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審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 E02D 審判 全部無効 1項1号公知 E02D |
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管理番号 | 1256732 |
審判番号 | 無効2011-800068 |
総通号数 | 151 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2012-07-27 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2011-04-22 |
確定日 | 2012-05-07 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第4538672号発明「未固化試料の採取装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1 手続の経緯 平成18年10月20日:出願(特願2006-285773号) 平成22年 7月 2日:設定登録(特許第4538672号) 平成23年 4月21日:本件審判請求(請求項1、2に対して) 平成23年 7月13日:被請求人より答弁書提出 平成23年 8月24日:請求人より弁駁書提出 平成23年10月 6日:被請求人より第2答弁書提出 平成24年 1月27日:口頭審尋 第2 本件特許発明 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2記載された事項により特定される次のとおりのものと認められる(請求項1に係る発明ついては、構成要件に分説して記載した。)。 「【請求項1】 A 平行な第1の柱と第2の柱の間に、第1の連結棒と第2の連結棒が前記第1の柱と前記第2の柱に対して直交して配設され、 B 前記第1の連結棒は前記第1の柱と第2の柱の上部側にあってその両端側は、それぞれ固定解除部材によって前記第1の柱と前記第2の柱に固定可能と解除可能に取り付けられ、 C 前記第2の連結棒は前記第1の連結棒よりも下側にあってその一端側は前記第1の柱に固定され、前記第2の連結棒の他端側はスリーブを介して前記第2の柱に相対的にスライド可能に取り付けられ、 D 前記第1の柱の前記第1の連結棒よりも下側であって未固化試料層内の所望の採取位置に到達可能な位置に底付き筒が固定され、前記第2の柱における前記底付き筒の上部に対応する位置には前記底付き筒の上部を被覆する上蓋が固定されることを特徴とする未固化試料の採取装置。 【請求項2】 前記未固化試料層内で深さの異なる複数の採取位置に到達可能な位置にそれぞれ前記底付き筒が前記第1の柱に所望の間隔で固定され、複数の前記上蓋が前記第2の柱に所望の間隔で固定されることを特徴とする請求項1記載の未固化試料の採取装置。」 第3 当事者の主張 1 請求人の主張 請求人は,特許第4538672号の請求項1、2に係る特許を無効とする、審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め、その理由として、以下の無効理由を主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第7号証を提出した。 [無効理由] 本件特許の請求項1及び2に係る発明は、出願前に公知となった甲第1号証から甲第4号証に示される発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し特許を受けることができないものである。 また、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、出願前に公知となった甲第1号証から甲第4号証に示される発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 (具体的な理由) (1)公知性について ア 甲第1号証ないし甲第4号証に示す工事報告書は、施工報告書である。 イ 施工報告書は一般的に、基礎工事の完了後に基礎工事業者から、建築工事を請負った元請建設業者に提出されたものであり、施工報告書の日付けは元請け建設業者に提出された日を表すものである。 ウ 元請け建設業者は、工事報告書の内容を確認した後、施主から委託を受けて設計監理している建築設計事務所に当該工事報告書を渡す。 建築設計事務所は、その内容を検証し、間違いがなければ工事報告書を提出する。 エ 工事報告書は秘密保持義務を負わない建築設計事務所を経由して施主に渡されるものであるため、甲第1号証ないし甲第4号証に示す工事報告書は、建築設計事務所に提出された後は公知文献となっているものであり、遅くとも施主に渡った時点で、公知文献となっているといえる。 