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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C |
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管理番号 | 1195098 |
審判番号 | 不服2007-8010 |
総通号数 | 113 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2009-05-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-03-19 |
確定日 | 2009-03-04 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第527841号「ステレオリソグラフィーにおける高度な構成技術」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年11月 2日国際公開、WO95/29053、平成 9年12月 9日国内公表、特表平 9-512220〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、1995年4月25日(パリ条約による優先権主張1994年4月25日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年4月12日付けで拒絶理由が通知され、同年10月19日付けで手続補正書が提出され、同年12月21日付けで拒絶理由(最後)が通知され、平成18年4月10日付けで意見書が提出されたが、同年12月8日付けで拒絶査定がなされた。これに対して、平成19年3月19日に審判請求がなされ、同年4月18日に手続補正書が提出され、同年6月8日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、平成19年7月18日付けで前置報告がなされ、当審において平成20年3月24日付けで審尋がなされたものである。(なお、前記審尋に対して、回答書は提出されていない。) 第2.平成19年4月18日付けの手続補正についての補正却下の決定 1.補正却下の決定の結論 平成19年4月18日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。 2.理 由 (1)補正の内容 本件手続補正は、審判請求の日から30日以内にされた補正であり、平成17年10月19日付けの手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び4に関しては、 「1.コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記複数の多角形の頂点のリストを編集する工程であって、二つ以上の多角形により共有されるそれぞれの頂点が一度だけリストアップされる工程; 固有の識別子で前記リスト中の前記頂点のそれぞれを表示する工程; 前記頂点の前記固有の識別子を使用して前記複数の多角形を再定義する工程; および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程; を有し、 前記リスト構成の結果として、第1の多角形の第1の頂点の調節により前記同じ頂点を共有する第2の多角形について前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記多角形データが、対象物の形成に使用するために適応される ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。」 との記載を、 「【請求項1】 コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記複数の多角形の頂点のリストを編集する工程であって、二つ以上の多角形により共有されるそれぞれの頂点が一度だけリストアップされる工程; 固有の識別子で前記リスト中の前記頂点のそれぞれを表示する工程; 前記頂点の前記固有の識別子を使用して前記複数の多角形を再定義する工程;および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さに少なくとも一部相当する分だけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程; を有し、 前記リスト構成の結果として、第1の多角形の第1の頂点の調節により前記同じ頂点を共有する第2の多角形について前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記多角形データが、対象物の形成に使用するために適応される ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。」 と補正し、 「4.コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記目的物を表示する複数の多角形および該複数の多角形のための頂点のリストを受け取る工程であって、前記リストが、それぞれの固有の頂点について固有の識別子を含む工程;および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調節する工程; を有し、 第1の多角形の第1の頂点についての位置成分の調節により、前記同じ頂点を共有する第2の多角形の前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記リストが、最終的に固化可能な媒体の複数の連続的に固化された層から3次元対象物を形成するために使用されるデータを含む ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。」 