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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
異議199971488 審決 特許
異議199876214 審決 特許
審判19984525 審決 特許
異議199870511 審決 特許
審判199721136 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 発明同一 無効としない G01N
審判 全部無効 2項進歩性 無効としない G01N
管理番号 1086317
審判番号 無効2002-35551  
総通号数 48 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1989-10-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-26 
確定日 2003-07-02 
事件の表示 上記当事者間の特許第2132903号発明「検定法」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2132905号発明の請求項1ないし23に係る発明の出願は、昭和63年(1988年)4月26日(パリ条約に基づく優先権主張 1987年4月27日、1987年10月30日 英国(GB))に国際出願され、出願公告(特公平7-46107号公報)後、特許異議の申立てがなされ、特許請求の範囲について平成8年10月25日付けで補正がなされ、平成9年10月24日に設定登録がなされた。その後、請求人により平成14年12月26日に本件無効審判が請求され、被請求人は平成15年3月19日に答弁書を提出し、請求人は平成15年5月6日に弁ぱく書を提出した。

2.請求人の主張及び証拠方法
請求人は、証拠方法として甲第1〜8号証を提出して、次のような無効理由を主張している。
<無効理由>
(i)本件特許の請求項1ないし23に係る発明は、甲第8号証に記載された発明と同一であるから、その特許は特許法第29条の2の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきものである。
(ii)本件特許の請求項1ないし23に係る発明は、甲第2〜7号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効とすべきものである。

<証拠方法>
甲第1号証 平成6年審判第7306号の平成6年8月18日付手続補正書(本件特許出願の拒絶査定に対する審判請求書の請求理由を補充するもの。)
甲第2号証 特開昭61-145459号公報
甲第3号証 特開昭61-142463号公報
甲第4号証 特開昭53-47894号公報
甲第5号証 特開昭55-15100号公報
甲第6号証 国際出願公開WO86/03839号パンフレット(公開日1986年7月3日)
甲第7号証 中垣正幸、福田清成著「コロイド化学の基礎」、大日本図書(株)昭和44年4月1日発行、第53〜55頁
甲第8号証 特開昭64-63865号公報(特願昭63-68000号)

3.被請求人の主張
本件発明は、特許法第29条の2もしくは同法第29条第2項の規定に何ら違反するものではない。

4.本件特許発明
本件特許第2132905号の請求項1ないし23に係る発明は、出願公告後に補正された明細書及び図面の記載からみて、その請求の範囲の請求項1ないし23に記載された次のとおりのものと認める。(以下、それぞれ「本件発明1」、・・・「本件発明23」という。)

「(1)不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に乾燥多孔質キャリヤを収容しており、前記多孔質キャリヤに液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通しており、湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識付き試薬と、キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が相互に空間的に分離して決定されており、さらに標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段を含む分析試験装置であって、標識が粒状の直接標識であって、液体試料が適用される前ケーシング内に乾燥状態で保存されていることを特徴とする前記分析試験装置。
(2)標識付き試薬は乾燥多孔質キャリヤの第一区域に含まれており、第一区域から空間的に区別されるケーシング区域に無標識試薬が固定化されており、2つの区域が多孔質キャリヤに適用された液体試料が第一区域から検出区域に浸透するように配設されていることを特徴とする請求の範囲1に記載の装置。
(3)粒状の直接標識が染料ゾルまたは金属ゾルであることを特徴とする請求の範囲1または2に記載の装置。
(4)粒状の直接標識が最大直径gた約0.5μm以下の着色ラテックス粒子であることを特徴とする請求の範囲1または2に記載の装置。
(5)ケーシンクが不透明もしくは半透明の材料から構成されており、ケーシングに分析結果を観察するための開□部が少なくとも1つ設けられていることを特徴とする請求の範囲1〜4のいずれかに記載の装置。
(6)ケーシングがプラスチック材料から成形されていることを特徴とする請求の範囲1〜5のいずれかに記載の装置。
(7)多孔質キャリヤが多孔質材料製ストリップもしくはシートからなることを特徴とする請求の範囲1〜6のいずれかに記載の装置。
(8)多孔質キヤリヤが透明な不透湿性材料製層で裏打ちされた多孔質材料製ストリップもしくはシートからなり、前記透明層が湿気または試料の進入を防ぐために開口部に隣接してケーシングの内側に接触していることを特徴とする請求の範囲7に記載の装置。
(9)裏打ち材料が透明なプラスチック材料であることを特徴とする請求の範囲8に記載の装置。
(10)多孔質キャリヤ材料がニトロセルロースであることを特徴とする請求の範囲1〜9のいずれかに記載の装置。
(11)ニトロセルロースが少なくとも1μmの孔径を有することを特徴とする請求の範囲10に記載の装置。
(12)孔径が5μm以上であることを特徴とする請求の範囲11に記載の装置。
(13)孔径が8〜12μmであることを特徴とする請求の範囲12に記載の装置。
(14)多孔質キャリヤの検出区域の下流に、液体試料が検出区域を超えて浸透したことを示す対照区域が設けられており、対照区域もケーシングの外側から観察可能であることを特徴とする請求の範囲1〜13のいずれかに記載の装置。
(15)多孔質キャリヤがその末端部に吸収性シンクを有するストリップであり、前記シンクが未結合の標識付き試薬を検出区域から洗い流し得る十分な吸収能力を有することを特徴とする請求の範囲1〜14のいずれかに記載の装置。
(16)標識付き試薬が多孔質キャリヤに表面層として付与されていることを特徴とする請求の範囲1〜15のいずれかに記載の装置。
(17)多孔質キャリヤの、標識付き試薬が付与されている領域が艶出し剤で予め処理されていることを特徴とする請求の範囲16に記載の装置。
(18)艶出し剤が糖であることを特徴とする請求の範囲17に記載の装置。
(19)検出区域の固定化試薬が該検出区域のキャリヤの厚さ全体に亘り含浸されていてることを特徴とする請求の範囲1〜18のいずれかに記載の装置。
(20)検体がhCGであることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の装置。
(21)検体がLHであることを特徴とする請求の範囲1〜19のいずれかに記載の装置。
(22)自由に移動し得る試薬が検体に対して特異結合性である代わりに、自由に移動し得る試薬が存在下で競合反応に参加し得ることを特徴とする請求の範囲1〜21に記載の装置。
(23)検体を含むと思われる水性液体試料を請求の範囲1〜22のいずれかに記載の分析試験装置に接触させて、試料を毛細管作用により多孔質キャリヤ中を第1区域を介して検出区域に浸透させ且つ標識付き試薬を試料と共に第1区域から検出区域に移動させ、標識付き試薬が検出区域で結合されている程度を観察することにより試料中の検体の存在を決定することを特徴とする分析方法。」

