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関連判例 | 平成15年(行ケ)79号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 全部無効 出願日、優先日、請求日 訂正を認める。無効としない D06F 審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備 訂正を認める。無効としない D06F 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効としない D06F 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 訂正を認める。無効としない D06F 審判 全部無効 1項2号公然実施 訂正を認める。無効としない D06F |
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管理番号 | 1119958 |
審判番号 | 無効2001-35330 |
総通号数 | 69 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-03-15 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2001-07-28 |
確定日 | 2004-09-22 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2690256号発明「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
1. 手続の経緯 本件特許第2690256号の請求項1~9に係る発明についての出願は、平成5年1月28日(パリ条約による優先権主張1992年1月29日、デンマーク王国)に出願され、平成9年8月29日にその発明について特許権の設定登録がされた。 その後、平成11年2月17日に、本件特許第2690256号の願書に添付した明細書の訂正をすることについて審判が請求され(訂正11-39016号)、同年8月16日に、同明細書を請求書に添附した明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおり訂正することを認めるとの審決がなされ、これが確定した。 これに対して、平成13年7月28日に、大豊物産株式会社(旧株式会社プレックス)より、本件請求項1~9に係る特許を無効とすることについて審判の請求がなされ(無効2001-35330)、被請求人からは、答弁書の提出期間内に、訂正請求書が提出され、願書に添付した明細書(上記訂正明細書)の訂正の請求がなされた。 2. 訂正の可否についての判断 (1) 訂正事項 上記訂正の請求の内容は、上記訂正明細書及び願書に添付した図面を、上記訂正請求書に添附した訂正明細書及び図面(以下、「再訂正明細書及び図面」という。)のとおりに訂正することを求めるもので、以下のとおりの事項からなる。(なお、「旧」とあるのは訂正明細書中の箇所を、「新」とあるのは再訂正明細書中の箇所を示す。) イ. 旧請求項1を削除する ロ. 旧請求項2に、 「前記挿入装置(14)が、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段(15)からなり、前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれていることを特徴とする請求項1記載の装置。」 とあるのを、 「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、 該装置はコンベヤベルトからなり、 該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、 前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され、 前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、 該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、 フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、 洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、 前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、 前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、 フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。」 と訂正し、新請求項1とする。 ハ.旧請求項3に「請求項2記載の装置」とあるのを「請求項1記載の装置」と、旧請求項4に「請求項1、2または3記載の装置」とあるのを「請求項1または2記載の装置」と、旧請求項5に「請求項1、2、3および4記載の装置」とあるのを、「請求項1、2および3記載の装置」と、旧請求項6に「請求項1、2、3、4および5記載の装置」とあるのを、「請求項1、2、3および4記載の装置」と、また、旧請求項7に「請求項1、2、3、4、5および6記載の装置」とあるのを、「請求項1、2、3、4および5記載の装置」と、それぞれ訂正し、新請求項2、3、4、5及び6とする。 ニ.旧請求項8に、 「前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が前記昇降手段のレール手段の底部に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6および7記載の装置。」とあるのを、 「前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の底部に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5および6記載の装置。」 と訂正し、新請求項7とする。 ホ. 旧請求項9に、 「引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)の移動させるためのレール手段(15)の頂部側に設けられてなることを特徴とする請求項8記載の装置。」 とあるのを、 「引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の装置。」 と訂正し、新請求項8とする。 ヘ. 訂正明細書の段落【0017】に、 「当該挿入装置は、それぞれ斜め上に延びる昇降手段15からなり、該昇降手段の下側には、下向きの一対のクランプ17、18を備えたスライド(slide) 16が延びている。」 とあるのを、 「当該挿入装置は、それぞれ斜め上に延びると共にレール手段15を持つ昇降手段からなり、該昇降手段の下側には、下向きの一対のクランプ17、18を備えたスライド(slide) 16が設けられている。」 と訂正する。 ト.訂正明細書の段落【0020】に、 「レール手段7の正面の位置が挿入装置17で占められているため、」とあるのを、「レール手段7の正面の位置が挿入装置14で占められているため、」と訂正する。 チ.訂正明細書の段落【0022】に、 「フラットワーク物品をクランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶと、」とあるのを、「フラットワーク物品をクランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶとき、」と訂正する。 リ.訂正明細書の【図面の簡単な説明】中【符号の説明】に、「15 昇降手段」とあるのを、「15 レール手段」と訂正する。 ヌ.願書に添付した図面中、第1図に、「15 昇降手段」とあるのを、再訂正図面第1図にあるとおり、「15 レール手段」と訂正する。 (2) 訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否 ・ 訂正事項イについて 訂正事項イは、旧請求項1を削除するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項ロについて 訂正事項ロは、訂正事項イによる請求項1の削除に伴い、旧請求項1を引用する旧請求項2を独立請求項として記載して新請求項1とするとともに、(i)旧請求項1に、「操作位置から昇降する昇降手段」とあるのを「操作位置から昇降作動する昇降手段」と、(ii)旧請求項1に、「レール手段(15)」とあるのを「前記昇降手段のレール手段(15)」と、(iii)旧請求項1に、「レール手段(15)に沿って移動自在のスライド(16)」とあるのを「レール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)」と、(iv)旧請求項2に、「複数の昇降手段(15)」とあるのを「複数の昇降手段」と、また、(v)旧請求項2に、「操作位置より実質的に高い位置に設けられた一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かす」とあるのを「前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かす」と訂正するものであるところ、(i)については、昇降手段(レール手段を含む)全体としての役割ないしは作動内容を明りょうとするものであり(なお、「昇降作動する昇降手段」という記載だけでは、昇降手段(レール手段を含む)全体は昇降するものでないことが明らかであるといえないが、スライドがレール手段に沿って昇降することは、上記(iii)、(v)の訂正内容からしても明らかであるので(被請求人も昇降手段(レール手段を含む)全体は昇降しないと説明している(平成14年11月1日付け上申書第4頁第7~10行)。)、(i)については、昇降手段(レール手段を含む)全体としての役割ないしは作動内容を示すものということができる。)、(ii)については、「レール手段」の配設位置を明りょうとするものであり、(iii)については、「移動自在のスライド」の作動を明りょうとするものであり、(iv)については、符号(15)が、旧請求項1では「レール手段(15)」に、旧請求項2では「昇降手段(15)」に使用されているため、いずれに該当するかを明りょうとするものであり、また、(v)については、「フラットワーク物品を上向きに動かす」主体が何であるかを明りょうにするものであるから、上記訂正事項ロは、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、上記(i)ないし(v)については、訂正明細書(甲第2号証参照)の、「当該挿入装置は、それぞれ斜め上に延びる昇降手段15からなり、該昇降手段の下側には、下向きの一対のクランプ17、18を備えたスライド(slide) 16が延びている。」(段落【0017】)、「フラットワーク物品21はクランプ17に挿入され、レール手段15に沿ったスライド16の上向きの移動によって、当該フラットワーク物品がクランプ10まで上向きに動かされる。…クランプ17を備えたスライド16が当該クランプ10を通過して元に戻るための空間的余裕が残されている。」