にて水中油型乳化物を得た。 水中油型乳化物における配合量は次のとおりである。なお、残部を水とし、全体を100質量部とした。 〈水中油型乳化物の配合〉 油脂 表5記載 乳製品 表5記載 乳化剤 1.5質量% グリセリン脂肪酸エステル 1質量% レシチン 0.5質量% 【0074】 (乳製品1) 濃縮生クリームおよび濃縮ホエイの混合物であるホエイチーズを用いた。その詳細は表1に示すとおりである。低温殺菌した生クリームを脂肪分75質量%に濃縮したものと、乾物含量76質量%の濃縮ホエイを計量し、均一に混合した後、孔径3mmのフィルタを通過させ濾過することによって得られたホエイチーズを-18℃で保管し、使用に供した。なお、乾物含量とは、水分量を除いたものである。ホエイチーズのMFFBは32.8%、FDBは45.6%であった。 【0075】 【表1】 ![]() 【0076】 (乳製品2) クリームチーズ MFFB78.9%、FDB70.6%、脂肪分含有量33.7質量%、水分量52.3質量%、炭水化物量2.9質量%、タンパク質量8.3質量%、灰分量2.8質量% (乳製品3) 生クリーム 脂肪分含有量47.3質量%、水分量47.7質量%、炭水化物量3質量%、タンパク質量1.6質量%、灰分量0.4質量% (乳製品4) 脱脂濃縮乳 脂肪分含有量0.3質量%、水分量69.8質量%、炭水化物量16.1質量%、タンパク質量11.4質量%、灰分量2.4質量% (乳製品5) ホエイパウダー 脂肪分含有量1.1質量%、水分量2.3質量%、炭水化物量78.4質量%、タンパク質量12.1質量%、灰分量6.1質量% 【0077】 <ホイップドクリームの作製> 上記のようにして得られた起泡性水中油型乳化物4kgに0.4kgのグラニュー糖を加え、20コートボウル内で5℃に調温後、縦型ミキサー(関東混合機工業(株)製)を使用し、起泡させ、ホイップドクリームを得た。」 「【0087】 【表2】 ![]() 」 イ 甲第7号証に記載された発明 上記アの記載、特に実施例1の記載を中心に整理すると、甲第7号証には次の発明が記載されていると認める。 「エステル交換油脂、パーム分別中融点油、ヤシ油、乳脂、ホエイチーズ(濃縮生クリーム・濃縮ホエイ混合物)、生クリーム、ホエイパウダー及びグラニュー糖を原料として得られた、ホイップドクリーム。」(以下、「甲7発明」という。) (2) 対比・判断 ア 本件特許発明1について 本件特許発明1と甲7発明とを対比すると、甲7発明は「ホイップドクリーム」であるから、本件特許発明1の「粉末油脂」には相当しないことは明らかである。 そして、甲第7号証及び他の全ての証拠の記載をみても、甲7発明を「粉末油脂」とする動機付けがあるともいえないから、他の点について検討するまでもなく、本件特許発明1は甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 イ 本件特許発明2ないし5について 本件特許発明2ないし5は、本件特許発明1の発明特定事項の全てを有し、さらに特定するものである。 そして、上記アのとおり、本件特許発明1は甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件特許発明2ないし5もまた、甲7発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 (3) 申立理由2-4についてのまとめ 上記(2)のとおりであるから、申立理由2-4の理由では、本件特許発明1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 第7 結語 以上のとおりであるから、取消理由通知(決定の予告)に記載した取消理由、及び、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許の請求項1ないし5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 油脂、糖質、及び、ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材(但し、バター及びクリームを除く。)を配合し、 粉末油脂の全量に対する前記油脂の配合量が40質量%以上であり、 粉末油脂の全量に対する前記糖質の配合量が5質量%以上であり、 前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の配合量が、粉末油脂の全量に対して、固形分として0.01質量%以上である粉末油脂。 【請求項2】 前記油脂の配合量が40質量%以上90質量%以下である請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項3】 前記ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の固形分と油脂の質量比(ホエイタンパク質を含む未乾燥の乳由来素材の固形分/油脂)が0.01×10-2~150×10-2である請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項4】 さらに、ホエイタンパク質を含む乾燥された乳由来素材を配合した請求項1に記載の粉末油脂。 【請求項5】 請求項1~4のいずれか一項に記載の粉末油脂を配合した飲食品。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2024-10-28 |
出願番号 | P2022-081271 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YAA
(A23D)
P 1 651・ 113- YAA (A23D) |
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
柴田 昌弘 |
特許庁審判官 |
松本 陶子 植前 充司 |
登録日 | 2023-02-21 |
登録番号 | 7232370 |
権利者 | ミヨシ油脂株式会社 |
発明の名称 | 粉末油脂及びそれを用いた飲食品 |
代理人 | 弁理士法人牛木国際特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人牛木国際特許事務所 |