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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 取り消して特許、登録 H04N
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 取り消して特許、登録 H04N
管理番号 1347130
審判番号 不服2018-2483  
総通号数 230 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2019-02-22 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2018-02-21 
確定日 2019-01-08 
事件の表示 特願2016-151875「動画像符号化装置、動画像符号化方法、動画像復号装置、動画像復号方法、動画像符号化データ及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成28年10月27日出願公開、特開2016-187228、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2011年(平成23年)11月1日(優先権主張 平成22年12月17日)を国際出願日とする出願である特願2012-548618号の一部を、数次の分割を経て平成28年8月2日に新たな特許出願としたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。

平成28年12月15日:手続補正書の提出
平成29年 1月26日:手続補正書の提出
平成29年 8月23日:拒絶理由通知
平成29年10月27日:意見書、手続補正書の提出
平成29年11月16日:拒絶査定
平成30年 2月21日:審判請求書、手続補正書の提出
平成30年 4月24日:拒絶理由通知(当審)
平成30年 7月 6日:意見書、手続補正書の提出
平成30年11月12日:拒絶理由通知(当審)
平成30年11月16日:意見書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要
原査定(平成29年11月16日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
[理由1]
(同日出願)この出願の請求項1?4に係る発明は、それぞれ同日出願された下記の出願の請求項1?4に係る発明と同一と認められ、かつ、下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

特願2015-43049号(特許第5984984号公報)

[理由2]
(発明該当性)この出願の請求項5、6に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

第3 当審拒絶理由の概要
当審拒絶理由の概要は次のとおりである。
1.平成30年4月24日付け拒絶理由
[理由1]
(発明該当性)この出願の請求項5、6に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

[理由2]
(同日出願)この出願の請求項1?5に係る発明は、それぞれ同日出願された下記の出願の請求項1?5に係る発明と同一と認められ、かつ、下記の出願に係る発明は特許されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

特願2015-43049号(特許第5984984号公報)

2.平成30年11月12日付け拒絶理由
[理由1]
(発明該当性)この出願の請求項5、6に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。

第4 本願発明
本願の請求項1?6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明6」という。)は、平成30年11月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定される発明であり、それぞれ以下のとおりのものである。

