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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1376402
審判番号 不服2020-16167  
総通号数 261 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2021-09-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2020-11-24 
確定日 2021-07-29 
事件の表示 特願2018-508795「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年10月 5日国際公開,WO2017/169387〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願(以下,「本願」という。)は,2017年(平成29年) 2月24日(優先権主張 2016年(平成28年) 3月30日 日本国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は以下のとおりである。

平成30年 1月26日 :国内書面の提出
令和 2年 5月11日付け:拒絶理由通知
令和 2年 7月16日 :意見書,手続補正書の提出
令和 2年 8月17日付け:拒絶査定(以下,「原査定」という。)
令和 2年11月24日 :審判請求書,手続補正書の提出

第2 令和 2年11月24日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
令和 2年11月24日付けの手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正について(補正の内容)
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1-3の記載は次のとおりである。(下線部は,補正箇所である。以下,それぞれ,「補正後の請求項1」-「補正後の請求項3」という。)
「 【請求項1】
基材上に粘着剤層が設けられた支持シート上に,硬化性のフィルム状接着剤が設けられた半導体加工用シートを用いた半導体装置の製造方法であって,
厚さが60μmである硬化前の単層の前記フィルム状接着剤,又は硬化前の2層以上の前記フィルム状接着剤を,合計の厚さが60μmとなるように積層した積層体の,0℃における破断伸度が60%以下であり,
硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力が,300mN/25mm以上であり,
前記粘着剤層が非エネルギー線硬化性であり,
前記フィルム状接着剤の前記支持シートが設けられている側とは反対側の表面に,分割済みの複数個の半導体チップが設けられてなる積層構造体を形成する積層構造体形成工程と,
前記積層構造体のフィルム状接着剤を冷却しながら,前記フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する切断工程と,
切断後の前記フィルム状接着剤を備えた前記半導体チップを,前記支持シートから引き離す引き離し工程と,
を有する,半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記半導体加工用シートが,前記粘着剤層に前記フィルム状接着剤が直接接触して設けられた,請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記積層構造体形成工程の前に,さらに,
半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように,赤外域のレーザー光を照射して,前記半導体ウエハの内部に改質層を形成する改質層形成工程と,
前記改質層を形成した前記半導体ウエハにおいて,前記フィルム状接着剤を設けるための面を研削するともに,研削時の力を前記半導体ウエハに加えることにより,前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し,複数個の半導体チップを得る分割工程と,
を有し,前記分割工程で得られた複数個の半導体チップを,前記積層構造体形成工程で用いる,請求項1又は2に記載の半導体装置の製造方法。」

(2)本件補正前の特許請求の範囲
本件補正前の,令和 2年 7月16日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1-4の記載は次のとおりである。(以下,それぞれ,「補正前の請求項1」-「補正前の請求項4」という。)
「 【請求項1】
基材上に粘着剤層が設けられた支持シート上に,硬化性のフィルム状接着剤が設けられた半導体加工用シートであって,
厚さが60μmである硬化前の単層の前記フィルム状接着剤,又は硬化前の2層以上の前記フィルム状接着剤を,合計の厚さが60μmとなるように積層した積層体の,0℃における破断伸度が60%以下であり,
硬化前の前記フィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力が,300mN/25mm以上であり,
前記粘着剤層が非エネルギー線硬化性である,半導体加工用シート。
【請求項2】
前記粘着剤層に前記フィルム状接着剤が直接接触して設けられた,請求項1に記載の半導体加工用シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体加工用シートを用いた半導体装置の製造方法であって,
前記フィルム状接着剤の前記支持シートが設けられている側とは反対側の表面に,分割済みの複数個の半導体チップが設けられてなる積層構造体を形成する積層構造体形成工程と,
前記積層構造体のフィルム状接着剤を冷却しながら,前記フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する切断工程と,
切断後の前記フィルム状接着剤を備えた前記半導体チップを,前記支持シートから引き離す引き離し工程と,
を有する,半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記積層構造体形成工程の前に,さらに,
半導体ウエハの内部に設定された焦点に集束するように,赤外域のレーザー光を照射して,前記半導体ウエハの内部に改質層を形成する改質層形成工程と,
前記改質層を形成した前記半導体ウエハにおいて,前記フィルム状接着剤を設けるための面を研削するともに,研削時の力を前記半導体ウエハに加えることにより,前記改質層の部位において前記半導体ウエハを分割し,複数個の半導体チップを得る分割工程と,
を有し,前記分割工程で得られた複数個の半導体チップを,前記積層構造体形成工程で用いる,請求項3に記載の半導体装置の製造方法。」

