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審決分類 |
審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q |
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管理番号 | 1370554 |
審判番号 | 不服2019-9388 |
総通号数 | 255 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2021-03-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2019-07-12 |
確定日 | 2021-01-20 |
事件の表示 | 特願2018-217717「アンケート方法及びアンケート装置」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年 6月 4日出願公開、特開2020- 86729〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成30年11月20日を出願日とする出願であって、手続の概要は以下のとおりである。 拒絶理由通知 :平成30年12月14日(起案日) 手続補正 :平成31年 3月13日 拒絶査定 :平成31年 3月20日(起案日) 拒絶査定不服審判請求 :令和 元年 7月12日 手続補正 :令和 元年 7月12日 第2 原査定の理由 原査定の理由は、概略以下のとおりである。 (発明該当性)この出願の請求項に記載されたものは、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 第3 本願特許請求の範囲の記載及び明細書の記載 (3-1)特許請求の範囲 本願の請求項1には、令和元年7月12日付け手続補正書のとおり、以下のとおり記載されている。((A)ないし(O)は当審で付与した。) 「 【請求項1】 (A)ホストとゲストとの間のコミュニケーションに用いられ以下の手段を有するアンケート装置; (B)(手段1)表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信から選ばれる、ホストが設定した質問をゲストに表示する手段、 (C)(手段2)パネル、画像表示機器、あるいはゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトから選ばれる、ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段、 (D)(手段3)的当てゲーム装置、あるいはネットワークを介して提供される的当てゲームシステムから選ばれる、ゲストが的当てゲームに参加する手段、 (E)(手段4)カード、札、あるいはネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステムから選ばれる、ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段、 (F)(手段5)紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品、あるいはゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステムから選ばれる、ゲストが質問への回答をホストに与える手段、 (G)(手段6)パネル、掲示板、画像表示機器、あるいはゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システムから選ばれる、ホストが回答を公開する手段、 を用いることを特徴とし、さらに、 (H)以下の工程を有するホストとゲストとの間のコミュニケーションからなり、以下の工程において工程2は工程1と並行して或いは工程1の後に行い、工程1および工程2が終了すると工程3を行い、工程3の後に工程4を行い、工程4の後に工程5を行い、工程5の後に工程6を行うアンケート方法; (I)(工程1)上記手段1を用いてホストが設定した質問をゲストに表示する工程、 (J)(工程2)上記手段2を用いてホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する工程、 (K)(工程3)上記手段3を用いてゲストが的当てゲームに参加する工程、 (L)(工程4)上記手段4を用いてゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される工程、 (M)(工程5)上記手段5を用いてゲストが質問への回答をホストに与える工程、 (N)(工程6)上記手段6を用いてホストが回答を公開する工程、 (O)からなる、アンケートシステム。」 (3-2)解決しようとする課題・効果等 上記請求項1に係る構成が解決しようとする課題及び当該構成による効果等について、以下のとおり記載されている。 「【技術分野】 【0001】 本発明はアンケート方法及びアンケート装置に関する。本発明のアンケート方法及びアンケート装置は、学園祭や見本市などの現実のアンケートにも、ネットワーク上のデータ送信として行われるアンケートにも適用可能な、アンケート方法及びアンケート装置である。 【背景技術】 【0002】 アンケートは、市場調査、商品宣伝、世論調査のための手法として長年用いられてきた。アンケートの基本的課題は、できるだけ幅広いカテゴリーの回答者からできるだけ多くの回答を得ることである。この目標を達成するために従来から以下の特許文献1?6に記載されているように様々な工夫がなされている。」 「【0010】 このように、アンケートにおける回答に娯楽性を付加し、回答に報酬を与えることによって多様で多数の回答者をアンケートに参加させる様々なアンケート方法・装置が提案されている。 【0011】 これらのアンケート方法・装置は、アンケートの設問が例えば特定の商品に対する意見(買いたい/買いたくない、好き/嫌い)や回答者の属性(性別、年齢、職業、居住地)のように比較的単純である場合には有効である。回答者にとって、質問に正直に答える労力に対して回答中あるいは回答後に得られる報酬が十分に大きいため、回答意欲が高まる。 【0012】 しかしながら、アンケートの設問が、社会問題(貧困、環境汚染、教育、自然災害、表現の自由など)への意見やコミュニティ(企業、町、学校)の問題点の指摘のような、回答者が熟考を必要とするか回答者が普段は考えることを避けている題材(本明細書ではこれ以降このような質問を「難しい質問」と呼ぶ。)である場合には、これらのアンケート方法・装置では回答数の大幅な増加は期待できない。アンケートにおいて回答者には回答しないという選択肢がある。このような設問を示された回答者にとって、質問に正直に答える労力に対して回答中あるいは回答後に得られる報酬はあまりに小さく、回答意欲は高まらない。回答者が得られたとしても、回答者の多くが小さな報酬に見合う回答で構わないと判断して、必ずしも本心ではない、「好きだ」「嫌いだ」「知らない」のような極度に大まかな表現で「不真面目に」回答する傾向がある。この場合には回答の信頼性は非常に低くなる。 【0013】 このように、難しい質問に対して様々な階層や世代の人々が社会問題に対して現実にどのような知識や意見を得ているのかを正確に把握しようとする場合、あるいは、社会問題に関する啓蒙を期待する場合には、従来のアンケート方法・装置では回答の数と信頼性を両立することが極めて難しい。政府や地方自治体などが難しい質問に対して様々な階層や世代の人々がどのような知識や意見を持っているのかを把握しようと試みることがあるが、従来のアンケートシステムでは回答の数と信頼性を両立することが難しく、しかもアンケートコストも大きくなるという問題も生じる。 【発明の概要】 【発明が解決しようとする課題】 【0014】 このように難しい質問を扱うためには現状のアンケートシステムには問題がある。そこで本発明者は、回答者にとって回答に伴うストレスが比較的大きい設問であっても、多くの信頼性の高い回答数が得られるアンケート方法・装置を求めて鋭意研究した。 【課題を解決するための手段】 【0015】 本発明者は、回答者ごとに特別な報酬を与えることなく、アンケート回答者が責任感や達成感を抱いて誠実な回答を作成することのできる新規なアンケート方法・装置を見出した。本発明のアンケート方法・装置では、驚くべきことに、回答者ごとに金銭や物品に相当する報酬を与える工程・仕組みは存在しない。この点は、アンケートシステムにおける誠実な回答には報酬によるインセンティブが必要であるという従来の知識に反しており、既成概念を覆すアイデアと言える。」 「【発明の効果】 【0025】 本発明は、アンケート参加者が特定の環境下で行われる的当てゲームに参加することによって抱く3種の心理:「責任」「射幸」「僥倖」を利用した新規で効果的なアンケート方法およびアンケート装置である。