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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06Q
管理番号 1324656
審判番号 不服2015-13216  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-10 
確定日 2017-02-08 
事件の表示 特願2013-520733「記憶された値を使用して、適格性のある商品またはサービスの購入取引を実行するためのシステムと方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 1月26日国際公開、WO2012/012212、平成25年10月 3日国内公表、特表2013-537667〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,2011年(平成23年)7月11日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2010年7月19日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成26年3月11日付けで拒絶の理由が通知され、これに対して、平成26年6月16日に意見書及び手続補正書が提出され、平成26年9月24日付けで最後の拒絶の理由が通知され、これに対して、平成27年1月27日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成27年3月3日付けで、平成27年1月27日付けの手続補正が却下されると共に拒絶査定がなされ、同査定の謄本は同年3月10日に請求人に送達された。これに対して、同年7月10日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同時に手続補正がなされ、同年8月28日付けで前置報告書が作成され、平成28年1月5日付けで上申書が提出され、同年5月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年7月14日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 平成28年7月14日にされた手続補正の検討

1. 本件補正について
(1)平成28年7月14日にされた手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、次のとおり補正された(下線部は、補正箇所を示す。)。

「【請求項1】
商品またはサービスの購入取引を実行する方法において、
前記商品またはサービスは、適格性のある商品またはサービスを含み、
前記購入取引は、ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して引き換え可能であり、
前記方法では、ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ、
データベースは、前記しるしと、前記適格性のある商品またはサービスとに関係付けられた記録を含み、
前記方法は、
購入のために選択された商品またはサービスの識別子と、
前記記憶値に関係付けられた前記しるしと、
を含む購入通信を、前記POS端末から、前記中央プロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品またはサービスが、前記識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品またはサービスとして前記データベースにおいて前記しるしに関係付けられているか否かを決定することによって、前記識別子のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定し、購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの各々の価格を前記中央プロセッサによって決定し、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用することと、
前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、前記POS端末に提供することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のため以外には、前記購入者によってアクセス不可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記記憶値に関係付けられた前記しるしは、機械読取可能なフォーマットである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記機械読取可能なフォーマットは、磁気ストライプと、バーコードと、無線周波数識別(RFID)タグと、マイクロドットとからなるグループから選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定するステップは、
適格性のある商品またはサービスのデータベースにアクセスすることと、
前記購入のために選択された商品またはサービスの識別子と、前記適格性のある商品またはサービスのデータベースの識別子とを比較することと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定するステップは、
前記しるしに関連付けられた記録を含むデータベースにアクセスすることと、
前記しるしに関係付けられた前記値を決定することと、
前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額と、前記しるしに関係付けられた前記値とを比較して、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額以上である場合は、前記しるしに関係付けられた前記記憶値は十分であると決定することと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用するステップは、
前記記憶値を保持するアカウントを維持する関係者と通信して、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額に等しい額における支払を要求すること、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
商品またはサービスの購入取引を実行する方法において、
前記商品またはサービスは、適格性のある商品またはサービスを含み、
前記購入取引は、ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して引き換え可能であり、
前記方法は、ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をするコンピュータ化されたプロセッサによって実行され、
データベースは、前記しるしと、前記適格性のある商品またはサービスとに関係付けられた記録を含み、
前記方法は、
前記POS端末から、前記記憶値に関係付けられた前記しるしを含む購入通信を、中央プロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品またはサービスが、少なくとも部分的に、前記しるしに関係付けられた前記データベースにおける記録と、前記購入のために選択された商品またはサービスの識別子を比較することによって、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定し、購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの各々の価格を前記中央プロセッサによって決定し、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定して、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用することと、
ここで、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定することは、
前記しるしに関連する記録を含むデータにアクセスすることと、
前記しるしに関係付けられた前記値を決定することと、
前記しるしに関係付けられた前記値を、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額と比較することとを含み、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額より多いまたは等しい場合は、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が十分であると決定することと、
前記しるしに関係付けられた前記値の額が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額より少ない場合は、不足を前記ポイントオブセールに通知し、前記しるしに関係付けられた前記値の額に対して、前記購入取引を実行することと、
前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、前記POS端末に提供することと、
適格性のない商品またはサービスである、何らかの商品またはサービスの購入に対して、前記購入者によって提供された追加の資金供給源を使用することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のため以外には、前記購入者によってアクセス不可能である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記しるしが有効であるか否かを決定するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額を決定するステップは、
前記ポイントオブセールからそれぞれの適格性のある商品またはサービスに対する購入価格を受信することと、
それぞれの適格性のある商品またはサービスに対する前記購入価格を合計することと、
を含む、請求項8記載の方法。」

(2)本件補正前の、平成27年7月10日付の手続補正による特許請求の範囲の記載は次のとおりである。

「【請求項1】
商品またはサービスの購入取引を実行する方法において、
前記商品またはサービスは、適格性のある商品またはサービスを含み、
前記購入取引は、ポイントオブセール(POS)端末において購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して引き換え可能であり、
前記方法では、前記POS端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ、
データベースは、前記しるしと、前記適格性のある商品またはサービスとに関係付けられた記録を含み、
前記方法は、
購入のために選択された商品またはサービスの識別子と、
前記記憶値に関係付けられた前記しるしと、
を含む購入通信を、前記POS端末から、前記中央プロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品またはサービスが、前記識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品またはサービスとして前記データベースにおいて前記しるしに関係付けられているか否かを決定することによって、前記識別子のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定し、購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用することと、
前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、
前記POS端末に提供することと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のため以外には、前記購入者によってアクセス不可能である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記記憶値に関係付けられた前記しるしは、機械読取可能なフォーマットである、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記機械読取可能なフォーマットは、磁気ストライプと、バーコードと、無線周波数識別(RFID)タグと、マイクロドットとからなるグループから選択される、請求項3記載の方法。
【請求項5】
購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定するステップは、
適格性のある商品またはサービスのデータベースにアクセスすることと、
前記購入のために選択された商品またはサービスの識別子と、前記適格性のある商品またはサービスのデータベースの識別子とを比較することと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定するステップは、
前記しるしに関連付けられた記録を含むデータベースにアクセスすることと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値を決定することと、
前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額と、前記しるしに関係付けられた前記記憶値とを比較して、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額以上である場合は、前記しるしに関係付けられた前記記憶値は十分であると決定することと、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用するステップは、
前記記憶値を保持するアカウントを維持する関係者と通信して、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される総額に等しい額における支払を要求すること、
を含む、請求項1記載の方法。
【請求項8】
商品またはサービスの購入取引を実行する方法において、
前記商品またはサービスは、適格性のある商品またはサービスを含み、
前記購入取引は、ポイントオブセール(POS)端末において購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して引き換え可能であり、
前記方法は、前記POS端末と選択的な通信をするコンピュータ化されたプロセッサによって実行され、
データベースは、前記しるしと、前記適格性のある商品またはサービスとに関係付けられた記録を含み、
前記方法は、
前記POS端末から、前記記憶値に関係付けられた前記しるしを含む購入通信を、前記コンピュータ化されたプロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品またはサービスが、少なくとも部分的に、前記しるしに関係付けられた前記データベースにおける記録と、前記購入のために選択された商品またはサービスの識別子を比較することによって、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定し、購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定して、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値の額が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額より少ない場合は、不足を前記POS端末に通知し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値の額に対して、前記購入取引を実行することと、 前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、前記POS端末に提供することと、
を含む、方法。
【請求項9】
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のため以外には、前記購入者によってアクセス不可能である、請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記しるしが有効であるか否かを決定するステップをさらに含む、請求項8記載の方法。
【請求項11】
前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額を決定するステップは、
前記POS端末からそれぞれの適格性のある商品またはサービスに対する購入価格を受信することと、
それぞれの適格性のある商品またはサービスに対する前記購入価格を合計することと、
を含む、請求項8記載の方法。」

(3)本件補正は、請求項1,8および11について以下のア?ウのように補正している。

ア 本件補正前の請求項1について、「ポイントオブセール(POS)端末において購入者によって提示されたしるし」という記載を「ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるし」と補正し、「前記POS端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ」という記載を「ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ」と補正し、「購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計する」という記載を「購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの各々の価格を前記中央プロセッサによって決定し、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計する」と補正した。