2 補正の目的
本件補正は,概略,補正前の請求項1を補正前の請求項3に記載された事項で特定するものであるから,特許請求の範囲の減縮(限定的減縮)を目的とする補正を含むものである。
そして,補正前の請求項1-4に記載された発明と補正後の請求項1-3に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題は同一であることは明らかである。

3 独立特許要件
以上のように,本件補正は,特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とする補正を含むものである。

そこで,補正後の請求項1に記載される発明(以下「本件補正発明」という。)が特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について,以下,検討する。

本件補正発明は,上記1(1)に補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(1)引用文献1に記載されている技術的事項及び引用発明
ア 原査定の拒絶理由通知において引用された,特開2015-198116号公報(以下,「引用文献1」という。)には,以下の事項が記載されている。(当審注:下線は,参考のために当審で付与したものである。以下同じ。)

「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ダイボンドフィルムの保持下において,DBG法やステルスダイシングによりダイボンドフィルム付の個々の半導体チップを得るためには,エキスパンド工程における引張応力により半導体ウェハとともにダイボンドフィルムを破断する必要がある。そこで,DBG法やステルスダイシングでは,ダイボンドフィルムの破断性を高めるために,低温下(例えば,0℃)にてエキスパンドするという手法が提案されつつある。しかしながら,従来のダイボンドフィルムを低温下でエキスパンドすると,部分的に半導体ウェハやダイボンドフィルムが破断されないという不具合が発生しており,半導体装置の製造の歩留まりが低下する結果となっている。
【0007】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり,その目的は,低温下において引張応力により好適に破断される熱硬化型ダイボンドフィルム及びその用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは,前記問題点を解決すべくダイボンドフィルムの低温下での特性に着目して鋭意検討した結果,本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち,本発明は,熱硬化前において,
0℃における貯蔵弾性率Aが1GPa以上であり,
0℃における損失弾性率Bが500MPa以下であり,
0℃における損失正接C(=B/A)が0.1以下であり,
ガラス転移温度Dが0℃を超え,かつ
前記ガラス転移温度Dの絶対値の前記損失正接Cの絶対値に対する比E(=D/C)が600以上である熱硬化型ダイボンドフィルムに関する。」

「【0014】
本発明には,当該熱硬化型ダイボンドフィルムが,基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に積層されているダイシング・ダイボンドフィルムも含まれる。」

「【0016】
本発明には,当該ダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって,
半導体ウェハの表面に裏面まで達しない溝を形成する工程と,
前記半導体ウェハの裏面研削を行い,前記裏面から前記溝を表出させる工程と,
前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハを,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り合わせる工程と,
-30℃?20℃の条件下において,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに引張応力を加えることにより,前記ダイシング・ダイボンドフィルムを構成するダイボンドフィルムを破断し,半導体素子を形成する工程と,
前記半導体素子を前記ダイボンドフィルムととともにピックアップする工程と,
ピックアップした前記半導体素子を,前記ダイボンドフィルムを介して被着体にダイボンドする工程と
を有する半導体装置の製造方法も含まれる。
【0017】
当該製造方法のいずれにおいても,低温破断性の良好なダイボンドフィルムを備えるダイシング・ダイボンドフィルムを用いているので,低温下での引張応力の負荷でもダイボンドフィルムを好適に破断することができ,製造効率を向上させることができる。」
(当審注;【0016】の「-30℃?20℃℃」は,「-30℃?20℃」の誤記であると認めた。)

「【0020】
《第1実施形態》
<ダイシング・ダイボンドフィルム>
本発明のダイシング・ダイボンドフィルムについて以下に説明する。図1は,本発明の一実施形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。図2は,本発明の他の実施形態に係るダイシング・ダイボンドフィルムを示す断面模式図である。ただし,図の一部又は全部において,説明に不要な部分は省略し,また説明を容易にするために拡大または縮小等して図示した部分がある。
【0021】
図1に示すように,ダイシング・ダイボンドフィルム10は,ダイシングフィルム11上にダイボンドフィルム3が積層された構成を有する。ダイシングフィルム11は基材1上に粘着剤層2を積層して構成されており,ダイボンドフィルム3はその粘着剤層2上に設けられている。また本発明は,図2に示すダイシング・ダイボンドフィルム12のように,半導体ウェハ貼り付け部分にのみダイボンドフィルム3’を形成した構成であってもよい。」

