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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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不服20056282 | 審決 | 特許 |
不服200627219 | 審決 | 特許 |
関連判例 | 平成16年(行ケ)78号審決取消請求事件平成17年(行ケ)10736号審決取消請求事件平成18年(行ケ)10366号審決取消請求事件平成19年(行ケ)10347号審決取消請求事件平成20年(行ケ)10144号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 一部無効 1項3号刊行物記載 無効としない A61M 審判 一部無効 2項進歩性 無効としない A61M |
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管理番号 | 1178786 |
審判番号 | 無効2002-35452 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2002-10-21 |
確定日 | 2008-06-05 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第2769592号「重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤の製造方法及び人工腎臓灌流用剤」の特許無効審判事件についてされた平成17年9月8日付けの「特許第2769592号の請求項7?10に係る発明についての特許を無効とする」との審決に対し,知的財産高等裁判所において「特許第2769592号の請求項9,10に係る発明についての特許を無効とするとの部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する」との判決(平成17年(行ケ)第10736号平成18年7月31日判決言渡)があったので,請求項9,10に係る発明についてさらに審理のうえ,次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第2769592号の請求項9、10に係る発明についての審判請求は、成り立たない。 審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。 |
理由 |
1.手続の経緯・本件発明 (1)本件特許第2769592号発明は平成4年12月14日に特許出願され,平成10年4月17日に特許権の設定の登録がされたものである。 これに対して,請求人によって,本件請求項7?10に係る発明の特許を無効にすべき旨の審判が請求され,平成16年1月26日付けで「本件審判の請求は,成り立たない。」との審決(第1次審決)がされた。これに不服の請求人が審決取消訴訟を提起し,東京高等裁判所において平成16年(行ケ)78号事件として審理され,平成16年12月21日に上記審決を取り消す旨の判決(第1次判決)があり同判決は確定した。そこで,さらに審理し,平成17年9月8日付けで,「特許第2769592号の請求項7?10に係る発明について特許を無効とする。」との審決(第2次審決)がされ,これに不服の被請求人が審決取消訴訟を提起し,知的財産高等裁判所において平成17年(行ケ)第10736号事件として審理され,平成18年7月31日に「特許第2769592号の請求項9,10に係る発明についての特許を無効とするとの部分を取り消す。原告のその余の請求を棄却する」との判決(第2次判決)が言い渡され,同判決は確定した。 (2)本件請求項9,10に係る発明は,その特許請求の範囲の請求項9,10に記載された次のとおりのものである。 【請求項9】塩化ナトリウム粒子の表面に塩化カリウム,塩化カルシウム,塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物及びブドウ糖を含むコーティング層を有し,かつ,複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物からなる顆粒状乃至細粒状の重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤。 【請求項10】さらに酢酸を含有してなる請求項9に記載の重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤。 2.請求人の主張の概要 請求人は,本件請求項9,10に係る発明は,本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない発明であり,また,本件請求項9,10に係る発明は,本件出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない発明であって,本件請求項9,10に係る発明の特許は,特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきであると主張し,証拠方法として下記の甲第1号証?