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審決分類 審判 全部無効 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部無効 特174条1項  B65D
審判 全部無効 2項進歩性  B65D
管理番号 1397136
総通号数 17 
発行国 JP 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2023-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2022-04-08 
確定日 2023-04-03 
事件の表示 上記当事者間の特許第6908969号発明「包装用容器」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 第1 請求の趣旨及び答弁の趣旨
1 請求の趣旨
特許第6908969号の特許請求の範囲の請求項1から5に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求める。

2 答弁の趣旨
本件特許無効審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする、との審決を求める。

第2 手続の経緯
1 本件特許の手続の経緯の概略
(1) 本件特許の出願から設定登録までの経緯
本件特許の請求項1~5に係る発明についての、出願から本件無効審判請求の前までの手続の経緯の概略は、次のとおりである。

平成28年 2月25日(優先権主張 平成27年2月26日 日本国) :出願(特願2016-33987号)
令和元年11月28日付け:拒絶理由通知
令和2年 4月 1日 :意見書、手続補正書の提出
同年 9月25日付け:拒絶理由通知(最後)
令和3年 1月28日 :意見書の提出
同年 6月17日付け:特許査定
同年 7月 6日 :設定登録

(2) 本件無効審判の手続の経緯
本件無効審判における手続の経緯の概略は、次のとおりである。

令和4年 4月 8日 :審判請求書の提出
同年 7月12日 :答弁書の提出
同年 8月30日付け:審理事項通知(以下「審理事項通知(1)」という。)
同年 9月30日 :口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書(1)」という。)の提出(請求人)
同年 9月30日 :口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書(1)」という。)の提出(被請求人)
同年10月18日付け:審理事項通知(以下「審理事項通知(2)」という。)
同年11月 7日 :口頭審理陳述要領書(以下「請求人要領書(2)」という。)の提出(請求人)
同年11月 7日 :口頭審理陳述要領書(以下「被請求人要領書(2)」という。)の提出(被請求人)
同年11月16日 :口頭審理

第3 本件発明
本件特許の請求項1~5に係る発明(以下、請求項の番号にしたがって「本件発明1」などという。)は、それぞれ本件特許の特許請求の範囲の請求項1~5に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1~5の記載は、次のとおりである。
「【請求項1】
ポリスチレン発泡体からなり、底部と、当該底部の外周から起立した側部と、当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部とを備え、
前記底部及び前記側部の内側並びに前記フランジ部の表側に、共押出法で製造されたガスバリア層を有する多層フィルムが積層されたガス置換用包装用容器であって、
前記フランジ部は、
所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、
該平坦部は、
厚さが3.5mm以下、
表面粗さRa=2.0μm未満であり、
前記平坦部の外縁端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、
該薄肉部は、装着される所定の蓋材と非溶着部分となるように寸法付けられている
ことを特徴とするガス置換用包装用容器。
【請求項2】
前記側部と前記フランジ部の裏面とが連接する部分の曲率半径は2mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載のガス置換用包装容器。
【請求項3】
前記底部と前記側部とが連設する部分の平面視における四つの隅には、隅切りされた隅切り部が設けられている
ことを特徴とする請求項1または2に記載のガス置換用包装容器。
【請求項4】
前記底部および前記側部には、底部から側部に通じる溝部が形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のガス置換用包装容器。
【請求項5】
請求項1に記載の包装用容器に食品を詰める工程と、
前記食品の入った包装用容器のフランジ部に所定の蓋材を装着する工程と、
前記フランジ部の平坦部の外縁端に形成された薄肉部の上端と前記蓋材との間を非溶着状態で
前記フランジ部と前記蓋材とを接着して前記包装用容器を密封する工程とを備える
ガス置換用包装用容器の使用方法。」

第4 請求人の主張及び証拠方法
1 請求人の主張の概要
請求人は、審判請求書、請求人要領書(1)、及び、請求人要領書(2)において、以下の無効理由1~3を主張している。(第1回口頭審理調書)以下、甲第1号証等を「甲1」等と略記する。

(1) 無効理由1(甲1に記載された発明を主たる引用発明とした進歩性欠如)
本件特許の請求項1~5に係る発明は、甲1に記載された発明及び、甲2~甲4、甲11、甲12、甲14、甲15の周知技術、甲5、甲6、甲8~甲10に記載された事項、甲7、甲13に記載された設計的事項に基いて、本件特許の出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件特許の請求項1~5に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許の請求項1~5に係る特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。

(2) 無効理由2(新規事項の追加
令和2年4月1日に提出された手続補正書による本件特許に係る出願の願書に添付された特許請求の範囲の請求項1についての補正のうち、補正前の「前記フランジ部は、全周に亘って幅4mm以上の平坦部を有する」という記載を、「前記フランジ部は、所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、」とする補正は、新規事項を追加するものであるから、本件特許は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない補正をしたものについてされたものであり、特許法123条1項1号に該当し、無効とすべきである。

(3) 無効理由3(明確性
本件特許の請求項1の「前記フランジ部は、所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、該平坦部は、厚さが3.5mm以下、表面粗さRa=2.0μm未満であり、前記平坦部の外縁端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、該薄肉部は、装着される所定の蓋材と非溶着部分となるように寸法付けられている」の記載は明確ではなく、本件特許の請求項1及び請求項1を引用する請求項2~5に係る発明についての特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し、無効とすべきである。

2 証拠方法
甲1:特開平4-72135号公報
甲2:特開2003-20070号公報
甲3:特開2015-36300号公報
甲4:特開2012-196875号公報
甲5:特開2004-67117号公報
甲6:特開平10-180952号公報
甲7:特開平4-332623号公報
甲8:特開2004-42954号公報
甲9:特開2001-129939号公報
甲10:特開2007-38631号公報
甲11:特開2006-103757号公報
甲12:登録実用新案第3012092号公報
甲13:特開昭62-193907号公報
甲14:特許第5396509号公報
甲15:意匠登録第1087955号公報
甲16:特開平11-222222号公報
甲17:特開2009-202894号公報
甲18:特開2002-160777号公報
甲19:本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲、図面
甲20:本件特許の審査における令和2年4月1日提出の意見書
甲21:本件特許の審査における令和2年4月1日提出の手続補正書

第5 被請求人の主張の概要
被請求人は、答弁書、被請求人要領書(1)、及び、被請求人要領書(2)において、大要請求人の主張する上記無効理由1~3はいずれも理由がない旨主張している。(第1回口頭審理調書)

第6 当審の判断
以下、下線は、便宜のため当審が付した。また以下「・・・」は、摘記の省略を示す。
事案に鑑み、まず無効理由3(明確性)について判断し、次に無効理由2(新規事項の追加)について判断し、最後に無効理由1(甲1に記載された発明を主たる引用発明とした進歩性欠如)について判断する。

