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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 G06Q |
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管理番号 | 1389439 |
総通号数 | 10 |
発行国 | JP |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2022-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2022-07-12 |
確定日 | 2022-09-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第6991492号発明「託送を支援するシステム及び方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第6991492号の請求項1~9に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第6991492号の請求項1~9に係る特許についての出願は、令和元年12月25日に出願され、令和3年12月10日にその特許権の設定登録がされ、令和4年1月12日に特許掲載公報が発行された。その後、その特許に対し、同年7月12日に特許異議申立人家田亘久(以下、「申立人」という。)は特許異議の申立てを行った。 第2 本件発明 特許第6991492号の請求項1~9に係る特許に係る発明(以下、それぞれ「本件発明1」~「本件発明9」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1~9に記載された事項により特定されるものであって、次のとおりのものである。 「【請求項1】 発電設備を用いて発電された電気を、一般送配電事業者の送配電ネットワークを介して、前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備へ送電する託送を支援するシステムであり、 少なくとも一つのコンピュータを備え、前記少なくとも一つのコンピュータは、 前記発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを取得し、 前記発電計画データの取得後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得し、 前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定し、 前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する、 システム。 【請求項2】 前記託送は自己託送であって、前記発電設備は自家用発電設備である、請求項1に記載のシステム。 【請求項3】 前記少なくとも一つのコンピュータは、現時点が前記ゲートクローズ時点後であれば、前記発電設備又はその管理者に対して、前記インバランス時間枠における発電量の調整指示を出力する、請求項1又は2に記載のシステム。 【請求項4】 前記少なくとも一つのコンピュータは、現時点が前記ゲートクローズ時点後であれば、前記電力需要設備又はその管理者に対して、前記インバランス時間枠における需要量の調整指示を出力する、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項5】 前記少なくとも一つのコンピュータは、現時点が前記ゲートクローズ時点前であれば、前記発電計画データに記述された前記インバランス時間枠の前記計画値を、前記発電予測データに記述された前記予測値に基づいて修正する、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項6】 前記少なくとも一つのコンピュータは、 前記電力需要設備による需要量の計画値を、前記複数の時間枠毎に記述する需要計画データをさらに取得し、 前記発電計画データに記述された前記インバランス時間枠の前記計画値を修正するときは、前記需要計画データに記述された前記インバランス時間枠の前記計画値を併せて修正する、請求項1から5のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項7】 前記発電設備は、再生可能エネルギー電源を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載のシステム。 【請求項8】 前記再生可能エネルギー電源は、太陽光発電設備である、請求項6に記載のシステム。 