5.甲第2号証ないし甲第8号証の記載事項
5-1)甲第2号証(特開昭61-145459号公報)
刊行物2には、次の事項が記載されている。
(2a)シート状分析デバイス(特許請求の範囲第1項)
「1)生物学的親和性結合特性を有する被分析物として液体中の成分の検出又は測定をするための分析デバイスであって、相前後して配設されかつそれらの末端を介して相互に吸着的接触状態にある数個のシート状ゾーンよりなり、デバイスの一端に移動相適用ゾーン(MPAZ)、そしてもう一方の末端に吸着ゾーン(AZ)、ならびにその間に存在する他の吸着ゾーン(そこでは被分析物と生物学的親和性を有する相互作用をなしうる反応成分が、相互に空間的に分離されて存在するように配置されている)を含有しており、その際
a)反応成分が、共有結合または吸着によるか、またはMPAZおよびAZ間およびAZと接触して存在するゾーン中の生物学的親和性を有する相互作用を介して固相ゾーン(SPZ)に固定されるか、またはデバイスにおいて生じる反応において共有結合または吸着によるか、または生物学的親和性を有する相互作用を介してSPZに固定された他の反応体に結合されており、
b)更なる標識反応成分(接合体)がMPAZとSPZとの間に未結合状態で位置し、そして
c)被分析物適用ゾーンがMPAZであるかまたはMPAZとAZの間のゾーンである
ようにしてなる、分析デバイス。」
(2b)すべての試薬成分を乾燥状態で含有するシート状分析デバイス(4頁左上欄13行〜左下欄12行)
「本発明はすべての試薬成分を含有し、そして作用シーケンスに必要なすべての成分のみならず、作用シーケンス自体も一体化された形で含み、そして被分析物の溶液をこの目的のために設計されたデバイスの作用領域と接触させそして被分析物を信号発生系を介して単一作用領域(固相ゾーン)で検出することにより生物学的親和特性を有する被分析物を検出できるようにしたシート状診断用デバイスに関する。
・・・このデバイスはすべての反応成分および試薬を脱水された形で含む。
シート状診断デバイスは、水性溶液吸収能を有する材料の帯状片1枚または相前後して配置される数枚よりなる。それら帯状片は固体支持体に固定される。それらは特定の診断剤に必要な試薬成分を含有し、また従って作用セクターまたは作用領域となる。帯状片形状デバイスの一方の端に位置する作用セクター(溶媒適用ゾーン)は被分析物溶液と、後者に浸漬することにより、あるいは後者を塗布することにより接触させる。その溶液はすべての作用領域を通過する。」
(2c)標識付き試薬と標識(5頁右下欄4行〜6頁左上欄10行)
「生物学的親和性を有する1つの結合パートナーは反応の進行過程で結合するようになるか、または、被分析物の検出のために設計された作用領域(固相ゾーン)の支持体材料にすでに結合している。それは固有結合パートナーとも呼ばれる。他の結合パートナー(1種または複数種)は支持体材料中に存在する。それらには標識を施す。
標識には様々な可能性が知られているが中でも酵素標識が好ましい。それは、色素原基質系または蛍光または化学発光を生じる基質系を必要とする。化学発光標識は、試薬の添加後にのみ測定される標識の一つの例である。化学発光はそれ自体または後者(基質系)により励起された蛍光のいずれかを測定することができる。大抵の場合に、蛍光標識は,試薬の添加を要せずして測れる。・・・測定することができる。」
(2d)サンドイッチ式免疫検定(7頁右下欄8行〜8頁左上欄5行)
「特異性の異なる2つの結合点が被分析物中に存在する場合には、サンドイッチ式免疫検定の原理に基づく、診断剤のいくつかの態様が考えられる。これらのうち2例について以下に説明する。
固相結合パートナーを固相作用領域の支持体材料に共有結合によりまたは吸着により結合する場合、被結合と標識結合パートナーとで形成される二成分複合体は溶媒と共に固相作用領域中に移行しそしてそこで固相結合パートナーと反応して固相に結合した三成分複合体と形成するが、これは最初の結合パートナーの標識を通じて検出することができる。過剰の標識結合パートナーは溶媒により、次の作用領域中に除去される。」
(2e)様々な態様と総括表I(8頁左上欄15行〜9頁上欄)
「前述の態様、および免疫測定(immunometric)試験原理、間接的抗体検出の原理または免疫検定のELA(酵素標識抗原)原理に基づく別な態様を説明するために総括表IおよびIIは、作用領域中の剤の成分の分布、および反応完了後の固相複合体の組成(その量は試料中の被分析物の濃度の尺度である)を例示的に説明している。」という記載と共に、「総括表I:移動相の形の試料または予め希釈した試料を用いる試験アセンブリ」と題する総括表Iにおいて、「試験アセンブリ」のゾーンIは「被分析物適用ゾーン」で、ゾーンIIには標識抗体1が未結合状態で位置していること、ゾーンVが「検出ゾーン」、すなわち「SPZ固相ゾーン」で、ゾーンVIが「吸収ゾーン」、すなわち「AZ吸着ゾーン」であることが図示されている。
(2f)自動的呈色(9頁右下欄11行〜11頁左上欄10行)
「実施例
組込まれた色素原基質系によるHCG検出のための完全に一体化された酵素-免疫化学的デバイス。
1.1.試薬
1.1.1.HCG-ペルオキシダーゼ接合体
・・・
1.2.デバイスの調製
シート状作用領域を次のように調製した。
移動相適用ゾーンは、Kaile 社製スポンジ布帛を20×6 mmの寸法に切断することにより調製した。・・それを水lmlあたりグルコース50mgおよびテトラメチルベンジン塩酸塩0.75mgで含浸し、そして空気流中で乾燥した。
前記接合体、抗-HCG抗体およびグルコースオキシダーゼ(・・)を均一の距離で、45×5mmMN1番紙(略)片に相前後して適用し、そして風乾した。
5×5mmの・・番紙片を常法により、固相ゾーンとしての抗-家兎IgG-抗体で被覆した。・・・
20×5mmの・・番紙片を吸収ゾーンとして用いた。それら4つの紙片を相前後して、0.5〜1mmオーバーラップさせながら両側粘着テープ(略)によりプラスチックリボンに固定して幅5mmの試験帯状片を形成した。
1.3.試験の実施
各例について試験はインキュベーション媒質中のHCG希釈液200μlを布帛に適用することにより行った。
1.4.結果
試験要素のクロマト展開および自動的呈色は室温で15分後に完了し、そして評価は肉眼的に、あるいは反射系により行うことができた。」