との記載を、 「【請求項4】コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記目的物を表示する複数の多角形および該複数の多角形のための頂点のリストを受け取る工程であって、前記リストが、それぞれの固有の頂点について固有の識別子を含む工程;および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さに少なくとも一部相当する分だけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調節する工程; を有し、 第1の多角形の第1の頂点についての位置成分の調節により、前記同じ頂点を共有する第2の多角形の前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記リストが、最終的に固化可能な媒体の複数の連続的に固化された層から3次元対象物を形成するために使用されるデータを含む ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。」 と補正するものであり、本件手続補正は、補正前の請求項1の「目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し」との記載を、「目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さに少なくとも一部相当する分だけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し」とする補正事項(以下、「補正事項1」という。)及び補正前の請求項4の「目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調整する工程」との記載を、「目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さに少なくとも一部相当する分だけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調整する工程」とする補正事項(以下、「補正事項2」という。)を含むものである。 (2)本件手続補正の目的について 補正事項1は、「一つ以上の頂点のZ-成分を調節する」際の調節量に係るものであるが、本件手続補正前のかかる調節量は、本件手続補正前の上記「一層以上の厚さだけ」との記載からみて、「一層」分又は「一層」分を越える「厚さ」を意味するものと解するのが自然である。これに対して、本件手続補正後のかかる調節量は、上記「一層以上の厚さに少なくとも一部相当する分だけ」との記載からは、「一層」分又は「一層」分を越える「厚さ」である「一部相当する分」に加えて、「一層」分又は「一層」分を越える「厚さ」以外の「厚さ」である部分を「一部相当する分」以外に有することをも包含することを意味するものと解することができる。なお、補正事項1に係る上記記載においては、「少なくとも」の記載が修飾する対象が必ずしも明確ではないが、上記のとおり解することを排除する根拠は見出せない。 してみると、補正事項1により、特許請求の範囲が拡張することとなることから、補正事項1は特許請求の範囲の減縮を目的としたものであるとはいえない。 また、補正事項1が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれかを目的とするものとも認められない。 したがって、補正事項1は、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 また、補正事項2についても、実質的に同様の理由により、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項の各号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。 (3)まとめ よって、補正事項1及び2を含む本件手続補正は、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.拒絶査定に対する判断 1.本願発明 平成19年4月18日付けの手続補正は、上記第2.のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成17年10月19日付けの手続補正(以下、「本件意見補正」という。)により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「1.コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記複数の多角形の頂点のリストを編集する工程であって、二つ以上の多角形により共有されるそれぞれの頂点が一度だけリストアップされる工程; 固有の識別子で前記リスト中の前記頂点のそれぞれを表示する工程; 前記頂点の前記固有の識別子を使用して前記複数の多角形を再定義する工程; および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程; を有し、 前記リスト構成の結果として、第1の多角形の第1の頂点の調節により前記同じ頂点を共有する第2の多角形について前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記多角形データが、対象物の形成に使用するために適応される ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。 2.前記方法がさらに、3次元の目的物を表示する複数の多角形の形でデータを受け取る工程を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータプログラム媒体。 3.前記方法がさらに、前記調節された多角形データを層データに変換する工程を含むことを特徴とする、請求項1記載のコンピュータプログラム媒体。 4.