「【0026】
前記粘着剤層2は紫外線硬化型粘着剤を含み構成されていることが好ましい。紫外線硬化型粘着剤は,紫外線の照射により架橋度を増大させてその粘着力を容易に低下させることができ,図2に示す粘着剤層2の半導体ウェハ貼り付け部分に対応する部分2aのみを紫外線照射することにより他の部分2bとの粘着力の差を設けることができる。」

「【0052】
ダイボンドフィルム3,3’の熱硬化前における0℃での破断伸び率は100%以下であることが好ましく,80%以下であることがより好ましい。これにより,ダイボンドフィルムをエキスパンドさせた際に過度に伸長するのを防止し,好適に破断することができる。なお,上記破断伸び率の下限は特に限定されないものの,過度の伸長の防止の観点からは0%,すなわち全く伸びなくてもよい。
【0053】
ダイボンドフィルムの層構造は特に限定されず,例えば,ダイボンドフィルム3,3’(図1,図2参照)のように接着剤層の単層のみからなるものや単層の接着剤層を積層したもの,コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造のもの等が挙げられる。前記コア材料としては,フィルム(例えばポリイミドフィルム,ポリエステルフィルム,ポリエチレンテレフタレートフィルム,ポリエチレンナフタレートフィルム,ポリカーボネートフィルム等),ガラス繊維やプラスチック製不織繊維で強化された樹脂基板,シリコン基板又はガラス基板等が挙げられる。ダイボンドフィルムが多層構造のものである場合,多層構造のダイボンドフィルム全体として,各特性が所定数値範囲内であればよい。」

「【0108】
《第3実施形態》
次に,半導体ウェハの表面に溝を形成し,その後,裏面研削を行う工程を採用した半導体装置の製造方法について以下に説明することとする。
【0109】
図7,図8は,本実施形態に係る半導体装置の他の製造方法を説明するための断面模式図である。まず,図7(a)に示すように,回転ブレード41にて半導体ウェハ4の表面4Fに裏面4Rまで達しない溝4Sを形成する。なお,溝4Sの形成時には,半導体ウェハ4は,図示しない支持基材にて支持される。溝4Sの深さは,半導体ウェハ4の厚さやエキスパンドの条件に応じて適宜設定可能である。次に,図7(b)に示すように,表面4Fが当接するように半導体ウェハ4を保護基材42に支持させる。その後,研削砥石45にて裏面研削を行い,裏面4Rから溝4Sを表出させる。なお,半導体ウェハへの保護基材42の貼り付けは,従来公知の貼付装置を用いることができ,裏面研削も,従来公知の研削装置を用いることができる。
【0110】
次に,図8に示すように,ダイシング・ダイボンドフィルム12上に,溝4Sが表出した半導体ウェハ4を圧着し,これを接着保持させて固定する(仮固着工程)。その後,保護基材42を剥がし,ウェハ拡張装置32によりダイシング・ダイボンドフィルム12に張力をかける。これにより,ダイボンドフィルム3’を破断し,半導体チップ5を形成する(チップ形成工程)。なお,チップ形成工程における温度,エキスパンド速度,エキスパンド量は,レーザー光を照射して分割予定ライン4L上に改質領域を形成する場合と同様である。以降の工程は,レーザー光を照射して分割予定ライン4L上に改質領域を形成する場合と同様であるからここでの説明は省略することとする。」

「【図1】



「【図2】



「【図7】



「【図8】



イ ここで,引用文献1に記載されている事項を検討する。
(ア)上記段落0006-0009の記載を参照すると,引用文献1は「低温下において引張応力により好適に破断される熱硬化型ダイボンドフィルム」に関するものであり,また,上記段落0014,0016を参照すると,「当該熱硬化型ダイボンドフィルムが,基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に積層されているダイシング・ダイボンドフィルム」及び,「当該ダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法」も含まれている。
以上から,引用文献1には,「低温下において引張応力により好適に破断される熱硬化型ダイボンドフィルムが,基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に積層されているダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法」が記載されている。

