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審決分類 |
審判 全部申し立て 特29条の2 B32B |
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管理番号 | 1371742 |
異議申立番号 | 異議2020-700755 |
総通号数 | 256 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2021-04-30 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2020-10-02 |
確定日 | 2021-03-19 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6679208号発明「積層体及びクッション体」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6679208号の請求項1?5に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6679208号の請求項1?5に係る特許についての出願は、平成26年12月24日に出願され、令和2年3月23日にその特許権の設定登録がされ、令和2年4月15日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、令和2年10月2日に特許異議申立人満田真希(以下「申立人」という。)が、本件特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6679208号の請求項1?5に係る特許は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「【請求項1】 天然皮革と多数の泡体からなる多孔質のウレタンフォームとを接着剤を介して接着した積層体の製造方法であって、 前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、 前記天然皮革と前記ウレタンフォームとの貼り合わせに際し、貼り付け面が上向きになるように置かれた前記天然皮革の上に、加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面に付いた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームを、当該塗膜が形成された表面が下向きになるように載せて、積層状態にし、その後、常温で圧縮プレスによる圧着を行って、前記天然皮革と前記ウレタンフォームとを貼り合わせることを特徴とする、積層体の製造方法。 【請求項2】 前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が、固形分100%の湿気硬化型ウレタン系ホットメルト接着剤である、請求項1に記載の積層体の製造方法。 【請求項3】 前記湿気硬化型ホットメルト接着剤は、塗工温度を120℃に設定している、請求項1又は2に記載の積層体の製造方法。 【請求項4】 前記圧着の後、前記ウレタンフォームと前記天然皮革の養生を行う、請求項1から3の何れか一項に記載の積層体の製造方法。 【請求項5】 前記加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤の前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面に付いた膜への塗布は、ロールコータを用いて行う、請求項1から4の何れか一項に記載の積層体の製造方法。」 第3 申立理由の概要 申立人が主張する本件特許異議の申立て理由の概要は、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下「本件特許発明1」等という。)は、本件特許に係る出願前の特許出願であって、本件特許に係る出願後に出願公開された特願2014-133664号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明と実質的に同一であるといえ、しかも、本件特許発明1?5の発明者が上記先願に係る上記発明をした者と同一ではなく、また本件特許に係る出願の時において、その出願人が上記先願の出願人と同一でもないので、特許法第29の2の規定により、特許を受けることができず、本件特許発明1?5にそれぞれ係る特許は、特許法第113条第2号の規定により取り消されるべきものであるというものである。 甲1:特開2016-10912号公報 甲2:特開平5-293893号公報 甲3:特開平6-182067号公報 甲4:特開平5-301291号公報 甲5:特開2005-314640号公報 甲6;特開2004-160708号公報 甲7:特開2009-242513号公報 甲8:原賀康介、「高信頼性接着実務」、日刊工業新聞社、2013年1月30日初版1刷発行、76?77、82?83ページ 甲9:セメダイン株式会社、「入門ビジュアル・テクノロジー よくわかる接着技術」、株式会社日本実業出版社、2008年2月1日初版発行、104?105ページ 第4 当審の判断 1. 