「【請求項1】
符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックと、前記最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数とを特定し、前記最大サイズの符号化ブロックから前記階層数の上限に至るまで階層的に分割して得られる符号化ブロックの各々に適用する符号化モードを選択する符号化制御部と、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成する予測画像生成部と、
入力画像と前記イントラ予測画像またはインター予測画像との差分画像を変換して前記差分画像の圧縮データを生成する変換部と、
前記符号化ブロックの符号化モードと、前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行うことで予測画像を生成するために用いられるイントラ予測パラメータとを可変長符号化して符号化データを生成する可変長符号化部と、を備え、
前記可変長符号化部は、前記パーティションに用いられるイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションに用いられるイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを可変長符号化し、
イントラ予測を行う前記パーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、前記パーティションの左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションがそれぞれ上および左に隣接するパーティションとして選択され、
前記パーティションに用いられるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションに用いられるイントラ予測パラメータと同じであれば、前記可変長符号化部は、前記上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを可変長符号化し、
前記パーティションに用いられるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションに用いられるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記可変長符号化部は、前記パーティションに用いられるイントラ予測パラメータを可変長符号化することを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックと、前記最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数とを特定し、前記最大サイズの符号化ブロックから前記階層数の上限に至るまで階層的に分割して得られる符号化ブロックの各々に適用する符号化モードを選択し、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成し、
入力画像と前記イントラ予測画像またはインター予測画像との差分画像を変換して前記差分画像の圧縮データを生成する変換処理を行い、
前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用い、予測画像を生成するために用いられるイントラ予測パラメータと前記符号化ブロックの符号化モードとを可変長符号化して符号化データを生成し、
イントラ予測を行う前記パーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、前記パーティションの左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、
前記パーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、前記上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記パーティションのイントラ予測パラメータを符号化することを特徴とする動画像符号化方法。
【請求項3】
符号化データから符号化ブロックの最大サイズ及び前記符号化ブロックの階層数を可変長復号するとともに、前記階層数の上限に至るまで階層的に分割された符号化ブロックの符号化データを可変長復号して、圧縮データと、前記符号化ブロックの各々の符号化モードとを取得する可変長復号部と、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成する予測画像生成部と、
前記圧縮データを逆変換処理し復号予測差分信号を出力する逆変換部と、を備え、
イントラ予測を行う前記符号化ブロックのパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、前記符号化ブロックのパーティションの左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、
前記可変長復号部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、前記符号化ブロックのパーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを復号し、
前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、前記可変長復号部は、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを復号し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記可変長復号部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号することを特徴とする動画像復号装置。
【請求項4】
符号化データから符号化ブロックの最大サイズ及び前記符号化ブロックの階層数を可変長復号するとともに、前記階層数の上限に至るまで階層的に分割された符号化ブロックの符号化データを可変長復号して、圧縮データと、前記符号化ブロックの各々の符号化モードとを取得し、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成し、
前記圧縮データを逆変換処理し復号予測差分信号を出力し、
イントラ予測を行う前記符号化ブロックのパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、前記符号化ブロックのパーティションの左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、
前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを復号し、
前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを復号し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号することを特徴とする動画像復号方法。
【請求項5】
最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、前記階層数の上限に至るまで階層的に分割された複数の符号化ブロックの各々の符号化モードを含む符号化データから構成される動画像符号化データであって、
前記動画像符号化データは、前記複数の符号化ブロックの符号化データと、前記符号化ブロックの前記最大サイズ及び前記階層数が多重化され、
前記符号化データは、前記符号化ブロックの前記符号化モードを備え、前記符号化ブロックのパーティションに係る符号化データを含み、
前記符号化データは、
差分画像の圧縮データと、
前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグと、
前記イントラマージフラグが、前記パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合に、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションと、
前記イントラマージフラグが、前記パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合に、当該パーティションのイントラ予測パラメータと、を備え、
前記動画像符号化データを復号する動画像復号装置は、
前記圧縮データを逆変換処理することで復号予測差分信号を生成し、
処理対象の符号化ブロックの符号化モードがイントラ予測である場合、前記符号化ブロックにおけるパーティションの前記イントラマージフラグを復号し、
復号した前記イントラマージフラグが、処理対象のパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合、前記動画像復号装置は、前記イントラマージディレクションを復号し、前記処理対象のパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上又は左に隣接するパーティションとし、
前記動画像復号装置は、復号した前記イントラマージディレクションが特定する前記上又は左に隣接しているパーティションの一方のイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
復号した前記イントラマージフラグが、前記処理対象のパーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合、前記動画像復号装置は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号し、前記パーティションのイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
前記復号予測差分信号と前記イントラ予測画像とに基づいて復号画像を生成することを特徴とする動画像符号化データ。
【請求項6】
最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、前記階層数の上限に至るまで階層的に分割された符号化ブロックの符号化モードを特定する符号化データを含むビットストリームを記録した記録媒体であって、
前記記録媒体に記録されたビットストリームは、前記符号化ブロックの符号化データと、前記符号化ブロックの前記最大サイズ及び前記階層数が多重化され、
前記符号化データは、前記符号化ブロックの前記符号化モードを備え、前記符号化ブロックのパーティションに係る符号化データを含み、
前記符号化データは、
差分画像の圧縮データと、
前記符号化ブロックのパーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグと、
前記イントラマージフラグが、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合に、前記パーティションのイントラ予測パラメータが上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定し、隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じイントラ予測パラメータの前記パーティションに対するイントラマージディレクションと、
前記イントラマージフラグが、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合に用いられ、隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと異なるイントラ予測パラメータの前記パーティションに対するイントラ予測パラメータと、を備え、
前記記録媒体に記録されたビットストリームを復号する動画像復号装置は、
前記圧縮データを逆変換処理することで復号予測差分信号を生成し、
処理対象のパーティションを含む符号化ブロックの符号化モードがイントラ予測である場合、前記符号化ブロックにおける前記処理対象のパーティションの前記イントラマージフラグを復号し、
復号した前記イントラマージフラグが、処理対象のパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと、当該処理対象のパーティションの上または左に隣接する隣接パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合、前記動画像復号装置は、前記イントラマージディレクションを復号し、前記処理対象のパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上又は左に隣接するパーティションとし、
前記動画像復号装置は、復号した前記イントラマージディレクションが特定する前記上又は左に隣接している隣接パーティションの一方のイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
復号した前記イントラマージフラグが、前記処理対象のパーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該処理対象のパーティションの上または左に隣接する隣接パーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合、前記動画像復号装置は、前記処理対象のパーティションのイントラ予測パラメータを復号し、前記処理対象のパーティションのイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
前記復号予測差分信号と前記イントラ予測画像とに基づいて復号画像を生成する
ことを特徴とする記録媒体。」

第5 同日出願の発明
原査定及び当審拒絶理由に提示した同日出願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「同日出願発明1」?「同日出願発明5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される発明であり、それぞれ以下のとおりのものである。