(イ)上記段落0016を参照すると,引用文献1の「ダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法」は,「半導体ウェハの表面に裏面まで達しない溝を形成する工程」と,「前記半導体ウェハの裏面研削を行い,前記裏面から前記溝を表出させる工程」と,「前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハを,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り合わせる工程と,-30℃?20℃の条件下において,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに引張応力を加えることにより,前記ダイシング・ダイボンドフィルムを構成するダイボンドフィルムを破断し,半導体素子を形成する工程」と,「前記半導体素子を前記ダイボンドフィルムととともにピックアップする工程」とが含まれる。

(ウ)上記段落0052には,引用文献1の「ダイボンドフィルム」は,「熱硬化前における0℃での破断伸び率は100%以下であることが好ましく,80%以下であることがより好まし」く,また,「上記破断伸び率の下限は特に限定されないものの,過度の伸長の防止の観点からは0%,すなわち全く伸びなくてもよい」ことが記載されている。
また,上記段落0052には,引用文献1の「ダイボンドフィルム」の層構造として,「接着剤層の単層のみからなるものや単層の接着剤層を積層したもの,コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造のもの等が挙げられる」ことが記載されている。

(エ)上記段落0026には,引用文献1の「粘着剤層」は,「紫外線硬化型粘着剤を含み構成されていることが好ましい」ことが記載されている。

ウ 以上から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「 低温下において引張応力により好適に破断される熱硬化型ダイボンドフィルムが,基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に積層されているダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法であって,
半導体ウェハの表面に裏面まで達しない溝を形成する工程と,
前記半導体ウェハの裏面研削を行い,前記裏面から前記溝を表出させる工程と,
前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハを,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り合わせる工程と,
-30℃?20℃の条件下において,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに引張応力を加えることにより,前記ダイシング・ダイボンドフィルムを構成するダイボンドフィルムを破断し,半導体素子を形成する工程と,
前記半導体素子を前記ダイボンドフィルムととともにピックアップする工程とが含まれ,
ダイボンドフィルムは,熱硬化前における0℃での破断伸び率は100%以下であることが好ましく,80%以下であることがより好ましく,また,上記破断伸び率の下限は特に限定されないものの,過度の伸長の防止の観点からは0%,すなわち全く伸びなくてもよく,
また,ダイボンドフィルムの構造として,接着剤層の単層のみからなるものや単層の接着剤層を積層したもの,コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造のもの等が挙げられ,
粘着剤層は,紫外線硬化型粘着剤を含み構成されていることが好ましい
こと。」

(2)引用文献2に記載されている技術的事項
ア 原査定の拒絶理由通知において引用された,特開2002-226796号公報(以下,「引用文献2」という。)には,以下の事項が記載されている。

「【発明の実施の形態】
【0031】図1は本発明のウェハ貼り付け用粘着シートの断面図である。本発明のウェハ貼り付け用粘着シート1は,基材2と,この面上に形成された放射線硬化型粘着剤層3と,放射線硬化型粘着剤層3上に形成されたダイ接着用接着剤層4とから構成されている。使用前にはこのダイ接着用接着剤層4を保護するため,図2に示すようにダイ接着用接着剤層4の上面に剥離性シート5を仮粘着しておくこともできる。」

「【0109】以下本発明のウェハ貼り付け用粘着シートの使用方法について図面を用いて説明する。図1は本発明の接着シートの断面模式図である。図2に示すように,ウェハ貼り付け用粘着シート1の上面に剥離性シート5が設けられている場合には,剥離性シート5を除去し,次いで粘着シート1のダイ接着用接着剤層4を上向きにして載置し,図3に示すようにして,このダイ接着用接着剤層4の上面にダイシング加工すべき半導体ウェハAを,室温又は加熱下で貼着する。
【0110】次に,半導体ウェハAを,ダイシングソー等を用いてダイシングすると,図4に示すように,複数個のウェハチップA_(1),A_(2),・・・A_(4)がダイ接着用接着剤層4上に保持された状態で得ることができ,このまま洗浄,乾燥等の諸工程が加えられる。この時点における放射線硬化型粘着剤層3とダイ接着用接着剤層4との接着力は,1?1000g/25mm程度が好ましく,1?500g/25mm程度がより好ましい。他方,ダイ接着用接着剤4とウェハチップA_(1),A_(2),・・・A_(4)との接着力は,50?2000g/25mm程度が好ましく,100?1000g/25mm程度がより好ましい。接着力が上記の関係であれば,ウェハチップA_(1),A_(2),・・・A_(4)とウェハ貼着用粘着シート1とは一体化しており,上記の諸工程中に,ウェハチップが脱落することはない。」