1 無効理由3(明確性)について
特許法36条6項2号の定める要件を充足するか否かは、すなわち、発明が明確であるか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点を基礎として、判断されるべきである。
本件特許の請求項1の「前記フランジ部は、
所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、
該平坦部は、
厚さが3.5mm以下、
表面粗さRa=2.0μm未満であり、
前記平坦部の外縁端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、
該薄肉部は、装着される所定の蓋材と非溶着部分となるように寸法付けられている」との記載から、フランジ部が有する平坦部の構成、平坦部の寸法、平坦部と薄肉部との位置関係及び薄肉部の構成が把握でき、上記記載自体は明確である。
そして、本件特許の請求項1に記載された「前記フランジ部は、所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、」について、本件特許明細書には、「【発明の効果】【0016】本発明による包装用容器は、フランジ部の全周に亘って幅4mm以上の平坦部を有することにより、上記フランジ部に対してトップシール用蓋材の着脱が容易になる。すなわち、フランジ部の平坦部が幅4mm以上で全周に亘っているため、標準的なトップシール機でも、上記平坦部の幅内にトップシール用蓋材を確実に熱溶着させることができる。したがって、トップシール用蓋材で密閉したポリスチレン発泡体製の包装用容器に食品を詰めた弁当や惣菜を量産することができる」と記載されていることを踏まえると、本件特許の請求項1の「所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部」とは、「水平な平坦部」の「幅」が「4mm」以上あり、かつ、その「水平な平坦部」は、「所定の蓋材を熱溶着するため」のものであって、「水平な平坦部」の「幅」が「4mm」以上あることで、「標準的なトップシール機でも、」「確実に熱溶着させることができる」ものであることが理解でき、当該理解は上記した本件特許の請求項1についての理解と整合する。
そうすると、請求人は、審判請求書の第37ページにおいて、本件特許発明の「フランジ部」に「曲面部」や「薄肉部」が含まれるか否かが明らかではないと主張しているけれども、本件特許の請求項1には、
「前記フランジ部は、
・・・水平な平坦部を全周に亘って有し、
・・・
前記平坦部の外縁端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、・・・」
との記載において、平坦部と薄肉部との位置関係は明確であるから、薄肉部、曲面部がフランジ部の一部であるか否かに関わらず、本件発明1は明確である。
よって、本件特許の請求項1の「前記フランジ部は、
所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、
該平坦部は、
厚さが3.5mm以下、
表面粗さRa=2.0μm未満であり、
前記平坦部の外縁端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、
該薄肉部は、装着される所定の蓋材と非溶着部分となるように寸法付けられている」との記載は明確であり、本件発明1及び本件発明1を引用する本件発明2~5に係る特許は、特許法第36条第6項第2号の規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

2 無効理由2(新規事項の追加)について
補正が、明細書又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであるときは、当該補正は、「明細書又は図面に記載した事項の範囲内において」したものということができる。
以下、令和2年4月1日に提出された手続補正書による本件特許の請求項1への補正に係る構成である「前記フランジ部は、所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、」(甲21)が、本件特許に係る出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものであるか否かについて検討する。

(1) 本件特許に係る出願当初の明細書の記載事項について(下線は強調のため当審が付した)。
本件特許に係る出願当初の明細書には、「図1に示すとおり、底部1は、食品が載置される矩形状の食品載置部を形成する。側部2は、底部1の外周縁と湾曲して連設し、斜め上に起立している。フランジ部3は、側部2の上端と湾曲して連設し、外方に向けて水平に延出している。」(甲19、【0031】)、「ここで、図2に示すとおり、平坦部31は、フランジ部3の表面及び裏面にて形成されている。平坦部31の幅は、フランジ部3の表面の内縁端から外縁端まで、かつ全周に亘って幅4mm以上ある。多層フィルムFは平坦部31全体に貼り付いている。・・・平坦部31は、フランジ部3の表面のみならず、裏面の内縁端から外縁端まで、かつ全周に亘って幅4mm以上形成されてもよい。この場合、フランジ部3の表面及び裏面が平行していてもよく、表面側及び/又は裏面側が傾斜していてもよい。平坦部31の位置は、フランジ部3の内縁側若しくは外縁側又は中央でもよい。平坦部31がフランジ部3の幅方向の全部又は外縁側に位置する場合、この平坦部の外縁端の曲率半径は2.5mm以下が好ましい。」(同【0034】)、「平坦部31の外縁端には、全周に亘ってさらに厚みの薄い薄肉部31aが形成されている。多層フィルムFは、薄肉部31aの先端まで接着されている。これにより、薄肉部31aの先端において基材から多層フィルムFが剥がし難く、袋化現象が生じにくい。」(同【0035】)、「このように、本発明の一実施形態における包装用容器(以下、「本包装用容器」ともいう。)は、フランジ部3の全周に亘って幅4mm以上の平坦部31を有することにより、このフランジ部に対してトップシール用蓋材の熱溶着が確実になる。すなわち、フランジ部3の平坦部31が幅4mm以上で全周に亘っているため、例えば一般的なトップシール機でも、この平坦部の幅内にトップシール用蓋材を確実に熱溶着させることができる。したがって、トップシールで密閉したポリスチレン発泡体製の本包装用容器に食品を詰めた弁当や惣菜を量産することができる。」(同【0045】)と記載されており、これらの記載から、フランジ部が水平に延出していること、平坦部は全周に亘って幅4mm以上あること、平坦部の位置は、フランジ部の内縁側若しくは外縁側又は中央でもよいこと、平坦部の外縁端には薄肉部が形成されていること、平坦部の幅内で蓋材を熱溶着することが記載されているといえる。

(2) 「前記フランジ部」が「水平な平坦部を全周に亘って有」することについて
「前記フランジ部」が「水平な平坦部を全周に亘って有」することは、本件特許に係る出願当初の明細書に明示されていないが、上記(1)で示した本件特許に係る出願当初の明細書の記載事項である、フランジ部が水平に延出していること、平坦部は全周に亘って幅4mm以上あること、及び、フランジ部3の大部分を平坦部31が占めていることの図2の図示を総合すれば、「平坦部」が「水平」であることが理解できる。

(3) 「所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部」について
本件特許に係る出願当初の明細書には、「平坦部31の幅は、フランジ部3の表面の内縁端から外縁端まで、かつ全周に亘って幅4mm以上ある。」(【0034】)と記載されているものの、上記(1)で示した本件特許に係る出願当初の明細書に記載されているといえる事項である、平坦部は全周に亘って幅4mm以上あること、平坦部の位置は、フランジ部の内縁側若しくは外縁側又は中央でもよいこと、平坦部の外縁端には薄肉部が形成されていること、平坦部の幅内で蓋材を熱溶着すること及び図2を総合すれば、平坦部の外縁端に薄肉部が形成される場合は、平坦部はフランジ部の内縁側及び中央に位置し、全周に亘って幅4mm以上であり、平坦部の幅内に蓋材を熱溶着することとなるから、フランジ部が「所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部」を有することは、当業者であれば、本件特許に係る出願当初の明細書又は図面の記載から理解できる。