イ 本件補正前の請求項8について、「ポイントオブセール(POS)端末において購入者によって提示されたしるし」という記載を「ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるし」と補正し、「前記POS端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ」という記載を「ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ」と補正し、「購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計する」という記載を「購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの各々の価格を前記中央プロセッサによって決定し、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計する」と補正し、「前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定すること」について「ここで、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定することは、
前記しるしに関連する記録を含むデータにアクセスすることと、
前記しるしに関係付けられた前記値を決定することと、
前記しるしに関係付けられた前記値を、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額と比較することとを含み」という限定を付加し、「前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用すること」という記載を「前記しるしに関係付けられた前記値の額が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額より少ない場合は、不足を前記ポイントオブセールに通知し、前記しるしに関係付けられた前記値の額に対して、前記購入取引を実行すること」と補正し、「前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される値の総額より多いまたは等しい場合は、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が十分であると決定することと、」という手順および「適格性のない商品またはサービスである、何らかの商品またはサービスの購入に対して、前記購入者によって提供された追加の資金供給源を使用することと」という手順を追加した。

ウ 本件補正前の請求項11について、「前記POS端末からそれぞれの適格性のある商品またはサービスに対する購入価格を受信すること」という記載を「前記ポイントオブセールからそれぞれの適格性のある商品またはサービスに対する購入価格を受信すること」と補正した。

また、本件補正は、新規事項を追加するものではないから特許法第17条の2第3項の要件を満たしているといえる。

第3 本願発明の特許要件についての検討

1.本願発明

平成28年7月14日付け手続補正書による補正後の本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下の通りのものである。

「【請求項1】
商品またはサービスの購入取引を実行する方法において、
前記商品またはサービスは、適格性のある商品またはサービスを含み、
前記購入取引は、ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して引き換え可能であり、
前記方法では、ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ、
データベースは、前記しるしと、前記適格性のある商品またはサービスとに関係付けられた記録を含み、
前記方法は、
購入のために選択された商品またはサービスの識別子と、
前記記憶値に関係付けられた前記しるしと、
を含む購入通信を、前記POS端末から、前記中央プロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品またはサービスが、前記識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品またはサービスとして前記データベースにおいて前記しるしに関係付けられているか否かを決定することによって、前記識別子のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、適格性のある商品またはサービスを含むか否かを決定し、購入のために選択された商品またはサービスが、適格性のある商品またはサービスを含む場合は、前記適格性のある商品またはサービスの各々の価格を前記中央プロセッサによって決定し、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分であるか否かを決定し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品またはサービスの購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品またはサービスの購入に対して前記記憶値を適用することと、
前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、前記POS端末に提供することと、
を含む、方法。」

2.引用例
(1) 引用例1
当審の拒絶の理由(平成28年5月18日付けの拒絶理由)に引用された米国特許出願公開2005/0261968号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審が付加した。)。

(ア)「BACKGROUND OF THE INVENTION

[0004] Healthcare costs have become a significant issue for consumers. One approach to addressing the issue had been the creation of Medical Savings Accounts or MSAs (sometimes also referred to as Flexible Spending Accounts or Healthcare Spending Accounts) for members of a group (such as employees under an employer healthcare plan). Such accounts permit a member to contribute money (usually on a pre-tax basis) and thereafter obtain reimbursement from the account for various medical or other eligible expenses.

[0005] The administrative burden in managing an MSA plan can be high. As an example, a reimbursement form is typically completed by the member and submitted to the plan administrator. The administrator determines the eligibility of the member, the current balance in the member's account, and the eligibility of products or services purchased. If the purchase is eligible, a reimbursement is made to the member. Given the multiple steps involved, significant time and cost are required for each transaction.

[0006] The Internal Revenue Code and regulations issued thereunder govern most aspects of MSAs, including products and services eligible for reimbursement. Systems have been developed to permit the use of debit cards, so that a member can obtain reimbursement (and pay a medical services provider directly) from the account at the time of purchase. The debit card is used at a POS or medical provider terminal to access the member's account, and if there is a sufficient balance in the account, to pay for the product or service at the time of purchase by debiting the account.

[0007] However, many products eligible for reimbursement, such as over-the-counter (OTC) medicines, are available at drugstores, pharmacies, grocery stores, and other retail establishments, and neither the member purchasing the product nor the retail clerk handling the transaction are familiar with rules that govern eligibility. As a results, members often do not obtain reimbursement for products that would otherwise be eligible when purchased.

BRIEF SUMMARY OF THE INVENTION

(中略)

[0009] In some embodiments, a method is provided for settling a transaction involving the purchase of products, wherein different products may be subject to different forms of payment treatment, the method comprising receiving product information at a data system, using product information to retrieve payment treatment information for the product at the data system, and purchasing the product based on its payment treatment.

[0010] In other embodiments, there is provided a system for conducting sales transaction for items at a merchant location, wherein different products may be eligible for different forms of payment, and wherein the system includes a POS terminal at the merchant location for obtaining product information on each product being sold, and a data system for receiving the product information and determining the payment form for which the product may be eligible. The payment form is then used at the POS terminal to facilitate the sale of the products. In one illustrated embodiment, one form of payment is payment from a debit account, such as a medical savings account (MSA).」
(仮訳:
発明の背景

[0004]ヘルスケアコストは消費者にとって重要な課題となっています。問題に対処する1つのアプローチとして、(雇用者医療制度の対象となる従業員などの)グループのメンバーのために医療貯蓄口座(Medical Savings Accounts)すなわちMSA(時として、フレキシブル支出アカウント(Flexible Spending Accounts)、あるいは、ヘルスケア支出アカウント(Healthcare Spending Accounts)と呼ばれています。)の作成があります。このようなアカウントは、(通常は税引前ベースで)お金を支援し、その後に様々な医療または他の適格な支出に対する払い戻しをアカウントから得ることが可能になります。

[0005]MSAプランを管理する上での管理負担が大きくなることがあります。例えば、払い戻しフォームは、典型的には、メンバーによって記入され、プラン管理者に提出されます。管理者は、会員の資格、会員のアカウントの現在の残高、および購入した製品やサービスの適格性を判断します。当該購入が適格である場合、メンバーへの払い戻しが行われます。関連する複数のステップを考えると、かなりの時間とコストが各取引のために必要とされます。

[0006]内国歳入法(The Internal Revenue Code)および同法に基づく規則により、MSAのほとんどの側面(払い戻し対象として適格な製品やサービスなど)が定められています。デビットカードの使用により、メンバーがアカウントから購入時に払い戻しを受けられる(医療サービスプロバイダが直接支払う)ことを可能とするシステムが開発されてきました。デビットカードをPOSや医療提供者端末で利用することにより、アカウントに十分な残高がある場合に、製品やサービスの代金を購入時にアカウントから引き落とすことができます。

[0007]しかし、このような店頭(OTC)医薬品などの払い戻し適格性を有する多くの製品は、ドラッグストア、薬局、食料品店、およびその他の小売店で入手可能であり、製品を購入するメンバーも、販売を取り扱う小売店員も、払い戻し適格性を管理する規則に精通していません。その結果、メンバーは、多くの場合、払い戻し対象となる製品を購入した場合でも、払い戻しが得られませんでした。

発明の概要

(中略)

[0009]ある実施態様では、製品の購入取引を決済する方法が提供されます。ここで、異なる製品毎に支払処理が異なる形式となることがあります。前記方法は、製品の購入を伴う取引を決済する際に、データシステムで製品情報を受信して、当該製品情報を使用して当該製品のための支払い処理情報を検索し、その支払い処理情報に基づいて当該製品の支払い処理を実行するステップを含んでいます。

[0010]他の実施態様では、商人の場所で製品の販売取引を行うためのシステムが提供されます。ここで、異なる製品毎に支払処理が異なる形式となることがあります。前記システムは、製品を取得するための商人の場所にPOS端末を含み、さらに、製品情報を受信して、当該製品情報を使用して当該製品のための支払い形式を検索するためのデータシステムを含みんでいます。支払い形式は、次に、製品の販売処理を実行するためにPOS端末で使用されます。 説明される実施態様では、支払い形式は、医療貯蓄口座(MSA)などのデビットアカウントからの支払いです。)

(イ)「DETAILED DESCRIPTION OF THE INVENTION

[0018] There are various embodiments and configurations for implementing the present invention. On such implementation is shown in FIG. 1, where according to one embodiment of the invention, a system 100 includes a plurality of point-of-sale (POS) terminals 102 connected to a retail network 104. The network 104 is of a well known type, wherein the POS terminals 102 may be located at one (or more) retail establishments (pharmacies, drug stores, grocery stores, etc.). The POS terminals have price look-up and other functionality, either internally or through interconnection to a server or database (not shown) within the retail network 104. The retail network may also be connected to a banking or financial network 110 in order to handle credit card and other electronic transactions passing through the retail network 104, e.g., originating at POS terminals 102. Further, the retail network 104 may also be connected to a health account network 116, which is maintained by an MSA plan administrator and through which MSA accounts are accessed and used.