【請求項9】 発電設備を用いて発電された電気を、一般送配電事業者の送配電ネットワークを介して、前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備へ送電する託送を支援する方法であり、 前記発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを、少なくとも一つのコンピュータに記憶させる工程と、 前記発電計画データの記憶後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを、前記少なくとも一つのコンピュータに記憶させる工程と、 前記少なくとも一つのコンピュータが、前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定する工程と、 前記少なくとも一つのコンピュータが、前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する工程と、 を備える方法。」 第3 申立理由の概要 申立人は、次の甲第1号証~甲第6号証(以下、「甲1」~「甲6」という。)を提出して、請求項1~9に係る特許は、請求項1~9に係る発明が、甲1~甲6に記載された発明に基いて、本件特許出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2項に該当するため請求項1~9に係る特許を取り消すべきものである旨主張する。 甲第1号証:「国内初、メガワット級太陽光発電設備を活用した自己託送エネルギーサービスの基本契約の締結について」 甲第2号証:特開2018-93719号公報 甲第3号証:「平成30年度廃棄物エネルギー利活用計画策定検討調査委託業務報告書」の「資料編2」 甲第4号証:「SPSS (スマート電力供給システム)の新たな実証を開始~「日新アカデミー研修センター」を活用してエネルギーソリューションを強化~」 甲第5号証:特開2017-204949号公報 甲第6号証:「三次調整力▲2▼必要量の考え方について」(なお、「▲2▼」は、丸数字の2を意味する。) 第4 文献の記載 1 甲1について (1)甲1記載事項、甲1に記載された発明 ア 甲1には、次の事項が記載されている。 (ア)「 ソニー株式会社(代表執行役 社長 兼 CEO:吉田 憲一郎、以下「ソニー」)、東京電力エナジーパートナー株式会社(代表取締役社長:秋本 展秀、以下「東電EP」)、東電EPの100%子会社である日本ファシリティ・ソリューション株式会社(代表取締役社長:柴田 祐亮、以下「JFS」)は、国内初となるメガワット級の太陽光発電設備を活用した太陽光発電自己託送エネルギーサービス(以下、本サービス)を実現するため、本日、ソニーとJFSにて基本契約を締結いたしました。」 (イ)「2. サービスの概要 本サービスは、株式会社ソニー・ミュージックソリューションズ※1の製品倉庫であるJARED大井川センター(静岡県焼津市)の建屋屋上に約1.7MW(1、700kW)の太陽光発電設備を設置し、発生した電力のうち、大井川センターでの消費量を上回る余剰電力を、電力会社の送配電ネットワークを介して、同社の製造工場である静岡プロダクションセンター(静岡県榛原郡吉田町)へ供給(自己託送)し、ソニーグループとして発電した全ての電力を自家消費します。 ※1 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント子会社で、音楽・映像ソフトウエア等の企画・製造・販売からイベント企画・制作、マーチャンダイジング、各種デジタル施策の提供などエンタテインメントを中心としたソリューションビジネスを行っています。詳しくはこちら(https://www.sonymusicsolutions.co.jp/ )をご覧ください。」 (ウ)自己託送のイメージ図 (エ)「3. 本サービスの特徴 従来、太陽光で発電した電力を自己託送する場合、発電量の予測等が困難であったため、蓄電池を設置して変動分を補うといった対策が一般的でした。一方、本サービスは、東電EPとJFSが東京電力グループとして培ってきた高精度の発電量予測や需要予測の技術を活用したシステムを構築・初導入するもので、発電・託送・需要量の同時同量を実現します。」 イ 甲1の記載から把握できる事項 上記アの記載から、甲1には、次の事項が記載されているといえる。 (ア)上記ア(ウ)のイメージ図から、甲1には、全体として、「自己託送システム」が記載されているといえる。 そして、上記ア(イ)の記載、上記ア(ウ)のイメージ図から、甲1には、「大井川センターの建屋屋上に設置された太陽光発電設備で発生した電力のうち、大井川センターでの消費量を上回る余剰電力を、電力会社の送配電ネットワークを介して、製造工場である静岡プロダクションセンターへ供給(自己託送)する自己託送システム」が記載されているといえる。 (イ)上記ア(ウ)のイメージ図及び上記ア(エ)の記載から、甲1には、「「需要予測」「発電量予測」の技術を活用し、電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ「計画値申請」を提出する同時同量システム」が記載されているといえる。 ウ 甲1に記載された発明 上記イから、甲1には、次の発明(以下、「甲1発明」という。)が記載されている。 