(3)その他の文献に記載されている技術的事項
ア 本願の優先日の前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,国際公開第2015/190230号(以下,「周知文献1」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。

「[0018] 以下,本発明の実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態に係るダイシングシートの断面図である。図1に示すように,本実施形態に係るダイシングシート1は,基材2と,基材2の第1の面側(図1中における上側)に積層された粘着剤層3と,粘着剤層3上に積層された剥離シート6とを備えて構成される。剥離シート6は,ダイシングシート1の使用時に剥離除去され,それまで粘着剤層3を保護するものである。ここで,基材2における粘着剤層3側の面を「第1の面」,その反対側の面(図1中における下面)を「第2の面」という。」

「[0043]2.粘着剤層
本実施形態に係るダイシングシート1が備える粘着剤層3は,非エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよいし,エネルギー線硬化性粘着剤から構成されてもよい。非エネルギー線硬化性粘着剤としては,所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく,例えば,アクリル系粘着剤,ゴム系粘着剤,シリコーン系粘着剤,ウレタン系粘着剤,ポリエステル系粘着剤,ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも,ダイシング工程等において,ワークまたは加工物の脱落を効果的に抑制することができるアクリル系粘着剤が好ましい。」

「[0076]3.剥離シート
本実施形態における剥離シート6は,ダイシングシート1が使用されるまでの間,粘着剤層3を保護する。本実施形態における剥離シート6は,粘着剤層3上に直接積層されているが,これに限定されるものではなく,粘着剤層3上に他の層(ダイボンディングフィルム等)が積層され,前記他の層上に剥離シート6が積層されてもよい。」

「[0098] 以上説明した実施形態は,本発明の理解を容易にするために記載されたものであって,本発明を限定するために記載されたものではない。したがって,上記実施形態に開示された各要素は,本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。

[0099] 例えば,ダイシングシート1,1Aにおける基材2と粘着剤層3との間には,他の層が介在していてもよい。また,ダイシングシート1,1Aにおける粘着剤層3と剥離シート6との間には,他の層が介在していてもよい。前記他の層としては,例えば,ダイボンディングフィルムが挙げられる。この場合,ダイシングシート1,1Aは,ダイシングダイボンディングシートとして使用することができる。」

イ 本願の優先日の前に頒布又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった,国際公開第2015/46529号(以下,「周知文献2」という。)には,以下の技術的事項が記載されている。

「[0018] 以下,本発明の樹脂膜形成用複合シートについてさらに具体的に説明する。図1?図3に示すように,本発明の樹脂膜形成用複合シート10は,基材1上に粘着剤層2を有する粘着シート3と,該粘着剤層2上に設けられた熱硬化性の樹脂膜形成用フィルム4とを有する。また,図1?3に示すように,樹脂膜形成用複合シート10はその使用に際してリングフレーム等の治具7に貼付されることがある。治具7との接着性を向上させるために,図2及び3に示すように,樹脂膜形成用複合シート10の外周部には,環状の治具接着層5を設けてもよい。」