先願発明 甲1(特願2014-133664号(特開2016-10912号公報))に係る出願の、出願当初の願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の事項が記載されている。 「【書類名】特許請求の範囲 【請求項1】 樹脂発泡体と、前記樹脂発泡体の表面に溶融状態で塗布されたホットメルト接着剤を挟んで前記樹脂発泡体の表面に積層されて接着した天然皮革とよりなる表皮材。 【請求項2】 前記ホットメルト接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤からなることを特徴とする請求項1に記載の表皮材。 【請求項3】 前記樹脂発泡体は、軟質スラブポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項1または2に記載の表皮材。 【請求項4】 前記樹脂発泡体は、前記天然皮革と接着されない面に裏基布が設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の表皮材。 【請求項5】 樹脂発泡体の一側の表面に、加熱により溶融したホットメルト接着剤を塗布し、 溶融状態の前記ホットメルト接着剤を挟んで前記樹脂発泡体の表面に天然皮革を積層し 、 前記樹脂発泡体と前記天然皮革の積層体を圧縮して前記ホットメルト接着剤を硬化させ ることにより、前記天然皮革と前記樹脂発泡体が接着した表皮材を得ることを特徴とする 表皮材の製造方法。 【請求項6】 前記ホットメルト接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤からなることを特徴とする請求項5に記載の表皮材の製造方法。 【請求項7】 前記樹脂発泡体は、前記天然皮革と接着されない面に裏基布が予め設けられていることを特徴とする請求項5または6に記載の表皮材の製造方法。 【請求項8】 前記樹脂発泡体は、軟質スラブポリウレタン発泡体であることを特徴とする請求項5から7の何れか一項に記載の表皮材の製造方法。」 「【書類名】明細書 【発明の名称】表皮材とその製造方法 【技術分野】 【0001】 本発明は、樹脂発泡体に天然皮革が接着された表皮材とその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 従来、自動車、鉄道、航空機、家具等の座席や内装材等の表皮材として、ポリウレタン発泡体に天然皮革を接着した表皮材がある。 【0003】 ポリウレタン発泡体と天然皮革の接着方法として、ポリウレタン発泡体と天然皮革を不織布状のホットメルト接着剤を挟んで積層し、加圧・加熱下でホットメルト接着剤を溶融し、天然皮革とポリウレタン発泡体を接着するものがある・・・。 【0004】 また、他の接着方法として、ポリウレタン発泡体の片面に粉末状のホットメルト接着剤を塗布して接着層を形成し、その接着層に天然皮革を積層し、熱盤でプレスすることにより接着層のホットメルト接着剤を溶融し、天然皮革とポリウレタン発泡体を接着するものがある・・・。 【0005】 しかし、不織布状のホットメルト接着剤あるいは粉末状のホットメルト接着剤を用いる方法では、天然皮革とポリウレタン発泡体を接着する際に、ポリウレタン発泡体側から加熱する場合、表皮材の感触を向上させるためにポリウレタン発泡体の厚みを10mm以上にすると、ポリウレタン発泡体の断熱効果によってポリウレタン発泡体と天然皮革間のホットメルト接着剤に充分な熱が伝わらず、ポリウレタン発泡体と天然皮革を確実に接着できなくなる。また、接着性を高めるために加熱温度を上げると、ポリウレタン発泡体が熱劣化を生じる問題が発生する。さらに、表皮材の縫製作業を良好にするため、ポリウレタン発泡体の裏面にナイロントリコット等からなる裏基布を予め接着した場合、裏基布が熱によって収縮する等の問題が発生する。 【0006】 また、ホットメルト接着剤による天然皮革とポリウレタン発泡体の接着を確実にするため、天然皮革側から加熱してホットメルト接着剤に熱が伝わり易くする場合、熱が直接天然皮革に加わるため、天然皮革本来の表面に有する自然なシボ(微細な凹凸)が熱で伸びて平坦な表面になり、天然皮革本来の意匠性が損なわれたり、熱によって天然皮革が収縮したりする問題が発生し、良好な表皮材が得られなくなる。 【0007】 また、天然皮革は天然素材のために水分を保持しており、加熱によって天然皮革内の水分が蒸発し、ホットメルトの接着性を損ねる問題がある。 さらに、不織布状のホットメルト接着剤を用いる方法では、連続した繊維構造が天然皮革とポリウレタン発泡体間に少なからず残存することになるため、表皮材の撓み性、柔軟性を損ない、硬くなる問題がある。 なお、加熱によって生じる前記の問題を防ぐために加熱温度を下げると、今度はホットメルト接着剤の接着性が低下して天然皮革とポリウレタン発泡体の接着不良を生じるようになる。」 「【発明が解決しようとする課題】 【0009】 本発明は前記の点に鑑みなされたものであって、天然皮革と樹脂発泡体との接着が強固で、かつ良好な天然皮革の風合いを有する表皮材とその製造方法の提供を目的とする。」 