5-2)甲第3号証(特開昭61-142463号公報)
甲第3号証には、次の事項が記載されている。
(3a)クロマトグラフィー装置(特許請求の範囲第1項)
「1.クロマトグラフィーの装置であって、
(イ)ハウジング、
(ロ)上記ハウジング内部に取りはずしのできないように収容された、吸収性材料から成るストリップ、
(ハ)上記ストリップを、
(1)ストリップの前後両面がハウジングの内壁に基本的に触れないように、また、
(2)ストリップの毛管作用が実質的に変化することがないように、
上記ハウジング内部に支持収納するため、ハウジング内壁に付設された手段、
(ニ)上記ストリップの1部を液体媒質と接触可能とするため、ハウジングの基部の付け根に配設された手段、および
(ホ)上記ストリップを目視的に観察するため、このハウジング内に配設された手段
の組合わせを含んでいる装置。」
(3b)発明の背景、測定法開発に際しての考慮事項(2頁右下欄15行〜3頁左上欄2行)
「測定法を開発する場合、試薬類およびプロトコールの考案に関しては、多くの考慮すべき事項がある。その1つは、測定者の熟練の問題である。測定を比較的不馴れなものに行わせ、しかも妥当な定量結果を収め得ることを期待する場合が多い。比較的未熟な測定者の場合、複雑な装置を必要とせず、単純かつ迅速な試験による定量的測定実現することが特に望ましい。」
(3c)免疫クロマトグラフとしての利用
そして、上述のようなこの発明の装置は、試料中の被検物質量を定量測定するための免疫クロマトグラフとして、ストリップを使用できることが記載され(7頁左上欄12行〜右上欄末行等)、「sbp 要素が吸水性のストリップと非拡散状に結合している区域を「免疫吸着帯(イムノソルビング・ゾーン)と称する。試料の被検物質は溶液と共に運ばれ、溶媒の先端がこの帯と交差する。被検物質は、支持体と結合している sbp要素と相同的なsbp要素であっても、またはこれと相補的(レシプロカル)なものであっても、sbp要素複合体の形成を介して支持体と結合する。信号発信系は、被検物質が結合している免疫吸着帯にある区域を、それが含まれていない区域から区分できる方法を提供するので、免疫クロマトグラフ上の予め定められた点からの距離は試料中の被検物質量の尺度となる。」(7頁右上欄8行〜末行)と記載されている。
(3d)標識、信号発信系
上記被検物質量の尺度となる距離を示すための標識や信号発信系については、「標識-標識とは、他の分子または支持体と結合(コンジュゲート)する任意の分子を言い、2つの分子が含まれているときは、便宜的に、いずれか1つの分子が標識となるように選ぶ。この発明では、標識は支持体と結合しているsbp要素を表す。
信号発信系-信号発信系は、少なくともその1成分がsbp要素と結合(コンジュゲート)している1またはそれ以上の成分を有することができる。信号発信系は、外部であるか、または支持体またはsbp要素と結合している信号の装置、即ち標準的には目視計測によることが望ましい電磁放射線の測定によって検出できる測定可能な信号(シグナル)を発信する。ほとんどの場合、信号発信系は発色団および酵素であって、この場合、発色団としては、紫外部または可視部領域の光を吸収する色素、りん光体、蛍光体、化学発光体が挙げられる。
免疫クロマトグラフ - 免疫クロマトグラフは、リガンドまたは受容体のいずれかである複数のsbp要素を吸収性支持体領域に結合して有しており、支持体は、液体が被検物質および適当な場合には信号発信系の任意の要素を運び、この結合領域を横断して移動することを可能にしている。」と記載されている(4頁左下欄14行〜右下欄17行)。