「[0023](粘着剤層)
粘着剤層は,エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物または非エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる。上記粘着剤層によれば,後述する樹脂膜形成用フィルム付チップや樹脂膜付チップのピックアップ適性に優れる。
なお,本発明における粘着剤層としては,樹脂膜形成用複合シートの製造工程において,エネルギー線照射工程(例えば紫外線照射工程等)を行う必要がないため,製造工程を簡略化できる観点,及び,樹脂膜形成用複合シートの樹脂膜形成用フィルムを被着体に貼付した後に,樹脂膜形成用フィルムの凝集力を上げるために,樹脂膜形成用フィルムにエネルギー線を照射した場合においても,ピックアップが困難となることがないという観点から,非エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層が好ましい。
また,エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物または非エネルギー線硬化型粘着剤組成物には,未反応の反応性二重結合基が実質的に含まれていないか,含まれていても本発明の効果に影響しない程度の量である。具体的には,エネルギー線硬化型粘着剤組成物の硬化物または非エネルギー線硬化型粘着剤組成物からなる粘着剤層を有する粘着シートの,エネルギー線照射の前後における粘着力の変化率は90?100%の範囲にある。該粘着力の変化率は,以下の方法により測定することができる。まず,粘着シートを長さ200mm,幅25mmに裁断し,粘着力測定用シートを準備する。次いで,粘着力測定用シートの粘着剤層を半導体ウエハの鏡面に貼付し,半導体ウエハと粘着力測定用シートとからなる積層体を得る。得られた積層体を23℃,相対湿度50%の雰囲気下に20分間放置する。放置後の積層体について,JIS Z0237:2000に準拠して,180°引き剥がし試験(粘着力測定用シートを引き剥がされる側の部材とする。)を行い,エネルギー線照射前の粘着力(単位:mN/25mm)を測定する。また,放置後の積層体について,エネルギー線照射(220mW/cm^(2), 160mJ/cm^(2))を行い,上記と同様にしてエネルギー線照射後の粘着力(単位:mN/25mm)を測定する。そして,測定されたエネルギー線照射前後の粘着力から,変化率を算出する。」

「[0170] このような樹脂膜形成用複合シートの樹脂膜形成用フィルムは,ワークを個片化して得られるチップをダイ搭載部に接着するためのダイボンディング用接着フィルムや,フェースダウン型半導体チップの裏面を保護する保護膜としての機能を有する。」

ウ 以上から,周知文献1-2には,次の技術(以下,「周知技術」という。)が記載されているものと認められる。
「 基材と,基材に積層された粘着剤層と,粘着剤層の上に積層されたダイボンディングフィルムからなるシートにおいて,
粘着剤層は,非エネルギー線硬化性粘着剤,または,エネルギー線硬化性粘着剤から構成されること。」

(4)対比
ア 本件補正発明と引用発明とを対比する。
(ア)引用発明の「基材」,「粘着剤層」が,本件補正発明の「基材」,「粘着剤層」にそれぞれ相当する。
そして,引用発明の「ダイシングフィルム」が,本件補正発明の「支持シート」に対応し,両者は「支持シート」である点で一致する。

(イ)引用発明の「熱硬化性ダイボンドフィルム」は,「接着剤層の単層のみからなるものや単層の接着剤層を積層したもの,コア材料の片面又は両面に接着剤層を形成した多層構造のもの等が挙げられ」るものであるから,本件補正発明の「硬化性のフィルム状接着剤」に対応し,両者は「硬化性のフィルム状接着剤」である点で一致する。
そうすると,引用発明の「ダイシング・ダイボンドフィルム」が,本件補正発明の「半導体加工用シート」に対応し,両者は「半導体加工用シート」である点で一致する。

(ウ)引用発明は「低温下において引張応力により好適に破断される熱硬化型ダイボンドフィルムが,基材上に粘着剤層が積層されたダイシングフィルム上に積層されているダイシング・ダイボンドフィルムを用いた半導体装置の製造方法」であるから,引用発明と本件補正発明とは,「基材上に粘着剤層が設けられた支持シート上に,硬化性のフィルム状接着剤が設けられた半導体加工用シートを用いた半導体装置の製造方法」である点で一致する。

(エ)引用発明の「半導体ウェハの表面に裏面まで達しない溝を形成する工程と,前記半導体ウェハの裏面研削を行い,前記裏面から前記溝を表出させる工程と,前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハを,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り合わせる工程」において,「前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハ」は,「溝」により「複数個の半導体チップ」に「分割済み」であることは明らかである。
すると,引用発明は「半導体ウェハの表面に裏面まで達しない溝を形成する工程と,前記半導体ウェハの裏面研削を行い,前記裏面から前記溝を表出させる工程と,前記裏面から前記溝が表出した前記半導体ウェハを,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに貼り合わせる工程」を含むところ,引用発明と本件補正発明とは,「前記フィルム状接着剤の前記支持シートが設けられている側とは反対側の表面に,分割済みの複数個の半導体チップが設けられてなる積層構造体を形成する積層構造体形成工程」を有する点で一致する。