【発明の効果】 【0018】 請求項1の発明によれば、樹脂発泡体の表面に溶融状態のホットメルト接着剤が塗布されているため、天然皮革の積層後にホットメルト接着剤を溶融するための加熱を行わなくても樹脂発泡体と天然皮革の接着が良好なものになり、かつ加熱によって天然皮革の表面のシボが伸びたり、天然皮革本来の意匠性が損なわれたりすることがなく、良好な風合いの表皮材が得られる。さらに、天然皮革積層後の加熱が不要なため、加熱による樹脂発泡体の熱劣化や変形のおそれがなく、良好な品質の表皮材が得られる。 【0019】 請求項2の発明によれば、ホットメルト接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤からなるため、天然皮革から蒸発する水分によっても湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化が進行し、樹脂発泡体と天然皮革の接着が良好なものになる。 【0020】 請求項3の発明によれば、樹脂発泡体が軟質スラブポリウレタン発泡体からなるため、樹脂発泡体の表面は軟質スラブポリウレタン発泡体のセル骨格の切断部が凹凸となって露出しており、該セル骨格に溶融状態のホットメルト接着剤が係合し、樹脂発泡体と天然皮革の接着がより確実なものとなる。 【0021】 請求項4の発明によれば、樹脂発泡体において天然皮革と接着されない面に設けられた裏基布は、樹脂発泡体が加熱されないために収縮などの熱劣化のおそれがなく、裏基布の良好な品質を保つことができ、裏基布によって表皮材の縫製作業を良好なものにできる。 【0022】 請求項5の発明によれば、天然皮革の積層後にホットメルト接着剤を溶融するための加熱を行わなくても樹脂発泡体と天然皮革の良好な接着を行うことができ、かつ加熱によって天然皮革の表面のシボが伸びたり、天然皮革本来の意匠性が損なわれたりすることがなく、良好な風合いの表皮材が得られる。さらに、天然皮革積層後の加熱が不要なため、加熱による樹脂発泡体の熱劣化や変形のおそれがなく、良好な品質の表皮材が得られる。 【0023】 請求項6の発明によれば、ホットメルト接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤からなるため、天然皮革から蒸発する水分によっても湿気硬化型ホットメルト接着剤の硬化が進行し、樹脂発泡体と天然皮革の接着が良好なものになる。 【0024】 請求項7の発明によれば、樹脂発泡体において天然皮革と接着されない面に設けられた裏基布は、樹脂発泡体が加熱されないために収縮などの熱劣化のおそれがなく、裏基布の良好な品質を保つことができ、得られる表皮材の縫製作業を裏基布によって良好なものにできる。 【0025】 請求項8の発明によれば、樹脂発泡体が軟質スラブポリウレタン発泡体からなるため、樹脂発泡体の表面は軟質スラブポリウレタン発泡体のセル骨格の切断部が凹凸となって露出しており、該セル骨格に溶融状態のホットメルト接着剤が係合し、樹脂発泡体と天然皮革の接着がより確実なものとなる。」 「【発明を実施するための形態】 【0027】 以下に、本発明の実施形態について説明する。 図1に示す第1実施形態の表皮材10は、自動車、鉄道、航空機、家具等の座席や内装材等の表皮材として好適なものであって、樹脂発泡体11と、前記樹脂発泡体11の表面に溶融状態で塗布されたホットメルト接着剤21を挟んで前記樹脂発泡体11の表面に積層されて接着した天然皮革31とで構成されている。 【0028】 前記樹脂発泡体11としては特に限定されるものではなく、例えば軟質ポリウレタン発泡体、ポリエチレン発泡体、ポリプロピレン発泡体等を挙げることができる。特に、常温・常圧下で連続的に発泡させるスラブ発泡により製造されたブロック状の軟質ポリウレタン発泡体をシート状に裁断した軟質スラブポリウレタン発泡体は、前記樹脂発泡体11として好適なものである。前記軟質スラブポリウレタン発泡体は、裁断表面にセル骨格の切断部が凹凸となって露出しているため、ホットメルト接着剤21が軟質スラブポリウレタン発泡体の表面に係合して前記樹脂発泡体11と前記天然皮革31の接着強度が高くなる。 【0029】 また、前記表皮材10は、前記表皮材10の製造時に高温に加熱されないため、融点の低いポリエチレンフォームなども前記樹脂発泡体11として使用可能である。 前記樹脂発泡体11の厚みは、前記表皮材10の用途に応じて適宜設定されるが、例として2?20mmを挙げる。 【0030】 前記樹脂発泡体11は、前記天然皮革31と接着されない面に、裏基布15がフレームラミネートやエマルジョン接着剤などで予め接着されている。前記裏基布15は、前記表皮材11の縫製等の際に表皮材11の伸びを抑えたり、前記表皮材11の裏面の滑りを良好にし、ミシン台での布送りを容易にする。あるいは前記表皮材11の使用時に裏面を保護したりする作用を有するものであり、布材(編物、織物)、不織布等からなるものを挙げる。 【0031】 前記樹脂発泡体11において前記天然皮革31が接着される表面に溶融状態で塗布されるホットメルト接着剤21としては、酢酸ビニル樹脂のような熱可塑性プラスチックからなる通常のもの、あるいは加熱により溶融して湿気により反応硬化する湿気硬化型のものなどが挙げられる。特に湿気硬化型のホットメルト接着剤は、空気中の湿分のみならず、前記天然皮革31に自然に含まれる水分を利用して硬化が促進されるため、前記天然皮革31に含まれる水分によって接着性が損なわれず、却って接着性を向上させることができることから、前記ホットメルト接着剤21として好ましいものである。