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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B |
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管理番号 | 1151181 |
審判番号 | 不服2005-20439 |
総通号数 | 87 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2005-03-10 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-10-21 |
確定日 | 2007-01-22 |
事件の表示 | 特願2004-348755「光学記録媒体及び光ディスクシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月10日出願公開、特開2005- 63670〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成2年1月31日に出願された特願平2-21210号の一部を、平成12年1月28日に新たな出願となされた特願2000-20060号の一部を、さらに平成15年12月26日に新たな出願となされた特願2003-434845号の一部を、さらに平成16年12月1日付けで分割がなされたものであって、平成17年9月15日付けで拒絶すべきものである旨の査定がなされたところ、平成17年10月21日付けで特許法第121条第1項に基づき審判請求がなされたものである。 そして、本願の発明は、平成17年11月21日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりのものである。 「【請求項1】 記録及び/又は再生のために光源から出射されるレーザビームが開口数0.55?0.70である対物レンズを介して照射される光学記録媒体であって、 上記対物レンズを介して照射されるレーザビームが集束され、この照射されたレーザビームを反射する反射層を有する記録層と、 厚さが0.44?0.6mmであるポリカーボネートからなり、上記記録層上を覆い上記光源から出射されたレーザビームが入射するように設けられた光透過層と、 上記反射層に対して上記光透過層とは反対の面側に設けられた保護カバー層とを有することを特徴とする光学記録媒体。」(以下「本願発明」という。) 2.刊行物 これに対し、原査定の拒絶の理由で引用された特開昭57-27451号公報(以下「刊行物」という。)には、磁気光学記憶素子について、以下の記載がある。 (a)「1.基板上に磁性薄膜及び透明な誘電体薄膜とをこの順に形成し、更に該誘電体薄膜上に紫外線硬化接着剤を介して円板を接着し、前記基板又は円板の何れか一方を透明材料にて構成したことを特徴とする磁気光学記憶素子。」(特許請求の範囲) (b)「本発明は、光を用いて情報の記録、再生、消去を行ない得る磁気光学記憶素子に関する。 近年HeNeレーザ、Arレーザ、半導体レーザ等の光を用いて磁性薄膜上に、光学的に情報を記録、再生、消去する方式、即ち、磁気光学記録方式が注目され、産業界等において重点的に研究開発が推進されるに至った。」(第1頁左下欄下から9行?下から3行参照) (c)「この方式においては、記録ヘッドであるレンズと記録媒体との間に約1mm程度の間隙を設けることが可能である為、記録媒体とレンズとの間に透明な保護板を設けることにより、記録媒体に直接塵埃が付着することを確実に防止でき、従来の磁気ヘッドを用いた記録方式と比較して塵埃の影響を少なくすることができるという利点がある。」(第1頁左下欄下から2行?同頁右下欄5行参照) (d)「また、透明な保護板の厚みを適宜変化させることにより、レンズと記憶円板との接触を確実に防止でき、従来方式では除去し得なかったヘッドクラッシュを完全に防止できるという利点がある。 更には、この方式によれば記録ピット径を光波長程度(約1μm以下)に極小化し得ることとなる為、従来の磁気ヘッド方式と比較して非常に高密度化し得るという利点もある。」(第1頁右下欄6?13行参照) (e)「第1図は本発明を磁気光学記憶円板に実施した側面図であり、ソーダガラス、コーニングマイクロシート等のガラス円板、或はアクリル、ポリカーボネート等樹脂製の円板(1)の上面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等によりGdTbFe、GdDyFe、TbFe、DyFe、GdTbFeNi、HoCo、TbCo等アモルファスフェリ磁性体薄膜(2)及びSiO2、SiO等透明な誘電体薄膜(3)をこの順に形成し、該誘電体薄膜(3)の上面にフォートボンド、ロックタイトX-353等紫外線硬化接着剤層(4)を介して前記ガラス円板或は樹脂製の円板(5)を固着して五層構造としている。 