(4) 小括
以上のとおりであるから、令和2年4月1日に提出された手続補正書による本件特許の請求項1への補正に係る構成である「前記フランジ部は、所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有し、」を備えたものとする補正は、本件特許の出願当初の明細書、特許請求の範囲又は図面の全ての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入しないものであり、当該補正は、新規事項を追加するものではないから、本件特許は、特許法第17条の2第3項の規定に違反してされたものではない。

3 無効理由1(甲1に記載された発明を主たる引用発明とした進歩性欠如)
(1) 甲1に記載された技術事項及び甲1発明の認定
ア (第1ページ左欄第4~20行)
「2特許請求の範囲
1.発泡樹脂シートと積層フィルムとからなる容器本体ならびに前記容器本体の積層フィルムにヒートシールされた蓋材とを備えた食品用容器であって、前記積層フィルムは、前記発泡樹脂シートに対し熱ラミネート可能な表面層と樹脂ラテックスによるガスバリヤー層とヒートシール層とが順に重ねられたものであり、この積層フィルムの表面層が発泡樹脂シートに熱ラミネートされ且つ積層フィルムのヒートシール層に前記蓋材がヒートシールされていることを特徴とする食品用容器
2.発泡樹脂シートは発泡ポリスチレンシートであり、積層フィルムの表面層がポリスチレン系樹脂フィルムで、樹脂ラテックスがポリ塩化ビニリデン系樹脂ラテックスである請求項1記載の食品用容器」

イ (第2ページ右上欄第18行~右下欄第14行)
「[発明が解決しようとする課題]
しかしながら、上記従来のいずれの手段においても、食品用容器を製作するために、予め発泡樹脂シートに前記各層を積層しておき、この積層されたシートを容器製造工場へ搬入してから容器の製造を行なわなければならず、シートの製造と容器の製造ならびに食品の充填を一連の工程として行なうことができない.・・・
さらに実公昭63-25156号公報に記載されている手段では、発泡ポリスチレンシートに積層されるものが、ポリ塩化ビニリデンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムで、共にフィルムであるため、各フィルムの間をバインダーを介して接着することが必要になる.
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、発泡樹脂シートにガスバリヤー層とヒートシール層とを設け、しかもガスバリヤー層をラテックスコーティングを用いて形成できるようにし、構成を簡略化できるようにした食品用容器を提供することを目的としている.
また本発明は、積層フィルムと発泡樹脂シートとを熱ラミネーション法により貼り合わせることにより積層作業を容易にした食品包装体の製造方法を提供することを目的としている.
さらに本発明は、前記積層フィルムと発泡樹脂シートとを自動成形充填装置の前段にて熱ラミネーション法により貼り合わせ、これに連続して容器本体の成形工程、内容物の充填工程、蓋材のシール工程を行なえるようにして、製造工程を効率化した食品用容器の製造装置を提供することを目的としている.」

ウ (第3ページ左下欄第20行~右下欄第17行)
「第2図において符号Aは発泡樹脂シートであり、Bは積層フィルムである.
発泡樹脂シートAは、発泡ポリスチレン(PSP)シートであり、その厚さは0.5~3.0mmで、通常は0.75~2.0mm、坪量50~300g/m2のものが使用される.
積層フィルムBは、表面層1、ガスバリヤー層2、ヒートシール層3が順に積層されたものである.
表面層1は発泡樹脂シートAと熱ラミネート可能な樹脂シートであり、具体的にはポリスチレン系の樹脂フィルムで、好ましくはハイインパクトポリスチレン(HIPS)フィルムである.
ガスバリヤー層2は、ポリ塩化ビニリデン樹脂(PVDC)のラテックス(エマルジョン)をコートした塗膜である.このラテックスを前記表面層1にコーティング(塗布)することによりガスバリヤー層2が得られる.」

エ (第4ページ左上欄第7行~右上欄第14行)
「上記積層フィルムBはラミネート積層法によって製作される.このラミネート積層法において、ガスバリヤー層2を構成するポリ塩化ビニリデンのラテックスとしてバリヤー接着剤(例えば商品名「クレハロンラテックス AC-750」;呉羽化学工業株式会社製)を使用すれば、これを表面層1に塗布しバインダーを用いることなくヒートシール層3をラミネート接着することが可能になる.なお接着性のないまたは接着性の弱いラテックスを使用する場合には表面層1とヒートシール層3との間にバインダーを介在させる.
第2図に示す発泡樹脂シートAと積層フィルムBとを熱ラミネート工程5において熱ラミネートすることにより、ガスバリヤー性の発泡シートCを得ることができる.すなわち積層フィルムBの表面層1を発泡樹脂シートA側とし、発泡樹脂シートAと積層フィルムBを加熱ローラ間に通すことにより、表面層1のポリスチレン系の樹脂フィルムと発泡ポリスチレンシートとをバインダーを介することなく熱貼りすることができる.
このようにして得られたガスバリヤー性の発泡シートCは例えば第1図に示すようなトレイ形状の容器本体に成形される.そして内容物を入れるとともに内部に脱酸素剤を入れまたは内部をガス置換する.そして蓋材4にてシールする.この蓋材4は積層フィルムBのヒートシール層3にヒートシールにより融着される.」

オ (第4ページ右下欄第19行~第5ページ左上欄第15行)
「符号22で示す部分では、成形された容器本体内に内容物(食品、生鮮物など)が充填(挿入)される.脱酸素剤を使用する場合には、ここで脱酸素剤が容器本体内に入れられる.・・・
符号24で示す真空チャンバでは、容器本体D内を真空にして脱気し、さらにここで蓋材4が完全にシールされる.なおガス置換包装を行なう場合には、ここでの真空、脱気後に置換ガスが充填されてからシールされる.
蓋材4にてシールされた後、冷却部25にて冷却され、トリミング部26により各食品用容器ごとに分離され、取り出し部27から取り出される.」

カ (第5ページ左上欄第16行~右上欄第16行)
「[実施例]
発泡樹脂シートAとして発泡ポリスチレンシートを使用した.この発泡ポリスチレンシートは、厚さ0.7mm、坪量110g/m2、幅寸法430mmである.
積層フィルムBは厚さ寸法が64μmで幅寸法が430mmのものを使用した.積層フィルムBの構成は以下の通りである.
表面層1:ハイインパクトポリスチレンフィルム、厚さ30μm.
ガスバリヤー層2:接着性ポリ塩化ビニリデン樹脂のラテックス、具体的には「クレハロンラテックス AC-750」、厚さ4μm.
ヒートシール層3:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム、厚さ30μm.
積層フィルムBの製造方法は、クレハロンラテックスをハイインパクトポリスチレンフィルムの面に塗布し、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネート接着したものである.この積層フィルムBの物性は以下の表-1の通りである.」