湿気硬化型ホットメルト接着剤としては、ウレタン系、ポリエステル系、アクリル系等のものがあるが、ウレタン系の湿気硬化型接着剤が扱い易さ、入手し易さ等の点から好ましい。具体的には、ウレタン系反応性ホットメルト接着剤であり、有機溶剤などの希釈剤が含まれない無溶剤系反応性熱溶融樹脂が、車両用途におけるVOC規格等を合格するうえで好ましい。この接着剤は、イソシアネート基末端のウレタンポリマーを主成分として、ポリオール成分はポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールなどが汎用に使用されるが、その他のポリオールでもよい。反応基としてイソシアネート基を有しているウレタン化合物であればよい。熱溶融温度は70℃?200℃であり、好ましくは80℃?160℃が望ましい。 【0032】 前記天然皮革31は、前記表皮材10の用途に応じて、牛革、豚革、カンガルー、ダチョウ、ワニほか爬虫類といった種類や厚み等が決定される。特に、牛革からなる天然皮革は、耐久性に優れることから好適なものである。天然皮革の厚みは、0.5?3mmとされる。 【0033】 前記表皮材10の製造方法について説明する。前記表皮材10の製造は、ホットメルト接着剤の塗布工程と、天然皮革の積層工程と、圧縮硬化工程とにより行われる。 【0034】 ホットメルト接着剤の塗布工程では、前記樹脂発泡体11の一側表面に、加熱により溶融した前記ホットメルト接着剤21を塗布装置により塗布する。前記樹脂発泡体11は、予め所定厚みのシート状にされ、下面(裏面)に前記裏基布15が接着されている場合には、前記裏基布15とは反対側の樹脂発泡体11の表面に前記ホットメルト接着剤21が塗布される。 【0035】 前記塗布装置としてロールコータを用いる場合を図2に示す。ロールコータ40は、送りロール41、供給ロール42、塗布ロール43、ホットメルト接着剤貯留槽44を備える。」 「【0038】 前記ホットメルト接着剤貯留槽44に貯留されている溶融状態のホットメルト接着剤21は、前記送りロール41によって前記樹脂発泡体11が一方向へ送られている状態で、前記吐出部45から前記供給ロール42と前記塗布ロール43間に供給される。前記供給ロール42と前記塗布ロール43間に供給された溶融状態のホットメルト接着剤21は、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の回転によって前記樹脂発泡体11の上側表面に供給される。前記樹脂発泡体11の上側表面に供給された溶融状態のホットメルト接着剤21は、回転する塗布ロール43の外周面下端と接触して前記樹脂発泡体11の上側表面に塗布される。 【0039】 なお、前記樹脂発泡体11に対する前記ホットメルト接着剤21の塗布量は、前記ホットメルト接着剤貯留槽44と前記供給ロール42及び前記塗布ロール43の加熱温度によるホットメルト接着剤21の溶融粘度の調節、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の回転速度、前記塗布ロール43の外周面と前記樹脂発泡体11の上面との距離(クリアランス)、前記樹脂発泡体11の送り速度によって調節することができる。 【0040】 天然皮革の積層工程では、図3に示すように溶融状態の前記ホットメルト接着剤21を挟んで前記樹脂発泡体11の表面に前記天然皮革31を積層する。図3に示す実施形態では、溶融状態の前記ホットメルト接着剤21が塗布された樹脂発泡体11を、プレス装置の下型51の上面に載置した後、溶融状態の前記ホットメルト接着剤21の上に、前記天然皮革31を裏面が下向きとなるようにして積層する。なお、符号52はプレス装置の上型である。 【0041】 圧縮硬化工程では、図4に示すように前記樹脂発泡体11の上側表面に溶融状態の前記ホットメルト接着剤21を挟んで前記天然皮革31が積層された積層体10Aを圧縮し、前記ホットメルト接着剤21を硬化させて前記天然皮革31と前記樹脂発泡体11が接着した前記表皮材10を形成する。前記圧縮は、前記ホットメルト接着剤21の融点より低い温度で行われる。例えば常温で行う。なお、常温とは、日本工業規格で規定されている20±15℃の範囲をいう。また、圧縮程度は特に限定されず、例えば総厚みの40?80%となるように圧縮する。 【0042】 前記ホットメルト接着剤21は、前記圧縮中に自然冷却されて硬化し、前記天然皮革31と前記樹脂発泡体11を接着する。また、前記ホットメルト接着剤21は、湿気硬化型ホットメルト接着剤の場合、自然冷却と空気中の湿気及び前記天然皮革31から自然放出される湿気によって冷却が進行し、前記天然皮革31と前記樹脂発泡体11の接着が強固なものとなる。 【0043】 前記圧縮工程では、前記ホットメルト接着剤21を溶融させるための高温加熱を行わないため、前記天然皮革31の表面のシボが伸びたり、天然皮革31本来の意匠性が損なわれたりすることがなく、良好な風合いの表皮材10が得られる。さらに、前記裏基布15が熱によって劣化することがなく、良好な品質の表皮材10が得られる。 【0044】 図5に第2実施形態の表皮材60を示す。第2実施形態の表皮材60は、第1実施形態の表皮材10における前記裏基布15を有しないものであり、他の構成は第1実施形態の表皮材10と同様の構成からなる。