(オ)引用発明の,「-30℃?20℃の条件下において,前記ダイシング・ダイボンドフィルムに引張応力を加えることにより,前記ダイシング・ダイボンドフィルムを構成するダイボンドフィルムを破断し,半導体素子を形成する工程」,「前記半導体素子を前記ダイボンドフィルムととともにピックアップする工程」が,本件補正発明の,「前記積層構造体のフィルム状接着剤を冷却しながら,前記フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する切断工程」,「切断後の前記フィルム状接着剤を備えた前記半導体チップを,前記支持シートから引き離す引き離し工程」に,それぞれ対応ことから,引用発明と本件補正発明とは,「前記積層構造体のフィルム状接着剤を冷却しながら,前記フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する切断工程」及び「切断後の前記フィルム状接着剤を備えた前記半導体チップを,前記支持シートから引き離す引き離し工程」を有する点で一致する。

イ 以上から,本件補正発明と引用発明とは,以下の点で一致し,また,以下の点で相違する。
<一致点>
「 基材上に粘着剤層が設けられた支持シート上に,硬化性のフィルム状接着剤が設けられた半導体加工用シートを用いた半導体装置の製造方法であって,
前記フィルム状接着剤の前記支持シートが設けられている側とは反対側の表面に,分割済みの複数個の半導体チップが設けられてなる積層構造体を形成する積層構造体形成工程と,
前記積層構造体のフィルム状接着剤を冷却しながら,前記フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する切断工程と,
切断後の前記フィルム状接着剤を備えた前記半導体チップを,前記支持シートから引き離す引き離し工程と,
を有する,半導体装置の製造方法。」

<相違点1>
「フィルム状接着剤」の「破断伸度」に関して,本件補正発明は「厚さが60μmである硬化前の単層の前記フィルム状接着剤,又は硬化前の2層以上の前記フィルム状接着剤を,合計の厚さが60μmとなるように積層した積層体の,0℃における破断伸度が60%以下であり」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

<相違点2>
「硬化前のフィルム状接着剤」の「半導体ウエハに対する接着力」に関して,本件補正発明は「300mN/25mm以上」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

<相違点3>
「粘着剤層」に関して,本件補正発明は「非エネルギー線硬化性」と特定されているのに対し,引用発明は,そのように特定されていない点。

(5)当審の判断
上記相違点1-3について検討する。

ア 相違点1について
相違点1について検討する。
フィルム状接着剤の破断伸度をどの程度とするのかは,当業者が実施に当たり最適化する設計的事項であると認められる。
ここで,引用発明においても,「上記破断伸び率の下限は特に限定されないものの,過度の伸長の防止の観点からは0%,すなわち全く伸びなくてもよく」との事項からみれば,フィルム状接着剤の破断伸度として,全く伸びなくてもよい点も示唆されている。
すると,引用発明において,フィルム状接着剤の破断伸度を最適化し,相違点1に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

イ 相違点2について
相違点2について検討する。
硬化前のフィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力は,当業者が実施に当たり最適化する設計的事項であると認められる。
そして,引用文献2には,「基材2と,この面上に形成された放射線硬化型粘着剤層3と,放射線硬化型粘着剤層3上に形成されたダイ接着用接着剤層4とから構成されているウェハ貼り付け用粘着シート1」において,「ダイ接着用接着剤4とウェハチップA_(1),A_(2),・・・A_(4)との接着力は,50?2000g/25mm程度が好ましく,100?1000g/25mm程度がより好ましい」点が記載されている。
ここで,1000g/25mmは,約9800mN/25mmであると認められるから,50?2000g/25mm程度の範囲は,約490mN?19600mN/25mm程度の範囲となり,硬化前のフィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力として,300mN/25mm以上の値は,一般的な値であると認められる。
すると,引用発明において,硬化前のフィルム状接着剤の半導体ウエハに対する接着力を最適化し,相違点2に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

ウ 相違点3について
相違点3について検討する。
上記周知技術に記載されているように,基材と,基材に積層された粘着剤層と,粘着剤層の上に積層されたダイボンディングフィルムからなるシートにおいて,その粘着剤層として,非エネルギー線硬化性粘着剤も,エネルギー線硬化性粘着剤も,どちらも周知のものであり,そのどちらを採用するのかは,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項であると認められる。
そして,引用発明も周知技術も,どちらも,基材と,基材に積層された粘着剤層と,粘着剤層の上に積層されたダイボンディングフィルムからなるシートであるから,引用発明に上記周知技術を採用して,相違点3に係る構成とすることは,当業者が容易になし得たものである。

