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審決分類 審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  H05K
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  H05K
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H05K
管理番号 1124290
異議申立番号 異議2003-71209  
総通号数 71 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2005-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-12 
確定日 2005-08-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3342703号「回路接続用フィルム状接着剤及び回路板」の請求項1ないし14に係る特許に対する特許異議の申立てについてした平成16年 6月30日付け取消決定に対し、知的財産高等裁判所において取消決定取消の判決(平成17年(行ヶ)第10091号、平成17年 4月12日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3342703号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続きの経緯
特許第3342703号に係る手続きの経緯は、以下のとおりである。
(1)平成9年7月15日に特許出願
[【優先権主張番号】特願平8―184647号
【優先日】平成8年7月15日(1996.7.15)
【優先権主張国】日本(JP)
【優先権主張番号】特願平8―189205号
【優先日】平成8年7月18日(1996.7.18)
【優先権主張国】日本(JP)
【優先権主張番号】特願平9―66899号
【優先日】平成9年3月19日(1997.3.19)
【優先権主張国】日本(JP)]
され、平成14年 8月23日に特許第3342703号として特許権の設定登録がされた。
(2)平成15年 5月12日付けでに異議申立人住友ベークライト株式会社より全請求項に対する異議申立てがされた。
(3)平成16年 2月25日付けで取消理由通知がなされ、その指定期間内である平成16年 5月 6日付けで特許権者から、特許異議意見書及び訂正請求書が提出された。
(4)平成16年 6月30日付けで「訂正を認める。特許第3342703号の請求項1、2、4、5、7ないし9に係る特許を取り消す。同請求項3、6に係る特許を維持する。」との異議の決定がさなれ、同異議の決定の謄本は、平成16年 7月20日に特許権者及び異議申立人に送達された。
(5)平成16年 6月30日付け異議の決定に対し、特許権者は、当該決定の取り消しを求めて、特許法第178条第1項の規定により、東京高等裁判所に訴えを提起した。
(6)上記(5)の訴えは平成17年(行ヶ)第10091号(東京高裁平成16年(行ヶ)第370号)特許取消決定取消請求事件として審理され、平成17年 4月12日に、「特許庁が異議2003一71209号事件について平成16年月30日にした決定中,特許第3342703号の請求項1,2,4,5,7ないし9に係る特許を取り消すとの部分を取り消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決の言い渡しがあった。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
上記平成16年 5月 6日付け訂正請求書に添付された全文訂正明細書の記載によれば、特許権者が求めている訂正の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項a
【請求項1】について、「・・・する加熱接着性接着剤において、」と「その接着剤の接着後の・・・」との間に「その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、」を挿入する。
(2)訂正事項b,g,i,k,l
【請求項4】 ,【請求項9】,【請求項11】,【請求項13】,【請求項14】を削除する。
(3)訂正事項c
【請求項5】について、「・・・させた回路板であって、」と「接着後の接着剤の・・・」との間に、「その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであり、」を挿入する。
(4)訂正事項d
【請求項6】について、「・・・させた回路板であって、」と「その接着剤の接着後の・・・」との間に、「その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、」を挿入する。
(5)訂正事項e,f,h,j
【請求項7】,【請求項8】,【請求項10】,【請求項12】について、それぞれ、【請求項6】,【請求項7】,【請求項8】,【請求項9】と請求項の番号を繰り上げるとともに、引用する請求項の番号を整合させる。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項a,d
上記訂正事項a,dは、発明を構成する事項である接着剤の組成に関して、「0.2〜15体積%の導電粒子が分散されて」いることを特定するとともに、接着剤の接着後の弾性率の測定条件を「引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器」で測定する旨特定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(2)訂正事項c
上記訂正事項cは、発明を構成する事項に関して、上記 訂正事項a,dと同様趣旨の訂正をすることに加えて、発明を構成する事項である接着剤の弾性率に関して、「その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPa」であるとの限定を附加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)訂正事項b,g,i,k,l
上記訂正事項b,g,i,k,lは、【請求項4】 ,【請求項9】,【請求項11】,【請求項13】,【請求項14】を削除するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当するものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(4)訂正事項e,f,h,j
上記訂正事項e,f,h,jは、【請求項7】,【請求項8】,【請求項10】,【請求項12】について、それぞれ、【請求項6】,【請求項7】,【請求項8】,【請求項9】と請求項の番号を繰り上げるとともに、引用する請求項の番号を整合させるものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

3.むすび
したがって、上記訂正は、平成15年改正前の特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについての判断
1.申立ての理由の概要
(1)異議申立人住友ベークライト株式会社は、請求項1〜4に係る発明は、甲第2号証(実験成績証明書)を補足証拠として、甲第1号証(特開平6-256746号公報)に記載された発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するから特許を取り消すべき旨、請求項5に係る発明は、甲第3号証(特公平7-93157号公報),甲第4号証(特開平5-206208号公報),甲第5号証(特開平5-258830号公報),甲第6号証(特公平7-99710号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから特許を取り消すべき旨、また、請求項6〜8及び11〜12に係る発明は、前記甲第1号証及び前記甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから特許を取り消すべき旨、そして、請求項10及び13に係る発明は、甲第7号証(特開平8-46312号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから特許を取り消すべき旨、主張している。

(2)本件特許明細書の発明の詳細な説明には、請求項9及び14に係る発明の要件である弾性率E1の構成に関して当業者が容易に実施できる程度に記載されておらず、特許法第36条第4項、第6項第2号及び第4号に規定する要件を満たしていないから特許を取り消すべき旨、主張している。