符号61は樹脂発泡体、71はホットメルト接着剤、81は天然皮革である。 第2実施形態の表皮材60の製造方法は、前記第1実施形態の表皮材10の製造方法において、前記樹脂発泡体11の下側表面に裏基布15が接着されていないことを除き、第1実施形態の表皮材10の製造方法と同様である。 【実施例】 【0045】 ・実施例1?3(湿気硬化型ホットメルト接着剤、裏基布有り) 密度30kg/m^(3)、硬さ(JIS K6400-2:2012)50N、セル数(JIS K6400-1:2004)42個/25mm、品番:EL-68WS、イノアックコーポレーション社製のポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体を、250×400mm×厚み10mmにして樹脂発泡体として使用し、裏面にナイロントリコットの15デニールを裏基布としてアクリル系エマルジョン接着剤で接着した。 【0046】 ホットメルト接着剤として、ウレタン系の湿気硬化型接着剤、日立化成ポリマー株式会社製のポリウレタン系ホットメルト湿気硬化型樹脂、ハイボン、溶融塗布温度:150℃を用い、前記ロールコータ40によって150℃に加熱して溶融させた状態で樹脂発泡体の裏基布とは反対側の表面に塗布し付着させた。前記ホットメルト接着剤貯留槽44に貯留したホットメルト接着剤の温度、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の温度は何れも80℃であり、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の回転速度及び前記クリアランスの値を固定し、樹脂発泡体の送り速度を4?6m/分で変化させて表1に示す実施例1?3の付着量(塗布量)とした。 【0047】 次に、プレス下型上にホットメルト接着剤を上向きにして樹脂発泡体を載置し、樹脂発泡体表面のホットメルト接着剤を挟んで天然皮革(牛革)を樹脂発泡体に積層し、プレス上型を下降させて圧縮し、表1に示す実施例1?3の表皮材を形成した。なお圧縮は常温で40秒間行い、圧縮量は60%に設定した。 【0048】 ・実施例4(通常タイプホットメルト接着剤、裏基布有り) ホットメルト接着剤として、アイカ工業社製酢酸ビニル系ホットメルト接着剤、品名A-QNJを用い、樹脂発泡体及び裏基布を実施例1?3と同一とし、前記ホットメルト接着剤貯留槽44に貯留したホットメルト接着剤の温度及び前記供給ロール42と前記塗布ロール43の温度を95℃とし、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の回転速度及び前記クリアランスの値を固定し、樹脂発泡体の送り速度を調節して表1の実施例4の付着量(塗布量)にした。その他は実施例1?3と同様にして表1に示す実施例4の表皮材を形成した。 【0049】 ・比較例1(不織布タイプのホットメルト接着剤、裏基布有り) ウェブ状ホットメルト接着剤(不織布タイプのホットメルト接着剤)として、スパンボンド不織布、目付:25g/m^(2)、融点:115℃、品番:ダイナックLNS1225、呉羽テック社製を使用し、樹脂発泡体及び裏基布を実施例1?3と同一とし、プレス下型上に樹脂発泡体を裏基布が下側となるようにして載置し、樹脂発泡体の上側表面にホットメルト接着剤を配置し、そのホットメルト接着剤を挟んで天然皮革(牛革)を積層し、プレス上型を下降させて加熱圧縮し、表1に示す比較例1の表皮材を形成した。なおプレス下型は常温、上型は190℃で40秒間行い圧縮量は50%に設定した。 【0050】 【表1】 ![]() 【0051】 ・実施例5?7(湿気硬化型ホットメルト接着剤、裏基布無し) 密度30kg/m^(3)、硬さ(JIS K6400-2:2012)70N、セル数(JIS K6400-1:2004)25個/25mm、品番:WF-18、イノアックコーポレーション社製のポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体を、250×400mm×厚み10mmにして樹脂発泡体として使用し、裏基布は設けなかった。実施例1?3と同じホットメルト接着剤を使用し、実施例1?3と同様にして樹脂発泡体の一側表面に溶融状態のホットメルト接着剤を、表2の実施例5?7に示す付着量で付着(塗布)した。 【0052】 次に、プレス下型上にホットメルト接着剤を上向きにして樹脂発泡体を載置し、樹脂発泡体表面のホットメルト接着剤を挟んで天然皮革(牛革)を樹脂発泡体に積層し、プレス上型を下降させて圧縮し、表2に示す実施例5?7の表皮材を形成した。なお圧縮は常温で40秒間行い、圧縮量は50%に設定した。 【0053】 ・実施例8(通常タイプホットメルト接着剤、裏基布無し) ホットメルト接着剤として、アイカ工業社製酢酸ビニル系ホットメルト接着剤、品名:A-QNJを用い、樹脂発泡体を実施例5?7と同一とし、前記ホットメルト接着剤貯留槽44に貯留したホットメルト接着剤の温度及び前記供給ロール42と前記塗布ロール43の温度を130℃とし、前記供給ロール42と前記塗布ロール43の回転速度及び前記クリアランスの値を固定し、樹脂発泡体の送り速度を5m/分にして表2の実施例8の付着量(塗布量)にした。