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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1349246 |
審判番号 | 不服2015-14737 |
総通号数 | 232 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2019-04-26 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-06 |
確定日 | 2019-03-01 |
事件の表示 | 特願2012-518831「移動ロボットのコンテキスト動作を生成するためのシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 1月13日国際公開、WO2011/003628、平成24年12月13日国内公表、特表2012-532390〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は,2010年7月12日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2009年7月10日(以下,「優先日」という。),フランス共和国)を国際出願日とする出願であって,平成26年5月12日付けの拒絶理由通知に対して平成26年10月31日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたが,平成27年4月9日付けで拒絶査定がなされ,これに対して平成27年8月6日に拒絶査定不服審判の請求がなされ,平成28年6月22日付けの当審の拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)に対して,平成28年12月27日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成28年12月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「少なくとも1台のロボット(10)の動作を,グラフィカル・インターフェースへのアクセスを有するユーザによって編集および制御するためのシステムであって,前記ロボットによって話されるテキストを編集するモジュール(20)と,前記テキストを合成するための音声合成モジュール(30)と,前記ロボットによって実行される動作のためのコマンド・タグのライブラリ(40)と,前記テキストに前記タグを挿入するためのモジュール(50)と,前記ロボットの前記動作を生成し制御するためのモジュール(60A,60B)とを含み,前記コマンド・タグは,前記動作を表現する図形的なシンボルを含み,前記システムは,前記ライブラリにおけるコマンド・タグの少なくとも一つの選択を許容するように構成されており,前記ライブラリは,話されるべき前記テキストとは別個であり,ツリー構造を有しており,前記図形的なシンボルに一致する動作であって,言葉を話すことと同時の動作の実行を開始するために,前記テキストの言葉の連鎖の中に前記タグの挿入がなされることを特徴とするシステム。」 3.引用例 (1)引用例1に記載されている技術的事項及び引用発明 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,当審拒絶理由通知において引用された,特開2003-308142号公報(2003年10月31日公開,以下,「引用例1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) A 「【0002】 【従来の技術】従来,メッセージの解析結果に基づいてロボットの動作を制御する技術としては,例えば,特開平11-327872号公報に開示された電子メール端末(以下,第1の従来例という。)があった。第1の従来例は,ネットワークに接続され,ネットワークインタフェースを有する動物型ロボットを備え,ネットワークから受信した電子メールをユーザに提示する端末である。具体的には,ネットワークを介して電子メールを受信する受信部と,受信した電子メールを解析する電子メール解析部と,電子メール解析部の解析結果に基づいてロボットの矩体全体または矩体に属する部分を動かすよう制御する動作制御部で構成されている。動作制御部は,電子メール解析部で解析した電子メールの内容を読み上げるとともに,ロボットの矩体の正面をユーザの位置に向けて,効果音を出力するとともに,電子メール解析部で解析した電子メールの内容に含まれる顔文字によって,ロボットの矩体全体または矩体に属する部分を動かすよう制御する。 【0003】これにより,従来,読み上げ時に無視されていた顔文字をロボットの動作として表現することができ,電子メールの文章の曖昧性を排除できる。また,動作プログラムを工夫することによって,文章では伝わりにくい感情や雰囲気などを伝えることも可能となり,電子メールを使ったコミュニケーションを豊かにすることができる。」 B 「【0016】さらに,本発明に係る請求項2記載のメッセージ処理システムは,メッセージを送信するメッセージ送信端末と,前記メッセージを処理するメッセージ処理設備とを通信可能に接続し,前記メッセージ処理設備は,動作可能なロボットを有し,受信したメッセージを解析し,その解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるとともにその読上に対応させて前記ロボットの動作を制御するシステムであって,前記メッセージ送信端末は,前記ロボットの動作を制御するための動作制御情報を前記メッセージ中の文字列と対応付けて前記メッセージに埋め込む動作制御情報埋込手段と,前記動作制御情報埋込手段で前記動作制御情報を埋め込んだメッセージを前記メッセージ処理設備に送信するメッセージ送信手段とを有し,前記メッセージ処理設備は,受信したメッセージを解析するメッセージ解析手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるメッセージ読上手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段とを有し,前記ロボット制御手段は,前記メッセージに含まれる動作制御情報に基づいて,当該動作制御情報に対応する文字列の読上に対応させて前記ロボットを動作させるようになっている。 (途中省略) 【0018】ここで,メッセージ処理設備は,ロボットのみで構成してもよいし,ロボットおよびロボットの動作を制御する制御装置の組み合わせにより構成してもよい。前者の場合,ロボットは,メッセージ解析手段,メッセージ読上手段およびロボット制御手段を有することとなる。以下,請求項20記載のメッセージ処理設備,および請求項25記載の設備用プログラムにおいて同じである。」 C 「【0071】一方,動作制御情報は,電子メールにも埋め込むことができる。この場合,電子メールは,図6および図7に示すように,マークアップ言語形式に従ったデータ構造となる。図6および図7は,動作制御情報を埋め込んだ電子メールのデータ構造を示す図である。図6においては,「こんにちは」という対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付けている。また,「笑っちゃいました」という対象文字列の先頭に開始制御タグ<laugh>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</laugh>を,制御タグ<!Joint AngleData!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<laugh>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付けている。なお,動作制御情報の書式については,s1が左辺となる演算式の右辺に記述されている内容がフィールド454の登録内容に対応し,s2が左辺となる演算式の右辺に記述されている内容がフィールド456の登録内容に対応し,s3が左辺となる演算式の右辺に記述されている内容がフィールド458の登録内容に対応している。」 D 「【0089】一方,ステップS302で,スタートボタンが押下されないと判定したとき(Yes)は,スタートボタンが押下されるまでステップS302で待機する。次に,本実施の形態の動作を説明する。初めに,電子メールを送信する場合を説明する。電子メール処理端末200では,電子メールの作成が要求されると,電子メール送信処理が実行される。ここで,ユーザは,まず,電子メールとして送信したい文章を入力する。そして,入力した文章に対して動作制御情報を対応付けるには,動作制御情報の設定要求を入力し,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定し,記憶装置42のなかから動作制御情報を選択する。 【0090】電子メール処理端末200では,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,ステップS106を経て,選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれる。」 E 「【図6】 ![]() 」 ここで,上記引用例1に記載されている事項を検討する。 (ア)引用例1の上記Bの段落【0016】には,「メッセージを送信するメッセージ送信端末と,前記メッセージを処理するメッセージ処理設備とを通信可能に接続し,前記メッセージ処理設備は,動作可能なロボットを有し,受信したメッセージを解析し,その解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるとともにその読上に対応させて前記ロボットの動作を制御するシステム」との記載がある。 (イ)引用例1の上記Bの段落【0016】には,「前記メッセージ送信端末は,前記ロボットの動作を制御するための動作制御情報を前記メッセージ中の文字列と対応付けて前記メッセージに埋め込む動作制御情報埋込手段と,前記動作制御情報埋込手段で前記動作制御情報を埋め込んだメッセージを前記メッセージ処理設備に送信するメッセージ送信手段とを有し」との記載がある。 (ウ)上記Dの段落【0089】の「電子メールを送信する場合・・・ユーザは,まず,電子メールとして送信したい文章を入力する・・・入力した文章に対して動作制御情報を対応付けるには,動作制御情報の設定要求を入力し,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定し,記憶装置42のなかから動作制御情報を選択する・・・電子メール処理端末200では,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,・・・選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれる」との記載と,上記(ア)及び(イ)において検討した事項から, 引用例1には,「メッセージとして,電子メールを送信する場合,ユーザは,電子メールとして送信したい文章を入力し,この入力した文章に対して,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定するとともに,記憶装置のなかから動作制御情報を選択し,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれ」ることが記載されているものと認められる。 (エ)上記Cの段落【0071】の「動作制御情報は,電子メールにも埋め込むことができる・・・図6においては,「こんにちは」という対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付けている」との記載,及び上記Eに引用した図6の記載から, 引用例1には,「電子メールの対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付け」ることが記載されているものと認められる。 (オ)引用例1の上記Bの段落【0016】には,「前記メッセージ処理設備は,受信したメッセージを解析するメッセージ解析手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるメッセージ読上手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段とを有する」旨の記載がある。 以上の(ア)?(オ)の検討から,引用例1には,次のとおりの発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 「メッセージを送信するメッセージ送信端末と,前記メッセージを処理するメッセージ処理設備とを通信可能に接続し,前記メッセージ処理設備は,動作可能なロボットを有し,受信したメッセージを解析し,その解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるとともにその読上に対応させて前記ロボットの動作を制御するシステムであって, 前記メッセージ送信端末は,前記ロボットの動作を制御するための動作制御情報を前記メッセージ中の文字列と対応付けて前記メッセージに埋め込む動作制御情報埋込手段と,前記動作制御情報埋込手段で前記動作制御情報を埋め込んだメッセージを前記メッセージ処理設備に送信するメッセージ送信手段とを有し, メッセージとして,電子メールを送信する場合,ユーザは,電子メールとして送信したい文章を入力し,この入力した文章に対して,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定するとともに,記憶装置のなかから動作制御情報を選択し,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれ,電子メールの対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付け, 前記メッセージ処理設備は,受信したメッセージを解析するメッセージ解析手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるメッセージ読上手段と,前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段とを有する, システム。」 (2)引用例2に記載されている技術的事項 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,当審拒絶理由通知において引用された,特開平11-327872号公報(1999年11月30日公開,以下,「引用例2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) F 「【0022】次に,上記の構成における動作を説明する。図4は,本発明の電子メール端末の動作のフローチャートである。 ステップ101) 受信部1によりネットワークインタフェースを介して電子メールを受信する。 ステップ102) (省略) 【0023】ステップ103) (省略) ステップ104) (省略) 【0024】ステップ105) 第二解析部3では,格納部9に格納された対応プログラムによって,電子メールを解析し,特定の記号列(例えば,スマイリー)によって動作発生のタイミングを計算し,制御部8に渡す。また,音声の抑揚を計算し,読み上げ部5に転送する。 ステップ106) (省略) 【0025】ステップ107) 読み上げ部5は,制御部8からの信号によって,ステップ105で求められた抑揚に沿って電子メールの内容の読み上げを実行する。 ステップ108) 動作部7は,制御部8からの信号によって格納部9に格納されている動作プログラムを実行することによって,計算されたタイミングに従って,ロボットの手足体を動かす。 【0026】ステップ109) 読み上げ部5による読み上げが終了した場合には,処理を終了し,読み上げが実行されている途中であれば,ステップ106に移行する。」 G 「【図6】 ![]() 」 (3)引用例3に記載されている技術的事項 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となり,当審拒絶理由通知において引用された,特開2002-127062号公報(2002年5月8日公開,以下,「引用例3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) H 「【0036】<入力メールテキスト例>(途中省略)この中から,タグの手掛かりとなる単語(以下,手掛かり単語と略す)を抽出し,感情タグ情報を取得する。 (途中省略) 【0037】なお,感情タグ情報に対応する手掛かり単語の例としては表1に示すようなものが考えられる。 【表1】 ![]() (途中省略) 【0038】そして,本発明においては,前記形態素解析により取得した感情タグ情報に対応してロボットを動作させるために,予め,感情タグ情報に対応付けて,ロボットの関節駆動用モータ(第1の実施の形態ではサーボモータ26)に対する指令値(モータ番号,位置,速度,時間)の時系列を設定しておき,これをジェスチャデータベースに格納しておく。