(段落【0019】)等の記載からみて、いずれも、訂正明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項ハについて 訂正事項ハは、上記訂正事項イ及びロによる訂正に伴い、請求項の番号と、引用請求項の番号とを繰り上げ訂正するものであって、明りょうでない記載の釈明を目的としたものであり、新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項ニについて 訂正事項ニは、「昇降手段」について、「斜め上に延びる」と、その構造を限定し、「レール手段」について、符号(15)を付加するとともに、請求項の番号を繰り上げるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 そして、「昇降手段」の構造限定については、上記訂正明細書の段落【0017】の記載から、また、符号の付加については、同段落【0019】の記載からみて、いずれも、上記訂正明細書に記載された事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項ホについて 訂正事項ホは、(i)「引き外しボタン(19)が…横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)の移動させるための」を、「引き外しボタン(19)が…横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために」と、また、(ii)「レール手段(15)」を「斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)」と訂正するものであるところ、(i)については、上記訂正明細書に、「当該延伸装置の主要な要素は、前記2枚の側部部材1、2のあいだに延びるレール手段7、および該レール手段の上を走行する2個のキャリッジ8および9である。」、「当該挿入装置14を用いる操作者は、おのおののクランプ17、18に角部(corner)がくるように一対のクランプ上にフラットワーク物品を置き、そののち適切に設けられた引き外し用ボタン19を押して準備信号(ready-signal)を送信する。該準備信号はPLCによって制御された挿入動作を起こす。クランプ17、18内に置かれたフラットワーク物品がキャリッジ8、9上のクランプ10、11に運ばれるまえに、当該キャリッジは当該挿入装置に対向する位置になければならない。それゆえ、キャリッジ8、9用の駆動装置は、準備信号を発生する挿入装置14のうちの1つと対向するために第1にランダムな始動位置からキャリッジを移動することができ、第2に当該キャリッジをレール手段7の中央に向かって共に動かすことができ、第3にキャリッジをレール手段の中央から互いに対称的に離れるように動かすことができる手段を備えている。キャリッジが挿入装置に対向する位置に設けられると、スライド16は上向きに動かされ、一対のクランプ17、18がクランプ10、11を通過するときに、フラットワーク物品の角部が把持される。つぎにスライド16は、ただちに戻され、フラットワーク物品を延伸するためにキャリッジ8、9は中央に移動し対称的に離れる。」(段落【0017】)と記載されていることからみて、「引き外しボタン(19)」は、横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために押されるものであることが明白であるから、誤記の訂正を目的とするものであり、上記訂正明細書に記載された事項の範囲内のものであって、新規事項の追加には該当しない。 また、(ii)については、レール手段(15)の構造を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、上記訂正事項ニについての判断のとおり新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項ヘについて 訂正事項ヘは、「昇降手段」に関して、(i)「斜め上に延びる」とあるのを「斜め上に延びると共にレール手段15を持つ」と訂正するとともに、(ii)図で使用される符号「15」が付されていたのを削除し、(iii)「スライド」に関して、「延びている」とあるのを「設けられている」と訂正するものであるが、(i)~(iii)については、いずれも、「前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が前記昇降手段のレール手段の底部に設けられた」(【請求項8】)、「レール手段15、スライド16およびクランプ17を有する挿入装置14」(段落【0019】)等の記載と整合させるものであり、明りょうでない記載の釈明を目的としており、また、上記記載からみて、(i)~(iii)は、いずれも、訂正明細書に記載した事項の範囲内の訂正であって、新規事項の追加には該当しない。 ・訂正事項トについて 訂正事項トは、「挿入装置」に付されている図面において使用する符号を、「装置には複数の挿入装置14が設けられる。」(段落【0017】)等の記載に合わせて、正しく「14」と訂正するものであり、誤記の訂正を目的とするもので、新規事項の追加には該当しない。 ・訂正事項チについて 訂正事項チについては、「ロッキング装置は、図2の実線で示された位置から破線で示された位置へ動かされる。…クランプ10により吊り下げられたフラットワーク物品と接触する。ローラ28の前進運動により、…コンベヤベルト上のフラットワーク物品の導入端部の移動を促進する空気の流れを増加させる。フラットワーク物品がコンベヤベルトと接触すると、フラットワーク物品は即座にコンベヤベルトに吸着され、コンベヤベルト上に運ばれる。」(段落【0022】)との記載から、ロッキング装置が動いてフラットワーク物品がコンベヤベルト上に運ばれることが明らかであるから、「フラットワーク物品をクランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶと」は、「フラットワーク物品をクランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶとき」の明白な誤記と認められ、上記訂正事項チは、誤記の訂正を目的とするものであり、新規事項の追加には該当しない。 ・ 訂正事項リ、ヌについて 訂正事項リ及びヌは、訂正事項ロに伴い、符号15で示されている部材を、「レール手段」と訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、上記訂正事項ロについて判断したとおり、新規事項の追加には該当しない。 また、訂正事項イないしヌが、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものであるということもできない。 なお、請求人は、上記訂正に関して、(イ)「互いに隣接して設けられている」ものが、訂正前の「挿入装置(14)」から、訂正後には「複数の昇降手段」に変更された、(ロ)「複数の昇降手段(15)」を「複数の昇降手段」と訂正するのは、誤記の訂正に当たらない、(ハ)「昇降」を「昇降作動」と訂正することにより、「挿入装置そのものが昇降する」から「昇降手段が挿入装置を昇降するように作動する」と、その意味内容が変わった、及び、(ニ)「上向きに動かす」主体が、「一対のクランプ(17、18)」から「スライド(16)」に変わった、そのため、上記訂正は、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張しているが、(イ)については、旧請求項2に「前記挿入装置(14)が、…昇降手段(15)からなり、」と記載されていることからして、「互いに隣接して設けられている」ものが変更されたとはいえないし、(ロ)ないし(ニ)については、上述したとおりであるから(訂正事項ロについての判断を参照)、上記被請求人の主張は妥当なものではない。 また、請求人は、訂正後の発明について独立特許要件を満たさないとも主張しているが、特許法第134条第5項の規定により読み替えて準用される平成6年法改正前の特許法第126条第3項の規定により独立特許要件の判断は要しないから、かかる主張は失当である。 (3) むすび したがって、上記訂正は、平成6年法改正前の特許法第134条第2項ただし書及び同条第5項の規定によって準用する同法第126条第2及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3. 本件発明 上記訂正が認められたことにより、本件請求項1~8に係る発明(以下、「本件発明1~8」という。)は、再訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1~8に記載されたとおりの次のものと認められる。 【本件発明1】 「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、 該装置はコンベヤベルトからなり、 該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、 前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され、 前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、 該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、 フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、 洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、 前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、 前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、 フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。」 【本件発明2】 「前記フラットワーク物品を延伸するために、前記2つのキャリッジ(8、9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に、当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって共に移動されることを特徴とする請求項1記載の装置。」 【本件発明3】 「前記昇降手段の数が3つであり、前記2つのキャリッジ(8、9)を有するレール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の装置。」 【本件発明4】 「前記コンベヤベルト(5)の正面側端部がレール手段(7)の後側かつ直下に設けられ、前記正面側端部が、始動位置から延伸された前記フラットワーク物品(22)の近傍の前進位置まで移動自在であり、かつ、コンベヤベルト(5)の正面側端部が、少なくとも前進位置において、コンベヤベルト(5)の下側で解放している真空源と連結されてなることを特徴とする請求項1、2および3記載の装置。」 【本件発明5】 「前記レール手段(7)が、延伸されたフラットワーク物品(22)がキャリッジ(8、9)のクランプ(10、11)から実質的に自由に垂れ下がることができるような高さで設けられたことを特徴とする請求項1、2、3および4記載の装置。」 【本件発明6】 「前記挿入装置(14)のスライド(16)が、操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さを有していることを特徴とする請求項1、2、3、4および5記載の装置。」 