その他は実施例5?7と同一にして表2に示す実施例8の表皮材を形成した。 【0054】 ・比較例2(不織布ホットメルト接着剤、裏基布無し) ウェブ状ホットメルト接着剤として、スパンボンド不織布、目付:25g/m^(2)、融点:115℃、品番:ダイナックLNS1225、呉羽テック社製を使用し、樹脂発泡体を実施例5?7と同一のものを使用し、プレス下型上に樹脂発泡体を載置し、樹脂発泡体の表面にホットメルト接着剤を配置し、そのホットメルト接着剤を挟んで天然皮革(牛革)を積層し、プレス上型を下降させて加熱圧縮し、表2に示す比較例2の表皮材を形成した。なおプレス下型は常温、上型は190で40秒間行い、圧縮量は50%に設定した。 【0055】 【表2】 ![]() 【0056】 各実施例及び各比較例の表皮材に対し、剥離強度、硬さ、外観、収縮、耐熱性接着強度を測定した。測定結果を表1及び表2に示す。」 「【0060】 表1及び表2に示すように、ホットメルト接着剤を溶融して樹脂発泡体側に付着した各実施例の表皮材は、天然皮革と樹脂発泡体の剥離強度が高く、硬さも柔らかく、天然皮革の外観が良好で、収縮が小さく、自動車、鉄道、航空機、家具等の座席や内装材等の表皮材として好適なものである。また、裏基布を有する実施例1?4は裏基布に熱による劣化がなく、良好な品質であった。さらに、湿気硬化型の接着剤を使用した場合、高温環境下における剥離強度(耐熱性接着強度)が強く、耐久性があった。 一方、ホットメルト接着剤とし不織布を使用し、天然皮革を積層した後に加熱プレスした各比較例は、天然皮革と樹脂発泡体の剥離強度が低く、硬さも硬く、天然皮革表面のシボが減少し、かつ見苦しいアバタが発生して天然皮革の風合いが損なわれ、しかも収縮が大きく、自動車、鉄道、航空機、家具等の座席や内装材等の表皮材としては不向きである。」 【図面】 「 ![]() 」 「 ![]() 」 上記摘記事項のうち、特に【0045】?【0047】の記載に着目すると、先願明細書には、次の発明(以下「先願発明」という。)が記載されている。 「天然皮革と密度30kg/m^(3)、硬さ(JIS K6400-2:2012)50N、セル数(JIS K6400-1:2004)42個/25mm、品番:EL-68WS、イノアックコーポレーション社製のポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体とを、ウレタン系の湿気硬化型接着剤として、日立化成ポリマー株式会社製のポリウレタン系ホットメルト湿気硬化型樹脂、ハイボン、溶融塗布温度:150℃を介して接着した表皮材の製造方法であって、 前記ウレタン系の湿気硬化型接着剤は湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、 前記天然皮革と前記ポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体との貼り合わせに際し、前記ウレタン系の湿気硬化型接着剤が塗布された貼り付け面が上向きになるようにプレス下型上に置かれた前記ポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体の上に、天然皮革を積層し、プレス上型を下降させて常温で40秒間圧縮した、 表皮材の製造方法。」 2. 本件特許発明1について (1) 先願発明との対比 本件特許発明1と先願発明とを対比する。 先願発明の「ウレタン系の湿気硬化型接着剤としての「日立化成ポリマー株式会社製のポリウレタン系ホットメルト湿気硬化型樹脂、ハイボン、溶融塗布温度:150℃」は、本件特許発明1の「湿気硬化型のホットメルト接着剤」に相当する。 先願発明の「密度30kg/m^(3)、硬さ(JIS K6400-2:2012)50N、セル数(JIS K6400-1:2004)42個/25mm、品番:EL-68WS、イノアックコーポレーション社製のポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体」は、多数の泡を有する多孔質であることは明らかであるから、本件特許発明1の「多数の泡体からなる多孔質のウレタンフォーム」に相当する。 先願発明の「密度30kg/m^(3)、硬さ(JIS K6400-2:2012)50N、セル数(JIS K6400-1:2004)42個/25mm、品番:EL-68WSイノアックコーポレーション社製のポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体」に対し、加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤を塗布したならば、当該ウレタンフォームの骨格と泡体の表面についた膜に塗布されて塗膜が形成されることは、自明であるから、先願発明と本件特許発明1のとは、「多孔質のウレタンフォーム」が、「前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面についた膜に塗布されて塗膜が形成され」たものである点で一致する。 