5-3)甲第4号証(特開昭53-47894号公報)
甲第4号証には、(4a)「1.(a)始端区画および終端区画を有すると共に、予め定められた位置に配置された試料受容区画を有し、かつ毛管現象によって展開液を移送することができる材料から構成されている細片
および(b)該細片の少なくとも1つの予め定められた場所に包含されかつ上記展開液が上記始端区画から終端区画へ移動した時細片上の予め定められた測定位置に、上記試料受容区画に塗布された上記試料の特性の関数として検出可能な応答を出すための反応剤類からなることを特徴とする試料特性を測定するための試験用具。
・・・・・
6.試料中リガンドの定量のための特許請求の範囲第1項記載の試験用具であって、反応剤類がリガンドの特異的結合対手およびラベル化された形のリガンドもしくは結合類縁体からなる標識体を含み、該標識体および結合対手が該細片上の予め定められた位置に予め定められた量包含され、該標識体の測定可能な特性が、試料中リガンド量の関数として予め定められた測定位置に表われるようにされていることを特徴とするもの。」(特許請求の範囲)という試験用具の発明が、(4b)「本発明は・・・液体試料中のリガンドの定量もしくは液体試料のリガンド結合能の測定のごとき結合試験方法に関するものである。好ましい実施の態様においては、本発明はラジオアイソトープ(放射性同位体)を標識として用いる結合試験を行うための試験用具に関するものである。」(5頁左上欄1〜10行)という記載とともに記載されている。
また、(4c)細片が容器内に収納されている第8図については、「第8図は本発明の好ましい試験装置40が実際に使用される様子を示す。試料を細片31の細片の試料受容区画に包ませたのち、始端区画33を下にして、試験用具30を一定量の展開液42を含む試験管41に挿入する。試験間1および細片31の大きさは、・・・選択するのが好ましい。試料を接種した試験用具30を試験管41に挿入した後、摩擦栓45を試験管41にはめ込んで密閉された空間を形成し、展開液が細片31に沿って展開していく過程で蒸発することを防止する。」と記載されている(8頁右上欄10行〜左下欄5行)。

5-4)甲第5号証(特開昭55-15100号公報)
甲第5号証には、分散金属粒子で標識する分析方法並びにこれに使用するキットについて、(5a)特許請求の範囲に、
「(1)水性テストサンプル中の特異結合性蛋白質と対応する結合可能物質との間の反応の1種又は複数種の成分を、前記の如き成分相互の公知の結合親和力を利用して検出及び/又は定量する方法において、金属又は金属化合物又は金属もしくは金属化合物で被覆された高分子核の分散水溶液の粒度少なくとも5nmの粒子に前記反応の所望成分を直接又は間接に結合して得られた1種又は複数種の標識成分を使用し、反応中又は適当な反応時間後、必要な場合結合及び遊離標識成分の分離後に、それ自体公知の方法を用いてテストサンプル又は誘導分画の1つの中で凝集体含有の金属及び/又は形成金属の物理的性質及び/又は量を定量し、この定量によって、検出及び/又は定量されるべき1種又は複数種の成分が定性的及び/又は定量的に示されることを特徴とする特異結合性蛋白質と対応する結合可能物質との間の1種又は複数種の成分の検出及び/又は定量方法。
(2)特異結合性蛋白質と・・・・・・記載の方法。
(14)特異結合性蛋白質と対応する結合可能物質との間の反応の1種又は複数種の成分を、
a)金属又は金属化合物又は金属もしくは金属化合物で被覆された高分子核の分散水溶液の少なくとも5nmの大きさの粒子に前記反応の1成分を結合して得られた金属標識成分と、
b)別の試薬と
を含有する水性媒体中で定量するために使用されるテストキット。
・・・・
(18)標識成分が凍結乾燥されることを特徴とする特許請求の範囲第(14)項〜第(16)項のいずれか記載のテストキット。」と記載され、
(5b)「金属コロイド粒子、特に金コロイド粒子であって、その表面を抗体で被覆しているもので、細胞表面の抗原分布の・・・電子顕微鏡の手段による証明用の用途であって、該金属コロイド粒子をコントラスト高揚標識として使用するものは、既に数年前から記載されているが・・・分散分子、なるべくは金属コロイド粒子の試験管内定性並びに定量的の免疫学成分、例えばハプテン、抗原並びに抗体の水性試料中の測定の応用は従来は報告がなく、かつ可能なことが驚くべきことに証明されている。」という記載(4頁左下欄下から2行〜右下欄11行)とともに、
(5c)いずれも、板状体の凹部やポリエチレンチューブの表面に固定化された抗体に試料中の被検出成分を結合させた後、金属コロイド粒子等の金属標識試薬成分を分散液の状態で添加して使用する多数の実施例が記載されている(7頁右上欄8行〜16頁右下欄末行)。