2.本件発明
上記第2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否についての判断の如く訂正が認められるので、本件特許第3342703号の請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ、「本件発明1」ないし「本件発明9」という。)は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「 【請求項1】相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する加熱接着性接着剤において、
その接着剤には、0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴とする回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項2】前記接着剤が、少なくとも、エポキシ樹脂と、アクリルゴムと、潜在性硬化剤とを含有している請求項1記載の回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項3】アクリルゴムが、分子中にグリシジルエーテル基を有するものである請求項2記載の回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項4】第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
その接着剤には、0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴とする回路板。
【請求項5】第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
その接着剤には、0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであり、
接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍であることを特徴とする回路板。
【請求項6】前記接着剤が、少なくとも、エポキシ樹脂と、分子中にグリシジルエーテル基を有するアクリルゴムと、潜在性硬化剤とを含有していることを特徴とする請求項4又は5記載の回路板。
【請求項7】第一の接続端子を有する第一の回路部材が、半導体チップであり、
第二の接続端子を有する第二の回路部材が、第二の接続端子を有する有機質絶縁基板である請求項4,5又は6記載の回路板。
【請求項8】第一の接続端子を有する第一の回路部材が半導体チップであり、
第二の接続端子を有する第二の回路部材が、第二の接続端子が絶縁基板表面に埋め込まれている配線基板である請求項4、5、6又は7記載の回路板。
【請求項9】接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍である請求項1、2又は3記載の回路接続用フィルム状接着剤。」

3.刊行物等
(1)甲第1号証:特開平6―256746号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【請求項1】下記成分を必須とする接着剤組成物
(1)カルボキシル基、ヒドロキシル基、及びエポキシ基から選ばれる1種以上の官能基を有するアクリル樹脂
(2)分子量が10000以上のフェノキシ樹脂
(3)エポキシ樹脂
(4)潜在性硬化剤
【請求項2】組成物中に占めるアクリル樹脂とフェノキシ樹脂の割合が5〜70%である請求項1記載のの接着剤組成物」(【特許請求の範囲】)
(b) 「【産業上の利用分野】本発明は、例えば液晶パネル等において2つの回路基板同士の電極間に形成し、両電極を接続するのに好適な接着剤組成物に関する。」(段落【0001】)
(c) 「本発明の接着剤組成物は一液型接着剤として、中でもフィルム状接着剤として特に有用である。・・・」(段落【0014】)
(d) 「実施例1〜10及び比較例1
(1)アクリル樹脂ブチルアクリレート(BA)、エチルアクリレート(EA)、アクリロニトリル(AN)、メチルメタアクリレート(MMA)を主モノマ成分とし、アクリル酸(AA)、メタアクリル酸(MAA)、グリシジルメタアクリレート(GMA)、ヒドロキシルエチルメタアクリレート(HEMA)を官能基成分として、表1に示す重量比からなるモノマをパール重合により重合し、記号A〜Kのアクリル系共重合体を得た。この共重合体をトルエンに溶解し固形分10%の溶液とした。ここに共重合体のTgは、特公昭45―22221号公報に示される方法により主モノマ成分の重量比から算出した。」(段落【0020】)
(e) 「(3)評価
このフィルム状物を用いて、ライン幅40μm、ピッチ80μm、厚み20μmの銅回路上に錫の薄層を有するフレキシブル回路板(FPC)と、全面に酸化インジウム(ITO)の薄層を有する厚み1.1mmのガラス板とを、170℃―30kg/mm2 ―20秒により、幅2mmで接続した。この際、あらかじめFPC上にフィルム状物を貼り付け後70℃―5kg/mm2 ―5秒の仮接続を行い、次いでセパレータを剥離してITOとの接続を行った。結果を表2に示す。」(段落【0023】)
(f) 段落【0020】の【表2】中、実施例8のプラの値が「2vol」であること。

(2)甲第2号証:作成者川田政和による実験成績証明書には、グリシジル基を有するアクリル樹脂Lについて、本件特許の弾性率パラメータと一致していることを確認している旨の記載がある。

(3)甲第3号証:特公平7―93157号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【請求項1】 平坦な基板上に形成された透明導電膜回路と、前記回路に相対峙して形成されたフレキシブル基板の接続用回路が、電気的接続部材により相互に接続された回路の接続構造体において、接続部材が100〜250℃で軟化あるいは変形可能なスチレン系高分子重合体からなる核材のほぼ全表面を導電性の金属薄層により実質的に被覆された導電性粒子と、該導電性粒子よりも小さく、接続条件下において前記導電性粒子よりも高剛性のスペーサ粒子およびスチレン系絶縁性接着剤からなる固形フィルム状であり、前記導電性粒子は前記スペーサ粒子により隔てられた相対峙する回路により押圧変形した状態で固定されてなることを特徴とする回路の接続構造体。」(【特許請求の範囲】)
(b) 「【従来の技術】従来より集積回路類の配線基板への接続、表示素子類と配線基板への接続、電気回路とリードとの接続などのように接続端子が相対峙して細かいピッチで並んでいる場合の接続方法として、ハンダ付や導電性接着剤などの接続部材による方法が広く用いられている。しかしながら、これらの方法においては導電回路部のみに限定して接続部材を形成しなければならないので、高密度、高精細化の進む微細回路の接続に困難をきたしていた。」(段落【0002】)
(c) 「最適な接続状態を得るには、接続後の回路間隔(t)に対する接続前の接続部材の厚み(T)の比を、t/T=0.02〜0.95の範囲内にすることが好ましい。」(段落【0017】)
(d) 「(2) 回路の接続
ライン巾0.1mm、ピッチ0.2mm、厚み35μmの回路を有する全回路巾100mmのフレキシブル回路板(FPC)に、接着巾3mm、長さ100mmに切断した接続分を載置して150℃―10kg/cm2―5秒の加熱加圧により仮貼付を行い接続部材付FPCを得た。そのあとセパレータを剥離して、他の同一ピッチを有する透明電極ガラス(酸化インジウム回路、ガラス厚み1mm)と顕微鏡下で回路の位置合わせを行い、加熱加圧により回路を接続した。」(段落【0023】)