甲第19号証を提出している。 (1)甲第1号証(特開平2-311418号公報) (2)甲第2号証(岡田教授らによる追試実験報告書I) (3)甲第3号証(株式会社パウレック「パウレック乾燥機」の製品カタログ,1989年9月) (4)甲第4号証(特公平4-75017号公報) (5)甲第5号証(岡田教授らによる追試実験報告書II) (6)甲第6号証(特願平4-353965号の出願審査過程において,平成9年8月7日に提出された意見書) (7)甲第7号証(特開平2-145522号公報) (8)甲第8号証(特開平3-275626号公報) (9)甲第9号証(特開平2-311419号公報) (10)甲第10号証(平成15年3月5日付け岡田陳述書) (11)甲第11号証(平成13年7月27日付け玉川実験報告書) (12)甲第12号証(平成14年6月20日付け玉川分析報告書) (13)甲第13号証(財団法人塩事業センター頒布「塩試験方法」) (14)甲第14号証(平成15年3月28日付け甲第10号証の訂正書) (15)甲第15号証の1?25 (流動層造粒法における排気温度と吸気温度について記載されている資料) (16)甲第16号証(薬業研究会編「保険薬事典,平成4年8月分」薬業時報社,平成4年8月10日,第403?405頁) (17)甲第17号証(平成15年10月4日付け甲斐実験報告書) (18)甲第18号証(月刊薬事,第21巻(第1号),1979年,第141?145頁) (19)甲第19号証(仲井由宣編「医薬品の開発 11巻」廣川書店,平成元年11月10日,第11頁) 3.被請求人の主張の概要 被請求人は,請求人が主張する無効理由はない旨主張し,下記の乙第1?13号証を提出している。 (1)乙第1号証(甲第1号証に係る出願の審査過程において提出された平成7年12月18日付意見書) (2)乙第2号証(日本粉体工業技術協会編「造粒ハンドブック」オーム社,平成3年3月10日,第283?348頁) (3)乙第3号証(名城大学砂田久一教授の実験報告書) (4)乙第4号証(東京大学幾原雄一助教授の製剤分析報告書) (5)乙第5号証(名城大学砂田久一教授の2003年4月26日付け陳述書) (6)乙第6号証(第八改正「日本薬局方第一部解説書」廣川書店,昭和47年1月15日,A-54頁) (7)乙第7号証(仲井由宣編「医薬品の開発 11巻」廣川書店,平成元年11月10日,第21?26頁) (8)乙第8号証(砂田久一教授の2003年4月26日付け意見書) (9)乙第9号証(粉体と工業,1974年2月号,第53?59頁) (10)乙第10号証(2003年9月12日報告書) (11)乙第11号証(日本粉体工業協会編「造粒便覧」オーム社,昭和50年5月30日,第87?130頁) (12)乙第12号証(透析フロンティア,第2巻(第4号),1992年11月15日,第9?20頁) (13)乙第13号証(ファルマシア,第11巻(第7号),1975年,第510?513頁) 4.対比・判断 本審決は請求項9,10に係る2つの発明について判断するものであるが,第1次及び第2次審決での表記に従い,以下、請求項9,10に係る発明をそれぞれ本件発明3,4という。 (1)本件発明3について ア.請求人は、本件発明3は本件出願前に頒布された刊行物である甲第9号証(特開平2-311419号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである旨主張しているので、以下検討する。 甲第9号証には、血液透析用製剤として使用される透析用固体電解質、ブドウ糖及び液体酸よりなる粉末状の第1の組成物を流動層法により製造する方法について、塩化ナトリウム及びブドウ糖の混合粉末を流動層造粒機内で流動させ、その流動層内に塩化ナトリウム以外の透析用固体電解質の水溶液を噴霧しながら造粒することが記載され(4頁左上欄)、 実施例には 「実施例2 塩化カリウム52.2部、塩化カルシウム[CaCl_(2)・2H_(2)O]77.2部、塩化マグネシウム[MgCl_(2)・6H_(2)O]35.6部および酢酸ナトリウム[CH_(3)COONa・3H_(2)O]357.2部を5倍量の水に溶解させて水溶液を得た。一方、塩化ナトリウム2188.7部およびブドウ糖525部をバーチカルグラニュレータに供給して攪拌混合して得られた粒状物を流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)内で流動させ、この流動層中に前記水溶液を噴霧させて増量した。このようにして得られた造粒物をバーチカルグラニュレータに供給し、更に酢酸41.5部を加えて攪拌混合した。」と記載されている。