5-5)甲第6号証(国際出願公開WO86/03839号パンフレット)
甲第6号証には、「固相拡散試験法」の発明について、
(6a)特許請求の範囲に、「1.試験試料中の物質の定量定性分析法であって、
(a)第1物質を不溶性支持体に結合し(該第1物質はリガンド及びレセプターからなる群より選択される);
(b)第2物質含有試験溶液を調製し(該第2物質は上記第1物質に対応したリガンド及びレセプターからなる群より選択され、該第2物質は標識と結合している);
(c)上記第1物質で処理された上記不溶性支持体上の1箇所に上記試験溶液を塗布し;
(d)上記試験溶液を上記第1物質で処理された上記不溶性支持体中に拡散せしめて、上記標識第2物質の拡散パターンを得;次いで
(e)上記標識第2物質の拡散量を測定する;
工程からなることを特徴とする方法。」と記載され、
(6b)その方法の測定原理について、7頁26行〜8頁1行に「固相拡散検定の原理を、競合法検定を例として用い以下に概説する。特定の被検物質に特異的な吸着剤をニトロセルロース紙のような不溶性の支持体に結合させる。吸着剤が特異的に作用する被検物質の濃度不明の溶液を、濃度の定まっている酵素で標識した被検物質と混合する。一定量の当該溶液を計量して、不溶性支持体の1点に加える。溶液を、数分間、不溶性支持体中に拡散させる。拡散が終わると、酵素標識に基質を加えることによって拡散の程度を可視化する。固体支持体上の拡散パターンの直径が、溶液中の標識化されていない被検物質の量に比例する。」と記載されるとともに、図1及び図2によって、この原理が説明され、
(6c)標識について、8頁30行〜33行には「本発明の固相拡散試験法において使用される標識は、酵素、放射性同位元素、蛍光性化合物、着色剤、紫外光によって可視化する物質または上記標識を内包するリポソーム等のキャリアであってよい。」と、また、14頁35行〜15頁3行には「被検物質に結合される標識は、また、着色剤、例えば、コロイド状金、コロイド状銀・・、コンゴー・レッド22120、4’6’-ジアミジノ-2-フェニルインドール、エオシン10B及びへマトキシリン75290であってもよい。」と記載され、
(6d)29頁の例IXには、コロイド状金を着色剤型標識として使用し、ペルオキシダーゼを標識し、無標識ペルオキシダーゼと混合した溶液を、抗ペルオキシダーゼ抗体とインキュベートして抗体を全体に結合させてあるニトロセルロー紙の一点に加えて、競合法で無標識ペルオキシダーゼを測定する例が、また、29頁〜30頁の例Xでは、「このような定性試験の実用例としては、下記の妊娠試験がある。ヒトコリオゴナドトロピン(HCG)のαサブユニットに対する3つのモノクローナル抗体の混合物が、例IXで参照された方法を用いてコロイド状金で標識される。ニトロセルロース膜を、ウサギ中で産生され、当業者に公知の・・アフィニティー精製されたHCGに対するポリクローナル抗体で飽和させる。膜を次いで2mm2の孔を持つカバーで被覆する。凍結乾燥された金標識抗HCG抗体を含有する綿棒をHCG含有尿試料で湿潤させる。綿棒をしかる後に膜カバーと接触させる。尿は膜カバーの孔を通過して綿棒からニトロセルロース膜中に拡散する。綿棒を約30秒間その場に保持し、しかる後取り去る。50mIU/mL以上のHCG濃度は通常妊娠を示すが、これは赤色スポットの存在により診断することができる。50mIU/mL以下のHCG 濃度では可視的スポットを発現しない。」(30頁5〜21行)と、サンドイッチ法の例が記載されている。

5-6)甲第7号証(中垣正幸ら著「コロイド化学の基礎」、第53〜55頁)
甲第7号証には、コロイドに正コロイド、負コロイドがあり、ろ紙が水中では負に帯電するので、その下端をコロイド溶液に浸すと、負コロイドであれば水の上昇に伴ってコロイド粒子も上昇することが記載されている。水中では、正コロイドの例として金属水酸化物又は酸化物などが、負コロイドの例として金、銀などの金属コロイドなどが記載されている。