(4)甲第4号証:特開平5-206208号公報(以下、「刊行物3」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【産業上の利用分野】本発明は、相対峙する電極を導電粒子を介して電気的に接続すると共に、接着固定するのに使用される接続部材を用いた半導体チップの接続方法に関する。」(段落【0001】)
(b) 「【実施例】図1の断面図中で、半導体チップの突出電極は先端部面積が100μm角、高さが25μm、間隔30μmで並んでおり、回路電極の高さは0.2μm、導電粒子粒径が10μm、図3の断面図中の回路接続後のつぶれた導電粒子の厚さが2μm、突出電極高さが22μm、回路電極高さが0.2μmである時、表1に示した厚みの粒子偏在型異方導電性接着フィルムを用いた場合の回路接続例を述べる。なお、半導体チップの突出電極は金製、導電粒子はポリスチレン核の表面に金めっき、回路基板はガラス製で回路および電極には金めっきが施されている。絶縁性接着剤層には潜在性硬化剤を含んだエポキシ系接着剤を使用した。」(段落【0010】)

(5)甲第5号証:特開平5-258830号公報(以下、「刊行物4」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【請求項1】 絶縁基板に形成された多数の回路と相対峙する回路とを接着剤によって接続する回路の接続方法において、少なくとも一方の回路は回路幅70μm以下、ピッチ150μm以下で、破断伸び率が10%以上の可撓性基板上に形成され、当該回路と相対峙する回路との間に絶縁性接着剤を介在させて両回路を位置合せし、接続部の長さLと回路幅Wとの比(L/W)を40以上として、加圧下で上記接着剤を硬化することを特徴とする回路の接続方法。
【請求項2】 上記可撓性基板上に形成される上記回路高さが可撓性基板の厚み以下であることを特徴とする請求項1に記載の回路の接続方法。
【請求項3】 上記絶縁性接着剤がエポキシ樹脂と潜在性硬化剤を主成分とするフィルム状であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路の接続方法。
【請求項4】 上記絶縁性接着剤がエポキシ樹脂と潜在性硬化剤を主成分とし、さらに導電粒子を0.01〜1.0体積%含有してなるフィルム状であることを特徴とする請求項1または2に記載の回路の接続方法。」(【特許請求の範囲】)
(b) 「【産業上の利用分野】本発明は、相対峙する回路もしくは電極を電気的及び機械的に接続する回路の接続方法に関する。」(段落【0001】)

(6)甲第6号証:特公平7-99710号公報(以下、「刊行物5」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【請求項1】2枚の絶縁性基板上に設けられて対向配置された接続回路間に、硬化剤成分を核材としその少なくとも最外層を導電性の金属薄層により実質的に覆ってなる導電性粒子を該硬化剤成分と反応性を有する接着剤中に0.1〜15体積%分散してなる接続部材を配置し、加圧若しくは加熱加圧により前記導電性粒子を破壊せしめることにより接続回路間の導通接続を行うこと特徴とする回路の接続方式。」(【特許請求の範囲】)
(b) 「〔産業上の利用分野〕
本発明は回路の接続方式に関し、更に詳しくは集積回路、液晶パネル等の接続端子とそれに対向配置された回路基板上の接続端子とを電気的、機械的に接続するための接続方式に関する。」(公報第1頁左下欄11〜15行)

(7)甲第7号証:特開平8-46312号公報(以下、「刊行物6」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【請求項1】フレキシブル配線基板の一方の表面に接着された配線パターンの内表面に導電材から成るバンプを設け、このバンプが上記配線基板に設けた貫通孔を通し配線基板の他方の表面に接着された配線パターンの内表面に押し付けられて両配線パターン間を接続していることを特徴とする配線基板における配線パターン間接続構造。
【請求項2】上記配線基板の絶縁基板がポリイミド樹脂フィルムから成ることを特徴とする請求項1記載の配線基板における配線パターン間接続構造。」(【特許請求の範囲】)
(b) 「図1Bに示すように、この熱硬化性ポリイミド樹脂フィルム1の双方の表面にポリエーテルエーテルケトンフィルムから成る熱可塑性樹脂フィルム2a,2bを熱圧着にて加熱融着し、この熱可塑性樹脂フィルム2a,2b(ポリエーテルエーテルケトンフィルム)の両外表面に配線パターン3a,3bを密着し、この配線パターン3a,3bをフィルム2a,2bの熱可塑性を利用し、母材表層部に埋め込み状態に融着し、又は埋め込まずに表面融着し、両面配線基板を形成する。」(段落【0014】)

(8)甲第8号証:特開昭64-56779号公報(以下、「刊行物7」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「1.分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂、アクリル系共重合体及びエポキシ樹脂用硬化剤よりなり、エポキシ樹脂とアクリル系共重合体の重量比が30:70〜70:30であり、
アクリル系共重合体が、
( A )アクリロニトリル 25〜55重量%、
( B )(メタ)アクリル酸アルキルエステル75〜44.5重量%及び
( C )(メタ )アクリル酸 0.5重量%未満
を共重合して得られたものであることを特徴とする接着剤組成物。
2.特許請求の範囲第1項に記載の接着剤組成物よりなるシート状接着剤。」(【特許請求の範囲】)
(b) 「(産業上の利用分野)
本発明はフレキシブル印刷配線板の製造及び金属と金属の接着に好適に使用される接着剤組成物及びそのシート状接着剤に関する。」(公報第1頁左下欄19行〜右下欄2行)

