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審決分類 |
審判 一部申し立て 2項進歩性 H04N |
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管理番号 | 1053274 |
異議申立番号 | 異議1999-73638 |
総通号数 | 27 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1993-08-13 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 1999-09-24 |
確定日 | 2001-12-27 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第2874814号「画像形成装置」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第2874814号の請求項1に係る特許を取り消す。 |
理由 |
1.手続きの経緯 本件特許第2874814号の発明についての出願は、平成4年1月28日に特許出願がなされ、平成11年1月14日にその発明について特許の設定登録がなされたところ、異議申立人山田将之より請求項1に係る発明について特許異議の申立がなされ、取消理由通知がなされ、その取消理由通知に対し、その指定期間内である平成12年4月21日に訂正請求がなされた後、訂正拒絶理由通知がなされ、その訂正拒絶理由通知に対してその指定期間内である平成12年8月22日に手続補正書が提出されたものである。 2.訂正の適否について (1)訂正請求書の補正の適否について 訂正請求書の補正は、「(3)訂正の要旨」中の「訂正事項a」および「訂正事項c」における各記載「前記空間の少なくとも隣り合う2側面が開放されて」を「前記空間の隣り合う2側面が連続的に開放されて」に補正する、「(3)訂正の要旨」に、訂正事項dおよびeを付加する、「訂正の原因」の1行ないし5行を補正する、「請求の原因」の「相当する。」の後に新たな文を付加する、というものである。しかし、上記補正は、訂正事項を変更あるいは新たに加えるものであり、訂正請求書の要旨を変更するものであるから、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に違反するものであり、採用しない。 (2)訂正の適否について 平成12年4月21日付けの訂正請求は、特許請求の範囲の減縮を目的として、特許請求の範囲の請求項1に「前記シート蓄積部に蓄積されたシートを取り出せるように前記空間の少なくとも隣り合う2側面が解放されて前記スキャナ手段を支持する」を付加し、請求項2を元のまま維持するために請求項2を独立項とし、また、明瞭でない記載の釈明を目的として、明細書の段落【0006】を訂正しようとするものであるが、願書に添付した明細書又は図面には、「【0020】スキャナ手段200を支持する支持手段180を、作像エンジン筐体100から独立させて構成することも可能である。このための構成を、図6に示す。」と記載され、特にシート積載部とスキャナ手段との間の空間の開放についての記載は、段落【0020】~【0023】及び図6であると認められるが、これらの記載は、複写機のどの方向から作業を行っても、シートを取り出せないという事態がなくなり、操作性が向上するように、作像エンジン筐体の上方に形成されたシート蓄積部とスキャナ手段200との間の空間の4方のどの一面も塞ぐことのないように支持手段を構成することを開示ないし示唆するのみで、支持手段が「前記シート蓄積部に蓄積されたシートを取り出せるように前記空間の少なくとも隣り合う2側面が解放されて前記スキャナ手段を支持する」こと(これが隣り合う2側面のみが開放され、他の2側面が開放されない態様を含むことは文言上明らかである。)を開示ないし示唆しない。なお、図2、図3、図4、【0016】、【0017】の記載は、支持手段180が作像エンジン筐体と一体的に固定された例を示し、請求項1に係る発明に関する記載とは認められないが、これらの記載も、支持手段を、作像エンジン筐体の上方に形成されたシート蓄積部とスキャナ手段との間の空間の4方のどの一面も塞ぐことのないように構成することを開示するのみである。 したがって、請求項1についての上記訂正は、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてするものでなく、特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項の規定に適合しない。 また、訂正された請求項2は、支持手段が「前記作像エンジン筐体と別体で独立して構成され、当該作像エンジン筐体の側方外部に位置すること」を明示せず、このことが「前記支持手段が前記作像エンジン筐体の上面の内対角線上にある2点にて形成された支柱であること」から当然に導き出せるものでもないから、請求項2についての上記訂正は、請求項2を元のまま維持するものではなく、特許請求の範囲を拡張するものであり、特許法第120条の4第2項の規定に適合しない。 さらに、請求項3及び請求項4は、請求項1又は請求項2を引用しているから、同様に、請求項1を引用する部分に関しては特許法第120条の4第3項で準用する第126条第2項の規定に適合せず、請求項2を引用する部分に関しては特許法第120条の4第2項の規定に適合しない。 よって、当該訂正は認められない。 3.特許異議申立てについて (1)本件請求項1に係る発明 本件請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。 「シート上に画像を形成する作像エンジンと、 前記作像エンジンで画像を形成されたシートを排出するシート排出手段と、 前記シート排出手段により排出されたシートを積載するシート積載部を前記作像エンジンの上方に形成する作像エンジン筐体と、 前記シート積載部の上方に空間を隔てて配置され、原稿画像を電気信号に変換して前記作像エンジンに供給するスキャナ手段と、 前記スキャナ手段を前記シート積載部の上方に空間を隔てて支持する支持手段とを有し、 前記支持手段が、前記作像エンジン筐体と別体で構成され、当該作像エンジン筐体の側方外部に位置することを特徴とする画像形成装置。」 (2)刊行物に記載された発明 当審の平成12年2月2日付の取消理由において引用した刊行物1(特開平3-75861号公報)には、図面と共に、次のイ~ニを内容とする「コピー、プリント、及びファクシミリの諸ジョブを処理するためのコピー、プリント、及びファクシミリ送受の諸モードを有している多モード装置のための待ち行列管理方法」(1頁左下欄5行~同8行)が記載されている。 イ.「第1図ないし第4図に、本発明の待ち行列管理方法が適用される形式の多機能複写、プリント兼ファクシミリ装置を示す。(中略)装置5は、レーザプリンタ7、書類走査装置9、及び装置の動作を制御及びプログラムするためのタッチパネル型ユーザインタフェース(U1)を有する。」(3頁左下欄7行~同15行)こと。 ロ.「プリンタ7は、外面22が適当な光導電材料で被覆されている光受容体ドラム20と、映像の準備としてドラム光導電面22を帯電させるための帯電コロトロン28を有する。ドラム20は複写装置フレーム35内に回転自在に適当に軸支されており、ドラム20は矢印方向に回転して、その光道電面を、プリンタ7の露光ステーション32、現像ステーション34、及び転写ステーション36を通過させる。(中略)この転写ステーション36において、現像済み画像は光導電面22からコピーシート68へ転写される。転写の後、トナー像を支持しているコピーシートはドラム20の光導電面22から分離されて定着ステーション80へ送られる。この定着ステーションにおいて、ローラ形定着器82が、転写済み粉像を前記コピーシートへ定着させる。定着の後、仕上がったコピーまたはプリントはプリント排出ローラ84によってプリント出力トレイ86へ送られる。」(3頁右下欄14行~4頁左下欄7行)こと。 ハ.「書類走査器9はデュアルモード走査器であり、被走査書類110が手動で透明プラテン101上に載せられる手動走査動作、または、1つまたは複数の被走査書類が傾斜書類送りトレイ103上に載せられる自動走査が可能である。走査器9は可動走査キャリジ105上に配置されたCCD型接点アレイ102を有す。」(4頁左下欄11行~同17行)こと。 ニ.「第11図及び第12図を参照し、複写装置5によるジョブのプリントを管理するための本発明の待ち行列管理方法を説明する。プリントされるべきジョブはいくつかのことからなる型のジョブのうちのどれか一つから成る。こららジョブとしては、パーソナルコンピュータのような画像発生装置から受信される画像データからプリントが作られるプリンとジョブ300、走査器によって走査される書類110からコピーが作られるコピージョブ303、電話回線25(第3図)のような通信チャンネルを介して複写装置5へ伝送されるビデオ情報からコピー及びプリントが作られるファクシミリジョブ305等がある。」(6頁左上欄20行~同右上欄12行)こと。 ホ.また、第1図には、書類走査器9を上面に載置し、下部の棚上にプリンタ7を収容配置する、したがって、プリンタ7とは別体であり、プリンタの側方外部に位置する支持台が図示されている。 ヘ.さらに、プリンタ7の詳細を示す第2図には、コピーシート68上に画像を形成する部分を囲む筐体、その筐体の上部に形成されたプリント排出トレイ86が図示されている。 (3)対比・判断 本件請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、 イ.刊行物1に記載された発明のプリンタ7は、コピーシート68上に画像を形成し、画像が形成されたコピーシートを排出ローラ84によりプリント出力トレイ86へ送るように構成されており(上記(2)ロ参照)、そのコピーシート68上に画像を形成する部分、排出ローラ84は、それぞれ本件請求項1に係る発明の「作像エンジン」、「シート排出手段」に相当する。また、プリンタ7は、作像エンジン筐体を有し、その上部にプリント出力トレイ86が形成されていると認められる(上記(2)ヘ.の記載参照)から、刊行物1に記載された発明は、「シート排出手段により排出されたシートを積載するシート積載部を作像エンジンの上方に形成する作像エンジン筐体」を有すると認められる。 ロ.刊行物1に記載された発明の書類走査器9は、被走査書類110の画像を電気信号に変換してプリンタ7の作像エンジンに供給するものである(上記(2)ハ及(2)ニ参照)から、本件請求項1に係る発明の「スキャナ手段」に相当する。 ハ.刊行物1に記載された発明の、書類走査器9を上面に載置し、下部の棚上にプリンタ7を収容配置する支持台は、スキャナ手段をシート積載部の上方に空間を隔てて支持する支持手段といえ、その支持台は、作像エンジン筐体と別体で構成され、当該作像エンジン筐体の側方外部に位置する(上記(2)ホ参照)から、本願請求項1に係る発明の「支持手段」に相当する。 以上イ~ハから明らかなように、刊行物1に記載された発明は、本件請求項1に係る発明の構成要件をすべて有している。 したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するから、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第1項の規定に違反してなされたものである。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。 よって結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2000-10-24 |
出願番号 | 特願平4-13180 |
審決分類 |
P
1
652・
121-
ZB
(H04N)
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最終処分 | 取消 |
前審関与審査官 | 堀井 啓明 |
特許庁審判長 |
田辺 寿二 |
特許庁審判官 |
東 次男 江頭 信彦 |
登録日 | 1999-01-14 |
登録番号 | 特許第2874814号(P2874814) |
権利者 | 株式会社リコー |
発明の名称 | 画像形成装置 |
代理人 | 伊藤 武久 |
代理人 | 藤田 アキラ |