【本件発明7】 「前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の底部に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5および6記載の装置。」 【本件発明8】 「引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の装置。」 4. 請求人の主張 請求人は、次の無効理由により、本件特許1~8は無効とされるべきであると主張し、以下の証拠方法を提出している。 (無効理由1) 本件発明1~8は、国内において公然実施された発明であるか又はその発明にもとづき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第1号、第2号に該当しまたは同条第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである。(証拠方法は、甲第5から第14号証、第17号証) (無効理由2) 本件発明1~8は、国内及び外国において頒布された刊行物に記載された発明にもとづき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定より特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである。(証拠方法は、甲第9、第10及び第15号証) (無効理由3) もし仮に侵害訴訟[平成12年(ワ)第11902号特許権侵害行為差止等請求事件]における被請求人の主張(参考資料1参照)のように、「何々において」までの一般的構成要件は発明の特徴的構成を実施するに必要な前提となる基本的な構成要件を備えていればよく、特定のものに限定されないとするならば、本件発明1~3、5~6は、優先権の利益を享受することができない発明に該当し、本件発明は、現実の出願日である平成5年1月28日前に頒布された刊行物に記載された発明と同一又はその発明にもとづき当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第1項第3号に該当しまたは同条第2項の規定より特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第29条の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第2号に該当し無効とされるべきものである。(証拠方法は、甲第11、第12及び第16号証) (無効理由4) 本件特許は、特許法第36条第4項及び第6項(注;平成5年法改正前の特許法第36条第4項及び第5項)に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第123条第1項第4号に該当し無効とされるべきものである。 (なお、本件発明の願書に添付した明細書又は図面の訂正(注;訂正11-39026号による訂正)は、特許法第126条第3項の規定に違反してされたものであるから、同法第123条第1項第8号に該当し無効とされるべきものである、との無効理由は撤回された(第1回口頭審理調書)。) (証拠方法) 甲第1号証;本件特許掲載公報 甲第2号証;本件特許訂正公報 甲第3号証;平成11年審判第39016号審決 甲第4号証;平成12年(ワ)11902号訴状(表紙~第8頁) 甲第5号証;平成2年12月26日付け日本クリーニング新聞 甲第6号証;社会福祉法人緑風会 重度身体障害者収容授産施設 鹿児島太 陽の里 事務長 石神久士の宣誓供述書 甲第7号証;鹿児島地方法務局所属公証人泉博作成の平成12年第101 号事実実験公正証書 甲第8号証;「BRAUN ALPHA」SERVICE MANUAL( 1990 Edition) G.A.BRAUN INCO RPORATED 甲第9号証;米国特許第4967495号明細書 甲第10号証;特開平4-9198号公報 甲第11号証;デンマーク国特許出願106/92号明細書(本件出願の優 先権主張の基礎となる特許出願) 甲第12号証;特開平6-39197号公報(甲第11号証の翻訳文) 甲第13号証;米国特許第5,425,190号明細書(1995年1月2 0日) 甲第14号証;米国特許第5,416,991号明細書(1995年5月2 3日) 甲第15号証;米国特許第3,664,046号明細書 甲第16号証;EP第0523872A1号公報(1993年1月20日) 甲第17号証;甲第7号証の実験を収録したビデオテープ 参考資料1;平成12年(ワ)第11902号、原告第7準備書面 参考資料2;特開昭46-7648号公報 (以下、平成14年7月12日付け弁駁書とともに提出) 甲第18号証;実願昭63-32599号(実開平1-138398号)の マイクロフィルム 甲第19号証;特開昭57-192600号公報 甲第20号証;特開昭51-55172号公報 甲第21号証;平成12年(ワ)第11902号判決 甲第22号証;平成12年(ワ)第11902号、被告第9準備書面 甲第23号証;特開2000-116995号公報 (以下、平成14年11月1日付け上申書とともに提出) 甲第10号証の2;大豊エンジニアリング株式会社デルタエースパンフレッ ト 甲第10号証の3;平成3年11月20日日刊工業新聞、第31頁(大豊エ ンジニアリング株式会社デルタエース発表会に関する記 事) 甲第10号証の4;平成3年11月27日日刊工業新聞、第29頁(大豊エ ンジニアリング株式会社デルタエース発表会に関する記 事) 甲第24号証;米国特許第3791057号明細書 甲第25号証;平成3年11月25日日本クリーニング新聞、第5頁(大豊 エンジニアリング株式会社デルタエース発表会に関する記事 ) (なお、参考資料3は撤回された(第1回口頭審理調書)。) 5.当審の判断 (1) 無効理由1について (i)甲第5号証には、晴海で開かれた全国展において、大和機材(株)・ブラウンン社シーツスプレッダー「モデルSSF」が展示されたことが記載されている(「ブラウンン社」は「ブラウン」社の誤記と認められる。)。また、甲第6号証によれば、ブラウン・アルファ(ブラウン社製の洗濯処理装置、ブラウン・アルファ(BRAUN-Alpha)、型番4SSF)は、平成2年11月に東京都中央区晴海の国際見本市会場で開催された第28回全日本クリーニング研究大会・機材資材展示会において展示されていたこと、同展示会を見学したことがきっかけとなって、社会福祉法人緑風会がブラウン・アルファを大和機材株式会社(当時)から購入し、平成2年12月15日に重度身体障害者授産施設「鹿児島太陽の里」に設置し、その翌日からシーツ等リネン品の洗濯後の処理のために使用を継続していること、同施設には、年間1000人を超す一般の見学者があること、平成2年12月15日の設置以降、その構成や動作は変わっていないこと、がそれぞれ認められる。これによれば、ブラウン・アルファは、本件特許権の優先日の前に公然使用されていたというべきである。 そして、甲第7、第8及び第17号証によると、ブラウン・アルファは、次のような構造を有し、作動をなすものと認められる。 (ア)ブラウン・アルファの昇降手段のレールは、半円形(正確には4分の1円形)の形状をしており、合計4本設置されている。それぞれのレールには、1対のクランプが設けられている。各レールは、前端が下方に、下から約130cmの位置まで下がっており、一対のクランプにシーツの両角を把持させてスイッチを押すと、半円形レールの前端が、レール後部にあるレバーの作用により、水平面になるまで上昇してシーツを持ち上げる。その後、シーツを把持したままクランプがレールの後端(装置全体の中央部)に移動し、そこで、シーツを延伸装置であるスプレッドクランプに引き渡す。 (イ)コンベアベルトの正面上部長手方向(進行方向)を横切る方向に設けられたレールに沿って走行する引き外し自在のスプレッドクランプを有する一対のキャリッジ(送り装置)が設けられ、この一対のキャリッジは、駆動手段により駆動される。 (ウ)各スプレッドクランプは、中央部から移動して互いに対称的な位置に離れ、シーツを延伸する。次に、同スプレッドクランプがコンベヤベルトの上面へ(装置全体からすれば後方へ)移動し、コンベヤベルトの端から約15榕後方の位置でシーツを開放し、シーツをコンベヤベルトに移載する。そして、コンベヤベルトがシーツを、後方に連続した搬送部によって、アイロンロールへ搬送する。 これらの構成、作動からすると、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が、本件特許権の優先日の前に公然実施されていたと認められる。 「アイロンロール(アイロンローラなどの洗濯処理ユニット)へシーツ(フラットワーク物品)を搬送(供給)するための装置であって、 該装置はコンベヤベルトからなり、 該コンベヤベルトの前方(正面側端部)において、シーツ(フラットワーク物品)が、前記コンベヤベルトの正面上部長手方向(長手方向)を横切って走行しかつ引き外し自在のスプレッドクランプ(クランプ)が設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、 前記シーツ(フラットワーク物品)の両角(隅部)が前記コンベヤベルトの反対側のレール(レール手段)の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの昇降手段(挿入装置)によって該スプレッドクランプ(クランプ)に引き渡され(挿入され)、 前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの前方(正面側端部)の中央部(中央)と互いに対称的な位置(好ましくは反対側の地点から延長した位置)に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、 該延長した位置でスプレッドクランプ(クランプ)がコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記シーツ(フラットワーク物品)の上端部が延伸され、 シーツ(フラットワーク物品)の上端部をコンベヤベルトの上面(後方)(正面側端部)に移動するための手段が設けられた アイロンロール(洗濯処理ユニット)へシーツ(フラットワーク物品)を供給するための装置において、 前記操作者によって制御される引き渡し装置(挿入装置(14))が操作位置から昇降作動する昇降手段からなり、 シーツ(フラットワーク物品)が昇降手段のレール(レール手段(15))に沿って移動自在の1対のクランプ(スライド(16)の一対のクランプ(17、18))に挿入され、操作位置より実質的に高い位置に設けられた一対のキャリッジ(一対のキャリッジ(8、9))に対してシーツ(フラットワーク物品)を上向きに動かすことを特徴とする装置。」 (ii)本件発明1と引用発明1とを対比すると、少なくとも、後者は、前者における「一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれて」いるという構成要件を備えていない点で、両者は相違している。 (iii)この点に関して、請求人は、ブラウン・アルファにおいても、昇降手段のいずれかと対向する位置は、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれていると主張しているが、甲第7号証に、「左右一対のクランプは、…半円形のレールに沿って弧を描くように中央部に移動し」とあり、また、甲第8号証に、「クランプがシーツを引き上げ、機械の中央に持って行き、次にスプレッドクランプ(シーツ広げ挟み)がシーツを挟みます。」