コンピュータにより実行可能な指示のプログラムを具体化し、固化可能な媒体の複数の連続する固化層から3次元の目的物を形成する方法を実行するコンピュータプログラム媒体であって、前記目的物が複数の多角形によりコンピュータ中に表示され、前記方法が、 前記目的物を表示する複数の多角形および該複数の多角形のための頂点のリストを受け取る工程であって、前記リストが、それぞれの固有の頂点について固有の識別子を含む工程;および 下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調節する工程; を有し、 第1の多角形の第1の頂点についての位置成分の調節により、前記同じ頂点を共有する第2の多角形の前記と同じ第1の頂点が調節され; 前記リストが、最終的に固化可能な媒体の複数の連続的に固化された層から3次元対象物を形成するために使用されるデータを含む ことを特徴とするコンピュータプログラム媒体。 5.前記調節された位置成分が、下面成分を有する少なくとも一つの多角形と関連することを特徴とする請求項4記載のコンピュータプログラム媒体。 6.前記調節された位置成分が、上面成分を有する少なくとも一つの多角形と関連することを特徴とする請求項4記載のコンピュータプログラム媒体。」 2.原査定の拒絶の理由の概要 原査定の拒絶の理由の概要は、本願は、平成17年12月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶をすべきものである旨のものであり、以下の記載を備考として含むものである。 「平成17年10月19日付けでした手続補正により、本願の請求項1及び4に係る発明には、それぞれ『下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程』(請求項1)、『下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調節する工程』(請求項4)との特定がされた。 これについて、平成18年4月10日付け意見書において、上記箇所の補正の根拠として、願書に最初に添付した明細書の第76頁第11行-第22行及び第12頁第9行-第14行を挙げているが、これらの箇所には、上記特定が明示的に記載されているわけではなく、また、上記の各箇所には少なくとも『下面領域』や『部分的に過剰な固化物質』との記載は無いから、上記の各箇所の記載から上記特定が自明な事項であるとも認められない。 よって、『下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程』の補正の根拠が依然として不明である。」 また、平成17年12月21日付け拒絶理由通知書に記載した理由は以下のとおりである。 「平成17年10月19日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 記 平成17年10月19日付けでした手続補正により、特許請求の範囲が補正された。しかし、特許請求の範囲の補正内容に関して、当該補正が願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内であることについての出願人の説明は無く、補正内容と当初明細書等に記載した事項との対応関係が分からない。」 3.当審の判断 本件意見補正は、願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の請求項1?82の記載を、上記第3.の1.に記載のとおりに補正するものである。 本件意見補正後の請求項1に係る発明は、「下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程」との発明の構成に欠くことのできない事項(以下、「構成要件A」という。)を含むものである。 また、本件意見補正後の請求項4に係る発明は、「下面領域の形成中に使用された固化深さよりも少なく前記目的物の下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、前記リスト中の一つ以上の頂点の位置成分を調節する工程」との発明の構成に欠くことのできない事項(以下、「構成要件B」という。)を含むものである。 上記構成要件Aに係る補正の根拠について、本件請求人は、平成18年4月10日付け意見書において、以下のとおり、主張している。 「請求項1において、『下面領域を形成するための層厚さを使用する場合、目的物形成中に前記連続層の少なくとも一つの固化から生じる少なくとも部分的に過剰な固化物質の原因となる一層以上の厚さだけ、一つ以上の前記頂点のZ-成分を調節し、調節された多角形データを生じる工程』なる記載は、当初明細書第76頁第11-22行の『移動されるべき頂点の数を減らすことによって得られるコンピューター的の効果である、この実施例の第2以降の利点は、高く評価されるべきである。第2の実施例において、接触しているか又は互いに明示されたラウンディングエラーの中にある総ての頂点と同様に、下面三角形の頂点を移動することが必要である。これに対して、第3の実施例では、下面三角形の頂点のみが、移動される必要がある。他の三角形の頂点は、示された方法(例えば、三角形を形成する頂点を独自に示す整数によって、)によって自動的に調整される。要約すると、この表現プロセスを通して、下面三角形の頂点のZ成分を調整するステップは、自動的に総ての関係する三角形を調整する。』(注:以下、「摘示ア」という。)なる記載及び第17頁第9行-第14行の『本発明の別の特徴は、MSDより薄いクロスセクショナルスライスを使用することである。現状の固化特性又はキュア技術の組合せにおけるこれらの薄いクロスセクションは、MSDに等しいクロスセクションスライス使用して得られるものより、高い分解能の部品を提供できるであろう。最小厚さはいま尚MSDである。最小厚さに起因するどのような誤差も、ステレオリソグラフィーを用いて構成される目的物において小さな割合の問題である。』(注:以下、「摘示イ」という。)なる記載に基づくものであります。」 また、本件請求人は、平成19年6月8日付け手続補正書(方式)において、以下のとおり、主張している。 「平成17年10月19日付けでした補正および2007年4月18日付けでした補正は、当初明細書第11頁第20行-第21頁第8行の『上述したように、下面を形成する層の一部分は、1つの層厚の深さまでキュアされるべきである。しかしながら、実際上、下面領域は、1つの層厚より十分厚いキュア深さが与えられている。