大井川センターの建屋屋上に設置された太陽光発電設備で発生した電力のうち、大井川センターでの消費量を上回る余剰電力を、電力会社の送配電ネットワークを介して、製造工場である静岡プロダクションセンターへ供給(自己託送)する自己託送システムであって、 「需要予測」「発電量予測」の技術を活用し、電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ「計画値申請」を提出する同時同量システム を備える、自己託送システム。 2 甲2について(甲2記載事項) 甲2には、次の事項が記載されている。 「【0012】 <第1実施形態> 図1は、本実施形態における電力管理システムの全体構成例を示している。本実施形態における電力管理システムは、例えば、所定の地域範囲における複数の需要家施設に対応する住宅、商業施設、産業施設などの需要家施設における電力を一括して管理するものである。このような電力管理システムは、例えばTEMS(Town Energy Management System)やCEMS(Community Energy Management System)などに対応する。 【0013】 本実施形態の電力管理システムは、図1において電力管理エリア10として示す一定範囲の地域における需要家施設100ごとの電気設備を対象として電力管理を行う。需要家施設100は、例えば、住宅、商業施設、あるいは産業施設などに該当する。 なお、本実施形態の電力管理エリア10が対応する地域は、1つの地域範囲により形成されてもよいし、地理的に離散している複数の地域範囲により形成されてもよい。 【0014】 本実施形態において、需要家施設100は、太陽電池により発電を行う発電装置と、蓄電池とを備える。また、需要家施設100には、太陽電池と蓄電池とのいずれか一方を備えるものがあってよい。また、需要家施設100には、太陽電池と蓄電池とのいずれも備えないものがあってよい。 需要家施設100が備える発電装置や蓄電池は、商用電源と系統連系されている。これにより、発電装置または蓄電池を備える需要家施設100は、発電装置が発電して出力する電力または蓄電池が放電により出力する電力を商用電源の電力系統(配電網)に逆潮流させて、電力系統を通して売電することができる。 【0015】 本実施形態の電力管理エリア10は、例えば一般送配電事業者と計画値同時同量制度に対応した契約を結んでいる。つまり、電力管理エリア10の運用者は、電力管理エリア10としての電力受給計画を所定の単位計画時間(例えば、30分)ごとに策定し、策定された電力受給計画を一般送配電事業者に提出する。そのうえで、電力管理エリア10における電力受給の実績が電力受給計画に対して過不足(インバランス)を生じた場合には、電気事業者と一般送配電事業者との間でインバランスに対応する精算(インバランス精算)が行われる。 【0016】 本実施形態における電力受給計画は、発電計画と需要計画とを含む。発電計画は、配電網に逆潮流させる電力についての電力管理エリア10全体としての計画値である。需要計画は、配電網から順潮流で購入する電力についての電力管理エリア10全体としての計画値である。 本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、発電計画と需要計画とのそれぞれについて実績が計画通りに達成されることが求められる。つまり、本実施形態が対応する計画値同時同量制度では、電力管理エリア10から逆潮流される電力の実績が発電計画に対して過不足のないことが求められるとともに、電力管理エリア10として順潮流を受ける電力の実績が需要計画に対して過不足のないことが求められる。 本実施形態において、発電電力とは配電網に逆潮流させる電力をいう。また、需要電力とは配電網から順潮流させる電力をいう。 【0017】 そのうえで、本実施形態の電力管理エリア10における需要家施設100は、発電計画対応グループGP1、需要計画対応グループGP2、及び中間グループGP3の3つのグループのうちのいずれかに属するように分類される。このようなグループの分類は、電力管理装置300によって行われる。 発電計画対応グループGP1は、発電計画を達成するように制御される需要家施設100の集合である。 需要計画対応グループGP2は、需要計画を達成するように制御される需要家施設100の集合である。 中間グループGP3は、逆潮流と順潮流との電力差分が一定以下となるように、即ち、発電電力と需要電力とが同等となるように制御される需要家施設100の集合である。」 「【0020】 需要家施設100は、それぞれネットワークNWと接続されることで、電力管理装置300と通信を行うことができる。 【0021】 電力管理装置300は、電力管理エリア10に属する需要家施設100全体における電気設備を対象として電力制御を実行する。このために、同図の電力管理装置300は、ネットワークNWを介して需要家施設100の各々と相互に通信が可能なように接続される。これにより、電力管理装置300は、需要家施設100が備える電気設備の運転を制御することができる。 【0022】 図2は、需要家施設100における電気設備の一構成例を示している。同図の需要家施設100は、電力メータ101、分電盤102、発電装置103、蓄電池104、負荷105、通信モデム106及び需要家施設内コントローラ200を備える。