[0019] Terminals (such as the POS terminals 102) used for conducting retail and similar transactions are well known. Although not illustrated in FIG. 1, such terminals may include a keyboard, a display and various peripheral devices or functions (e.g., magnetic stripe card reader, optical bar code reader, etc.) well know to those skilled in the art. As should also be appreciated, the POS terminals may be operated by a retail clerk when products to be purchased are presented by a customer at a checkout line, or could be self-service terminals used by the customer, without intervention by a retail clerk (e.g., at a checkout station, built into a shopping basket, or located elsewhere within a retail establishment).

[0020] When products are taken by a customer to the POS terminal 102, product information or a product ID is entered (e.g., at a keyboard or through use of a bar code scanner). Product information is used to retrieve pricing information (e.g., at a price look-up table within the POS terminal or in a database elsewhere within the retail network 104). The customer may use cash or a financial card (e.g., credit card or debit card), and in the case of a card, information may be read at the POS terminal (e.g., at a magnetic stripe reader) and transmitted to a bank or financial institution through financial network 110 in order to authorize the transaction and post it to the appropriate account. The card may be presented at any time during the transaction (before, during or after) product IDs are entered. 」
(仮訳:
[0018]本発明を実施するための様々な実施態様および構成があります。このような実施例が図1に示されています。本発明の一実施態様によれば、システム100は、複数のPOS端末102に接続された小売ネットワーク104を含んでいます。 小売ネットワーク104は、よく知られたタイプであり、ここで、POS端末102が1台(あるいは、複数台)小売店(薬局、ドラッグストア、食料品店など)に配置され得ます。 POS端末は、価格ルックアップやその他の機能を、端末内部に、あるいは、小売ネットワーク内で相互接続された(図示しない)サーバやデータベースにおいて、有しています。小売ネットワークは銀行や金融ネットワーク110に接続してもよく、そうすることで、POS端末からクレジットカードやその他の電子取引を取り扱えるようになります。さらに、小売ネットワーク104は、(MSAプラン管理者によりメンテナンスされている)ヘルス・アカウント・ネットワーク116に接続されていてもよいです。ヘルス・アカウント・ネットワーク116を介して、MSAアカウントへアクセスされ利用されます。

[0019]小売や類似の取引を行うために使用される端末(例えば、POS端末102など)は、よく知られています。図1には示されていませんが、そのような端末は、当業者に明らかなように、キーボード、ディスプレイ、各種周辺機器や機能(例えば、磁気ストライプカードリーダ、光学式バーコードリーダ等)を含んでいてもよいです。また、理解されるように、POS端末は、小売店員によって操作されるものでもよいし、あるいは、製品が小売店員の介入なしに、チェックアウトのラインで顧客によって使用されるセルフサービス端末(例えば、チェックアウト・ステーションで、買い物かごに組み込まれたものでもよいし、または、小売施設内の他の場所に位置しているもの)でもよい。

[0020]製品を持った顧客がPOS端末102のところに来ると、製品情報すなわち製品IDが(例えば、キーボードや、バーコードスキャナを使用することにより)入力される。製品情報は、価格情報を(例えば、POS端末内の価格ルックアップテーブルで、あるいは、小売ネットワーク104内の他の場所にあるデータベースで)検索するために使用されます。顧客は現金または金融カード(例えば、クレジットカードまたはデビットカード)を使用してもよい。カードの場合には、情報が(例えば、磁気ストライプ読取装置により)POS端末で読み取られ、銀行や金融機関に、金融ネットワーク110を介して送信することができる。そうすることで、取引を承認し、適切なアカウントに取引情報を送信することができる。カードは、取引の間の任意の時点(製品IDが入力される前、最中、または、後に)で提示されてもよい。)

(ウ)「[0021] The health network 116 is used for processing information entered at the POS terminals 102 that pertain to insurance and MSA account administration. In particular, it is anticipated that a customer uses an MSA card (to be described later in conjunction with FIGS. 2A and 2B) to identify himself and the MSA account to which eligible purchases may be applied. Such information is entered (e.g., by reading a magnetic stripe on the MSA card at one of the POS terminals 102), and is communicated through the retail network 104 to the health network 116. The health network 116 links systems, terminals and databases operated by the MSA administrator, including a database management system or server (DBMS) 120 which manages an associated data store or database 122, and terminals 126. The database 122 stores data (to be described in greater detail later in conjunction with FIG. 4) which may, among other things, identify MSA members, account balances, and product IDs for MSA eligible products. 」
(仮訳:
[0021]ヘルス・ネットワーク116は、POS端末102で入力された情報(保険およびMSAアカウントの管理に関連する情報)を処理するために使用されます。特に、顧客はMSAカード(図2Aおよび図2Bに関連して後述する。)を使用することで、自分自身とMSAアカウントを識別されるようになります。これにより、適格な購入にMSAアカウントが適用できるようになります。そのような情報は、(例えば、MSAカード上の磁気ストライプをPOS端末102で読み取ることによって)入力され、小売ネットワーク104を介して、ヘルス・ネットワーク116に送信されます。ヘルス・ネットワーク116は、システムと、端末と、データベースがリンクしたものであり、MSAの管理者によって操作されています。さらに、ヘルス・ネットワーク116は、データベース・マネージメント・システムすなわちサーバ(DBMS)120を含んでいます。DBMSは、関連するデータストアすなわちデータベース122および端末126を管理しています。データベース122は、(後に図4に関連してより詳細に説明する)データを保管しており、このデータにより、MSAメンバー、アカウントの残高、MSAにおいて適格な製品の製品ID等を識別することができます。)

(エ)「[0025] FIGS. 2A and 2B show the front and back sides, respectively, of a presentation instrument or MSA card 150 that could be used by a customer (e.g., as a debit card) when making purchases at one of the POS terminals 102, according to one embodiment of the invention. For purposes of the present description, it is assumed that the customer presents the card 150 after purchases have been brought to the POS terminal and each product ID number has been entered (e.g., by use of a keyboard or optical bar code reader). However, as mentioned earlier, the card may be presented at any time (e.g., before, during or after product ID's have been entered.)

[0026] The card 150 is used to identify the member (as someone covered under an MSA plan), and provide information to the POS terminal 102 in order to verify eligibility and/or settle transactions. One side of the card may be embossed with the member's name 152, an account number 154, and an expiration date 156. The card may have a logo 158 of the payer (MSA administrator). Additionally, the card may have other recognizable features that identify it as a branded financial card.

[0027] The back side of the card may include a signature line 160, and plan information 162. Plan information may include a group number, a plan administrator phone number, and other similar information. In some embodiments, the card 150 may also serve as an insurance card (as well as an MSA card) and could include information such as deductibles, co-payments, and the like.

[0028] The card also includes one or more information encoding features. Information encoding features may include a magnetic stripe 164, a bar code 166, a smart chip (not shown), and the like.
(中略)

[0029] In the illustrated embodiment, the MSA card number 154 identifies the institution maintaining the MSA account as well as the customer's individual MSA account. Similar to conventional credit or debit card transactions, such information is used by the POS terminal and retail network 104 to route the transaction data to the health network 116, where the MSA account or the customer is accessed (to be more fully described later).

[0030] The card 150 permits the customer to identify and purchase products that are eligible for MSA reimbursement or payment. Thus, after the product ID for each product to be purchased is entered at POS terminal 102, and after member information (MSA account number, etc.) is read from the MSA card at the POS terminal 102, such information is transmitted through retail network 104 and health network 116 to DBMS 120. The DBMS 120 accesses database tables in database 122 that have the member's MSA account information and also information concerning eligible products. The customer is then informed at the POS terminal 102 whether individual purchases are eligible for MSA payment and whether there are sufficient moneys in the MSA account to pay for eligible purchases. The customers is then asked whether such eligible purchases are to be paid for using the MSA account as a debit account (i.e., debiting purchases against the balance in the account).