オ そして、一般的に基礎工事の実施から工事報告書が元請け建設業者、建築設計事務所を経由して施主に渡るまでの期間は2カ月から3カ月くらいであり、甲第1号証ないし甲第4号証に示す工事報告書は、本件特許の出願前に施主又は建築設計事務所の手元に渡って公知になっていたといえる。 (2)特許法第29条第1項第1号について 甲第1号証ないし甲第4号証に示す工事報告書の写真には、本件の請求項1及び2に係る発明が開示されている。 したがって、本件の請求項1及び2に係る発明は、出願前に公知となった甲第1号証から甲第4号証に示される発明であるから、特許法第29条第1項第1号に該当し特許を受けることができないものである。 (3)特許法第29条第2項について 甲第1号証から甲第4号証に示される発明に、本件の請求項1に係る発明の構成要件BないしDが明確に示されていないとしても、構成要件BないしDの構成とすることは当業者が容易になしうることであり、本件の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証から甲第4号証に示される発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 [証拠方法] 甲第1号証:「工事名:(仮称)サンデュエル深谷新築工事 工事報告書 エルマッド工法(マッドソイルセメント工法) 平成17年10月」株式会社エルフ宇都宮出張所 甲第1号証の1?4:甲第1号証に掲載された写真の拡大写真とされる写真 甲第2号証:「(仮称)PFU石川第2開発センター新築工事 施工報告書 エルマッド工法(マッドソイルセメント工法) 平成18年1月」株式会社エルフ金沢営業所 甲第3号証:「(仮称)能崎脳神経外科医院新築工事 施工報告書 エルマッド工法(マッドソイルセメント工法) 平成18年4月」高島株式会社名古屋支店 株式会社エルフ金沢営業所 甲第4号証:「イースターヴィレッジ新築工事 施工報告書 エルマッド工法(マッドソイルセメント工法) 平成18年4月」三谷商事株式会社埼玉支店 エルフ金沢営業所 甲第5号証:自在クランプを示すホームページ (http://www.ashiba-bank.com/max_c/html/o0007.htm) 甲第6号証:パイプクランプを示すホームページ (http://www.kondotec.co.jp/products/14.html) 甲第7号証:パイプクランプを示すホームページ (http://www.okabe.co.jp/) 2 被請求人の主張 被請求人は、答弁書を提出し、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とするとの審決を求め、請求人主張の無効理由に対して、以下のように反論した。 [無効理由に対する反論] (1)甲第1号証の写真はいつ撮影されたものか不明である。 (2)甲第1号証ないし甲第4号証の工事報告書又は施工報告書添付の写真の採取装置は、構成が不明であり、本件特許の請求項1に係る発明の構成要件BないしDが開示されていない。 したがって、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に示される発明ではなく、甲第1号証に示される発明から当業者が容易に発明をすることができたものでもない。 第3 当審の判断 1 甲第1号証ないし甲第4号証の公知性について 請求人の提出した書類及び口頭審尋によっても、請求人の提出した甲第1号証ないし甲第4号証が、元請け建設業者を介して、建築設計事務所並びに施主に提出されたものであることは明らかではなく、甲第1号証ないし甲第4号証に示される発明が、本件出願前に公知になっていたとの事実は確認することができない。 その理由は、以下のとおりである。 (1)甲第1号証について 請求人は、「(仮称)サンデュエル深谷新築工事の工事報告書」であるとして20枚の書類(15?20枚目は写真)からなる甲第1号証を提出している。 しかしながら、甲第1号証には、ページ数の記載はなく、2枚目の「目次」に、 「・・・ 6.施工管理 ・施工記録 ・工事報告 ・地盤改良実施図 ・流量計管理データ ・工事写真帳 7.品質検査結果 ・・・ 8.安全管理 9.その他資料 ・・・ 」 と記載されているのに対し、3枚目以降の本文中には、「・工事写真帳」との記載はなく、添付された5枚の写真が何であるのか明らかでない。 さらに、目次に記載の「7.?9.」については何ら記載されていない。 また、施工報告書は、通常、基礎工事業者が、押印して元請け建設業者に提出するものと認められるところ、甲第1号証には押印がなく、甲第1号証は、工事名「(仮称)サンデュエル深谷新築工事」の施工報告書としての体を成していない。 したがって、甲第1号証は、基礎工事業者から、元請け建設業者を介して建築設計事務所並びに施主に提出した「(仮称)サンデュエル深谷新築工事 工事報告書」であると認めることはできない。 そうすると、甲第1号証の書類が,本件出願前に公知になったとする根拠はない。 (2)甲第2号証について 請求人は、「(仮称)PFU石川第2開発センター新築工事 施工報告書」であるとして24枚の書類(15?24枚目は写真)からなる甲第2号証を提出している。 