キ (第5ページ右下欄第5行~第6ページ左上欄第5行)
「上記発泡樹脂シートA、積層フィルムBならびに蓋材4を第3図と第4図に示した、シート供給部10、積層フィルム供給部11、蓋材供給部13から供給し、自動成形充填装置20により成形・充填作業を行なった.成形・充填条件は以下のとおりである.
(1)加熱ローラ12a表面温度;
170±5℃
(2)ラインスピード(シート供給スピード);
約2m/min
(3)容器本体の外形寸法;
125×195×25(mm)
(4)充填食品(内容物) ;
ロースハムのスライス品(75g)
(5)ガス置換使用ガス;
窒素/炭酸ガス=80/20vol%
(6)ガス置換率;
99.5%以上(容器空間部分の残存酸素の%より算出)
(7)蓋材と容器本体とのヒートシール温度;
125℃」

ク (第6ページ右上欄第7行~左下欄第3行)
「・・・特に本発明の積層フィルムでは、ガスバリヤー層が樹脂のラテックスにて構成されているため、表面層とヒートシール層の2枚のフィルムをラミネートすることにより、薄く構成することができる.しかもバリヤー接着剤(接着性のラテックス)を使用すれば、バインダーを使用することなく表面層とヒートシール層の各フィルムをラミネートでき、積層フィルムを簡単に構成できるようになる.」

ケ (第1図~第4図)






コ 上記オの「成形された容器本体内に内容物(食品、生鮮物など)が充填(挿入)される」、「ガス置換包装を行なう場合には、ここでの真空、脱気後に置換ガスが充填されてからシールされる」との記載から、甲1には「ガス置換用食品用容器」が記載されている。

サ 上記エの「ガスバリヤー性の発泡シートCは例えば第1図に示すようなトレイ形状の容器本体に成形される。そして内容物を入れるとともに内部に脱酸素剤を入れまたは内部をガス置換する.そして蓋材4にてシールする.この蓋材4は積層フィルムBのヒートシール層3にヒートシールにより融着される.」との記載、及び、上記ケの第1図から、ガス置換用食品用容器は、「底部と、当該底部の外周から起立した側部と、当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部とを備える」ことが看取できることから、「フランジ部は、蓋材4をヒートシールする部分を全周に亘って有する」ものである。

シ 上記エの「積層フィルムBの表面層1を発泡樹脂シートA側とし、発泡樹脂シートAと積層フィルムBを加熱ローラ間に通すことにより、表面層1のポリスチレン系の樹脂フィルムと発泡ポリスチレンシートとをバインダーを介することなく熱貼りすることができる」との記載を踏まえると、上記ケの第1図、第2図から、「底部及び側部の内側並びにフランジ部の表側に、ガスバリヤー層2を有する積層フィルムBが積層される」ことが看取できる。

上記ア~シを総合すると、甲1には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されているといえる。

(甲1発明)
「発泡ポリスチレンシートからなり、底部と、当該底部の外周から起立した側部と、当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部とを備え、
前記底部及び前記側部の内側並びに前記フランジ部の表側に、ラミネート積層法によって製作されたガスバリヤー層2を有する積層フィルムBが積層されたガス置換用食品用容器であって、
前記積層フィルムBは、表面層と樹脂ラテックスによるガスバリヤー層とヒートシール層とが順に重ねられたものであり、
前記フランジ部は、蓋材4をヒートシールする部分を全周に亘って有する、ガス置換用食品用容器。」

(2) 甲2、3、5~10、16~18に記載された技術事項
ア 甲2に記載された技術事項
「【0020】本発明包装体の底材はこの発泡シートにホットメルト接着層、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物樹脂層(以下、EVOHという。)、接着樹脂層及び易開封性樹脂層をこの順に積層してなるものであり、発泡シートに積層するガスバリアー材及び易開封性樹脂は接着材を介して順に積層しても良い。また、コスト面を考慮して、例えば次のような構成のフィルムを共押出しにより製膜し、発泡シートと重ね合わせる面にホットメルト接着剤を押出しながら発泡シートとラミネートしてもよい。
共押出し品:[ポリオレフィン系樹脂/接着樹脂/EVOH/接着樹脂/易開封性樹脂]
上記共押出し品につき、[EVOH/接着樹脂/易開封性樹脂]にしてEVOHと発泡体の間にホットメルト接着剤を用いても良いが、ホットメルト接着剤はポリオレフィン系樹脂の方がEVOHよりも強固に接着するするため、ポリオレフィン系樹脂層が少なくとも1層あることが好ましい。ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(以下、LDという。)、直鎖状低密度ポリエチレン(以下、LLという。)等が挙げられる。」

イ 甲3に記載された技術事項
(ア)「【請求項1】
ビカット軟化点90℃以下のポリスチレン系熱可塑性エラストマーからなる、厚み10~30μmの層、ガスバリア性樹脂層、およびヒートシール層の少なくとも3層が共押出法によって積層された複合フィルムであり、当該複合フィルムの総厚みが25~80μmであることを特徴とする食品包装用複合フィルム。」

(イ)「【0001】
本発明は、ポリスチレン(以下、PSと略記することがある)樹脂の発泡体からなるトレー成形用シートにラミネートするのに好適な食品包装用複合フィルムに関するものである。」

ウ 甲5に記載された技術事項
(ア)「【0010】
以上のように、このオーバーラップ包装体は、フランジ部に対する蓋部材の位置ずれを考慮して、蓋部材の外径が、フランジ部の外径よりも大きく設定されているので、蓋部材がフランジ部の外径と同一径に設定されている従来のオーバーラップ包装体とは異なり、フランジ部に対して蓋部材が位置ずれを起こした場合でも、フランジ部の上面が露出することがない。従って、被包装体を包み込んだ包材を加熱収縮させる際、フランジ部のギザギザした上端角部が包材の内面に形成された印刷層に食い込んで印刷層を剥離することがなく、包材の内面に形成された印刷層が、容器本体のフランジ部の上端角部に転移するのを確実に防止することができる。」

(イ)「【0014】
前記カップ状容器10は、図2(a)、(b)に示すように、上端縁から径方向外側に張り出したフランジ部12を有するカップ状の容器本体11と、この容器本体11の上端開口部を閉塞するシート状の蓋部材13とから構成されており、容器本体11に内容物Sを収容した状態で、蓋部材13をフランジ部12の上面にヒートシールすることによって、内容物Sが容器本体11内に密封されるようになっている。
【0015】
前記容器本体11は、スキン層となる非発泡ポリスチレンからなる外面層が積層された発泡ポリスチレンシートを、スキン層が外表面となるように、成形型を用いてカップ状にシート成形した後、外径が144mmで4mm幅のフランジ部12が上端部に形成されるように打ち抜いたものであり、発泡ポリスチレンシートによって形成されるフランジ部12の上端角部E1は、ギザギザした状態になっている。」