[0031] FIG. 3 illustrates a screen 310 that could be displayed at one of the POS terminals 102. The screen 310 facilitates the purchase of MSA eligible products by displaying eligible products separately from non-eligible products, and permitting the customer to have purchases made (debited) against the MSA account. As seen in FIG. 3, various products have been presented (and their product IDs read) at the POS terminal 102. Those products and their prices are displayed. Further, the customer has presented an MSA card (such as the card 150 seen in FIG. 2), and the eligibility of products for MSA payment has been determined (the various steps for such determination will be described later). Thus in FIG. 3, the screen 310 displays the purchased products as either regular (non-eligible) purchases 320 or as eligible purchases 322. A regular purchase total 332 as well as a separate MSA eligible total 334 are displayed, and the customer (whose has been identified by accessing database 122 as a member of an MSA plan having a sufficient balance) is asked through use of the display (at display line 340) whether eligible products are to be debited against the MSA account. Upon selection for MSA payment (such as by use of a keyboard or a touch screen entry), the MSA account is debited and the customer is then responsible for payment (cash, check, credit card, etc.) of other, non-eligible items purchased. The payments from the MSA account to the retail establishment or merchant are handled in the same manner as a conventional debit card transaction, with the amount debited from the MSA account being electronically transferred through a clearing house network (e.g., financial network 110) and credited to the account of the merchant.

[0032] In addition to displaying the purchase amount for each eligible product, the screen 310 is seen in FIG. 3 as also displaying a discounted member price (see display lines 346 and 348). The discounted price may, for example, be negotiated by the MSA administrator (and a retail merchant) as a benefit to members, whereby eligible items may not only be conveniently paid out of the MSA account, but also purchased at a reduced price. Such an arrangement may be attractive to the retail merchant as an incentive for customers having MSA accounts to shop at that merchant's stores. It likewise is attractive to the MSA administrator, since it not only enhances the value of the MSA plan to its members, but also encourages members to purchase eligible products electronically (through use of the MSA card), and avoids significant administrative costs associated with processing paper reimbursement.」
(仮訳:
[0025]図2A及び図2Bは、それぞれ、本発明のMSAカード150の表面と裏面を示しています。本発明の一実施態様によれば、POS端末102のいずれかで購入を行う際に、MSAカード150を(例えば、デビットカードとして)使用することができます。本明細書の目的のために、顧客は、各製品のID番号を(例えば、キーボードや光学バーコードリーダを使用することによって)POS端末に入力した後、カード150を提示しているものと仮定します。しかし、前述したように、カードは任意の時点(例えば、入力前、最中、または、製品IDの入力後に)で提示することも可能です。

[0026]カード150は、メンバーを識別(すなわち、MSAプランでカバーされているか識別)するために使用されます。さらに、適格性を検証して、および/または、取引を決済するための情報を、POS端末102に提供するためにも使用されます。カードの一方の側は、メンバーの名前152、アカウント番号154、および、有効期限156をエンボス加工してもよいでしょう。カードは、支払人(MSA管理者)のロゴ158を有していてもよいでしょう。さらに、カードは、金融カードのブランドを表す他の認識可能な特徴を有していてもよいでしょう。

[0027]カードの裏面には、署名ライン160、およびプラン情報を含んでもよいでしょう。プラン情報には、グループ番号、プラン管理者の電話番号、その他の同様の情報を含んでもよいでしょう。いくつかの実施態様では、カード150は、(MSAカードと同様の)保険証としての役割を果たすことができ、免責金額、共同支払い等の情報を含んでもよいでしょう。

[0028]カードは、1つまたは複数の情報符号化特徴を備えています。情報符号化特徴は、磁気ストライプ164、バーコード166、スマートチップ(図示せず)などを含むことができます。
(中略)

[0029]図示した実施態様では、MSAカード番号154は、顧客の個々のMSAのアカウントだけでなく、MSAアカウントを維持している機関を特定します。従来のクレジットカードまたはデビットカード取引と同様に、そのような情報が、MSAアカウントにアクセス可能なヘルス・ネットワーク116へ、取引データを導くために、POS端末および小売ネットワーク104において使用されます(詳細は後述します)。

[0030]カード150により、顧客が識別され、MSAの払い戻しや支払いの対象となる製品を特定して購入することが可能になります。従って、購入しようとする各製品の製品IDがPOS端末102に入力され、そして、メンバー情報(MSAアカウント番号等)がMSAカードから読み出されます。このような情報は、小売ネットワーク104とヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信されます。DBMS 120は、メンバーのMSAのアカウント情報と対象製品に関する情報を有した、データベース122内のデータベーステーブルにアクセスします。顧客は、その後、個々の購入がMSAの支払いの適格性を有するか、十分なお金がMSAアカウントにあるかどうかをPOS端末102で通知されます。顧客は、適格な購入の支払いにデビット・アカウント(すなわち、アカウントの残高でデビット(引き落とし)購入するためのアカウント)としてのMSAアカウントを使用するかどうかを尋ねられます。

[0031]図3は、POS端末102の一つに表示される画面310を示しています。画面310では、MSAの適格性を有する購入を、適格性を有しない製品とは分離して表示しています。そして、顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能となっています。図3に見られるように、POS端末102には、様々な製品が表示されています(そして、その製品IDが読みとれます)。これらの製品とその価格が表示されています。さらに、顧客は、MSAカード(例えば、図2に示すカード150など)を提示することにより、MSAの支払いのための製品の適格性を決定することができます(決定するための種々の工程は後述します)。したがって、図3では、画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示されています。通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示されています。そして、(データベース122にアクセスすることにより、MSAプランのメンバーであり、十分な残高を有することが確認された)顧客は、(表示行340において)適格性を有する製品をMSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払いするかどうか尋ねられます。(例えば、キーボードやタッチスクリーン入力を使用して)MSA支払いを選択すると、MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ、残りの非適格の商品購入の支払いが(現金、小切手、クレジットカードなどで)行われることになります。MSAアカウントからの支払いは、従来のデビット・カードによる取引と同様に、小売業者すなわち商人に対して取り扱われる。MSAの口座からデビット(引き落)された金額は、電子的にクリアリングハウス・ネットワーク(例えば、金融ネットワーク110)を介して、商人のアカウントに転送されます。

[0032]各適格性を有する製品の購入金額の表示に加えて、図3の画面310では、割引されたメンバー価格が表示されています(表示行346および348を参照)。また、割引価格は、例えば、MSA管理者(および小売り商人)によって、メンバーのベネフィットのため交渉されたものです。適格性を有する商品が便利にMSAアカウントから支払われるだけでなく、低価格で購入することもできます。このような取り決めにより、MSAアカウントを持つ顧客がその商人の店で向かうインセンティブになることから、小売商人にとっても魅力的となり得ます。それは、MSA管理者にとっても、同様に、魅力的なものとなります。なぜなら、MSAプランのメンバーに対する価値が増大するだけでなく、適格性を有する製品の(MSAカードの使用を介した)電子的な購入を促進して、紙による払い戻し処理による多額の管理コストを回避することになるからであります。)

(オ)「[0035] FIG. 4 illustrates in simplified form the content of two database tables within the database 122 (connected to the health network 116) and used in connection with POS terminal 102 (and screen 310 in FIG. 3) for facilitating the purchase of MSA eligible products. As seen there are two relational data base tables, a first table 410 containing various kinds of member information and a second table 412 containing various kinds of product information. The table 410 may include, as illustrated, an account number or ID associated with each member account. The account number is related to the current balance in the account available for making eligible purchases. While not specifically shown, other information may also be provided in connection with each account, such as a PIN (in the event required for accessing the account), member name, address, related accounts (the use of which will be described later), and any other personal information of the member useful in managing the account.