即ち、同図は、発電装置と蓄電池とのいずれも備える需要家施設100の例を示している。 【0023】 電力メータ101は、需要電力と発電電力とを測定する。即ち、電力メータ101は、受給電力を測定する。受給電力は、例えば需要電力と発電電力との差分である。 需要家施設100において、一般送配電事業者側の商用電源ラインDLから分電盤102に供給される電力が需要電力である。一方、発電装置103や蓄電池104から出力され、分電盤102から当該電力メータを経由して商用電源ラインDLに供給される電力が発電電力である。需要電力に対応する順潮流を正方向とした場合、順潮流に対応する需要電力に対して逆潮量に対応する発電電力が小さければ、受給電力は正の値として測定され、需要電力に対して発電電力が大きければ受給電力は負の値として測定される。 【0024】(省略) 【0025】 発電装置103は、太陽光を受けて発電を行う設備である。発電装置103は、太陽電池とPCS(Power Conditioning System)とを備える。発電装置103は、太陽光を受けて発電し、発電により得られた電力をPCSにより交流に変換して出力する。」 「【0031】 需要家施設内コントローラ200は、需要家施設100における電気設備(発電装置103、蓄電池104、負荷105及び通信モデム106など)を制御する。 また、需要家施設内コントローラ200は、電力メータ101にて測定される消費電力の情報を入力し、入力された消費電力の情報を各種制御に利用することができる。 【0032】 図3は、需要家施設100において備えられる需要家施設内コントローラ200の構成例を示している。同図の需要家施設内コントローラ200は、外部通信インターフェース201、外部対応送受信部202、施設内通信インターフェース203、施設内対応送受信部204、電力収集部205、制御部206及び記憶部207を備える。」 「【0035】 電力収集部205は、需要家施設における電力関連の情報を収集する。例えば電力収集部205は、電力メータ101にて測定された受給電力の情報を収集することができる。また、電力収集部205は、発電装置が発電する電力、蓄電池104の残量(蓄積電力)や充放電電力、負荷105等による負荷電力(消費電力)などを収集してよい。」 「【0038】 図4は、電力管理装置300の構成例を示している。同図の電力管理装置300は、通信部301、制御部302、及び記憶部303を備える。 【0039】(省略) 【0040】 制御部302は、電力管理エリア10内における各需要家施設100の電気設備の運転を制御する。本実施形態の制御部302は、需要家施設分類部321と電力制御部322とを備える。 需要家施設分類部321は、電力管理エリア10における複数の需要家施設について、発電計画対応グループGP1(第1需要家施設グループの一例)と需要計画対応グループGP2(第2需要家施設グループの一例)と中間グループGP3(第3需要家施設グループの一例)とのうちのいずれか一つに属するように分類を行う。 また、需要家施設分類部321は、一定時間ごとにグループの分類を行う。具体的に、需要家施設分類部321は、単位計画時間(例えば30分)ごとにグループの分類を行う。 【0041】 電力制御部322は、電力管理エリア10に対応して策定された発電計画が達成されるように発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100における電力設備の制御を行う。 また、電力制御部322は、電力管理エリア10に対応して策定された需要計画が達成されるように需要計画対応グループGP2に属する需要家施設100における電力設備の制御を行う。 また、電力制御部322は、中間グループに属する需要家施設100における電力設備について、中間グループとしての順潮流と逆潮流との電力の差分が一定以下となるように制御を行う。」 「【0046】 図5において、需要家施設分類部321は、調整開始時刻に至るのを待機する(ステップS101-NO)。本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、例えば30分の単位計画時間ごとに発電電力と需要電力とを集計し、集計した結果に基づいて単位計画時間ごとの発電計画と需要計画とを策定する。調整開始時刻は、単位計画時間が開始されるタイミングに対応する。 調整開始時刻に至ると(ステップS101-YES)、需要家施設分類部321は、需要家施設分類処理を実行する(ステップS102)。 【0047】 図6のフローチャートは、ステップS102としての需要家施設分類処理の一例を示している。需要家施設分類部321は、電力管理エリア10における需要家施設100ごとの受給電力を取得する(ステップS201)。 この際、需要家施設分類部321は、需要家施設100ごとの需要家施設内コントローラ200に対して受給電力要求を送信する。需要家施設内コントローラ200は、受給電力要求の受信に応じて、電力収集部205が電力メータ101から入力した受給電力の情報を電力管理装置300に送信する。需要家施設分類部321は、このようにして各需要家施設100の需要家施設内コントローラ200から送信された受給電力の情報を取得する。」 