(ウ)「【図2】


【図6】



エ 甲6に記載された技術事項
(ア)「【請求項1】 非発泡ポリエステル系樹脂フィルム、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム、非発泡ポリエステル系樹脂フィルム、ポリエステル系樹脂発泡シートを順次積層した積層シートを、非発泡ポリエステル系樹脂フィルムが容器の内側となるよう熱成形したことを特徴とする耐熱性食品容器。」

(イ)「【0009】上記の構成の耐熱性食品容器は、その構成素材である積層シートを非発泡ポリエステル系樹脂フィルムが容器の内側となるよう熱成形するので成形加工が容易であって効率よく耐熱性食品容器を製造することができる。また、発泡シート自体が耐熱性に優れるポリエステル系樹脂を素材とし、さらにこれに耐熱性に優れた非発泡ポリエステル系樹脂フィルムが容器の内側となるよう積層されているために、容器全体としての耐熱性がよく、特に耐熱性に優れるポリエチレンテレフタレート樹脂層が積層されている場合、この種容器として充分な耐熱性を保有しかつ維持できるもので、加熱時の保形性も良好なものとなり、ハイレトルト処理を可能にする上、電子レンジでの加熱によっても変形が生じるおそれがない。さらにガスバリア性に優れる樹脂フィルム層の存在により、容器としてのガスバリアー性に優れ、食品の長期保存性にも優れる。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明について詳細に説明する。図1および図2には本発明の耐熱性食品容器を示した。図1のこの耐熱性食品容器Aは、非発泡ポリエステル系樹脂フィルム層1、エチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム層2、非発泡ポリエステル系樹脂フィルム層3、ポリエステル系樹脂発泡シート層4を順次積層した積層シートを、非発泡ポリエステル系樹脂フィルムが容器の内側となるよう熱成形した耐熱性食品容器である。また、図2は図1の耐熱性食品容器Aの外層、即ちにポリエステル系樹脂発泡シート層4の外側にさらに非発泡ポリエステル系樹脂フィルム層5が積層されて構成されている。」

(ウ)「【0016】本発明で使用するエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム2は、ガスバリア性を向上するために使用するもので、その厚みは15~80μmの範囲が好ましく使用できる。本発明の積層シートは、例えば非発泡ポリエステル系樹脂フィルム1,3とエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム2とポリエステル系樹脂発泡シート4とを別々に押出した後、熱ロール等を使用して積層することも可能であるが、非発泡ポリエステル系樹脂フィルム1とエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルム2と非発泡ポリエステル系樹脂フィルム3とを共押出機にて同時に共押出して、いったん3層シート11を製造した後、この3層シート11とポリエステル系樹脂発泡シートとを熱ロール、押出しラミネート等の手段によって積層することが好ましい。」

(エ)「【0020】
【実施例】
(実施例1)ポリエチレンテレフタレート樹脂とエチレンビニルアルコール共重合樹脂とポリエチレンテレフタレート樹脂を3層に共押出して3層シートを製造した。この3層シートは、厚み80μmのポリエチレンテレフタレートフィルムと厚み30μmのエチレンビニルアルコール共重合樹脂フィルムと厚み30μmのポリエチレンテレフタレートフィルムで構成した。次に170度に加熱した熱ロールを使用して、前記の3層シートを加熱すると同時に厚さ1.1mm、密度0.5g/ccのポリエチレンテレフタレート樹脂発泡シートに加圧・熱接着して4層構造の積層シートを製造した。
【0021】前記の4層構造の積層シートを、オーブン加熱炉にてシート表面温度が120ないし130度になるまで加熱した後、温度が170~180度に加熱された雄雌型よりなるマッチモールド金型を使用して4秒間プレス成形し、結晶化を促進し、次に温度が60度に設定された冷却金型にてプレス冷却した後、周囲をトリミングして図1に示すような断面形状を有する耐熱食品容器を得た。得られた容器は、容器内径dが95mm、トリミング外径Dが105mm、深さHが40mmを有するものであり、成形不良等は発生しなかった。」

(オ)「【図1】



オ 甲7に記載された技術事項
(ア)「【請求項1】 発泡熱可塑性樹脂シートを加熱可塑化したのちマッチモールド金型内で成形する方法において、加熱炉内にて当該発泡熱可塑性樹脂シートの最大自由発泡厚みの75ないし85%まで発泡させた後、該発泡熱可塑性樹脂シートを両金型間の最大クリアランスが該発泡熱可塑性樹脂シートの最大自由発泡厚み寸法以下であるマッチモールド金型内に移行し、該金型内で両面より真空吸引して型内発泡させることにより最終製品厚みをうることを特徴とする発泡熱可塑性樹脂シートの成形方法。
【請求項2】 発泡熱可塑性樹脂シートがポリスチレンシートである請求項1記載の成形方法。」

(イ)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明者らは、発泡熱可塑性樹脂シートの加熱炉内での発泡条件とその後の成形装置での成形条件に伴う発泡熱可塑性樹脂シートの物性の変化について多くの実験、研究を行い、次のような知見を得た。即ち、
1、発泡熱可塑性樹脂シートの加熱特性として、空気中における加熱炉による単純輻射加熱により得られる発泡厚み、即ち、最大自由発泡厚みは、原反厚みの2.2から2.5倍であり、シート内に残存する発泡ガス濃度により変動はするもののこの値を越えることはないこと。
【0005】2、金型内において真空引きにより再発泡させる場合、気泡破壊を起こすことなく再発泡を行わせうる限度は最大自由発泡厚みの約15%増までが限度であって、それ以上に強制発泡させると、シート断面中央部より気泡破壊を起こすと共に空洞化を生じシート強度が低下すること。
3、発泡熱可塑性樹脂シートは加熱軟化後、発泡と共に曲強度は増大するが、同時に原反の抗張力は減少し、引張り強度は低下すること。」

カ 甲8に記載された技術事項
(ア)「【請求項1】
片面または両面に熱可塑性樹脂フィルムをラミネートしたポリスチレン系樹脂発泡シートから成形された内面に熱可塑性樹脂フィルム層を有する食品容器であって、該食品容器の開口部周縁に形成されたフランジ部における上面部の表面粗さ(Ra)が0.3μm~5.0μmであることを特徴とする食品容器。」

(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品等を収納するトレー等の食品容器に関し、特にラップフィルムによるラップ適性に優れた食品容器に関する。」