とあることから、ブラウン・アルファにおいては、4個設けられたフィードステーションの左右一対のクランプは、いずれも、機械の中央で左右一対のスプレッドクランプと対向するものと認められ、そうすると、左右一対のスプレッドクランプは、コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれることはないといえるから、上記請求人の主張は妥当性を欠いたものである。 (iv)また、請求人は、甲第18、第19、第20及び第24号証により、上記の点は、設計事項であると主張しているが、甲第18号証には、「一対のシーツ保持具を、待機位置から所定位置に移動させ、その所定位置からそれぞれ逆方向に移動させてシーツを拡げ、その後待機位置に移動させる」ことが記載されているものの(実用新案登録請求の範囲)、甲第18号証に記載のものは、「一方の組の一対の保持具2L,3Lがガイドレール1の左端側の待機位置に、…一対の保持具2L,3Lと…とにシーツSをそれぞれチャックさせる。」と記載されているように(明細書第15頁第6~11行)、待機位置で操作者によりシーツをチャックさせるようにしたものと認められるから、甲第18号証は、上記の点における一対のキャリッジを開示するにとどまり、一対のキャリッジが昇降手段と対向する位置が、昇降手段の少なくともいくつかについてコンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれるようにすること、すなわち、上記の点を開示するものではない。 第19号証には、「洗濯物が、…供給コンベヤの手前でこの供給コンベヤに対して直交しかつ高さをずらして配置された搬送装置の2つのクリップに掛けられて、前記供給コンベヤの作業幅の側方に位置する、前記搬送装置の操作ステーションから供給コンベヤの手前中央に搬送されるようになっており、」と記載されているが(特許請求の範囲)、甲第19号証に記載のものは、「操作ステーション「A」に位置する、…操作員は、マングルに供給しようとする洗濯物10の前縁部の角縁を2つのクリップ23,24にはさみ込む…。」と記載されているように(第5頁右上欄第3~7行)、操作ステーションで操作員により洗濯物をクリップに挟み込むようにしたものと認められるから、甲第18号証と同様、上記の点を開示するものではない。 甲第20号証には、「第1の運動においてはキャリッジは装荷場所から軌道の中心まで共に移動し、ついで第2の運動でキャリッジは反対方向に離れるように移動し、把持部材に支持された洗濯物は広げられる。」と記載されているが(第3頁左下欄第3~7行)、甲第20号証に記載のものは、「角係止装置はキャリッジ12からなり、該キャリッジ12には一対のスプリング式の把持部材13が装着されている。把持部材は洗濯物の縁部を挿入すると作動される。」(第3頁右上欄第14~17行)、及び、「各装荷場所にはリレーおよびスイッチ系統を作動する接点が設けられている。…オペレータは単に洗濯物の2つの縁部を各係止装置に装入すればよい。前記縁部が把持部材の間の爪にふれると、スプリングは解放され、洗濯物が保持される。」(第5頁左上欄第1~7行)と記載されているように、装荷場所でオペレータにより洗濯物を把持させるようにしたものと認められるから、甲第18号証と同様、上記の点を開示するものではない。 甲第24号証には、「可撓材料製シートのエッジを引っ張る装置において、各々シートの隅部を把持可能なクリップと、(前記クリップが装置の中心線の片側における第1の装着部位で並置される)第1の位置、(前記クリップが装置の中心線の他側における第2の装着部位で並置される)第2の位置、及び(第1及び第2位置での各連続移動中、前記クリップが装置の中心線に関してほぼ対称の位置に分離する)第3の位置の間で前記クリップが移動するように、前記クリップを取り付け制御する手段とを備えた装置」が記載されていると認められるが、この装置は、「装置が最初に図2中の実線で示す状態、すなわちクリップ16及び17が装着部位Aで並置している状態にあるものとする。その部位においてオペレータは、シートの両隅部をクリップの下方に置き、クリップを押し下げる。…ビームが図2の点線位置に達したときクリップはビームの中心に到達し、クリップが装着位置Bで並置される。その部位にいてオペレータがシートをクリップに装着すると、…次いでビームの中心が再度装着部位Aで静止すると、クリップは並置した状態に戻る。」と記載されているように(第3欄第31~58行、甲第24号証訳文第4頁第22行~第5頁第10行)、装着部位でオペレータによりシートを装着させるようにしたものと認められるから、甲第18号証と同様、上記の点を開示するものではない。 さらに、甲第9号証には、複数のクランプ92を設けることが記載されていると認められるが(Fig15等)、同号証に、「1対以上のラム作動式シートクランプ92が…移動可能に案内路91上に装着され、クランプ移動手段135によって移動自在に案内路と係合すると共に、密閉体の前壁に沿って下方に延びている。…各クランプは、相互に隣接して位置し作業員によってシートの両コーナを受け入れる受取位置から移動可能で、離間する方向に自動的に移動しシートを密閉体の前面に沿い閉鎖部材21に隣接して広げることができる。拡開位置に到達すると、各クランブは自動的に開き、前述したように閉鎖部材の孔を介した吸引作用によりシートを閉鎖部材に向かって引き寄せ可能とする。」(第8欄第49~65行、訳文第12頁第26行~第13頁第6行)と記載されているように、上記クランプ92は、受取位置で作業員によってシートを受け入れるようにしたものと認められるから、上記甲第18号証と同様、上記の点を開示するものではない。 すなわち、甲第18、第19、第20、第24及び第9号証に記載のものは、いずれも、一対のキャリッジが、コンベヤベルトの正面側端部の中央とずれた位置において、操作者と対向するものであり、機械的な手段である昇降手段と対向するものではないから、本件発明1における上記の点を開示するものではなく、また、かかる昇降手段を有しない装置を前提とするものである以上、本件発明1における上記の点を示唆しているとはいえない。 (v)さらに、請求人は、甲第10号証の2~4および甲第25証によれば、甲第10号証に記載された装置の実施品は、複数の昇降装置を有しており、中央からずらしてシーツを受け渡すものであると主張している。 甲第10号証には、次のように記載されている。 「この第2実施例の方形状布類縁出し装置には、架台1の前面部に、左右2つの保持手段82,83を取付けた昇降台81が設けられている。この昇降台81は、モータ84の正・逆回転により架台1の縦フレームに沿って昇降せしめ得るようになっている。又、2つの保持手段82、83は、移動体2に設けた保持手段(22,23)と同様造のエアチャック式のものが採用されている。そして、昇降台81の下動位置においてその2つの保持手段82、83に布類角部C1とそれに隣接する縁部Yaをそれぞれ保持させた後、該昇降台81をモータ84により上昇させて該各保持手段82,83で保持している布類角部C1及び綾部Yaを移動体2側の2つの保持手段22,23で掴み替え得るようにしている。」(第15頁左上欄第8行~右上欄第2行) また、同号証第6図には、左右2つの保持手段22(82の誤記と認められる。),83を取付けた昇降台81、モータ84等が示されている。 甲第10号証の2~4および甲第25証からは、これらに記載の装置が、甲第10号証に記載された装置の実施品であるかどうかは不明であり、また、用いられる昇降装置の詳細も明らかでないが、上記甲第10号証の記載及び図示内容を参酌すると、請求人の主張は、昇降台81を架台1の前面部だけでなく後面部にも設け、保持手段(22,23)を備えた一つの移動体2が、双方の昇降台81から布類を掴み替え得るようにした装置が、本願出願前実施されており、この双方の昇降台1が、本件発明1における「複数の昇降手段」に、保持手段(22,23)を備えた一つの移動体2が、「一対のキャリッジ」該当するというものであると解される。 しかしながら、上記甲第10号証に、「移動体2は、左右方向に人の肩幅程度の長さ(40~60cm程度の長さ)(を)もつ平板20の左右両側部にそれぞれ下向きに折曲した垂下板21,21を設けて形成されている。そして、この各垂下板21,21の前端部にそれぞれ1つづつ布類保持用の保持手段(22,23)が取り付けられている。」(第11頁右下欄第19行~第12頁左上欄第4行)、「第6図に示す第2実施例の方形状布類縁出し装置について説明すると、…載置台4における前側台板41の後側に、複数個(合計5個)の小幅コンベヤ5A~5Eを架台前後方向(移動体進退方向)に順次近接並置してなる集合コンベヤ50を設置している。各小幅コンベヤ5A~5Eはそれぞれ移動体進退方向とは水平直交方向に走行し得る如く配設され、」(第14頁右上欄第15行~左下欄第2行)と記載されているように、同号証に記載のものにおいては、移動体2に設けた設けた保持手段(22,23)が、離間可能とされておらず、また、昇降台81は、コンベヤの正面側ではなく、側面側に位置するものであるから、同号証に記載のものが、2つの昇降手段と、1対のキャリッジを有するといっても、同号証に記載のものは、本件発明1とは、供給手段についての設計思想を大きく異にするものであり、同号証が、上記した点を開示ないしは示唆しているとは到底いうことができない。 (vi)なお、甲第11号証は、本件特許発明についての出願(以下、「本件出願」という。)の優先権主張の基礎となる特許出願の明細書であって、本件出願の日(平成5年1月28日)前に頒布されたものであるとは認められないし、甲第12~14号証も、本件出願の日後に頒布されたものであるから、これらの証拠に基づいて、本件特許発明の進歩性を否定することはできない。 (vii)そして、本件発明1においては、上記の点により、例えば、甲第18号証に記載のもののように、操作者の操作位置が2箇所に限定されるということはないし、ブラウン・アルファとか甲第15号証に記載のもののように、一対のクランプを備えた複数の挿入手段が、全て、コンベヤベルトの正面側端部の中央で待機する一対のキャリッジに向かって移動することはないため、複数の挿入手段の衝突が発生しないばかりか(上記再訂正明細書段落【0007】参照)、挿入装置本体を固定でき、挿入装置の構造が簡単になるという顕著な効果を奏するものと認められる。 (viii)したがって、本件発明1は、本件出願前国内において公然実施された発明であるとも、この発明及び本件出願前頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (ix)請求項2~7は、請求項1を引用しており、本件発明2~7は、上述したと同じ理由により、本件出願前国内において公然実施された発明であるとも、この発明及び本件出願前頒布された刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (2) 無効理由2について (i)甲第9号証には次のように記載されている。 (イ)「この発明は、洗濯品を洗濯設備に搬送し、アイロン掛け機、折りたたみ機などによる後続の処理を行うための搬送機構に関する。」(第1欄第10~13行、訳文第2頁第5~6行) (イ)「コンベヤは複数の可撓性で穿孔が形成された入口ベルト15を備えており、これらベルトは両側壁11,12内の軸受けに装着された複数の相互に離間して水平に延びたローラの周囲を回って延びている。第1のローラ24は密閉体16のほぼ中央に配設され、ローラ24の周囲をベルトが矢印の方向に通過し、コンベヤの前方送入端を形成している。その後ベルトは、少し上方に傾斜しながら密閉体16の後方へ向かってローラ25を通過し、そこでベルトは密閉体から外へ現れ、そこからは少し下方に傾斜しながらローラ26を通過し、両側壁11,12から片持ち状に延びて装着された外端ローラ27(図1参照)へと至る。」