エ 請求人の主張について
請求人は審判請求書において,
「 引用文献1?5のいずれにも,基材上に粘着剤層が設けられた支持シート上に,硬化性のフィルム状接着剤が設けられた半導体加工用シートを用いて,「フィルム状接着剤の表面に沿った方向にエキスパンドして,フィルム状接着剤を切断する」ことを含む半導体装置の製造方法において,前記粘着剤層が非エネルギー線硬化性とする記載はなく,前記粘着剤層を非エネルギー線硬化性とする動機付けの記載もありません。
本願発明の半導体加工用シートにおいて,粘着剤層は非エネルギー線硬化性であり,本願明細書の段落[0116],[0168]に記載の通り,非エネルギー線硬化性の粘着剤層を有する半導体加工用シートを用いた場合には,引き離し工程においては,エネルギー線照射による粘着剤層の硬化を行わなくても,フィルム状接着剤付き半導体チップを容易に粘着剤層から引き離してピックアップできます。この場合,半導体装置の製造工程を簡略化できます。」
と主張していると認められる。

上記主張について検討する。
まず,上記「ウ」で検討したように,基材と,基材に積層された粘着剤層と,粘着剤層の上に積層されたダイボンディングフィルムからなるシートにおいて,その粘着剤層として,非エネルギー線硬化性粘着剤も,エネルギー線硬化性粘着剤も,どちらも周知のものであり,そのどちらを採用するのかは,当業者が実施に当たり適宜なし得る設計的事項であると認められる。
また,引用発明には,粘着剤層として,「紫外線硬化型粘着剤を含み構成されていることが好ましい」とは記載されているが,「非エネルギー線硬化性の粘着剤層」を排除する記載はない。
ここで,非エネルギー線硬化性の粘着剤層を有する半導体加工用シートを用いた場合に,半導体装置の製造工程を簡略化できることも,上記周知文献2の[0023]等に記載されているように周知のものである。
すると,製造工程を簡略化するという一般的な課題を解決するために,引用発明に周知技術を適用することには動機付けがあるといえ,請求人の主張を採用することはできない。

(6)小括
上記で検討したごとく,相違点1-3に係る構成は当業者が容易に想到し得たものであり,そして,これらの相違点を総合的に勘案しても,本件補正発明の奏する作用効果は,上記引用発明,引用文献2及び周知技術の奏する作用効果から予測される範囲のものにすぎず,格別顕著なものということはできない。
したがって,本件補正発明は,上記引用発明,引用文献2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができない。

4 補正却下の決定のむすび
以上から,本件補正は,特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので,同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって,上記補正却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本願発明について
1 本願発明
令和 2年11月24日にされた手続補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は,本件補正前の特許請求の範囲の請求項1-4に記載された事項により特定されるものであるところ,その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記「第2」の「1(2)」に,補正前の請求項1として記載されたとおりのものである。

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は,以下のとおりである。
理由1 この出願の請求項1-4に係る発明は,下記の引用文献1-5に記載された発明に基づいて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献1 特開2015-198116号公報
引用文献2 特開2002-226796号公報
引用文献3 国際公開第2004/109786号
引用文献4 国際公開第2015/190230号
引用文献5 国際公開第2015/46529号

3 引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1-2,4-5は,上記「第2」の「3(1)」-「3(3)」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は,上記「第2」の「2」で検討した本件補正発明に関する限定事項を削除したものである。
そうすると,本願発明の発明特定事項を全て含む本件補正発明が,上記「第2」の「3」に記載したとおり,引用発明,引用文献2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,上記限定事項を省いた本願発明も同様の理由により,引用発明,引用文献2及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび
以上のとおり,本願の請求項1に係る発明は,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから,その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。

 
審理終結日 2021-05-20 
結審通知日 2021-05-25 
審決日 2021-06-09 
出願番号 特願2018-508795(P2018-508795)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中田 剛史  
特許庁審判長 辻本 泰隆
特許庁審判官 ▲吉▼澤 雅博
小川 将之
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 加藤 広之  
代理人 西澤 和純  
代理人 五十嵐 光永  

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