(ウ)「【0009】
すなわち、本発明の食品容器において、少なくとも容器開口部周縁に形成されたフランジ部における上面部の表面粗さ(Ra)が、0.3μm~5.0μmである場合に所期の目的を達成することができ、さらに好ましくは0.5μm~4.5μmを有することが好適である。表面粗さが0.3μmよりも小さい場合は、包装時特に自動包装時にラップフィルムの滑りが悪くラップ適性に劣り、良好なラッピングができない。一方、5.0μmを超えると表面外観が悪くなり好ましくない。・・・」

キ 甲9に記載された技術事項
(ア)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はポリスチレン系樹脂発泡体に関し、特に印刷性を要求される食品容器として好適なものを提供しようとするものである。」

(イ)「【0005】得られたポリスチレン系樹脂発泡シートはその表面性や光沢などの外観及び強度を向上させるため、必要に応じて、熱溶融した熱可塑性樹脂を積層する所謂押出ラミネートにより、あるいは熱溶融した合成樹脂を接着剤代わりに使用して熱可塑性樹脂フィルムを積層するサンドラミネートにより、若しくは、フィルムを直接ポリスチレン系樹脂発泡シートに熱圧着する熱ラミネートなどによってポリスチレン系樹脂発泡シート表面を化粧した後、どんぶりなどの成形用積層シートとして供されている。」

(ウ)「【0018】印刷が施される面の中心線表面粗さRaは好ましくは0.80μm未満であるとよい。0.80μm以上では、発泡体表面の凹凸が大きく外観が芳しくなくなる。」

ク 甲10に記載された技術事項
(ア)「【請求項1】
発泡合成樹脂シートを多面取り金型によって加熱成形した後に個々の容器毎に打ち抜くシート成形容器の製造方法において、
前記加熱成形時に、発泡合成樹脂シート製容器のフランジ周縁部を、内方から打ち抜き予定位置に向けて次第に強く加圧し、その後前記打ち抜き予定位置を切断することを特徴とする、発泡合成樹脂シート製容器の製造方法
【請求項2】
発泡合成樹脂シートは、発泡合成樹脂シートの表面にHIPSシートが貼り合わされたものとした、請求項2記載の発泡合成樹脂シート製容器のフランジ端縁処理方法」

(イ)「【0004】
さらに、即席カップ麺における乾燥麺など硬質の内容物を入れる場合には、その流通時の輸送条件によって内容物が後述する発泡PSP層及び容器表面HIPS層を破損するおそれがあり、これを防止するための補強機能、ならびに内容物の酸化・乾燥を防止するためのバリヤー機能を付加する目的で、容器内面にフィルムを貼り合わせる手法がある。しかしながら、従来の容器における内面フィルムはフランジ端縁と共にほぼ垂直に切断されているため、フランジに蓋材11をシールしたとき蓋材11は内面フィルム2cの全面に接着されるので、蓋材11を剥離するときに内面フィルム2cも蓋材11と共にフランジ3から剥がされてしまう場合がある(図9,図10)。」

(ウ)「【0007】
この発明は、発泡合成樹脂シート製の容器において、打ち抜き時に発泡樹脂粉末の発生を防止することを第一の課題とし、上記先行技術のように作業工程を増加させることなくフランジ端縁部の鋭利性を減殺すること、特にHIPSシートをラミネートしたシートを用いた容器において、HIPSシートの端縁が突出しないフランジ端縁を得ること、及び内面にフィルムを貼り合わせた容器において、蓋材剥離時に蓋材と共に内面フィルムが剥離しないフランジ端縁を得ることを第二の課題とするものである。」

(エ)「【0010】
この発明によれば、フランジ周縁部が圧縮されるので、該部が硬化ソリッド化されて、打ち抜き時における打ち抜き刃との摩擦による発泡樹脂粉末の発生が未然に防止される。その結果、容器内容物に粉末が異物として混入したり、容器の外壁に付着して印刷に悪影響を及ぼすことがない。
また、打ち抜き前に予めフランジ周縁部が圧縮されているので、HIPSシートをラミネートしたシートを成形した容器においても、打ち抜き後にHIPSシートがフランジ端縁から突出することがない。したがって、HIPSシートのフランジ端縁からの突出による唇への違和感や損傷のおそれが解消する。
さらに、フィルムシートを発泡合成樹脂シートの裏面にラミネートしたシートを整形した容器においては、フィルムもフランジ端縁部の断面弧状に沿って弧を描き、蓋材との間に隙間ができることから、蓋材剥離時にフィルムが蓋材と共に剥がれることがなくなる。」

(オ)「【0014】
上記のようにして製造された容器Aは、フランジ3の端縁部が上面、下面共に断面弧状をなし、フランジ端縁に向けて薄く成型されている。かつHIPS層2bがフランジの端縁から突出していない。したがって、フランジを唇に当てたときに柔らかな感触を得ることができ、また唇を損傷するおそれもない。
また、フランジ3の上面に蓋材11をシールしたとき、フランジ3の上面端縁部は断面弧状をなして次第に薄くなっており、かつ該部は圧縮されているので、蓋材11の周縁部はフランジに接着せずに浮いた状態となる。その結果、蓋材を剥離するとき、剥離当初からスムーズに剥がれ、フランジ上面が破損して蓋材に付着することもない(図4)。発泡樹脂シート2を、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせたものとした場合には、フィルム2cはフランジ3の上面端縁部の断面弧状の形状に沿って弧を描き、フィルム端部は蓋材11と接着されないので、蓋材11を剥離するときに蓋材11と共にフィルム2cが容器から剥離されることはなくなる(図5)。」

(カ)「【図5】



ケ 甲16に記載された技術事項
(ア)「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の密封成形容器を図面に基づいて説明する。図1に示す本発明の密封成形容器10は、楕円状の開口部を有する成形トレイ容器本体12(開口部長径:120mm、開口部短径:90mm、高さ:45mm、フランジ幅:9mm)に設けられた容器フランジ部14に、該容器フランジ部14の外形と略同様の形状を有するシート状の蓋材16を被せ、該容器フランジ部14にヒートシールしたものである。
【0010】上記成形トレイ容器本体は、耐熱性、遮光性、ガスバリヤ性を考慮してポリプロピレン/エチレンビニルアルコール共重合体/ポリプロピレンから構成されている。なお、上記成形トレイ容器本体に使用する材質は、上記材質に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデンなども使用することができる。」

(イ)「【図1】



コ 甲17に記載された技術事項
(ア)「【0082】
次に、製造した3層の多層フィルムのポリオレフィン層C側に、基材層Dとして、ポリプロピレンを積層するため、ポリプロピレンシートTダイ製造装置を用いて、タッチロールにて熱ラミネーション成形を行った。得られたシートの構成は、ポリオレフィン層A(5μm)/粘着層B(15μm)/ポリオレフィン層C(30μm)/基材層D(450μm)となった。
得られたシートは、ポリオレフィン層Aが内側面になるよう、一般的なプラグアシスト真空圧空成形を行い、外寸150mm×120mm、深さ24mmの長角容器を成形した。なお、ヒートシール可能なフランジ部の幅は、4辺とも20mmとした。」

