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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A41D |
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管理番号 | 1038436 |
審判番号 | 審判1998-19064 |
総通号数 | 19 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-03-05 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 1998-12-09 |
確定日 | 2000-11-30 |
事件の表示 | 平成6年特許願第211920号「和服」拒絶査定に対する審判事件(平成8年3月5日出願公開、特開平8-60412)について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯・本願発明 本願は、平成6年8月12日の出願であって、その請求項2に係る発明は、平成10年12月9日付け手続補正書により補正された明細書および出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項2に記載された以下のとおりのものと認められる。 「【請求項2】和服用コート状に形成された和服本体と、この和服本体の襟の両下端部寄りの外側面に取付けられた結び用紐と、前記和服本体の一方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の内側面に取付けられ前記結び用紐と結ばれる一方の紐と、前記和服本体の他方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の外側面に取付けられ前記結び用紐と結ばれる他方の紐と、和服を着た場合のお端折り部位に位置する前記和服本体の外周部を覆うように取付けることができるお端折り形成ベルトとを備えることを特徴とする和服。」 II.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開昭61-113807号公報(以下、「引用刊行物1」という。)、実願昭63-149041号(実開平2-69912号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)、実願昭49-101554号(実開昭51-28209号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物3」という。)、には以下の点が記載されている。 引用刊行物1 a)「着丈(対丈)の着物を着て、おはしょりの位置におはしょりベルトをつけて着附けをすれば大変かんたんに着附けも出来、附け帯にしますと・・・一人で着附けが出来ます」(1頁左欄15~19行) b)「おはしょりベルトとは、ベルト(1)に着附けをした時のおはしょり(2)をつけたものである」(1頁左欄24~25行、第1図参照) 引用刊行物2 a)「第3~4図は婦人用長着を示し、はだけ防止用紐は下前身頃(1)の衿前端と左脇縫のほぼウエスト部(6)に縫着してあり、・・・第5~6図は乳・幼児用長着を示し、下前身頃の衿前端と左身八ツ口(7)の後身頃(8)側のほぼウエスト部にそれぞれはだけ防止用紐を縫着し、上前身頃(9)の衿前端(10)と右身八ツ口(11)の後身頃側のほぼウエスト部に結び紐(12)をそれぞれ縫着してある。」(3頁17行~4頁7行、第4図・第6図参照) 引用刊行物3 a)「上衣(1)および下衣(2)と調和連繋する如く、衿(4)および脇縫・背縫等の縫目(5)を附設した帯状生地(3)の下辺を裏面に折り曲げて二重接合辺(6)を形成すると共に、上縁の適当な部分にゴム紐(7)を附設し、且左右両縁上部の表裏対象位置に夫夫接着片(8)(8’)を縫着してなることを特徴とする「おはしょり」の構造。」(実用新案登録請求の範囲、第2図・第3図参照) b)「ワンピースに本考案にかかる「おはしょり」を用いる場合には、その分だけ生地の節約にもなるし着付けが容易となる。」(4頁14~16行) III.対比・判断 本願請求項2に係る発明は、▲1▼和服用コートとして使用することができるとともに、部屋着や和服としても使用できる和服を提供すること、▲2▼誰でもが簡単に着て使用することができる和服を提供すること、を目的とするものである。(【0004】の記載参照)この目的を達成するための具体的構成は、請求項2記載のとおりであるが、「和服用コート状に形成された」和服本体とは、必ずしもその構成が明確ではない。そこで明細書中の記載を参照して検討すると、和服本体は「お端折りを形成しないで着れるような長さに形成された」もの(【0009】の記載参照)、すなわち、着丈(対丈)の和服と認定することができる。