[0036] As also illustrated in FIG. 4, the table 412 stores product information such as a product ID for each product that is MSA eligible, whether a discount is offered (Y/N) to members who purchase the product using their MSA account, and the amount (percentage) of the discount, if any, offered by the merchant. 」
(仮訳:
[0035]図4は、(ヘルス・ネットワーク116に接続されている)データベース122内の2つのデータベースのテーブルの簡略化された内容を示しています。データベース122はPOS端末102(および、図3の画面310)に接続して、MSA適格性を有する製品の購入に使用されます。見られるように、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、さまざまな種類のメンバー情報を含んでいます。第二のテーブル412は、さまざまな種類の製品情報を含んでいます。テーブル410は、図示されているように、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号すなわちIDを含んでいても良いでしょう。アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しています。具体的には示されていないが、各アカウントに関連付けてその他の情報を提供することも可能です。その他の情報としては、PIN(アカウントにアクセスするために必要な場合)、メンバー名、住所、関連するアカウント(その使用については後述します)、そして、アカウントの管理に役立つその他の個人情報がありえます。

[0036]同様に、図4に示されているように、テーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管しています。)

(カ)「[0038] The functionality implementing the embodiments described in FIGS. 1 through 4 is largely data and applications resident at the POS terminals 102, and at the DBMS 120, depending on the configuration of the various devices with the system 100. A flow diagram illustrating the program steps implementing some embodiments of the invention is shown in FIG. 5.

[0039] Turning to FIG. 5, when the customer brings products to be purchased to the POS terminal 102, the product ID (e.g., from a bar code) is entered at the POS terminal, step 510, and the terminal accesses, step 514, a price-look up table (either at the POS terminal or within a data system elsewhere within retail network 104) in order to retrieve a price and, if desired, other information such as a product name, etc. The retrieved information is received at the POS terminal, and it may or may not at this point be displayed at the POS terminal, but if it is displayed, it will not yet reflect whether the product is eligible for MSA payment (since MSA information has not been entered). At step 518, MSA information is entered at the POS terminal, such as by reading the magnetic stripe 164 on the card 150. The transaction data (e.g., product ID) and the MSA account information (e.g., account number on the card 150) is sent through heath network 116 to the DBMS 120, so that the database 122 may confirm-that the account is present and active (step 522) by comparing the MSA account number against account numbers or IDs in table 410, and may determine whether the balance in the MSA account is sufficient to cover the purchase of eligible products, step 526. If the account is not active or there is insufficient balance, information to that effect is displayed at the terminal 102, step 532. Next, DBMS 120 determines at step 528 which if any of the products being purchased are eligible for purchase under the MSA account by comparing products purchased against the product numbers or IDs in table 412.

[0040] If the account is active and has a sufficient balance, then the information in screen 310 seen in FIG. 3 is displayed at POS terminal 102, step 536, in order for the customer to see which products are MSA eligible. The customer elects whether to have the eligible products purchased through the MSA account, at step 540. The customer then handles the payment for non-eligible products (or eligible products not being purchased with the MSA account) at step 544, either by paying with cash or check, or using a separate credit or debit card.

[0041] It should be appreciated that the flow diagram in FIG. 5 is only one example of a process that could be carried out by application programs within the system 100. Additional steps may be performed, and the order of illustrated steps may be changed.」(段落[0039]のheath network 116は、health network 116の誤記であるとこは明らかである。)
(仮訳:
[0038]図1?4に示される実施例では、システム100における様々なデバイスの構成にも依りますが、データとアプリケーションは主としてPOS端末102とDBMS 120に置かれます。本発明のある実施態様を実現するプログラムステップを示すフロー図は、図5に示されています。

[0039]図5に示すように、顧客が製品を購入するためにPOS端末102のところに来ると、プロダクトIDがPOS端末に(例えば、バーコードから)入力されます(ステップ510)。次に、端末が価格ルックアップテーブルに(POS端末内で、または、小売ネットワーク104内のデータシステムで)アクセスして、価格、所望であれば、その他の情報(商品名など)を検索して、検索された情報がPOS端末で受信されます(ステップ514)。検索された情報は、受信された時点で、POS端末に表示しても、しなくてもかまいませんが、もし、表示した場合でも、それはまだ(MSA情報が入力されていないので)製品が、MSAの支払いの適格性を有するかどうかは反映されていません。ステップ518において、MSA情報が、例えばカード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力されます。トランザクションデータ(例えば、プロダクトID)と、MSAアカウント情報(例えば、カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信されます。すると、データベース122は、テーブル410内のアカウント番号すなわちIDと、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認できます(ステップ522)。次に、MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定します(ステップ526)。もし、アカウントが有効でなかったり、十分な残高が無かったりした場合には、端末102にその旨の情報が表示されます(ステップ532)。次に、ステップ528において、DBMS 120は、購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号すなわちIDと比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定します。

[0040]アカウントが有効であり、十分な残高を有している場合には、POS端末102において、図3の画面310の情報を表示します(ステップ536)。そうすることで、顧客は、どの製品がMSAの適格性を有しているか参照できます。顧客は、MSAアカウントを通じて適格性を有する製品を購入するかどうか選択します(ステップ540)。顧客は、さらに、適格性を有していない製品(あるいは、MSAアカウントで購入しないことを選択した適格性を有する製品)の支払いを、現金や、小切手、または、別のクレジットカードあるいはデビットカードを使用して行います(ステップ544)。

[0041]なお、図5の流れ図は、システム100におけるアプリケーションプログラムによって実行することができるプロセスの一例に過ぎないことが理解されるべきです。追加のステップを実行しても良いし、図示されたステップの順序を変更してもよいでしょう。)

(キ)「[0043] Further, the customer/MSA member need not carry a card. Rather the presentation instrument could be an RFID (radio frequency identification device) which is carried by the customer (e.g., as a key fob) and which electronically transmits MSA account information when passed near a transceiver at the POS terminal, so that the entire transaction can be conducted without presenting or reading/swiping a card.
(中略)

[0044] Also, it should be appreciated that although the illustrated embodiments describe the sale (or purchase) of products, transactions may involve non-tangible items, such as services (e.g., medical treatment services).」
(仮訳:
[0043]さらに、顧客/MSAメンバーは、カードを持ち歩く必要はありません。その代わりに提示する器具として、RFID(無線周波数識別デバイス)を利用することができます。RFIDは(例えば、キーフォブとして)顧客によって運ばれ、POS端末の受信機の近くを通過すると、電子的にMSAアカウント情報を送信できます。そうすることで、カードを提示したり、読み出し/スワイプしたりすることなく、取引を実行できます。
(中略)
[0044]また、図示された実施態様は、製品の販売(または購入)について記述していますが、取引はサービス(例えば、医療サービス)などの有体物でないものを対象としても含んでもよいことが理解されるべきです。)

(ク)以上の引用例1の記載(ア)?(キ)によれば、引用例1には以下の事項を含む発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「製品の購入取引を決済する方法であって、
製品は、店頭(OTC)医薬品などの払い戻し適格性を有する製品であり、
システム100は、複数のPOS端末102に接続された小売ネットワーク104を含んでおり、
小売ネットワーク104は、(MSAプラン管理者によりメンテナンスされている)ヘルス・アカウント・ネットワーク116に接続され、ヘルス・アカウント・ネットワーク116を介して、MSAアカウントへアクセスされ利用され、
POS端末102は、磁気ストライプカードリーダ、光学式バーコードリーダ等を含んでおり、
製品を持った顧客がPOS端末102のところに来ると、製品情報すなわち製品IDがバーコードスキャナを使用することにより入力され、
製品情報は、価格情報を(例えば、POS端末内の価格ルックアップテーブルで、あるいは、小売ネットワーク104内の他の場所にあるデータベースで)検索するために使用され、
顧客はMSAカードを使用することで、自分自身とMSAアカウントを識別され、
MSAカード上の磁気ストライプをPOS端末102で読み取ることによって入力された情報は、小売ネットワーク104を介して、ヘルス・ネットワーク116に送信され、ヘルス・ネットワーク116は、サーバ(DBMS) 120を含んでおり、DBMSは、関連するデータストアすなわちデータベース122を管理しており、データベース122は、データを保管しており、このデータにより、MSAメンバー、アカウントの残高、MSAにおいて適格な製品の製品ID等を識別することができ、
POS端末102で購入を行う際に、MSAカード150をデビットカードとして使用することができ、
カード150は、メンバーをMSAプランでカバーされているか識別するために使用され、さらに、適格性を検証して取引を決済するための情報を、POS端末102に提供するためにも使用され、
カードの一方の側は、アカウント番号154をエンボス加工しており、
カードは、情報符号化特徴を備えており、情報符号化特徴は、磁気ストライプ164、バーコード166、などを含み、
MSAカード番号154は、顧客の個々のMSAのアカウントだけでなく、MSAアカウントを維持している機関を特定しており、
カード150により、顧客が識別され、MSAの払い戻しや支払いの対象となる製品を特定して購入することが可能になり、
購入しようとする各製品の製品IDがPOS端末102に入力され、MSAアカウント番号がMSAカードから読み出され、このような情報は、小売ネットワーク104とヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され、DBMS 120は、メンバーのMSAのアカウント情報と対象製品に関する情報を有した、データベース122内のデータベーステーブルにアクセスし、
データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、第二のテーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管しており、
MSA情報が、カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され、プロダクトIDと、MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され、
データベース122は、テーブル410内のアカウント番号と、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認でき、MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定し、
DBMS 120は、購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定し、
顧客は、個々の購入がMSAの支払いの適格性を有するか、十分なお金がMSAアカウントにあるかどうかをPOS端末102で通知され、
POS端末102に表示される画面310では、MSAの適格性を有する購入を、適格性を有しない製品とは分離して表示しており、
顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能となり、
画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示され、通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示され、
各適格性を有する製品の購入金額の表示に加えて、画面310では、割引されたメンバー価格が表示され、割引価格は、MSA管理者によって、メンバーのベネフィットのため交渉されたものであり、適格性を有する商品が便利にMSAアカウントから支払われるだけでなく、低価格で購入することもでき、
データベース122にアクセスすることにより、MSAプランのメンバーであり、十分な残高を有することが確認された顧客は、MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ、残りの非適格の商品購入の支払いが(現金、小切手、クレジットカードなどで)行われる
方法」