(イ)「【図1】



サ 甲18に記載された技術事項
(ア)「【0022】シール蓋10を容器本体1のフランジ部3にシールすることで本発明の排湯機能を有する即席食品用容器が得られる。そのシール部のシール幅としては、1mm乃至10mmが一般的である。」

(イ)「【0029】次に、前記容器本体に、焼きそば麺90gと、小袋詰めされたかやく、香辛料、ソースを容器本体に充填し、前記シール蓋を載置して容器本体のフランジ部において密封シールして検体を得た。シール幅はすべて5mmとした
シール蓋をヒートシールした後、ポリプロピレン系の合成紙200μmにアクリル系樹脂を主成分とする粘着層を設けたタックシールを湯切り孔を被覆する位置に手貼して、排湯機能を有する即席食品用容器の検体を得た。」

(ウ)「【図9】



3-1 本件発明1について
(1) 対比
本件発明1と甲1発明を対比する。
甲1発明の「発泡ポリスチレンシート」は本件発明1の「ポリスチレン発泡体」に相当し、以下同様に、「底部」は「底部」に、「側部」は「側部」に、「蓋材4」は「蓋材」に、「ヒートシール」は「熱溶着」にそれぞれ相当する。
甲1発明の「当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部」であって、「蓋材4をヒートシールする部分を全周に亘って有する」「フランジ部」と、本件発明1の「当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部」であって、「所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有」する「フランジ部」とは、「当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部」であって、「所定の蓋材を熱溶着するための部分を全周に亘って有するフランジ部」である限りで一致する。
甲1発明の「ラミネート積層法によって製作されたガスバリヤー層2を有する積層フィルムB」と、本件発明1の「共押出法で製造されたガスバリア層を有する多層フィルム」とは、「ガスバリア層を有する多層フィルム」である限りで一致する。
甲1発明の「ガス置換用食品用容器」は本件発明1の「ガス置換用包装用容器」に相当する。
そうすると、本件発明1と甲1発明は、次の一致点で一致し、相違点1~4で相違する。

<一致点>
「ポリスチレン発泡体からなり、底部と、当該底部の外周から起立した側部と、当該側部の上端から外方に向けて延出したフランジ部とを備え、
前記底部及び前記側部の内側並びに前記フランジ部の表側に、ガスバリア層を有する多層フィルムが積層されたガス置換用包装用容器であって、
前記フランジ部は、
所定の蓋材を熱溶着するための部分を全周に亘って有する、
ガス置換用包装用容器。」

《相違点1》
「ガスバリア層を有する多層フィルム」について、本件発明1は、共押出法で製造されているのに対し、甲1発明は、「ラミネート積層法によって製作され」、「表面層と樹脂ラテックスによるガスバリヤー層とヒートシール層とが順に重ねられたもの」である点。

《相違点2》
フランジ部について、本件発明1は、「所定の蓋材を熱溶着するための幅が4mm以上である水平な平坦部を全周に亘って有」するのに対して、甲1発明は、蓋材をヒートシールするものの、そのための幅が特定されておらず、「水平な平坦部」を全周に亘って有することも特定されていない点。

《相違点3》
平坦部について、本件発明1は、「該平坦部は、厚さが3.5mm以下、表面粗さRa=2.0μ m未満であ」るのに対して、甲1発明は、平坦部の有無及びこれらの寸法について特定されていない点。

《相違点4》
薄肉部について、本件発明1は、「前記平坦部の外緑端には、さらに厚みの薄い薄肉部が全周に亘って形成され、該薄肉部は、装着される所定の蓋材と非溶着部分となるように寸法付けられている」のに対して、甲1発明は、フランジ部に薄肉部を設けることが記載されていない点。

(2) 判断
ア 相違点1について
甲1には、「発泡ポリスチレンシートに積層されるものが、ポリ塩化ビニリデンフィルムと無延伸ポリプロピレンフィルムで、共にフィルムであるため、各フィルムの間をバインダーを介して接着することが必要になる.
本発明は上記従来の課題を解決するものであり、発泡樹脂シートにガスバリヤー層とヒートシール層とを設け、しかもガスバリヤー層をラテックスコーティングを用いて形成できるようにし、構成を簡略化できるようにした食品用容器を提供することを目的としている.」(第2ページ左下欄第13行~右下欄第3行)と記載され、該目的を達成する具体化手段として、「上記積層フィルムBはラミネート積層法によって製作される.このラミネート積層法において、ガスバリヤー層2を構成するポリ塩化ビニリデンのラテックスとしてバリヤー接着剤(例えば商品名「クレハロンラテックス AC-750」;呉羽化学工業株式会社製)を使用すれば、これを表面層1に塗布しバインダーを用いることなくヒートシール層3をラミネート接着することが可能になる.」(第4ページ左上欄第7~15行)と記載され、加えて、甲1の実施例として「積層フィルムBの製造方法は、クレハロンラテックスをハイインパクトポリスチレンフィルムの面に塗布し、直鎖状低密度ポリエチレンフィルムをラミネート接着したものである.」(第5ページ右上欄第12~15行)と記載されており、甲1発明は、積層フィルムBがバインダーを用いることなく表面層に特定の樹脂ラテックスによるガスバリアー層を塗布し、ヒートシール層をラミネート接着することで、積層フィルムBを薄く形成することができるものである(第6ページ右上欄第7行~左下欄第3行)。
してみると、甲1は、積層フィルムBを特定の樹脂ラテックスによるガスバリアー層を塗布する「ラミネート積層法」以外の手法で製造することの記載も示唆もされていないものであり、特に、共押出法では、樹脂を溶融する装置や樹脂を供給するためのノズルといったラミネート積層法では用いない装置を導入してフィルムを製造する必要性があることを考慮すると、共押出法による製造とすることの着想はなく、さらにガスバリアー性を備え、且つ、2つの層を接着させる特定の樹脂ラテックスを使用することで、バインダーを使用することなく積層フィルムを薄く製作でき、この積層フィルムと発泡樹脂シートとを熱ラミネートし、ラミネートされたシートをそのまま容器形状に成形することができ、容器製造工程を一連のものとすること(甲1の第3ページ左下欄第2~12行、第6ページ右上欄第7~11行)から考慮すると、共押出法の採用に阻害要因があるといえる。
したがって、たとえ甲2、甲3及び甲6に記載されているように、発泡体にラミネートする積層体を、共押出法により形成することが周知技術であったとしても、甲1発明の積層フィルムBを、ラミネート積層法に代えて共押出法で製造することを採用することの動機付けはなく、むしろ阻害要因がある。さらに、その他の甲号証においても同様である。
よって、甲1発明において、相違点1に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