5-7)甲第8号証(特開昭64-63865号公報)
甲第8号証は、特願昭63-68000号(昭和63年3月22日出願、パリ条約に基づく優先権主張1987年3月27日、米国)(以下、単に「先願」という。)の願書に添付された明細書及び図面の内容を公開するものであるが、甲第8号証には、次の事項が記載されている。
(8a)固相イムノアッセイに用いられる物品(特許請求の範囲第1項)
「(1)少なくとも第1部分及び第2部分を有する固形支持体からなり、第1および第2部分は相互に毛管流により連絡し、これにより物質は毛管現象によって第1部分から第2部分へ流動し、第2部分は第2部分に固定化された結合剤を含み、該結合剤は少なくとも被分析体に対する結合剤であり;トレーサーがリガンド部分および該リガンド部分に結合した検出可能な標識部分からなり、該トレーサーは固形支持体の第1部分に支持され、これにより被分析体を含有すると推測される液体試料で第1部分が湿潤した際にトレーサーおよび被分析体が毛管現象によって第2部分へ流動して上記結合剤と接触する、
被分析体のアツセイに用いられる物品。」
(8b)トレーサー、標識(6頁左上欄1〜5行目)
「特に好ましい形態においては,アッセイに用いられるトレーサーは粒状の可視標識に結合したリガンドである。粒状標識は金属もしくは合金(たとえばコロイド状の金)またはサック、特に可視色素を含むリポソームである。」
(8c)図示されたディップスティック
「図面は本発明によるディップスティックの略図である。」として、図面に、短冊状の試験片(ストリップ)であって、下方からA、B、C、Dと符号の付された帯域部分と上端の符号のない大きな部分を有するに分かれているディップスティック(10)が図示され、トレーサーが支持された第1部分A;結合剤が支持されている第2部分B;およびトレーサーが測定される可能性のある第3部分Dを含むストリップが図示されている(6頁左下欄5行〜7頁左上欄13行)し、「上記物品はディップスティックとして使用することができる。あるいは試料を部分Aに施すこともできる。従って物品は水平または垂直のいずれの向きでも使用できる。」とも記載されている(7頁左上欄14行〜17行)。
(8d)実施例(7頁右上欄14行〜8頁左上欄下から5行)
「ポリスチレンの0.5×8cmのストリップにまずスコッチ・・接着剤転写テープ(・・)を貼付することによりディップスティックを作成した。0.5×0.5cmの正方形の細孔5μmニトロセルロース(・・)からなる帯域Bにアフィニティ精製した家兎抗A群連鎖球菌抗原3μlをスポットし、次いで3%ウシ血清アルブミンでブロックした。乾燥後、ディップスティックのテープ貼付面に、スティックの下から約1cmのところに施した。0.5×6.5cmのろ紙ストリップ(・・)をニトロセルロースのすぐ上方に、これと接触させて施した(帯域CおよびDで示される位置)。次いで乾燥セファデックスG50ファイングレード(・・)からなる帯域Aを施す。
スルホローダミン色素を充填した検出用リポソームはオコンネルら(・・)に概説された方法により調製された。これらを家兎抗A群連鎖球菌抗原に共有結合させた。
検出用リポソームを下から0.5cmの帯域Aにスポットし(2μl)、風乾した。・・・
抽出された抗原を用いて菌数8×106〜1.25×105個/mlの希釈系列を調製した。これら希釈液のアリコート(0.5ml)を12×75mmの試験管に入れ、ディップスティックを各試験管内の液体に入れた。抽出された抗原を含有する液体がスティックに吸い上げられるに伴って、これは捕捉抗体のスポットを通って検出用リポソームを運搬する。抗原が存在すると、これが捕捉抗体スポットに結合し、若干のリポソームも結合し、その結果帯域Bに赤色のスポットが現れる。残りのリポソームおよび抗原溶液は通過して帯域Dへ入る。
アッセイ結果は帯域Bに赤色のスポットを生じた最小菌体濃度を観察することにより“読取る”ことができる。この例の結果を次表に示す。これは終末点5×105個/mlであることを示す。これはA群ストレプトコッカス・ファリンギチス(・・)の直接咽喉スワブ診断に必要な感度に近接する。
・・・・・・
(-)=抗原(赤色スポット)陰性の指示 」