「【0052】 ステップS103の発電計画対応グループ対象電力制御として、電力制御部322は、例えば現単位計画時間に対応して策定された発電計画が達成されるように制御する。このために、電力制御部322は、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100から一定時間(例えば、数分)ごとに受給電力の情報を取得する。電力制御部322は、取得された受給電力に基づいて求められる発電電力の値(実発電電力値)と、発電計画において示される発電電力の値(計画発電電力値)との差分(受給差分)を算出する。電力制御部322は、算出された受給差分が解消されるように、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100における蓄電池104の充放電動作を制御する。 つまり、電力制御部322は、算出された受給差分に関して実発電電力値が計画発電電力値より大きくなる傾向の場合には、発電計画対応グループGP1の全てまたは一部の需要家施設100において蓄電池104に発電装置103により発電される電力を充電させる。これにより、実発電電力値が抑制され計画発電電力値と同等とすることができる。 一方、電力制御部322は、算出された受給差分に関して実発電電力値が計画発電電力値より小さくなる傾向の場合には、発電計画対応グループGP1の全てまたは一部の需要家施設100において蓄電池104に放電を実行させ、発電電力を増加させる。これにより、実発電電力値を増加させて計画発電電力値と同等とすることができる。 なお、電力制御部322は、上記のように蓄電池104の充放電動作を制御するにあたり、需要家施設100における需要家施設内コントローラ200に指示を行って、蓄電池104の充放電動作を制御させる。」 「【0059】 <第2実施形態> 続いて、第2実施形態について説明する。先の第1実施形態の場合、発電計画対応グループGP1については、電力管理装置300が、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100の電力状態を監視し、発電計画が達成されるように、発電計画対応グループGP1における少なくとも一部の需要家施設100の充放電動作を制御していた。同様に、需要計画対応グループGP2については、電力管理装置300が、需要計画対応グループGP2に属する需要家施設100の電力状態を監視し、需要計画が達成されるように、需要計画対応グループGP2における少なくとも一部の需要家施設100の充放電動作を制御していた。」 「【0064】 まず、図7に示される発電計画対応グループ対象電力制御について説明する。電力制御部322は、ステップS101に対応して開始された現単位計画時間に対応する発電計画を記憶部303に記憶される発電計画情報331から取得する(ステップS301)。 また、電力制御部322は、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100ごとの現在に対応する実発電電力と実需要電力とを取得する(ステップS302)。 【0065】 電力制御部322は、ステップS301により取得された発電計画と、ステップS302により取得された発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100ごとの現在に対応する実発電電力と実需要電力とに基づき、需要家施設100ごとの発電電力についての制御目標値を決定する(ステップS303)。 電力制御部322は、ステップS303により需要家施設100ごとに決定された制御目標値を、それぞれ、対応の需要家施設100に対して送信する(ステップS304)。 制御目標値の受信に応じて、発電計画対応グループGP1に属する各需要家施設100の需要家施設内コントローラ200は、発電電力が制御目標値となるように蓄電池104の充放電制御を行う。この結果、電力管理エリア10としての発電計画に対応する計画値同時同量制御が実行される。 【0066】 なお、同図の処理は、単位計画時間ごとに対応して1回行われるものであってもよいし、単位計画時間をさらに区分した一定時間ごとに行われるものであってもよい。 なお、ステップS302においては、制御対象となる期間における発電電力と需要電力との予測値を取得し、ステップS303においては、予測値に基づいて制御目標値を決定するようにしてよい。」 3 甲3について(甲3記載事項) 甲3には、次の事項が記載されている。 「▲3▼広域機関への計画提出 自己託送においては、契約者において、発電計画や需要計画等の各種計画を「広域機関」へ提出することになります。(広域機関とは、それまで、原則として地域ごとに行われていた電力需給の管理を、地域を越えてより効率的にやり取りすることで、安定的な電力需給体制を強化するために設立された機関です。)」(なお、「▲3▼」は、丸数字の3を意味する。) 「 」 「注)一般的な小売電気事業(図 3-8)と比較してみると、一部の計画が提出対象外となるほか、発電所も需要施設も自己又は自己と密接な関係を有するものに限定され、取引所での電気の売買もできないという制約条件が加わったものが自己託送であるとして理解できるかもしれません。」 