(第4欄第22~34行、訳文第6頁第14~22行) (ロ)「搬送機構が動作している間各ファンは連続運転され、密閉体16内に一定の低圧領域が形成される。閉鎖部材21の後方に形成される低圧領域は、閉鎖部材の孔部分で吸引作用を引き起こすため、搬送機構によって搬送すべきあるものまたはその他の洗濯品の前方縁が閉鎖部材21上に置かれると、その洗濯品は閉鎖部材に付着する。」(第5欄第59~66行、訳文第8頁第23~27行) (ハ)「閉鎖部材が上方に移動してコンベヤ15の前端上方に至ると、コンベヤの前端を通過する空気流がシートの先端部を閉鎖部材21からコンベヤ上へ引き込み、その後はコンベヤがシート全体を入口を介して密閉体内へ引き込み始める。」(第6欄第24~30行、訳文第9頁第13~16行) (ニ)「1対以上のラム作動式シートクランプ92が…移動可能に案内路91上に装着され、クランプ移動手段135によって移動自在に案内路と係合すると共に、密閉体の前壁に沿って下方に延びている。…各クランプは、相互に隣接して位置し作業員によってシートの両コーナを受け入れる受取位置から移動可能で、離間する方向に自動的に移動しシートを密閉体の前面に沿い閉鎖部材21に隣接して広げることができる。拡開位置に到達すると、各クランブは自動的に開き、前述したように閉鎖部材の孔を介した吸引作用によりシートを閉鎖部材に向かって引き寄せ可能とする。」(第8欄第49~65行、訳文第12頁第26行~第13頁第6行) これらの記載(イ)ないし(ニ)及び図面の記載を総合すると、甲第9号証には、次の発明(以下、「甲第9号証発明」という。)が記載されていると認められる。 「アイロン掛け機等(本件発明1における「アイロンローラなどの洗濯処理ユニット」に相当する。以下、同様。)へ洗濯品(フラットワーク物品)を搬送(供給)するための装置であって、 該装置はコンベヤ(コンベヤベルト)からなり、 該コンベヤ(コンベヤベルト)の正面側端部において、洗濯品(フラットワーク物品)が、前記コンベヤ(コンベヤベルト)の長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のシートクランプ92(クランプが設けられた一対のキャリッジ)を有する案内路91(レール)からなる広げ(延伸)装置から移動することができ、 前記洗濯品(フラットワーク物品)の両コーナ(隅部)が操作者によって該シートクランプ92(クランプ)に挿入され、 前記一対のシートクランプ92(キャリッジ)には、当該シートクランプ92(キャリッジ)を前記コンベヤ(コンベヤベルト)の正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適したクランプ移動手段135(駆動手段)が設けられ、 該延長した位置でシートクランプ92(クランプ)がコンベヤ(コンベヤベルト)の中央に関して対称に位置づけられ、前記洗濯品(フラットワーク物品)の上端部が広げられ(延伸され)、 洗濯品(フラットワーク物品)の上端部をコンベヤ(コンベヤベルト)の正面側端部に移動するための閉鎖部材21等(手段)が設けられた アイロン掛け機等(洗濯処理ユニット)へ洗濯品(フラットワーク物品)を供給するための装置」 (ii)また、甲第15号証には、洗濯処理ユニットへ洗濯物をを供給するための装置に関して、次のように記載されている。 「図示された装置10には、洗濯物を床に広げた状態で保持するための、低い位置にある枠にキャンバスを張ったトレイ16を含む解放された前面作業領域14を持つフレーム12を具備するのが見える。装置の前面作業領域には、3つの挿入移動装置20、22および24を具備しており、各装置は洗濯物A(図2)の隣接角部を保持し、供給し展張するためのクリップ26を備えている。各挿入・移動装置は、ステーション(図1の装置22および24および破線で示された装置20の操作のために示されている)にいる操作者に便利な挿入ステーンョンおよび取り除くまたは解放位置(図1および3の装置20で示されている)の間を移動するように支持されている。 この構造は、この移動領域で、洗濯物を広げ、広げた洗濯物を移動コンベヤに供給するために、移動装置から洗濯物を取り除くのに便利である。特に、クランブ30は、洗濯物を掴んだり解放する領域で、移動装置のクリップ26から放したりする構造になっている。そして、クランプ30は、解放領域に、次に後方へ、そしてコンベア38を越えて後方へクランプを移動するために、フレームトラック36に拾って動くローラ34の回転を支持する横断ビーム32に搭載されて移動する。コンベア38は上部の方向が装置の前方の作業領域14から離れるように回転する。クランプ30が洗濯物をつかむやいなや、ビームは洗濯物がライン39に沿っておおよそ垂れた状態になるまで(図3)後方に動かされ、そこでクランプはビーム32に沿って掴んでいる洗濯物の縁部がぴんと張った状態に引っ張られるまで引き離される。再びビーム駆動装置40(図3に概略が示されている)はビームをさらに後方に動かし、洗濯物の縁部41掴んでいる前部をコンベアを越えて運び、その上で前縁部が解放され、コンベアの上に落下させる。 駆動ロール42はコンベアの前面に置かれており、洗濯物の垂れ下がった部分を持ち上げ、それをコンベアの上に運ぶのに適した摩擦性の表面を持っている。 分離機構46はパワーロール42の下に位置しており、洗濯物の垂れ下がった部分を洗濯物を広げてコンベア上に供給するために全開に広げるのに役立つ。ロール42の前進速度は好ましくはコンベア38の前進速度より遅く、コンベア38もの方向のクランプ30およびビームの前進速度はロールの前進速度よりは速いが、コンベアの前進速度よりは遅い。これは、クランプが洗濯物の前縁部を解放するとき、それらは洗濯物から離れるように動くようにすることは好ましいことであり、さらにコンベアに正の力がかかったロールによって供給されるコンベア上の洗濯物の前縁部は洗濯物の垂れ下がった部分から斜めに離れて行く。 コンベア38の排出側端部は好ましくはもう一つのコンベアと、あるいはアイロナーと、あるいは広げられた洗濯物が最後に供給される第二の装置のようなものと関連して置かれる。すぐ後の取り出しコンベアあるいは同様のものの特定の構造は本発明にとって重要ではないので、示すことはしない。 本発明の改良点の一つを挙げると、3つの装置20、22および24が、離れた挿入ステーションと共通の解放領域の間を動くように取り付けられていることである。これに関して、中央装置22は、ステーションの挿入位置と解放位置の間、装置の前後にベアリング62の中でスライドする一対のパネルロッド60によって支持されている。フレームに65で、装置に66で結合するパワーシリンダ-64は挿入位置と解放位置の間で装置を自動的に動かすのに利用され、ダンパ-68は、どちらかの位置に接近したとき、特にそのストロークの端部近くで装置の動きをスムーズにするのに用いられる。」(第2欄第4~72行) この記載及び図面の記載を総合すると、甲第15号証には、次の発明(以下、「甲第15号証発明」という。)が記載されているものと認められる。 「アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへ洗濯物(本件発明1における「フラットワーク物品」に相当する。以下、同様。)を供給するための装置であって、 該装置はコンベヤ38(コンベヤベルト)からなり、 該コンベヤ38(コンベヤベルト)の正面側端部において、洗濯物(フラットワーク物品)が、前記コンベヤ(コンベヤベルト)の長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプ30(クランプが設けられた一対のキャリッジ)を有する横断ビーム32(レール)からなる展延(延伸)装置から移動することができ、 前記洗濯物(フラットワーク物品)の隣接角部(隅部)が前記コンベヤ38(コンベヤベルト)の反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされる3つの挿入移動装置20、22および24によって該クランプに挿入され、 前記クランプ30(一対のキャリッジ)には、当該クランプ30(キャリッジ)を前記コンベヤ38(コンベヤベルト)の正面側端部の中央と掴んでいる洗濯物の縁部がぴんと張った状態に引っ張られる(好ましくは反対側の地点から延長した)位置に移動させて引き離される(離間せしめる)のに適した駆動手段が設けられ、 該引っ張られた(延長した)位置でクランプ30(クランプ)がコンベヤ38(コンベヤベルト)の中央に関して対称に位置づけられ、前記洗濯物(フラットワーク物品)の上端部が延伸され、 洗濯物(フラットワーク物品)の上端部をコンベヤ38(コンベヤベルト)の正面側端部に移動するための手段が設けられた 洗濯処理ユニットへ洗濯物(フラットワーク物品)を供給するための装置」 (iii)本件発明1と甲第9号証発明とを対比すると、甲第9号証発明は、洗濯品(フラットワーク物品)の両コーナ(隅部)を、操作者が直接シートクランプ92(クランプ)に挿入するようにしたものであり、操作者によって動かされる挿入装置、すなわち、本件発明1における以下の点からなる挿入装置を備えていない。 「前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、 前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、 フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かす」点 (iv)また、本件発明1と甲第15号証発明とを対比すると、甲第15号証発明は、「コンベヤ38(コンベヤベルト)の正面側端部において、洗濯物(フラットワーク物品)が、前記コンベヤ38(コンベヤベルト)の長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプ30(クランプが設けられた一対のキャリッジ)を有する横断ビーム32(レール)からなる展張(延伸)装置から移動することができるように」されたものであると認められるが、「3つの挿入移動装置20、22および24」は、「ステーション(図1の装置22および24および破線で示された装置20の操作のために示されている)にいる操作者に便利な挿入ステーンョンおよび取り除くまたは解放位置(図1および3の装置20で示されている)の間を移動するように支持されている」ものであり、各挿入移動装置20、22および24が、コンベヤ38(コンベヤベルト)の正面側端部の中央部に位置するとき、洗濯物(フラットワーク物品)を、クランプ30(クランプが設けられた一対のキャリッジ)が掴むようにしたものであるから、少なくとも、本件発明1における「一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれて」いる点を備えていない。 (v)また、甲第10号証が、「一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれて」いる点を備えていないことは、上述したとおりである(上記5.(1)参照)。 (vi)なお、参考資料2に記載のものも、ブラウン・アルファ及び甲第15号証に記載のものと同様、一対のクランプを備えた複数の挿入手段が、全て、コンベヤベルトの正面側端部の中央で待機する一対のキャリッジに向かって移動するようにしたものであり、本件発明1における上記の点を備えていない。 (vii)そして、本件発明1における上記の点が、当業者により容易に想到し得たものではないことは、上述のとおりである((1)無効理由1について参照)。したがって、本件発明1は、本件出願前頒布された上記の刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることはできない。 (viii)請求項2~7は、請求項1を引用しており、本件発明2~7は、上述したと同じ理由により、本件出願前国内において公然実施された発明であるとも、この発明及び本件出願前頒布された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとすることもできない。 (3) 無効理由3について (i)) 請求人の主張は、詰まるところ、本件特許出願が優先権の主張の基礎となる出願の明細書又は図面(以下、「第1国出願明細書」という。)に含まれなかった構成部分を含んでおり、この構成部分については、優先権は主張は認められないというものと解される。 すなわち、上記再訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に、「何々において」と記載されている装置(以下、「供給装置」という。)は、優先権の主張の基礎となる出願に開示されているもの(上記再訂正明細書及び図面(第1及び第2図)に記載された実施例)以外のものをも含んだ広義の概念と解釈すべきというものである。 (ii)請求人が、優先権の主張の基礎となる出願の明細書(甲第11号証)の翻訳文として提出した甲第12号証には、次のように記載されている。 「本発明は、コンベヤベルトからなり、該コンベヤベルトの正面側端部においてフラットワーク物品…が横方向に走行し、引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から前記コンベヤベルトの長手方向に移動することができ、前記フラットワーク物品が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ、操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入されるアイロンローラ(…)など、洗濯加工処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、前記一対のキャリッジには、たがいに離間したキャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の点から延長した位置に移動するのに適した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置に関する。」(段落【0001】)、「【従来の技術】このような装置は、…知られている。この装置においてフラットワーク物品は、操作者によって操作される挿入装置から1対のキャリッジ内の引き外し自在のクランプへ移動され、そののち2つのキャリッジがフラットワーク物品の導入端部を延ばすために別々に動かされる。レール手段はコンベヤベルトの方向に動かすことができ、この変位がコンベヤベルトの正面側端部を越えてフラットワーク物品の導入端部を取り出すために用いられる。」(段落【0002】) (iii)これらの記載からすると、一対のキャリッジを備えた供給装置に関しては、第1国出願の時点において、すでに公知のものが存在し、本件明細書は、これを前提にして記載されていると認められるところ、本件発明1にあって、「において」以下に記載されている挿入装置は、上記一対のキャリッジを備えた公知の供給装置にも適用できることが明らかであるから、上記第1国出願明細書には、上記公知の供給装置をも含む発明が記載されているということができる。すなわち、上記第1国明細書には、供給装置として、上記再訂正明細書及び図面(第1及び第2図)に記載された実施例(この実施例が上記第1国出願明細書に記載されていることは明らかである。)だけが示されているということはできない。(すなわち、コンベヤベルトの「正面側端部」が、フラットワーク物品を受け取りに行くもののほか、レール手段によって、フラットワーク物品をコンベヤベルトの「正面側端部」に運ぶものが示されている。) (iv)したがって、上記再訂正明細書に記載された「供給装置」は、優先権の主張の基礎となる出願に開示されているもの以外のものをも含んだ広義のものと解すべきであるとの請求人の主張は妥当なものではない。 (なお、請求人は、第1国出願を同じくしている他の出願(甲第12号証)の特許請求の範囲の請求項に記載されている発明が、第1国出願明細書に記載された発明であること、また、上記第1国出願を同じくしている米国出願(甲第13及び第14号証)の特許発明は、「おいて」形式では記載されていないことを主張するが、仮に、そうであるとしても、これらのことにより、上記「供給装置」が、第1国出願明細書に記載されていないということにはならない。) (v)そうであれば、本件発明1~3、5~6についての特許出願に優先権主張が認められない構成部分が含まれるとはいえず、優先権の主張は認められるから、本件発明についての特許出願の優先日より後に頒布された甲第11、第12及び第16号証に基いて本件特許発明の新規性、進歩性を否定することはできない。 なお、甲第23号証も、本件発明についての特許出願の優先日より後に頒布されたものである。 (4) 無効理由4について 本件出願は、特許法第36条第4項及び第6項(注;平成5年法改正前の特許法第36条第4項及び第5項)に規定する要件を満たしていないとして、請求人が挙げる理由は、概略、以下のものである。 (i)(a)「レール手段」に符号(7)と(15)が存在する、また、(b)「昇降手段」と「レール手段」に同一の符号(15)が付与されている。 (ii)旧請求項8には、「スライド(16)がレール手段の底部に設けられた」と記載されているが、旧請求項1及び詳細な説明中の「スライド(16)はレール手段(15)に沿って移動自在」という記載と一致していない。 (iii)旧請求項9には「引き外しボタン(19)が…レール手段(15)の頂部側に設けられてなる」と記載されているが、この記載では、この引き外しボタン(19)がいかなるもので、どこに設置されるのかが不明である。 (iv)旧請求項1の「フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面端部に移動するための手段」に関して、ベルトコンベヤが受け取りに行くものは開示されているものの、「クランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶ」ための手段が開示されていない。 そこで、再訂正明細書をみると、(i)(a)については、異なる二つの部材に対して「レール手段」なる同一の用語が使用されているものの、「レール手段(7)」と「レール手段(15)」とは、設ける場所もその機能も異なるものであることは、特許請求の範囲の記載及び発明の詳細な説明の記載から明らかであり、両者を混同することはないから、「レール手段」に符号(7)と(15)が存在するからといって、発明が不明りょうであるということはできない。また、(i)(b)については、上記訂正請求による訂正により、そのような事実がなくなった。 (ii)については、再訂正明細書の「当該挿入装置は、それぞれ斜め上に延びると共にレール手段15を持つ昇降手段からなり、該昇降手段の下側には、下向きの一対のクランプ17、18を備えたスライド(slide) 16が設けられている。」(段落【0017】)なる記載及び図2の記載を参酌すると、「レール手段の底部」は、「レール手段の下側」の意味であることが明らかであり、再訂正明細書の特許請求の範囲第1項の「昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)」なる記載と矛盾するものではなく、不明りょうであるとはいえない。 (iii)については、上記訂正請求による訂正によって、「引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びるレール手段(15)の頂部側に設けられてなる」(特許請求の範囲第8項)とされ、その機能及び配設位置が明確となっている。 (iv)については、本件発明が、特定の供給装置を備えることを前提としたものでないことは、上述したとおりであるから(上記5.(3)無効理由3について(iii)段落参照)、「クランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶ」ための手段が開示されることが必要不可欠であるとはいえないから、かかる手段が開示されていないからといって、発明が不明りょうであるとはいえない。 なお、請求人は、再訂正明細書の特許請求の範囲第3項には、3つの昇降手段が、「レール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられた」とあり、この記載からでは、昇降手段とレール手段87)が平行に位置することとなり、フラットワーク物品を昇降させることは不可能であると主張しているが、この記載は、3つの昇降手段の各々が平行かつ対称に配置されていると解するのが妥当であるから、発明が不明りょうであるとはいえない。 したがって、本件特許出願が、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていないとすることはできない。 (5)よって、請求人の主張する無効理由は、いずれも理由がなく採用できないものである。 6. むすび 以上のとおりであるから、請求人の主張及び証拠方法によっては、本件発明1ないし8に係る特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、該装置はコンベヤベルトからなり、該コンベヤベルトの正面側端部において、フラットワーク物品が、前記コンベヤベルトの長手方向を横切って走行しかつ引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から移動することができ、前記フラットワーク物品の隅部が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入され、前記一対のキャリッジには、当該キャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の地点から延長した位置に移動させて離間せしめるのに適した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた、洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置において、 前記操作者によって制御される挿入装置(14)が操作位置から昇降作動する昇降手段であって、互いに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジ(8、9)の方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、 前記一対のキャリッジが、昇降手段のいずれかと対向する位置においてフラットワーク物品と接触するのに適しており、当該位置が、前記昇降手段の少なくともいくつかについて前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と対向する位置からずれており、 フラットワーク物品が前記昇降手段のレール手段(15)に沿って昇降移動自在のスライド(16)の一対のクランプ(17、18)に挿入され、前記スライド(16)が、操作位置より実質的に高い位置に設けられた前記一対のキャリッジ(8、9)に対してフラットワーク物品を上向きに動かすことを特徴とする装置。 【請求項2】 前記フラットワーク物品を延伸するために、前記2つのキャリッジ(8、9)が対をなした状態で互いに離れるように移動される前に、当該キャリッジが前記レール手段(7)の中央に向かって共に移動されることを特徴とする請求項1記載の装置。 