6.無効理由(i)特許法第29条の2規定違反について
上記記載(8d)の先願明細書の実施例の記載からみて、先願の願書に添付された明細書の「固体支持体」、「トレーサー」、および「被分析物に対する結合剤」は、それぞれ、本件発明1の「乾燥多孔質キャリア」、「検体に対して特異結合性の標識付き試薬」、および「検体に対して特異結合性の無標識試薬」に相当する。そして、結合剤の固定化された第2部分(帯域B)においてトレーサーが結合された程度が読み取り観察されているものであり、標識が「粒状の直接標識であって、液体試料が適用される前乾燥状態で保存されている」ものであることも先願明細書に記載されている。
そうすると、本件発明1と先願の願書に添付された明細書又は図面に記載された発明とは、「乾燥多孔質キャリヤに湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識付き試薬と、キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、適用された液体試料が標識付き試薬とともに検出区域に浸透し、標識付き試薬が検出区域において結合された程度が観察できる分析試験に使用する物であって、標識が粒状の直接標識であって、液体試料が適用される前は乾燥状態で保存されている分析試験に使用する物。」である点で一致するが、
(相違点1)
本件発明1では、不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に乾燥多孔質キャリヤを収容しており、液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通しており、標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段を含む分析試験装置であるのに対し、先願明細書には、必要な試薬を含む固体支持体を中空ケーシングに収納することは記載されていないし、先願明細書記載発明では、ケーシングへの収納が行われていないため、標識付き試薬であるトレーサーの結合剤への結合程度の観察も、特に観察できる手段を設けることなく可能である点、および
(相違点2)
標識付き試薬と検出区域との位置関係が、本件発明1では、適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が相互に空間的に分離して決定されているものであるのに対し、先願明細書および図面には、両者の位置関係がそのようにして決定されているものであるかどうか、記載されていない点、
で相違するものであって、両者は同一であるとはいえない。

また、本件発明2〜本件発明23は、いずれも本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1と同様に、先願の願書に添付された明細書又は図面に記載された発明と同一であるとはいえない。

なお、請求人は、すべての試薬を含有あるいは結合させた試験片を使用する場合、試験片の汚染、破損を避け、また試験条件を一定にするために、これをケースの中に収納して使用することは、あまりにも当然のことであり、ケースに入れずに使用するとすれば、かえって困難を生ずるであろうと主張し、甲第3号証及び甲第4号証が試験片を中の見えるケースに入れて使用する装置を開示しているとして、明示がなくとも、本件発明は甲第8号証に全部開示されていると主張している。
しかしながら、試験片を試験開始まで包装等により外界から遮断しておくことにより、試験片の汚染、破損を避け、また変質等による試験条件を変動を避けることも、普通に行われていることであるから、すべての試薬を含有あるいは結合させた試験片が先願明細書に記載されているからといって、少なくとも上記相違点1の構成を備えた分析試験装置が先願明細書又は図面に記載されていることにはならない。

したがって、本件発明1〜本件発明23についての特許は、特許法第29条の2の規定に違反してなされたものとすることはできない。

7.無効理由(ii)特許法第29条第2項違反について
(1)甲第2号証記載の発明
上記記載(2d)から、サンドイッチ法における標識付き試薬と三成分複合体の検出区域である固相ゾーンは、適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が相互に空間的に分離して決定されているものと認められるし、また、使用されている標識を発色させるのに必要な試薬類をすべて分析デバイス中に含ませておき、液体試料を適用して試験を行った際に自動的に呈色させ、肉眼で観察できるようにすることも、上記記載(2f)に記載されているから、甲第2号証には、「乾燥多孔質キャリヤに湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識付き試薬と、キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が相互に空間的に分離して決定されており、さらに標識付き試薬が検出区域において結合された程度を必要な試薬を分析デバイスに含ませておくことにより観察できる分析デバイスであって、液体試料が適用される前乾燥状態で保存されている前記分析デバイス。」の発明が記載されている。

(2)本件発明1と甲第2号証記載の発明との対比
本件発明1と甲第2号証記載の発明とを対比すると、両者は、
(一致点)
「乾燥多孔質キャリヤに湿潤状態において多孔質キャリヤ内部を自由に移動し得る、検体に対して特異結合性の標識付き試薬と、キャリヤ材料上の検出区域に永久的に固定化されており、従って湿潤状態でも移動しない、同検体に対して特異結合性の無標識試薬とを含んでおり、適用された液体試料が標識付き試薬を吸収した後に検出区域に浸透するように標識付き試薬と検出区域との位置関係が相互に空間的に分離して決定されており、さらに標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段を含む分析試験に使用する物であって、標識が液体試料が適用される前乾燥状態で保存されている前記分析試験に使用する物。」
である点で一致し、次の点で相違する。
(相違点1)
ケーシングについて、本件発明1では、不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に乾燥多孔質キャリヤを収容しており、液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通している分析試験装置であるのに対し、甲第2号証記載には、必要な試薬を含む分析デバイスを中空ケーシングに収納することは記載されていない点。
(相違点2)
標識と標識付き試薬が検出区域において結合された程度の観察について、本件発明1では、標識が、追加的な試薬との反応等を必要とせず、直接的に観察できる粒状の直接標識であって、液体試料が適用される前ケーシング内に乾燥状態で保存されているのに対し、甲第2号証には、標識として粒状の直接標識を使用することは記載されていないし、標識付き試薬が検出区域において結合された程度を肉眼で直接的に観察するためには、追加的な呈色用試薬を反応デバイスに包含させることが必要な点。

(3)上記相違点について検討する。
イ)相違点1について
甲第3号証には、免疫クロマトグラフィーを行う試薬を含む多孔質キャリアであるストリップを、不透湿性固体材料からなる中空ケーシング中に収容し、液体試料が適用され得るように多孔質キャリヤはケーシングの外部と直接的または間接的に連通し、また、標識付き試薬が検出区域において結合された程度を観察できる手段をケーシングに含む分析試験装置が記載されているから、甲第2号証に記載された分析デバイスを同様な中空ケーシングに収納した分析試験装置とすることは、当業者が適宜なし得る設計変更にすぎない。