(以下省略)」 (4)参考文献1に記載されている技術的事項 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった 特開2006-23952号公報(2006年1月26日公開,以下,「参考文献1」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) I 「【0026】 本実施の形態では,常にロボット装置を介してコンテンツが利用される。すなわち,例えばユーザ自身がコンテンツを利用するのではなく,ロボット装置がテキスト文を話し,或いはダンスを披露する。これは,ウェブブラウジングにおいてユーザがコンピュータを道具としてインターネット上で利用可能なコンテンツにアクセスし利用するのと同様である。さらに,要求モジュール10の説明の際にも述べたように,ロボット装置は,自己のために自然要求を生成することができるため,ユーザがコンテンツのライフサイクルに全く関与しない場合もあり得る。換言すれば,本実施の形態におけるロボット装置は,コンテンツのライフサイクルに関してパーソナルコンピュータの場合よりも積極的な役割を担っている。」 (5)参考文献2に記載されている技術的事項 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった 特開2004-283943号公報(2004年10月14日公開,以下,「参考文献2」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) J 「【0071】 また中央の『“こんにちは”』等の文字はロボットが発話すべき発話内容を表しており,その右横の『話し掛ける』等の文字はそのときのロボットが発現すべき動作を表している。さらに一番右の数値は,次に再生すべき発話内容の番号(一番左の数値)を示す。」 (6)参考文献3に記載されている技術的事項 本願の優先日前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,「Dreamweaver逆引きデザイン事典 初版 -CS3/8/MX2004対応-」,株式会社翔泳社,2007年11月12日(以下,「参考文献3」という。)には,関連する図面とともに,以下の技術的事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。) K 「215 挿入したいタグを一覧メニューから選択する タグの機能によって分類されたツリーからタグを選択して,挿入できます。 STEP 01 [挿入]メニューから[タグ]を選択し,[タグ選択]ダイアログを表示します。[タグ選択]ダイアログでは左のツリーより挿入したいタグのカテゴリを選択します(1)(当審注:原文で黒丸に白抜きの数字は,括弧付きの数字で表記した。以下,同じ。)。右に候補が表示されるので,左のツリーから候補を絞り込みます(2)。 STEP 02 [挿入]ボタンをクリックすると,[タグエディタ]ダイアログが表示されますので,挿入するタグの属性を設定します。 STEP 03 [タグエディタ]ダイアログを閉じると,ドキュメント上にタグが挿入されます(5)。タグの挿入を終了する場合は,[閉じる]ボタンをクリックします(6)。」(第277頁1行?末行) L 「 ![]() 」 M 「 ![]() 」 N 「 ![]() 」 4.対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (ア)引用発明の「メッセージを送信するメッセージ送信端末と,前記メッセージを処理するメッセージ処理設備とを通信可能に接続し,前記メッセージ処理設備は,動作可能なロボットを有し,受信したメッセージを解析し,その解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるとともにその読上に対応させて前記ロボットの動作を制御するシステム」(前者)と 本願発明の「少なくとも1台のロボット(10)の動作を,グラフィカル・インターフェースへのアクセスを有するユーザによって編集および制御するためのシステム」(後者) とを対比すると, 引用発明の「ロボット」は,動作制御情報によってその動作が制御されるものである点で本願発明の「ロボット」に相当し, 引用発明では,「メッセージとして,電子メールを送信する場合,ユーザは,電子メールとして送信したい文章を入力し,この入力した文章に対して,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定し」ていることから,当該電子メールを入力する“ユーザ”が,“グラフィカル・インターフェースへのアクセスを有する”ことは明らかであり, また,引用発明の“システム”は,電子メールを“編集”することによって動作制御情報を埋め込み,この動作制御情報によって,“ロボットの動作”を“制御”するものであるから, 前者と後者とは, 「少なくとも1台のロボットの動作を,グラフィカル・インターフェースへのアクセスを有するユーザによって編集および制御するためのシステム」 である点で一致する。 (イ)引用発明の「メッセージ送信端末」は,“電子メールとして送信したい文章”,すなわち“テキスト”を入力する機能を有しているから,引用発明の「メッセージ送信端末のテキストを入力する機能」が本願発明の「テキストを編集するモジュール」に相当する。 (ウ)引用発明の「前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記メッセージの内容を音声により読み上げるメッセージ読上手段」は,受信したメッセージ,すなわち,“電子メールのテキスト”を音声に変換して読み上げるものであり,音声を“合成”しているということができるから,本願発明の「テキストを合成するための音声合成モジュール」に相当する。 (エ)引用発明では,「動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定するとともに,記憶装置のなかから動作制御情報を選択し,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれ,電子メールの対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付け」ているところ,引用発明の「開始制御タグ」や「終了制御タグ」は,ロボットに所定の動作を行わせるために文章中に挿入されるものである点で本願発明の「コマンド・タグ」に相当するものである。 そして,これらの“開始制御タグ”や“終了制御タグ”に対応する“動作制御情報”を“記憶装置”のなかから“選択”する際には,同時に“開始制御タグ”や“終了制御タグ”自体も選択されているものと認められるから,引用発明の“動作制御情報”を“選択”するための“記憶装置”は,“ロボットによって実行される動作”のための“コマンド・タグ”の“ライブラリ”を有しているということができる。 また,上記の検討から,引用発明の“システム”は,「ライブラリにおけるコマンド・タグの少なくとも一つの選択を許容するように構成されて」いるということもできる。 さらに,この“ライブラリ”は,そこから“コマンド・タグ”を選択するためのものであるから,これが,“電子メールの文章”すなわち“話されるべきテキスト”と“別個”のものであることは明らかである。 (オ)引用発明の「ロボットの動作を制御するための動作制御情報を前記メッセージ中の文字列と対応付けて前記メッセージに埋め込む動作制御情報埋込手段」は,メッセージ中の文字列,すなわち“テキスト”に,対応付けて,動作制御情報を埋め込むものであり,その際,文字列の前後に,「開始制御タグ」や「終了制御タグ」が“挿入”されるものであるから,引用発明の「ロボットの動作を制御するための動作制御情報を前記メッセージ中の文字列と対応付けて前記メッセージに埋め込む動作制御情報埋込手段」が本願発明の「テキストにタグを挿入するためのモジュール」に相当する。 (カ)引用発明の「受信したメッセージを解析するメッセージ解析手段」及び「前記メッセージ解析手段の解析結果に基づいて前記ロボットの動作を制御するロボット制御手段」が本願発明の「ロボットの動作を生成し制御するためのモジュール」に相当する。 (キ)引用発明では,「電子メールの対象文字列の先頭に開始制御タグ<greet>を,同対象文字列の末尾に終了制御タグ</greet>を,制御タグ<!JointAngle Data!>よりも後方であって動作制御情報の先頭に開始制御タグ<greet>をそれぞれ挿入することにより動作制御情報を同対象文字列と対応付け」ることによって,対象文字列が読み上げられると同時に,動作制御情報に対応した動作をロボットに実行させるものであるから, 引用発明の「システム」と 本願発明の「システム」とは, 「言葉を話すことと同時の動作の実行を開始するために,テキストの言葉の連鎖の中にタグの挿入がなされる」 ものである点で一致する。 そうすると,本願発明と引用発明とは, 「少なくとも1台のロボットの動作を,グラフィカル・インターフェースへのアクセスを有するユーザによって編集および制御するためのシステムであって, テキストを編集するモジュールと, 前記テキストを合成するための音声合成モジュールと, 前記ロボットによって実行される動作のためのコマンド・タグのライブラリと, 前記テキストに前記タグを挿入するためのモジュールと, 前記ロボットの前記動作を生成し制御するためのモジュールとを含み, 前記システムは,前記ライブラリにおけるコマンド・タグの少なくとも一つの選択を許容するように構成されており,前記ライブラリは,話されるべき前記テキストとは別個であり,言葉を話すことと同時の動作の実行を開始するために,前記テキストの言葉の連鎖の中に前記タグの挿入がなされることを特徴とするシステム。」 の点で一致し,次の点で相違する。 [相違点1] テキストに関して, 本願発明のテキストは,「前記ロボットによって話される」ものであるのに対して, 引用発明のテキストは,メッセージ処理設備が有するメッセージ読上手段によって読み上げられるものである点。 [相違点2] コマンド・タグに関して, 本願発明の「コマンド・タグ」は,「動作を表現する図形的なシンボルを含」み,言葉を話すことと同時の動作が,「前記図形的なシンボルに一致する動作」であるのに対して, 引用発明の開始制御タグや終了制御タグは,図形的なシンボルを含むものではない点。 [相違点3] ライブラリに関して, 本願発明では,ライブラリが「ツリー構造を有して」いるのに対して, 引用発明では,そのような特定はなされていな点。 5.当審の判断 上記相違点について検討する。 [相違点1]について ロボットの動作を制御する構成において,ロボットがテキストの内容を発話するように構成することは,参考文献1(上記Iの記載を参照)や参考文献2(上記Jの記載を参照)に記載されているように本願の優先日前に既に周知の技術事項であったと認められるから,引用発明において,メッセージ読上手段によって読み上げられるテキストを,ロボットによって話されるものとすることは,当業者が適宜なし得たことである。 [相違点2]について 引用例1(上記Aの記載を参照)には,「電子メールの内容に含まれる顔文字によって,ロボットの矩体全体または矩体に属する部分を動かすよう制御する」ことが記載され,また,引用例2(上記F及びGの記載を参照)には,電子メールに含まれるスマイリーと呼ばれる記号列によって,ロボットの動作を制御することが記載され,さらに,引用例3(上記Hの記載を参照)には,メールテキストに含まれる顔文字を「手掛かり単語」として抽出し,これを用いてロボットを動作させることが記載されているように,ロボットの動作を制御するためにテキスト中に挿入されるタグとして,「図形的なシンボル」を用いることは本願の優先日前に既に周知の技術事項であったと認められる。 