(5頁左上欄) 甲第9号証の実施例2は、甲第1号証の実施例2と同じ流動層造粒機(富士産業株式会社製STREA-15)を用いて同様な操作によって造粒を行っているのであるから、上記平成16年(行ケ)第78号判決(東京高等裁判所、平成16年12月21日言い渡し)(第1次判決)が、甲第1号証の実施例2で得られる造粒物について「造粒操作の過程を通じて,噴霧された電解質水溶液は,塩化ナトリウム粒子表面の相当部分に付着し,そのうち粒子同士の接触点に存在するものは結合剤として作用することによって,塩化ナトリウム粒子同士の凝集を主としてもたらすが,接触点以外の部分に存在するものは固結乾燥して被覆を形成する。そして,凝集が進んで粒径が大きくなると,それ以上凝集は進行せず,電解質水溶液は主として造粒物に対する被覆の形成に寄与するようになる,と考えられる。そうすると,造粒操作が完了した時点においては,塩化ナトリウム粒子の全表面が完全に被覆されるか,それには至らないまでも,表面の相当部分が被覆がされた造粒物が得られていると解するのが相当である。」(第5 取消事由1に関する当裁判所の判断、3、(2)、エ、(イ))と認定・判断するように、電解質水溶液の噴霧によって、流動している塩化ナトリウム及びブドウ糖の粒子の表面の少なくとも相当部分が被覆された造粒物が得られ、その被覆を介した粒子同士の結合が生ずるものと解され、また、造粒操作において噴霧された電解質のほぼ全量が塩化ナトリウム及びブドウ糖に対してほぼ一定の割合で付着し、塩化ナトリウム及びブドウ糖に対する各電解質化合物の割合も一定かつ特定の割合となっているものと解される。 そこで、本件発明3と甲第9号証の実施例2で得られた造粒物とを比較すると、両者は「塩化ナトリウムと塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムからなる電解質化合物及びブドウ糖を含む造粒物であって、塩化ナトリウムが電解質化合物を含むコーティング層を介して結合した顆粒状乃至細粒状の重炭酸透析用人工腎臓潅流用剤」である点で一致し、前者ではブドウ糖がコーティング層中に含まれるのに対して、後者では塩化ナトリウムとブドウ糖との粒状物をその他の電解質溶液で被覆して得られたものである点で相違する。 上記相違点について,上記平成17年(行ケ)第10736号判決(知的財産高等裁判所平成18年7月31日言い渡し)(第2次判決)は,以下のとおり判示している。なお,当該判決における刊行物2は,上記甲第9号証である。 「(2) 本件発明3と刊行物2との対比 ア本件審決は,本件発明3と刊行物2の実施例2で得られた造粒物とを比較すると,前者ではブドウ糖がコーティング層中に含まれるのに対して,後者では塩化ナトリウムとブドウ糖との粒状物をその他の電解質溶液で被覆して得られたものである点で相違する,と認定した上,かかる相違点の評価として,本件発明3は刊行物2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができた,と判断するので,以下検討する。 ・・・ キ以上によれば,当業者(その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者)は「コーティング層中にブドウ糖を含む造粒物」を容易に想到し得ると解すべき根拠がないということになるから,被告が主張するように,刊行物2の実施例2に記載されているような流動層造粒法を行うに際して,ブドウ糖粒子を塩化ナトリウム粒子とともに流動させて核粒子とするか,ブドウ糖を噴霧液の成分として溶解させて流動層に噴霧するかは,当業者が適宜採用できた設計事項であるとすることはできない。 ・・・ (3) 以上によれば,本件審決のうち,本件発明3の進歩性を否定した判断には誤りがあり,したがって,本件発明3を引用して本件発明4の進歩性を否定した判断にも,同様の理由により,誤りがあることになり,取消事由3は理由がある。」(第4 当裁判所の判断、4 取消事由3について) 当審の審理は上記平成17年(行ケ)第10736号判決(第2次判決)の判断に拘束されるものである。 よって,本件発明3は,甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたとする請求人の主張は採用できない。 イ.請求人は,本件発明3は甲第8号証(特開平3-275626号公報)に記載された発明と同一であるかまたはそれから容易になし得る程度のものである旨主張しているので,以下検討する。 請求人は,「甲第8号証(特開平3-275626号公報)には,その特許請求の範囲(6)に,電解質成分を,重曹を含まない群(造粒されたA剤)と重曹を含む群(B群)とに分け,使用時にA剤とB剤を混合して用いる重曹透析用剤が記載されている。また,実施例1では塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウム・2水和物,塩化マグネシウム 6水和物,酢酸ナトリウムの電解質粉末にブドウ糖粉末を混合し少量の水を添加して湿式造粒して造粒物を得る方法が示されている。