「【請求項1】
符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックを階層的に分割して得られる符号化ブロックの各々に適用する符号化モードを選択する符号化制御部と、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成する予測画像生成部と、
前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用いるイントラ予測パラメータを可変長符号化して符号化データを生成する可変長符号化部と、を備え、
イントラ予測を行う前記パーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、前記可変長符号化部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、前記可変長符号化部は、前記上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記可変長符号化部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを符号化する
ことを特徴とする動画像符号化装置。
【請求項2】
符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックを階層的に分割して得られる符号化ブロックの各々に適用する符号化モードを選択し、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成し、
前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用いるイントラ予測パラメータを可変長符号化して符号化データを生成し、
イントラ予測を行う前記パーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、前記上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを生成し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記パーティションのイントラ予測パラメータを符号化する
ことを特徴とする動画像符号化方法。
【請求項3】
階層的に分割された符号化ブロックの符号化データを可変長復号して前記符号化ブロックの各々の符号化モードを取得する可変長復号部と、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成する予測画像生成部と、を備え
イントラ予測を行う前記符号化ブロックのパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、前記可変長復号部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを復号し、
前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、前記可変長復号部は、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを復号し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記可変長復号部は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号する
ことを特徴とする動画像復号装置。
【請求項4】
階層的に分割された符号化ブロックの符号化データを可変長復号して前記符号化ブロックの各々の符号化モードを取得し、
前記符号化モードに基づいて前記符号化ブロックの各々にイントラ予測またはインター予測を行うことによりイントラ予測画像またはインター予測画像を生成し、
イントラ予測を行う前記符号化ブロックのパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグを復号し、前記パーティションのイントラ予測パラメータが、上または左に隣接するパーティションのイントラ予測パラメータと同じであれば、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションを復号し、
前記パーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号する
ことを特徴とする動画像復号方法。
【請求項5】
階層的に分割された複数の符号化ブロックの各々の符号化モードを含む符号化データから構成される動画像符号化データであって、
前記符号化データは、
前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグと、
前記パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じである場合に、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションと、を備え、
前記動画像符号化データを復号する動画像復号装置は、
処理対象の符号化ブロックの符号化モードがイントラ予測である場合、前記符号化ブロックにおけるパーティションのイントラマージフラグを復号し、
当該イントラマージフラグが、処理対象のパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合、前記動画像復号装置は、前記イントラマージディレクションを復号し、
前記処理対象のパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上および左に隣接するパーティションとし、前記動画像復号装置は、前記イントラマージディレクションフラグに基づいて、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定し、
前記処理対象のパーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでなければ、前記動画像復号装置は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号する
ことを特徴とする動画像符号化データ。」

第6 判断
1.当審における平成30年4月24日付け拒絶理由の[理由1]及び同年11月12日付け拒絶理由の[理由1]について
(1)本願発明5について
ア.本願発明5
上記「第4 本願発明」に示した本願発明5を以下に再掲する。
なお、各構成の符号(A)?(E6)は、説明のために当審において付与したものであり、以下、構成A?構成E6と称する。

「【請求項5】
(A)最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、前記階層数の上限に至るまで階層的に分割された複数の符号化ブロックの各々の符号化モードを含む符号化データから構成される動画像符号化データであって、
(B)前記動画像符号化データは、前記複数の符号化ブロックの符号化データと、前記符号化ブロックの前記最大サイズ及び前記階層数が多重化され、
(C)前記符号化データは、前記符号化ブロックの前記符号化モードを備え、前記符号化ブロックのパーティションに係る符号化データを含み、
(D)前記符号化データは、
(D1)差分画像の圧縮データと、
(D2)前記符号化ブロックのパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いたイントラ予測パラメータと同じであるか否かを示すイントラマージフラグと、
(D3)前記イントラマージフラグが、前記パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合に、上および左のいずれに隣接しているパーティションのイントラ予測パラメータと同じであるかを特定するイントラマージディレクションと、
(D4)前記イントラマージフラグが、前記パーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータが、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合に、当該パーティションのイントラ予測パラメータと、を備え、
(E)前記動画像符号化データを復号する動画像復号装置は、
(E1)前記圧縮データを逆変換処理することで復号予測差分信号を生成し、
(E2)処理対象の符号化ブロックの符号化モードがイントラ予測である場合、前記符号化ブロックにおけるパーティションの前記イントラマージフラグを復号し、
(E3)復号した前記イントラマージフラグが、処理対象のパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと、当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにイントラ予測を行う際に用いられたイントラ予測パラメータと同じであることを示す場合、前記動画像復号装置は、前記イントラマージディレクションを復号し、前記処理対象のパーティションの上または左に隣接するパーティションが複数存在する場合、左上から遠ざかる方向に向かって最初のパーティションをそれぞれ上又は左に隣接するパーティションとし、
(E4)前記動画像復号装置は、復号した前記イントラマージディレクションが特定する前記上又は左に隣接しているパーティションの一方のイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
(E5)復号した前記イントラマージフラグが、前記処理対象のパーティションにおけるイントラ予測パラメータが当該パーティションの上または左に隣接するパーティションにおけるイントラ予測パラメータと同じでないことを示す場合、前記動画像復号装置は、前記パーティションのイントラ予測パラメータを復号し、前記パーティションのイントラ予測パラメータに基づいてイントラ予測画像を生成し、
(E6)前記復号予測差分信号と前記イントラ予測画像とに基づいて復号画像を生成することを特徴とする
(A)動画像符号化データ。」