イ 相違点2について
甲16の【0009】には、蓋材とヒートシールする容器フランジ部14のフランジ幅を9mmとすることが記載されている。
甲17の【0082】には、「ヒートシール可能なフランジ部の幅は、4辺とも20mmとした」ことが記載されている。
甲18の【0029】には、容器本体のフランジ部においてシール蓋を密封シールするためのシール幅をすべて5mmとしたことが記載されている。
上記甲16~18の記載や、甲16~18の図面を併せて参照すれば、容器のフランジ部において、ヒートシールのための水平な部分の幅を4mm以上とすることは周知技術である。
そして、甲1発明において、ヒートシールのために、フランジ部に、上記周知技術を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、甲5の【0015】には、容器本体11のフランジ部12の幅を4mmとすることが記載されているが、同【図2】(b)を参照すると、フランジ部12は、容器本体の上端縁に連結する曲面部を含み、曲面部を含んだフランジ部の幅が4mmであることが看取でき、甲5には、容器のフランジ部において、ヒートシールのための水平な部分の幅を4mm以上とすることは記載されていない。また、甲6の【0021】には、「容器内径dが95mm、トリミング外径Dが105mm」と記載されており、同【図1】を参照すると、耐熱性食品容器の上端縁から径方向外側に張り出した部分は、5mm(=(105-95)/2)であると看取できる。しかし、甲6には、フランジ部において、蓋材とヒートシールすることは記載されておらず、容器のフランジ部において、ヒートシールのための水平な部分の幅を4mm以上とすることは記載されていない。

ウ 相違点3について
(ア)平坦部の表面粗さについて
甲8の【0001】、【0009】には、ラップフィルムによるラップ適性を改善するために、フランジ部の表面粗さ(Ra)を0.3μm~5.0μmとすることが記載されているが、甲8に記載された容器はフランジ部において、蓋材とヒートシールを行うものではなく、甲1発明のフランジ部とは、課題や作用機能が異なり、甲1発明に、甲8に記載されたフランジ部の表面粗さに関する事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
また、甲9の【0001】、【0005】、【0018】には、ポリスチレン系樹脂発泡体に熱可塑性樹脂を積層し、印刷性の改善のために、印刷が施される面の中心線表面粗さRaを0.80μm未満とすることが記載されているが、容器の蓋材とヒートシールを行う箇所の粗さを規定するものではなく、甲1発明とは、課題や作用機能が異なり、甲1発明に、甲9に記載されたフランジ部の表面粗さに関する事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
さらに、その他の甲号証においても同構成の記載はないし、同構成とすることの動機付けもない。

(イ)平坦部の厚さについて
甲1の第5ページ左上欄第16行~右上欄第16行には、発泡樹脂シートAとして厚さ0.7mmの発泡ポリスチレンシートと、厚さ64μmの積層フィルムBを使用することが記載されており、この材料から作られる容器の厚さは、最大で0.764mm(0.700mm+0.064mm)になることが記載されているといえる。
よって、甲1発明のフランジ部に、水平な部分を設ける際に、その部分の厚さを、3.5mm以下とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
なお、請求人は、審判請求書の第28ページ第13~32行において、甲7の【0004】、【0005】の記載から、甲1発明の平坦部の厚さを3.5mm以下とすること自体通常の厚さとすることにすぎないと主張しているけれども、甲7の【0004】には、「発泡熱可塑性樹脂シートの加熱特性として、空気中における加熱炉による単純輻射加熱により得られる発泡厚み、即ち、最大自由発泡厚みは、原反厚みの2.2から2.5倍」であることは記載されているものの、「該平坦部は、厚さが3.5mm以下」であることは記載されていないため、上記請求人の主張は採用できない。

(ウ)相違点3のまとめ
上記(ア)により、甲1発明において、相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではない。

エ 相違点4について
(ア)甲1発明と、甲10に記載された事項とは、フランジ部において蓋材をヒートシールする容器に関する技術分野に属するものであり、また、両者は、内容物を取り出すために蓋材を剥離する容器に関するものであるから、開封時に蓋材を容器から容易に剥離できるようにするという共通の技術課題を有するものである。
(イ)甲10の【0014】及び図5には、蓋材11を剥離するときに蓋材11と共にフィルム2cが容器から剥離されること(袋化現象)を防ぐために、発泡樹脂シート2を、発泡PSP層2aの裏面にフィルム2cを貼り合わせ、フィルム2cはフランジ3の上面端縁部の断面弧状の形状に沿って弧を描くようにし、フィルム端部は蓋材11と接着されないようにすることが記載されている。
上記(ア)の通り、甲1発明と、甲10に記載された事項とは、関連する技術分野に属するものであり、共通の技術課題を有するものであるから、両者を組み合わせることの動機付けがあり、甲1発明に甲10に記載された事項を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

オ 本件発明1についてのまとめ
したがって、甲1発明において、上記相違点1及び相違点3に係る本件発明1の構成を備えたものとすることは、当業者が容易に想到し得たことではなく、本件発明1は、甲1発明及び甲2~18に記載された事項に基いて当業者が容易に発明することができたものではない。

3-2 本件発明2~5について
本件発明2~5は、本件発明1の発明特定事項をすべて含み、さらに限定を加えるものであるから、上記3-1(2)で示した理由により、当業者が甲1発明及び甲2~18に記載された事項に基いて容易に発明をすることができたものではない。

3-3 小括
よって、本件発明1~5は、甲1発明及び甲2~18に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1~5についての特許は、特許法29条2項の要件を規定に違反してされたものではない。


第7 むすび
以上のとおりであるから、無効理由1~3はいずれも理由がないものであり、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1~5についての特許は、無効理由1~3によっては、無効とすることはできない。
審判に関する費用については、特許法169条2項の規定で準用する民事訴訟法61条の規定により、請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
 
別掲 (行政事件訴訟法第46条に基づく教示) この審決に対する訴えは、この審決の謄本の送達があった日から30日(附加期間がある場合は、その日数を附加します。)以内に、この審決に係る相手方当事者を被告として、提起することができます。
 
審理終結日 2023-02-01 
結審通知日 2023-02-06 
審決日 2023-02-21 
出願番号 P2016-033987
審決分類 P 1 113・ 537- Y (B65D)
P 1 113・ 121- Y (B65D)
P 1 113・ 55- Y (B65D)
最終処分 02   不成立
特許庁審判長 久保 克彦
特許庁審判官 稲葉 大紀
石田 智樹
登録日 2021-07-06 
登録番号 6908969
発明の名称 包装用容器  
代理人 齋藤 嘉久  
代理人 下坂 スミ子  
代理人 阿部 茂輝  
代理人 古川 雅与  
代理人 寺本 光生  
代理人 黒瀬 雅一  

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