この過剰のキュア深さは、結果として目的物の垂直方向の歪みを生じる。目的物の厚さが少なくとも、下面領域を露光している時に得られる最小キュア深さと同程度になるまで、1又はそれ以上の層に対する目的物の下面の露光を遅らせるという簡単な発明を、この過剰キュア問題を訂正するために用いることができる。この具体例では、MSDは、下面領域の形成において使用される最小固化深さとして定義される。この具体例は、要求される分解能が極めて小さくなる時に、特に重要になる。例えば、分解能の要求が高くなるに従って、層厚は小さくなる。一般的に、層厚として4,5,6又は10ミルであることが要求され、さらにそれは着実に2ミル,1ミル又はそれ以下に近付く。これに対して、現行の材料を用いれば、一般的に好ましいキュア深さは8から16ミルの間になる。そのうえ、この具体例の場合では、下面に対するキュア深さは、単一の層に適用される露光に基づいているか、又は、2又はそれ以上の連続する層に適用される露光に基づいているであろう。その点で、キュア深さは、第1の層の頂上から測定して、1つ又はそれ以上のより上層からの露光によって増加する。』(注:以下、「摘示ウ」という。)なる記載及び第15頁第24行-第16頁第6行の『第2の具体例は、スライシングプロセスを開始するとき、又はその前に、目的物のSTL表現の取り扱いを伴う。この具体例では、複数の下面三角形の頂点と、平面の全部又は一部分と下面と下面三角形の近平面とを含めて、Z-エラーを訂正するために上方に移動される。シフト量は、総ての下面三角形に対して同一であることが好ましいが、しかしながら、その量は三角形の傾きによって変更してもよい。特に、三角形が急勾配になるようにシフト量を減少させる利点がある。一方、上面平面の総て又は一部と上面三角形の近平面の可能性を含む上面三角形の頂点は、Z-エラーを訂正するために下方に移動される。この具体例の第1のバージョンにおいて、複数のSTL三角形は、それらがスライスされた平面を一周する前に、処理される。この具体例の第2のバージョンにおいて、複数のSTL三角形は、それらがスライスされた平面を一周した後に、処理される。』(注:以下、「摘示エ」という。)なる記載、並びに当初明細書の実施例IおよびJの記載に基づくものであります。実施例IおよびJには、2層または3層深さと接着に必要な総ての過剰キュアとを加えた深さまで頂点のZ成分を調節しキュアするべきであることが記載されています。」 本件請求人が、本件意見補正後の請求項1に係る上記構成要件Aに係る補正の根拠としている、当初明細書に記載の上記摘示アないしエ及び当初明細書第52頁第22行?第56頁第22行に記載された「実施例IおよびJ」の内容を検討する。 上記構成要件Aは、「固化深さ」、「固化物質」または「部分的に過剰な固化物質」、及び「多角形データ」または「調節された多角形データ」との用語を用いて記載されているが、これらの用語については、上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」を含め、当初明細書に記載されたものではない。当初明細書には、「最小固化深さ」または「MSD」との用語は記載されているが、「固化深さ」との用語は記載されておらず、また、「最小固化深さ」または「MSD」と「固化深さ」の関係についての説明もない。「三角形データ」との用語と、「多角形データ」との用語の関係も同様である。さらに、「固化深さ」、「固化物質」または「部分的に過剰な固化物質」、及び「多角形データ」または「調節された多角形データ」との用語を用いて記載することが、本願出願時における技術常識を参酌しても、自明の事項であるとする根拠も見出せない。 また、上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」の記載には、上記構成要件Aが具体的に示されておらず、本件請求人は、上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」を示すのみであって、上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」のどの記載が上記構成要件Aと具体的にどのように関係しているのかについても、また、上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」の記載から、上記構成要件Aが導き出せるとする合理的理由についても、何ら説明していない。 さらに、本件請求人が上記構成要件Aに係る補正の根拠としている、当初明細書に記載の上記摘示アないしエ及び「実施例IおよびJ」を含め、当初明細書の記載全般からも、上記構成要件Aが記載されていたとする根拠は見出せない。 そして、本件意見補正後の請求項4に係る上記構成要件Bについても、当初明細書の記載との関係は、実質的に、上記請求項1に係る上記構成要件Aと同様である。 したがって、上記構成要件A及びBが当初明細書に記載されていたものであるとは認めることができない。 よって、平成17年10月19日付けでした手続補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内においてしたものではないから、平成6年改正前の特許法第17条の2第2項において準用する同法第17条第2項に規定する要件を満たしていない。 第4.むすび 以上のとおりであるので、本願は拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-09-29 |
結審通知日 | 2008-10-07 |
審決日 | 2008-10-20 |
出願番号 | 特願平7-527841 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
WZ
(B29C)
P 1 8・ 55- WZ (B29C) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山本 晋也 |
特許庁審判長 |
渡辺 仁 |
特許庁審判官 |
亀ヶ谷 明久 野村 康秀 |
発明の名称 | ステレオリソグラフィーにおける高度な構成技術 |
代理人 | 佐久間 剛 |
代理人 | 柳田 征史 |