2.対比
(1)そこで、本願発明と引用例1発明とを対比する。

(ア)引用例1発明と本願発明とは、POSにおいて医薬品に対する支払いを行う共通の技術分野に属し、適格性のある商品の購入を容易化するという点で、課題が共通しているといえる。

(イ)引用例1発明の「製品」、「MSAカード」の「磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」た「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」、「製品の製品ID」「アカウントの残高」は、本願発明の「商品」、「しるし」、「商品の識別子」「記憶値」に、それぞれ、相当している。
引用例1発明は、製品の購入取引を決済する方法であるから、引用例1発明と本願発明とは、商品の購入取引を実行する方法である点で共通しているといえる。

しかし、本願発明の方法は、商品またはサービスの購入取引を対象としているのに対し、引用例1発明の方法では、商品の購入取引のみを対象としている点で相違している。

(ウ)引用例1発明の「製品」は、店頭(OTC)医薬品などの払い戻し適格性を有する製品であるから、引用例1発明と本願発明とは、商品に、適格性のある商品を含んでいる点で共通しているといえる。
しかし、本願発明の方法は、適格性のある商品だけでなく適格性のあるサービスの購入取引も対象としているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のあるサービスの購入取引を対象としていない点で相違している。

(エ)引用例1発明の方法において、「POS端末102で購入を行う際に、MSAカード150をデビットカードとして使用することができ」、「MSA情報が、カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」、「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され」、「DBMS 120は、メンバーのMSAのアカウント情報と対象製品に関する情報を有した、データベース122内のデータベーステーブルにアクセスし、データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連して」おり、「顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能」である。

ここで「POS端末」は、ポイントオブセール(販売時点)において、小売業者によって使用される端末であり、「MSAカード150をデビットカードとして使用する」際には、「MSAカード150を」小売業者に提示する必要があり、引用例1発明の「カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」た「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」は、本願発明の「しるし」に相当しているから、引用例1発明の「POS端末102で購入を行う際に」、「デビットカードとして使用することができる」「MSAカード」の「磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」た「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」は、本願発明の「ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるし」に相当しているといえる。

また、引用例1発明では、「MSA情報が、カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」、「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され」、「DBMS 120は、メンバーのMSAのアカウント情報と対象製品に関する情報を有した、データベース122内のデータベーステーブルにアクセスし、データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連して」おり、引用例1発明の「アカウントの現在の残高」は、本願発明の「記憶値」に相当しているから、引用例1発明の「MSAカード」の「磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」た「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」も、本願発明の「しるし」と同様に、「記憶値」(アカウントの現在の残高)に関係づけられているといえる。

そして、引用例1発明の方法において、「POS端末102で購入を行う際に、MSAカード150をデビットカードとして使用することができ」、「顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能」であるから、本願発明と同様に、資金供給されているといえる。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、購入取引は、ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給される点で共通しているといえる。

(オ)引用例1発明の方法において、「POS端末102で購入を行う際に、MSAカード150をデビットカードとして使用することができ」、「アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、」「顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能」である。
ここで、引用例1発明の「アカウントの残高」、「適格な購入」、「デビット(引き落とし)支払い」は、それぞれ、本願発明の「記憶値」、「適格性のある商品の購入支払い購入が可能」、「引き換え可能」に相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、記憶値は、適格性のある商品の購入に対して引き換え可能である点で共通している。

しかし、本願発明の方法は、商品またはサービスの購入に対して引き替え可能であるのに対し、引用例1発明の方法では、商品の購入に対して引き替え可能である点で相違している。

(カ)引用例1発明において、「POS端末102で購入を行う際に、MSAカード150をデビットカードとして使用することができ」、「MSAカード上の磁気ストライプをPOS端末102で読み取ることによって入力された情報は、小売ネットワーク104を介して、ヘルス・ネットワーク116に送信され、ヘルス・ネットワーク116は、サーバ(DBMS) 120を含んで」おり、「顧客は、MSAアカウントからのデビット(引き落とし)支払い購入が可能」である。

ここで、POS端末はポイントオブセール端末の略語であり、ネットワークを介した通信は「選択的な通信」であるといえ、サーバ(DBMS) 120は、データを処理する「プロセッサ」(処理装置)であり、末端のPOS端末から見れば「中央プロセッサ」であるといえる。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引を行っている点で共通している。

(キ)引用例1発明において、「データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、第二のテーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管して」おり、「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され、データベース122は、テーブル410内のアカウント番号と、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認でき」るとされている。
ここで、引用例1発明の「データベース122」、「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」、「MSA適格である各製品の製品ID」は、それぞれ、本願発明の「データベース」、「しるし」、「適格性のある商品とに関係付けられた記録」に相当している。
したがって、引用例1発明と本願発明とは、データベースは、しるしと、適格性のある商品の記録を含んでいる点で共通している。

しかし、本願発明の方法は、しるしが適格性のある商品またはサービスの記録に関連付けられているのに対し、引用例1発明の方法では、しるしが適格性のある商品またはサービスの記録に関連付けられていない点で相違している。

(ク)引用例1発明において、「購入しようとする各製品の製品IDがPOS端末102に入力され、MSAアカウント番号がMSAカードから読み出され、このような情報は、小売ネットワーク104とヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され」、つまり「MSA情報が、カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され、プロダクトIDと、MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され」、「アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連して」いる。
ここで、引用例1発明の「購入しようとする各製品の製品ID」が本願発明の「購入のために選択された商品の識別子」に相当する。
さらに、引用例1発明の「アカウントの現在の残高」、「カード150の磁気ストライプ164」から読み取られた「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」が、それぞれ、本願発明の「記憶値」、「しるし」に相当しているから、引用例1発明の「アカウントの現在の残高」に関連している「カード150の磁気ストライプ164」から読み取られた「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」は、本願発明の「記憶値に関係付けられたしるし」に相当している。
また、引用例1発明の「POS端末102」、「DBMS 120」は、それぞれ、本願発明の「POS端末」、「中央プロセッサ」に相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、購入のために選択された商品の識別子と、記憶値に関係付けられたしるしとを含む購入通信を、POS端末から、中央プロセッサにおいて受信している点で共通している。

しかし、本願発明は、購入のために選択された商品またはサービスの識別子を受信しているのに対し、引用例1発明では、購入のために選択された商品の識別子を受信している点で相違している。

(ケ)引用例1発明では、「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)は、ヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され」、「テーブル410内のアカウント番号と、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認でき」る。
ここで、引用例1発明の「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」は、本願発明の「しるし」に相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、しるしが有効であるか否かを決定している点で共通している。

(コ)引用例1発明では、「DBMS 120は、購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定し」ており、「データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、第二のテーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管して」いる。

ここで、引用例1発明の「購入しようとする製品」、「製品番号」、「MSAアカウントの適格性を有する」は、それぞれ、本願発明の「購入のために選択された商品」、「識別子」、「適格性のある」に相当する。
また、引用例1発明の「データベース122」は、本願発明の「データベース」に対応する。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、購入のために選択された商品が、識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいて決定することによって、前記識別子のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、適格性のある商品を含むか否かを決定している点で共通しているといえる。