(9)甲第9号証:特開平7-228669号公報(以下、「刊行物8」という。)には、以下の事項が記載されている。
(a) 「【産業上の利用分野】本発明は、エポキシ-アクリル系樹脂組成物、それから形成されたフィルム状樹脂組成物、そしてかかるフィルム状組成物の硬化物に関する。」(段落【0001】)
(b) 「かかるZAFフィルムは、接着により、フィルムの厚さ方向にのみ導電性を有し、平面方向においては、絶縁性が保たれており、従って、上下方向の回路間を電気接続することが可能となる。」(段落【0010】)
(c) 「【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記問題に鑑み、熱硬化前のフィルムとしては、(a)紫外線照射によりフィルム形成可能で、(b)フィルム形成に、溶剤及び加熱工程を必要とせず、そして、フィルムに形成したとき、(c)構成成分の相溶性が良好で、(d)全体が均一で、(e)反応性、潜在性に優れ、(f)作業性が良好で、(g)熱硬化可能で、かつ(h)シネレシスの問題がない、また、熱硬化後のフィルムとしては、(i)Tgが高く、具体的には、150℃以上で、(j)強靱性が高く、かつ(k)低吸湿性な、エポキシ-アクリル系樹脂組成物、並びにそれを用いたフィルム状樹脂組成物及びその硬化物を提供しようとするものである。」(段落【0011】)
(d) 「本発明の第2の態様は、前記第1の態様によるエポキシ-アクリル系樹脂組成物であってそれがさらに導電粒子(g)を含有する、異方性導電組成物である。本発明の第3の態様は、前記第1又は第2の態様の組成物を紫外線照射で重合させることによりフィルム化した、フィルム状樹脂組成物である。」(段落【0018】)

4.対比・判断
(1)本件発明1,4,5について
本件発明1,4,5と上記刊行物1ないし8に記載された各発明とを対比すると、前記各刊行物に記載された発明は、本件発明1,4,5を構成する事項である、「接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであること」の構成を備えておらず、当該事項により本件発明1,4,5は、「良好な接続信頼性を示す」という明細書に記載の効果を奏するものであり、本件発明1,4,5が上記刊行物1ないし8に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし8に記載された各発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものとも言えない。

(2)本件発明2,3,9について
本件発明2,3,9と上記刊行物1ないし8に記載された各発明とを対比すると、請求項2,3,9が請求項1を引用するものであるから、本件発明2,3,9も、上記本件発明1の構成の一部と共通の構成を備えているものとなる。
したがって、上記(1)と同じ理由により、本件発明2,3,9は、刊行物1ないし8に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも言えない。

(3)本件発明6,7,8について
本件発明6,7,8と上記刊行物1ないし8に記載された各発明とを対比すると、請求項6,7,8が請求項4又は5を引用するものであるから、本件発明6,7,8も、上記本件発明4又は5の構成の一部と共通の構成を備えているものとなる。
したがって、上記(1)と同じ理由により、本件発明6,7,8は、刊行物1ないし8に記載された各発明と同一であるとも、上記刊行物1ないし8に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとも言えない。