イ.本願発明5の「動画像符号化データ」について
マルチメディア符号化データは、一般的に、パケット化されたビデオストリーム、オーディオストリーム、制御情報などを多重化し、特定のフォーマット(データ構造)にパッケージ化したデータストリームの形態を有している。
また、ビデオストリームのビデオ符号化データは階層構造を有しており、その階層構造は、上位層からシーケンス、ピクチャ、スライス、ブロックなどの各階層からなり、各階層の符号化の処理パラメータ及び当該ビデオ符号化データに関する情報を記述した各階層のヘッダと、スライスにおける階層のビデオ符号化データから構成されるものである。

本願発明5の「動画像符号化データ」は、上記スライスにおける階層のビデオ符号化データに対応する「複数の符号化ブロックの符号化データ」(構成A)から構成され、「複数の符号化ブロックの符号化データ」と、上記符号化の処理パラメータに含まれる「符号化ブロックの前記最大サイズ」及び「階層数」が多重化されている(構成B)。
また、「符号化データ」は、当該符号化ブロックの画像を符号化したデータである「差分画像の圧縮データ」(構成D1)と、当該符号化データの符号化の処理パラメータである「符号化モード」(構成C)、「イントラマージフラグ」(構成D2)、「イントラマージディレクション」(構成D3)及び「イントラ予測パラメータ」(構成D4)を備えている。
以上のように、本願発明5の「動画像符号化データ」は、動画像の符号化ブロックに基づく階層構造及び各階層におけるデータ構造を有するデータである。

そして、本願発明5の「動画像符号化データ」は、「動画像復号装置」(構成E)に入力することにより「動画像復号装置」において復号される。「動画像復号装置」は、「動画像符号化データ」の動画像の符号化ブロックに基づく階層構造及び各階層におけるデータ構造に配置された符号化データ及びヘッダに記述される符号化の処理パラメータを用いて復号画像を生成する処理を行う。即ち、「圧縮データ」から「復号予測差分信号」を生成する(構成E1)と共に、「イントラマージフラグ」(構成E2)及び「イントラマージディレクション」(構成E3)により規定される処理方法を使用して「イントラ予測画像」を生成し(構成E4)、あるいは「イントラ予測パラメータ」に基づいて「イントラ予測画像」を生成し(構成E5)、生成された「復号予測差分信号」及び「イントラ予測画像」に基づいて復号画像を生成する(構成E6)という復号処理が、本願発明5の「動画像符号化データ」によって実現されるものである。

ウ.「自然法則を利用したもの」について
動画像符号化/復号技術(動画像の符号化処理/動画像の復号処理に関する技術)は、動画像の情報は多くの冗長な情報を有し、且つ画像同士に強い相関関係があるという「動画像の物理的性質」を利用して、予測画像との差分画素情報を取得すること、差分画素情報を周波数成分へ変換すること等の符号化処理を行い、冗長な情報を取り除くことによって、動画像の情報を圧縮した動画像符号化データを生成し、また、その逆の復号処理により動画像符号化データから動画像の情報を生成する処理を行う技術である。

本願発明5の「動画像符号化データ」は、上記「動画像の物理的性質」を利用して生成される「差分画像の圧縮データ」(構成D1)を有するものであって、「動画像復号装置」に入力することにより、上記イに示したとおりの「動画像の物理的性質」を利用した具体的な復号処理が実現されるものである。
したがって、本願発明5の「動画像符号化データ」は、全体として「自然法則を利用したもの」に該当する。

エ.「技術的思想」について
本願発明5の「動画像符号化データ」は、上記イに示したとおり、動画像の符号化ブロックに基づく階層構造及び各階層におけるデータ構造を有するデータであり、「動画像復号装置」に入力することにより、「動画像復号装置」が入力された「動画像符号化データ」に配置された符号化データ及びヘッダに記述される符号化の処理パラメータを用いて復号画像を生成する復号処理が実現されるものである。
よって、本願発明5の「動画像符号化データ」は、情報の単なる提示に該当するものではなく、情報の提示それ自体に動画像符号化データの情報及び構造に関する技術的特徴を有するものであるから、「技術的思想」に該当する。