しかし、本願発明の方法は、適格性のある商品を含むか否かを決定する際に、識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいてしるしに関係付けられているか否かを決定することにより行っているのに対し、引用例1発明の方法では、識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいてしるしに関係付けられているか否かを決定していない点で相違している。

また、本願発明の方法は、適格性のある商品だけでなく適格性のあるサービスを含むか否かを決定しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のあるサービスを含むか否かを決定してない点で相違している。

(サ)引用例1発明では、「画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示され、通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示され」、「各適格性を有する製品の購入金額の表示に加えて、画面310では、割引されたメンバー価格が表示され、割引価格は、MSA管理者によって、メンバーのベネフィットのため交渉されたものであり、適格性を有する商品が便利にMSAアカウントから支払われるだけでなく、低価格で購入することもでき」る。
また、引用例1発明では、「製品を持った顧客がPOS端末102のところに来ると、製品情報すなわち製品IDがバーコードスキャナを使用することにより入力され、製品情報は、価格情報を(例えば、POS端末内の価格ルックアップテーブルで、あるいは、小売ネットワーク104内の他の場所にあるデータベースで)検索するために使用され」、「購入しようとする各製品の製品IDがPOS端末102に入力され、MSAアカウント番号がMSAカードから読み出され、このような情報は、小売ネットワーク104とヘルス・ネットワーク116を介して、DBMS 120に送信され、DBMS 120は、メンバーのMSAのアカウント情報と対象製品に関する情報を有した、データベース122内のデータベーステーブルにアクセスし、データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、第二のテーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管して」いる。
つまり、引用例1発明では、「各適格性を有する製品の購入金額」つまり通常の小売価格に加えて、「割引されたメンバー価格が表示され」ており、この「割引されたメンバー価格」は、「データベース122」内の「第二のテーブル412」に保管されている「MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報」に基づいて決定されている。「割引されたメンバー価格」は、「各適格性を有する製品の購入金額」つまり通常の小売価格に、「割引の量(パーセンテージ)」を掛け合わせて、決定(割引価格計算)されているといえる。ただし、この決定(割引価格計算)を行っている主体が、POS端末102なのか、DBMS 120なのかは不明である。

ここで、引用例1発明の「各適格性を有する製品」の「割引されたメンバー価格」が、本願発明の「適格性のある商品の価格」に相当している。

さらに、引用例1発明では、「画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示され、通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示され」ており、図3を参照すると、「ELIGIBLE TOTAL334」(「MSA適格な合計334」)は、「MEMBER PRICE $1.59」346(「割引されたメンバー価格」)および「MEMBER PRICE $2.99」348の合計金額「$4.58」334になっている。

ここで、引用例1発明の「MSA適格な合計334」が、本願発明の「適格性のある商品の購入のために要求される額を合計」したものに、相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、購入のために選択された商品が、適格性のある商品を含む場合は、前記適格性のある商品の各々の価格を決定し、前記適格性のある商品の購入のために要求される額を合計している点で共通しているといえる。

しかし、本願発明の方法は、適格性のある商品またはサービスの価格を決定し、適格性のある商品またはサービスの購入のために要求される額を合計しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のあるサービスの価格を決定しておらず、適格性のあるサービスの購入のために要求される額を合計していない点で相違している。

また、本願発明の方法は、適格性のある商品の価格を決定する際に、中央プロセッサによって決定しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のある商品の価格を決定する主体が不明である点で相違している。

(シ)引用例1発明では、「カード150の磁気ストライプ164を読み取ることにより、POS端末に入力され」た「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」が「DBMS 120に送信され」、「テーブル410内のアカウント番号と、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認でき、MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定し」いる。

ここで、引用例1発明の「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」に対応する「MSAのアカウントの残高」が、本願発明の「しるしに関係付けられた記憶値」に相当し、引用例1発明の「適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定」することが、本願発明の「適格性のある商品の購入のために十分であるか否かを決定」することに相当している。

さらに、引用例1発明では、「データベース122にアクセスすることにより、MSAプランのメンバーであり、十分な残高を有することが確認された顧客は、MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ」る。

ここで、引用例1発明の(「MSAアカウント情報(カード150上のアカウント番号)」に対応する「MSAのアカウントの残高」が)「十分な残高を有することが確認された」場合が、本願発明の「しるしに関係付けられた記憶値が、適格性のある商品購入のために十分である場合」に相当し、引用例1発明の「MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ」ることが、本願発明の「適格性のある商品の購入に対して記憶値を適用すること」に相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、しるしに関係付けられた記憶値が、適格性のある商品の購入のために十分であるか否かを決定し、しるしに関係付けられた記憶値が、適格性のある商品の購入のために十分である場合は、適格性のある商品の購入に対して記憶値を適用している点で共通しているといえる。

しかし、本願発明の方法は、適格性のある商品またはサービスの購入に対して記憶値を適用しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のあるサービスの購入に対して記憶値を適用していない点で相違している。

(ス)引用例1発明では、「DBMS 120は、購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定し、顧客は、個々の購入がMSAの支払いの適格性を有するか、十分なお金がMSAアカウントにあるかどうかをPOS端末102で通知され、POS端末102に表示される画面310では、MSAの適格性を有する購入を、適格性を有しない製品とは分離して表示しており、画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示され、通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示され」、「データベース122にアクセスすることにより、MSAプランのメンバーであり、十分な残高を有することが確認された顧客は、MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ」る。

ここで、引用例1発明の「MSAアカウントからデビット(引き落とし)支払いが行われ」る「MSA適格な合計334」は、本願発明の「記憶値を用いて購入された適格性のある商品の総額」に相当している。さらに、引用例1発明の「個々の購入がMSAの支払いの適格性を有するか、十分なお金がMSAアカウントにあるかどうかをPOS端末102で通知」することが、本願発明の「情報を、POS端末に提供すること」に相当している。

したがって、引用例1発明と本願発明とは、記憶値を用いて購入された適格性のある商品の総額を含む情報を、POS端末に提供している点で共通しているといえる。

しかし、本願発明の方法は、適格性のある商品またはサービスの総額を含む情報を、POS端末に提供しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のあるサービスの総額を含む情報を、POS端末に提供していない点で相違している。

(2)一致点、相違点
上記(1)の(ア)?(ス)によれば、両者は、以下の点で一致し、また相違している。
[一致点]
「商品の購入取引を実行する方法において、
前記商品は、適格性のある商品を含み、
前記購入取引は、ポイントオブセールにおいて購入者によって提示されたしるしに関係付けられた記憶値によって、少なくとも部分的に資金供給され、
前記記憶値は、前記適格性のある商品の購入に対して引き換え可能であり、
前記方法では、前記ポイントオブセール(「POS」)端末と選択的な通信をする中央プロセッサによって取引が行われ、
データベースは、しるしと、適格性のある商品の記録を含み、
前記方法は、
購入のために選択された商品の識別子と、
前記記憶値に関係付けられた前記しるしと、
を含む購入通信を、前記POS端末から、前記中央プロセッサにおいて受信することと、
前記しるしが有効であるか否かを決定することと、
購入のために選択された商品が、識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいて決定することによって、前記識別子のうちの1つ以上に少なくとも部分的に基づいて、適格性のある商品を含むか否かを決定し、
購入のために選択された商品が、適格性のある商品を含む場合は、前記適格性のある商品の各々の価格を決定し、前記適格性のある商品の購入のために要求される額を合計することと、
前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品の購入のために十分であるか否かを決定し、前記しるしに関係付けられた前記記憶値が、前記適格性のある商品の購入のために十分である場合は、前記適格性のある商品の購入に対して前記記憶値を適用することと、
前記記憶値を用いて購入された適格性のある商品の総額を含む情報を、前記POS端末に提供することと、
を含む、方法。」

[相違点1]本願発明の方法は、商品またはサービスの購入取引を対象としているのに対し、引用例1発明の方法では、商品の購入取引のみを対象としている点。

[相違点2]本願発明の方法は、データベースにおいて、しるしが適格性のある商品またはサービスの記録に関連付けられており、購入のために選択された商品が適格性のある商品を含むか否かを決定する際に、識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいてしるしに関係付けられているか否かを決定することによって行っているのに対し、引用例1発明の方法では、データベースにおいて、しるしが適格性のある商品またはサービスの記録に関連付けられておらず、購入のために選択された商品が識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品としてデータベースにおいてしるしに関係付けられているか否かを決定していない点。