(4)明細書の記載不備について
特許異議申立人が記載不備を主張する請求項9及び請求項14は、上記訂正事項g及び訂正事項lによって削除されたことにより、前記申立人が主張する明細書に関する記載の不備は認められず、本件特許が特許法第36条第4項、第6項第2号及び第4号に規定する要件を満たさない出願に対してされたものとすることはできない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1ないし9に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
回路接続用フィルム状接着剤及び回路板
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する加熱接着性接着剤において、
その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴とする回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項2】前記接着剤が、少なくとも、エポキシ樹脂と、アクリルゴムと、潜在性硬化剤とを含有している請求項1記載の回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項3】アクリルゴムが、分子中にグリシジルエーテル基を有するものである請求項2記載の回路接続用フィルム状接着剤。
【請求項4】第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴とする回路板。
【請求項5】第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、
その接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子が分散されており、
引っ張りモード、周波数10Hz、昇温5℃/minで動的粘弾性測定器で測定した、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであり、
接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍であることを特徴とする回路板。
【請求項6】前記接着剤が、少なくとも、エポキシ樹脂と、分子中にグリシジルエーテル基を有するアクリルゴムと、潜在性硬化剤とを含有していることを特徴とする請求項4又は5記載の回路板。
【請求項7】第一の接続端子を有する第一の回路部材が、半導体チップであり、
第二の接続端子を有する第二の回路部材が、第二の接続端子を有する有機質絶縁基板である請求項4、5又は6記載の回路板。
【請求項8】第一の接続端子を有する第一の回路部材が半導体チップであり、
第二の接続端子を有する第二の回路部材が、第二の接続端子が絶縁基板表面に埋め込まれている配線基板である請求項4、5、6又は7記載の回路板。
【請求項9】接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍である請求項1、2又は3記載の回路接続用フィルム状接着剤。
【発明の詳細な説明】
技術分野
本発明は、回路基板同士またはICチップ等の電子部品と配線基板の接続用いられる回路接続用接着剤及び回路板に関する。
発明の背景
回路基板同士またはICチップ等の電子部品と回路基板の接続とを電気的に接続する際には、接着剤または導電粒子を分散させた異方導電接着剤が用いられている。すなわち、これらの接着剤を相対峙する電極間に配置して、加熱、加圧によって電極を接続後、加圧方向に導電性を持たせることによって、電気的接続を行うことができる。例えば、特開平3-16147号公報には、エポキシ樹脂をベースとした回路接続用接着剤が提案されている。
しかしながら、エポキシ樹脂をベース樹脂とした従来の接着剤を用いた接着剤は、熱衝撃試験、PCT試験、はんだバス浸漬試験等の信頼性試験を行うと接続基板の熱膨張率差に基づく内部応力によって接続部において接続抵抗の増大や接着剤の剥離が生じるという問題がある。
特に、チップを接着剤を介して直接基板に搭載する場合、接続基板としてFR-4基材を用いたプリント基板、あるいはポリイミドやポリエステルを基材とするフレキシブル配線板を用いると、接続後チップとの熱膨張率差に基づく内部応力によってチップ及び基板の反りが発生しやすい。
発明の概要
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する加熱接着性接着剤において、その接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴とする。
この接着剤は、少なくともエポキシ樹脂と、アクリルゴム及び潜在性硬化剤を含有していることができ、アクリルゴムが、分子中にグリシジルエーテル基を有するものが好ましく使用される。
又本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、相対峙する回路電極を加熱、加圧によって、加圧方向の電極間を電気的に接続する加熱接着性接着剤において、その接着剤が少なくともエポキシ系樹脂と、分子中にグリシジルエーテル基を有するアクリルゴム及び潜在性硬化剤を含有していることを特徴する。
以上の本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍であるものが好ましい。
本発明の回路板は、
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、前記接着剤の接着後の40℃における弾性率が100〜2000MPaであることを特徴する。
又本発明の回路板は、
第一の接続端子を有する第一の回路部材と、
第二の接続端子を有する第二の回路部材とを、
第一の接続端子と第二の接続端子を対向して配置し、
前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子の間に接着剤を介在させ、加熱加圧して前記対向配置した第一の接続端子と第二の接続端子を電気的に接続させた回路板であって、前記接着剤が少なくともエポキシ樹脂と、分子中にグリシジルエーテル基を有するアクリルゴム及び潜在性硬化剤を含有していることを特徴とする。
本発明の回路板は、第一の接続端子を有する第一の回路部材が、半導体チップであり、第二の接続端子を有する第二の回路部材が、第二の接続端子を有する有機質絶縁基板であることが好ましい。
第一の接続端子を有する第一の回路部材として半導体チップが、
第二の接続端子を有する第二の回路部材として、第二の接続端子が形成される表面絶縁層及び所定数層の絶縁層と前期各絶縁層を介して配置される所定数層の配線層と所定の前記電極・配線層間を電気的に接続する導体化された穴を有する多層配線板であって、前記所定数層の絶縁層はガラス基材で補強された樹脂よりなり、前記表面絶縁層のDVE法で測定される弾性率をE1、ガラス基材で補強された樹脂よりなる絶縁層のDVE法で測定される弾性率をE2とすると
E1=0.01E2〜0.5E2
である多層配線板又は第二の接続端子が絶縁基板表面に埋め込まれている配線基板が好ましく使用される。
前記接着剤には0.2〜15体積%の導電粒子を分散することができる。
図面の簡単な説明
図1は、実施例1の接着フィルム硬化物の弾性率および誘電正接を示すグラフである。
図2は、比較例1の接着フィルム硬化物の弾性率および誘電正接を示すグラフである。
発明を実施するための最良の形態
本発明の接着剤は、接着後の40℃での弾性率が100〜2000MPaであり、接続時の良好な流動性や高接続信頼性を得られる接着剤として、エポキシ樹脂とイミダゾール系、ヒドラジド系、三フッ化ホウ素-アミン錯体、スルホニウム塩、アミンイミド、ポリアミンの塩、ジシアンジアミド等の潜在性硬化剤の混合物に、接着後の40℃での弾性率が100〜2000MPaになるように、分子量20万以上のアクリルゴムを配合した接着剤が挙げられる。
接着後の40℃での弾性率は、300〜1800MPaが好ましく、700〜1800MPaが更に好ましい。
接着剤の接着後の段階に相当する接着フィルム硬化物の弾性率は、例えば、レオロジ(株)製レオスペクトラDVE-4(引っ張りモード、周波数10Hz、5℃/minで昇温、-40℃〜250℃まで測定)を用いて測定することができる。なお、接着フィルムの硬化は、接着工程時の加熱温度及び時間と同じ条件で行い、硬化方法としては、接着フィルムをオイルバスに浸漬して行うことができる。このような接着フィルム硬化物は、DSCを用いて測定した場合の全硬化発熱量の90%以上の発熱を終えたものである。
図1に代表例として実施例1で作成した接着フィルム硬化物の弾性率及び誘電正接の測定結果を示した。
また本発明において用いられる接着剤は、エポキシ樹脂と、分子中にグリシジルエーテル基を有するアクリルゴム及び潜在性硬化剤を含有しているものである。
本発明において用いられるエポキシ樹脂としては、エピクロルヒドリンとビスフェノールAやF、AD等から誘導されるビスフェノール型エポキシ樹脂、エピクロルヒドリンとフェノールノボラックやグレゾールノボラックから誘導されるエポキシノボラック樹脂やナフタレン環を含んだ骨格を有するナフタレン系エポキシ樹脂、グリシジルアミン、クリシジルエーテル、ビフェニル、脂環式等の1分子内に2個以上のグリシジル基を有する各種のエポキシ化合物等を単独にあるいは2種以上を混合して用いることが可能である。これらのエポキシ樹脂は、不純物イオン(Na+、Cl-等)や、加水分解性塩素等を300ppm以下に低減した高純度品を用いることがエレクトロンマイグレーション防止のために好ましい。