そして、その作用は、和服用コートあるいは部屋着として使用する場合には、従来の和服用コートを着るように着て一方の紐(8)と対応する結び用紐(7)とを結ぶとともに、他方の紐(9)と対応する結び用紐(7)とを結んで使用し、和服として使用する場合には紐を結んで着付けた後、お端折り形成ベルトをお端折り部に取付け、帯を取付けるというものである。(【0007】【0014】【0015】の記載参照) 以上の点をふまえて本願請求項2に係る発明と引用刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「着丈(対丈)の着物」、「おはしょりベルト」はそれぞれ前者の「和服本体」、「お端折り形成ベルト」に相当するから、両者は「着丈(対丈)の和服本体と、和服を着た場合のお端折り部位に位置する前記和服本体の外周を覆うお端折り形成ベルトとを備える.ことを特徴とする和服」である点で一致する。そして、(イ)後者の着物本体が結び紐を備えていない点、(ロ)後者のお端折り形成ベルトが取付手段を有していない点、(ハ)前者では和服本体が和服用コートや部屋着や和服としての使用をも目的としているのに対し、後者では和服の着用の容易性のみを目的としている点、で相違する。 以下、前記相違点について検討する。 1)相違点(イ)について 本願請求項2に係る発明は、襟の両下端部寄りの外側面に取付けられた結び紐と、一方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の内側面に取付けられた一方の紐と、他方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の外側面に取付けられた他方の紐とを有するものである。ここで、紐の取付け位置は「襟の下端部寄り」、「前身頃と後身頃の取付け部近傍」および「袖の下部寄り」とされている。しかし、いずれにおいても「寄り」、「近傍」と記載されているのであって、厳密にその位置を特定したものではなく、紐の取付け位置は着用にあたり都合の良いところと解することができる。そこで、本願請求項2に係る発明と引用刊行物2記載の発明とを対比すると、後者の第6図に示された乳・幼児用長着の実施例には、下前身頃の衿部および左身八ツ口の後身頃側のウエスト部にはだけ防止用紐を、上前身頃の衿部および右身八ツ口の後身頃側のウエスト部に結び紐を縫着することが記載されており、このはだけ防止用紐は第4図に示された婦人用長着の実施例にも適用されることが記載されている。さらに、この実施例においては該紐を、左脇縫いのところに縫着すること、第4図を参照すると衿の外側面に縫着することが記載されている。(前記引用刊行物2-aの記載参照。)してみると、両者は和服本体において「襟の両下端部寄りの外側面に取付けられた結び用紐と、和服の一方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の内側面に取付けられ前記結び用紐と結ばれる一方の紐と、和服の他方の袖の下部寄りの部位に位置する前身頃と後身頃の取付け部近傍の外側面に取付けられ前記結び用紐と結ばれる他方の紐」を備えることで一致する。そして、この結び紐を同じ和服である引用刊行物1記載の発明に適用することに格別の困難性があるとはいえず、また、総和以上の効果を奏するとも認められない。 2)相違点(ロ)について 和服本体とお端折り形成ベルトとを別体で構成したものにおいて、お端折り形成ベルトに取付手段を設けることは引用刊行物3に記載されている。そして、この取付手段を引用文献1記載の発明のおはしょりベルトに適用することに格別の困難性があるとはいえず、総和以上の効果を奏するとも認められない。 3)相違点(ハ)について 本願請求項2に係る発明は和服本体を和服用コートや部屋着や和服として使用することを目的の一つとしている。しかし、その構成は引用刊行物1~3記載のものを組み合わせることによって得られるものであることは前述のとおりである。そして、一つの衣服を複数用途に兼用することは従来一般におこなわれていることであり、和服を和服用コートや部屋着や和服として使用することは当業者であるならば必要に応じて容易に想到しうる事項である。 IV.むすび したがって、本願請求項2に係る発明は引用刊行物1~3記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 1999-07-26 |
結審通知日 | 1999-08-10 |
審決日 | 1998-08-17 |
出願番号 | 特願平6-211920 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A41D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 渕野 留香 |
特許庁審判長 |
佐藤 雪枝 |
特許庁審判官 |
鈴木 美知子 船越 巧子 |
発明の名称 | 和服 |
代理人 | 三浦 光康 |