[相違点3」本願発明の方法は、適格性のある商品の各々の価格を決定する際に、中央プロセッサによって決定しているのに対し、引用例1発明の方法では、適格性のある商品の各々の価格を決定する主体が不明である点。

3.判断

[相違点1について]
引用例1の段落[0044]には、「図示された実施態様は、製品の販売(または購入)について記述していますが、取引はサービス(例えば、医療サービス)などの有体物でないものを対象としても含んでもよい」と記載されている。
したがって、引用例1発明においても、本願発明と同様に、商品またはサービスの購入を対象とする構成とすることは、当業者が本願の優先日前に容易に想到し得たものである。

[相違点2について]
引用例1の段落[0004]に「医療貯蓄口座(Medical Savings Accounts)すなわちMSA(時として、フレキシブル支出アカウント(Flexible Spending Accounts)、あるいは、ヘルスケア支出アカウント(Healthcare Spending Accounts)と呼ばれています。)」と記載されているように、引用例1発明は、狭い意味の「医療貯蓄口座(Medical Savings Accounts)すなわちMSA」だけでなく、「フレキシブル支出アカウント(Flexible Spending Accounts)、あるいは、ヘルスケア支出アカウント(Healthcare Spending Accounts)」も対象としている。
ここで、米国特許公開公報US2006/0036523A1の段落[0004]?[0018]にも「Dsecription of the Background」として記載されているように、米国で「ヘルスケア支出アカウント(Healthcare Spending Accounts)」という表現は、内国歳入法第125条に規定された「フレキシブル支出アカウント(Flexible Spending Accounts)すなわちFSA」、内国歳入法第408条(n)に規定された「健康貯蓄アカウント(Health Savings Accounts)すなわちHSA」および「健康払い戻し口座(Health Reinmbursement Accounts)すなわちHRA」という3種類の制度の総称として用いられている。
さらに、これらの互いに類似する制度は、適格となる医薬品や医療サービスが内国歳入庁の規定により異なっており、特に、「健康払い戻し口座(Health Reinmbursement Accounts)すなわちHRA」では、内国歳入庁が定めた適格な医薬品や医療サービスの範囲を企業の雇用主が任意に狭めて、従業員に福利厚生プランとして提供することが知られている(例えば、米国特許公開公報US2006/00113376A1の段落[0031]?[0032]参照。)。
そして、どのプラン(FSAか、HSAか、HRA)に加入するかは、従業者が選択可能であり、加入したプラン(FSAか、HSAか、HRA)によって、適格な医薬品や医療サービスの範囲が異なることとなる。

引用例1発明の方法では、データベース122は、2つのリレーショナル・データベース・テーブルがあり、第一のテーブル410は、各メンバーのアカウントに関連付けられたアカウント番号を含んでおり、アカウント番号は、適格な購入をするために利用可能なアカウントの現在の残高に関連しており、第二のテーブル412は、MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報を保管している。
引用例1の段落[0035]には「第一のテーブル410は、さまざまな種類のメンバー情報を含んでいます。第二のテーブル412は、さまざまな種類の製品情報を含んでいます。」と記載されているから、引用例1発明の方法において、MSAプランの種類(FSA、HSA、HRA)に応じた適格性のある商品またはサービスの決定を行うために、MSAプランのメンバーが加入しているプランの種類(FSA、HSA、HRA)を、メンバー情報の一種として、第一のテーブル410に格納しておき、第二のテーブル412を複数種類(FSA、HSA、HRA)毎に用意しておき、MSAカードから読み取られたMSAアカウント情報(本願発明の「しるし」に相当)を用いて、第1のテーブルを検索して、MSAプランの当該メンバーが加入しているプランの種類(FSA、HSA、HRA)を第一のテーブル410のメンバー情報を参照することで特定して、当該プラン(FSA、HSA、HRA)に対応する(関連付けられた)第二のテーブル412を用いて当該プラン(FSA、HSA、HRA)の種類でカバーしている適格性のある商品またはサービスの決定を行う構成を採用することは、当業者が本願の優先日前に容易に想到し得たものである。

したがって、引用例1発明においても、本願発明と同様に、適格性のある商品を含むか否かを決定する際に、データベースにおいて、しるしが適格性のある商品またはサービスの記録に関連付けられており、購入のために選択された商品またはサービスが識別子のうちの1つ以上が適格性のある商品またはサービスとしてデータベースにおいてしるしに関係付けられているか否かを決定することによって行う構成することは、当業者が本願の優先日前に容易に想到し得たものである。

[相違点3について]
引用例1発明では、上記(1)(サ)で述べたように、「各適格性を有する製品の購入金額」つまり通常の小売価格に加えて、「割引されたメンバー価格が表示され」ており、この「割引されたメンバー価格」は、「データベース122」内の「第二のテーブル412」に保管されている「MSA適格である各製品の製品ID、MSAアカウントを使用して製品を購入するメンバーに対しての割引提供の有無、および、割引の量(パーセンテージ)などの製品情報」に基づいて決定されている。「割引されたメンバー価格」は、「各適格性を有する製品の購入金額」つまり通常の小売価格に、「割引の量(パーセンテージ)」を掛け合わせて、決定(割引価格計算)されているといえる。

さらに、引用例1発明では、「画面310において、通常(非適格)の購入の320も、適格な購入322も、どちらも表示され、通常(非適格)の購入の合計332と、同様に、分離してMSA適格な合計334が表示され」ており、図3を参照すると、「ELIGIBLE TOTAL334」(「MSA適格な合計334」)は、「MEMBER PRICE $1.59」346(「割引されたメンバー価格」)および「MEMBER PRICE $2.99」348の合計金額「$4.58」334になっている。

そして、引用例1発明では、「データベース122は、テーブル410内のアカウント番号と、MSAアカウント番号を比較することにより、当該アカウントが存在し、かつ、有効であることを確認でき、MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定し」ている。

つまり、引用例1発明では、「各適格性を有する製品」の「割引されたメンバー価格」の合計金額を「MSAのアカウントの残高」と比較することにより「MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定し」ているといえる。

引用例1発明では、「各適格性を有する製品の購入金額」つまり通常の小売価格を「価格情報を(例えば、POS端末内の価格ルックアップテーブルで、あるいは、小売ネットワーク104内の他の場所にあるデータベースで)検索」しているが、「割引されたメンバー価格」を求めるための「割引の量(パーセンテージ)」は、「データベース122」内の「第二のテーブル412」に保管されており、「購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定」する処理、「MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定」する処理は、いずれも、「DBMS 120」(本願発明の「中央プロセッサ」に相当)が実行している。
そして、「割引されたメンバー価格」を決定(割引価格計算)する処理は、「購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定」する処理と、「MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定」する処理の間に実行される処理に他ならない。

よって、引用例1発明において、「割引されたメンバー価格」を決定(割引価格計算)する(適格性のある商品の各々の価格を決定する)処理を、その前後に実行される処理である「購入しようとする製品をテーブル412内の製品番号と比較することにより、購入しようとする製品がMSAアカウントの適格性を有するかどうかを決定」する処理と、「MSAのアカウントの残高が適格性のある製品の購入をカバーするのに十分かどうか決定」する処理とを実行している「DBMS 120」(本願発明の「中央プロセッサ」に相当)に実行させるよう構成することは、当業者が、本願の優先日前に容易に想到し得たものである。

したがって、引用例1発明においても、本願発明と同様に、適格性のある商品の各々の価格を決定する際に、中央プロセッサによって決定する構成とすることは、当業者が本願の優先日前に容易に想到し得たものである。

また、本願発明の効果についてみても、上記構成の採用に伴って、当然に予測される程度のものに過ぎず、格別顕著なものがあるとは認められない。

第4 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、その余の請求項に係る発明について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-12 
結審通知日 2016-09-13 
審決日 2016-09-27 
出願番号 特願2013-520733(P2013-520733)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 塩田 徳彦  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 石川 正二
野崎 大進
発明の名称 記憶された値を使用して、適格性のある商品またはサービスの購入取引を実行するためのシステムと方法  
代理人 砂川 克  
代理人 堀内 美保子  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 野河 信久  
代理人 河野 直樹  
代理人 峰 隆司  
代理人 岡田 貴志  
代理人 佐藤 立志  

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