第2図は、磁気光学記憶円板と記録ヘッドとの関係を示す側面略図であり、第1図の磁気光学記憶円板の円板(1)の上方に集光レンズ(6)及び記録、消去用磁場発生用のコイル(7)を有する記録ヘッド(8)を図示しないフォーカスサーボと連動させ、記録、再生、消去を行なう場合にアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との距離を一定に保持し得るようにしている。」(第2頁左上欄15行?同頁右上欄15行参照) (f)「集光レンズ(6)を選択することにより記録ヘッド(8)とアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との間隔を変化させることができる為、透明な円板(1)の厚みを例えば0.1mm乃至1mmの範囲内で自由に選択できる。 例えば、集光レンズ(6)としてN.A.0.65の顕微鏡用対物レンズを用いた場合には、円板(1)の厚みを0.5mmとしても何ら支障はなかった。」(第2頁右上欄16行?同頁左下欄3行参照) (g)「前記円板(1)(5)の厚み、材質等は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で自由に選ぶことが可能であり、例えば円板(1)として0.3?0.5mmのコーニングマイクロシートを使用した場合には、磁気光学記憶円板の強度を保つため、円板(5)として1?3mmのアクリル板を使用すれば良い。 また、記録ヘッド(7)と相対する円板は円板(1)でも円板(5)でも良く、記録ヘッド(7)と相対しない円板は透明にする必要がないためAl等金属板、セラミック板等でも良いが、記録ヘッド(7)と相対する円板は少なくとも波長が0.4μm以下の紫外線に対して透明であることが必要である。」(第2頁左下欄4?15行参照) 上記摘記事項及び特に第2図を参酌していくと、刊行物には、 「HeNeレーザ、Arレーザ、半導体レーザ等の光を用いて情報の記録、再生、消去を行ない得る磁気光学記憶素子であって、 ソーダガラス、コーニングマイクロシート等のガラス円板、或はアクリル、ポリカーボネート等樹脂製の磁気光学記憶円板は円板(1)の上面に、アモルファスフェリ磁性体薄膜(2)及び透明な誘電体薄膜(3)この順に形成し、該誘電体薄膜(3)の上面に紫外線硬化接着剤層(4)を介して前記ガラス円板或は樹脂製の円板(5)を固着して五層構造とし、 上記磁気光学記憶円板(1)の上方には集光レンズ(6)及び記録、消去用磁場発生用のコイル(7)を有する記録ヘッド(8)をフォーカスサーボと連動させるように配置することで、記録、再生、消去を行なう場合にアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との距離を一定に保持し、 集光レンズ(6)を選択することにより記録ヘッド(8)とアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との間隔を変化させることができる為、透明な円板(1)の厚みを例えば0.1mm乃至1mmの範囲内で自由に選択できるもので、例えば、集光レンズ(6)としてN.A.0.65の対物レンズを用いた場合には、円板(1)の厚みを0.5mmとして、 前記円板(1)(5)の厚み、材質等は、例えば円板(1)として0.3?0.5mmのコーニングマイクロシートを使用した場合には、磁気光学記憶円板の強度を保つため、円板(5)として1?3mmのアクリル板を使用すれば良く、記録ヘッド(7)と相対しない円板は透明にする必要がないためAl等金属板、セラミック板等でも良い磁気光学記憶素子。」(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 3.本願発明と刊行物発明との対比・判断 (i)刊行物発明において「光を用いて情報の記録、再生、消去」は本願発明の「記録及び/又は再生」に相当する。 (ii)刊行物発明において「集光レンズ(6)」は本願発明の「対物レンズ」に相当するものであり、また刊行物発明において「集光レンズ(6)及び記録、消去用磁場発生用のコイル(7)を有する記録ヘッド(8)」であるが、明確な記載はないが記録ヘッドは少なくともレーザ光源をもつものであるし(上記2.