本発明は、回答者に回答の見返りとして個人的な報酬(金銭、品物、クーポンなど)を与えずにアンケートを行うにも関わらず、多数の回答者から誠実で多様な回答を得ることができる。 【0026】 本発明のアンケート方法及びアンケート装置は心理法則に基づいた技術であって、再現性の高いアンケート効果をもたらす。」 「【0034】 アンケートの開始に当たる工程1でゲストが質問の全体像を把握することにより、ゲストに「責任」心理が生じる。従来のアンケート方法では質問の表示に先立って報酬がゲストに予告されることが多い。しかしこのような従来方法ではゲストの心理は「責任」より「利得」に傾き、特に難しい質問を扱うアンケートで誠実で詳しい回答が得られないという問題がある。本発明のアンケート方法は、難しい質問に対するゲストの「責任」心理を誘発する上で効果的である。」 「【0037】 工程2でもゲストに「責任」心理が生じる。従来のアンケート方法は回答の匿名性と秘密性を強調することが多い。しかしこのような従来方法ではゲストの心理は「責任」より「回避」や「怠惰」に傾き、特に難しい質問を扱うアンケートで誠実で詳しい回答が得られないという問題がある。本発明のアンケート方法は、難しい質問に対するゲストの「責任」心理を強く誘発する上で効果的である。」 「【0041】 的当てゲームのプレーヤーとして、ゲストは、努力や偶然によって自分が歓迎する質問を引き当てることができるという期待(「僥倖心」)を持ちながら、狙った的に命中させたいという野生的な情熱(「射幸心」)に駆られる。人間にとって多くの場合に「僥倖心」や「射幸心」は、他の不利な心理を圧倒する。このため本発明のアンケート方法では、工程3でゲストの心理から工程1と工程2で抱いた責任心理は一時的に弱くなり、ゲストは都合の良い質問を引き当てることができると期待して、好みの的を当てようと集中する。またそのような的当てゲームは強力な集客力を有する。工程3の存在は本発明のアンケート方法で多数のアンケート回答が得られる要因の一つである。」 「【0044】 すなわち、本発明のアンケート方法では、ゲストはアンケートの質問を気にすることなく純粋な娯楽として的当てゲームに集中することができるため、ゲストが回答拒否するきっかけが失われる。言い換えれば、本発明のアンケート方法でゲストは射幸心に押されて無意識のうちに難しい質問への回答者へと育つことになる。」 「【0046】 本発明の方法では、興味深いことに、工程4でゲストが配布された質問に不満を抱く頻度が極めて低いことが確認されている。工程3の的当てゲームに参加したゲストは、実際に与えられた質問の内容に関わらず、質問が配布されたことを「僥倖」と認識する傾向にある。ゲストにとって配布された質問は決してゲーム参加の後に押し付けられたものでなく、自らの努力と運による「獲得物」として認識されていると推測される。この現象は、難しい質問を与えるアンケートを成功させるために極めて有利に働く。」 「【0049】 本発明の方法では、驚くべきことに、工程5の途中で回答を放棄する頻度が極めて低いことが確認されている。これは以下のような心理効果によると思われる。工程3の的当てゲームが終了してしばらく経つとゲストの心理で「射幸心」は消滅するが「僥倖心」は残る。その一方でゲストはアンケートに参加していることを再び意識してその心理に「責任」が回復する。さらに実際の質問を検討するうちに、せっかく自ら引き当てた質問なのだから皆に読んでもらう価値のある知的で面白い回答を作りたくなる。 【0050】 したがって、本発明のアンケート方法を用いれば、回答時間が十分に与えられればゲストは難しい質問に進んで回答を作成し、誠実な回答をホストに与えることができる。 【0051】 本発明で見られる上述の心理現象は、決して特に誠実な市民だけに起こる特別な現象ではない。発明者は多くの心理テストを経てこのような現象がゲストの階層や世代に関わらず普遍的に生じることをすでに確認している。この意味で、本発明のアンケート方法は人間の一般的な反応(心理バイアス)を利用した、効果の再現性が確約された技術である。」 (3-3)実施の形態[アンケート方法] 上記請求項1に係る具体的な構成(アンケート方法)として、以下のとおりの記載がある。 「【0028】 [アンケート方法] 本発明のアンケート方法はホストとゲストとの間のコミュニケーションからなる。本発明のホストは、アンケートを主催する機関、アンケートを実行する人物、あるいはアンケートを制御する装置のいずれをも指し、アンケートが進行する場に実在する人物である必要はない。本発明のゲストは、アンケートの参加を試みる人、アンケートの回答者である。このゲストはアンケートが進行する場に実在する人物である必要はなく、ネットワーク上で端末を介してアンケートの参加を試み、アンケートに回答することができる。本発明のアンケート方法の各工程について以下に詳述する。 【0029】 (工程1) まず、ホストは、アンケート会場を訪れたゲストに対して、アンケートの質問を表示する。上記アンケート会場は、室内外の実際の場所であっても、ネットワーク上のサイトであってもよい。ゲストは、そのような会場を訪れた実際の人物であっても、アンケートサイトにアクセスしたゲストのネットワーク端末であってもよい。 【0030】 工程1の表示は文字、絵、映像などを用いた視覚的な表示であっても、さらに音声を伴うものであってもよい。またこの表示は現実の構造物(パネル、画像表示機器)を介してもよく、ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい。 【0031】 工程1でゲストが設問の全てを理解してあらかじめ回答を作成し終わる必要はない。工程1の機能は、ゲストにアンケートの質問の全体像を把握させることにある。したがって、工程1では、ゲストを表示の場所(現実の構造物あるいはネットワーク上のサイト)に誘導し、ゲストをそこに一定時間だけ留めることで足りる。ゲストが留まる時間は、質問の数や内容によって適度に設定される。」 「【0035】 (工程2) 工程2は工程1と並行して、あるいは、工程1の後に行われる。工程2では、ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する。この告知は一般的には文字、絵、映像などを用いた視覚的な手段で行われるが、さらに音声を伴うものであってもよい。また回答の公開は現実の構造物(パネル、画像表示機器)を介してもよく、ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい。 【0036】 工程2では、上の告知と一緒にゲストにこれまでの回答を閲覧させる動作は必須ではない。工程2の機能は、回答が公開されることを前提としてゲストに回答させることにある。」 「【0038】 (工程3) 工程1および工程2が終了すると、工程3でゲストが的当てゲームに参加する。工程3の的当てゲームは、ダーツ、弓、ボーガン、パチンコ、輪投げなどの射的系ゲームだけでなく、バスケット、野球、サッカー、テニス、卓球、ゴルフ玉入れなどの球技を使いボール(玉)を複数の区画(ゴール、箱、カゴなど)の中の狙った区画(ゴール、箱、カゴなど)に命中させるスポーツ系ゲームも含む。工程3の的当てゲームでは、それぞれの的が質問と紐付けされている。ゲストの的当て結果によってゲストが回答する質問が決定する。 【0039】 工程3の的当てゲームには、室内外で行われる実際の競技、データ入力端末とホストを含むネットワークゲーム上でプレイされるゲームのいずれもが含まれる。 【0040】 ただし、本発明で用いる的当てゲームは、プレーヤーの的を狙う技能や意欲が結果に有意に影響するとプレーヤーが期待できるゲームに限られる。高速で的が回転するルーレット、ランダムに番号や色のついたカードやボールを取り出すくじ引きのようなゲームは本発明では好ましくない。難しい質問が用意されている場合にこのような偶然と確率が支配するゲームに参加するよう求められると、ゲストは自分の希望や技、努力に関係なく中でも難しい質問が割り当てられるという不安を抱く。その結果、ゲストの回答意欲が低下する恐れがある。 【0041】 的当てゲームのプレーヤーとして、ゲストは、努力や偶然によって自分が歓迎する質問を引き当てることができるという期待(「僥倖心」)を持ちながら、狙った的に命中させたいという野生的な情熱(「射幸心」)に駆られる。人間にとって多くの場合に「僥倖心」や「射幸心」は、他の不利な心理を圧倒する。このため本発明のアンケート方法では、工程3でゲストの心理から工程1と工程2で抱いた責任心理は一時的に弱くなり、ゲストは都合の良い質問を引き当てることができると期待して、好みの的を当てようと集中する。またそのような的当てゲームは強力な集客力を有する。工程3の存在は本発明のアンケート方法で多数のアンケート回答が得られる要因の一つである。 【0042】 質問ごとに色分け分割した的を狙うダーツゲームは、工程3で用いる的当てゲームとして好ましい。このようなダーツゲームは仕組みが簡単で娯楽性が高く、ゲストに歓迎される。 【0043】 ただし、本発明ではゲストは工程3に先立つ工程1と工程2で、自分にとって最も都合の良い質問を慎重に判断する機会を与えられるとは限らない。