この方法により得られた造粒物は,塩化ナトリウム粒子とその他の成分の粒子が均一に混合され,湿式造粒されたものであるので,塩化ナトリウム粒子は他の電解質化合物の粒子と密に接触しているし,また造粒物は複数個の塩化ナトリウム粒子が他の成分の粒子を介して結合した物であるので,本件請求項9 の塩化ナトリウム粒子表面に電解質化合物及びブドウ糖を含むコーティング層を有し,かつ,複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物と区別できない。」と主張している。 そこで甲第8号証の記載について検討する。甲第8号証の4頁左上欄には「実施例1 それぞれ平均粒径50μm程度に粉砕された塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウム2水和物,塩化マグネシウム6水和物,酢酸ナトリウムおよびブドウ糖を下記の比率で混合し,さらに乾燥基準で1.5重量%の水を添加して混合した。 NaCl 74.7110重量% KCl 1.7943 〃 CaCl_(2)・2H_(2)O 2.2839 〃 MgCl_(2)・6H_(2)O 1.2408 〃 CH_(3)COONa 7.9296 〃 ブドウ糖 12.0404 〃 該混合物を押し出し造粒機を用いて造粒し,直径0.5mm,長さ1?10mmの円柱状の粒子を100kg得た。次に,温度50℃に調整された回分式箱型乾燥機に前記粒子を入れ3時間乾燥した。その後さらに,氷酢酸を1.5重量%加えて,これをA剤とした。」と記載されており,これによると,塩化ナトリウム,塩化カリウム,塩化カルシウム2水和物,塩化マグネシウム6水和物,酢酸ナトリウムおよびブドウ糖を特定の比率で混合し,さらに乾燥基準で1.5重量%の水を添加して混合し,押し出し造粒機を用いて造粒し,直径0.5mm,長さ1?10mmの円柱状の粒子を100kg得,温度50℃に調整された回分式箱形乾燥機に前記粒子を入れ3時間乾燥し,氷酢酸を1.5重量%加えて,これをA剤としたことが記載されていることが認められるものの,甲第8号証は,塩化ナトリウム粒子の表面に電解質化合物及びブドウ糖を含むコーティング層を有し,かつ,複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物とすることを記載したものではない。 したがって,本件発明3は甲第8号証に記載された発明と同一であるという請求人の主張は採用できない。 また,本件発明3は,成分組成が均一な粉末状(顆粒状乃至細粒状)のA剤を提供するという課題を解決することを目的とするものであるが(本件特許明細書段落【0007】),甲第8号証には,かかる課題を解決するために,本件発明3のように,塩化ナトリウム粒子の表面に電解質化合物及びブドウ糖を含むコーティング層を有し,かつ,複数個の塩化ナトリウム粒子が該コーティング層を介して結合した造粒物とすることは,記載されていないし示唆もされていない。 したがって,本件発明3は甲第8号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるという請求人の主張は採用できない。 (2)本件発明4について 本件発明4は,本件発明3の構成に欠くことのできない事項の全てを含み,さらに,酢酸を含むものであるから,上記(1)に記載したと同様の理由で,本件発明4が,甲第8号証に記載された発明であるとも,甲第8号証又は甲第9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。 6.むすび 以上のとおりであるから,請求人の主張及び証拠方法によっては,本件特許の請求項9,10に係る発明の特許を無効とすることはできない。 審判に関する費用については,これを通算し、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、その2分の1を請求人が負担し、2分の1を被請求人が負担するものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-12-17 |
結審通知日 | 2003-12-22 |
審決日 | 2005-09-08 |
出願番号 | 特願平4-353965 |
審決分類 |
P
1
122・
113-
Y
(A61M)
P 1 122・ 121- Y (A61M) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 淑久、松本 貢 |
特許庁審判長 |
塚中 哲雄 |
特許庁審判官 |
川上 美秀 穴吹 智子 |
登録日 | 1998-04-17 |
登録番号 | 特許第2769592号(P2769592) |
発明の名称 | 重炭酸透析用人工腎臓灌流用剤の製造方法及び人工腎臓灌流用剤 |
代理人 | 藤井 淳 |
代理人 | 志村 尚司 |
代理人 | 村林 隆一 |
代理人 | 三枝 英二 |
代理人 | 齋藤 健治 |
代理人 | 岩坪 哲 |
代理人 | 谷 良隆 |
代理人 | 近藤 恵嗣 |