4 甲4について(甲4記載事項) 甲4には、次の事項が記載されている。 「■PV自己託送を実現するEMS(エネルギー管理システム)を開発・EMSを中心に様々なソリューションを提供 PV余剰電力を自己託送するためには、あらかじめ自己託送する発電量を計画して、計画と同時同量の自己託送を行う必要があります。計画と同時同量になるようにPV発電量を制御するEMSをENERGYMATE -Factoryの機能追加として開発中で、年内に自己託送の運用を開始する予定です。」 5 甲5について(甲5記載事項) 甲5には、次の事項が記載されている。 「【0014】 プラント1は、電力設備として、蒸気発電装置111と、電力負荷201と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121と含む。蒸気発電装置111と太陽光発電装置101とガスタービン発電装置121の夫々の発電電力量は、は、制御装置10によって監視・制御される。遮断器16は、プラント1と外部の送配電網との接続点(連系点)である。電力測定器160における電力がプラント1の内部から外部に流れることで、プラント1から送配電網へ送電する。電力測定器160は、プラント1の現在の送電電力を制御装置10へ送る。制御装置10は、一定間隔の時間で送電計画と比較している。制御装置10は、ここで測定された電力量から、蒸気発電装置111と太陽光発電装置101とガスタービン発電装置121の発電電力量を除算することによって、電力負荷201の電力を知ることができる。蒸気発電装置111と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121とは、制御線を介して、制御装置10に接続されている。蒸気発電装置111と、電力負荷201と、太陽光発電装置101と、ガスタービン発電装置121とは、電力線と遮断器16を介して送配電網に接続されている。 【0015】(省略) 【0016】 プラント1から送配電網へ送ることができる送電電力は、「送電電力=蒸気発電+太陽光発電-電力負荷+ガスタービン発電」となる。電力負荷と太陽光発電の実際の電力量は、計画と異なる。このため、連系点における送電電力は、計画値とずれてしまう。一方、電力の託送において、30分ないし1時間の単位時間の電力量の実績値を計画値と同量にしなければ、ペナルティを課される。このため、実運転時、制御装置10は、単位時間の発電計画を守るために、単位時間より短い計測時間の周期で発電を計測し、予測し、リアルタイムにプラント1内の電力を調整する。 【0017】(省略) 【0018】 蒸気発電やガスタービン発電においては、通常、燃料投入量を操作することができるので、計画通りに発電でき、その効率は、定格出力すなわち最大出力の場合に最も効率が良い。したがって、プラント1のような構成では、太陽光発電の実績値が計画値よりも大きい場合、太陽光発電を抑制することが考えられる。一方、本実施例では、制御装置10は、太陽光発電を抑制せず、蒸気発電を抑制する。通常、蒸気発電を抑制すると発電効率が下がり、経済的ではないが、本実施例の着眼点を以下に説明する。 【0019】(省略) 【0020】 そこで、本実施例では、この余剰な蒸気を有効活用するため、プラントに蒸気タービンを設置して発電することで、プラント内の電力を賄い、さらに余剰の電力を自社内の他のプラントやビルなどに託送、さらには、電力卸売市場に売電するための電力供給システムを提供する。これにより、既存の大型ボイラを高効率で運転し、プラント内だけでなく、他プラントにも送電することにより、自社内でのエネルギーの自給率を上げることができる。」 「【0025】 この図に示された制御ロジックは、発電装置の種類毎に、出力調整優先度と、出力調整方向と、実績値性質とを示す。出力調整優先度は、当該発電装置を調整する優先度を示す。出力調整方向は、出力を調整する方向を示す。例えば、当該発電装置の出力調整方向が「減」を示す場合、当該発電装置は出力を減らすことができることを示す。実績値性質は、当該発電装置の出力の実績値が計画値と一致するか否かを示す。例えば、実績値性質が「不一致」を示す場合、当該発電装置の出力の実績値は計画値と一致しないことを示す。 【0026】 本実施例では、計画値と実績値の差が生じる予測となった場合に、制御装置10は、それを修正するために、もっとも優先して蒸気発電を制御する。制御装置10は、蒸気発電の制御は主に余剰が生じた場合に抑制する。もし、蒸気発電を抑制しても抑制量が足りない時、制御装置10は、太陽光発電を抑制する。この場合、制御装置10は、太陽光発電のインバータを制御することで、出力を減少させる。太陽光発電よりも優先して蒸気発電を抑制し、太陽光発電の出力制限をできるだけ短くすることで、発電事業者は、高い売電収入を確保することができる。」 6 甲6について(甲6記載事項) 甲6には、次の事項が記載されている。 「 」 「 」 「 」 第5 当審の判断 1 本件発明1について (1)本件発明1と甲1発明との対比 ア 甲1発明の「太陽光発電設備」は、本件発明1の「発電設備」に相当する。