このため工程3でゲストは標的の色や位置、番号に対するゲストの嗜好のような質問の内容とは無関係の条件で狙う標的を決める可能性がある。本発明の方法におけるこのような可能性は、難しい質問を扱う場合には有利な結果を生じる。」 「【0045】 (工程4) 工程3の後の工程4で、ゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される。ゲストへの質問の配布は、カードや札などの現実の物品を介して行ってもよく、ネットワーク上でゲストの端末への質問データの送信であってもよい。」 「【0048】 (工程5) 工程4の後に、工程5でゲストが質問への回答をホストに与える。工程5は、ゲストが紙やボードに記入した回答をホスト側に渡す現実の動作、ゲストの口頭での回答、オンライン上の回答入力から回答送信までの動作などのいずれの形態をとっても良い。」 「【0052】 (工程6) 工程5の後に、ホストが上記工程5で得られた回答を公開する。公開の対象は、研究者、専門家、ゲスト及び/又は第三者のいずれであってもよく、アンケートごとに選択される。公開の手段は、現実の構造物(パネル、画像表示機器)を介してもよく、ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい。 【0053】 本発明では、さらに(手段7)収集した回答を用いたデータベースを設けることができる。上述のように本発明のアンケート方法では多数のゲストから誠実な回答を得ることができる。得られた回答はデータベースの形式で保存、蓄積される。データベースの形態に制限はない。カード、書籍、パンフレットのような印刷物でもよく、情報端末でアクセスできるデータベースでも良い。データベースを用いて、回答者の属性や世代と回答内容とを分析することができる。得られた分析結果をマーケティングや政策、啓蒙活動などに広く活用することができる。」 (3-4)実施の形態[アンケート装置] 上記請求項1に係る具体的な構成(アンケート装置)として、以下のとおりの記載がある。 「【0054】 [アンケート装置] 本発明のアンケート装置はホストとゲストとの間のコミュニケーションに用いられ以下の手段から成る。本発明のアンケート装置は上述のアンケート方法の各工程で用いられる手段として好適である。ホストとゲストの定義は上述した通りである。 【0055】 (手段1) 手段1は、ホストが設定した質問をゲストに表示する手段である。このような表示手段は、室内外に設置したパネルやスクリーンなどの実際の表示機能を有する構造物であってもよく、ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信による情報表示であってもよい。 【0056】 例えば、アンケートで国連開発計画(UNDP)で選択された17個の持続可能な開発目標(SDGs)に対する知識や質問を求める場合には、17個の目標をUNDPが定めるデザインで表示する。このデザインは視認性に優れるので、学園祭や見本市でアンケートを行う場合には、上記デザインを表示したパネルを設置すれば、集客も期待できる。手段1として動画ディスプレイを用い、解説者の映像や音声を加えることもできる。」 「【0058】 (手段2) 手段2は、ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段である。この告知は一般的には文字、絵、映像などを用いた視覚的情報を提供する手段であるが、さらに音声情報を提供する手段でも良い。このような告知手段は現実の構造物(パネル、画像表示機器)であってもよく、ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい。また回答の公開も、現実の構造物(パネル、画像表示機器)を介してもよく、ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい。手段2として動画ディスプレイを用い、解説者の映像や音声を加えることもできる。」 「【0059】 (手段3) 手段3は、ゲストが的当てゲームに参加する手段である。手段3は具体的には、全てのゲストが同じ条件で参加できる、室内外に設置された実際の的当てゲーム装置あるいはネットワークを介して提供される的当てゲームシステムである。このような的当てゲームは、例えば、ダーツ、弓、ボーガン、パチンコ、輪投げなどの射的系ゲーム、バスケット、野球、サッカー、テニス、卓球、ゴルフ玉入れなどの球技を使いボール(玉)を複数の区画(ゴール、箱、カゴなど)の中の狙った区画(ゴール、箱、カゴなど)に命中させるスポーツ系ゲームである。手段3は、内外に設置された実際の的当てゲーム装置であっても、ネットワーク上の的当てゲームシステムであってもよい。 【0060】 上述の通り、的当てゲームとしては、プレーヤーの的を狙う技能や意欲が結果に有意に影響するとプレーヤーが期待できるゲームに限られる。高速で的が回転するルーレット、ランダムに番号や色のついたカードやボールを取り出すくじ引きのようなゲームは本発明では好ましくない。 【0061】 質問ごとに色分けされた的を狙うダーツゲームは娯楽性が高く、手段3として好ましい。図2に色分けした的の例を示す。」 「【0062】 (手段4) 手段4は、ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段である。このような手段4は、カードや札などの現実の物品でもよく、ネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステムであってもよい。 【0063】 アンケートの回答をデータベース化し分析する場合には、質問でゲストの属性(年齢、性別、職業、居住地など)を求めることが好ましい。 【0064】 学園祭や見本市で質問を配布する場合には、質問と解答欄が設けられた質問・回答カードは手段4として便利である。図3に、SDGsの(1)への意見を記入するための質問・回答カードの例を示す。ただし紙面では白黒表示されている。」 「【0065】 (手段5) 手段5は、ゲストが質問への回答をホストに与える手段である。工程5は、紙やボードなどと筆記用具を組み合わせた現実の物品であってもよく、文字列、映像、音声などで記録されたゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステムであってもよい。 【0066】 学園祭や見本市で回答を収集する場合には、質問と解答欄が設けられた質問・回答カードは手段5として便利である。図4に、ゲストの記入が終わった質問・回答カードの例を示す。ただし紙面では白黒表示されている。」 「【0067】 (手段6) 手段6は、ホストが回答を公開する手段である。手段6は現実の構造物(パネル、掲示板、画像表示機器)であってもよく、ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システムであってもよい。学園祭や見本市で回答を公開する場合には、ゲストが記入し終わった質問・回答カードを順次貼り付けた掲示板が好ましい。このような掲示板の一部を図5に示す。この掲示板にはあらかじめサンプルとして未記入の質問・回答カードを貼り付けることができる。このような回答カードと掲示板のセットは、回答後のゲストの達成感を高め、しかも集客を促すことができる。」 「【0068】 本発明では、さらに(手段7)収集した回答を用いてデータベースを設けることができる。上述のように本発明のアンケート装置を使って多数のゲストから誠実な回答を得ることができる。得られた回答はデータベースの形式で保存、蓄積される。データベースの形態に制限はない。カード、書籍、パンフレットのような印刷物でもよく、情報端末でアクセスできるデータベースでも良い。データベースを用いて、回答者の属性や世代と回答内容とを分析することができる。得られた分析結果をマーケティングや政策、啓蒙活動などに広く活用することができる。」 (3-5)実施例[モデル実験] 「【0069】 [実施例1] (モデル実験) 【0070】 本発明のアンケート方法を小規模なモデル実験として実行した。アンケートに関する予備知識のない社員20名をゲストとして選んだ。ホスト役の社員が会議室にゲスト全員を集め、アンケートの仕組みを簡単に説明した。ゲストのほとんどが不思議そうな顔をしていたが、すぐに以下の順序でアンケートを行った。」 「【0071】 (工程1)ホスト役の社員があらかじめ用意した図1と同様のSDGs掲示板(手段1)の前にゲストを集め、SDGsについて1分ほどかけて簡単な解説をした。」 「【0072】 (工程2)次に、ゲストを「あなたの回答を集めて横のホワイトボードに貼り付けます。」という文を表示したもう一枚の掲示板(手段2)の前に誘導し、ホスト役の社員がこの文を読み上げた。さらにホスト役の社員が回答する・しないは自由であること、会議室の机は30分間自由に使えることをゲストに告げた。」 「【0073】 (工程3)ホスト役の社員がゲストを図3と同様の的と磁石式ダーツからなるダーツゲーム装置(手段3)の前に集め、ゲストの前で的当てを3回やって見せた。