【請求項3】 前記昇降手段の数が3つであり、前記2つのキャリッジ(8、9)を有するレール手段(7)に関して実質的に平行かつ対称に設けられたことを特徴とする請求項1または2記載の装置。 【請求項4】 前記コンベヤベルト(5)の正面側端部がレール手段(7)の後側かつ直下に設けられ、前記正面側端部が、始動位置から延伸された前記フラットワーク物品(22)の近傍の前進位置まで移動自在であり、かつ、コンベヤベルト(5)の正面側端部が、少なくとも前進位置において、コンベヤベルト(5)の下側で解放している真空源と連結されてなることを特徴とする請求項1、2および3記載の装置。 【請求項5】 前記レール手段(7)が、延伸されたフラットワーク物品(22)がキャリッジ(8、9)のクランプ(10、11)から実質的に自由に垂れ下がることができるような高さで設けられたことを特徴とする請求項1、2、3および4記載の装置。 【請求項6】 前記挿入装置(14)のスライド(16)が、操作者の高さと人間工学的な見地に基づく操作性とに応じ、前記昇降手段の下端側の係止部の調節によって調節されうる高さを有していることを特徴とする請求項1、2、3、4および5記載の装置。 【請求項7】 前記一対のクランプ(17、18)を有するスライド(16)が斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の底部に設けられたことを特徴とする請求項1、2、3、4、5および6記載の装置。 【請求項8】 引き外しボタン(19)が前記横方向のレール手段(7)上でキャリッジ(8、9)を移動させるために斜め上に延びる前記昇降手段のレール手段(15)の頂部側に設けられてなることを特徴とする請求項7記載の装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、コンベヤベルトからなり、該コンベヤベルトの正面側端部においてフラットワーク物品が横方向に走行し、引き外し自在のクランプが設けられた一対のキャリッジを有するレールからなる延伸装置から前記コンベヤベルト装置の長手方向に移動することができ、前記フラットワーク物品が前記コンベヤベルトの反対側のレール手段の側に設けられ、操作者によって動かされるいくつかの挿入装置によって該クランプに挿入されるアイロン用ローラなど、洗濯加工処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置であって、前記一対のキャリッジには、たがいに離間したキャリッジを前記コンベヤベルトの正面側端部の中央と好ましくは反対側の点から延長した位置に移動するのに適合した駆動手段が設けられ、該延長した位置でクランプがコンベヤベルトの中央に関して対称に位置づけられ、前記フラットワーク物品の上端部が延伸され、フラットワーク物品の上端部をコンベヤベルトの正面側端部に移動するための手段が設けられた洗濯加工処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 この種の装置では、操作者がフラットワーク物品を挿入するクランプが高い位置、たとえば操作者の顔の位置でしっかりと設けられる。この設置位置は、フラットワーク物品がコンベヤベルトと、該コンベヤベルトの正面で水平に延び、キャリッジがあるレール手段に運ばれるときフラットワーク物品がコンベヤベルトの正面側端部で延伸されるあいだに当該フラットワーク物品が皺にならないようにするため自由に垂れ下がらなければならない。フラットワーク物品が延伸されているあいだにフラットワーク物品を保持するクランプにフラットワーク物品が直接挿入されず、フラットワーク物品の挿入ののち2つのキャリッジのクランプに運ぶ挿入装置に挿入される装置が知られている。このような装置はマグロー・エジソンに譲渡されたアメリカ特許から知られている。横方向のレール手段上のキャリッジへの移動ののち、2つのキャリッジはフラットワーク物品の導入端部を拡げるためにたがいに対称的に離れて動かされる。レール手段はコンベヤベルトの方向に動くことができ、この移動はコンベヤベルトの正面側端部上でフラットワーク物品の導入端部を把持するために用いられる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 このような公知の装置における挿入装置は、水平面上で移動自在または揺動自在であるクランプパネル(clamp panel)として設計され、当該クランプには操作者がフラットワーク物品を載せる2本のフォーク状の形状を有するクランプが設けられている。装置の正面には3つの操作ステーションがあってもよい。その中央の1つが当該装置の中心線に沿ってクランプを移動し、他の2つが中央のパネル両側に載置され、中央に向かって揺動させる。フラットワーク物品は2つのキャリッジ上のクランプに運ばれるあいだ自由に垂れ下がらなければならないので、操作者はほぼ顔の位置までフラットワーク物品を持ち上げなければならないので、挿入操作が厄介になり、さらにまた操作者の腕および肩に過重の緊張を与える。 【0004】 本発明の目的は、前述のとおりフラットワーク物品をコンベヤベルトの運ばれる高さに持ち上げることなく挿入しうるように操作ステーションを設計できる可能性を有すると共に、延伸操作中フラットワーク物品が自由に垂れ下がる可能性を有する装置を提供することである。 【0005】 【課題を解決するための手段および作用】 この目的は、請求項1に記載された装置を設計することによって達成される。 【0006】 本発明の装置のこの実施例では、操作者は延伸操作が実行される高さにフラットワーク物品を持ち上げず、斜め上方向に作動する昇降手段がその動作を行なう。それゆえ、操作者の操作がかなり軽減される。同時に本装置を製作するとフラットワーク物品をどのくらいの高さに持ち上げるべきか考慮する必要がなく、横方向のレール手段が必要に応じて高く設けられ、非常に大きいフラットワーク物品でも延伸中に自由に垂れ下がることができる。操作者の肉体的作業の軽減の結果、迅速な挿入が達成され、これにより装置の機能の有効性が実際に利用される。 【0007】 本発明によれば、装置の改善された機能がたがいに隣接して設けられ、フラットワーク物品を一対のキャリッジの方へ持ち上げる複数の昇降手段からなり、当該昇降手段の少なくともいくつかに関する一対のキャリッジが該昇降手段の反対側の位置でフラットワーク物品と接触するのに適し、コンベヤベルトの中央からずれていることによって達成される。昇降手段をジョイント(すなわち、中間点)まで持ち上げないことにより、この領域でのスライド間の衝突の危険性が除去される。この領域では、スライドのクランプからキャリッジのクランプへの移動が実行される。この有利性は、キャリッジの運動のより複雑な制御によって達成されるが、制御タスクがコンピュータ技術によって実行されることが分かった。 【0008】 フラットワーク物品を延伸するキャリッジが別々に動くのに先立ち、延伸工程中フラットワーク物品の皺を伸ばす動作をレール手段の中央に向かって近接した関係で一対のキャリッジが動くのに適するようにするように考慮することが好ましい。この構成によって、コンベヤベルト上を運ばれるあいだにフラットワーク物品の垂れ下がった部分の皺を伸ばすために対をなして設けられた公知の延伸リボンを利用できる。 【0009】 好ましい実施例によれば昇降手段の数が3つであり、それぞれレール手段に関して実質的に平行、かつ対称に設けられる。 【0010】 昇降手段の位置がコンベヤベルトの取り入れ側端部にあるため、コンベヤベルトの反対側にフラットワーク物品を移動する手段を迅速に直接に設けることができない。このため本発明の好ましい実施例によって、フラットワーク物品をコンベヤベルトへ運ぶ手段が、コンベヤベルトの正面側端部がレール手段の後側かつレール手段の直下に載せられるように構成され、当該コンベヤベルトが、始動位置が延伸されたフラットワーク物品の方向へ移動自在であり、前進位置でコンベヤベルトの上部経路の下側で真空源と接続された正面側端部からなる。 【0011】 本発明によれば、横方向のレール延伸されたフラットワーク物品がキャリッジのクランプから実質的に自由に垂れ下がることができるような高さで設けられる。 【0012】 昇降手段が操作者の操作位置が人間工学的な見地から決定することができる長さを有していることが操作者にとって好ましい。斜め上に作動する昇降手段は下端側の係止部の変位によって操作者が直接個々に適合するようになしうる。そのようにして、背の高い操作者も背の低い操作者も与えられた条件のもとで快適と考えられる適切な作業位置をうることができ、昇降動作の主要部が挿入のあいだ除去される。 【0013】 好ましい実施例によれば、一対のクランプを有するスライドが昇降手段内でスクリーンを形成しているスライドを有するレール手段の底に設けられ、摺動による操作者のけがを防止する。 【0014】 操作者の手がスライドの動作中移動自在のスライドに接近することを防止するため、本発明による引き外しボタンが横方向のレール手段上のキャリッジへの移動のためのレール手段の頂部側に設けられる。 【0015】 【実施例】 本発明を添付図面を参照しながら以下に詳しく述べる。 【0016】 図1は本発明による装置の簡略化した斜視図である。図2は延伸されたフラットワーク物品のコンベヤベルトへの移動に用いられる手段を示す装置の断面図である。 【0017】 図1に示されたフラットワーク物品を洗濯処理装置、たとえばアイロン用ローラに供給するための装置は、横方向部材3、4によって接続された2枚の側部部材(gable)1、2を有する1種の入口を構成するフレームからなる。当該フレームはフラットワーク物品を移動するコンベヤベルト5のための空間となる開口を形成している。前記物品は延伸され、図1に示された装置の正面側で当該装置から前記処理装置(図示せず)へ導かれる。処理装置は延伸されたフラットワーク物品をコンベヤベルトの送出側端部6から受け取る。フラットワーク物品を延伸するために、当該装置は、延伸装置を含んでおり、当該延伸装置の主要な要素は、前記2枚の側部部材1、2のあいだに延びるレール手段7、および該レール手段の上を走行する2個のキャリッジ8および9である。各キャリッジには、それぞれ伸ばされるべきフラットワーク物品の角部を把持するのに適し、かつ前記キャリッジが離れるように別々に動くとき、当該フラットワーク物品を延伸し、後述する手段によりコンベヤベルト5まで運搬するために当該フラットワーク物品の導入端部を伸ばすのに適した引き外し自在のクランプ10、11が設けられている。最初はフラットワーク物品の前縁だけがコンベヤベルトに送られ、フラットワーク物品の残りの部分は自由に垂れ下がるが、フラットワーク物品はやがてコンベヤベルトに除々に引き上げられ、平坦でかつ延伸された状態で送出側端部6に運ばれる。垂れ下がっているフラットワーク物品に折り目があるとき、この折り目を別々のキャリッジにより同時に平滑にするために、フラットワーク物品は側端を有しており、その側端は、2対の拡張リボン12、13および12′、13′のあいだに導かれる。当該2対のリボンは、互いに向かい合ったりボン部が同一の方向に、かつ装置の中央部から離れて走行するように反対方向に駆動される。レール手段7は高い位置に設けられ、それによって、一方ではフラットワーク物品が延伸動作中に垂れ下がり、拡張リボン12、13、12′、13′の効果を高めることができ、他方では、本願発明の装置に2つのコンベアベルトを設けることが可能になる。当該2つのコンベヤベルトは、下部コンベヤベルト(図示されていない)と上部コンベヤベルト(図示されていない)から構成されている。下部コンベヤベルトは送出側端部まで達しており、かつ下方の正面側端部を有している。