(b)参照)、集光レンズはレーザ光源からの光を集束する機能をもつものである。刊行物発明の「HeNeレーザ、Arレーザ、半導体レーザ等の光」は本願発明の「光源から出射されるレーザビーム」に相当する。 (iii)刊行物発明において「例えば、集光レンズ(6)としてN.A.0.65の対物レンズを用いた場合」であるが、その前提として「集光レンズ(6)を選択することにより記録ヘッド(8)とアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との間隔を変化させることができる為」とある。集光レンズを選択することで記録ヘッドとアモルファスフェリ磁性体薄膜の間隔を変化させる方法として開口数N.A.の数値に幅をもたせ適宜変更することで達成できることは技術的に明らかであって、その一例として「N.A.0.65」を記載していると解釈ができるものである。開口数N.A.は幅をもって一例としての値は上記数値の中心に近いものである。要するに、N.A.0.65は開口数0.55?0.70の範囲に含まれると共に幅をもつ点において、本願発明の「開口数0.55?0.70である対物レンズを介して照射」に相当する。 (iv)刊行物発明において「アモルファスフェリ磁性体薄膜(2)」であるが、これは記録材料膜であり、本願発明の「記録層」に相当する。 (v)刊行物発明において「ソーダガラス、コーニングマイクロシート等のガラス円板、或はアクリル、ポリカーボネート等樹脂製の磁気光学記憶円板は円板(1)」及び「円板(1)(5)の厚み、材質等は、例えば円板(1)として0.3?0.5mmのコーニングマイクロシートを使用した場合」であるが、上記円板(1)の材質としてコーニングマイクロシート以外にポリカーボネートの使用が可能で材質の変更にともない厚みを変えるとの記載はないものであるから、ポリカーボネートにおいても「0.3?0.5mm」の厚みとすれば、これは本願発明の「厚さが0.44?0.6mm」の範囲に含まれるもので、この範囲に限って本願発明の「厚さが0.44?0.6mmであるポリカーボネート」に相当する。 (vi)刊行物発明における「ポリカーボネート等樹脂製の磁気光学記憶円板は円板(1)の上面に、アモルファスフェリ磁性体薄膜(2)及び透明な誘電体薄膜(3)この順に形成し、該誘電体薄膜(3)の上面に紫外線硬化接着剤層(4)を介して前記ガラス円板或は樹脂製の円板(5)を固着して五層構造」として、「ポリカーボネート等樹脂製の磁気光学記憶円板(1)の上方には集光レンズ(6)及び記録、消去用磁場発生用のコイル(7)を有する記録ヘッド(8)をフォーカスサーボと連動させるように配置」であるが、対応しての第2図の配置構成を参酌すると、これは本願発明の「記録層上を覆い上記光源から出射されたレーザビームが入射するように設けられた光透過層」に相当する。 (vii)刊行物発明における「記録ヘッド(7)と相対しない円板は透明にする必要がないためAl等金属板、セラミック板等でも良い」であるが、光透過層とは反対側に設けた層とは「円板(5)」であり、これは磁気光学記憶円板の強度を保つ(上記2.(g)を参照)ためであると共に保護する機能をもつことは明らかであるから、この点において本願発明の「反射層に対して上記光透過層とは反対の面側に設けられた保護層とを有する」に相当する。 (viii)刊行物発明における「磁気光学記憶素子」は本願発明の「光学記録媒体」に相当する。 結局、本願発明と刊行物発明とは以下の点で一致ないし相違する。 [一致点] 「記録及び/又は再生のために光源から出射されるレーザビームが開口数0.65である対物レンズを介して照射される光学記録媒体であって、 上記対物レンズを介して照射されるレーザビームが集束され、この照射されたレーザビームを有する記録層と、 厚さが0.3?0.5mmであるポリカーボネートからなり、上記記録層上を覆い上記光源から出射されたレーザビームが入射するように設けられた光透過層と、 上記反射層に対して上記光透過層とは反対の面側に設けられた保護層とを有する光学記録媒体。」 [相違点] (1)対物レンズの開口数であるが、本願発明のものは「開口数0.55?0.70」というものであるが、刊行物発明のものは数値として「N.A.0.65」の値だけである点。 (2)ポリカーボネートの厚さであるが、本願発明のものは「0.44?0.6mm」の範囲であるが、刊行物発明のものは「0.3?0.5mm」の範囲である点。 (3)記録層の構成であるが、本願発明のものは「レーザビームを反射する反射層を有する記録層」というものであるが、刊行物発明のものは反射層に関して明確な記載がない点。 (4)光記録媒体であるが、本願発明は「(光透過層とは反対の面側に設けられた保護)カバー層を有する」というものであるが、刊行物発明のものは保護層までの把握はできてもカバー層までの言及がされてない点。 [判断] 相違点(1)に関して、 上記(iii)で若干触れているが、上記2.(f)には「集光レンズ(6)を選択することにより記録ヘッド(8)とアモルファスフェリ磁性体薄膜(2)との間隔を変化させることができる為、透明な円板(1)の厚みを例えば0.1mm乃至1mmの範囲内で自由に選択できる。」なる記載がある。開口数を大きくすることで対物レンズの焦点深度が浅くなることは技術的に明らかであるのだから、上記文言を素直に解釈すれば、開口数は0.65は一例であり、開口数を0.65前後に変更できることは容易に想到できるものである。そして、本願発明において、「開口数0.55?0.70」であるが数値の上限ないし下限について本願明細書【0027】?【0029】等を参酌しても、従来構成物と比較して、この範囲での特段意義ある記載事項の把握はできないもので、刊行物発明において開口数が特定される範囲でない以上、「開口数0.55?0.70」は適宜容易に想到できるものである。 相違点(2)に関して、 ポリカーボネートの厚さ「0.44?0.6mm」であるが、数値の上限ないし下限について本願明細書【0006】【0015】【0027】?【0029】等を参酌しても、従来構成物と比較して、この範囲での特段意義ある記載事項の把握はできないもので、ポリカーボネートの厚さを「0.3?0.5mm」の範囲から「0.44?0.6mm」にもっていくことは当業者が必要に応じて適宜なし得るものである。 相違点(3)に関して、 刊行物発明のものも、アモルファスフェリ磁性体薄膜に集光レンズで集光した後、如何にしてその情報を読み取るかについて明確な記載はない。しかしながら、円板(5)があえて透明でない構成である以上、透過ではなく情報を読み取るため、レーザビームを反射する反射層を有する記録層との想定ができ、また反射させることの構成は当該分野で周知技術(例:特開平2-18086号公報,特開平2-3133号公報,特開平1-294239号公報等参照)であるから、刊行物発明においても記録層に反射層を設け上記相違点(3)の構成は当業者が容易に想到できるものである。 相違点(4)に関して、 刊行物発明のものは第2図でも把握できる「ポリカーボネート等樹脂製の磁気光学記憶円板は円板(1)の上面に、アモルファスフェリ磁性体薄膜(2)及び透明な誘電体薄膜(3)この順に形成し、該誘電体薄膜(3)の上面に紫外線硬化接着剤層(4)を介して前記ガラス円板或は樹脂製の円板(5)を固着して五層構造」であり、記録ヘッド(8)側からみると最下層側である。さらに「磁気光学記憶円板の強度を保つため、円板(5)として1?3mmのアクリル板を使用すれば良い。」及び「記録ヘッド(7)と相対しない円板は透明にする必要がない」(上記2.(g)を参照)等の記載がある。この作用効果の記載から、もたらす機能はきわめて保護的であるし、また光記録媒体として上記相違点(3)で記載の周知文献には保護層の記載が明確にある。保護層と保護カバー層は表現上の相違程度であり技術的に明確な区別はしにくいものである以上、刊行物発明のものにおいて、上記相違点(4)の構成は当業者が適宜容易に想到できるものである。 また、請求人は審判請求理由で、種々主張しているので一応検討する。 イ.「そして、以上の様に構成されている請求項1、2に係る発明によれば、 a.レーザビームを集束する対物レンズのNAを0.55?0.70とするとともにポリカーボネートからなる光透過層の厚さを0.44?0.6mmとしたから、対物レンズのNAが0.50で光透過層の厚さが1.2mmであったときとコマ収差を同じかそれ以下にしつつ、より高密度な記録及び/又は再生が可能となって大容量化を図ることができ、対物レンズのNAが大きくて厚さが厚くてもこの対物レンズが光学記録媒体に接触せず、ダストによる問題の発生を防止することもできる、 という顕著な作用効果を奏することができる。 」 との主張の事項であるが、本願発明の記載内容から、『対物レンズのNAを0.55?0.70とするとともにポリカーボネートからなる光透過層の厚さを0.44?0.6mmとしたから、対物レンズのNAが0.50で光透過層の厚さが1.2mmであったときと』なる比較をもって、『コマ収差を同じかそれ以下にしつつ、より高密度な記録及び/又は再生が可能となって大容量化』という作用効果の把握はできないもので採用できない。 ロ.