しかしながら、甲第2号証には、ページ数の記載はなく、2枚目の「目次」に、 「・・・ 8. 施工資料 ・施工写真 ・水量記録 ・一軸圧縮試験結果報告書 ・固化材出荷伝票 」 と記載されているのに対し、3枚目以降の本文中には、「・施工写真」との記載はなく、14枚目には「工程写真」と記載されており、15?24枚目の写真が「施工報告書」とされる書類に「・施工写真」として添付されていたものと認めることはできない。 さらに、甲第2号証には、目次に記載の「・水量記録」?「・固化材出荷伝票」については何ら記載されていない。 したがって、工程写真を含めた甲第2号証全体が、基礎工事業者から、元請け建設業者を介して建築設計事務所並びに施主に提出した「(仮称)PFU石川第2開発センター新築工事 施工報告書」であると認めることはできない。 そうすると、甲第2号証の書類が、本件出願前に公知になったとする根拠はない。 (3)甲第3号証について 請求人は、「(仮称)能崎脳神経外科医院新築工事 施工報告書」であるとして17枚の書類(14?17枚目は写真)からなる甲第3号証を提出している。 しかしながら、甲第3号証には、ページ数の記載はなく、2枚目の「目次」に、 「・・・ 8. 施工資料 ・施工写真 ・水量記録 ・一軸圧縮試験結果報告書 ・固化材出荷伝票 」 と記載されているのに対し、3枚目以降の本文中には、「・施工写真」との記載はなく、13枚目には「工程写真」と記載されており、14?17枚目に掲載された写真が「施工報告書」とされる書類に「・施工写真」として添付されていたものと認めることはできない。 さらに、甲第3号証には、目次に記載の「・水量記録」?「・固化材出荷伝票」については何ら記載されていない。 したがって、工程写真を含めた甲第3号証全体が、基礎工事業者から、元請け建設業者を介して建築設計事務所並びに施主に提出した「(仮称)能崎脳神経外科医院新築工事 施工報告書」であると認めることはできない。 そうすると、甲第3号証の書類が、本件出願前に公知になったとする根拠はない。 (4)甲第4号証について 請求人は、「イースターヴィレッジ新築工事 施工報告書」であるとして20枚の書類(15?20枚目は写真)からなる甲第4号証を提出している。 しかしながら、甲第4号証の「施工報告書」には、ページ数の記載はなく、目次には、 「・・・ 8. 施工資料 ・施工写真 ・水量記録 ・一軸圧縮試験結果報告書 ・固化材出荷伝票 ・六価クロム溶出試験結果 」 と記載されているのに対し、3枚目以降の本文中には、「・施工写真」との記載はなく、14枚目には「工程写真」と記載されており、15?20枚目に掲載された写真が「施工報告書」とされる書類に「・施工写真」として添付されていたものと認めることはできない。 さらに、甲第4号証には、目次に記載の「・水量記録」?「・固化材出荷伝票」については何ら記載されていない。 したがって、工程写真を含めた甲第4号証全体が、基礎工事業者から、元請け建設業者を介して建築設計事務所並びに施主に提出した「イースターヴィレッジ新築工事 施工報告書」であると認めることはできない。 そうすると、甲第4号証の書類が、本件出願前に公知になったとする根拠はない。 2 特許法第29条の判断 以上のとおり、甲第1号証ないし甲第4号証が、本件出願前に公知になっていたとの事実は確認することができないから、甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第1項第1号に該当し特許を受けることができないものであるとすることはできない。 また、同様の理由により、本件特許の請求項1及び2に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとすることもできない。 第4 むすび したがって、請求人の主張する理由及び証拠方法によっては、本件の請求項1及び2に係る発明に係る特許を、無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項において準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2012-03-07 |
結審通知日 | 2012-03-19 |
審決日 | 2012-03-27 |
出願番号 | 特願2006-285773(P2006-285773) |
審決分類 |
P
1
113・
111-
Y
(E02D)
P 1 113・ 121- Y (E02D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 苗村 康造 |
特許庁審判長 |
山口 由木 |
特許庁審判官 |
仁科 雅弘 宮崎 恭 |
登録日 | 2010-07-02 |
登録番号 | 特許第4538672号(P4538672) |
発明の名称 | 未固化試料の採取装置 |
代理人 | 中井 博 |
代理人 | 福田 修一 |
代理人 | 池田 憲保 |
代理人 | 佐々木 敬 |
代理人 | 山内 康伸 |