甲1発明の「電力会社の送配電ネットワーク」は、本件発明1の「一般送配電事業者の送配電ネットワーク」に相当する。甲1発明の「静岡プロダクションセンター」は、「大井川センター」とは別の場所であるから、甲1発明の「静岡プロダクションセンター」の「製造工場」は、本件発明1の「前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備」に相当する。 また、甲1発明の「太陽光発電設備で発生した電力」のうちの「余剰電力」は、「静岡プロダクションセンター」の「製造工場」に送電される点で、本件発明1の「発電設備を用いて発電された電気」に相当する。 そうすると、甲1発明の「大井川センターの建屋屋上に設置された太陽光発電設備で発生した電力のうち、大井川センターでの消費量を上回る余剰電力を、電力会社の送配電ネットワークを介して、製造工場である静岡プロダクションセンターへ供給(自己託送)する自己託送システム」は、本件発明1の「発電設備を用いて発電された電気を、一般送配電事業者の送配電ネットワークを介して、前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備へ送電する託送を支援するシステム」に相当する。 イ 甲1発明の「同時同量システム」は、コンピュータシステムである点で、本件発明1の「少なくとも一つのコンピュータ」と、「少なくとも一つの情報処理装置」で共通する。 ウ そうすると、本件発明1と甲1発明とは、次の点で、一致又は相違する。 <一致点> 発電設備を用いて発電された電気を、一般送配電事業者の送配電ネットワークを介して、前記発電設備とは別の場所にある電力需要設備へ送電する託送を支援するシステムであり、 少なくとも一つの情報処理装置を備える、 システム。 <相違点> 少なくとも一つの情報処理装置が、本件発明1は、「コンピュータ」であって、「前記発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを取得し」、「前記発電計画データの取得後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得し」、「前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定し」、「前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する」処理を実行するのに対して、甲1発明は、「同時同量システム」であって、「「需要予測」「発電量予測」の技術を活用し、電力広域的運営推進機関(OCCTO)へ「計画値申請」を提出する」処理を実行する点。 (2)相違点の判断 甲2~甲6には、「前記発電計画データの取得後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得」することは記載されていない。このため、甲2~甲6には、「前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定」すること、さらに、「前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する」ことも記載されていない。 そうすると、甲1発明に、甲2~甲6に記載された技術的事項を適用しても、相違点の構成に至らず、また、当業者が容易に想到することができたものでもない。 また、本件発明1は、相違点の構成とすることで、「自己託送といった託送を利用する者、又はそれをサポートする者は、予測されたインバランスに対して、広域機関に報告済みの発電計画を修正すべきか、発電設備において稼働調整を行うべきか等、適切な対策を容易に選択することができる。」(【0019】)との効果を奏するものである。 (3)申立人の主張について 申立人は「甲第2号証には、発電計画データの取得後に、発電予測データを取得することが記載されている。」として、「本件特許発明1の特定事項Cは、甲第2号証に記載されている。」と主張している(申立書14ページ)。 上記特定事項C及び関連する特定事項Bは、 「B 前記発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを取得し、 C 前記発電計画データの取得後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得し、」(B、Cなどの分説は、申立人による。) であって、本件発明1では、発電量の計画値における時間枠と予測データの時間枠は共通であって、これを単位として、発電計画値データと発電予測データとを取得することが特定されている。 これに対して、甲2には、 「図5において、需要家施設分類部321は、調整開始時刻に至るのを待機する(ステップS101-NO)。本実施形態が対応する計画値同時同量制度のもとでは、例えば30分の単位計画時間ごとに発電電力と需要電力とを集計し、集計した結果に基づいて単位計画時間ごとの発電計画と需要計画とを策定する。調整開始時刻は、単位計画時間が開始されるタイミングに対応する。」