そしてゲストにダーツゲーム参加とアンケート回答を募った。次々に希望者が現れ、途切れることなくダーツゲームが進み、約4分間で20人のゲスト全員がダーツゲームに参加した。」 「【0074】 (工程4)ゲストは的当てゲームを終えると図3と同様のハガキ大の質問・回答カード(手段4)をホスト役の社員から受け取った。」 「【0075】 (工程5)ゲストは記入済みの質問・回答カード(手段5)をホスト役の社員に手渡した。工程4の終了から15分後に、全てのゲストから記入済みの質問・回答カードが回収された。」 「【0076】 (工程6)ホスト役の社員が記入済みの質問・回答カードをもう一枚の掲示板に貼り付けた(手段6)ところ、ほぼ全てのSDGsに対して回答が得られていた。掲示板を眺めて談笑するゲストが見られた。」 「【0077】 (工程7)掲示板に貼られた質問・カードをサンプルデータベース(手段7)として保存した。」 第4 当審の判断 1 特許法第29条第1項柱書きでは、「産業上利用することができる発明をした者は,・・・その発明について特許を受けることができる。」と規定されており、同法第2条第1項では、「この法律で「発明」とは,自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」と定義づけられている。つまり、ある発明が上記のように定義された特許法上の「発明」であると認められるためには、その発明は「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当していなければならない。自然法則以外の法則(例えば、経済法則)、人為的な取り決めにあたったり、または、それらのみを利用している方法の発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しているとはいえない。 そして、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項は、特許請求の範囲の各請求項に記載されているところ、上記請求項に記載された特許を受けようとする発明が、そこに何かしらの技術的思想が提示されているとしても、その技術的意義に照らし、全体として考察した結果、その課題解決にあたって、専ら、人の精神活動、意思決定、抽象的な概念や人為的な取り決めそれ自体に向けられ、自然法則を利用したものといえない場合には、特許法第2条第1項所定の「発明」に該当するとはいえない。 この観点から以下検討する。 2 本願発明の技術的意義について (1)本願発明の技術的意義について (1-1)課題・効果等 上記第3(3-1)「解決しようとする課題・効果等」の記載によれば、本願発明の課題等は以下のとおりであることがみてとれる。 (あ)本願発明以前のアンケート方法(システム)では、「できるだけ幅広いカテゴリーの回答者からできるだけ多くの回答を得る」、「(という)目標を達成するため」(【0002】)、「アンケートにおける回答に娯楽性を付加し、回答に報酬を与えることによって多様で多数の回答者をアンケートに参加させる」ことが提案されていた。(【0010】) (い)本願発明では「回答者ごとに特別な報酬を与えることなく、アンケート回答者が責任感や達成感を抱いて誠実な回答を作成することのできる新規なアンケート方法・装置を見出した」。(【0015】) (う)本願発明は「アンケート参加者が特定の環境下で行われる的当てゲームに参加することによって抱く3種の心理:「責任」「射幸」「僥倖」を利用した新規で効果的なアンケート方法」(【0025】)であって、「心理法則に基づいた技術であって、再現性の高いアンケート効果をもたらす」(【0026】)ものである。 (え)「工程1でゲストが質問の全体像を把握することにより、ゲストに「責任」心理が生じ」(【0034】)、「工程2でもゲストに「責任」心理が生じ」(【0037】)、 (お)「的当てゲームのプレーヤーとして、ゲストは、努力や偶然によって自分が歓迎する質問を引き当てることができるという期待(「僥倖心」)を持ちながら、狙った的に命中させたいという野生的な情熱(「射幸心」)に駆られ」(【0041】)、「本発明のアンケート方法でゲストは射幸心に押されて無意識のうちに難しい質問への回答者へと育つ」。(【0044】) (か)「本発明のアンケート方法は人間の一般的な反応(心理バイアス)を利用した、効果の再現性が確約された技術である」。(【0051】) これらの記載からみて、本願発明は、「アンケートシステムにおいて、(A)ないし(O)の構成を採用することにより、回答者(ゲスト)が責任感や僥倖心を惹起することにより、報酬を与えずとも難しい質問に対して誠実な回答を得るという課題を達成しようとする」ものであり、アンケート参加者が特定の環境下で行われる的当てゲームに参加することによって抱く心理を利用した、心理的法則に基づくものである。 (1-2)請求項の記載及び明細書から導き出せる解決手段 特許請求の範囲及び明細書の記載によれば、本願発明は、以下のとおり理解できる。 (ア)構成(O)には「からなる、アンケートシステム」と記載されているから、本願発明は「アンケートシステム」の発明であって、当該アンケートシステムは、構成(O)以前に記載された特定事項からなるアンケートシステムである。 (イ)構成(A)には、「ホストとゲストとの間のコミュニケーションに用いられ以下の手段を有するアンケート装置」と記載されており、以下、構成(B)?構成(G)にて(手段1)?(手段6)が具体的に特定されているから、構成(B)?構成(G)を有するアンケート装置の構成が特定されている。 (ウ)構成(H)には「以下の工程を有するホストとゲストとの間のコミュニケーションからなり・・・アンケート方法」と記載されており、構成(I)?構成(N)には(工程1)?(工程6)が具体的に特定されているから、構成(I)?構成(N)の工程からなるアンケート方法の構成が特定されている。 そして、構成(H)の「以下の工程において工程2は工程1と並行して或いは工程1の後に行い、工程1および工程2が終了すると工程3を行い、工程3の後に工程4を行い、工程4の後に工程5を行い、工程5の後に工程6を行う」の記載にて、各工程の処理順序が特定されている。 (エ)上記(ア)?(ウ)の理解を総合すると、本願発明は、構成(B)?構成(G)を有するアンケート装置及び構成(I)?構成(N)の工程からなるアンケート方法とからなるアンケートシステムであって、各工程の処理は、構成(H)に特定される順に行われるアンケートシステムであるといえる。 (オ)構成(B)及び構成(I)には、 「(B)(手段1)表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信から選ばれる、ホストが設定した質問をゲストに表示する手段、」 「(I)(工程1)上記手段1を用いてホストが設定した質問をゲストに表示する工程、」 と記載されている。 構成(B)では、「ホストが設定した質問をゲストに表示する手段」は、「表示機能を有するパネル」、「スクリーン」、「ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信」から選択されるものであることが特定されていると捉えることができる。 このうち、「ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信」について、発明の詳細な説明を参酌すると、【0055】の「ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信による情報表示であってもよい」などの記載からみて、ホスト(サーバ)とゲスト(端末)とを用いて、これらをネットワークを介して接続し、ホストとゲストとがそれぞれデータ送(受)信(コミュニケーション)を行うことで、「ホストが設定した質問をゲストに表示」する構成を特定していると捉えることができる。 してみると、「表示機能を有するパネル」、「スクリーン」、「ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信」は、いずれも、「ホストが設定した質問をゲストに表示する手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(B)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ホストが設定した質問をゲストに表示する手段」であるといえる。 そして、構成(I)の「(工程1)上記手段1を用いてホストが設定した質問をゲストに表示する工程」は、「上記手段1」が「ホストが設定した質問をゲストに表示する手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ホストが設定した質問をゲストに表示する手段を用いてホストが設定した質問をゲストに表示する工程」と読み変えることができる。 (カ)構成(C)及び構成(J)には、 「(C)(手段2)パネル、画像表示機器、あるいはゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトから選ばれる、ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段、」 「(I)(工程2)上記手段2を用いてホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する工程、」 と記載されている。 構成(C)では、「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段」は、「パネル」、「画像表示機器」、「ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト」から選択されるものであることが特定されているといえる。 このうち、「ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト」について、発明の詳細な説明の【0058】の「ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトであってもよい」の記載からみて、ゲストが端末などを用いてアクセスするネットワーク上のサイト(例えばホームページのようなもの)であることが理解でき、当該サイトを用いて、「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する」構成を特定していると捉えることができる。 してみると、「パネル」、「画像表示機器」、「ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト」は、いずれも、「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(C)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段」であるといえる。 そして、構成(J)の「(工程2)上記手段2を用いてホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する工程」は、「上記手段2」が「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段を用いてホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する工程」と読み変えることができる。 (キ)構成(D)及び構成(K)には、 「(D)(手段3)的当てゲーム装置、あるいはネットワークを介して提供される的当てゲームシステムから選ばれる、ゲストが的当てゲームに参加する手段、」 「(K)(工程3)上記手段3を用いてゲストが的当てゲームに参加する工程、」 と記載されている。 構成(D)では、「ゲストが的当てゲームに参加する手段」は、「的当てゲーム装置」、「ネットワークを介して提供される的当てゲームシステム」から選択されるものであることが特定されていると捉えることができる。 ここで、「的当てゲーム」の実施の形態を見ると、発明の詳細な説明の【0059】には「このような的当てゲームは、例えば、ダーツ、弓、ボーガン、パチンコ、輪投げなどの射的系ゲーム、バスケット、野球、サッカー、テニス、卓球、ゴルフ玉入れなどの球技を使いボール(玉)を複数の区画(ゴール、箱、カゴなど)の中の狙った区画(ゴール、箱、カゴなど)に命中させるスポーツ系ゲームである。手段3は、内外に設置された実際の的当てゲーム装置であっても、ネットワーク上の的当てゲームシステムであってもよい。」との記載がある。 すなわち、的当てゲームの具体例としてあげられる「ダーツ、弓、ボーガン、パチンコ、輪投げなどの射的系ゲーム」、「バスケット、野球、サッカー、テニス、卓球、ゴルフ玉入れなどの球技を使いボール(玉)を複数の区画(ゴール、箱、カゴなど)の中の狙った区画(ゴール、箱、カゴなど)に命中させるスポーツ系ゲーム」は、何らかの狙った区画(枠)に、ダーツやボールのようなものを当てる(あるいは入れる)ゲームとして慣用手段であり、これを装置化したものを「的当てゲーム装置」、ネットワークゲームとしたものを「ネットワークを介して提供される的当てゲームシステム」と称しているものと捉えることができる。 しかし、これらの「的当てゲーム装置」、「ネットワークを介して提供される的当てゲームシステム」は、いずれも、「ゲストが的当てゲームに参加する手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(D)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ゲストが的当てゲームに参加する手段」であるといえる。 そして、構成(K)の「(工程3)上記手段3を用いてゲストが的当てゲームに参加する工程」は、「上記手段3」が「ゲストが的当てゲームに参加する手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ゲストが的当てゲームに参加する手段を用いてゲストが的当てゲームに参加する工程」と読み変えることができる。 (ク)構成(E)及び構成(L)には、 「(E)(手段4)カード、札、あるいはネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステムから選ばれる、ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段、」 「(L)(工程4)上記手段4を用いてゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される工程、」 と記載されている。 構成(E)では、「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」は、「カード」、「札」、「ネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム」から選択されるものであることが特定されていると捉えることができる。 ここで、「カード」、「札」、「ネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム」は、いずれも、「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」として、慣用手段であるから、「カード」、「札」、「ネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム」は、いずれも、「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(E)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」であるといえる。 そして、構成(L)の「(工程4)上記手段4を用いてゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される工程」は、「上記手段4」が「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段を用いてゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される工程」と読み変えることができる。 (ケ)構成(F)及び構成(M)には、 「(F)(手段5)紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品、あるいはゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステムから選ばれる、ゲストが質問への回答をホストに与える手段、」 「(M)(工程5)上記手段5を用いてゲストが質問への回答をホストに与える工程、」 と記載されている。 構成(F)では、「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」は、「紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品」、「ゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム」から選択されるものであることが特定されていると捉えることができる。 ここで、「紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品」、「ゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム」は、いずれも、「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」として、慣用手段であるから、「紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品」、「ゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム」は、いずれも、「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(F)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」であるといえる。 