先願発明の「前記天然皮革と前記ポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体との貼り合わせに際し、前記ウレタン系の湿気硬化型接着剤が塗布された貼り付け面が上向きになるようにプレス下型上に置かれた前記ポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体の上に、天然皮革を積層し、プレス上型を下降させて常温で40秒間圧縮した、」と、本件特許発明1の「前記天然皮革と前記ウレタンフォームとの貼り合わせに際し、貼り付け面が上向きになるように置かれた前記天然皮革の上に、加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面に付いた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームを、当該塗膜が形成された表面が下向きになるように載せて、積層状体にし、その後、常温で圧縮プレスによる圧着を行って、前記天然皮革と前記ウレタンフォームとを貼り合わせること」は、「天然皮革とウレタンフォームとの貼り合わせに際し、天然皮革とウレタンフォームとを積層状体にし、その後、常温で圧縮プレスによる圧着を行」う点で一致する。 先願発明の「表皮材」は、「天然皮革」と「ウレタンフォーム」を積層したものといえるから、本件特許発明1の「積層体」に相当する。 そうすると、本件特許発明1と先願発明は、以下の点で一致し、かつ、相違する。 <一致点> 「天然皮革と多数の泡体からなる多孔質のウレタンフォームとを、接着剤を介して接着した積層体の製造方法であって、 前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、 前記天然皮革と前記ウレタンフォームとの貼り合わせに際し、前記天然皮革と、加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面についた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームとを、積層状態にし、その後、常温で圧縮プレスによる圧着を行って、前記天然皮革と前記ウレタンフォームとを貼り合わせる、積層体の製造方法。」 <相違点1> 本件特許発明1の、「圧縮プレスによる圧着」は、「貼り付け面が上向きになるように置かれた天然皮革の上に、加熱溶融された前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面についていた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームを、当該塗膜が形成された表面が下向きになるように載せて、積層状態にし」たものに対して施すのに対し、先願発明の「プレスによる圧縮」は、「貼り付け面が上向きになるように置かれた、湿気硬化型ホットメルト接着剤が塗布された貼り付け面が上向きとなるようにおかれたポリエーテル系の軟質スラブポリウレタン発泡体の上に、天然皮革を積層し」たものに対して施す点。 (2) 相違点についての判断 申立人は、本件特許異議申立書(23ページ9行?25ページ16行)において、相違点1に係る構成は、例えば甲第2号証?甲第4号証に例示されているように従来周知のものであるといえ、本件特許発明1が奏する作用効果が、先願発明が奏する作用効果と当該周知の手段がもたらす作用効果との総和に過ぎないから、本願発明1と先願発明とは実質同一である旨主張している。 そこで検討する。 本件特許明細書には、 「【0002】 従来、例えば自動車用シート等として使用される、表面に革を配したクッション体が工業的に作られている。クッション体の作成においては、革とクッション体を接着する或いは接着しない、革の風合いを損なわない等、様々な要求に応じた種々の方法が検討されている。 【0003】 表面に革を配したクッション体において、表面に配する革を、革とウレタンフォーム(ウレタン発泡体)の積層体により形成することが知られており、このような積層体の製造方法として、例えば、革とウレタンフォームとを不織布状ホットメルト材を挟んで積層し、加圧・加熱下にホットメルト材を溶融して、革とウレタンフォームとを接着した、革とウレタンフォームとの積層体の製法が提案されている・・・。」 「【0005】 しかしながら、ホットメルト材を溶融して革とウレタンフォームとを接着する方法においては、ホットメルト材が溶融する加圧・加熱時、革に熱が加わることが避けられず、革に熱が加わる状況によっては、特に革が天然皮革(本革)である場合、天然皮革特有の風合いが失われたり、天然皮革が縮んで寸法変化が生じてしまう虞があった。 そこで、この発明の目的は、天然皮革とウレタンフォームとの接着に際し、天然皮革の風合いを損なうことなく、また、天然皮革が縮んで寸法の変化が生じたりすることがない、天然皮革とウレタンフォームとを接着して形成される積層体、及びこの積層体を用いた車両用若しくは家具用のクッション体を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 上記目的を達成するため、この発明に係る積層体は、天然皮革と多数の泡体からなる多孔質のウレタンフォームとを接着剤を介して接着した積層体であって、前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、前記天然皮革に、前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面に付いた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームを載せて、積層状態にしていることを特徴とする。