「(3)請求項1、2に係る発明と引用文献との対比 引用文献1には、本願発明の様により高密度な記録を実現しつつ光学記録媒体の光透過層の厚さによって生じるコマ収差を小さく抑えることについては何も記載されておらず、そのことを考慮する記載もない。 特に、引用文献1の「透明な円板(1)の厚みを例えば0.1mm乃至1mmの範囲内で自由に選択できる。」、「円板(5)として1?3mmのアクリル板を使用すればよい。」及び「記録ヘッド(7)と相対する円板は円板(1)でも円板(5)でも良く・・・。」等との記述から、透明な円板としては3mmといった非常に厚いものまで使用することができることを開示している。しかし、その場合にコマ収差を小さくするためには開口数の非常に小さな対物レンズを使用する必要があり、高密度の記録再生を実現することは困難である。 なお、拒絶査定では、コマ収差の大きさは光透過層の厚さとNAに応じて決まることが引用文献2(特開平8-221802号公報)に記載されている旨が指摘されている。しかし、本願の基礎出願日は平成2年1月31日であり、引用文献2は本願の基礎出願日以降に出願及び公開されている。従って、この引用文献2を根拠にして「コマ収差の大きさは光透過層の厚さとNAに応じて決まること」が自明であるとの指摘は到底受け入れることができず、このことは請求項1、2に係る発明が容易には想到できるものではないことを逆に示している。」 の事項であるが、要するに『コマ収差を小さく抑えることについては何も記載されていない』ことを主張する。しかしながら、例えば「応用光エレクトロニクスハンドブック」応用光エレクトロニクスハンドブック編集委員会編、株式会社昭晃堂1989年4月10日初版発行、第419?446頁」の第439頁1行目の(6.2.4)式は、本願発明のコマ収差W31の式そのものを、さらに第437頁下から3行目の(6.2.1)式は、本願発明の球面収差W40の式そのものを、各々記載しており、刊行物発明のものにおいても、上記コマ収差の式ないし球面収差の式を満足していることは当然である。そして、NAが大きくなることによるコマ収差の増大を、光透過層の膜厚tを薄くすることによって低減できることは、この式より明らかである。当業者であれば、コマ収差と球面収差をみながらNA及び光透過層の膜厚を調整することは当該技術を具現化していく段階を当然考慮しながら適宜設計していくものであるから、上記主張は採用できない。 ハ.「また、請求項1、2に係る発明では、前記A項及びE項に記載されている様に、レーザビームを反射する反射層が光学記録媒体または光ディスクに設けられているが、引用文献1には、反射層を設ける構成については何も記載されていない。 更に、請求項1、2に係る発明では、前記D項及びE項に記載されている様に、反射層に対して光透過層とは反対の面側に保護カバー層が光学記録媒体または光ディスクに設けられており、引用文献2には、保護カバー層を設ける構成についても何も記載されていない。請求項1、2に係る発明では、保護カバー層を設けることによって、反射層に裏面から傷が付くことを防止することができる。 要するに、引用文献1には、光学記録媒体または光ディスクに反射層を設けることも保護カバー層を設けることも全く記載されておらず、請求項1、2に係る発明が引用文献1に記載された発明と同一の発明でないことは勿論のこと、この様に明確に相違している引用文献1及び引用文献2に記載された発明からは当業者といえども請求項1、2に係る発明を容易に想到し得ないことも明白である。」 の事項であるが、これは上記相違点(3)(4)で判断したとおりである。 結局のところ、本願発明は、刊行物発明及び周知技術を組合せることで当業者が容易に発明し得たものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、刊行物及び周知技術に基づいて当業者が容易に想到できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-10-31 |
結審通知日 | 2006-11-06 |
審決日 | 2006-12-08 |
出願番号 | 特願2004-348755(P2004-348755) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G11B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中野 和彦、山崎 達也 |
特許庁審判長 |
江畠 博 |
特許庁審判官 |
吉村 伊佐雄 早川 卓哉 |
発明の名称 | 光学記録媒体及び光ディスクシステム |
代理人 | 土屋 勝 |