そして、構成(M)の「(工程5)上記手段5を用いてゲストが質問への回答をホストに与える工程」は、「上記手段5」が「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ゲストが質問への回答をホストに与える手段を用いてゲストが質問への回答をホストに与える工程」と読み変えることができる。 (コ)構成(G)及び構成(N)には、 「(G)(手段6)パネル、掲示板、画像表示機器、あるいはゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システムから選ばれる、ホストが回答を公開する手段、」 「(工程6)上記手段6を用いてホストが回答を公開する工程、」 と記載されている。 構成(G)では、「ホストが回答を公開する手段」は、「パネル」、「掲示板」、「画像表示機器」、「ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム」から選択されるものであることが特定されていると捉えることができる。 ここで、「パネル」、「掲示板」、「画像表示機器」、「ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム」は、いずれも、「ホストが回答を公開する手段」として、慣用手段であるから、「パネル」、「掲示板」、「画像表示機器」、「ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム」は、いずれも、「ホストが回答を公開する手段」の慣用技術の例を具体的に示したものであり、これらの具体例の特定は、上記課題の解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものでなく、構成(G)で特定されるのは、慣用手段を用いて実現された「ホストが回答を公開する手段」であるといえる。 そして、構成(N)の「(工程6)上記手段6を用いてホストが回答を公開する工程」は、「上記手段6」が「ホストが回答を公開する手段」であるから、「(慣用手段を用いて実現された)ホストが回答を公開する手段を用いてホストが回答を公開する工程」と読み変えることができる。 (コ)以上まとめると、本願請求項1に係る解決手段は以下のとおりの特定事項を有するアンケートシステムであるといえる。 「(a)ホストが設定した質問をゲストに表示する手段を用いてホストが設定した質問をゲストに表示する工程、 (b)ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段を用いてホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する工程、 (c)ゲストが的当てゲームに参加する手段を用いてゲストが的当てゲームに参加する工程、 (d)ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段を用いてゲストが射当てた的に対応する質問がゲストに配布される工程、 (e)ゲストが質問への回答をホストに与える手段を用いてゲストが質問への回答をホストに与える工程、 (f)ホストが回答を公開する手段を用いてホストが回答を公開する工程、 とからなり、 (g)工程bは工程aと並行して或いは工程aの後に行い、工程aおよび工程bが終了すると工程cを行い、工程cの後に工程dを行い、工程dの後に工程eを行い、工程e5の後に工程fを行う、 アンケートシステム。 3 上記解決手段の発明該当性について (ア) 請求項1に係る解決手段について検討する。 (ア-1)「ホストが設定した質問をゲストに表示する手段」 「表示する手段」はものとして特定できるが、何らかの表示を行う手段としての表示手段に技術的な特徴は無い。上記構成における「ホストが設定した質問をゲストに表示する」点に特徴があるとすれば、それは、提示する情報(ホストが設定した質問)と情報を提示する対象(ゲスト)に特徴があるといえ、どのような情報をどのような対象者に表示するかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該表示手段により、アンケートシステムにおいて「ホストが設定した質問をゲストに表示」することは、上記(1-1)(い)?(え)、(か)の課題・効果等からみて、「心理法則に基づいた技術」を利用し、「ゲストに「責任」心理が生じ」ることを期待するものであって、これらは自然法則を利用しているといえない。 したがって、構成(a)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-2)「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する手段」 「告知する手段」はものとして特定できるが、何らかの告知を行う手段としての告知手段に技術的な特徴は無い。上記構成における「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する」点に特徴があるとすれば、それは、告知する情報(ゲストの回答が公開される)という情報を告知する対象(ゲスト)に特徴があるといえ、どのような情報をどのような対象者に告知するかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該告知手段により、アンケートシステムにおいて「ゲストの回答が公開されることを告知する」ことは、上記(1-1)(い)?(え)、(か)の課題・効果等からみて、「心理法則に基づいた技術」を利用し、「ゲストに「責任」心理が生じ」ることを期待するものであって、これらは自然法則を利用しているといえない。 したがって、構成(b)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-3)「ゲストが的当てゲームに参加する手段」 「的当てゲームに参加する手段」はものとして特定できるが、「的当てゲームに参加する手段」として、例えば「ダーツ」のような手段は普通に知られた手段であり技術的な特徴は無い。上記構成における「ゲストが的当てゲームに参加する」点に特徴があるとすれば、それは、的当てゲームというゲームの内容に参加する対象(ゲスト)に特徴があるといえ、どのような内容のゲームにどのような対象者を参加させるかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該「的当てゲームに参加する手段」により、アンケートシステムにおいて「ゲストが的当てゲームに参加する」構成を採用することは、上記(1-1)(い)?(か)の課題・効果等からみて、「心理法則に基づいた技術」を利用し、ゲストに「僥倖心」、「射幸心」が生じることを期待するものであって、これらは自然法則を利用しているといえない。 したがって、構成(c)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-4)「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する手段」 「配布する手段」はものとして特定できるが、「配布する手段」として、例えば「カード」、「札」のような手段は普通に知られた手段であり技術的な特徴は無い。上記構成における「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する」点に特徴があるとすれば、それは、「ゲストが射当てた的に対応する質問」という上記手段によって配布される情報、又は、上記質問が配布される対象であるゲストに特徴があるといえ、どのような内容の情報をどのような対象者に配布するかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該「配布する手段」により、アンケートシステムにおいて「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する」構成を採用することは、上記(1-1)(い)?(か)の課題・効果等からみて、「心理法則に基づいた技術」を利用し、ゲストに「僥倖心」、「射幸心」が生じることを期待するものであって、これらは自然法則を利用しているといえない。 したがって、構成(d)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-5)「ゲストが質問への回答をホストに与える手段」 「与える手段」はものとして特定できるが、「与える手段」として、例えば「紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品」のような手段は普通に知られた手段であり技術的な特徴は無い。