一方、上部コンベヤベルトは、本実施態様のコンベヤベルト5に類似しているが、コンベヤベルト5より短い。また上部コンベヤベルトの送出端は、前記下部コンベヤベルトの送出端上に設けられている。このように、本発明の装置に2つのコンベヤベルトが設けられているとき、操作者はフラットワーク物品を手で下部コンベヤベルト上に置くことができる。このことは、フラットワーク物品が比較的小さいばあいには有利であるが、フラットワーク物品の寸法が大きすぎると操作者の手が届かない。一方フラットワーク物品が比較的大きいばあい、キャリッジ8、9によって延伸されたフラットワーク物品が上部コンベヤベルトまで運ばれる。レール手段7およびクランプ10、11を高い位置に配置することにより、操作者が直接クランプ10、11にフラットワーク物品を置くことを防止し、かつ装置の能力を一人の操作者が実行できるものに制限する。装置には複数の挿入装置14が設けられる。その数は通常3個であるが、2個または4個でもよい。当該挿入装置は、それぞれ斜め上に延びると共にレール手段15を持つ昇降手段からなり、該昇降手段の下側には、下向きの一対のクランプ17、18を備えたスライド(slide)16が設けられている。当該挿入装置14を用いる操作者は、おのおののクランプ17、18に角部(corner)がくるように一対のクランプ上にフラットワーク物品を置き、そののち適切に設けられた引き外し用ボタン19を押して準備信号(ready-signal)を送信する。該準備信号はPLCによって制御された挿入動作を起こす。クランプ17、18内に置かれたフラットワーク物品がキャリッジ8、9上のクランプ10、11に運ばれるまえに、当該キャリッジは当該挿入装置に対向する位置になければならない。それゆえ、キャリッジ8、9用の駆動装置は、準備信号を発生する挿入装置14のうちの1つと対向するために第1にランダムな始動位置からキャリッジを移動することができ、第2に当該キャリッジをレール手段7の中央に向かって共に動かすことができ、第3にキャリッジをレール手段の中央から互いに対称的に離れるように動かすことができる手段を備えている。キャリッジが挿入装置に対向する位置に設けられると、スライド16は上向きに動かされ、一対のクランプ17、18がクランプ10、11を通過するときに、フラットワーク物品の角部が把持される。つぎにスライド16は、ただちに戻され、フラットワーク物品を延伸するためにキャリッジ8、9は中央に移動し対称的に離れる。 【0018】 キャリッジの駆動手段は2つの別々の駆動モータからなっていてもよく、該モータはそれぞれワイヤの環を経て2つのキャリッジのうちの1つを駆動している。モータにはキャリッジ近辺にPLCに信号を送るデコーダが設けられている。2つのモータにはさらにシャフトおよび該シャフトのあいだに引き外し自在のカップリングが設けられている。カップリングの駆動によって、2つのキャリッジは、カップリングの駆動前の当該キャリッジの位置から対称的に動くことができる。駆動手段の構成はまた、望まれるときキャリッジの迅速な加速を許し、2つのシャフトがたがいに連結されるとき1つのモータに電流を供給することにより効果を半分にする強力なモータの使用を可能にすることができる。フラットワーク物品の端部を広げると最後の可能性はもっともうまく適用でき、こうして、フラットワーク物品の端部のねじれは回避される。 【0019】 図2はキャリッジ8、9によって拡げられたフラットワーク物品を移動するための配列の概略断面図である。先のフラットワーク物品の後縁がコンベヤベルトの正面側端部を通過するまえにつぎの延伸操作が開始されなければならないという事実に鑑み、コンベヤベルトの正面側端部は、延伸操作のあいだ、クランプ10、11の経路のいくらか後側に位置づけられなければならない。これらの要件は図2の断面図に示された配列によって満足される。キャリッジ8は、レール手段7の上を走行している。クランプ10は、キャリッジ8の上に設けられており、油圧シリンダ20によって動かされる。レール手段およびキャリッジの正面にレール手段15、スライド16およびクランプ17を有する挿入装置14の1つが見える。フラットワーク物品21はクランプ17に挿入され、レール手段15に沿ったスライド16の上向きの移動によって、当該フラットワーク物品がクランプ10まで上向きに動かされる。スライド16は、クランプ10をわずかに通過するまで移動するが、同時にクランプ10がシリンダー20によって閉じられる。これにより、クランプ10は、22で示される位置、すなわちコンベアベルト5からわずかに離れた位置でフラットワーク物品を掴む。ついで、スライド16はクランプ10をかなり通過するまで移動し、クランプ10によりしっかりと把持されているフラットワーク物品21はクランプ17から解放される。クランプ10が閉じた状態においても、クランプ17を備えたスライド16が当該クランプ10を通過して元に戻るための空間的余裕が残されている。 【0020】 レール手段7の正面の位置が挿入装置14で占められているため、クランプ10、11の下の正面側からバーまたは他の器具を導入し、これによりフラットワーク物品の導入端部をコンベヤベルト5まで移動させることはできない。そのかわりに、当該導入端部は、コンベヤベルト5の下のサクションボックス23内で発生した真空によりクランプ10、11からコンベヤベルト5まで運ばれる。コンベヤベルト5は、サクションボックス23が設けられる空間を形成するいくつかのローラによって支持されている。当該サクションボックス23は、上部の実質的に水平な壁24を有しており、その正面側の端部に、主要な上部ローラ25が設けられている。ローラ25の下には2本のアームを有するレバー27からなるロッキング装置26が設けられており、その端部には移動自在のローラ28、29が設けられている。レバー26はロッキング軸30の回りにジャーナル軸を有している。サクションボックス23は後壁34と、軸30のロッキング装置26まで延びると共に該ロッキング装置と実質的に気密の関係にある底部壁31とを有している。またサクションボックスは、壁31とローラ28とのあいだに移動自在の前壁32を有している。したがって、サクションボックスは、上部ローラ25と移動自在のローラ28とのあいだの領域を除いて実質的に気密である。コンベヤベルト5は孔が穿設された経路または互いに並列して設けられた比較的狭いストラップからなっている。したがって、ローラ25とローラ28のあいだのベルト上に設けられたフラットワーク物品はベルト部にしっかりと吸着され、たとえフラットワーク物品の主要部がローラ28から垂れ下がっていても、ベルト部で達成された摩擦によりフラットワーク物品が滑ることが充分に防止される。ローラ28がクランプ10のいくぶん後に設けられているので、ローラ25とローラ28のあいだのベルト部に吸着されたフラットワーク物品は、コンベヤベルト上を、コンベヤベルト5の送出側コンベヤベルト5の端部6(図1)に向かって運ばれる。このフラットワーク物品の動きは、これと同時に行なわれる、ローラ28の正面のクランプ10を備えたキャリッジ8の横方向(図2の紙面に垂直方向)の移動に干渉されない。 【0021】 【発明の効果】 サクションボックス23内で必要とされる真空の要件は、コンベヤベルトの正面側部分をケーシング33で覆うことによって達成される。当該ケーシング33は、その後側でコンベヤベルト上でフラットワーク物品の移動を可能にするフラップ(flap)を有し、正面側でクランプ10の底部の経路まで延びている。言い換えれば、ケーシング33は2つの目的、すなわち、まず第2のキャリッジ9(図2には示されていない)上のクランプ10およびクランプ11のあいだで延伸されるとき、フラットワーク物品の導入端部の回りの空間に空気の流れを集中させ、つぎに延伸のあいだフラットワーク物品の導入端部をまっすぐに保つガイドを形成している。空気の流れを集中させ真空度を高めることによりケーシングは、コンベヤベルト上を運ばれるとき、フラットワーク物品の導入端部の移動を迅速にし、フラットワーク物品の導入端部を実質的にまっすぐにしている。このことは、たとえば、アイロン用ローラまたはフォールドマシン(folding machine)などにおけるつぎの処理工程でのフラットワーク物品のさらなる処理に重要である。 【0022】 フラットワーク物品をクランプ10、11からコンベヤベルト5に運ぶとき、ロッキング装置は、図2の実線で示された位置から破線で示された位置へ動かされる。破線で示された位置で、主要なローラは参照符号28′で示されたところに位置づけられ、クランプ10により吊り下げられたフラットワーク物品と接触する。ローラ28の前進運動により、サクションボックスが大きく開かれ、ケーシング33とローラ28´のあいだの領域で、コンベヤベルト上のフラットワーク物品の導入端部の移動を促進する空気の流れを増加させる。フラットワーク物品がコンベヤベルトと接触すると、フラットワーク物品は即座にコンベヤベルトに吸着され、コンベヤベルト上に運ばれる。コンベヤベルトが(ローラ28′とローラ25とのあいだで)前進し、かつ上向きに動くと、フラットワーク物品はさらにコンベヤベルトに巻き込まれ、フラットワーク物品のより確実な把持が可能になる。この把持力は、導入端部がローラ25に到達するときに最大となり、このときロッキング装置26は図2に示される実線の位置まで戻ることができる。 【0023】 2つのローラ28および29を有するロッキング装置を用いることによって、単純な手段によるベルトの実質的に一定の密着(tightning)を維持できるであろう。しかしながら、一定の密着は、たとえば、ばねで付勢されたローラによる他の方法で達成されてもよい。そのばあい、同じようにしてローラ29の運動が揺動による方法以外の方法で実現する。揺動はとくに有利であると同時に、サクションボックスの被覆が単純な手段でもたらされる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 本発明による装置の簡略化した斜視図である。 【図2】 延伸されたフラットワーク物品のコンベヤベルトへの移動に用いられる手段を示す装置の断面図である。 【符号の説明】 3、4 横方向部材 5 ベルト 7 レール手段 8、9 キャリッジ 10、11 クランプ 15 レール手段 16 スライド 17、18 クランプ 21、22 フラットワーク物品 【図面】 ![]() ![]() |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2003-01-06 |
結審通知日 | 2003-01-09 |
審決日 | 2003-01-29 |
出願番号 | 特願平5-12971 |
審決分類 |
P
1
112・
531-
YA
(D06F)
P 1 112・ 534- YA (D06F) P 1 112・ 112- YA (D06F) P 1 112・ 121- YA (D06F) P 1 112・ 03- YA (D06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 阿部 寛 |
特許庁審判長 |
梅田 幸秀 |
特許庁審判官 |
和泉 等 千壽 哲郎 |
登録日 | 1997-08-29 |
登録番号 | 特許第2690256号(P2690256) |
発明の名称 | アイロンローラなどの洗濯処理ユニットへフラットワーク物品を供給するための装置 |
代理人 | 中島 敏 |
代理人 | 藤 文夫 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 徳永 博 |
代理人 | 藤谷 史朗 |
代理人 | 杉村 暁秀 |
代理人 | 杉村 興作 |
代理人 | 徳永 博 |
代理人 | 須藤 阿佐子 |
代理人 | 矢野 俊史 |