してみれば,引用発明において,電子メールの文章中に挿入してロボットの動作を制御するためのタグとして,図形的なシンボルを含むようにし,言葉を話すことと同時の動作が,前記図形的なシンボルに一致する動作となるように構成することは当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点3]について 例えば参考文献3(上記K?Nの記載を参照)にも記載されているように,データをツリー構造の形式で管理することは,当業者には広く知られた周知の技術事項であるから,引用発明において,上記周知の技術事項を採用して,記憶装置で管理されている開始制御タグや終了制御タグの情報をツリー構造の形式で管理するように構成することは,当業者が容易に想到し得たことである。 そして,本願発明の作用効果も,引用発明及び周知の技術事項から当業者が予測できる範囲のものである。 したがって,本願発明は,引用発明及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.審判請求人の主張について 審判請求人は,平成28年12月27日付けの意見書において, 「加えて,引用文献1記載の発明は,電子メールを読み上げるロボットに関するものであり,電子メール中のテキスト中にある特定の文字列(たとえば「面白い」)を自動的に検出し,上記特定文字列(「面白い」)に対応する動作制御情報(「Laugh act」)に基づいて,ロボットに,電子メールを読み上げる行動とともに,「笑い」の動作をさせるというものである。 このように,引用文献1は,「笑い」のコマンド・タグへのアクセス権,選択権は,ユーザにはなく,全て自動的にロボットの制御がなされるというものである。引用文献1では,特定文字列(「面白い」)に対応する動作制御情報を任意に選択したり,アクセスしたりする権限はなく,動作制御情報(「Laugh act」)が強制的かつ自動的に付与されることになる。 いうなれば, a)引用文献1は,ユーザ側に,「笑い」というコマンド・タグへのアクセス権,選択権を与えることを否定している技術文献である。 b)そして,原査定で審査官殿が御引用された周知技術(引用文献10,11,12)は,いずれも文章中に挿入するグラフィカルインターフェースに関する一般的な技術を開示する文献であって,絵文字を選択してそれをロボットの動作に関連付けるという記載は一切開示されていない。 上記a),b)の分析からみて,引用文献1は,いずれも本発明を想起するに際して阻害要因があることは明白である。すなわち,引用文献1をみた当業者は,ユーザ側に,「笑い」というコマンド・タグへのアクセス権,選択権を与えるということが阻害されるものであり(なぜならば,引用文献1は,ユーザ側に,「笑い」というコマンド・タグへのアクセス権,選択権を与えることを否定しているから),一方で,周知技術についても,それをみた当業者は,絵文字を選択してそれをロボットの動作に関連付けることが阻害されるものである(なぜならば周知技術には,絵文字を選択してそれをロボットの動作に関連付ける記載はないから)。 よって,引用文献1をみた当業者が,引用文献1に示される阻害要因に逆らってまで,請求項1に係る本発明を想起するという論理付けは,成り立たないものである。」(第4頁下から10行?第5頁17行) と主張している。 上記主張について検討する。 引用発明は電子メールに係る発明であり,受信したメールは自動的に解析されてロボットの動作が制御されるものであるから,受信側のユーザからみれば,確かに,『「笑い」のコマンド・タグへのアクセス権,選択権は,ユーザにはな』いといえないこともない。 しかしながら,審決の引用発明は,送信側のユーザは電子メールを作成して,その電子メールの中に動作制御情報を埋め込むことができるという点であって, 引用発明の「メッセージとして,電子メールを送信する場合,ユーザは,電子メールとして送信したい文章を入力し,この入力した文章に対して,動作制御情報を対応付けるべき文字列をマウス等で指定するとともに,記憶装置のなかから動作制御情報を選択し,文字列が指定され,動作制御情報が選択されると,選択された動作制御情報が指定文字列と対応付けられて作成中の電子メールに埋め込まれ」という記載からすれば,メール送信側のユーザはメールを自由に編集することができ,メール中の任意の文字列を指定して,その文字列に対応させて動作制御情報を埋め込むことができることは明らかであるから, 送信側のユーザからみれば,『「笑い」のコマンド・タグへのアクセス権,選択権は,ユーザにはな』いとはいえない。 したがって,審判請求人の上記主張は採用することができない。 7.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知の技術事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,本願は他の請求項について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-04-27 |
結審通知日 | 2017-05-02 |
審決日 | 2017-05-16 |
出願番号 | 特願2012-518831(P2012-518831) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 坂庭 剛史 |
特許庁審判長 |
石井 茂和 |
特許庁審判官 |
須田 勝巳 辻本 泰隆 |
発明の名称 | 移動ロボットのコンテキスト動作を生成するためのシステムおよび方法 |
代理人 | 木村 高久 |