上記構成における「ゲストが質問への回答をホストに与える」点に特徴があるとすれば、それは、「質問への回答」という上記手段によって与えられる情報、又は、上記手段が上記情報を「ゲスト」から「ホスト」に対して与えるという、情報の伝達関係に特徴があるといえ、どのような内容の情報をどのような供給者からどのような対象者に与えるかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該「与える手段」により、アンケートシステムにおいて「ゲストが質問への回答をホストに与える」構成を採用することは、アンケートシステムにおいて普通に備える構成であるから、当該手段は上記課題等とは無関係の構成である。 したがって、構成(e)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-6)「ホストが回答を公開する手段」 「公開する手段」はものとして特定できるが、「公開する手段」として、例えば「パネル」、「掲示板」、「画像表示機器」のような手段は普通に知られた手段であり技術的な特徴は無い。上記構成における「ホストが回答を公開する」点に特徴があるとすれば、それは、「回答」という上記手段によって公開される情報、又は、上記手段を用いて上記情報を公開する主体である「ホスト」に特徴があるといえ、誰がどのような内容の情報を公開するかは、人為的取り決めであるから、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 また、当該「公開する手段」により、アンケートシステムにおいて「ホストが回答を公開する」構成を採用することは、上記(1-1)(い)?(え)、(か)の課題・効果等からみて、「心理法則に基づいた技術」を利用し、「ゲストに「責任」心理が生じ」ることを期待するものであって、これらは自然法則を利用しているといえない。 したがって、構成(f)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (ア-7)工程の順序について 構成(g)で特定される工程の順序をアンケートシステムにおいて採用することによる効果等は上記(1-1)(い)?(か)にあるとおり、心理法則を意図し、人間の一般的な反応(心理バイアス)を利用したものであって、これらは特許法で規定される自然法則を利用することといえない。 そして、アンケートシステムにおいて、構成(a)?(f)を採用することは、先に記載したとおり、人為的取り決めであって自然法則を利用した技術的思想の創作ではないし、上記構成(a)?(f)を構成(g)のとおりの順序で採用することを総合的勘案しても、上記請求項1で特定される構成は専ら、人の精神活動、意思決定又は人為的な取り決めそれ自体に向けられたものであると認められるから、上記請求項で特定される事項は、自然法則を利用した技術的思想の創作ではない。 したがって、構成(g)は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」に該当しない。 (イ)請求人の主張について 請求人は、審判請求書で、本願発明が特許法第29条柱書きの要件を満たしているとして以下の主張をしている。(下線は当審で付与した。) (主張1) 「(1.1.3) 上述の手段:表示機能を有するパネル又はスクリーン、ネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信、パネル、画像表示機器、ゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト、的当てゲーム装置、ネットワークを介して提供される的当てゲームシステム、カード、札、ネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム、紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品、ゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム、パネル、掲示板、画像表示機器、ゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム、はいずれも工業製品としてあるいは商業サービスとして生産や売買が可能です。これらは人間の行為でもなく、人間の精神活動パターンでもありません。 (1.1.4) このように、請求項1に特定された「アンケート装置」は技術的手段である手段1-6を有すると言えます。この意味で、請求項1に特定された「アンケート装置」を人為的な取決めと解釈することはできません。」 (主張2) 「(1.2.2) 補正後の請求項1には、各工程で使用する技術的手段が特定されています。そのような技術的手段は、工程1では手段1(表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信)、工程2では手段2(パネル、画像表示機器、あるいはゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト)、工程3では手段3(的当てゲーム装置、あるいはネットワークを介して提供される的当てゲームシステム)、工程4では手段4(カード、札、あるいはネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム)、工程5では手段5(紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品、あるいはゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム)、工程6では手段6(パネル、掲示板、画像表示機器、あるいはゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム)です。上述の通り上記手段1-6は工業製品として提供可能な技術的手段です。 (1.2.3) 請求項1には、それぞれの工程の目的と機能が記載されています。例えば工程1の目的と機能は「ホストが設定した質問をゲストに表示する」です。しかも請求項1ではアンケート方法における工程1-6の順序も特定されています。それぞれの工程で「どのようなことを行うか」は、各工程の機能を期待し所定の順序で上記技術的手段を使用することに他なりません。例えば工程2は、「工程1と並行して或いは工程1の後に」「手段2(パネル、画像表示機器、あるいはゲストがアクセスできるネットワーク上のサイトから選ばれる手段)」を用いて「ゲストの回答が公開されることを告知する」ことを行うのであって、ゲストあるいはホストにとって「どのようなことを行うか」は請求項1の記載上既に定まっています。 (1.2.4) このように、本発明のアンケート方法においてホストあるいはゲストが各工程で「どのようなことを行うか」を定める必要はなく、その特徴である工程1-6は人為的な取決めには当たりません。」 (主張3) 「(1.3.2) 請求項1に記載された発明は、特定の「アンケート装置」を用いることを特徴とし、特定の「アンケート方法」からなることを特徴とする「アンケートシステム」です。 上述の通り、上記「アンケート装置」は具体的な技術的手段(手段1-6)の組み合わせであり、上記「アンケート方法」はこれら具体的な技術的手段(手段1-6)の特定の機能を特定の順序で発現させる方法です。従って請求項1に特定されたアンケートシステムは具体的な技術的手段(手段1-6)の組み合わせと特定順序での使用とによって構成されており、これら技術的手段を離れた人の取り決めや社会活動は本システムに依存していません。」 (主張4) 「(1.5)参考文献1(知財高裁判決平成20年(行ケ)第10001号判決) (1.5.1) 拒絶査定は、要するに、発明全体が自然法則を利用したものでない場合は特許法上の「発明」に該当しないとの論理に基づき本願発明の特許性を否定しています。しかしながら参考文献1の通り、発明該当性の要件は、課題解決を目的とした技術的思想の創作の全体の構成中に自然法則の利用が「主要な」手段として示されていることであり、発明の「全体」が自然法則の利用で構成されていることではありません。」 (主張5) 「(2.1)類型 特許・実用新案審査基準 第III部 第1章 発明該当性および産業上の利用可能性に「2.1 「発明」に該当しないものの類型 「発明」といえるためには、「自然法則を利用した技術的思想の創作」である必要がある。以下の(i)から(vi)までの類型に該当するものは、「自然法則を利用した技術的思想の創作」ではないから、「発明」に該当しない。 (i)自然法則自体 (ii)単なる発見であって創作でないもの (iii)自然法則に反するもの (iv)自然法則を利用していないもの (v)技術的思想でないもの (vi)発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの」と規定されています。 (2.2)類型(i),(ii),(iii)との比較 本発明は特定のアンケート方法とアンケート装置を構成要素とするアンケートシステム(請求項1?4)および上記アンケートシステムに用いるアンケート装置(請求項5?8)であり、「人間の一般的な反応(心理バイアス)を利用した、効果の再現性が確約された技術」(明細書0051段落)を含みます。