本発明で用いるアクリルゴムとしては、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステルまたはアクリルニトリルのうち、少なくとも一つをモノマー成分とした重合体または共重合体が挙げられ、中でもグリシジルエーテル基を有するグリシジルアクリレートやグリシジルメタクリレートを含む共重合体系アクリルゴムが好適に用いられる。
これらアクリルゴムの分子量は、接着剤の凝集力を高める点から20万以上が好ましい。アクリルゴムの接着剤中の配合量は、10重量%未満では接着後の40℃での弾性率が2000MPaを越えてしまい、また40重量%より多いと低弾性率化は図れるが接続時の溶融粘度が高くなり接続電極間、または接続電極と導電粒子界面の溶融接着剤の排除性が低下するため、接続電極間または接続電極と導電粒子間の電気的導通を確保できなくなる。このため、アクリルゴムの配合量としては10〜40wt%が好ましい。
接着剤に配合されたアクリルゴムは、図1に示したようなゴム成分に起因する誘電正接のピーク温度が40〜60℃付近にあるため、接着剤の低弾性率化を図ることができる。また、接着剤にはフィルム形成性をより容易にするために、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等の熱可塑性樹脂を配合することもできる。特に、フェノキシ樹脂は、エポキシ系樹脂をベース樹脂とした場合、エポキシ樹脂と構造が類似しているため、エポキシ樹脂との相溶性、接着性に優れる等の特徴を有するので好ましい。フィルム形成は、これら少なくともエポキシ樹脂、アクリルゴム、潜在性硬化剤からなる接着組成物を有機溶剤に溶解あるいは分散により、液状化して、剥離性基材上に塗布し、硬化剤の活性温度以下で溶剤を除去することにより行われる。この時用いる溶剤は、芳香族炭化水素系と含酸素系の混合溶剤が材料の溶解性を向上させるため好ましい。
本発明の接着剤には、チップのバンプや基板電極の高さばらつきを吸収するために、異方導電性を積極的に付与する目的で導電粒子を混入・分散することもできる。本発明において導電粒子は、例えばAu、Ag、Cuやはんだ等の金属の粒子であり、ポリスチレン等の高分子の球状の核材にNi、Cu、Au、はんだ等の導電層を設けたものがより好ましい。さらに導電性の粒子の表面にSn、Au、はんだ等の表面層を形成することもできる。粒径は基板の電極の最小の間隔よりも小さいことが必要で、電極の高さばらつきがある場合、高さばらつきよりも大きいことが好ましく、1〜10μmが好ましい。また、接着剤に分散される導電粒子量は、0.1〜30体積%であり、好ましくは0.2〜15体積%である。
本発明の接着剤は、フィルム状接着剤として使用される。
フィルム状接着剤は、接着剤溶液を離型性フィルム上にロールコータ等で塗布し、乾燥させし離型性フィルムから剥離することにより得ることができる。
フィルム状接着剤で接着剤層を多層化することもできる。例えば、異方導電性を付与するために導電粒子を充填させた接着フィルムと導電粒子を充填していない接着剤層をラミネート化した二層構成異方導電フィルムや導電粒子を充填させた接着フィルムの両側に導電粒子を充填していない接着剤層をラミネート化した三層構成異方導電フィルムを用いることができる。これらの多層構成異方導電フィルムは接続電極上に効率良く、導電粒子を捕獲できるため、狭ピッチ接続に有利である。また、回路部材との接着性を考慮して、回路部材1及び2に対してそれぞれ接着性に優れる接着フィルムをラミネートして多層化することもできる。
本発明の接着剤には、無機質充填材を混入・分散することができる。
無機質充填材としては、特に限定するものではなく、例えば、溶融シリカ、結晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、アルミナ、炭酸カルシウム等の粉体があげられる。無機充填材の配合量は、接着樹脂組成物100重量部に対して10〜200重量部が好ましく、熱膨張係数を低下させるには配合量が大きいほど効果的であるが、多量に配合すると接着性や接続部での接着剤の排除性低下に基づく導通不良が発生するし、配合量が小さいと熱膨張係数を充分低下できないため、20〜90重量部がさらに好ましい。また、その平均粒径は、接続部での導通不良を防止する目的で3ミクロン以下にするのが好ましい。また接続時の樹脂の流動性の低下及びチップのパッシベーション膜のダメージを防ぐ目的で球状フィラを用いることが望ましい。無機質充填材は、導電粒子と共に又は導電粒子が使用されない層に混入・分散することができる。
本発明の回路接続用フィルム状接着剤は、接続後の接着剤の面積が、接続する前の面積に対して2.0〜5.0倍であることが好ましい。
接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比は、以下の手段によって測定する。すなわち、厚さ50μm、大きさ5mm角の接着剤を厚さ1.1mm、大きさ15mm角のガラス板2枚に挟んでおく。これを、加熱圧着機によって加熱温度180℃、加圧18kgf/cm2、加圧時間20秒の条件で加熱、加圧を行い、加熱、加圧前の接着剤面積(A)及び、加熱、加圧後の接着剤面積(B)を画像処理装置を用いて測定することによって、接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)を求めることができる。
接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)が2.0未満になると、接続電極間、または接続電極と導電粒子界面の溶融接着剤の排除性が低下するため、接続電極間または接続電極と導電粒子間の電気的導通を確保でき難くなる。一方、接着剤の接続後の面積と接続前の面積の比(B/A)が5.0を越えると接続時の接着剤の流動性が高すぎるため、気泡がでやすく、結果として信頼性が低下する傾向がある。
従来の回路接続用接着剤のように接続後の40℃の弾性率が2000MPaを越える接着剤は、熱衝撃試験、PCT試験やはんだバス浸漬試験等の信頼性試験中に生じる内部応力によって、接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離があるが、本発明の接着剤は、40℃での弾性率が100〜2000MPaのため、前記信頼性試験において生じる内部応力を吸収できるため、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が大幅に向上する。
本発明において、回路部材としては半導体チップ、抵抗体チップ、コンデンサチップ等のチップ部品、プリント基板、ポリイミドやポリエステルを基材としたフレキシブル配線板等の基板等が用いられる。
これらの回路部材には接続端子が通常は多数(場合によっては単数でも良い)設けられており、前記回路部材の少なくとも1組をそれらの回路部材に設けられた接続端子の少なくとも一部を対向配置し、対向配置した接続端子間に接着剤を介在させ、加熱加圧して対向配置した接続端子どうしを電気的に接続して回路板とする。回路部材の少なくとも1組を加熱加圧することにより、対向配置した接続端子どうしは、直接接触により又は異方導電性接着剤の導電粒子を介して電気的に接続する。
半導体チップや基板の電極パッド上には、めっきで形成されるバンプや金ワイヤの先端をトーチ等により溶融させ、金ボールを形成し、このボールを電極パッド上に圧着した後、ワイヤを切断して得られるワイヤバンプなどの突起電極を設け、接続端子として用いることができる。
このように半導体チップの端子には、金、ニッケル、ハンダ等をめっきし突起電極としためっきバンプ、また金、アルミニウム等の金属ワイヤの先端を熱エネルギによりボール状としこのボールを接続端子が構成される半導体チップの電極パッド上に圧着した後前記金属ワイヤを切断して構成された突起電極であるボールバンプ、はんだボール、溶融はんだ成形バンプ、カラムの半田付け等による突起電極が使用できる。
本発明の接着剤を用いて半導体チップを半導体チップ端子に対応する電極(接続端子)が形成された基板(チップ実装用基板)に実装することができる。
このようなチップ実装用基板として、半導体チップ端子に対応する電極(接続端子)が形成された有機質絶縁基板が使用される。有機質絶縁基板としては、ポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂フィルム、又は、ガラスクロス、ガラス不織布等のガラス基材にポリイミド樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂等の合成樹脂を含浸し、硬化させた積層板等が使用される。
また、チップ実装用基板として、チップ端子と接続する電極、この電極が形成される表面絶縁層及び所定数層の絶縁層と前記各絶縁層を介して配置される所定数層の配線層と所定の前記電極・配線層間を電気的に接続する導体化された穴を有する多層配線板が使用でき、前記所定数層の絶縁層はガラス基材で補強された樹脂よりなり、前記表面絶縁層のDVE法で測定される弾性率をE1、ガラス基材で補強された樹脂よりなる絶縁層のDVE法で測定される弾性率をE2とすると
E1=0.01E2〜0.5E2
である多層配線板が好ましく使用される。
またこのような多層配線板であって、表面絶縁層のDVE法で測定される弾性率は、
25℃ 102〜104MP
100℃ 10〜103MP
であるものが好ましい。
このような多層配線板として、ガラスクロスを用いた絶縁層により構成された基材もしくは1層以上の導体回路を有する配線基板上に絶縁層と導体回路層とを交互に形成した、ビルドアップ多層基板が好ましい。