ロ)相違点2について
しかしながら、粒状の直接標識については、甲第5号証には、粒状の直接標識の使用が記載されているものの、標識試薬はプレートの凹部や試験管などの中で液体試料と反応させて使用される(上記記載(5b)、(5c)参照)ものであって、液体試料と多孔質キャリヤ中において反応されるものではない。また、標識試薬単独の状態では凍結乾燥され保存等がなされていたとしても、それが液体試料と反応させるために混合される段階においては、「分散水溶液」の状態である(上記記載(5a)、(5c)参照)から、甲第2号証記載の、免疫反応時における溶媒として「液体試料」以外の溶媒を使用せず、多孔質キャリヤに適用された液体試料と多孔質キャリヤ内部で免疫反応を行わなければならない、乾燥状態で多孔質キャリヤに未結合状態で位置させる標識付き試薬の「標識」として、粒状の直接標識を使用することを教示するものではない。
また、甲第6号証においても、「(b)第2物質含有試験溶液を調製し(該第2物質は上記第1物質に対応したリガンド及びレセプターからなる群より選択され、該第2物質は標識と結合している);
(c)上記第1物質で処理された上記不溶性支持体上の1箇所に上記試験溶液を塗布し;」と上記記載(6a)にあるように、粒状の直接標識で標識された試薬は、競合法においては液体試料との混合液として、またサンドイッチ法においても「凍結乾燥された金標識抗HCG抗体を含有する綿棒をHCG含有尿試料で湿潤させる」という、いずれも無標識試薬が固定された多孔質材料以外で場所での予めの溶解操作で作成した「第2物質含有試験溶液」を調製した後、無標識試薬の固定化された多孔質材料上の1箇所に上記試験溶液を塗布して、該試験溶液を多孔質材料中に拡散せしめて、上記標識第2物質の拡散パターンを得るものである。
粒状の直接標識は、甲第2号証において標識として使用されている従来の酵素標識や蛍光標識等に代えて使用することが、甲第5号証の上記記載(5b)にもあるように、試験管内での使用でさえ可能なことが意外であったとされる標識であるから、甲第6号証における上記のような「第2物質含有試験溶液」として調製後に使用される粒状の直接標識の使用方法が、検出区域に固定化された無標識試薬と反応させるために多孔質キャリヤへの液体試料の適用以外の操作を行わない甲第2号証記載の分析デバイスの標識付き試薬の標識として、酵素標識や蛍光標識等に置き換えて、粒状の直接標識を使用することを教示するものではない。
そして、コロイド化学一般についての書籍である甲第7号証には、水で濡れたろ紙とコロイド粒子の極性の異同によるろ紙中での移動挙動の相違が説明されている。しかしながら、甲第2号証の分析デバイスの中では、標識成分が単独で多孔質キャリヤ中を移動するものではなく、そもそも「標識付き試薬」として、特異的結合性の試薬成分に結合された状態にされている上、サンドイッチ法が実施されるものにおいては、上記記載(2d)のように、検出区域まで被分析成分と標識付き試薬との複合体となって移動するものであるから、コロイド粒子単独のろ紙内における挙動について記載されているだけの甲第7号証の記載は、相違点2の構成について、示唆、教示するところはない。
さらに、標識として、上記記載(3d)や記載(4b)のように従来の酵素や放射性同位体などを使用することしか記載されていない甲第3号証および甲第4号証の記載を勘案したとしても、甲第2号証記載の分析デバイスにおいて、標識付き試薬の標識として、酵素標識や蛍光標識等に代えて粒状の直接標識を使用することが当業者に容易に想到し得た事項であるということはできない。
そして、本件発明1は、相違点1,2の構成を採用することにより、家庭における非熟練者でも容易に使用でき、装置の一部分のみ試料(例えば妊娠試験や排卵試験の場合では尿)と接触させれば、その後使用者が何もしなくても分析結果を観察できる、速効的で便利な試験装置を提供する、という明細書記載の効果(本件特許公報、4欄27〜31行、5欄4〜6行等)という顕著な効果を奏するものである。
ニ)進歩性についてのまとめ
そうすると、本件発明1は、甲第2号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。。
また、本件発明2〜本件発明23は、いずれも本件発明1を引用する発明であるから、本件発明1と同様に、甲第2号証〜甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。

8.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1〜本件発明23の特許を無効とすることはできない。審判にかかる費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2003-05-06 
結審通知日 2003-05-09 
審決日 2003-05-21 
出願番号 特願昭63-503518
審決分類 P 1 112・ 161- Y (G01N)
P 1 112・ 121- Y (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 秋月 美紀子  
特許庁審判長 後藤 千恵子
特許庁審判官 渡部 利行
河原 正
登録日 1997-10-24 
登録番号 特許第2132903号(P2132903)
発明の名称 検定法  
代理人 一入 章夫  
代理人 大崎 勝真  
代理人 井上 満  
代理人 川口 義雄  
代理人 大屋 憲一  
代理人 平木 祐輔  

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