このような本発明は上記類型(i),(ii),(iii)に該当しないことは明らかです。 (2.3)類型(iv)との比較 人間の一般的な反応(心理バイアス)は認知バイアスとも呼ばれ英語ではcognitive biasと表現される認知科学用語です。心理バイアスの科学的検証は1950年代にはすでに始まっており、現在は行動経済学の数学モデルにも取り入れられています。本発明は心理バイアスという自然法則を利用しており、この点で上記類型(iv)に該当しません。 本発明は、手段1-6を有するアンケート装置と、手段1-6の機能を特定順序で発揮させるアンケート方法から構成されています。本発明の基本的特徴である手段1-6はいずれも客観的・科学的にその存在や配置が確認できる対象です。この意味で本発明は上記類型(iv)に該当しません。」 「(2.4.4) このように、本発明では用いる手段(手段1-6)が特定された工程1-6を実行することによって技術的課題を解決しています。手段1-6はいずれも客観的・科学的にその存在や配置が確認できる対象です。 この意味で、手段1(表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信)、手段2(パネル、画像表示機器、あるいはゲストがアクセスできるネットワーク上のサイト)、手段3(的当てゲーム装置、あるいはネットワークを介して提供される的当てゲームシステム)、手段4(カード、札、あるいはネットワーク上でゲストの端末へ質問データを送信するシステム)、手段5(紙またはボードと筆記用具とを組み合わせた物品、あるいはゲストの回答をオンライン上でホスト側に送信するシステム)、手段6(パネル、掲示板、画像表示機器、あるいはゲスト及び/又は第三者がアクセスできるネットワーク上の閲覧システム)に、発明の効果:「回答者にとって回答に伴うストレスが比較的大きい設問であっても、多くの信頼性の高い回答数が得られるアンケート方法・装置」との関係で技術的意義が認められます。 (2.4.5) そして、手段1-6をアンケート装置として組み合わせた結果、手段1の機能:「ホストが設定した質問をゲストに表示する」、手段2の機能:「ホストがゲストに対し、ゲストの回答が公開されることを告知する」、手段3の機能:「(アンケートの)ゲストが的当てゲームに参加する」、手段4の機能:「ゲストが射当てた的に対応する質問をゲストに配布する」、手段5の機能:「ゲストが質問への回答をホストに与える」、手段6の機能:「ホストが回答を公開する」の全てがアンケートシステムで実現し、このアンケートシステムで発明の効果:「回答者にとって回答に伴うストレスが比較的大きい設問であっても、多くの信頼性の高い回答数が得られる」が得られます。 また、手段1-6の上記機能はいずれもアンケート装置あるいはアンケート方法を構成することが特定された手段1-6に特有の機能であって、各手段の汎用の機能でも各手段の人による利用形態そのものでもありません。例えば、手段1の機能「ホストが設定した質問をゲストに表示する」は、手段1(表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信)がアンケート装置あるいはアンケート方法の構成要素となったことで初めて発現する機能であって、単に人が手段1(表示機能を有するパネル又はスクリーン、あるいはネットワークを介してホストからゲストの表示端末からのデータ送信)を使用することでは生じません。 この意味で、手段1-6が組み合わされたアンケート装置にも発明の効果との関係で技術的意義が認められます。 (2.4.6) (2.4.1)で述べたように手段1-6を有するアンケート装置、手段1-6を用いる工程を有するアンケート方法、上記アンケート装置とアンケート方法とから構成されるアンケートシステムは人の行為に関わるものの、これらは全体としては、技術的手段である手段1-6とこれらの組み合わせによって、特定の技術的課題を解決しています。 この意味で本発明は上記類型(v),(vi)に該当しません。」 (主張6) 「このように、人為的取決めを特徴に含む発明に対して特許法に基づく特許権が付与された例は少なからず存在します。このような事例に照らしても、本願発明は特許法上の「発明」と認められるべきものです。」 主張1について 上記主張によれば、本願請求項1の記載で特定される手段1?6は、いずれも工業製品としてあるいは商業サービスとして生産や売買が可能な技術的手段からなるものであり、人為的な取決めと解釈することはできないとの主張である。 確かに、請求項1の記載では、手段1?6について、具体的な手段として各種の装置が特定されているが、「第4 2 (1)(1-2)」で検討したように、本願発明の解決しようとする課題等からみて、上記具体的に特定された各種の装置は、手段1?6について、慣用技術の例を具体的に示したものであり、発明特定事項としては、課題解決のために慣用手段を用いたという以上の意味を有するものではなく、上記各種の装置についての特定事項を有するからといって、人為的な取り決めと解釈をすることはできないという主張を採用することはできない。 主張2について 上記主張によれば、『本発明のアンケート方法においてホストあるいはゲストが各工程で「どのようなことを行うか」を定める必要はなく、その特徴である工程1-6は人為的な取決めには当たりません』とのことであるが、アンケート方法において、上記工程をどのような順で行うかという定めそのものが、ホスト(あるいはゲスト)が行う手順の取り決めであって、これは、人が行う手順の取り決めであるから人為的な取り決めである。 したがって、上記主張2を採用することはできない。 主張3について 主張3は、上記主張1と主張2とを組み合わせたものと認めるが、上記主張1についておよび主張2についてにおいて検討したとおりである。 主張4について 主張4において、請求人は『発明該当性の要件は、課題解決を目的とした技術的思想の創作の全体の構成中に自然法則の利用が「主要な」手段として示されていることであ』ると述べているが、上記(ア)で示したとおり、請求項に記載された各手段および、各手段を組み合わせた全体を見ても、課題解決のための手段として自然法則を利用していると認めることはできないから、上記主張を採用することはできない。 主張5について 主張5によれば、本願発明は、人間の一般的な反応(心理バイアス)を利用したものであって、上記心理バイアスは自然法則であるから、これを利用した本願発明は、自然法則を利用したものであること、および、上記上記自然法則を利用した手段として、手段(手段1-6)を特定し、上記特定された手段1-6を所定の工程1-6として実行することによって技術的課題を解決しているとの主張である。 しかしながら、先に検討したとおり、上記「人間の一般的な反応(心理バイアス)」は、人に対して何らかの刺激を与えた時の反応であって、特許法で規定される自然法則とはいえず、上記主張は採用することはできない。 主張6について 仮に、人為的取決めを特徴に含む発明に対して特許法に基づく特許権が付与された例は少なからず存在するとしても、本件について、自然法則を利用した技術的事項の創作に該当するといえないことは、先に検討したとおりであるから、上記主張を採用することはできない。 (ウ)まとめ したがって、本願発明は、全体として回答者から誠実な回答を得るという、人の精神活動ないし意思決定に係る課題を解決するために、アンケート参加者が特定の環境下で行われる的当てゲームに参加することによって抱く心理を利用した心理法則を用いるというものであり、発明特定事項を個別に検討しても、人の精神活動、意思決定又は人為的な取り決めそれ自体に向けらえたものであるから、自然法則を利用した技術的事項の創作に該当するということができず、特許法第2条に定義する「発明」ということはできない。 第5 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に記載された発明は、特許法第29条第1項柱書きに規定する要件を満たしていないから、特許を受けることができない。 したがって、本願は、その他の請求項について特に論及するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2020-11-05 |
結審通知日 | 2020-11-10 |
審決日 | 2020-11-25 |
出願番号 | 特願2018-217717(P2018-217717) |
審決分類 |
P
1
8・
1-
Z
(G06Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 梅岡 信幸 |
特許庁審判長 |
佐藤 聡史 |
特許庁審判官 |
渡邊 聡 相崎 裕恒 |
発明の名称 | アンケート方法及びアンケート装置 |
代理人 | 井澤 洵 |
代理人 | 井澤 幹 |
代理人 | 茂木 康彦 |
代理人 | 三谷 祥子 |
代理人 | 特許業務法人井澤国際特許事務所 |