表面絶縁層は、樹脂フィルムを用いることができ、この樹脂フィルムはエポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、変成ポリフェニレンエーテル樹脂、フェノキシ樹脂、アミドエポキシ樹脂、フェノール樹脂やこれらの混合物、共重合物等のフィルムが、またポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、全芳香族液晶ポリエステル、フッ素系樹脂などの耐熱性熱可塑性エンジニヤリングプラスチックのフィルムが使用できる。
このような樹脂フィルム中に有機もしくは無機のフィラーを含むものが使用できる。
ガラス基材で補強された樹脂よりなる絶縁層としては、ガラスクロス、ガラス不織布等のガラス基材にエポキシ樹脂、フェノール樹脂等の樹脂を含浸し硬化させたプリプレグが使用できる。
チップ実装用基板として、チップ端子と接続する電極が絶縁基板表面に埋め込まれている配線基板が使用される。このような配線基板は、銅箔、ステンレス板等の導電性仮基板にニッケル薄層を形成し、電極が形成される箇所以外にメッキレジストを塗布し電気銅めっきを行い電極を形成し、電極の面にポリイミドフィルム、ガラス基材エポキシ樹脂プリプレグ等の絶縁層を押圧し銅電極を絶縁層中に埋め込み、導電性仮基板、ニッケル薄層を機械的、化学的に剥離・除去することにより得ることができる。また導電性仮基板にニッケル薄層、銅層を形成し、電極が形成される箇所にエッチングレジストを塗布しエッチングにより電極を形成し、以降は同様にして得ることもできる。このような配線基板では半導体チップのリペア性が向上する。
本発明の接着剤によれば、接続後の40℃での弾性率が100〜2000MPaとしたため、熱衝撃、PCTやはんだバス浸漬試験等の信頼性試験において生じる内部応力を吸収でき、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性が向上する。また、フィルム状の接着剤は、取扱性にも便利である。したがって、本発明の接着剤は、LCDパネルとTAB、TABとフレキシブル回路基板、LCDパネルとICチップ、ICチップとプリント基板とを接続時の加圧方向にのみ電気的に接続するために好適に用いられる。本発明の回路板は、信頼性試験後においても接続部での接続抵抗の増大や接着剤の剥離がなく、接続信頼性に優れる。
実施例1
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製,PKHC)50gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40部-エチルアクリレート30部-アクリロニトリル30部-グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)125gを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185、旭化成製、ノバキュアHX-3941)325gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにニッケル粒子(直径:5μm)を2容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、800MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)の位置合わせを行った。次いで、180℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、4.8μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で15mΩ、平均で8mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例2
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム175gを酢酸エチル525gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)275gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにニッケル粒子(直径:5μm)を2容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、400MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、3.8μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で20mΩ、平均で12mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験は1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例3
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム100gを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1200MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、5.0μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で8mΩ、平均で3mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験は1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例4
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム100gを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1200MPaであった。次に、作製した接着フィルム4を用いて、金バンプ(面積:50×50μm、スペース20μm、高さ:15μm、バンプ数362)付きチップ(1.7×1.7mm、厚み:0.5mm)とITO回路付きガラス基板(厚み:1.1mm)の接続を、以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をITO回路付きガラス基板に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとITO回路付きガラス基板の位置合わせを行った。次いで、180℃、40g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で150mΩ、平均で80mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(105℃、1.2気圧)100時間においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例5
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム125gを酢酸エチル400gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)325gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにニッケル粒子(直径:5μm)を2容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1000MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、バンプレスチップ(10×10mm、厚み:0.5mm、パッド電極:Al、パッド径:120μm)と回路上にNi/AuめっきCuバンプ(直径:100μm、スペース50μm、高さ:15μm、バンプ数:200)を形成したNi/AuめっきCuバンプ回路プリント基板の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプのAlバンプとNi/Auめっき付きプリント基板の位置合わせを行った。次いで、180℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、4.8μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で20mΩ、平均で15mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例6
フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイド社製,PKHC)50gと、アクリルゴム(ブチルアクリレート40部-エチルアクリレート30部-アクリロニトリル30部-グリシジルメタクリレート3部の共重合体、分子量:85万)50gを酢酸エチル233gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185、旭化成製、ノバキュアHX-3941)400gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにニッケル粒子(直径:5μm)を2容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1700MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板(厚み:0.8mm)の位置合わせを行った。次いで、180℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、5.7μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で7mΩ、平均で3mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例7