この発明に係る積層体によれば、天然皮革とウレタンフォームとの接着に際し、天然皮革の風合いを損なうことなく、また、天然皮革が縮んで寸法の変化が生じたりすることがない。」 そうすると、本件特許発明の「積層体」は、従来「例えば自動車用シート等として使用される、クッション体の表面に配される革を、革とウレタンフォームの積層体として形成するようにしたものである」(【0002】、【0003】)といえる。 そして、本件特許発明は、そのような積層体において、「天然皮革とウレタンフォームとの接着に際し、天然皮革の風合いを損なうことなく、また、天然皮革が縮んで寸法の変化が生じたりすることがない、天然皮革とウレタンフォームとを接着して形成される積層体、及びこの積層体を用いた車両用若しくは家具用のクッション体を提供する」(【0005】)を目的とするものであって、「天然皮革と多数の泡体からなる多孔質のウレタンフォームとを接着剤を介して接着した積層体であって、前記接着剤が湿気硬化型ホットメルト接着剤であり、前記天然皮革に、前記湿気硬化型ホットメルト接着剤が前記ウレタンフォームの骨格と前記泡体の表面に付いた膜に塗布されて塗膜が形成された、前記ウレタンフォームを載せて、積層状態にしていることを特徴とする」ものであって、「この発明に係る積層体によれば、天然皮革とウレタンフォームとの接着に際し、天然皮革の風合いを損なうことなく、また、天然皮革が縮んで寸法の変化が生じたりすることがない。」(【0006】)との作用効果を発揮するものである。 そこで、申立人が相違点1に係る技術的事項が従来周知であるとする主張の根拠である甲第2号証?甲第4号証について検討する。 甲第2号証には、下型1と上型4により、表皮カバー2とクッション体パッド3を押圧することが記載されている。そしてクッション体パッド3は、本件特許明細書に記載されたクッション体に相当するというべきものであるから、甲第2号証に記載されたものは、本件特許発明1に特定された「前記天然皮革と前記ウレタンフォームとを貼り合わせる」ものであるとはいえない。 甲第3号証に記載されたものも、上型及び下型7が押圧する積層体には、クッション材(クッションパッド)3Aが含まれている。そして、本件発明1とは異なって押圧は常温ではない(【0017】)。 甲第4号証に記載されたものも、加圧を常温で行うものではない。 そうすると、本件特許発明1のように、常温で圧縮プレスによる圧着を行うものにおいて、本件特許発明1のように、天然皮革の上に、ウレタンフォームを、当該塗膜が形成された表面が下向きになるように載せて、積層状態にすることが、本件特許に係る出願前に周知であるとはいえない。 申立人が提出した、他の甲号証をみても、当該事項が、従来周知であるとはいえない。 以上のとおりであるから、本件特許発明1が、先願発明と実質同一であるという申立人の主張は根拠がない主張である。 (3) 小括 そうすると本件特許発明1は、先願発明と実質同一であるとはいえないから、本件特許発明1に係る特許は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるとはいえず、それに係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由として、取り消すことはできない。 3. 本件特許発明2?5について 上記2.(2)に示したように、本件特許発明1は、先願発明と実質同一であるとはいえないから、本件特許発明1を直接あるいは間接的に引用する本件特許発明2?5も、先願発明と実質的に同一であるとはいえず、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるとはいえない。よって、本件特許発明2?5に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当することを理由として取り消すことはできない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件特許発明1?5に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件特許発明1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2021-03-09 |
出願番号 | 特願2014-261004(P2014-261004) |
審決分類 |
P
1
651・
16-
Y
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 岩田 行剛、佐藤 玲奈 |
特許庁審判長 |
石井 孝明 |
特許庁審判官 |
横溝 顕範 久保 克彦 |
登録日 | 2020-03-23 |
登録番号 | 特許第6679208号(P6679208) |
権利者 | 株式会社ブリヂストン |
発明の名称 | 積層体及びクッション体 |
代理人 | 鈴木 治 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 冨田 和幸 |