(【0046】) 「ステップS103の発電計画対応グループ対象電力制御として、電力制御部322は、例えば現単位計画時間に対応して策定された発電計画が達成されるように制御する。このために、電力制御部322は、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100から一定時間(例えば、数分)ごとに受給電力の情報を取得する。電力制御部322は、取得された受給電力に基づいて求められる発電電力の値(実発電電力値)と、発電計画において示される発電電力の値(計画発電電力値)との差分(受給差分)を算出する。電力制御部322は、算出された受給差分が解消されるように、発電計画対応グループGP1に属する需要家施設100における蓄電池104の充放電動作を制御する。 つまり、電力制御部322は、算出された受給差分に関して実発電電力値が計画発電電力値より大きくなる傾向の場合には、発電計画対応グループGP1の全てまたは一部の需要家施設100において蓄電池104に発電装置103により発電される電力を充電させる。これにより、実発電電力値が抑制され計画発電電力値と同等とすることができる。 一方、電力制御部322は、算出された受給差分に関して実発電電力値が計画発電電力値より小さくなる傾向の場合には、発電計画対応グループGP1の全てまたは一部の需要家施設100において蓄電池104に放電を実行させ、発電電力を増加させる。これにより、実発電電力値を増加させて計画発電電力値と同等とすることができる。 なお、電力制御部322は、上記のように蓄電池104の充放電動作を制御するにあたり、需要家施設100における需要家施設内コントローラ200に指示を行って、蓄電池104の充放電動作を制御させる。」(【0052】) と記載されており、これらの記載によれば、甲2に記載された技術事項は、計画値は30分単位で発電電力を得ているのに対し、予測値は30分単位で得るのではなく、数分単位で実際に受給している受給電力の値を得、その推移を見ることで現在の単位時間について、計画発電電力と比較して電力値が余ることが予測されるか、不足することが予測されるか判断し、蓄電池に対する充電あるいは放電の制御を行うというものである。 したがって、申立人の「本件特許発明1の特定事項Cは、甲第2号証に記載されている。」という主張は誤りであり、当該主張は採用することができない。 (4)小括 以上より、本件発明1は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 2 本件発明2~8について 本件発明2~8は、本件発明1を直接又は間接的に引用する発明である。そして、本件発明2~8は、本件発明1の「少なくとも一つのコンピュータ」が、「前記発電設備による発電量の計画値を、所定の単位時間で区分された複数の時間枠毎に記述する発電計画データを取得し」、「前記発電計画データの取得後に、前記複数の時間枠の少なくとも一つについて、前記発電設備による発電量の予測値を記述する発電予測データを取得し」、「前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定し」、「前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する」処理を実行する構成を含むものであるから、本件発明2~8は、甲1発明及び甲2~甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 3 本件発明9について 本件発明9は、本件発明1の、少なくとも一つのコンピュータが「前記少なくとも一つのコンピュータが、前記発電計画データに記述された前記計画値が、前記発電予測データに記述された前記予測値と相違する時間枠を、インバランス時間枠として特定する」こと、「前記インバランス時間枠から所定時間前のゲートクローズ時点を算出し、現時点が前記ゲートクローズ時点よりも前であるのか否かを判定する」ことを含むものであるから、甲1発明及び甲2~甲6に記載された技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 請求項1~9に係る特許は、特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては取り消すことはできない。 また、他に請求項1~9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2022-09-06 |
出願番号 | P2019-235268 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(G06Q)
|
最終処分 | 07 維持 |
特許庁審判長 |
渡邊 聡 |
特許庁審判官 |
関口 明紀 松田 直也 |
登録日 | 2021-12-10 |
登録番号 | 6991492 |
権利者 | 株式会社 FD デジタルグリッド株式会社 |
発明の名称 | 託送を支援するシステム及び方法 |
代理人 | 弁理士法人 快友国際特許事務所 |
代理人 | 弁理士法人 快友国際特許事務所 |