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム75gを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)375gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムaを作製した。
ついで、前記フィルム塗工用溶液の作製の中でAu層を形成した導電粒子を分散しない以外は同様な方法で作製したフィルム塗工用溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムbを作製した。さらに、得られた接着フィルムaとbを40℃で加熱しながら、ロールラミネータでラミネートした二層構成異方導電接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1400MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、5.3μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で7mΩ、平均で3.8mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好な接続信頼性を示した。
実施例8
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム100gを酢酸エチル350gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)350gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み30μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、1200MPaであった。
次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路埋め込みプリント基板(電極厚み:20μm、電極高さ:0μm、厚み:0.8mm)の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路埋め込みプリント基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、4.0μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で5mΩ、平均で1.5mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であった。ついで、チップ側からヒータ付ステンレスブロックでチップを10秒間、200℃に加熱し、チップに対してせんだん力を加えてチップを基板から剥離した。剥離後基板表面の接着フィルムの残さをアセトンを染みこました綿棒でこすり除去しリペアをおこなった。再びチップを剥離した基板に前記接着フィルムを用いて前記チップと同仕様のチップを新たに前記接続条件で本接続を行った。リペア接続後のチップの反りは、4.3μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、リペア接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で6mΩ、平均で1.8mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験1000サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)200時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後においても変化がなく、良好の接続信頼性を示した。
比較例1
フェノキシ樹脂100gを酢酸エチル230gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)186gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにニッケル粒子(直径:5μm)を2容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、2600MPaであった。図2にこの接着フィルム硬化物の弾性率及び誘電正接を測定した結果を示した。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(12×12mm)をNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、6.4μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で9mΩ、平均で2mΩ、絶縁抵抗は188Ω以上であったが、これらの値は-55〜125℃の熱衝撃試験200サイクル処理、PCT試験(121℃、2気圧)40時間、260℃のはんだバス浸漬10秒後において、電気的導通が不良になった。接続部の断面観察の結果、導通不良の接続部の一部で界面剥離が観察された。
比較例2
フェノキシ樹脂100gを230gの酢酸エチルに溶解した。ついで、この溶液にマイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)186gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散して、フィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み50μm)にロールコータで塗布し、80℃、10分乾燥し厚み25μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、2600MPaであった。次に、作製した接着フィルムを用いて、金バンプ(面積:50×50μm、362バンプ、スペース:20μm、高さ:15μm)付きチップ(1.7×17mm、厚み:0.5mm)とITOガラス基板(厚み:1.1mm)の接続を以下に示すように行った。接着フィルム(2mm×19mm)をITO回路付ガラス基板に80℃、10kgf/cm2で貼り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとITO回路付ガラス基板の位置合わせを行った。次いで、170℃、40g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後の接続抵抗は、1バンプあたり最高で180mΩ、平均で90mΩ、絶縁抵抗は108Ω以上であり、これらの値は-40〜100℃の熱衝撃試験1000サイクル処理後は殆ど変化はなかったが、PCT試験(105℃、1.2気圧)100時間では電気的導通が不良になった。接続部の断面観察の結果、異方導電フィルム/ガラス基板界面に導通不良の接続部の一部で界面剥離が観察された。
比較例3
フェノキシ樹脂50gと、実施例1と同じアクリルゴム250gを酢酸エチル533gに溶解し、30%溶液を得た。次いで、マイクロカプセル型潜在性硬化剤を含有する液状エポキシ(エポキシ当量185)200gをこの溶液に加え、撹拌し、さらにポリスチレン系核体(直径:5μm)の表面にAu層を形成した導電粒子を5容量%分散してフィルム塗工用溶液を得た。この溶液をセパレータ(シリコーン処理したポリエチレンテレフタレートフィルム、厚み40μm)にロールコータで塗布し、100℃、10分乾燥し厚み45μmの接着フィルムを作製した。この接着フィルムの硬化物の動的粘弾性測定器で測定した40℃の弾性率は、70MPaであった。次に、作製した接着フィルム(12×12mm)を用いて、金バンプ(面積:80×80μm、スペース30μm、高さ:15μm、バンプ数288)付きチップ(10×10mm、厚み:0.5mm)とNi/AuめっきCu回路プリント基板(電極高さ:20μm、厚み:0.8mm)に80℃、10kgf/cm2で張り付けた後、セパレータを剥離し、チップのバンプとNi/AuめっきCu回路プリント基板の位置合わせを行った。次いで、180℃、75g/バンプ、20秒の条件でチップ上方から加熱、加圧を行い、本接続を行った。本接続後のチップの反りは、1.6μm(チップ側に凸状の反り)であった。また、本接続後の接続抵抗を測定したところ、一部のバンプで接着剤の排除性低下に基づく導通不良があった。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-30 
出願番号 特願平10-505855
審決分類 P 1 651・ 536- YA (H05K)
P 1 651・ 113- YA (H05K)
P 1 651・ 537- YA (H05K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 大野 覚美
特許庁審判官 鈴木 久雄
柴沼 雅樹
登録日 2002-08-23 
登録番号 特許第3342703号(P3342703)
権利者 日立化成工業株式会社
発明の名称 回路接続用フィルム状接着剤及び回路板  
代理人 内山 充  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 寺崎 史朗  
代理人 長谷川 芳樹  
代理人 長谷川 芳樹  

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