オ.まとめ
以上の検討により、本願発明5の「動画像符号化データ」は、特許法第2条第1項において定義されている「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当するものであるから、特許法第29条第1項柱書に規定されている「発明」に該当する。

(2)本願発明6について
本願発明6は、実質的に、本願発明5の「符号化データから構成される動画像符号化データ」を「符号化データを含むビットストリームを記録した記録媒体」としたものである。
そして、本願発明6の「ビットストリーム」は本願発明5の「動画像符号化データ」に対応するものであるから、その「ビットストリームを記録した記録媒体」は、上記「(1)本願発明5について」の判断と同様に、「発明」に該当するものである。

2.当審における平成30年4月24日付け拒絶理由の[理由2]について
(1)本願発明1について
本願発明1と同日出願発明1とを比較すると、両者は、少なくとも「符号化制御部」において各々に適用される符号化モードを選択する「符号化ブロック」に関し、本願発明1は「符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックと、前記最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数とを特定し、前記最大サイズの符号化ブロックから前記階層数の上限に至るまで階層的に分割して得られる符号化ブロック」であって、同日出願発明1は「符号化処理の処理単位となる最大サイズの符号化ブロックを階層的に分割して得られる符号化ブロック」である点において構成が相違する。

すなわち、本願発明1は、同日出願発明1が有していない、最大サイズの符号化ブロックを階層的に分割する上限である階層数を特定する構成を備えているので、本願発明1と同日出願発明1とは同一のものではない。
また、この構成が、課題解決のための具体化手段における微差であるとも認められないから、本願発明1と同日出願発明1とは実質的に同一ものでもない。

(2)本願発明2?5について
本願発明2は、少なくとも「階層的に分割して得られる符号化ブロック」に関し、同日出願発明2が有していない「前記最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数とを特定し、前記最大サイズの符号化ブロックから前記階層数の上限に至るまで」階層的に分割するという構成を備えている。
本願発明3は、少なくとも「階層的に分割された符号化ブロック」に関し、同日出願発明3が有していない「符号化データから符号化ブロックの最大サイズ及び前記符号化ブロックの階層数を可変長復号するとともに、前記階層数の上限に至るまで」階層的に分割されるという構成を備えている。
本願発明4は、少なくとも「階層的に分割された符号化ブロック」に関し、同日出願発明4が有していない「符号化データから符号化ブロックの最大サイズ及び前記符号化ブロックの階層数を可変長復号するとともに、前記階層数の上限に至るまで」階層的に分割されるという構成を備えている。
本願発明5は、少なくとも「階層的に分割された複数の符号化ブロック」に関し、同日出願発明5が有していない「最大サイズの符号化ブロックから階層的に分割される階層数が特定され、前記階層数の上限に至るまで」階層的に分割されるという構成を備えている。
本願発明2?5は、それぞれ同日出願発明2?5が有していない構成を備えているから、本願発明2?5と同日出願発明2?5とは同一のものではない。
また、それぞれの構成が、課題解決のための具体化手段における微差であるとも認められないから、本願発明2?5と同日出願発明2?5とは実質的に同一ものでもない。

第7 原査定についての判断
原査定の拒絶の理由の[理由1]については、上記「第6 判断」の「2.当審における平成30年4月24日付け拒絶理由の[理由2]について」に示した判断と同様に、本願の請求項1?4に係る発明は、同日出願の請求項1?4に係る発明と同一ではない。
また、原査定の拒絶の理由の[理由2]については、上記「第6 判断」の「1.当審における平成30年4月24日付け拒絶理由の[理由1]及び同年11月12日付け拒絶理由の[理由1]について」に示した判断と同様に、本願の請求項5、6に記載されたものは、「発明」に該当する。
したがって、原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり、本願は、原査定の理由によって拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2018-12-17 
出願番号 特願2016-151875(P2016-151875)
審決分類 P 1 8・ 1- WY (H04N)
P 1 8・ 4- WY (H04N)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岩井 健二  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 坂東 大五郎
清水 正一
発明の名称 動画像符号化装置、動画像符号化方法、動画像復号装置、動画像復号方法、動画像符号化データ及び記録媒体  
代理人 田澤 英昭  
代理人 辻岡 将昭  
代理人 濱田 初音  
代理人 中島 成  
代理人 井上 和真  
代理人 坂元 辰哉  

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